特許第6516334号(P6516334)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6516334
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】汚染地盤の浄化方法
(51)【国際特許分類】
   B09C 1/08 20060101AFI20190513BHJP
   B09C 1/06 20060101ALI20190513BHJP
   A62D 3/38 20070101ALI20190513BHJP
   A62D 101/22 20070101ALN20190513BHJP
【FI】
   B09C1/08
   B09C1/06
   A62D3/38ZAB
   A62D101:22
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-199619(P2016-199619)
(22)【出願日】2016年10月11日
(65)【公開番号】特開2018-61915(P2018-61915A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2018年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】314014911
【氏名又は名称】株式会社沙羅
(74)【代理人】
【識別番号】100127339
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥井 政▲徳▼
(72)【発明者】
【氏名】山本 須美夫
【審査官】 上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−050814(JP,A)
【文献】 特開2015−057267(JP,A)
【文献】 特開2009−112933(JP,A)
【文献】 特開平06−238260(JP,A)
【文献】 特開2004−243229(JP,A)
【文献】 米国特許第5545803(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09C 1/00−1/10
A62D 3/34、3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に貫入された第一の試錐管に第一の温度を有する高温の水蒸気を供給し、前記第一の試錐管にその長手方向と交差する方向に穿設された注入孔を介して前記水蒸気を地中に注入する水蒸気注入工程と、
前記第一の試錐管から離間した位置で、かつ、該第一の試錐管を囲繞するように地中に貫入された複数の第二の試錐管に、組成ガスとしてオゾンを含むオゾン含有ガスを供給し、前記第二の試錐管にその長手方向と交差する方向に穿設された注入孔を介して地中に前記オゾン含有ガスを注入するオゾン含有ガス注入工程とを備え、
前記水蒸気注入工程を実施しながら前記オゾン含有ガス注入工程を実施する並行注入工程を実施するようにした汚染地盤の浄化方法。
【請求項2】
請求項1に記載の汚染地盤の浄化方法において、
前記第一の温度は、160℃以上300℃以下の温度であることを特徴とする汚染地盤の浄化方法。
【請求項3】
請求項2に記載の汚染地盤の浄化方法において、
前記第一の温度を、160℃以上300℃以下の温度範囲内で下限温度と該下限温度より高い温度の上限温度とを含む温度に設定すると共に、前記水蒸気注入工程を実施しているときに前記下限温度から前記上限温度まで段階的にまたは無段階に変化させるようにしたことを特徴とする汚染地盤の浄化方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうち何れか一つに記載の汚染地盤の浄化方法において、
前記水蒸気注入工程では、前記水蒸気と共に空気も前記第一の試錐管に供給して前記水蒸気と共に前記空気も前記第一の試錐管の注入孔を介して地中に注入するようにしたことを特徴とする汚染地盤の浄化方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうち何れか一つに記載の汚染地盤の浄化方法において、
前記並行注入工程を終了した後に、または、前記並行注入工程を実施する前に、前記第一の温度より低い第二の温度を有する水蒸気を前記オゾン含有ガスと共に前記第一の試錐管に供給してその注入孔を介して地中に注入する混合気体注入工程を実施するようにしたことを特徴とする汚染地盤の浄化方法。
【請求項6】
請求項5に記載の汚染地盤の浄化方法において、
前記混合気体注入工程を実施しながら前記オゾン含有ガス注入工程も実施するようにしたことを特徴とする汚染地盤の浄化方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の汚染地盤の浄化方法において、
前記第二の温度は、110℃以上160℃未満の温度であることを特徴とする汚染地盤の浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染地盤の浄化方法に関し、特に、汚染領域の地盤に貫入された試錐管を介して汚染領域の地中に、組成ガスとしてオゾンを含むオゾン含有ガスや高温の水蒸気を注入するようにした汚染地盤の浄化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されている従来の汚染地盤の浄化方法においては、主に、トリクロロエチレンやテトラクロロエチレン等の揮発性有機化合物(volatile organic compounds 以下「VOCs」という。)からなる汚染物質によって汚染された地中に貫入された試錐管を介して、高温の水蒸気とオゾン含有ガスとの混合気体を地中に注入することで汚染土壌を浄化するようにしている。このとき、地中に注入される水蒸気の温度が高ければ高いほど、地中に存在するVOCsの気化が促進され、オゾン含有ガス中のオゾンと反応しやすくなることは知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−57267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の汚染地盤の浄化方法では、地中に注入される水蒸気の温度を過度に高い値に設定すると、その温度の上昇に応じてオゾンが酸素に分解する速度が速くなってオゾンの量が減少し、オゾンによるVOCsの浄化が効果的に行われなくなるため、地中に注入される水蒸気の温度をあまり高温に設定することができないという問題があった。
【0005】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、地中に注入する水蒸気の温度を、ある程度、高温に設定してVOCsの気化を促進することができるとともに、高温の水蒸気で気化されたVOCsをオゾンにより効果的に浄化することができる汚染地盤の浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明に係る汚染地盤の浄化方法は、地中に貫入された第一の試錐管に第一の温度を有する高温の水蒸気を供給し、前記第一の試錐管にその長手方向と交差する方向に穿設された注入孔を介して前記水蒸気を地中に注入する水蒸気注入工程と、前記第一の試錐管から離間した位置で、かつ、該第一の試錐管を囲繞するように地中に貫入された複数の第二の試錐管に、組成ガスとしてオゾンを含むオゾン含有ガスを供給し、前記第二の試錐管にその長手方向と交差する方向に穿設された注入孔を介して地中に前記オゾン含有ガスを注入するオゾン含有ガス注入工程とを備え、前記水蒸気注入工程を実施しながら前記オゾン含有ガス注入工程を実施する並行注入工程を実施するようにしたものである。
請求項2に記載した発明に係る汚染地盤の浄化方法は、請求項1に記載の汚染地盤の浄化方法において、前記第一の温度は、160℃以上300℃以下の温度であることを特徴とするものである。
【0007】
請求項3に記載した発明に係る汚染地盤の浄化方法は、請求項2に記載の汚染地盤の浄化方法において、前記第一の温度を、160℃以上300℃以下の温度範囲内で下限温度と該下限温度より高い温度の上限温度とを含む温度に設定すると共に、前記水蒸気注入工程を実施しているときに前記下限温度から前記上限温度まで段階的にまたは無段階に変化させるようにしたことを特徴とするものである。
請求項4に記載した発明に係る汚染地盤の浄化方法は、請求項1ないし請求項3のうち何れか一つに記載の汚染地盤の浄化方法において、前記水蒸気注入工程では、前記水蒸気と共に空気も前記第一の試錐管に供給して前記水蒸気と共に前記空気も前記第一の試錐管の注入孔を介して地中に注入するようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項5に記載した発明に係る汚染地盤の浄化方法は、請求項1ないし請求項4のうち何れか一つに記載の汚染地盤の浄化方法において、前記並行注入工程を終了した後に、または、前記並行注入工程を実施する前に、前記第一の温度より低い第二の温度を有する水蒸気を前記オゾン含有ガスと共に前記第一の試錐管に供給してその注入孔を介して地中に注入する混合気体注入工程を実施するようにしたことを特徴とするものである。
請求項6に記載した発明に係る汚染地盤の浄化方法は、請求項5に記載の汚染地盤の浄化方法において、前記混合気体注入工程を実施しながら前記オゾン含有ガス注入工程も実施するようにしたことを特徴とするものである。
請求項7に記載した発明に係る汚染地盤の浄化方法は、請求項5または請求項6に記載の汚染地盤の浄化方法において、前記第二の温度は、110℃以上160℃未満の温度であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、高温の水蒸気を供給する第一の試錐管から離間した位置に、オゾン含有ガスを供給する第二の試錐管を地中に貫入したので、第一の試錐管の注入孔を介して地中に注入された高温の水蒸気は、第二の試錐管の近傍に到達するまでに地中のVOCsを気化したり地中の土壌に接触することで、第二の試錐管の近傍に到達したときの温度が、第一の試錐管の注入孔から地中に注入された直後の温度より低下する。このため、高温の水蒸気を第一の試錐管に供給しても、第二の試錐管の注入孔を介して地中に注入されたオゾン含有ガス中のオゾンが、第一の試錐管から第二の試錐管の周囲近傍に到達した水蒸気の熱によって短時間で酸素に分解されることはない。
また、高温の水蒸気を第一の試錐管に供給することで、第一の試錐管の注入孔を介して地中に注入された水蒸気は、第二の試錐管の近傍に到達するまでには高温の状態があるので、その高温の水蒸気の熱により地中のVOCsの気化が促進される。そして、その気化されたVOCsは水蒸気により搬送され、比較的温度が低下した気体の状態で第二の試錐管の周囲近傍に到達するので、その到達したVOCsはオゾン含有ガス中のオゾンと活発に反応する。
また、第一の試錐管から離間した位置で、かつ、該第一の試錐管を囲繞するように地中に貫入された複数の第二の試錐管の注入孔を介して地中にオゾン含有ガスを注入するようにしたので、第一の試錐管の周囲外方に向かって拡散しようとする気化したVOCsはオゾン含有ガス中のオゾンと反応して確実に浄化される。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、第一の試錐管に供給される水蒸気の第一の温度が160℃以上300℃以下の温度に設定されているので、第一の試錐管の注入孔を介して地中に注入された水蒸気は、第二の試錐管の近傍に到達するまでには高温の状態があるため、その高温の水蒸気の熱により地中のVOCsの気化が促進される。
請求項3記載の発明によれば、第一の試錐管に供給される水蒸気の温度を、160℃以上300℃以下の温度範囲内で下限温度と該下限温度より高い温度の上限温度とを含む温度に設定すると共に、水蒸気注入工程を実施しているときに下限温度から上限温度まで段階的にまたは無段階に変化させるようにしたので、地中のVOCsが徐々に気化される。このため、多量のVOCsが短時間で気化されることが回避され、気化されたVOCsが少しずつ第二の試錐管の近傍に到達するので、その到達するVOCsの量に対応して供給するオゾン含有ガスの量を略一定にすることができる。
【0011】
請求項4記載の発明によれば、水蒸気注入工程では、水蒸気と共に空気も第一の試錐管に供給して水蒸気と共に空気も第一の試錐管の注入孔を介して地中に注入するようにしたので、水蒸気の一部が、第二の試錐管の近傍に到達するまでに地中のVOCsを気化したり地中の土壌に接触することで温度が低下して液体の水に変化し、その分、気体のVOCsを搬送する能力が低下したとしても、第一の試錐管の注入孔を介して地中に注入される空気によって気体のVOCsを第二の試錐管の近傍まで確実に搬送することができる。
請求項5記載の発明によれば、水蒸気注入工程を実施しながらオゾン含有ガス注入工程を実施する並行注入工程を終了した後に、または、並行注入工程を実施する前に、第一の温度より低い第二の温度を有する水蒸気をオゾン含有ガスと共に第一の試錐管に供給してその注入孔を介して地中に注入する混合気体注入工程を実施するようにしたので、第一の試錐管の近傍の地中に存在するVOCsを水蒸気の熱で気化すると共にその気化したVOCsをオゾン含有ガス中のオゾンにより効率よく反応させることができる。また、水蒸気の温度を第一の温度より低い第二の温度に設定したので、水蒸気をオゾン含有ガスと共に第一の試錐管に供給するようにしたにも拘わらず、オゾン含有ガス中のオゾンが水蒸気の熱によって酸素に分解される速度が過度に速くなることはない。
【0012】
請求項6記載の発明によれば、水蒸気をオゾン含有ガスと共に第一の試錐管に供給してその注入孔を介して地中に注入する混合気体注入工程を実施しながら、複数の第二の試錐管にオゾン含有ガスを供給するオゾン含有ガス注入工程も実施するようにしたので、第一の試錐管の近傍の地中に存在するVOCsは第一の試錐管に供給されるオゾン含有ガス中のオゾンにより浄化され、第一の試錐管の周囲外方に向かって拡散しようとする気化したVOCsは第二の試錐管に供給されるオゾン含有ガス中のオゾンにより浄化される。このため、第一の試錐管の周囲に存在するVOCsは残すことなく確実に浄化される。
請求項7記載の発明によれば、第一の試錐管に供給される水蒸気の第二の温度が110℃以上160℃未満の温度に設定されているので、水蒸気をオゾン含有ガスと共に第一の試錐管に供給するようにしたにも拘わらず、オゾン含有ガス中のオゾンが水蒸気の熱によって短時間で酸素に分解されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る汚染地盤の浄化方法を実施するために複数の試錐管が貫入された汚染領域の地面を上方から見た状態を示した図である。
図2】本発明の実施の形態に係る汚染地盤の浄化方法を、図1に示した地面の一部の領域について実施するために、各種機器が設置された地面を上方から見た状態を模式的に示した図である。
図3】本発明の実施の形態に係る汚染地盤の浄化方法を実施する際に使用する各種装置が試錐管に接続された状態を、一部を破断して示した図である。
図4図3において一点鎖線で囲んだ図の一部を拡大して示した図である。
図5】本発明の実施の形態に係る汚染地盤の浄化方法を実施する際に使用する各種装置が、試錐管に挿入された挿入用具に接続された状態を、一部を破断して示した図である。
【0014】
図6】本発明の実施の形態に係る汚染地盤の浄化方法を実施する際に使用する水蒸気加熱装置の電熱器と熱交換器とが一体化された状態を、熱交換器を破断して示した図である。
図7図6に示した水蒸気加熱装置の電熱器と熱交換器とを、それらが一体化される前のものを示した図である。
図8】試錐管内に挿入用具を挿入して膨張管を拡径した状態を、試錐管を破断して示すと共に挿入用具の一部も破断して示した図である。
図9】汚染領域およびその周囲に複数の試錐管が貫入された地面を上方から見た状態を示した図である。
図10】試錐管に供給する水蒸気の温度を変化させる際の特性を示したグラフである。
図11】本発明の実施の形態に係る汚染地盤の浄化方法を実施するために本数を増加して地面に複数の試錐管を貫入した汚染領域の一部を、その地面の上方から見た状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る汚染地盤の浄化方法の一例を図1ないし図10を参照して詳細に説明する。なお、図面については、作図の都合上、それぞれの構成部材の縮尺の比率を互いに異ならせて図示している場合がある。図1は、汚染地盤の浄化方法を実施する箇所の地面を上方から見た状態を示しており、図1において符号Rで示すものは、主に、VOCsからなる汚染物質によって地中Mの土壌が汚染されている領域を示している。この汚染領域R内には、地面上において一辺が一定の長さL1(例えば1メートル)を有する略正六角形状からなる小領域が隙間なく四方八方に地面上に連続してハニカム状に複数設定されている。これらの小領域は、図1では説明を簡単にするために10箇所(小領域R1ないしR10)に設定したものを図示している。
【0016】
前記小領域R1ないしR10におけるそれぞれの略正六角形状の中心に相当する地点O1ないしO10に、互いに略平行に地中Mの所定の深度(例えば10メートル)まで試錐管3がそれぞれ試錐装置(図示せず)により貫入されている。これらの試錐管3は、本発明でいう「第一の試錐管」を構成する。
一方、前記小領域R1ないしR10におけるそれぞれの略正六角形状の各頂点に相当する6箇所の地点A…にも、地点O1ないしO10に貫入された試錐管3と略平行に前記所定の深度と略同じ深度または前記所定の深度より深い深度まで地中Mに試錐管5がそれぞれ貫入されている。これらの試錐管5は、本発明でいう「第二の試錐管」を構成する。
なお、上述した略正六角形状の一辺の長さL1は、略正六角形状の中心に相当する地点O1ないしO10の試錐管3に、後述する水蒸気供給装置9,オゾン含有ガス供給装置11および空気供給装置13により供給された各気体が地中Mを流れて略正六角形状の各頂点に相当する地点Aの各試錐管5まで到達することができる長さに設定される。
【0017】
各試錐管3および各試錐管5は、例えば、外径と内径がそれぞれ34ミリメートルと25ミリメートルで長さが1ないし2メートルの鉄製またはステンレス製の試錐短管を複数連結して長尺な1本の試錐管3および試錐管5として構成されている。試錐管3や試錐管5を地中Mに貫入するに連れて長さが不足する場合は、前記試錐短管を連結して継ぎ足しながら試錐管3や試錐管5を地中Mに貫入していく。連結する構成としては、前記試錐短管の両端部にそれぞれ雄ねじ部と雌ねじ部とが刻設された試錐短管同士を、一方の試錐短管の雄ねじ部と他方の試錐短管の雌ねじ部とを螺合させて互いに連結するようにしている。図3および図5に示すように、各試錐管3および各試錐管5の先端部の雌ねじ部には、地中Mを掘削して地面Eに穴を穿つための掘削部材7が螺着されている。各試錐管3には、その長手方向と交差する方向に貫通孔3aが穿設されている。詳細には、各試錐管3を構成する試錐短管のうち、掘削部材7が螺着された試錐短管の側面であって掘削部材7の近傍に複数の貫通孔3aが穿設されている。該貫通孔3aは、本発明でいう「注入孔」を構成する。該貫通孔3aは、前記試錐短管の軸芯に沿う方向から見て、該軸芯回りに角度が90度間隔で四方に向かって4個穿設されている。
一方、各試錐管5には、その長手方向と交差する方向に貫通孔5aが穿設されている。詳細には、各試錐管5を構成する各試錐短管の側面に、該試錐短管の軸芯に沿う方向に、長手方向全域に亘って一定の間隔を隔てて複数の箇所(例えば、8箇所)にそれぞれ4個ずつ貫通孔5aが穿設されている。該貫通孔5aは、本発明でいう「注入孔」を構成する。これらの4個ずつの貫通孔5aは、前記試錐短管の軸芯に沿う方向から見て、該軸芯回りに角度が90度間隔で四方に向かって穿設されている。
【0018】
次に、汚染地盤の浄化方法の作業工程における一つの工程である「混合気体注入工程」を実施するための機器について図2ないし図8を参照して説明する。地点O1ないしO10に貫入された試錐管3のうち、地点O1,O3,O8,O10に貫入された各試錐管3には、水蒸気供給装置9,オゾン含有ガス供給装置11および空気供給装置13が接続され、小領域R1,R3,R8,R10におけるそれぞれの略正六角形状の各頂点に相当する6箇所の地点A…に貫入された各試錐管5には、オゾン含有ガス供給装置11が接続されている。なお、図2では作図の都合上、図1に示した小領域R1ないしR10のうち小領域R1ないしR3に関する部分だけを示している。
【0019】
各試錐管3の上端部には、筒状の接続管15(図3および図4参照)の下端部がそれぞれ螺着されている。前記各接続管15の両端部の内周面には雌ねじ部がそれぞれ刻設され、各接続管15の下端部の雌ねじ部15aに各試錐管3の上端部の雄ねじ部3bがそれぞれ螺着されている。各接続管15の上端部の雌ねじ部15bには、両端部の外周面に雄ねじ部がそれぞれ刻設された筒状のニップル17の下端部がそれぞれ螺着されている。各ニップル17の上端部には、水蒸気加熱装置21の下端部がそれぞれ螺着されている。各水蒸気加熱装置21の上端部は、水蒸気分岐管23および水蒸気集合管25を介して水蒸気供給装置9に接続され、該水蒸気供給装置9で生成された高温の水蒸気が、水蒸気集合管25、水蒸気分岐管23、水蒸気加熱装置21、ニップル17および接続管15を通過して各試錐管3にそれぞれ供給される。
【0020】
また、前記各接続管15の長手方向中途部は、オゾン含有ガス分岐管27およびオゾン含有ガス集合管29を介してオゾン含有ガス供給装置11に接続され、該オゾン含有ガス供給装置11で生成されたオゾン含有ガスが、オゾン含有ガス集合管29,オゾン含有ガス分岐管27および接続管15を通過して、前記水蒸気供給装置9で生成された高温の水蒸気と共に各試錐管3にそれぞれ供給される。オゾン含有ガス集合管29の長手方向中途部には電磁式三方弁31が配設され、該電磁式三方弁31と空気供給装置13とが空気供給管33を介して接続されている。電磁式三方弁31を適宜切り替えることにより、オゾン含有ガス供給装置11で生成されたオゾン含有ガスまたは空気供給装置13で発生された高圧の空気のうち何れか一方が択一的に各試錐管3に供給される。
【0021】
小領域R1ないしR10のうち小領域R1,R3,R8,R10におけるそれぞれの6箇所の地点A…に貫入された各試錐管5内には、図5に示すように挿入用具35がそれぞれ挿入されている。挿入用具35が挿入された各試錐管5の上端からは、各挿入用具35の4本の管がそれぞれ突出しており、これらの4本の管は、それぞれ空気供給管37と流通管39a,39b,39cとからなる。なお、図2では、空気供給管37については、作図の都合上、小領域R1,R3のそれぞれ1つの地点Aの試錐管5に挿入された挿入用具35の空気供給管37だけ図示しており、その他の地点の試錐管5内に挿入された挿入用具35の空気供給管37は省略している。また、図2では、流通管39a,39b,39cの符号については、作図の都合上、小領域R1,R3におけるそれぞれの一部の試錐管5に挿入された挿入用具35についてだけ記している。
【0022】
挿入用具35が挿入された各試錐管5の上端から突出した各空気供給管37は1本の集合空気供給管41に合流接続され、該集合空気供給管41の端部は一定の圧力で空気を供給する空気供給装置43に接続されている。集合空気供給管41の長手方向中途部(集合空気供給管41において、空気供給装置43に最も近い空気供給管37の合流接続部と空気供給装置43との間)には、該集合空気供給管41内の空気が流れる通路を開閉する第一電磁式開閉弁45が配設されている。
一方、挿入用具35が挿入された各試錐管5の上端からそれぞれ突出した各挿入用具35の流通管39a,39b,39cの各端部はそれぞれ第二電磁式切替弁47に接続され、これらの第二電磁式切替弁47に一端部がそれぞれ接続された中継流通管49の他端部は前記オゾン含有ガス集合管29にそれぞれ接続されている。
【0023】
前記水蒸気供給装置9は、その本体を構成するボイラー9aと該ボイラー9aの上部に配設された圧力調整弁9bとを備え、該圧力調整弁9bに水蒸気集合管25が接続されている。圧力調整弁9bはボイラー9aから水蒸気集合管25に供給される水蒸気の圧力が一定になるよう調整する機能を有する。水蒸気の圧力と温度とは相関関係があり、圧力が定まるとその圧力に応じて温度も定まる。例えば、水蒸気の圧力が0.3MPa(メガパスカル)のときの温度は約134℃である。圧力調整弁9bにより水蒸気の圧力が所定の圧力になるよう調整されることで水蒸気集合管25に供給される水蒸気の温度は、110℃以上160℃未満の範囲における何れかの温度に設定される。
【0024】
前記水蒸気加熱装置21は、電線51の一端部が接続され、該電線51に電流が流れることで発熱する円柱状の電熱器53と、該電熱器53が挿入される熱交換器55と、該熱交換器55が挿入される外管57と、該外管57の一端部(図3において上端部)の外周部に刻設された雄ねじ部57aに螺着される椀状の第一継手59と、外管57の他端部(図3において下端部)の外周部に刻設された雄ねじ部57bに螺着される椀状の第二継手61とを備えている。第一継手59の中央部に穿設され刻設された雌ねじ部59aには、電熱器53の一端部(図3において上端部)の外周部に刻設された雄ねじ部53a(図7参照)が螺着されている。第一継手59の側部に穿設され刻設された雌ねじ部59bには、水蒸気分岐管23の一端部に形成された雄ねじ部23aが螺着され、水蒸気分岐管23の他端部は水蒸気集合管25の長手方向中途部に接続されている。これにより、水蒸気供給装置9により生成された水蒸気は、水蒸気集合管25および水蒸気分岐管23を通過して第一継手59内に供給される。
【0025】
第二継手61の中央部に穿設され刻設された雌ねじ部61aには、前記ニップル17の端部(図3において上端部)の外周部に刻設された雄ねじ部17aが螺着されている。また、第二継手61の側部に穿設され刻設された雌ねじ部61bには、第二継手61内を通過する水蒸気の温度を検出する温度センサ63の雄ねじ部63aが螺着されている。
熱交換器55は、円筒状の放熱管65と、該放熱管65の外周部に螺旋状に巻き付けられ結着された帯状の放熱フィン67とを備えている。放熱管65内に挿入された電熱器53の外周面と放熱管65の内周面との間には、熱伝導性の良好な接着剤69が充填されており、これによって、電熱器53と熱交換器55とは一体化されている。水蒸気分岐管23を介して第一継手59内に供給された水蒸気は、熱交換器55が挿入された外管57内を通過するとき、熱交換器55と外管57とで形成された螺旋状の通路を旋回しながら通過する。このとき、通電されて高温となった電熱器53により水蒸気が十分に加熱され、加熱後の水蒸気がニップル17および接続管15を介して試錐管3に供給される。
【0026】
図3に示すように、オゾン含有ガス供給装置11は、酸素ガスが収容された酸素ボンベ71に酸素ガス供給管73を介して接続されており、酸素ボンベ71内の酸素ガスがオゾン含有ガス供給装置11に導入される。オゾン含有ガス供給装置11の内部で放電管による無声放電によってオゾンが発生し、酸素に対してオゾンが所定の割合で混合されてオゾン含有ガスが生成される。このような組成ガスとしてオゾンを含むオゾン含有ガスとしては、例えば、容積比でオゾンが1パーセントないし10パーセントで残りが酸素からなるガスを挙げることができる。このようにして生成されたオゾン含有ガスは、例えば0.8MPa(メガパスカル)ないし1.1MPaの圧力でオゾン含有ガス供給装置11からオゾン含有ガス集合管29に供給される。
上述した水蒸気供給装置9のボイラー9a、空気供給装置13、電磁式三方弁31、空気供給装置43、第一電磁式開閉弁45および各第二電磁式切替弁47の各電動駆動装置は、それらの作動が適宜制御されるべく、それぞれ電線(図示せず)を介して制御盤75内の制御装置75aに電気的に接続されている。また、上述した温度センサ63は、信号線63bを介して制御盤75内の制御装置75aに電気的に接続されている。
【0027】
図8に示すように、前記挿入用具35は、円筒状の1本の挿入管77と、該挿入管77の長手方向に互いに所定の間隔を隔てて挿入管77の外周に嵌合された4個の膨張管79a,79b,79c,79dと、空気供給管37と流通管39a,39b,39cとを備えている。なお、図8は、作図の都合上、試錐管5および挿入用具35を、それらの長手方向中途部で分断して図示している。4個の膨張管79a,79b,79c,79dの、挿入管77の長手方向における配置間隔は、試錐管5の貫通孔5aが穿設された間隔(試錐管5の長手方向の間隔)と同一に設定されている。空気供給管37と流通管39a,39b,39cとは、それぞれの一端側が挿入管77の一端側から突出した状態で他端側がそれぞれ挿入管77内に挿入されている。各膨張管79a,79b,79c,79dは、ゴム部材またはその他の樹脂材からなる拡径可能な弾性材料であって耐酸性を有する材料からなり、各膨張管79a,79b,79c,79dのそれぞれの両端部は円環状の締め付け部材によって挿入管77の外周に気密に緊縛され、かつ、各膨張管79a,79b,79c,79dと挿入管77とのそれぞれの間隙に、外部と気密に区画された円環状の区画室81がそれぞれ形成されている。
【0028】
挿入管77の長手方向において各膨張管79a,79b,79c,79dが隣り合う間の挿入管77の部位には、挿入管77内と外部とを連通する連通孔83がそれぞれ穿設されている。そして、膨張管79a,79b間の連通孔83と流通管39bとが連通され、膨張管79b,79c間の連通孔39と流通管39cとが連通され、膨張管79c,79d間の連通孔83と流通管39aとが連通されている。
一方、各膨張管79a,79b,79c,79dに対応する挿入管77の部位には、前記各区画室81と空気供給管37内とを連通する空気供給孔が各区画室81に対応してそれぞれ穿設されており、各空気供給孔と空気供給管37とが連通している。空気供給管37および流通管39a,39b,39cのそれぞれの外周と挿入管77の内周との間隙には、エポキシ系樹脂等の樹脂等からなる充填材が充填され固化されている。これによって、空気供給管37および流通管39a,39b,39cと挿入管77とは、強固に固定され一体化されている。挿入管77、空気供給管37および流通管39a,39b,39cの下端側の開口部は、栓部材(図示せず)がそれぞれ固着され密栓されている。
而して、各区画室81に空気を供給したり、その供給した空気を各区画室81から排出することで各膨張管79a,79b,79c,79dを拡径または縮径させる。
【0029】
〈汚染地盤の浄化方法の作業工程〉
次に、汚染地盤の浄化方法の作業工程について図9および図10も参照して説明する。
(1)汚染領域の特定作業
図9は、VOCsからなる汚染物質によって地中Mの土壌が汚染されている土地を調査して汚染領域を特定するために試錐装置(図示せず)により複数の前記試錐管5が貫入された箇所の地面を上方から見た状態を示している。地面を上方から見て、隣接する試錐管5同士の距離は全て前記長さL1に設定され、整列された状態で各試錐管5が地中Mに貫入されている。地中Mに貫入された各試錐管5の下端までの深度は、汚染されていると想定される深度より少しだけ深い深度(例えば10メートル)に設定されている。
【0030】
次に、上述した挿入用具35を各試錐管5内に挿入して、挿入用具35の流通管39a,39b,39cを介して地中Mに存在する気体または地下水を収集し、該気体または地下水に含まれるVOCsの濃度を計測装置により測定する。このとき、試錐管5に対する挿入用具35の挿入位置は、例えば、挿入用具35の膨張管79c,79d間に、試錐管5の最も下方に位置する貫通孔5aが試錐管5の長手方向で位置するように位置付ける。この状態で空気供給装置43を作動させて各膨張管79a,79b,79c,79dの各区画室81に空気を供給して各膨張管79a,79b,79c,79dを拡径させ、各膨張管79a,79b,79c,79dの外周面を試錐管5の内周面に圧接させることで、試錐管5の各貫通孔5aは、試錐管5の長手方向で互いに位置が異なる4個の貫通孔5aごとに、対応する各連通孔83を介して各流通管39a,39b,39cとそれぞれ個別に連通する。これにより、各流通管39a,39b,39cを介して地中Mから収集されたVOCsの濃度を、各流通管39a,39b,39cごとに計測装置により個別に測定することで、地中Mの深度ごとのVOCsの濃度を知得することができる。試錐管5に対する挿入用具35の挿入位置を適宜変更することで、試錐管5の最も下方に位置する貫通孔5aの深度から最も上方に位置する貫通孔5aの深度まで、各貫通孔5aが位置する深度ごとに地中MのVOCsの濃度を知得することができる。
【0031】
挿入用具35を使用して全ての試錐管5について、各試錐管5が貫入された地点ごとで、かつ、深度ごとに地中MのVOCsの濃度を知得することで地盤の汚染領域を三次元的に特定することができる。図9中のRは、このようにして特定された汚染領域を上方から見た平面的な領域を示している。
(2)一部の試錐管の交換作業
次に、汚染領域Rに貫入された試錐管5のうち一部の試錐管5を引抜装置(図示せず)により引き抜いたのち、その引き抜いた地点に前記試錐管3を貫入する。試錐管3を貫入する地中Mの深度は、その貫入する地点における、前記「(1)汚染領域の特定作業」で特定された汚染領域の深度である。深度方向に一定の長さに渡って汚染領域が特定された場合は、その汚染領域において最も深い深度または最も浅い深度まで試錐管3を貫入する。試錐管3が貫入された汚染領域Rを拡大して示した図が前記図1である。図1に示すように、試錐管3は地点O1ないしO10にそれぞれ貫入されている。
【0032】
(3)第一段階の浄化作業
次に、制御盤75を操作して、図1に示す小領域R1,R3,R8,R10に貫入された各試錐管3および各試錐管5に、オゾン含有ガス供給装置11で生成されたオゾン含有ガスを供給すると共に、図1に示す地点O1,O3,O8,O10に貫入された各試錐管3に、水蒸気供給装置9で生成された水蒸気を供給する。これにより、各試錐管3の貫通孔3aを介して水蒸気とオゾン含有ガスとが地中Mに注入されるが、この注入工程は、本発明でいう「混合気体注入工程」を構成する。
一方、各試錐管5の貫通孔5aを介してオゾン含有ガスが地中Mに注入されるが、この注入工程は、本発明でいう「オゾン含有ガス注入工程」を構成する。
各試錐管3に供給される水蒸気の温度は、制御盤75の制御装置75aにより、110℃以上160℃未満の範囲における所定の温度に設定され、この温度の水蒸気が、図2および図3に示すように、水蒸気集合管25,水蒸気分岐管23,水蒸気加熱装置21,ニップル17および接続管15を介して試錐管3に供給される。該所定の温度は、本発明でいう「第二の温度」を構成する。該所定の温度としては、例えば140℃を挙げることができる。
【0033】
これにより、試錐管3の近傍の地中Mに存在するVOCsを水蒸気の熱で気化すると共にその気化したVOCsをオゾン含有ガス中のオゾンにより効率よく反応させることができる。また、水蒸気の温度を110℃以上160℃未満の範囲内の温度に設定したので、水蒸気をオゾン含有ガスと共に試錐管3に供給するようにしたにも拘わらず、オゾン含有ガス中のオゾンが水蒸気の熱によって短時間で酸素に分解されることはない。
また、水蒸気をオゾン含有ガスと共に試錐管3に供給してその貫通孔3aを介して地中Mに注入する混合気体注入工程を実施しながら、試錐管3を囲繞する各試錐管5にオゾン含有ガスを供給するオゾン含有ガス注入工程も実施するようにしたので、試錐管3の近傍の地中Mに存在するVOCsは試錐管3に供給されるオゾン含有ガス中のオゾンにより浄化され、試錐管3の周囲外方に向かって拡散しようとする気化したVOCsは各試錐管5に供給されるオゾン含有ガス中のオゾンにより浄化される。このため、試錐管3の周囲に存在するVOCsは残すことなく確実に浄化される。
【0034】
一方、オゾン含有ガスは、図2および図3に示すように、オゾン含有ガス集合管29,オゾン含有ガス分岐管27および接続管15を介して地点O1,O3,O8,O10の各試錐管3に供給されると共に、オゾン含有ガス集合管29,中継流通管49および挿入用具35を介して小領域R1,R3,R8,R10の各試錐管5にも供給される。このとき、電磁式三方弁31によりオゾン含有ガス集合管29と空気供給管33との連通は遮断されている。小領域R1,R3,R8,R10の各試錐管5に対する各挿入用具35の挿入位置は、挿入用具35の膨張管79c,79d間に、当該領域の試錐管5の最も下方に位置する貫通孔5aが試錐管5の長手方向で位置するように位置付ける。
【0035】
(4)第二段階の浄化作業
水蒸気供給装置9による水蒸気の供給とオゾン含有ガス供給装置11によるオゾン含有ガスの供給とが所定の時間だけ実施され、前記「(3)第一段階の浄化作業」が終了したら、制御盤75内の制御装置75aにより水蒸気加熱装置21の電熱器53に電流が供給される。これにより、水蒸気加熱装置21を流れる水蒸気は電熱器53により加熱され、地点O1,O3,O8,O10の各試錐管3に加熱後の水蒸気が供給されるようになり、各試錐管3の貫通孔3aを介して加熱後の水蒸気が地中Mに注入される。この水蒸気の注入工程は、本発明でいう「水蒸気注入工程」を構成する。
加熱後の水蒸気の温度は、温度センサ63により検出され、その検出信号が制御装置75aで受信され、その受信される温度が160℃以上300℃以下の範囲における所定の温度になるように電熱器53に供給される電流が制御装置75aにより制御される。該所定の温度は、本発明でいう「第一の温度」を構成する。加熱された水蒸気の温度が前記所定の温度になると、制御装置75aにより電磁式三方弁31が切り替えられ、空気供給装置13で発生された所定の圧力(例えば、0.9ないし1.0MPa(メガパスカル)の圧力)の空気がオゾン含有ガス集合管29に供給され、該高圧の空気と加熱後の水蒸気とが地点O1,O3,O8,O10の各試錐管3に供給される。加熱後の水蒸気は、高圧の空気と一緒に各試錐管3の貫通孔3aから地中Mに注入される。高温の水蒸気が地中Mに注入されることで、各試錐管3の貫通孔3aの近傍に存在するVOCsの気化が高温の水蒸気の熱によって促進される。
【0036】
また、加熱後の水蒸気は、高圧の空気と一緒に各試錐管3に供給されることで、各試錐管3の貫通孔3aから勢いよく地中Mに注入される。水蒸気の一部が、試錐管5の近傍に到達するまでに地中MのVOCsを気化したり地中Mの土壌に接触することで温度が低下して液体の水に変化し、その分、気体のVOCsを搬送する能力が低下したとしても、試錐管3の貫通孔3aを介して地中Mに注入される空気によって気体のVOCsを試錐管5の近傍まで確実に搬送することができる。このため、注入された水蒸気は、気化したVOCsと共に高圧の空気によって地中Mの遠方まで搬送され小領域R1,R3,R8,R10の各試錐管5の近傍まで到達することができる。このとき、各試錐管5へのオゾン含有ガスの供給は継続されているので、各試錐管5の近傍まで到達した気化後のVOCsは、オゾン含有ガス中のオゾンと効果的に反応してオゾンによる酸化分解や鉱物との化学反応が活発に行なわれ、短時間に浄化される。
なお、高温の水蒸気を供給する試錐管3から離間した位置に、オゾン含有ガスを供給する試錐管5が地中Mに貫入されているので、試錐管3の貫通孔3aを介して地中Mに注入された高温の水蒸気は、試錐管5の近傍に到達するまでに地中MのVOCsを気化したり地中Mの土壌に接触することで、試錐管5の近傍に到達したときの温度が、試錐管3の貫通孔3aから地中Mに注入された直後の温度より低下する。このため、高温の水蒸気を試錐管3に供給しても、試錐管5の貫通孔5aを介して地中Mに注入されたオゾン含有ガス中のオゾンが、試錐管3から試錐管5の周囲近傍に到達した水蒸気の熱によって短時間で酸素に分解されることはない。
【0037】
また、高温の水蒸気を試錐管3に供給することで、試錐管3の貫通孔3aを介して地中Mに注入された水蒸気は、試錐管5の近傍に到達するまでには高温の状態があるので、その高温の水蒸気の熱により地中MのVOCsの気化が促進される。そして、その気化されたVOCsは水蒸気により搬送され、比較的温度が低下した気体の状態で試錐管5の周囲近傍に到達するので、その到達したVOCsはオゾン含有ガス中のオゾンと活発に反応する。
また、試錐管3から離間した位置で、かつ、該試錐管3を囲繞するように地中Mに貫入された複数の試錐管5の貫通孔5aを介して地中Mにオゾン含有ガスが注入されるので、試錐管3の周囲外方に向かって拡散しようとする気化したVOCsはオゾン含有ガス中のオゾンと反応して確実に浄化される。
このように、加熱後の水蒸気を各試錐管3の貫通孔3aを介して地中Mに注入する水蒸気注入工程を実施しながら、オゾン含有ガスを各試錐管5の貫通孔5aを介して地中Mに注入するオゾン含有ガス注入工程も並行して実施する工程は、本発明でいう「並行注入工程」を構成する。
【0038】
電熱器53により加熱された水蒸気の所定の温度は、一定の値に保持するようにしてもよいが、例えば、図10の(1)図ないし(3)図に示すように変化させてもよい。(1)図の場合は、t時間ごとに温度をT1からT4までの温度範囲で4段階に上昇させる例である。(2)図の場合は、2t時間ごとに温度をT1からT4までの温度範囲で2段階に上昇させる例である。(3)図の場合は、4t時間で温度をT1からT4までの温度範囲で無段階に上昇させる例である。これらの例において、T1は本発明でいう「下限温度」を構成し、T4は本発明でいう「上限温度」を構成する。これらの例のT1ないしT4の具体的な温度としては、例えば、T1を160℃、T2を200℃、T3を240℃、T4を280℃にそれぞれ設定することが挙げられる。このように水蒸気の温度を低い温度から高い温度まで段階的にまたは無段階に変化させることで、地中MのVOCsが徐々に気化されるので、多量のVOCsが短時間に気化されることが回避される。この結果、気化されたVOCsが少しずつ各試錐管5の近傍に到達するので、その到達するVOCsの量に対応して供給するオゾン含有ガスの量を略一定にすることができる。このため、制御盤75内の制御装置75aによるオゾン含有ガス供給装置11の制御が行い易くなる。
【0039】
(5)深度変更後の第一段階の浄化作業
各試錐管3および各試錐管5について上述した「(4)第二段階の浄化作業」が終了したら、制御装置75aにより、水蒸気加熱装置21の電熱器53への通電が遮断されると共に電磁式三方弁31が切り替えられてオゾン含有ガス集合管29と空気供給管33との連通が遮断される。
次に、地中Mに対する各試錐管3の貫入の深度を、まだ浄化が終了していない他の深度にそれぞれ変更する。試錐管3が汚染領域の最も深い深度まで貫入されていた場合は該試錐管3を上方に移動させ、試錐管3が汚染領域の最も浅い深度まで貫入されていた場合は該試錐管3を下方に移動させる。上方または下方に移動させる移動量は、試錐管5の長手方向で隣り合う貫通孔5a同士の間隔と同じである。試錐管3の移動に合わせて、深度変更後の各試錐管3の貫通孔3aの深度と、地中Mにオゾン含有ガスを注入する各試錐管5の貫通孔5aの深度とを一致させるべく各第二電磁式切替弁47をそれぞれ切り替える。
【0040】
具体的には、各第二電磁式切替弁47を適宜切り替えることで、オゾン含有ガスを注入する各試錐管5の貫通孔5aに対応する各挿入用具35の連通孔83と3つの流通管39a,39b,39cの何れかとを連通させる。このとき、オゾン含有ガスを注入する各試錐管5の貫通孔5aに対応する連通孔83が存在しない場合は、該貫通孔5aに何れかの連通孔83が対応するように試錐管5に対して挿入用具35の挿入位置を適宜変更する。
このようにして、深度を変更したのち、上述した「(3)第一段階の浄化作業」を再び実施する。すなわち、水蒸気およびオゾン含有ガスの供給を再び所定の時間だけ実施する。このときの水蒸気の温度は、再び110℃以上160℃未満の範囲内の温度に設定される。
【0041】
(6)深度変更後の第二段階の浄化作業
前記「(5)深度変更後の第一段階の浄化作業」が終了したら、制御盤75内の制御装置75aにより水蒸気加熱装置21の電熱器53に電流が供給され、上述した「(4)第二段階の浄化作業」が再び実施される。
(7)再深度変更後の第一段階および第二段階の各浄化作業
上述したような「(5)深度変更後の第一段階の浄化作業」および「(6)深度変更後の第二段階の浄化作業」は、小領域R1,R3,R8,R10において汚染領域が特定された全ての深度につき浄化が終了するまで実施され、全ての深度につき浄化が終了すると、小領域R1,R3,R8,R10における浄化作業が終了する。
【0042】
(8)その他の汚染領域の浄化作業
次に、地点O1,O3,O8,O10の各試錐管3にそれぞれ接続されていた各接続管15を取り外して、地点O2,O4,O7,O9の各試錐管3に接続し直し、これらの試錐管3に、水蒸気供給装置9で生成された水蒸気、電熱器53により加熱された水蒸気、オゾン含有ガス供給装置11で生成されたオゾン含有ガス、空気供給装置13で発生された高圧の空気が供給されるように配管し直す。
また、小領域R1,R3,R8,R10の各試錐管5のうち、小領域R2,R4,R7,R9の何れかの領域に含まれる試錐管5にそれぞれ挿入されていた挿入用具35はそのまま試錐管5内に残す一方、それら以外の小領域R1,R3,R8,R10の各試錐管5に挿入されていた挿入用具35は取り出して、挿入用具35が挿入されていない小領域R2,R4,R7,R9の各試錐管5に挿入し直す。これにより、小領域R2,R4,R7,R9の各試錐管5にオゾン含有ガス供給装置11で生成されたオゾン含有ガスが供給されるようにする。
次に、制御盤75を操作して、上述した「(3)第一段階の浄化作業」から「(7)再深度変更後の第一段階および第二段階の各浄化作業」までの作業と同様の作業を小領域R2,R4,R7,R9の各試錐管3および各試錐管5に対して実施する。
(9)残りの汚染領域の浄化作業
小領域R2,R4,R7,R9における浄化作業が終了すると、前記「(8)その他の汚染領域の浄化作業」と同様の作業を、残りの汚染領域である小領域R5,R6について実施する。小領域R5,R6の浄化作業が終了すると、汚染領域Rの浄化作業が全て完了する。
【0043】
なお、小領域R5,R6の周囲の領域(小領域R1ないしR4,R7ないしR10)を小領域R5,R6より先に浄化したのは、試錐管3および試錐管5を介して注入される水蒸気やオゾン含有ガスにより、小領域R5,R6の外周近傍で小領域R5,R6より外方に存在するVOCsが小領域R5,R6より外方に拡散しないようにするためである。すなわち、小領域R5,R6の周囲の領域(小領域R1ないしR4,R7ないしR10)を先に浄化することで、小領域R5,R6の浄化作業を実施するときには、小領域R5,R6より外方にはVOCsが存在しないので、小領域R5,R6より外方にVOCsが拡散することはない。
【0044】
上述した本発明の実施の形態は本発明を説明するための一例であり、本発明は、前記の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と明細書との全体から読み取れる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更後の汚染地盤の浄化方法もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
例えば、上述した実施の形態では、説明を簡単にするために小領域をR1ないしR10の10箇所に設定した例を示したが、小領域の個数は、VOCsによって土壌が汚染されている汚染領域Rの面積に応じて設定される。
【0045】
また、上述した実施の形態の汚染地盤の浄化方法のように、水蒸気加熱装置21による加熱後の水蒸気を各試錐管3の貫通孔3aを介して地中Mに注入する水蒸気注入工程を実施する際には、高圧の空気も一緒に注入するようにするのが望ましいが、高圧の空気の注入は省略してもよい。省略したとしても、前記水蒸気注入工程を実施しながら、オゾン含有ガスを各試錐管5の貫通孔5aを介して地中Mに注入するオゾン含有ガス注入工程も並行して実施すれば、注入された水蒸気の熱により気化したVOCsは、液体の水に変化せずに気体の状態で残った水蒸気と共に搬送され各試錐管5の近傍まで到達し、オゾン含有ガス中のオゾンと効果的に反応して確実に浄化される。
また、上述した実施の形態の汚染地盤の浄化方法のように、水蒸気加熱装置21による加熱後の水蒸気を各試錐管3の貫通孔3aを介して地中Mに注入する水蒸気注入工程を実施しながら、オゾン含有ガスを各試錐管5の貫通孔5aを介して地中Mに注入するオゾン含有ガス注入工程も並行して実施する並行注入工程を実施する前に、各試錐管3の貫通孔3aを介して水蒸気とオゾン含有ガスとを地中Mに注入する混合気体注入工程を実施するようにするのが望ましい。しかし、これに替えて、前記並行注入工程を終了した後に、前記混合気体注入工程を実施するようにしてもよい。このようにしたとしても、前記並行注入工程と前記混合気体注入工程との双方が実施されるので、汚染領域Rの地中MのVOCsを小領域ごとに確実に浄化することができる。
【0046】
また、上述した実施の形態の汚染地盤の浄化方法のように、各試錐管3の貫通孔3aを介して水蒸気とオゾン含有ガスとを地中Mに注入する混合気体注入工程を実施する際には、各試錐管5の貫通孔5aを介してオゾン含有ガスを地中Mに注入するオゾン含有ガス注入工程も並行して実施するようにするのが望ましいが、該オゾン含有ガス注入工程は実施せずに省略してもよい。省略したとしても、前記混合気体注入工程に加えて、水蒸気加熱装置21による加熱後の水蒸気を各試錐管3の貫通孔3aを介して地中Mに注入する水蒸気注入工程と、各試錐管5の貫通孔5aを介してオゾン含有ガスを地中Mに注入するオゾン含有ガス注入工程とを並行して実施する並行注入工程を実施すれば、汚染領域Rの地中MのVOCsを小領域ごとに確実に浄化することができる。
また、上述した実施の形態の汚染地盤の浄化方法のように、水蒸気加熱装置21による加熱後の水蒸気を各試錐管3の貫通孔3aを介して地中Mに注入する水蒸気注入工程を実施しながら、オゾン含有ガスを各試錐管5の貫通孔5aを介して地中Mに注入するオゾン含有ガス注入工程も並行して実施する並行注入工程と、各試錐管3の貫通孔3aを介して水蒸気とオゾン含有ガスとを地中Mに注入する混合気体注入工程との双方の工程を実施するようにするのが望ましい。この点に関しては、前記混合気体注入工程を実施する際に、各試錐管5の貫通孔5aを介してオゾン含有ガスを地中Mに注入するオゾン含有ガス注入工程を省略した場合でも同様のことが言える。にも拘わらず、前記混合気体注入工程(前記オゾン含有ガス注入工程も並行して実施する場合は該オゾン含有ガス注入工程も含む。)は実施せずに省略することもできる。省略したとしても、前記並行注入工程を実施すれば、汚染領域Rの地中MのVOCsを小領域ごとに確実に浄化することができる。
【0047】
また、上述した実施の形態の汚染地盤の浄化方法においては、各小領域R1ないしR10を略正六角形状からなる小領域とすると共に、略正六角形状の各頂点に相当する6箇所の地点A…に試錐管5を貫入するようにしたが、貫入する試錐管5の本数を各小領域ごとにさらに6本ずつ追加して1本の試錐管3の周囲に貫入する試錐管5の本数を合計12本としてもよい。図11は、小領域R1についてだけ図示したもので、該小領域R1の地点A…に貫入された6本の試錐管5に加え、地点B…にもさらに6本の試錐管5が貫入され、合計12本の試錐管5が貫入された地面を上方から見た状態を示している。これらの地点B…は、図11に一点鎖線で示す略正六角形状の各頂点に相当する地点に位置付けられている。これら12本の試錐管5の貫通孔5aを介して地中Mにオゾン含有ガスを注入することで、試錐管3の周囲外方に向かって拡散しようとする気化したVOCsは、各試錐管5に供給されるオゾン含有ガス中のオゾンにより漏れなく確実に浄化される。
【符号の説明】
【0048】
3 試錐管(第一の試錐管)
3a 貫通孔(注入孔)
5 試錐管(第二の試錐管)
5a 貫通孔(注入孔)
M 地中
T1 温度(下限温度)
T4 温度(上限温度)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11