(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6516243
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】ピエゾ抵抗式ポジションセンサを備えたシステム
(51)【国際特許分類】
G02B 26/08 20060101AFI20190513BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20190513BHJP
【FI】
G02B26/08 E
B81B3/00
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-504174(P2017-504174)
(86)(22)【出願日】2015年7月23日
(65)【公表番号】特表2017-524983(P2017-524983A)
(43)【公表日】2017年8月31日
(86)【国際出願番号】EP2015066925
(87)【国際公開番号】WO2016012559
(87)【国際公開日】20160128
【審査請求日】2017年8月15日
(31)【優先権主張番号】14178608.7
(32)【優先日】2014年7月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518006075
【氏名又は名称】トルンプフ シュヴァイツ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Schweiz AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ファビオ ユッツィ
(72)【発明者】
【氏名】ダラ バヤト
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン ラニ
【審査官】
越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−326205(JP,A)
【文献】
特開2005−326465(JP,A)
【文献】
特開2002−036198(JP,A)
【文献】
特開2009−246028(JP,A)
【文献】
特開2006−242757(JP,A)
【文献】
特開平10−073506(JP,A)
【文献】
特開2007−025608(JP,A)
【文献】
特開2010−288249(JP,A)
【文献】
特開2009−180967(JP,A)
【文献】
特開2008−040460(JP,A)
【文献】
特開2012−068309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/00−26/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(4)と、該基板(4)に少なくとも1つの固体ジョイント(6,6’,6’’)を介して結合されていると共に前記基板(4)に対して相対運動可能なプラットホーム(5)と、1つの電気的なブリッジを形成するように互いに接続された複数のピエゾ抵抗素子(10,10’,14,15,16)を有する少なくとも1つのポジションセンサとを備えたシステム(1)であって、前記少なくとも1つの固体ジョイント(6)に1つのピエゾ抵抗素子(10,10’)が配置されているシステムにおいて、
前記基板(4)又は前記プラットホーム(5)に少なくとも1つのピエゾ抵抗素子(14,15,16)が配置されており、
前記固体ジョイント(6)にはピエゾ抵抗素子(10,10’)が1つだけ配置されており、且つ前記基板(4)又は前記プラットホーム(5)の変形不能部分には3つのピエゾ抵抗素子(14,15,16)が配置されていると共に、各ピエゾ抵抗素子が互いに接続されて1つのホイートストンブリッジ(17)を形成している、ことを特徴とする、システム。
【請求項2】
少なくとも1つのピエゾ抵抗素子(10,10’,14,15,16)は、ドープされた結晶質又は多結晶質の半導体材料から形成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
少なくとも1つのピエゾ抵抗素子(10)は、U字形に形成されている、請求項1又は2記載のシステム。
【請求項4】
少なくとも1つのピエゾ抵抗素子(10,10’,14,15,16)は、非透光性の層により被覆されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項5】
少なくとも1つの温度センサが、前記基板(4)又は前記プラットホーム(5)に配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項6】
整数2で割り切れる数の固体ジョイント(6,6’,6’’)と、前記プラットホームの周りに均等に配置された2つのポジションセンサとが設けられている、請求項1から5までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項7】
整数4で割り切れる数の固体ジョイント(6,6’,6’’)と、前記プラットホームの周りに均等に配置された4つのポジションセンサとが設けられている、請求項6記載のシステム。
【請求項8】
各前記ピエゾ抵抗素子(10,10’)は、同形式の各前記固体ジョイント(6)においてそれぞれ同じ位置に配置されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項9】
前記ピエゾ抵抗素子(10,10’)は、前記各固体ジョイント(6)のプラットホーム側又は基板側に配置されている、請求項1から8までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項10】
前記プラットホーム(5)に配置された1つのピエゾ抵抗素子(14,15,16)に通じる少なくとも1つの接続導線(18,19,20,21)が、1つの固体ジョイント(6’,6’’)上に延びている、請求項1から9までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項11】
1つの固体ジョイント(6’,6’’)に少なくとも2つの接続導線(18〜21)が配置されている、請求項1から10までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項12】
1つの固体ジョイント(6)に配置された1つのピエゾ抵抗素子(10’)に通じる1つの接続導線(28)は、隣の固体ジョイント(6’,6’’)及び前記プラットホーム(5)又は前記基板(4)を介して案内されている、請求項1から11までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項13】
前記プラットホーム(5)上にはミラー(7)が配置されている、請求項1から12までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項14】
前記プラットホーム(5)の下には、磁石(9)又は磁化可能な材料が配置されており、該磁石(9)又は該磁化可能な材料の領域には、少なくとも1つのコイル(100)が設けられている、請求項1から13までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項15】
前記ポジションセンサの信号を測定及び評価するための測定装置と評価装置とが設けられている、請求項1から14までのいずれか1項記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板と、該基板に少なくとも1つの固体ジョイントを介して結合されていると共に前記基板に対して相対運動可能なプラットホームと、1つの電気的なブリッジを形成するように互いに接続された複数のピエゾ抵抗素子を有する少なくとも1つのポジションセンサとを備えたシステムであって、前記少なくとも1つの固体ジョイントに1つのピエゾ抵抗素子が配置されているものに関する。
【0002】
レーザ材料加工では、より小型でよりコンパクトなシステムが常に求められる。スペースを節約するための1つの可能性は、MEMS技術(Microelectro mechanical systems)に基づいたミラーを1つしか有さない、複数のスキャナの使用にある。典型的には、このミラーは、大型の変向ミラー用に複数が配列されて使用されるか、又は簡単な変向システムに複数が取り付けられる。この場合、これらのミラーは大抵1つの軸線を中心として傾く必要しかなく、小さな変位角を有している。レーザ加工用に十分な作業フィールドをカバーするためには、使用ミラーが10°以上の変向角を達成する必要があり、2つの空間方向に変位可能でなければならない。更にこれらのミラーは、所定の時点に所定の変位角に達する必要があり、延いては極めて精密に制御されねばならない。ミラーの変位は固体ジョイントを介して行われるので、位置決め時に考慮せねばならない、第3の空間方向での振動問題が頻繁に生じる。ミラーを精密制御するためには、正確且つ迅速な位置決めが3つ全ての空間方向において必要である。
【0003】
前記のようなポジションセンサを備えたシステムは、例えば米国特許第8559086号明細書(US 8559086 B2)から公知である。このシステムでは、ピエゾ抵抗式センサ全体、即ち4つのピエゾ抵抗素子が、1つの固体ジョイントに配置されているため、固体ジョイント自体を比較的大きく形成せねばならない。このシステムは極めて剛性であるため、大きな変位(+/−10°)は限定的にしか可能でない。
【0004】
固体ジョイントとは、2つの剛体領域間の相対運動(回動)を曲げにより可能にする構成部材の所定領域を意味するものである。固体ジョイントは、ばね部材として形成されていることが多い。
【0005】
本発明の課題は、冒頭で述べたシステムを、より正確な位置検出が可能であるように改良することにある。
【0006】
この課題は本発明に基づき、基板と、該基板に少なくとも1つの固体ジョイントを介して結合されていると共に前記基板に対して相対運動可能なプラットホームと、1つの電気的なブリッジを形成するように互いに接続された複数のピエゾ抵抗素子を有する少なくとも1つのポジションセンサとを備えたシステムであって、前記少なくとも1つの固体ジョイントに1つのピエゾ抵抗素子が配置されており、且つ前記基板又は前記プラットホームに少なくとも1つのピエゾ抵抗素子が配置されているシステムによって解決される。つまり本発明では、ポジションセンサ全体が固体ジョイントに配置されているのではなく、ポジションセンサの一部である少なくとも1つのピエゾ抵抗素子は、プラットホーム又は基板、つまり剛体領域に配置されていることが想定されている。これにより、固体ジョイントにおけるポジションセンサの所要スペースを減らすことができ、その結果、固体ジョイントをより小さく形成することができる。更に、単一のピエゾ抵抗素子が、固体ジョイントのほぼ全幅を占めている、ということが可能である。これによりピエゾ抵抗素子を、ノイズが小さく保たれる大きさに形成することができる。1つのポジションセンサ、好適には全てのポジションセンサのピエゾ抵抗素子は、有利にはそれぞれ同一(の形)に形成されている。
【0007】
特に好適なのは、固体ジョイントにはピエゾ抵抗素子が1つだけ配置されており、且つ剛体領域には3つのピエゾ抵抗素子が配置されていると共に、各ピエゾ抵抗素子が互いに接続されて1つのホイートストンブリッジを形成している場合である。つまり、3つのピエゾ抵抗式の抵抗器が、構造体の変形不能部分に取り付けられている。プラットホームが動くと固体ジョイントが変形し、これにより機械的な応力の変化延いてはピエゾ抵抗素子の変化がもたらされた結果として、抵抗が変化する。これにより、ホイートストンブリッジの出力信号も変化することになる。この出力信号に基づいて、位置変化を求めることができる。出力信号(所定電圧)は、ホイートストンブリッジの2つのコンタクトにおいて形成され得、ブリッジの別の2つのコンタクトには一定の電流が供給される、又は別の2つのコンタクトには一定の電圧が印加される。
【0008】
少なくとも1つのピエゾ抵抗素子は、ドープされた結晶質又は多結晶質の半導体材料から形成されていてよい。これによりピエゾ抵抗素子を、局所的なドーピング、例えば結晶質のシリコンのp型ドーピングにより形成することが可能である。択一的にピエゾ抵抗素子は、多結晶質の半導体材料、特に多結晶質のシリコンのドーピングにより製造され得る。この場合は、絶縁層上に多結晶質の層が薄膜技術により被着され且つドーピングされてよい。多結晶質の材料から成るピエゾ抵抗素子の利点は、これらが比較的小さな光依存性を有しているという点にある。
【0009】
評価電子機器に対するピエゾ抵抗素子の接続は、金属層を介して行われてよい。オーミックな接触抵抗を得るために、ピエゾ抵抗素子と金属との間のコンタクトのところで半導体材料はより強力にドーピングされてよい。ピエゾ抵抗素子のドーピングは、半導体材料のエッチングステップの前に行われてよい。
【0010】
半導体結晶において、ピエゾ抵抗係数は方向に依存している。よってピエゾ抵抗素子は、好適には互いに90°の角度を有するように置かれており、これにより、個々の素子のピエゾ抵抗係数が近似する若しくは可能な限り等しくなるようになっている。
【0011】
少なくとも1つのピエゾ抵抗素子は、U字形に形成されていてよい。U字の2つのアーム間の切込みはエッチングにより形成されてよく、これにより、非ドープ領域を介した短絡、又はドープされた領域の極度に広範な拡散による短絡を回避することができる。U字形のピエゾ抵抗素子の位置において、固体ジョイントは二分されていてよい。
【0012】
少なくとも1つのピエゾ抵抗素子は、非透光性の層により被覆されていてよい。この非透光性の層は、例えば光線、特にレーザ光を反射する金属層であってよいか、又は例えばレーザの光線を吸収する別の層であってよい。これにより、ポジションセンサの光に対する感度が低下されるか若しくは光の影響がほぼ排除されることになる。また、ポジションセンサの加熱延いては温度依存性も、十分に回避され得る。
【0013】
1つの実施形態では、少なくとも1つの温度センサが、基板又はプラットホームに配置されていてよい。この場合、温度センサは、ポジションセンサのピエゾ抵抗素子のできるだけ近くに配置されている。ピエゾ抵抗素子は感温性なので、温度変化の影響を相殺可能にするために温度を検出することができると有利である。温度センサは、例えば金属から成る抵抗として、基板又はプラットホーム上でピエゾ抵抗素子の近くに形成されていてよい。
【0014】
当該システムは、SOI基板(Silicon-on-Insulator-Substrat)上に配置又は形成されていてよい。特に、プラットホームは複数のジョイントと共に、1つのSOIウェハにエッチングにより形成されてよい。この場合、固体ジョイントとプラットホームの下側の層はエッチングにより除去される。基板及びプラットホーム上のピエゾ抵抗素子の周りを包囲するように、SOIウェハの最上層(デバイス層とも云う)に溝がエッチングされてよく、これにより、SOIウェハの最上層を、電気的により良好に絶縁することができる。
【0015】
複数の固体ジョイントが設けられていてよく、これらの固体ジョイントは、プラットホームの全周に沿って配置されていてよい。特に、整数2で、好適には整数4で割り切れる数の固体ジョイントと、プラットホームの周りに均等に配置された2つ、好適には4つのポジションセンサとが設けられていてよい。特に、整数4で割り切れる数の固体ジョイントの場合には、2つのポジションセンサしか設けられていなくてよい。これにより、3自由度(x方向の傾動、y方向の傾動、z方向の行程)を有するプラットホームのポジションを、複数のピエゾ抵抗型のセンサにより測定することが可能である。プラットホームは、静止位置ではxy平面に対して平行であり、やはりxy平面に対して平行に配置された固体ジョイントによって保持される。プラットホームが動くと固体ジョイントが変形し、これにより、固体ジョイントに配置されたピエゾ抵抗素子の機械的な応力が変化させられることで、同様に抵抗も変化させられる。ポジションセンサのピエゾ抵抗素子は、ホイートストンブリッジの形式で互いに接続されていてよい。
【0016】
1つの好適な実施形態では、4つの固体ジョイントが各1つのピエゾ抵抗素子を有していてよい。これにより、各ピエゾ抵抗素子が互いに接続されてそれぞれ1つのホイートストンブリッジを形成している、好適には4つのポジションセンサが設けられていることになり、この場合、各固体ジョイントに設けられた4つのピエゾ抵抗素子はそれぞれ、剛体領域に設けられた他の3つのピエゾ抵抗素子に接続されて、ホイートストンブリッジを形成している。ホイートストンブリッジの各出力信号は互いに差し引きして計算可能であり、これにより、プラットホームのポジションを3自由度で求めることができる。
【0017】
4つの固体ジョイントは、好適にはそれぞれ互いに90°でプラットホームの周りに配置されている。これにより、1つの軸線を中心とした純粋な傾動において、向かい合ったホイートストンブリッジの出力信号が有する絶対値はそれぞれ同一だが、符号は異なることになる。2対のセンサの信号の比によって、傾動方向を求めることができる。絶対値からは、傾動の度合いを求めることができる。純粋にz方向の行程運動が行われた場合には、4つ全てのホイートストンブリッジの信号が同一絶対値と同一符号とを有することになる。このために各ホイートストンブリッジは、それぞれ同じ接続回路を有していることが望ましい。行程と傾動が同時に行われる場合、ポジションは各ホイートストンブリッジの4つの出力信号から3自由度で求めることができる。
【0018】
固体ジョイントに設けられた各ピエゾ抵抗素子の位置は、それぞれ同じであることが望ましい。1つのブリッジに設けられる複数のピエゾ抵抗素子は、好適にはそれぞれ同一に形成されている。有利には、各ブリッジもそれぞれ同一に形成されている。
【0019】
正確な位置決めを得るためには、各ピエゾ抵抗素子が、同形式の各固体ジョイントにおいてそれぞれ同じ位置に配置されていると有利である。
【0020】
ピエゾ抵抗素子は、各固体ジョイントのプラットホーム側又は基板側に配置されていてよい。好適にはピエゾ抵抗素子は、固体ジョイントがその変形時に最大の機械的応力を有する箇所に取り付けられる。通常この箇所は、プラットホーム又は基板と結合されている、固体ジョイントの端部である。最大の機械的応力を有する箇所は、例えば固体ジョイントの中央等の、任意の別の箇所であってもよい。このことは、固体ジョイントの構成に左右される。
【0021】
1つのピエゾ抵抗素子が固体ジョイントの基板側に配置されている場合には、ホイートストンブリッジの別の3つのピエゾ抵抗素子は基板上で、固体ジョイントに設けられた第1のピエゾ抵抗素子のできるだけ近くに位置決めされ、これにより各ピエゾ抵抗素子ができるだけ同一の温度を有するようにしてある。
【0022】
1つのピエゾ抵抗素子が固体ジョイントのプラットホーム側の端部に位置決めされている場合には、ホイートストンブリッジの別の3つのピエゾ抵抗素子は、好適にはプラットホーム上で固体ジョイントのできるだけ近くに位置決めされ、これにより全てのピエゾ抵抗素子ができるだけ同一の温度を有するようにしてある。
【0023】
プラットホームに配置された1つのピエゾ抵抗素子に通じる少なくとも1つの接続導線は、固体ジョイント上に延びていてよい。よってピエゾ抵抗素子がプラットホーム上に配置されている場合、電気的な接続部材はそこまで固体ジョイントを介して案内されていてよい。
【0024】
この場合、1つの固体ジョイントに少なくとも2つの接続導線が配置されていることも考えられる。1つの固体ジョイント上に複数の導線が延びていると、当該システムは電磁界の影響を比較的受けにくくなる。固体ジョイントに配置された1つのピエゾ抵抗素子に通じる1つの接続導線は、隣の固体ジョイント及びプラットホーム又は基板を介して案内されていてよい。ピエゾ抵抗素子は、できるだけ大きく形成されていることが望ましい。この場合特に、ピエゾ抵抗素子は、固体ジョイントの全幅又はほぼ全幅を占めていてよい。つまり、1つの固体ジョイント上では1つの導線のみが案内され得る。しかしながら、ピエゾ抵抗素子を接続するためには2つの接続導線が必要である。第2の接続導線は、隣の固体エレメント上で、プラットホーム又は基板を介して案内され得る。
【0025】
プラットホーム上にはミラーが配置されていてよい。この場合、当該システムは、レーザ光線の位置調整に使用可能である。
【0026】
プラットホームの下には、磁石又は磁化可能な材料が配置されていてよく、磁石又は磁化可能な材料の近接領域には、少なくとも1つのコイルが設けられていてよい。このコイルにより磁界を形成することができ、この磁界が磁石又は磁化可能な材料と協働して、プラットホームを変位させることができるようになっている。特に、プラットホームは傾動させられ且つ/又はz方向に移動させられてよい。
【0027】
有利には、ポジションセンサの信号を測定及び評価するための測定装置と評価装置とが設けられていてよい。これにより測定装置と評価装置とを用いて、プラットホームのポジション若しくは位置を確認することができるようになっている。
【0028】
本発明の別の特徴及び利点は、以下の、本発明の重要な細部を示す図面に基づいた本発明の実施例の説明及び請求項から明らかである。個々の特徴は、本発明の1つの変化態様において、それ自体が個別に、又は複数が任意に組み合わされて、実現されていてよい。
【0029】
以下に本発明の好適な実施例を概略的に図示し、図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明によるシステムの概略的な断面図である。
【
図2】固体ジョイントを介して基板に結合されたプラットホームを上から見た図である。
【
図5】固体ジョイントに配置されたピエゾ抵抗素子の詳細図である。
【
図6】溝によって包囲されたU字形のピエゾ抵抗素子を示す図である。
【0031】
図1には、本発明によるシステム1の極めて概略的な断面図が示されている。セラミック又はプリント基板材料から成る層2上には、電気絶縁層として形成されていてよいスペーサ3が設けられている。その上にもやはり、半導体材料から成る基板4が配置されている。基板4には固体ジョイント6を介してプラットホーム5が結合されている。プラットホーム5上にはミラー7が配置されており、ミラー7ではレーザ光線8が反射されてよい。プラットホーム5の下端部には磁石9が設けられている。その下には1つ又は複数のコイル100が配置されている。コイル100により形成可能な磁界により、磁石9とプラットホーム5、延いてはミラー7が動くようになっている。これにより特に、プラットホーム5を変位させることができる。
【0032】
図2にはシステム1を上から見た図が示されており、この場合、ミラー7は図示されていない。ここでは、プラットホーム5が、軽く曲げられた多数の固体ジョイント6により基板4と結合されていることが認められる。更に、固体ジョイント6は、それぞれプラットホーム5の周囲に沿って均等に配分されていることが認められる。やはり半導体材料から成る固体ジョイント6の幅は、10μm〜100μmの範囲である。好適には、固体ジョイント6のウェブの幅は30μm〜60μmの範囲である。
【0033】
図3では、固体ジョイント6のプラットホーム側に、つまりプラットホーム5が取り付けられている端部に、1つのピエゾ抵抗素子10が設けられていることが認められ、この場合、ピエゾ抵抗素子10はU字形に形成されている。ピエゾ抵抗素子10は、2つのpドープ部分11と、2つの高濃度pドープ部分12,13とを有している。固体ジョイント6に設けられたピエゾ抵抗素子10は、別の3つのピエゾ抵抗素子14,15,16と接続されて、1つのホイートストンブリッジを形成している。4つのピエゾ抵抗素子を有するこのようなホイートストンブリッジは、符号17で示されている。
【0034】
ピエゾ抵抗素子10,14〜16はそれぞれ、各結晶方向において近似したピエゾ抵抗係数を得るために、本実施例ではそれぞれ同じ大きさと形状とを有していて、互いに90°回動させられている。
【0035】
接続導線18,19,20,21は、独自のピエゾ抵抗素子は一切支持していない固体ジョイント6’,6’’上に延びている。つまり、接続導線18,19,20,21は、固体ジョイント6の隣に位置する固体ジョイント6’,6’’上に延びている。
【0036】
ピエゾ抵抗素子10,14,15,16は、互いに近くに隣合って位置していて、それぞれ近似した温度を有している。これにより、測定結果の粗悪化が回避され得る。プラットホーム5のピエゾ抵抗素子10,14,15,16の領域には、温度センサ(ここには図示せず)が設けられていてよい。択一的又は付加的に、温度センサは基板4に配置されていてもよい。
【0037】
各ピエゾ抵抗素子10,14,15,16間の間隔は、好適には1000μm未満、特に好適には500μm未満である。
【0038】
2つの接続導線18,20において電流が供給可能であるのに対して、2つの接続導線19,21では測定装置(ここには図示せず)により出力電圧が測定され得る。
【0039】
図示の実施例では4つのホイートストンブリッジ17が示されている。つまり、4つの固体ジョイント6に各1つのピエゾ抵抗素子10が設けられている。固体ジョイント6に設けられた4つのピエゾ抵抗素子10は、互いに約90°の角度を成している。所定の軸線においてプラットホーム5が純粋に傾けられると、これにより、対向して位置するホイートストンブリッジの出力信号、特に出力電圧は、それぞれ符号は異なるが同じ絶対値だけ変化させられる。つまり、2つのホイートストンブリッジを用いて、プラットホーム5が変向された向きを特定することができる。プラットホーム5がZ方向にのみ動かされる、即ち持ち上げられる又は降下させられる場合、4つのホイートストンブリッジの出力信号は、それぞれ同一絶対値と同一符号とを有している。これらのホイートストンブリッジは全て、同一接続回路を有している。行程と傾動とが同時に行われる場合、プラットホーム5のポジションは3自由度で、それぞれホイートストンブリッジの4つの出力信号から算出され得る。
【0040】
図4には、ピエゾ抵抗素子10の1つの実施形態が示されている。ピエゾ抵抗素子10はU字形に形成されている。矢印25,26は、電流方向を示している。
【0041】
図5に示す択一的な実施形態では、ピエゾ抵抗素子10’は直線的に形成されていて、実質的に固体ジョイント6の全幅を占めている。接続導線27が、固体ジョイント6上を案内されている。但しピエゾ抵抗素子10’は、他方の側でも接触接続されねばならないので、別の接続導線28が、隣の固体ジョイント6’を介して案内されている。ピエゾ抵抗素子10’がプラットホーム側に配置されている場合には、接続導線28はプラットホームをも介してピエゾ抵抗素子10’まで案内されることになる。ピエゾ抵抗素子10’が基板側に配置されている場合には、接続導線28は基板をも介して案内されることになる。
【0042】
図6には、U字形のピエゾ抵抗素子10の詳細図が示されている。ここでは、絶縁のためにピエゾ抵抗素子10を取り囲んで溝30が設けられていることが認められる。また、U字形のピエゾ抵抗素子10の両脚部間にも溝31が設けられている。