(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基材層表面に過熱蒸気を接触させる工程の前又は前記基材層表面に前記アンダーコート層形成剤を接触させる工程の前に、弱酸性水溶液を前記基板に接触させる工程を設けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のマスクの形成方法。
樹脂層が基材層の表面に照射線硬化型の樹脂液又は樹脂の溶液を塗布または散布、噴霧あるいは吹き付け後、乾燥して形成されたものである請求項1〜9のいずれかに記載のマスクの形成方法。
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法により硬化したマスク層を形成した後、マスク層の未硬化部分を除去して鋳型部を形成し、この鋳型部に電鋳メッキ処理を施して電鋳部品を形成し、前記鋳型部から前記電鋳部品を取り除き、前記電鋳部品からマスク層を除去することを特徴とする電鋳部品の製造方法。
基材層の表面にアンダーコート層を形成し、このアンダーコート層上に電鋳メッキ処理を施した後、メッキ層の上に請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法により硬化したマスク層を形成し、前記マスク層の未硬化部分を除去して鋳型部を形成した後、以下の(I)又は(II)のいずれかの処理を行い、
(I) 露出した下層のメッキ層の表面に過熱蒸気を接触させた後、前記メッキ層の表面にアンダーコート層形成剤を接触させてアンダーコート層を形成する
(II) 露出した下層のメッキ層の表面にアンダーコート層形成剤を接触させ、前記メッキ層の表面の前記アンダーコート層形成剤に、過熱蒸気を接触させる
前記アンダーコート層上に上層部となる電鋳メッキ処理を施すことにより多層状の電鋳部品を形成し、多層状化した前記電鋳部品を基材層から取り除き、硬化したマスク層を前記電鋳部品から除去することを特徴とする電鋳部品の製造方法。
基材層の表面にアンダーコート層を形成する工程及び/又は硬化したマスク及び前記メッキ層表面にアンダーコート層を形成する工程では、過熱蒸気を用いることを特徴とする請求項16に記載の電鋳部品の製造方法。
基材層をスクリーン印刷用のメッシュシートとし、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法により硬化したマスク層を形成した後、マスク層の未硬化部分を除去してスクリーン印刷のペーストが通過する開口部を形成するスクリーン印刷製版の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の処理方法では、表面処理剤によって金属箔層の表面を粗面化できたとしても、その後の工程で表面の処理液を水洗したり、乾燥させたりしてから、ドライフィルムと接着するため、その際に、粗面化した活性表面に、酸化皮膜が形成される。
【0009】
したがって、金属箔膜とドライフィルムとの間には、この酸化皮膜が介在することとなる結果、配線パターンを高密度化したり、細線化したり、薄化したりすることに対応できるだけの十分な密着性が得られなくなるといった不都合を生じていた。
【0010】
そのため、ドライフィルムを加熱して金属箔層に圧接してラミネートすることで密着性を高めることが行われているが、この場合、加熱によってドライフィルムが伸びるため、フィルム面が歪み、綺麗に接着することが困難になるとともに、加熱や圧接にエネルギーと時間を要する上、特殊な装置が必要となるため、コストが嵩むことになる。
【0011】
また、金属箔層の表面を粗面化することで、フォトレジストの密着性は改善されるが、凹みの中に潜り込んだフォトレジスト液(光感光性樹脂)が現像しきれずに残ることもあり、製品の特性上支障を来すなどの不都合を生じる。
【0012】
本発明は、係る実情に鑑みてなされたものであって、金属層等の基材層の表面に、樹脂層(フォトレジスト)を簡単に且つ確実に密着した状態で設けて形成することができるマスクの形成方法と、これを利用したプリント配線基板の製造方法、電鋳部品の製造方法およびスクリーン印刷製版の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するための本発明の第一のマスクの形成方法は、請求項1に記載するように、基材層の表面に過熱蒸気を接触させる工程と、前記基材層の表面に
アンダーコート層形成剤を接触させてアンダーコート層を形成する工程と、前記アンダーコート層の表面に、照射線によって硬化する樹脂層を設けて、前記基材層の表面に、前記アンダーコート層を介して前記樹脂層を積層させ、このアンダーコート層と樹脂層とからなるマスク層を形成する工程と、前記マスク層の所定部位に照射線を照射することによって、当該照射部位を硬化させた後、未硬化マスク層を除去して
前記マスク層を形成させる工程とを有し、
前記アンダーコート層形成剤が、没食子酸、ピロガロール、タンニン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、グリコール酸、グリセリン酸、オキシ吉草酸、サリチル酸、マンデル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸又はフタル酸或いはそれらのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、或いはEDTAのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩の中から選ばれた少なくとも1種以上を含むものである(アンダーコート層の形成までについては、
図8(a)(i)参照)。
【0014】
前記過熱蒸気がアンダーコート層形成剤を含有し、前記過熱蒸気を接触させる工程と当該基材層の表面にアンダーコート層を形成することを同時に行うようにしてもよい(同
図8(a)(ii)参照)。
すなわち請求項2に記載するように、基材層の表面に、アンダーコート層形成剤を含有する過熱蒸気を接触させ、前記過熱蒸気を接触させると同時に前記基材層の表面にアンダーコート層を形成する工程と、前記アンダーコート層の表面に、照射線によって硬化する樹脂層を設けて、前記基材層の表面に、前記アンダーコート層を介して前記樹脂層を積層させ、このアンダーコート層と樹脂層とからなるマスク層を形成する工程と、前記マスク層の所定部位に照射線を照射することによって、当該照射部位を硬化させた後、未硬化マスク層を除去して前記マスク層を形成させる工程とを有し、前記基材層は、銅又はステンレスで形成され、前記アンダーコート層形成剤が、ピロガロール及び酒石酸を含むものとしてもよい。
このように、本発明では二液型の二工程で基材層の表面にアンダーコート層を形成してもよいし、一液型の一工程で基材層の表面に一挙にアンダーコート層を形成するようにしてもよい。過熱蒸気に使用する水溶液は酸性、中性、アルカリ性のいずれでもよい。前者の方法(特に酸性水溶液とアルカリ水溶液を用いた場合)は、より強固なアンダーコート層を形成できるという利点があり、後者の方法は工程を短縮してコストを削減できるという利点がある。
【0015】
上記のマスクの形成方法における基材層としては、請求項3に記載するように、銅又は銅を含む合金、鉄又は鉄を含む合金、ニッケル又はニッケルを含む合金、アルミニウム又はアルミニウムを含む合金、亜鉛又は亜鉛を含む合金、鉛又は鉛を含む合金、コバルト又はコバルトを含む合金、錫又は錫を含む合金、チタン又はチタンを含む合金、銀又は銀を含む合金、金又は金を含む合金或いは白金又は白金を含む合金から選択された金属の層を用いることができる。樹脂の場合は、樹脂層と同一のものであってもよいし、異なる種類のものであってもよい。具体的には、ポリプロピレン(PP樹脂)、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂・ポリべンゾイミダゾール(PBI)樹脂などが挙げられる。また、無機材料の場合は、セラミックス、ガラス、石英などが挙げられる。
また、本発明の第二のマスクの形成方法は、請求項4に記載するように、前記基材層の表面にアンダーコート層形成剤を接触させる工程と、前記基材層の表面の前記アンダーコート層形成剤に、前記過熱蒸気を接触させる工程と、前記基材層に形成された前記アンダーコート層の表面に、照射線によって硬化する樹脂層を設けて、前記基材層の表面に、前記アンダーコート層を介して前記樹脂層を積層させ、このアンダーコート層と樹脂層とからなるマスク層を形成する工程と、前記マスク層の所定部位に照射線を照射することによって、当該照射部位を硬化させた後、未硬化マスク層を除去して前記マスク層を形成させる工程とを有し、
前記アンダーコート層形成剤が、没食子酸、ピロガロール、タンニン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、グリコール酸、グリセリン酸、オキシ吉草酸、サリチル酸、マンデル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸又はフタル酸或いはそれらのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、或いはEDTAのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩の中から選ばれた少なくとも1種以上を含む方法としてある(同
図8(b)(i)参照)。
請求項
5に記載するように、前記アンダーコート層形成剤が、金属イオン及び/又は金属酸化物(触媒)を含むものとしてもよい(同
図8(b)(ii)参照)。
金属の基材層にこのようなアンダーコート層形成剤を用いることで密着性がより高まり、また、ガラス、石英、セラミック、樹脂などの非金属の基材層にこのようなアンダーコート層形成剤を用いることで、メッキ等の処理をしなくてもアンダーコート層と非金属の基材層との高い密着性を得ることができる。
この第二のマスクの形成方法では、請求項
6に記載するように前記アンダーコート層形成剤は、基材層を立ててもアンダーコート層形成剤が垂れ落ちない程度の粘性を有するジェル状のものとするとよい。また、第一のマスクの形成方法においても、過熱蒸気接触後にアンダーコート層を形成する場合に、アンダーコート層形成剤にジェル状の粘性を付与してもよい。
【0016】
上記の第一のマスクの形成方法及び第二のマスクの形成方法における前記過熱蒸気としては、請求項
7に記載するように、水(純水含む)のほかに、酸性水溶液やアルカリ水溶液を用いることができ、いずれの水溶液でも良好なアンダーコート層を形成することができる。酸性水溶液やアルカリ水溶液の過熱蒸気を用いることで、基材層の表面の酸化皮膜を除去して表面を活性化することができる。
請求項
8に記載するように、前記基材層表面に過熱蒸気を接触させる工程の前又は前記基材層表面に前記アンダーコート層形成剤を接触させる工程の前に、弱酸性水溶液を前記基板に接触させる工程を設けても良い。このような工程は、酸性水溶液又はアルカリ水溶液の過熱蒸気を用いる場合も有効であるが、水又は純水の過熱蒸気を用いる場合に特に有効である(同
図8(a)(b)の各(iii)及び(iv)参照)。
第一のマスクの形成方法では、請求項
9に記載するように、前記基材層表面に過熱蒸気を接触させる工程の前に、金属イオン及び/又は金属酸化物とアンダーコート層形成剤を含有する弱酸性水溶液を前記基板に塗布する工程を設けてもよい。
【0019】
本発明において、「接触」とは、前記各種水溶液や過熱蒸気が、基材層の表面に触れることをいうのであり、このように本発明で使用される各種水溶液や過熱蒸気が、基材層の表面に触れることができるのであれば、特にその接触方法については限定されるものではない。
【0020】
本発明において金属イオン及び/又は金属酸化物としては、錫、鉛、銅、アンチモン、バリウム、ビスマス、カドミウム、コバルト、インジウム、ニッケル、モリブデン、パラジウム、銀、金、白金、セレン、テルル、ジルコニウム又はタングステンから選ばれた少なくとも1種以上となされたものが挙げられる。
【0021】
本発明で用いられる樹脂層(フォトレジスト)としては、請求項
9に記載するように、照射線硬化型のドライフィルム又は液レジストで形成されたもの
、或いは請求項10に記載するように、基材層の表面に照射線硬化型の樹脂液又は樹脂の溶液を塗布または散布、噴霧あるいは吹き付け後、乾燥して形成されたものが挙げられる。
【0022】
本発明に係るマスクの形成方法においては、前述方法でアンダーコート層を形成し、水洗した後、室温から
80℃の温度範囲、好ましくは室温から55℃の温度範囲、特に好ましくは室温〜45℃の温度範囲で乾燥した後、この乾燥後のアンダーコート層の表面に、照射線によって硬化する樹脂層(フォトレジスト)が設けられる。
このような工程を経て基材層の表面に、アンダーコート層と樹脂層とからなるマスク層を形成し、このマスク層の所定部位に照射線を照射することによって、当該照射部位を硬化させた後、未硬化マスク層を溶剤で除去して硬化したマスク層を形成するのである。
【0023】
この乾燥方法としては特に限定されるものではないが、具体的には、例えば自然乾燥、真空乾燥、加熱乾燥、送風乾燥または熱風乾燥などが挙げられる。
【0024】
本発明において、アンダーコート層は、アンダーコート層形成剤と、基材層表面に生成した基材を構成する成分の元素イオンとの結合によって形成された化合物層であり、その厚さは0.1〜0.01μmの範囲であると推考される。
なお、本発明において、アンダーコート層は、金属イオン及び/又は金属酸化物の触媒を含むアンダーコート層形成剤と、基材層表面に生成した基材を構成する成分の元素イオンとの結合によって形成された化合物層であり、その厚さは0.1〜0.01μmの範囲であると推考される。
【0025】
そして、本発明に係るマスクの形成方法において、照射線としては、赤外線、近赤外線、紫外線、電子線又はレーザーなどが挙げられる。
【0026】
前記課題を解決するための本発明のプリント配線基板の製造方法は、
請求項13に記載するように、絶縁層上に
金属シード層を介して設けられた
金属層の表面、又は絶縁層上に設けられた
金属層の表面に
、前記金属層を基材層として、前述の方法によって、硬化したマスク層を形成した後、このマスク層によって保護されていない金属シード層および金属層、又は金属層を除去して、マスク層によって保護された金属シード層および金属層、又は金属層を導体パターンとして形成した後、前記硬化したマスク層を除去することによって得られるものである。
【0027】
又、前記課題を解決するための本発明のプリント配線基板の製造方法は、
請求項14に記載するように、絶縁層上に設けられた
金属シード層の表面に
、前記金属シード層を基材層として、前述の方法によって、硬化したマスク層を形成した後、このマスク層の未硬化部分を除去してパターンを形成し、このパターン箇所にメッキ処理を施して導体パターンを形成した後、前記マスク層およびこのマスク層によって保護された金属シード層を除去することによって得るものである。
【0028】
尚、本発明においては、金属シード層として、必要に応じて、金属シード層の表面に、更に金属層を積層したものを用いても良いのである。
【0029】
前記課題を解決するための本発明の電鋳部品の製造方法においては、前述の方法により硬化したマスク層を形成した後、マスク層の未硬化部分を除去して鋳型部を形成し、この鋳型部に電鋳メッキ処理を施して電鋳部品を形成する。そして、これを加熱又は冷却して温度差を与えて硬化したマスク層及び電鋳部品の膨張又は収縮によりこれらの剥離性を向上させるなどして、硬化した電鋳部品を鋳型部から取り除き、前記電鋳部品からマスク層を除去する。
【0030】
前記課題を解決するための本発明の別の電鋳部品の製造方法は、請求項16に記載するように、基材層の表面にアンダーコート層を形成し、このアンダーコート層上に電鋳メッキ処理を施した後、メッキ層の上に請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法により硬化したマスク層を形成し、前記マスク層の未硬化部分を除去して鋳型部を形成した後、以下の
(I)又は(II)のいずれかの処理を行い、(I) 露出した下層のメッキ層の表面に過熱蒸気を接触させた後、前記メッキ層の表面にアンダーコート層形成剤を接触させてアンダーコート層を形成する、(II) 露出した下層のメッキ層の表面にアンダーコート層形成剤を接触させ、前記メッキ層の表面の前記アンダーコート層形成剤に、過熱蒸気を
接触させる、この処理の後に前記アンダーコート層上に上層部となる電鋳メッキ処理を施すことにより多層状の電鋳部品を形成し、多層状化した前記電鋳部品を基材層から取り除き、硬化したマスク層を前記電鋳部品から除去することを特徴とするものである。
この場合、基材層の表面にアンダーコート層を形成する工程及び/又は硬化したマスク及び前記メッキ層表面にアンダーコート層を形成する工程では、過熱蒸気を用いてもよく、前記過熱蒸気がアンダーコート層形成剤を含有するものであってもよい。
【0031】
本発明による電鋳部品としては、従来の電鋳部品に使用されているものでれば、特に限定されることなく製造することができるのであり、具体的には、例えば、インクジェットヘッドのノズル部品、振動板部品、各種精密機械用部品、蒸着用マスク、ファインメッシュ、ICタグ、フラットコイル、配線基板の実装用バンプ、半導体配線基板、ホログラムの原版、MLCC内部電極印刷治具や凹版印刷板など、種々の部品の電鋳部品製造用技術に適用することができる。
【0032】
前記課題を解決するための本発明のスクリーン印刷製版の製造方法は、基材層をスクリーン印刷用のメッシュシートとし、前述の方法により硬化したマスク層を形成した後、マスク層の未硬化部分を除去してスクリーン印刷のペーストが通過する開口部を形成するものである。
【発明の効果】
【0033】
以上述べたように、本発明に係るマスクの形成方法によると、基材層の表面に、アンダーコート層と樹脂層(フォトレジスト)とからなるマスク層を形成し、このマスク層の所定部位に照射線を照射することによって、当該照射部位を硬化させた後、未硬化マスク層を除去して硬化したマスク層を形成することができる。
【0034】
このように、基材層の表面にアンダーコート層を形成すると、基材層における活性表面の酸化が防止されると共に、このアンダーコート層とドライフィルムなどの樹脂層(フォトレジスト)との密着性が極めて良好になり、その結果、加熱することなくアンダーコート層にドライフィルム(樹脂層)を圧着できるので、マスク層の高密度化、高精度化が実現可能になって信頼性の高い微細なパターンのマスク層が得られるのである。
【0035】
又、本発明に係るプリント配線基板の製造方法においては、本発明のマスクの形成方法を利用するものであり、金属層の表面にアンダーコート層が極めて強固に密着した状態で形成されるので、金属層における活性表面の酸化が防止されるのであり、又、このアンダーコート層とドライフィルムなどの樹脂層とは有機物同士で親和性が高く、至極密着性が良好になる結果、ドライフィルムなどの樹脂層を加熱することなくアンダーコート層に圧着することができるのである。従って、ドライフィルムなどの樹脂層を加熱することなく圧着することができるから、樹脂層の伸びや縮み更に歪みなどの発生が無く、アンダーコート層の表面に樹脂層を綺麗に形成できるのであり、その結果、導体パターンの高密度化、高精度化の実現が可能になって信頼性の高い微細な導体パターンを備えるプリント配線基板が得られるのであり、しかも熱源を必要としないから、その作業を安全に行うことができるのである。
【0036】
また、本発明においては、金属層の表面を粗面化する必要がないので、樹脂液が凹みの中に浸入するなどの弊害もなく、この点からも、信頼性の高い微細な導体パターンを備えるプリント配線基板が得られるのであり、又、複雑な装置を用いることなく、プリント配線基板を廉価に製造することができる。また、表面を粗面化することが無いため高精度の高周波回路を形成することができるのである。
【0037】
更に、本発明に係る電鋳部品の製造方法においては、本発明のマスクの形成方法を利用するものであり、硬化したマスク層を形成した後、マスク層の未硬化部分を除去して鋳型部を形成し、この鋳型部に電鋳メッキ処理を施して電鋳部品を形成するものであり、この場合、硬化したマスク層の形成によって微細且つ高精度の鋳型部を製造できる結果、高精度で信頼性の高い微細な電鋳部品を得ることができることから、高アスペクトのコンタクト印刷や連続印刷時の座標位置のずれを抑えることも可能で、またインク残りのゴーストの発生も無くメンテナンスも容易となる。
【0038】
本発明に係るスクリーン印刷製版の製造方法においては、本発明のマスクの形成方法を利用することによってアンダーコート層を形成するものであり、硬化したマスク層を形成した後、マスク層の未硬化部分を除去してスクリーン印刷のペーストが通過する開口部を形成するものであり、この場合、硬化したマスク層がアンダーコート層によってスクリーン印刷用の金属メッシュシートと強固に密着し、当該マスク層によって微細且つ高精度のスクリーン印刷製版を製造できる結果、高精度で信頼性の高い微細なスクリーン印刷を行うことができる製版を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係る実施の形態を、図面を参照にして説明する。
図1は、マスク10の形成方法の概略図であり、
図2及び
図3は
図1に示すマスク10の形成方法を利用したプリント配線基板4の製造工程を示す概略図であり、
図4は
図1に示すマスク10の形成方法を利用した電鋳部品5の製造工程を示す概略図である。
【0041】
すなわち、本発明に係るマスク10の形成方法は、基材層2の表面に、過熱蒸気(以下、「スチーム」と記載することがある)を接触させる。過熱蒸気の温度及び吐出圧力は、基材層4の種類や過熱蒸気のもととなる水溶液の種類(酸性水溶液、水(純水を含む)、アルカリ水溶液)などによって異なるが、温度としては80℃〜300℃、吐出圧力としては0.32MPa程度を目安とするとよい。
また、過熱蒸気は、電解酸性水のPH34程度の弱酸性水溶液を用いてもよいし、アンダーコート層形成剤を含有するものであってもよい。
図1(a)に示すように、基材層2の表面に過熱蒸気(矢印で示す)を接触させアンダーコート層形成剤由来のアンダーコート層3を形成する工程(
図1(a)、
図1(b))と、このアンダーコート層3の表面に、照射線によって硬化する樹脂層1としてのドライフィルムを室温で圧着して設け、この基材層2の表面に、アンダーコート層3を介して前記樹脂層1を密着させ、前述のアンダーコート層3と樹脂層1とからなる紫外線硬化型のマスク層31を形成する工程と、このマスク層31に、照射線を照射することによって照射部位を硬化させた後、未硬化マスク層31を除去して硬化したマスク10を形成するものである(
図1(c)及び
図1(d))。
アンダーコート層形成剤を含有する過熱蒸気を用いれば、
図1(a)(b)に示す工程は一つにすることができる。
【0042】
前記基材層2としては、銅又は銅を含む合金、鉄又は鉄を含む合金、ニッケル又はニッケルを含む合金、アルミニウム又はアルミニウムを含む合金、亜鉛又は亜鉛を含む合金、鉛又は鉛を含む合金、コバルト又はコバルトを含む合金、錫又は錫を含む合金、チタン又はチタンを含む合金、銀又は銀を含む合金、金又は金を含む合金或いは白金又は白金を含む合金から選択された金属の層が好適に用いられる。
本発明の方法は、例えば樹脂、ガラス、石英、セラミックなどの非金属で形成された基材層2にも適用が可能で、これらの基材層2においてもメッキなどの処理を施す必要とすることなく、密着性の高いアンダーコート層を形成することが可能である。
基材層2として樹脂を用いる場合は、樹脂層と同一のものであってもよいし、異なる種類のものであってもよい。具体的には、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂・ポリべンゾイミダゾール(PBI)樹脂などが挙げられる。
【0043】
ここでアンダーコート層3形成剤を含有する過熱蒸気用の水溶液としては、当該水溶液全体に対して、アンダーコート層形成剤の配合割合は0.05〜10重量%の範囲に調整するが望ましい。このように、アンダーコート層形成剤が水溶液全体に対して0.05重量%未満では少なすぎて所要の効果を得ることができないのであり、一方、10重量%を超えると、多すぎて配合する意味が無く好ましくない。
【0044】
ところで、本発明においては、前記水溶液に対し、更に、重金属イオン及び/又は金属酸化物を配合することが好ましい態様となる。
金属の場合は、密着がより強固に、非金属の場合は、金属膜が形成されることで、強固に密着する。
【0045】
本発明においては、所望により、金属イオン及び/又は金属酸化物を配合しても良く、この場合、水溶液全体に対して、金属イオン及び/又は金属酸化物の配合割合はその効果や安全性、更に取扱性や作業環境等の観点から、0.01〜5重量%の範囲、好ましくは、0.1〜3重量%の範囲に調整するのが一層望ましい。
【0046】
金属イオン及び/又は金属酸化物の添加量が水溶液全体に対して、0.01重量%未満では金属イオンの添加量が少な過ぎて所要の効果が得られないため好ましくなく、一方、5重量%を超えると、触媒効果に限界が生じるので意味が無いだけでなく、不経済となるので好ましくない。
【0047】
なお、これらの金属イオン及び/又は金属酸化物は、一種類のみならず二種類以上の複数種を適宜混合して添加しても良いのである。
【0048】
具体的に前記金属イオン及び/又は金属酸化物を構成する金属としては、錫、鉛、銅、アンチモン、バリウム、ビスマス、カドミウム、コバルト、インジウム、ニッケル、モリブデン、パラジウム、銀、金、白金、セレン、テルル、ジルコニウム又はタングステンから選ばれた少なくとも1種又はそれらの混合物を挙げることができる。
【0049】
又、前記水溶液において、ピロガロール、ビスマスを含む三成分系のものが望ましく、この場合、水溶液全体において、ピロガロールの配合割合を0.05〜5.0重量%の範囲、ビスマスの配合割合を0.01〜3重量%の範囲とするのが望ましい。
【0050】
本発明において、前記水溶液にはアンダーコート層形成剤を配合してもよいが、このアンダーコート層形成剤としては、基材層2表面の酸化皮膜2aを、弱酸性水溶液を過熱蒸気として用いて溶解、除去して当該基材層2表面を活性化した際、その活性表面に生成した基材層2を構成する成分の元素イオンとアンダーコート層形成剤とが結合して当該基材層2表面にアンダーコート層3を形成するための物質であれば特に限定されるものではない。
【0051】
そして、このアンダーコート層3が基材層2の表面に形成されることによって当該表面が酸化されるのを防止することができるのである。
【0052】
このアンダーコート層3を形成することができるアンダーコート層形成剤としては、没食子酸、ピロガロール、タンニン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、グリコール酸、グリセリン酸、オキシ吉草酸、サリチル酸、マンデル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸又はフタル酸或いはそれらのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、或いはEDTAのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩の中から選ばれた少なくとも1種以上のものを用いることができる。
本発明においては、アンダーコート層形成剤において、その官能基が主として基材層2を構成する成分の元素イオンと結合して化合物を形成し、一方、有機基が基材層2の活性表面の外側を向くので、基材層2の活性表面に形成されたアンダーコート層3と樹脂層1との密着性がより一層向上するのである。
【0053】
このアンダーコート層3の形成は、前述のように、アンダーコート層形成剤を含有する一液型の水溶液を過熱蒸気として用いて処理するものであってもよいが、これに代えて、まず基材層2をアンダーコート層形成剤を含有しない水溶液の過熱蒸気で処理し、次いで、アンダーコート層形成剤を含有する水溶液で処理する二液型の水溶液で処理するものであってもよい。
【0054】
本発明において、二液型の水溶液で処理する場合、まず、基材層2の表面に、前述の水溶液を過熱蒸気として接触させる。酸性水溶液又はアルカリ水溶液を用いれば、基材層2表面の酸化皮膜2aを除去するとともに、当該基材層2の表面を活性化することができる。
【0055】
次いで、得られた基材層2の表面にアンダーコート層形成剤を含有する第2の水溶液を接触させて、当該基材層2の表面にアンダーコート層3を形成するのである。
【0056】
この第2の水溶液としては酸性、中性又はアルカリ性のいずれの水溶液も用いることができる。
【0057】
本発明において、過熱蒸気の水溶液にはアンダーコート層形成剤又は触媒を適宜配合しても良いし、第2の水溶液には触媒を適宜配合しても良いのである。
【0058】
前記アンダーコート層形成剤の添加量としては、対象物である基材層2の素材の組成等によって適宜決定されるものであり、特に限定されるものではないが、一般的には、前記水溶液全体に対して、0.01〜10.0重量%の範囲とするのが好ましく、更に、0.1〜5.0重量%程度とするのが一層好ましい。
【0059】
なお、これらの有機酸は、所望により、一種類のみならず二種類以上の複数種を適宜混合して添加しても良いのである。
【0060】
次に、本発明において、マスクの形成方法ついて詳細に説明する。
【0061】
図1(a)に示すように、基材層2の表面に過熱蒸気(矢印で示す)を接触させる。電解水の弱酸性水溶液を過熱蒸気として接触させると、基材層2の表面に形成されている酸化皮膜2aを除去することができる。過熱蒸気の温度は、80℃〜300℃程度、吐出圧力は0.35MPa程度とするのが好ましい。過熱蒸気として水又は純水を用いる場合は、過熱蒸気の温度及び吐出圧力は、上記の範囲内で高めのものを選択するとよい。
アンダーコート層は、過熱蒸気の接触後にアンダーコート層形成剤を基材層に接触させて形成してもよいし、アンダーコート層形成剤を含む過熱蒸気を接触させて、形成してもよい(
図1(b))。
酸性水溶液を用いて基材層2の表面における酸化皮膜2aを除去すると、基材層2の表面が活性化し、その活性表面に生成した基材層2を構成する成分の元素イオンと、この工程の後又は加熱蒸気や酸性水溶液にアンダーコート層形成剤を含ませることで、アンダーコート層形成剤と活性化した表面とが結合して、アンダーコート層3が基材層2の表面に形成される。アルカリ水溶液を用いた場合も同様である。
【0062】
基材層2の表面にアンダーコート層3を形成した後、この基材層2の表面は水洗、乾燥される。この際、基材層2の表面のアンダーコート層3は、基材層を構成する成分の元素イオンとの結合によって形成された化合物層によって、保護されているのでその酸化が防止されると共に、基材層2とアンダーコート層3との密着性が極めて良好になるのである。この乾燥の際、条件としては特に限定されるものではないが、具体的には、乾燥温度を80℃以下、好ましくは室温から55℃の温度範囲、特に好ましくは室温〜45℃の温度範囲に制御し、自然乾燥、真空乾燥、加熱乾燥、送風乾燥または熱風乾燥などの方法によって乾燥するのが好ましい。
【0063】
次いで、
図1(c)に示すように、乾燥させたアンダーコート層3の表面に、照射線、この場合、紫外線により硬化する樹脂層1を設けて、基材層2の表面に、前記アンダーコート層3を介して前記樹脂層1を積層させ、このアンダーコート層3と樹脂層2とからなる紫外線硬化型のマスク層31を形成する。このアンダーコート層3は、基材層2の表面に密着した状態で形成されるのであり、このアンダーコート層3は、樹脂層1との相性が良く、当該樹脂層1との密着性を著しく向上させるのである。
【0064】
本実施例においては、基材層2表面のアンダーコート層3上に、紫外線硬化型の樹脂液、或いは紫外線硬化型の樹脂の溶液を接触させ、乾燥して紫外線硬化型のマスク層31を形成してもよく、或いは紫外線硬化型のドライフィルム(樹脂層1)を室温、或いは必要に応じて加熱しながら圧着して紫外線硬化型のマスク層31を形成してもよいのである。このドライフィルム(樹脂層1)の貼り合わせの際、既に基材層2の表面にアンダーコート層3が形成されているから、当該ドライフィルム(樹脂層1)との接合性が良く、その結果、工場での安全な温度範囲、つまり室温もしくは比較的低温(20〜45℃)でも効果的にドライフィルム(樹脂層1)を貼り付けてマスク層31を形成することができる。このように比較的低温でマスク層31を形成すると、後述するように、後工程で微細且つ精密なパターンのマスク層10を形成することができるのである。
【0065】
更に、
図1(d)に示すように、紫外線硬化型のマスク層31を形成した後、その上から所定部位に紫外線を照射し、紫外線の照射部位を硬化させてマスク層10を形成する。この紫外線による処理は、マスク層31の表面に、紫外線の照射部と非照射部とからなるパターンを形成したパターンシートを設け、その上から紫外線を照射することによって処理するものであってもよいし、マスク層31の所定部位に、あらかじめプログラムしてあるパターン通りに紫外線を照射してパターン通りに硬化してもよいのである。
【0066】
このように、紫外線硬化型のマスク層31を硬化した後、未硬化部分のマスク層31が専用の溶剤で除去されて所定のパターン通りに硬化されたマスク層10が形成される。この場合、マスク層31が、前述のように比較的低温で形成されているから、樹脂層1の皺や浮き更に伸びや歪み更に隙間などが無く、このため、微細且つ精密で、信頼性の高いパターンのマスク10を形成することができる。
【0067】
次に、前述のマスク10の形成方法を利用したプリント配線基板4の製造工程について説明する。
【0068】
図2は、サブトラクティブ法によるプリント配線基板4の製造工程を示す。
【0069】
図2に示すように、このプリント配線基板4の製造方法は、絶縁層40上に金属シード層(基材層)21を介して設けられた金属層(基材層)22の表面に、アンダーコート層形成剤を含有する電解水の弱酸性水溶液を過熱蒸気として接触させ、前述の方法により、アンダーコート層3を形成し、このアンダーコート層3上に紫外線硬化型の樹脂層1を設けることにより紫外線硬化型のマスク層31を形成する(
図2(a)〜
図2(e))。次に、このマスク層31の上から所定部位に紫外線を照射することにより、当該マスク層31が硬化した所定部位(マスク層10)とそれ以外の未硬化部位とを形成する。
【0070】
次いで、前記マスク層31の未硬化部位を溶剤で除去して金属シード層21および金属層22を露出させた後(
図2(f))、この露出した金属シード層21および金属層22を溶剤で除去して、マスク層10の下に金属シード層21aと金属層22aとからなる導体パターンAを形成した後(
図2(g)及び
図2(h))、前記マスク層10を除去することによってプリント配線基板4が得られる。
プリント配線基板4の製造方法を更に詳細に説明する。
【0071】
図2(a)に示すように、絶縁層40上に金属シード層21が設けられる。
前記絶縁層40としては、紙フェノール基板、紙エポキシ基板、ガラスコンポジット基板、ガラスエポキシ基板、フッ素樹脂、セラミックス基板などのリジット基板、ポリイミドやポリエステルなどのフィルムからなるフレキシブル基板、またはこれらの複合基板の何れであってもよい。
【0072】
金属シード層21は、この絶縁層40の表面に金属層22を形成するにあたり、絶縁層40と金属層22との密着性を向上させるために、絶縁層40の表面に設けられる。この金属シード層21としては、NiやNi−CrやCuなどによって構成される。この金属シード層21は、物理蒸着、化学蒸着、スパッタリングなどによって設けられる。
【0073】
図2(b)に示すように、この金属シード層21の表面には金属層22が設けられる。この金属層22は、後に導体パターンAとなるため、従来公知の金属、具体的には、例えば銅、銅合金、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、錫、ステンレス、チタン、銀又は金或いはこれらの合金などの金属で形成されている。この金属層22は、電解メッキ等の公知の方法によって形成される。
【0074】
次いで、
図2(c)および(d)に示すように、この金属層22の表面には、アンダーコート層形成剤を含有する電解水の過熱蒸気(矢印で示す。先の過熱蒸気と同様に、酸性水溶液、水(純水を含む)、アルカリ水溶液のいずれでも可)として接触させアンダーコート層3を形成した後、水洗、乾燥させた後、
図2(e)に示すように、前記アンダーコート層3上に紫外線硬化型の樹脂層1を設けて紫外線硬化型のマスク層31を形成する。この場合、アンダーコート層3を介して、金属層22とマスク層31との密着性が極めて良好になるのである。
【0075】
更に、
図2(f)に示すように、前記マスク層31の所定部位に紫外線を照射して当該所定部位を硬化し、未硬化部位を溶剤で除去して硬化したマスク層10を形成する。この際、紫外線による処理は、マスク層31上に導体パターンAを形成した写真原版を設けて紫外線を照射し、紫外線が透過した部分だけを硬化させてもよいし、或いは予め、プログラミングされた導体パターンA通りに紫外線を照射して当該導体パターンAを形成してもよいのである。このように、前記マスク層31の上に所定のパターン通りに紫外線を照射し、硬化されたマスク層10部位とそれ以外の未硬化部位とを形成した後、未硬化部位が溶剤で除去される。
【0076】
そして、
図2(g)に示すように、露出した金属シード層21および金属層22をエッチングして除去すると、硬化したマスク層10の下方に存在する金属シード層21aおよび金属層22aからなる導体パターンAが形成される。
【0077】
最後に、
図2(h)に示すように、硬化したマスク層10を除去してプリント線基板4が完成する。
【0078】
このようにして形成されたプリント配線基板4は、金属シード層21上に形成されたアンダーコート層3を介して金属層22が形成され、更にこの金属層22上に樹脂層1が隙間無く、しかも伸びや縮み更に歪みなどの発生がなく密着しているのであり、その結果、導体パターンの高密度化、高精度化の実現が可能になって信頼性の高い微細な導体パターンを備えるプリント配線基板が容易に得られるのである。
【0079】
なお、本実施の形態において、プリント配線基板4は、片面に導体パターンAを形成した片面基板について述べているが、両面基板であってもよい。
【0080】
図3は、セミアディティブ法によるプリント配線基板4の製造工程を示す。
このプリント配線基板4の製造方法は、絶縁層40上に設けられた金属シード層21の表面に、アンダーコート層形成剤を含有する過熱蒸気(先の過熱蒸気と同様に、酸性水溶液、水(純水を含む)、アルカリ水溶液のいずれでも可)として接触させ、前述の方法によりアンダーコート層3を介して紫外線硬化型の樹脂層1を設けて紫外線硬化型のマスク層31を形成する(
図3(a)〜
図3(d))。
【0081】
次に、この紫外線硬化型のマスク層31の上から所定部位に紫外線を照射することにより、当該マスク層31が硬化した所定部位(マスク層10)とそれ以外の未硬化部位11とを形成する。次いで、前記マスク層31の未硬化部位11を溶剤で除去して金属シード層21を露出させた後(
図3(e))、この露出した金属シード層21上にメッキ処理を施して導体パターンAを形成した後(
図3(f))、硬化したマスク層10とその下の金属シード層21とを除去して導体パターンAを形成することによってプリント配線基板4が得られる(
図3(g)及び
図3(h))。
【0082】
本発明において用いられる金属シード層21は、一層構造の金属層であっても良いし、2層構造の金属層であってもよい。また、このセミアディティブ法に用いられるアンダーコート層形成剤を含有する過熱蒸気(先の過熱蒸気と同様に、酸性水溶液、水(純水を含む)、アルカリ水溶液のいずれでも可)は、前述のサブトラクティブ法に用いられるものと同様のものが挙げられる。
【0083】
このようにして製造されたプリント配線基板4は、前述のサブトラクティブ法による場合と同様に、金属シード層21上にアンダーコート層3を介して樹脂層1が隙間無く、しかも伸びや縮み更に歪みなどの発生がなく強固に密着している結果、導体パターンの高密度化、高精度化の実現が可能になって信頼性の高い微細な導体パターンを備えるプリント配線基板が容易に得られるのである。
【0084】
特に、セミアディティブ法による場合、金属シード層21と紫外線硬化型の樹脂層31を硬化させて得たマスク層10との密着が悪いと、このマスク層10によって形成されるパターン11にメッキ処理を施した際、当該マスク10が剥離して不良品発生の原因となる懸念が生じるが、本発明の方法によると、このような不良品の発生を防止して製品の歩留りを向上させることができる。
【0085】
なお、本実施の形態においても、プリント配線基板4は、片面に導体パターンAを形成した片面基板について述べているが、両面基板であってもよい。
図4は、電鋳部品5の製造工程を示す。
【0086】
この電鋳部品5の製造方法は、基材層2の表面に、アンダーコート層形成剤を含有する過熱蒸気(先の過熱蒸気と同様に、酸性水溶液、水(純水を含む)、アルカリ水溶液のいずれでも可)として接触させ用い、前述の方法によりアンダーコート層3を形成し、このアンダーコート層3上に紫外線硬化型の樹脂層1を設けることにより紫外線硬化型のマスク層31を形成する(
図4(a)〜
図4(d))。この場合、前記基材層2としては従来公知の金属、樹脂または無機材料で形成されたものが挙げられる。
【0087】
次に、このマスク層31の上から所定部位に紫外線を照射することにより、当該マスク層31が硬化した所定部位(マスク層10)とそれ以外の未硬化部位とを形成した後、前記マスク層31の未硬化部位を溶剤で除去して基材層2を露出させると共に、鋳型部12を形成する(
図4(e))。
【0088】
次いで、
図4(f)及び
図4(g)に示すように、前記鋳型部12に電鋳メッキ処理を施して電鋳部品5を製造する。次の工程で、これを加熱又は冷却して、電鋳部品5を製造した直後との温度差を与えて硬化したマスク層10及び電鋳部品5の膨張又は収縮によりこれらの剥離性を向上させた後、硬化したマスク層10及び電鋳部品5を剥離して当該電鋳部品5を得るものである(
図4(h))。前記加熱温度は50〜250℃の範囲が望ましく、又、冷却温度はマイナス5℃からマイナス200℃の範囲が望ましく、所望により液体窒素を用いてもよいのである。又、電鋳部品5の剥離性を良好にするために、電鋳部品5の製造直後との温度差が150〜250℃程度となるように制御するのが望ましい。
【0089】
このようにして電鋳部品5が製造されるが、この電鋳部品5を製造するにあたり、基材層2上にアンダーコート層3を介して紫外線硬化型の樹脂層1が隙間無く、強固に密着した状態で形成される。この場合、前記樹脂層1には、伸びや縮み更に歪みなどの発生がなくアンダーコート層3に強固に密着している結果、高密度で高精度な信頼性の高い、優れた電鋳部品5を容易に得ることができる。又、本発明の方法によると、前述したとおり、基材層2とマスク10とが強固に密着しているので、不良品の発生を防止して製品の歩留りを向上させることができる。
【0090】
図5及び
図6は、本発明に係る多層電鋳部品の製造方法の各工程を示す工程図である。
【0091】
この多層電鋳部品(以下、電鋳部品5と記載する)の製造方法は、
図5(a)(b)に示すように、基材層2の表面に、過熱蒸気(矢印で示す。先の過熱蒸気と同様に、酸性水溶液、水(純水を含む)、アルカリ水溶液のいずれでも可)を接触させ、前述の方法によりアンダーコート層3を形成する(
図5(c))。アンダーコート層形成剤を含有する過熱蒸気を用いてもよい。そして、このアンダーコート層3上に電鋳メッキ処理を施し(
図5(d))、さらにメッキ層Mの上にアンダーコート層3を形成した後に、紫外線硬化型の樹脂層1を設けることにより紫外線硬化型のマスク層31を形成する(
図5(e))。この場合、基材層2としては従来公知の金属、樹脂または無機材料で形成されたものが挙げられる。
【0092】
次に、このマスク層31の上から所定部位に紫外線を照射することにより、当該マスク層31が硬化した所定部位(マスク層10)とそれ以外の未硬化部位とを形成した後、前記マスク層31の未硬化部位を溶剤で除去してメッキ層を露出させると共に、鋳型部12を形成する(
図5(f))。
【0093】
次いで、
図5(g)(h)に示すように、硬化マスクおよびメッキ層M表面に、アンダーコート層3を形成し、このアンダーコート層3上に前記鋳型部12に電鋳メッキ処理を施して電鋳部品5を製造する。この工程では、(b)の工程と同様に過熱蒸気又はアンダーコート層形成剤を含有する過熱蒸気(先の過熱蒸気と同様に、酸性水溶液、水(純水を含む)、アルカリ水溶液のいずれでも可)を硬化マスクおよびメッキ層M表面に接触させて、前記の方法によりアンダーコート層3を形成するようにしてもよい。次の工程で、これを加熱又は冷却して、電鋳部品5を製造した直後との温度差を与えて硬化したマスク層10及び電鋳部品5の膨張又は収縮によりこれらの剥離性を向上させた後、硬化したマスク層10及び電鋳部品5を剥離して当該電鋳部品5を得るものである(
図6(i)(j))。前記加熱温度は50〜250℃の範囲が望ましく、又、冷却温度はマイナス5℃からマイナス200℃の範囲が望ましく、所望により液体窒素を用いてもよいのである。又、電鋳部品5の剥離性を良好にするために、電鋳部品5の製造直後との温度差が150〜250℃程度となるように制御するのが望ましい。
【0094】
このようにして電鋳部品5が製造されるが、この電鋳部品5を製造するにあたり、メッキ層M上にアンダーコート層3を介して紫外線硬化型の樹脂層1が隙間無く、強固に密着した状態で形成される。この場合、前記樹脂層1には、伸びや縮み更に歪みなどの発生がなくアンダーコート層3に強固に密着している結果、高密度で高精度な信頼性の高い、優れた電鋳部品5を容易に得ることができる。又、本発明の方法によると、前述したとおり、基材層2とマスク10とが強固に密着しているので、不良品の発生を防止して製品の歩留りを向上させることができる。
【0095】
図7は、スクリーン印刷製版6の製造工程を示す。
【0096】
このスクリーン印刷製版6の製造方法は、絶縁層40の上に設けたスクリーン印刷用のメッシュシート60の表面に、アンダーコート層形成剤を含有する過熱蒸気(先の過熱蒸気と同様に、酸性水溶液、水(純水を含む)、アルカリ水溶液のいずれでも可)を用い、前述の方法によりアンダーコート層3を形成し、このアンダーコート層3上に紫外線硬化型の樹脂層1を設けることにより紫外線硬化型のマスク層31を形成する(
図7(a)〜
図7(d))。この場合、前記メッシュシート60としては従来公知の金属や樹脂で形成されたものが挙げられる。
【0097】
次に、このマスク層31の上から所定部位に紫外線を照射することにより、当該マスク層31が硬化した所定部位(マスク層10)とそれ以外の未硬化部位とを形成した後、前記マスク層31の未硬化部位を溶剤で除去してメッシュシート60を露出させてペースト(図示省略)が通過する開口部61を形成する(
図7(e))。
【0098】
次いで、
図7(f)に示すように、絶縁層40からメッシュシート60を剥がして上下反転させれば、スクリーン印刷製版6が完成する。
【0099】
このようにしてスクリーン印刷製版6が製造されるが、このスクリーン印刷製版6を製造するにあたり、メッシュシート60上にアンダーコート層3を介して紫外線硬化型の樹脂層1が隙間無く、強固に密着した状態で形成される。この場合、前記樹脂層1には、伸びや縮み更に歪みなどの発生がなくアンダーコート層3に強固に密着している結果、高密度で高精度な信頼性の高い、優れたスクリーン印刷製版6を容易に得ることができる。又、本発明の方法によると、前述したとおり、メッシュシート60とマスク10とが強固に密着しているので、不良品の発生を防止して製品の歩留りを向上させることができる。
以下、本発明に係る実施の形態について説明する。
【0100】
本発明の実施例1〜33を表1に示す。表1〜3の「No1〜33」のそれぞれは、実施例1〜33のそれぞれに対応する。
テスト基材(基材層2)として、
(1) SUS304(50mm×50mm×t1mm、平均Ra0.05、Ry0.18)
(2) 銅板 (50mm×50mm×t0.5mm、平均Ra0.04、Ry0.39)
(3) ガラス板 (75mm×25mm×t1.2mm、平均Ra0.02、Ry0.16)
(4) PP樹脂 (50mm×50mm×t0.2mm、平均Ra0.03、Ry0.16)
それぞれ:ミツトヨ社製 サーフテストSJ−301で測定)を用いた。
表では、各実施例における過熱蒸気(スチーム)の溶液の成分と溶媒、PH値、過熱蒸気の接触時間を示している。
【0101】
テスト基材(基材層2)の表面にアンダーコート層3を介して紫外線硬化型のドライフィルム(樹脂層1)を積層し、紫外線硬化型のマスク層31を形成した。次いで、この紫外線硬化型のマスク層31の表面全体に5分間紫外線を露光、硬化させて、硬化したマスク層10を表面全体に形成し、試験片を得た。
【0102】
このようにして得られた試験片のマスク層10には、縦横5mm間隔で切れ目を入れ、縦横5列の合計25マスのマス目を形成した。そして、各マス目の表面には、セロハンテープ(ニチバン社製:商品名セロテープ(登録商標)CT1535:)を貼付け、爪で何度か擦った後、テスト基材(基材層2)とテープとが90度の角度になるようにして3Nの剥離強度でT字剥離による密着性評価試験を行った。その結果を表1〜4の右欄の基材ごとに示す。
又、その密着性評価基準は下記の通りである。
【0103】
評価基準
◎:25マス中25〜21マスの欠けなし
○:25マス中20〜13マスの欠けなし
△:25マス中12〜6のマス欠けなし
×:25マス中5マス以下のマス欠けなし
【0104】
このセロハンテープによる密着性評価試験は、2回行い、その平均値を結果として示した。ホットプレートの温度は、40度に設定して行った。
【0105】
[実施例1〜9:表1参照]
実施例1〜9は、アンダーコート層形成剤を含む過熱蒸気を接触させることでアンダーコート層を同時に形成したものである。過熱蒸気を接触させた後に乾燥させてドライフィルム(樹脂層1)の積層を行った結果を右欄のSUS及び銅の基材ごとに示す。
【0107】
[実施例10〜12:表2参照]
過熱蒸気を接触させた後にアンダーコート層形成剤を接触させて別工程でアンダーコート層を形成したものである。この後、水洗を行い、乾燥後にドライフィルム(樹脂層1)の積層を行った結果を右欄のSUS及び銅の基材ごとに示す。
【0109】
[実施例13〜15:表3参照]
ジェル状のアンダーコート層形成剤を接触させた後、過熱蒸気を接触させ、水洗を行い、乾燥後にドライフィルム(樹脂層1)の積層を行った結果を右欄のSUS及び銅の基材ごとに示す。
【0111】
[実施例16〜33:表4参照]
触媒含有のアンダーコート層形成剤を基材層に塗布させた後に過熱蒸気を接触させ、水洗を行い、乾燥後にドライフィルム(樹脂層1)の積層を行った結果を右欄のPP樹脂及びガラス基材ごとに示す。
【0113】
本発明においては、ドライフィルムなどの樹脂層を加熱することなく、アンダーコート層に圧着することができるから、樹脂層の伸びや縮み更に歪み更に浮きや弛みなどの発生が無く、アンダーコート層の表面に樹脂層を綺麗に形成できるのであり、その結果、導体パターンの高密度化、高精度化の実現が可能になって信頼性の高い微細な導体パターンを備えるプリント配線基板や電鋳部品が得られるのである。
【0114】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
本発明においては、アンダーコート形成時に、基材の材質(金属・セラミック・樹脂など)に合わせて水(純水含む)の過熱蒸気や、金属基材などの表面に形成された酸化皮膜の程度に合わせて酸性水溶液を用いた過熱蒸気を使用することができる。また、多層電鋳部品などのようにより強固に金属同士を密着させる場合は、触媒入りの酸性水溶液を用いることが有効である。さらに、上記の実施形態においてマスク層の未硬化部分の剥離除去には、溶剤に代えて過熱蒸気(酸性水溶液、アルカリ水溶液、水)を使用することも可能である。また、電鋳部品などに付着残存した硬化したマスクの除去も、溶剤に代えてアルカリ水溶液の過熱蒸気を使用することも可能である。