特許第6516239号(P6516239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6516239ヘッドレスト、ヘッドレストを備えるシート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6516239
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】ヘッドレスト、ヘッドレストを備えるシート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/879 20180101AFI20190513BHJP
   A47C 7/38 20060101ALI20190513BHJP
【FI】
   B60N2/879
   A47C7/38
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-124212(P2015-124212)
(22)【出願日】2015年6月19日
(65)【公開番号】特開2017-7480(P2017-7480A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219668
【氏名又は名称】東海化成工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115646
【弁理士】
【氏名又は名称】東口 倫昭
(74)【代理人】
【識別番号】100115657
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 素子
(74)【代理人】
【識別番号】100196759
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 雪
(72)【発明者】
【氏名】小林 誠治
(72)【発明者】
【氏名】那須 寛之
【審査官】 毛利 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−234104(JP,A)
【文献】 特開2012−86715(JP,A)
【文献】 特開2015−37942(JP,A)
【文献】 特開2001−161489(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0211151(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00− 2/90
A47C 7/00− 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステーと、前記ステーに支持されるヘッドレスト本体と、前記ステーに取り付けられ前記ヘッドレスト本体に埋設されるダイナミックダンパーと、を備える車両用のヘッドレストであって、
前記ダイナミックダンパーは、前記ステーに取り付けられる取付部と自身を表裏方向に貫通する開口部とを有する取付部材と、前記開口部の口縁に全周的に固定され前記開口部に配置される弾性部材と、前記弾性部材に埋設され前記開口部に配置される錘と、を備え、
前記取付部材は、表側分割体と、前記表側分割体の裏側に配置される裏側分割体と、を有し、
前記表側分割体と前記裏側分割体とで、前記表裏方向両側から、前記弾性部材を挟み込むことにより、前記弾性部材は、前記口縁に全周的に固定されることを特徴とするヘッドレスト。
【請求項2】
前記表裏方向は、前記車両の前後方向または左右方向である請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項3】
前記弾性部材は、表側弾性体と、前記表側弾性体の裏側に配置される裏側弾性体と、を有し、
前記表側弾性体と前記裏側弾性体とで、前記表裏方向両側から、前記錘を挟み込むことにより、前記錘は、前記表側弾性体と前記裏側弾性体との境界面に介装され、
前記錘と前記表側弾性体と前記裏側弾性体との間には、前記境界面に沿って、隙間が区画される請求項1または請求項2に記載のヘッドレスト。
【請求項4】
前記表側分割体と前記裏側分割体とで、前記表裏方向両側から、前記錘が埋設された前記弾性部材および前記ステーを挟み込むことにより、前記弾性部材は前記口縁に全周的に固定され、前記取付部は前記ステーに取り付けられる請求項3に記載のヘッドレスト。
【請求項5】
前記ステーは、上下方向に延在する一対の脚部と、一対の前記脚部の上端間を連結する連結部と、を有し、
前記取付部材は、一対の前記脚部の間に介装され、
一対の前記脚部と前記取付部材との間には、下側に開口する一対のスリット部が区画される請求項4に記載のヘッドレスト。
【請求項6】
さらに、前記錘の前記表裏方向の変位を規制する規制部を有する請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のヘッドレスト。
【請求項7】
前記規制部は、前記取付部材に配置され、前記開口部の前記表裏方向両側に、前記開口部を跨いで配置される一対の橋部材である請求項6に記載のヘッドレスト。
【請求項8】
前記規制部は、前記弾性部材を前記表裏方向両側から覆う一対のフィルム部材である請求項6に記載のヘッドレスト。
【請求項9】
前記ヘッドレスト本体は、樹脂発泡体製のクッション部材を有し、
前記規制部は、前記クッション部材の原料が前記弾性部材の表面および裏面に含浸することにより形成される、一対の含浸層である請求項6に記載のヘッドレスト。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載のヘッドレストを備えるシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイナミックダンパーを備えるヘッドレスト、当該ヘッドレストを備えるシートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のシートには、道路やエンジンなどから振動が伝達されやすい。振動を抑制するために、特許文献1に開示されているヘッドレストには、制振用のダイナミックダンパーが配置されている。ダイナミックダンパーは、樹脂インサートと、ウレタンマットと、錘と、を備えている。ウレタンマットは、ダイナミックダンパーのバネ系を構成している。錘は、ダイナミックダンパーのマス系を構成している。錘は、ウレタンマットに埋設されている。樹脂インサートには、車両の後側に開口する有底の凹部が形成されている。錘は、当該凹部に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−234104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のヘッドレストの場合、錘から見て前側に凹部の底部が配置されている。このため、錘が前側に変位しにくい。すなわち、錘の前後方向の変位が規制されやすい。そこで、本発明は、錘の変位が規制されにくいダイナミックダンパーを備えるヘッドレスト、シート、およびヘッドレストの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記課題を解決するため、本発明のヘッドレストは、ステーと、前記ステーに支持されるヘッドレスト本体と、前記ステーに取り付けられ前記ヘッドレスト本体に埋設されるダイナミックダンパーと、を備える車両用のヘッドレストであって、前記ダイナミックダンパーは、前記ステーに取り付けられる取付部と自身を表裏方向に貫通する開口部とを有する取付部材と、前記開口部の口縁に全周的に固定され前記開口部に配置される弾性部材と、前記弾性部材に埋設され前記開口部に配置される錘と、を備え、前記取付部材は、表側分割体と、前記表側分割体の裏側に配置される裏側分割体と、を有し、前記表側分割体と前記裏側分割体とで、前記表裏方向両側から、前記弾性部材を挟み込むことにより、前記弾性部材は、前記口縁に全周的に固定されることを特徴とする。ここで、「表裏方向」とは、取付部材の表裏方向、言い換えると表側分割体と裏側分割体とが並ぶ方向をいう。錘は、ダイナミックダンパーのマス系を構成している。弾性部材は、ダイナミックダンパーのバネ系を構成している。
【0006】
本発明のヘッドレストによると、表側分割体と裏側分割体とで、表裏方向両側から、弾性部材を挟み込むことにより、弾性部材を口縁に固定することができる。このため、ダイナミックダンパーの作製が容易である。また、弾性部材に対する錘の位置決めが容易である。また、弾性部材は、口縁に全周的に固定される。このため、シート制振時における錘の過剰な変位を規制することができる。
【0007】
また、開口部は、取付部材自身を表裏方向に貫通している。すなわち、開口部は、表裏方向両側共に取付部材によって塞がれていない。このため、開口部が取付部材によって塞がれている場合と比較して、シート制振時における錘の表裏方向の変位が規制されにくい。また、口縁は、表裏方向に対して交差する方向から弾性部材を固定している。このため、錘を、口縁を支点として表裏方向に優先的に変位させやすい。
【0008】
(2)上記(1)の構成において、前記表裏方向は、前記車両の前後方向または左右方向である構成とする方がよい。取付部材の表裏方向と車両の前後方向とを一致させると、シート制振時において、シートの前後方向の振動を優先的に抑制することができる。取付部材の表裏方向と車両の左右方向とを一致させると、シート制振時において、シートの左右方向の振動を優先的に抑制することができる。
【0009】
(3)上記(1)または(2)の構成において、前記弾性部材は、表側弾性体と、前記表側弾性体の裏側に配置される裏側弾性体と、を有し、前記表側弾性体と前記裏側弾性体とで、前記表裏方向両側から、前記錘を挟み込むことにより、前記錘は、前記表側弾性体と前記裏側弾性体との境界面に介装され、前記錘と前記表側弾性体と前記裏側弾性体との間には、前記境界面に沿って、隙間が区画される構成とする方がよい。
【0010】
本構成によると、錘に隣接して隙間を配置することができる。このため、錘を隙間方向に優先的に変位させやすい。例えば、本構成と上記(2)の構成とを組み合わせると共に、取付部材の表裏方向と車両の前後方向とを一致させる場合、錘の左右方向両側に隙間を配置することができる。このため、錘を、前後方向に加えて、左右方向に変位させやすい。
【0011】
また、例えば、本構成と上記(2)の構成とを組み合わせると共に、取付部材の表裏方向と車両の左右方向とを一致させる場合、錘の前後方向両側に隙間を配置することができる。このため、錘を、左右方向に加えて、前後方向に変位させやすい。
【0012】
(4)上記(3)の構成において、前記表側分割体と前記裏側分割体とで、前記表裏方向両側から、前記錘が埋設された前記弾性部材および前記ステーを挟み込むことにより、前記弾性部材は前記口縁に全周的に固定され、前記取付部は前記ステーに取り付けられる構成とする方がよい。
【0013】
本構成によると、弾性部材の固定作業と、取付部の取付作業と、を並行して行うことができる。このため、ダイナミックダンパーの作製が容易である。また、ステーに対するダイナミックダンパーの取付が容易である。
【0014】
(5)上記(4)の構成において、前記ステーは、上下方向に延在する一対の脚部と、一対の前記脚部の上端間を連結する連結部と、を有し、前記取付部材は、一対の前記脚部の間に介装され、一対の前記脚部と前記取付部材との間には、下側に開口する一対のスリット部が区画される構成とする方がよい。本構成によると、一対のスリット部の分だけ、一対の脚部の脚長を長くすることができる。
【0015】
(5−1)以下、上記(5)の構成のヘッドレストの製造方法について説明する。なお、当該ヘッドレストの前記ヘッドレスト本体は、一対の脚部孔と、アセンブリ孔と、が開設される袋状の表皮を有している。並びに、前記取付部材は、一対の前記スリット部の間に配置されるスリット対応部と、一対の前記スリット部の間に配置されないスリット非対応部と、を有している。
【0016】
当該ヘッドレストの製造方法は、上側から前記下側に向かう方向を第一挿入方向、前記第一挿入方向に対して逆の方向を第二挿入方向として、前記表側分割体と前記裏側分割体とで、前記表裏方向両側から、前記錘が埋設された前記弾性部材および前記ステーを挟み込むことにより、前記弾性部材を前記口縁に全周的に固定し、前記取付部を前記ステーに取り付け、前記ダイナミックダンパーと前記ステーとが合体したダンパーアセンブリを作製する合体工程と、前記取付部材を前記表皮の外側に残したまま、前記第一挿入方向に沿って、一対の前記脚部を、前記アセンブリ孔を介して前記表皮に挿入し、一対の前記脚部孔を介して前記表皮から突出させる第一挿入工程と、前記表皮の前記アセンブリ孔の口縁付近の部分を前記スリット非対応部に被せ、前記第二挿入方向に沿って、前記スリット対応部を、前記アセンブリ孔を介して前記表皮に挿入する第二挿入工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
ここで、「第一挿入方向」とは、シートバックが立っている状態における、上側から下側に向かう方向をいう。ヘッドレストがシートバックに装着される前の状態であれば、他の方向(例えば、前側から後側に向かう方向、その逆方向、前側から後側に向かう方向、その逆方向)が、「第一挿入方向」に対応する場合もある。
【0018】
当該ヘッドレストの製造方法によると、合体工程において、弾性部材の固定作業と、取付部の取付作業と、を並行して行うことができる。すなわち、ダイナミックダンパーの作製作業と、ステーに対するダイナミックダンパーの取付作業と、を並行して行うことができる。
【0019】
また、第一挿入工程においては、一対の脚部を、アセンブリ孔を介して表皮の内側に挿入後、一対の脚部孔を介して表皮の外側に突出させている。第一挿入工程後において、表皮におけるアセンブリ孔と一対の脚部孔との間の部分(一対の孔間部分)は、各々、スリット部に食い込んでいる。このため、スリット非対応部を小さくすることができる。よって、第二挿入工程において、表皮のアセンブリ孔の口縁付近の部分を、スリット非対応部に被せやすい。
【0020】
(6)上記(1)ないし(5)のいずれかの構成において、さらに、前記錘の前記表裏方向の変位を規制する規制部を有する構成とする方がよい。本構成によると、シート制振時における錘の過剰な変位を規制することができる。
【0021】
(7)上記(6)の構成において、前記規制部は、前記取付部材に配置され、前記開口部の前記表裏方向両側に、前記開口部を跨いで配置される一対の橋部材である構成とする方がよい。本構成によると、橋部材の脚長を調整することにより、錘の変位の規制長を簡単に調整することができる。
【0022】
(8)上記(6)の構成において、前記規制部は、前記弾性部材を前記表裏方向両側から覆う一対のフィルム部材である構成とする方がよい。本構成によると、フィルム部材の弛み代を調整することにより、錘の変位の規制長を簡単に調整することができる。
【0023】
(9)上記(6)の構成において、前記ヘッドレスト本体は、樹脂発泡体製のクッション部材を有し、前記規制部は、前記クッション部材の原料が前記弾性部材の表面および裏面に含浸することにより形成される、一対の含浸層である構成とする方がよい。本構成によると、クッション部材の発泡成形と同時に、一対の含浸層つまり規制部を配置することができる。
【0024】
(10)上記課題を解決するため、本発明のシートは、上記(1)ないし(9)のいずれかのヘッドレストを備えることを特徴とする。本発明のシートによると、上記(1)に記載したように、ダイナミックダンパーの作製が容易である。また、弾性部材に対する錘の位置決めが容易である。また、シート制振時における錘の過剰な変位を規制することができる。
【0025】
また、取付部材の開口部は、表裏方向両側共に取付部材によって塞がれていない。このため、シート制振時における錘の変位が規制されにくい。また、口縁は、表裏方向に対して交差する方向から弾性部材を固定している。このため、錘を、口縁を支点として表裏方向に優先的に変位させやすい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、錘の変位が規制されにくいダイナミックダンパーを備えるヘッドレスト、ヘッドレストを備えるシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第一実施形態のシートの斜視図である。
図2】同実施形態のヘッドレストのダンパーアセンブリの斜視図である。
図3】同ダンパーアセンブリの分解斜視図である。
図4図3のステー、錘、裏側弾性体、裏側分割体の拡大図である。
図5】同ダンパーアセンブリの前面図である。
図6図5のVI−VI断面図である。
図7図5のVII−VII断面図である。
図8図5のVIII−VIII断面図である。
図9】(a)は同ヘッドレストの製造方法の第一挿入工程の模式図である。(b)は同製造方法の第二挿入工程の模式図(その1)である。(c)は同製造方法の第二挿入工程の模式図(その2)である。(d)は同製造方法の第二挿入工程の模式図(その3)である。
図10】スリット部が設定されていないヘッドレストの製造方法の第二挿入工程の模式図を示す。
図11】第二実施形態のヘッドレストのダンパーアセンブリの斜視図である。
図12】第三実施形態のヘッドレストのダンパーアセンブリの前後方向断面図である。
図13】第四実施形態のヘッドレストのダンパーアセンブリの前後方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明のヘッドレスト、シート、およびヘッドレストの製造方法の実施の形態について説明する。
【0029】
<第一実施形態>
[シートの構成]
まず、本実施形態のシートの構成について説明する。以降に示す図においては、前後方向が本発明の「表裏方向」に、前側が本発明の「表側」に、後側が本発明の「裏側」に、各々対応している。左右方向は、車両の後側から見た場合を基準に定義されている。
【0030】
図1に、本実施形態のシートの斜視図を示す。図2に、本実施形態のヘッドレストのダンパーアセンブリの斜視図を示す。図3に、同ダンパーアセンブリの分解斜視図を示す。図4に、図3のステー、錘、裏側弾性体、裏側分割体の拡大図を示す。図5に、同ダンパーアセンブリの前面図を示す。図6に、図5のVI−VI断面図を示す。図7に、図5のVII−VII断面図を示す。図8に、図5のVIII−VIII断面図を示す。なお、図1においては、ダンパーアセンブリAを透過して示す。図2においては、錘80を透過して示す。図6図8においては、ヘッドレスト本体3のクッション部材31を、点線ハッチングで示す。
【0031】
図1に示すように、シート9は、シートバック90と、シートクッション91と、ヘッドレスト92と、を備えている。シートクッション91は、フレーム(図略)を介して、車両の床面(図略)に取り付けられている。シートバック90の下端は、シートクッション91の後端に取り付けられている。ヘッドレスト92は、シートバック90の上端に取り付けられている。車両走行時においては、車両の床面から、シートクッション91を介して、シートバック90およびヘッドレスト92に、振動が伝達される。
【0032】
[ヘッドレストの構成]
次に、本実施形態のヘッドレストの構成について説明する。図1図3に示すように、ヘッドレスト92は、ダンパーアセンブリAと、ヘッドレスト本体3と、を備えている。ヘッドレスト本体3は、表皮30とクッション部材(図略)とを備えている。表皮30は、樹脂であって、袋状を呈している。クッション部材は、弾力性を有するウレタン発泡体(モールドウレタン)製である。クッション部材は、表皮30の内部に配置されている。
【0033】
ダンパーアセンブリAは、ステー2とダイナミックダンパー4とを備えている。図1に示す状態(シートバック90が立っている状態(例えば、ヘッドレスト92が垂直になるように、シートバック90が立っている状態))において、ステー2は、全体として、下側に開口するC字状を呈している。ステー2は、金属管製である。図3に示すように、ステー2は、左右一対の脚部20と、連結部21と、を備えている。脚部20は、上下方向に延在している。脚部20の下端は、シートバック90のステー取付孔900に、収容されている。連結部21は、左右方向に延在している。連結部21は、左右一対の脚部20の上端間を連結している。
【0034】
ダイナミックダンパー4は、取付部材6と、弾性部材7と、錘80と、を備えている。図3に示すように、弾性部材7は、表側弾性体7Fと裏側弾性体7Rとを備えている。図4に示すように、裏側弾性体7Rは、弾力性を有するウレタン発泡体(スラブウレタン)製であって、矩形板状を呈している。図6図8に示すように、裏側弾性体7Rの後面(裏面)には、後述する裏側分割体6Rの裏側開口部61Rの裏側口縁610Rが、圧接している。図6図8に太線で示すように、裏側弾性体7Rの後面には、含浸層70が形成されている。
【0035】
表側弾性体7Fは、裏側弾性体7Rの前側に配置されている。表側弾性体7Fの構成と、裏側弾性体7Rの構成と、は同じである。図6図8に示すように、表側弾性体7Fの前面(表面)には、後述する表側分割体6Fの表側開口部61Fの表側口縁610Fが、圧接している。図6図8に太線で示すように、表側弾性体7Fの前面には、含浸層70が形成されている。
【0036】
錘80は、金属製であって、上下方向に延在する円柱状を呈している。図3に示すように、錘80は、表側弾性体7Fの後面と、裏側弾性体7Rの前面と、の間に介装されている。すなわち、錘80は、弾性部材7に埋設されている。図8に示すように、錘80の周囲には、表側弾性体7Fの後面と、裏側弾性体7Rの前面と、の境界面fに沿って、隙間が区画されている。具体的には、錘80の左右方向(本発明の「表裏方向」に対して直交する方向であって錘80の直径方向)両側には、左右一対の隙間B1が区画されている。
【0037】
取付部材6は、表側分割体6Fと裏側分割体6Rとを備えている。また、図5に示すように、取付部材6は、取付部60と開口部61とを備えている。図4図6図8に示すように、裏側分割体6Rは、樹脂製であって、矩形枠体状を呈している。また、裏側分割体6Rは、前側に開口する浅底のトレイ状を呈している。裏側分割体6Rは、弾性部材7の後側に配置されている。裏側分割体6Rは、裏側取付部60Rと、裏側開口部61Rと、一対の裏側係合部62Rと、一対の裏側被係合部63Rと、を備えている。
【0038】
裏側取付部60Rは、裏側分割体6Rの前面(内面)に配置されている。図5に示すように、裏側取付部60Rは、複数の取付片600を備えている。取付片600は、板状を呈している。複数の取付片600は、ステー2の一対の脚部20の上端部、連結部21に対応して配置されている。図6に示すように、取付片600は、取付凹部600aを備えている。取付凹部600aの底面は、一対の脚部20の上端部、連結部21の外周面と型対称の、弧面状を呈している。
【0039】
裏側開口部61Rは、矩形状を呈している。図4に示すように、裏側開口部61Rは、裏側分割体6Rを、前後方向に貫通している。裏側開口部61Rの裏側口縁610Rは、前側に突出している。裏側口縁610Rは、無端環状の矩形枠状を呈している。
【0040】
一対の裏側被係合部63Rは、裏側分割体6Rの前面に配置されている。図5に示すように、一対の裏側被係合部63Rのうち、一方の裏側被係合部63Rは、裏側開口部61Rの右下隅付近に配置されている。一対の裏側被係合部63Rのうち、他方の裏側被係合部63Rは、裏側開口部61Rの左上隅付近に配置されている。すなわち、一対の裏側被係合部63Rは、矩形状の裏側開口部61Rの対角線位置に配置されている。図4に示すように、裏側被係合部63Rは、筒状を呈している。図7に示すように、裏側被係合部63Rの外壁(裏側開口部61Rの右下隅付近の裏側被係合部63Rの場合は下壁、裏側開口部61Rの左上隅付近の裏側被係合部63Rの場合は左壁)には、被係合開口部630が開設されている。
【0041】
一対の裏側係合部62Rは、裏側分割体6Rの前面に配置されている。図5に示すように、一対の裏側係合部62Rのうち、一方の裏側係合部62Rは、裏側開口部61Rの右上隅付近に配置されている。一対の裏側係合部62Rのうち、他方の裏側係合部62Rは、裏側開口部61Rの左下隅付近に配置されている。すなわち、一対の裏側係合部62Rは、矩形状の裏側開口部61Rの対角線位置に配置されている。図7に示すように、裏側係合部62Rは、爪部620と、一対の被ガイド部621と、を備えている。爪部620は、前側に突設されている。爪部620の前端(先端)には、返し620aが形成されている。返し620aは、外側(裏側開口部61Rの右上隅付近の裏側係合部62Rの場合は右側、裏側開口部61Rの左下隅付近の裏側係合部62Rの場合は下側)に張り出している。一対の被ガイド部621は、爪部620の内側に配置されている。被ガイド部621は、後側(爪部620の根本側)から前側(爪部620の先端側)に向かって尖る三角形板状を呈している。
【0042】
図3に示すように、表側分割体6Fの構成と、裏側分割体6Rの構成と、は同じである。表側分割体6Fは、裏側分割体6Rを、上下軸を中心に、水平方向に180°反転させた向きに配置されている。
【0043】
図5に示すように、取付部60は、表側分割体6Fの表側取付部60Fと、裏側分割体6Rの裏側取付部60Rと、により構成されている。取付部60は、ステー2の左右一対の脚部20の上端部、連結部21に対応して配置されている。
【0044】
図5に示すように、取付部材6は、スリット対応部A1と、スリット非対応部A2と、を備えている。スリット対応部A1は、スリット非対応部A2の下側に配置されている。スリット対応部A1と左右一対の脚部20との間には、左右一対のスリット部C1が配置されている。スリット部C1は、上下方向に延在している。スリット部C1は、下側に開口している。
【0045】
図5に示すように、開口部61は、表側分割体6Fの表側開口部61Fと、裏側分割体6Rの裏側開口部61Rと、により構成されている。開口部61は、前後方向に、取付部材6を貫通している。口縁610は、表側口縁610Fと裏側口縁610Rとにより構成されている。
【0046】
[ヘッドレストの製造方法]
次に、本実施形態のヘッドレストの製造方法について説明する。図9(a)に、本実施形態のヘッドレストの製造方法の第一挿入工程の模式図を示す。図9(b)に、同製造方法の第二挿入工程の模式図(その1)を示す。図9(c)に、同製造方法の第二挿入工程の模式図(その2)を示す。図9(d)に、同製造方法の第二挿入工程の模式図(その3)を示す。なお、ダンパーアセンブリAにおいて、表皮30に収容されている部分を、点線で示す。本実施形態のヘッドレストの製造方法は、合体工程と、第一挿入工程と、第二挿入工程と、発泡成形工程と、を有している。
【0047】
(合体工程)
合体工程においては、ダイナミックダンパー4を作製する。並びに、ダイナミックダンパー4をステー2に取り付ける。すなわち、ダンパーアセンブリAを作製する。まず、図3に示すように、表側分割体6Fと裏側分割体6Rとの間に、ステー2、表側弾性体7F、錘80、裏側弾性体7Rを配置する。
【0048】
次に、図4に示すように、表側係合部62Fを裏側被係合部63Rに係合させる。すなわち、表側係合部62Fを裏側被係合部63Rに挿入する。この際、一対の被ガイド部621は、裏側被係合部63Rの内面にガイドされる。図7に示すように、爪部620の返し620aは、被係合開口部630の口縁に、係止される。同様に、裏側係合部62Rを表側被係合部63Fに係合させる。このように、爪嵌合により、表側分割体6Fと裏側分割体6Rとを合体させる。
【0049】
図5に示すように、合体の際、錘80が埋設された弾性部材7は、表側口縁610Fと裏側口縁610Rとにより、前後方向両側から挟持される。すなわち、弾性部材7は、口縁610により全周的に固定される。
【0050】
また、図5に示すように、合体の際、ステー2は、表側取付部60Fと裏側取付部60Rとにより、前後方向両側から挟持される。すなわち、図6に示すように、ステー2の外周面は、表側取付部60Fの取付片600の取付凹部600aおよび裏側取付部60Rの取付片600の取付凹部600aに、収容される。
【0051】
このように、本工程においては、表側分割体6Fと裏側分割体6Rとを爪嵌合させることにより、ダイナミックダンパー4を作製する。同時に、ダイナミックダンパー4をステー2に取り付ける。すなわち、ダンパーアセンブリAを作製する。
【0052】
(第一挿入工程)
図9(a)に示すように、表皮30には、一対の脚部孔300とアセンブリ孔301とが開設されている。一対の脚部孔300は、左右方向に並んでいる。脚部孔300は、真円状を呈している。アセンブリ孔301は、一対の脚部孔300に並置されている。アセンブリ孔301は、左右方向に延在する長孔状を呈している。スリット非対応部A2の左右方向長さをα、スリット非対応部A2の上下方向長さをβ、アセンブリ孔301の左右方向長さをγとして、((α+β)/γ)<1.3を満たすように、各寸法が設定されている。
【0053】
本工程においては、図9(a)に矢印Y1(第一挿入方向)で示すように、一対の脚部20を、アセンブリ孔301を介して、一対の脚部孔300に挿入する。図9(b)に示すように、取付部材6は表皮30に収容されない。第一挿入工程後において、表皮30におけるアセンブリ孔301と一対の脚部孔300との間の部分(一対の孔間部分D1)は、各々、スリット部C1に食い込んでいる。このため、第一挿入工程後において、一対の脚部孔300よりも上側に、スリット非対応部A2がはみ出している。
【0054】
(第二挿入工程)
本工程においては、まず、図9(b)に矢印Y2で示すように、表皮30のアセンブリ孔301の口縁付近の部分(詳しくは、一対の脚部孔300が配置されていない側(上側)の部分)を持ち上げて、スリット非対応部A2に被せる。次に、図9(c)に矢印Y3(第二挿入方向)で示すように、一対の脚部孔300を介して、一対の脚部20を、所定長さだけ、表皮30に再挿入する。この際、スリット対応部A1も、表皮30に挿入される。このようにして、ダンパーアセンブリAを、表皮30の内部の所定位置にセットする。
【0055】
(発泡成形工程)
本工程においては、アセンブリ孔301を介して、クッション部材31の原料(ポリイソシアネート成分、ポリオール成分などを含む)を、表皮30の内部に注入する。表皮30の内部で原料が発泡することにより、クッション部材31が形成される。また、原料が表側弾性体7F、裏側弾性体7Rに含浸することにより、図6図8に示す含浸層70が形成される。
【0056】
[作用効果]
次に、本実施形態のヘッドレスト、シート、およびヘッドレストの製造方法の作用効果について説明する。図3に示すように、合体工程において、表側分割体6Fと裏側分割体6Rとで前後方向両側から弾性部材7を挟み込むことにより、弾性部材7は口縁610に固定される。このため、ダイナミックダンパー4の作製が容易である。また、弾性部材7に対する錘80の位置決めが容易である。また、合体工程において、弾性部材7は、口縁610(表側口縁610F、裏側口縁610R)に、全周的に無端環状に固定される。このため、シート9制振時における錘80の過剰な変位を規制することができる。
【0057】
また、図8に示すように、開口部61は、取付部材6自身を前後方向に貫通している。すなわち、開口部61は、前後方向両側共に取付部材6によって塞がれていない。このため、開口部61が取付部材6によって塞がれている場合と比較して、シート9制振時における錘80の前後方向の変位が規制されにくい。また、口縁610は、上下左右方向から弾性部材7を固定している。このため、錘80を、口縁610を支点として前後方向に優先的に変位させやすい。
【0058】
また、図3に示すように、合体工程においては、表側分割体6Fと裏側分割体6Rとで、前後方向両側から、弾性部材7のみならずステー2を挟み込むことにより、弾性部材7が口縁610に固定されると共に、取付部60がステー2に取り付けられる。このため、ダイナミックダンパー4の作製作業と、ステー2に対するダイナミックダンパー4の取付作業と、を並行して行うことができる。
【0059】
また、図1に示すように、取付部材6の表裏方向と、車両の前後方向と、は一致している。このため、シート9制振時において、シート9の前後方向の振動を優先的に抑制することができる。
【0060】
また、図8に示すように、合体工程において、表側弾性体7Fと裏側弾性体7Rとで、前後方向両側から、錘80を挟み込むことにより、錘80は、表側弾性体7Fと裏側弾性体7Rとの境界面fに介装される。錘80と表側弾性体7Fと裏側弾性体7Rとの間には、境界面fに沿って、左右一対の隙間B1が区画される。このため、錘80を、前後方向に加えて、左右方向に変位させやすい。
【0061】
また、図1図8に示すように、発泡成形工程において、クッション部材31の液状の原料を表皮30の内部に注入する際に、原料は、表側弾性体7Fの前面、および裏側弾性体7Rの後面に含浸する。このため、弾性部材7の前後両面に一対の含浸層70を形成することができる。したがって、シート9制振時における錘80の過剰な変位を規制することができる。また、クッション部材31の発泡成形と同時に、一対の含浸層70つまり規制部を配置することができる。
【0062】
ここで、仮に、取付部材6の取付部60が取付部材6の下端まで延在している場合、すなわち図5に示す一対のスリット部C1が設定されていない場合を想定する。図10に、スリット部が設定されていないヘッドレストの製造方法の第二挿入工程の模式図を示す。なお、図10は、図9(b)に対応している。図9(b)と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0063】
図10に示すように、この場合、第一挿入工程後において、一対の脚部孔300よりも上側に、取付部材6全体(図9(b)において、スリット対応部A1+スリット非対応部A2に相当する。)がはみ出すことになる。したがって、矢印Y2で示すように、第二挿入工程において、アセンブリ孔301を介して、取付部材6全体を表皮30の内部に収容する必要がある。具体的には、表皮30のアセンブリ孔301の口縁付近の部分を持ち上げて、取付部材6全体に被せる必要がある。しかしながら、表皮30を取付部材6全体に被せるためには、アセンブリ孔301の開口面積を拡張する必要がある。このため、例えば、「アセンブリ孔301と一対の脚部孔300とを連通させるスリットを設ける」などの対策が必要になる。
【0064】
これに対して、図5に示すように、本実施形態のダンパーアセンブリAの一対の脚部20と取付部材6との間には、下側に開口する一対のスリット部C1が設定されている。図9(b)に示すように、第一挿入工程後において、一対の孔間部分D1は、各々、スリット部C1に食い込んでいる。このため、第一挿入工程後において、一対の脚部孔300よりも上側に、取付部材6全体ではなく、スリット非対応部A2だけがはみ出している。
【0065】
このように、一対のスリット部C1が設定されていると、第一挿入工程後において、一対の脚部孔300よりも上側にはみ出す部分を、小さくすることができる。したがって、第二挿入工程において、図9(b)に矢印Y2で示すように、表皮30のうちアセンブリ孔301の口縁付近の部分を持ち上げてスリット非対応部A2に被せるだけで、スリット非対応部A2を表皮30の内部に収容することができる。
【0066】
並びに、図9(a)に示すように、スリット非対応部A2の左右方向長さをα、スリット非対応部A2の上下方向長さをβ、アセンブリ孔301の左右方向長さをγとして、((α+β)/γ)<1.3を満たすように、各寸法が設定されている。このため、スリット非対応部A2に対する、アセンブリ孔301の開口面積を、大きくすることができる。したがって、第二挿入工程において、図9(b)に矢印Y2で示す作業(表皮30のうちアセンブリ孔301の口縁付近の部分を持ち上げてスリット非対応部A2に被せる作業)を、簡単に行うことができる。
【0067】
また、図4に示すように、合体工程においては、表側係合部62Fを裏側被係合部63Rに係合させている。並びに、裏側係合部62Rを表側被係合部63Fに係合させている。すなわち、爪嵌合により、表側分割体6Fと裏側分割体6Rとを合体させている。このため、ワンタッチで、ダイナミックダンパー4の作製作業と、ステー2に対するダイナミックダンパー4の取付作業と、を行うことができる。
【0068】
また、図7に示すように、合体工程において、表側係合部62Fを裏側被係合部63Rに挿入する際、一対の被ガイド部621は、裏側被係合部63Rの内面にガイドされる。このため、表側係合部62Fと裏側被係合部63Rとの位置合わせが容易である。同様に、裏側係合部62Rを表側被係合部63Fに挿入する際、一対の被ガイド部621は、表側被係合部63Fの内面にガイドされる。このため、裏側係合部62Rと表側被係合部63Fとの位置合わせが容易である。
【0069】
また、図3に示すように、表側分割体6Fの構成と、裏側分割体6Rの構成と、は同じである。このため、同一の分割体を、表側分割体6Fとしても、裏側分割体6Rとしても、用いることができる。すなわち、分割体を共用化することができる。
【0070】
また、ダイナミックダンパー4の弾性部材7は、ヘッドレスト本体3のクッション部材よりも、柔軟である。このため、錘80の変位を弾性部材7が規制しにくい。一方、錘80の過剰な変位をクッション部材31が規制しやすい。
【0071】
また、図5に示すように、本実施形態のダンパーアセンブリAには、一対のスリット部C1が設定されている。このため、右側または左側から見た場合の、脚部20の延在方向と、スリット対応部A1の延在方向と、を相違させることができる。したがって、ダイナミックダンパー4を、ヘッドレスト92の所望の位置に埋設することができる。
【0072】
また、図7に示すように、弾性部材7は、表側口縁610Fと裏側口縁610Rとにより、前後方向両側から弾性的に圧縮されている。このため、弾性部材7は、取付部材6の口縁610付近を、前後方向外側に付勢している。したがって、表側係合部62Fの返し620aを、裏側被係合部63Rの被係合開口部630の口縁に、しっかりと係止することができる。同様に、裏側係合部62Rの返し620aを、表側被係合部63Fの被係合開口部630の口縁に、しっかりと係止することができる。また、円柱状の錘80は安価である。このため、ダイナミックダンパー4の作製コストを削減することができる。
【0073】
また、取付部材6は、樹脂製の剛体である。このため、取付部60を一対の脚部20の上端部、連結部21に対応して配置するだけで、ダイナミックダンパー4をステー2にしっかりと取り付けることができる。したがって、図5に示すように、一対のスリット部C1を確保しやすい。
【0074】
<第二実施形態>
本実施形態と、第一実施形態との相違点は、ダイナミックダンパーに橋部材が配置されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。図11に、本実施形態のヘッドレストのダンパーアセンブリの斜視図を示す。なお、図2と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0075】
図11に示すように、ダイナミックダンパー4の表側分割体6Fには、表側開口部61Fを跨いで、橋部材81が配置されている。橋部材81は、帯状を呈している。橋部材81は、表側開口部61Fの前側に配置されている。橋部材81は、表側開口部61Fの上下方向中央部分(前側から見て錘80と重複する部分)を、左右方向に横切っている。なお、裏側分割体6Rの裏側開口部の後側にも、同様の橋部材81が配置されている。
【0076】
本実施形態のヘッドレストと、第一実施形態のヘッドレストとは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。取付部材6の開口部の前後方向両側には、一対の橋部材81が配置されている。このため、シート9制振時における錘80の過剰な変位を規制することができる。また、橋部材81の脚長L1(詳しくは、前側の橋部材81の場合、表側分割体6Fの前面から橋部材81の橋本体の後面までの前後方向長さ)を調整することにより、錘80の変位の規制長を簡単に調整することができる。
【0077】
<第三実施形態>
本実施形態と、第一実施形態との相違点は、ダイナミックダンパーに一対のフィルム部材が配置されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。図12に、本実施形態のヘッドレストのダンパーアセンブリの前後方向断面図を示す。なお、図8と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0078】
図12に示すように、弾性部材7の前後方向両側には、一対のフィルム部材82が配置されている。フィルム部材82は樹脂製である。前側のフィルム部材82は表側弾性体7Fの前面全体を覆っている。後側のフィルム部材82は裏側弾性体7Rの後面全体を覆っている。
【0079】
本実施形態のヘッドレストと、第一実施形態のヘッドレストとは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。弾性部材7の前後方向両側には、一対のフィルム部材82が配置されている。このため、シート9制振時における錘80の過剰な変位を規制することができる。また、フィルム部材82の弛み代(弾性部材7とフィルム部材82との間の隙間の前後方向長さ)を調整することにより、錘80の変位の規制長を簡単に調整することができる。また、フィルム部材82は、クッション部材31の液状の原料が表側弾性体7F、裏側弾性体7Rに含浸するのを、抑制することができる。
【0080】
<第四実施形態>
本実施形態と、第一実施形態との相違点は、表側弾性体と裏側弾性体とが一体化されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。図13に、本実施形態のヘッドレストのダンパーアセンブリの前後方向断面図を示す。なお、図8と対応する部位については、同じ符号で示す。図13に示すように、表側弾性体7Fと裏側弾性体7Rとは、単一の弾性体が折り重ねられることにより、構成されている。すなわち、弾性部材7は、一体物である。
【0081】
本実施形態のヘッドレストと、第一実施形態のヘッドレストとは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。弾性部材7は一体物である。このため、ダイナミックダンパー4の部品点数が少なくなる。
【0082】
<その他>
以上、本発明のヘッドレスト、シート、およびヘッドレストの製造方法の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0083】
上記実施形態においては、図4に示すように、合体工程において、表側分割体6Fと裏側分割体6Rとを爪嵌合させることにより、ダイナミックダンパー4を作製した。しかしながら、表側分割体6Fと裏側分割体6Rとの合体方法は特に限定しない。例えば、クリップ、ネジ、接着剤、接着テープ、溶着などの方法により、表側分割体6Fと裏側分割体6Rとを合体させてもよい。
【0084】
また、図3に示す表側分割体6Fと裏側分割体6Rとは、完全に別体でなくてもよい。例えば、可撓性を有するヒンジなどにより、表側分割体6Fと裏側分割体6Rとを連結してもよい。また、表側分割体6Fと裏側分割体6Rとは、同一形状に限らず、それぞれ異なる形状であってもよい。
【0085】
また、図3に示す錘80の延在方向は特に限定しない。例えば、延在方向は左右方向であってもよい。また、錘80の形状は特に限定しない。例えば、球状、角柱状などであってもよい。
【0086】
また、図5に示す開口部61の貫通方向、つまり取付部材6の表裏方向は、左右方向であってもよい。こうすると、錘80を、左右方向に優先的に変位させやすい。また、シート9の前後方向に過度の振動が発生した場合、取付部材6の取付部60(開口部61の口縁610)が規制部となって、錘80の前後方向の過度の変位を規制することができる。また、図12に示すフィルム部材82は、弾性部材7と予め一体化されていてもよい。
【0087】
取付部材6、錘80、弾性部材7、橋部材81、フィルム部材82の材質は特に限定しない。例えば、取付部材6、橋部材81は、樹脂製や金属製、フィルム部材82は樹脂製、錘80は金属製や樹脂製、弾性部材7は樹脂発泡体製であってもよい。取付部60の構成は特に限定しない。複数の取付片600の代わりに、ステー2の一対の脚部20の上端部、連結部21に対応してC字状に連なる凹部を配置してもよい。
【符号の説明】
【0088】
2:ステー 20:脚部 21:連結部 3:ヘッドレスト本体 30:表皮 300:脚部孔 301:アセンブリ孔 31:クッション部材 4:ダイナミックダンパー 6:取付部材 60:取付部 61:開口部 600:取付片 600a:取付凹部 610:口縁 620:爪部 620a:返し 621:被ガイド部 630:被係合開口部 6F:表側分割体 6R:裏側分割体 60F:表側取付部 60R:裏側取付部 61F:表側開口部 61R:裏側開口部 610F:表側口縁 610R:裏側口縁 62F:表側係合部 62R:裏側係合部 63F:表側被係合部 63R:裏側被係合部 7:弾性部材 70:含浸層 7F:表側弾性体 7R:裏側弾性体 80:錘 81:橋部材 82:フィルム部材 9:シート 90:シートバック 91:シートクッション 92:ヘッドレスト 900:ステー取付孔 A:ダンパーアセンブリ A1:スリット対応部 A2:スリット非対応部 B1:隙間 C1:スリット部 D1:孔間部分 L1:脚長 Y1〜Y3:矢印 f:境界面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13