特許第6516400号(P6516400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ・ボーイング・カンパニーの特許一覧 ▶ ユニヴァーシティ オブ ワシントン センター フォー コマーシャライゼーションの特許一覧

特許6516400レーザー超音波検査システムを使用して複合構造を検査するためのシステム及び方法
<>
  • 特許6516400-レーザー超音波検査システムを使用して複合構造を検査するためのシステム及び方法 図000002
  • 特許6516400-レーザー超音波検査システムを使用して複合構造を検査するためのシステム及び方法 図000003
  • 特許6516400-レーザー超音波検査システムを使用して複合構造を検査するためのシステム及び方法 図000004
  • 特許6516400-レーザー超音波検査システムを使用して複合構造を検査するためのシステム及び方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6516400
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】レーザー超音波検査システムを使用して複合構造を検査するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/34 20060101AFI20190513BHJP
   G01B 17/02 20060101ALI20190513BHJP
【FI】
   G01N29/34
   G01B17/02 Z
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-223621(P2013-223621)
(22)【出願日】2013年10月28日
(65)【公開番号】特開2014-115274(P2014-115274A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2016年10月25日
(31)【優先権主張番号】13/663,855
(32)【優先日】2012年10月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(73)【特許権者】
【識別番号】514104933
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ オブ ワシントン
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】ボッシ, リチャード エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ジョージソン, ゲイリー アーネスト
(72)【発明者】
【氏名】コルガード, ジェフリー レイナー
(72)【発明者】
【氏名】スチュワート, アラン フランク
(72)【発明者】
【氏名】モッツァー, ウィリアム ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン, クラレンス ラヴェリー, ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】オドンネル, マシュー
(72)【発明者】
【氏名】シア, チンチュン
(72)【発明者】
【氏名】ペリワーノフ, イヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ, チェン−ウェイ
【審査官】 田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−521233(JP,A)
【文献】 特表2010−519540(JP,A)
【文献】 特開2001−318082(JP,A)
【文献】 特開2010−071888(JP,A)
【文献】 特開2004−226155(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0282919(US,A1)
【文献】 特表2009−544038(JP,A)
【文献】 木下雅夫、他,レーザ超音波による溶接状態の可視化手法の検討,日本機械学会論文集,2012年 8月25日,第78巻第792号,P.105−117
【文献】 Chen Ciang Chia , et al,Laser ultrasonic anomalous wave propagation imaging method with adjacent wave subraction: Application to actual damages in composite wing,Optics & Laser Technology,2011年 9月 9日,Vol. 44,P. 428-440
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00−29/52
G01B 17/02
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー超音波検査システムであって、
約1ミリメートル未満であるスポットサイズ及び約10,000ヘルツから約500,000ヘルツであるパルス繰り返し率を少なくとも含む任意の数のプロパティを有するパルスレーザービームを生成するように構成された生成レーザーシステム、及び
生成レーザーシステムにより生成されたパルスレーザービームを任意の数の複合材料からなる複合構造であって、前記複合材料は、前記パルスレーザービームの少なくとも一部を吸収する強化材料を含む、複合構造に方向付けるように構成された伝送システムであって、前記パルスレーザービームが前記複合構造と接触すると、複合構造に、選択された公差外の不整合性をもたらすことなく、任意の数の超音波が複合構造に形成される、伝送システムを備える、レーザー超音波検査システム。
【請求項2】
前記任意の数のプロパティが、さらに約1マイクロジュールから約10,000マイクロジュールであるパルス毎のエネルギー、または約0.1ミリジュール/平方センチメートルから約1000ミリジュール/平方センチメートルであるパルス毎の光学フルエンスうちの少なくとも一つを含む、請求項1に記載のレーザー超音波検査システム。
【請求項3】
前記伝送システムは、光ファイバー伝送システムである、請求項1に記載のレーザー超音波検査システム。
【請求項4】
前記光ファイバー伝送システムは、
パルスレーザービームを運ぶように構成された任意の数の光ファイバーを備える、請求項3に記載のレーザー超音波検査システム。
【請求項5】
複合構造上でパルスレーザービームの移動を制御するように構成された移動システムをさらに備える、請求項1に記載のレーザー超音波検査システム。
【請求項6】
前記移動システムはロボットアームである、請求項5に記載のレーザー超音波検査システム。
【請求項7】
パルス検出レーザービームを複合構造に向かって生成するように構成された検出レーザーシステムであって、パルス検出レーザービームと任意の数の超音波との間の接触がパルス検出レーザービームの経路の変更をもたらす、検出レーザーシステム、及び
前記変更を検出するように構成された、任意の数の検出器を備える検出システムをさらに備える、請求項1に記載のレーザー超音波検査システム。
【請求項8】
前記生成レーザーシステム、前記検出レーザーシステム、及び前記伝送システムは、レーザー超音波検査システムのレーザーシステムの部分である、請求項7に記載のレーザー超音波検査システム。
【請求項9】
複合構造を検査するための方法であって、
約1ミリメートル未満であるスポットサイズ及び約10,000ヘルツから約500,000ヘルツであるパルス繰り返し率を少なくとも含む任意の数のプロパティを有するパルスレーザービームを生成すること、及び
生成レーザーシステムにより生成されたパルスレーザービームを任意の数の複合材料からなる複合構造であって、前記複合材料は、前記パルスレーザービームの少なくとも一部を吸収する強化材料を含む、複合構造に方向付けることであって、前記パルスレーザービームが前記複合構造と接触すると、複合構造に、選択された公差外の不整合性をもたらすことなく、任意の数の超音波が複合構造に形成される、方向付けることを含む、方法。
【請求項10】
前記任意の数のプロパティを有するパルスレーザービームを生成するステップは、
任意の数のプロパティを有するパルスレーザービームを生成することであって、任意の数のプロパティは、さらにパルス毎のエネルギーを含む、生成することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記任意の数のプロパティを有するパルスレーザービームを生成するステップは、
任意の数のプロパティを有するパルスレーザービームを生成することであって、任意の数のプロパティは、パルス毎のエネルギー及びパルス毎の光学フルエンスのうちの少なくとも一つを含み、パルス毎のエネルギーの選択された範囲は、約1マイクロジュールから約10,000マイクロジュールであり、パルス毎の光学フルエンスの選択された範囲は、約0.1ミリジュール/平方センチメートルから約1000ミリジュール/平方センチメートルである、生成することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記複合構造は任意の数の複合材料を含み、当該任意の数の複合材料のうちの一つの複合材料の強化材料は吸収材料である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記生成レーザーシステムにより生成されたパルスレーザービームを複合構造に方向付けるステップは、
前記生成レーザーシステムにより生成されたパルスレーザービームを光ファイバー伝送システムの任意の数の光ファイバーを介して複合構造に方向付けることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記複合材料は、さらに樹脂状のマトリックス材料を含み、
前記強化材料は繊維状であり、前記マトリックス材料に囲まれ、且つ前記マトリックス材料より高弾性率を有する、請求項1に記載のレーザー超音波検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して超音波検査に関し、具体的には、複合構造の超音波検査に関する。より具体的には、本発明は、レーザー超音波検査システムを使用して複合構造を検査するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ここで使用されるように、複合構造とは、少なくとも一つの複合材料からなる任意の構造である。複合材料は、マトリックス材料及び強化材料を含む。複合構造は、種々の検査システムを使用して調査される。レーザー超音波検査(UT)システムは、好ましくない不整合性について複合構造を検査するために使用される検査システムの一種の例である。レーザー超音波検査により、複合構造は、複合構造に物理的に接触する検査システムがなくても検査が可能になる。
【0003】
通常は、レーザー超音波検査システムは、複合構造で超音波を生成するためにパルスレーザービームを使用する。パルスレーザービームは、ある選択されたパルス繰返し率で放射されるレーザーエネルギーのパルスにより形成されるビームである。レーザー超音波検査システムは、これらの超音波を検出すること、及び複合構造についてデータを生成するために検出された超音波を使用することができる。このデータは、たとえば、限定しないが、複合構造の厚さ、複合構造の材料組成、任意の好ましくない不整合性が複合構造上に及び/又はその中に存在するかどうかの表示、並びに/若しくは他の種類の情報など、複合構造についての情報を特定するために使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
いくつかの現在入手可能なレーザー超音波検査システムでは、ガスレーザー源が、約5ミリメートル(mm)のスポットサイズを有するパルスレーザービームを生成するために使用される。スポットサイズは、レーザービームにより照射される複合構造の表面上での大きさである。場合によっては、約5ミリメートルのスポットサイズは、より細かいレベルのディテールを複合構造に対して特徴付けるほど小さくはない。
【0005】
さらに、いくつかの現在入手可能なレーザー超音波検査システムでは、走査速度、すなわちパルスレーザービームが複合構造の表面上を移動する速度は、レーザー超音波検査システムのパルス繰返し率により決定される。現在入手可能なレーザー超音波検査システムの中には、選択された公差内で走査速度を提供できるほど高いパルス繰返し率を有するパルスレーザービームを生成することができないものもある。
【0006】
また、ガスレーザー源を使用する現在入手可能なレーザー超音波検査システムのサイズ、重量、及び/又はコストは、所望のものを上回るかもしれない。さらに、これらの種類のレーザー超音波検査システムのサイズ及び/又は重量では、検査が遮蔽又は別の種類の保護を有するエリア又は空間で実行される必要がある。したがって、少なくとも上記の問題点の幾つかと、起こりうる他の問題点を考慮する方法及び装置を有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施形態では、レーザー超音波検査システムは、生成レーザーシステム及び伝送システムを備える。生成レーザーシステムは、任意の数のプロパティを有し、任意の数のプロパティの各々が選択された範囲内にあるパルスレーザービームを生成するように構成される。伝送システムは、生成レーザーシステムにより生成されたパルスレーザービームを任意の数の複合材料からなる複合構造に方向付けるように構成される。選択された公差外の複合構造に任意の好ましくない不整合性をもたらすことなく、パルスレーザービームが複合構造に接触すると、任意の数の超音波が複合構造で形成される。
【0008】
別の実施形態では、複合構造を検査する方法が提供される。任意の数のプロパティを有するパルスレーザービームが生成される。任意の数のプロパティの各々は、選択された範囲内にある。生成レーザーシステムにより生成されたパルスレーザービームは、任意の数の複合材料からなる複合構造に方向付けられる。選択された公差外の複合構造に任意の好ましくない不整合性をもたらすことなく、パルスレーザービームが複合構造に接触すると、任意の数の超音波が複合構造で形成される。
【0009】
特徴及び機能は、本発明の様々な実施形態で独立に実現することが可能であるか、以下の説明及び図面を参照してさらなる詳細が理解されうる、さらに別の実施形態で組み合わせることが可能である。
【0010】
本発明の一態様では、任意の数のプロパティを有し、任意の数のプロパティの各々が選択された範囲内にあるパルスレーザービームを生成するように構成された生成レーザーシステム、及び生成レーザーシステムにより生成されたパルスレーザービームを任意の数の複合材料からなる複合構造に方向付けるように構成された伝送システムを備え、選択された公差外の複合構造に任意の好ましくない不整合性をもたらすことなく、パルスレーザービームが複合構造に接触すると、任意の数の超音波が複合構造で形成される、レーザー超音波検査システムが提供される。
【0011】
有利には、任意の数のプロパティは、パルス繰返し率、スポットサイズ、パルス毎のエネルギー、パルス毎の光学フルエンス、及び主要な吸収材料のうちの少なくとも一つを含む。好ましくは、パルス繰返し率の選択された範囲は、約10,000ヘルツから約500,000ヘルツである。好ましくは、スポットサイズの選択された範囲は、約1ミリメートル未満である。好ましくは、パルス毎のエネルギーの選択された範囲は、約1マイクロジュールから約10,000マイクロジュールである。好ましくは、パルス毎の光学フルエンスの選択された範囲は、約0.1ミリジュール/平方センチメートルから約1000ミリジュール/平方センチメートルである。好ましくは、主要な吸収材料は、任意の数の複合材料のうちの一つの複合材料の強化材料である。
【0012】
有利には、伝送システムは、光ファイバー伝送システムである。好ましくは、光ファイバー伝送システムは、パルスレーザービームを運ぶように構成された任意の数の光ファイバーを備える。
【0013】
有利には、レーザー超音波検査システムは、複合構造上でパルスレーザービームの移動を制御するように構成された移動システムをさらに備える。好適には、移動システムはロボットアームである。
【0014】
有利には、レーザー超音波検査システムは、複合構造にパルスレーザービームを生成するように構成された検出レーザーシステムであって、パルス検出レーザービームと任意の数の超音波との間の接触により、パルス検出レーザービームの経路が変更される、検出レーザーシステム、及び変更を検出するように構成された検出システムであって、検出システムが任意の数の検出器を備える、検出システムをさらに備える。好ましくは、生成レーザーシステム、検出レーザーシステム、及び伝送システムは、レーザー超音波検査システムのレーザーシステムの部分である。
【0015】
本発明のさらなる態様では、複合構造を検査する方法であって、任意の数のプロパティを有し、任意の数のプロパティの各々が選択された範囲内にあるパルスレーザービームを生成すること、及び生成レーザーシステムにより生成されたパルスレーザービームを任意の数の複合材料からなる複合構造に方向付けることを含み、選択された公差外の複合構造に任意の好ましくない不整合性をもたらすことなく、パルスレーザービームが複合構造に接触すると、任意の数の超音波が複合構造で形成される方法が提供される。
【0016】
有利には、任意の数のプロパティを有するパルスレーザービームを生成するステップは、任意の数のプロパティを有するパルスレーザービームを生成することであって、任意の数のプロパティは、パスル繰返し率、スポットサイズ、パルス毎のエネルギー、及び吸収材料のうちの少なくとも一つを含む、生成することを含む。
【0017】
有利には、任意の数のプロパティを有するパルスレーザービームを生成するステップは、任意の数のプロパティを有するパルスレーザービームを生成することであって、任意の数のプロパティはパルス繰返し率を含み、かつパルス繰返し率の選択された範囲は、約10,000ヘルツから約500,000ヘルツである、生成することを含む。
【0018】
有利には、任意の数のプロパティを有するパルスレーザービームを生成するステップは、任意の数のプロパティを有するパルスレーザービームを生成することであって、任意の数のプロパティはスポットサイズを含み、スポットサイズの選択された範囲は約1ミリメートル未満である、生成することを含む。
【0019】
有利には、任意の数のプロパティを有するパルスレーザービームを生成するステップは、任意の数のプロパティを有するパルスレーザービームを生成することであって、任意の数のプロパティは、パルス毎のエネルギー及びパルス毎の光学フルエンスの少なくとも一つを含み、パルス毎のエネルギーの選択された範囲は約1マイクロジュールから約10,000マイクロジュールであり、パルス毎の光学フルエンスの選択された範囲は、約0.1ミリジュール/平方センチメートルから約1000ミリジュール/平方センチメートルである、生成することを含む。
【0020】
有利には、任意の数のプロパティを有するパルスレーザービームを生成するステップは、任意の数のプロパティを有するパルスレーザービームを生成することであって、任意の数のプロパティは吸収材料を含み、吸収材料は任意の数の複合材料のうちの一つの複合材料の強化材料である、生成することを含む。
【0021】
有利には、生成レーザーシステムにより生成されたパルスレーザービームを複合構造に方向付けるステップは、生成レーザーシステムにより生成されたパルスレーザービームを光ファイバー伝送システムの任意の数の光ファイバーを介して複合構造に方向付けることを含む。
【0022】
例示的な実施形態の特徴と考えられる新規の機能は、添付の特許請求の範囲に明記される。しかしながら、実施形態、好適な使用モード、さらにはその目的及び特徴は、添付図面とともに本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明を参照することにより最もよく理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態によるブロック図形式の検査環境の図である。
図2】実施形態による検査環境の図である。
図3】実施形態による二つのパルスレーザービームの図である。
図4】実施形態によるフローチャート形式の複合構想を検査する工程の図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
種々の実施形態は、種々の検討事項を認識し考慮する。たとえば、選択された公差外の複合構造内及び/又はその上に好ましくない不整合性をもたらすことなく、複合構造の検査が可能なレーザー超音波検査システムを有することが望ましいことを実施形態は認識し考慮する。
【0025】
さらに、約10,000ヘルツ(Hz)を上回るパルス繰返し率と約1ミリメートル(mm)未満のスポットサイズを有するパルスレーザービームを生成すると、複合構造を検査する際に走査速度が加速することを、実施形態は認識し考慮する。また、レーザーエネルギーが複合材料の強化材料に吸収されると、超音波が複合材料のマトリックス材料に吸収されるよりも効率的に生成されることを、実施形態は認識し考慮する。
【0026】
ゆえに、実施形態は、パルスレーザービームを使用して複合構造を検査するシステム及び方法を提供する。一つの実施形態では、レーザー超音波検査システムは、生成レーザーシステム及び伝送システムを備える。生成レーザーシステムは、任意の数のプロパティを有し、任意の数のプロパティの各々が選択された範囲内にあるパルスレーザービームを生成するように構成される。伝送システムは、生成レーザーシステムにより生成されたパルスレーザービームを任意の数の複合材料からなる複合構造に方向付けるように構成される。選択された公差外の複合構造に任意の好ましくない不整合性をもたらすことなく、パルスレーザービームが複合構造に接触すると、任意の数の超音波が複合構造で形成される。
【0027】
ここで図1を参照すると、ブロック図形式の検査環境の図が、実施形態に従って示される。図1では、検査環境100は、レーザー超音波検査システム102が複合構造104を検査するために使用される環境の例である。
【0028】
複合構造104は、任意の数の複合材料106からなる。本明細書で使用されるように、「任意の数の」アイテムは、一又は複数の材料を意味する。このように、任意の数の複合材料106は、一又は複数の複合材料を含む。これらの複合材料の各々は、マトリックス材料及び強化材料からなる。
【0029】
一つの実施例として、マトリックス材料は樹脂の形態をとり、強化材料は繊維の形態をとる。もちろん、他の実施例では、他の種類のマトリックス材料及び/又は強化材料は、任意の数の複合材料106の一つを形成することができる。さらに、いくつかの実施例では、複合構造104は、任意の数の複合材料106に加えて、一又は複数の材料を含むことができる。
【0030】
これらの実施例では、レーザー超音波検査システム102は、非破壊検査(NDT)システムと見なされる。図示されるように、レーザー超音波検査システム102は、レーザーシステム110、移動システム111、及び検出システム112を含む。レーザーシステム110は、生成レーザーシステム114、検出レーザーシステム116、及び伝送システム118を含む。
【0031】
生成レーザーシステム114は、レーザービーム120を生成するように構成される。一つの実施例において、レーザービーム120は、パルスレーザービーム121の形態をとる。パルスレーザービーム121は、レーザーエネルギーのパルスにより形成される。要するに、パルスレーザービーム121は、ビームの形態で放射される光のパルスにより形成される。
【0032】
生成レーザーシステム114により放射されるパルスレーザービーム121は、伝送システム118に送られる。伝送システム118は、伝送システム118の出力122を介してパルスレーザービーム121を伝送するように構成される。
【0033】
これらの実施例では、伝送システム118は、光ファイバー伝送システム124の形態をとる。光ファイバー伝送システム124は、任意の数の光ファイバー126を含む。パルスレーザービーム121は、生成レーザーシステム114から任意の数の光ファイバー126の少なくとも一部を介して伝送システム118の出力122に運ばれる。
【0034】
図示されたように、移動システム111は、伝送システム118と関連付けられる。一つのコンポーネントが別のコンポーネントと「関連付けられる」ときには、関連付けは、示される例において物理的な関連付けである。
【0035】
例えば、移動システム111などの第1のコンポーネントは、第2のコンポーネントに固定されることにより、第2のコンポーネントに接着されることにより、第2のコンポーネントに取り付けられることにより、第2のコンポーネントに溶接されることにより、第2のコンポーネントに留められることにより、及び/またはその他何らかの適する方法で第2のコンポーネントに結合されることにより、伝送システム118などの第二のコンポーネントに関連付けられると考えられる。また、第一のコンポーネントは、第三のコンポーネントを使用して、第二のコンポーネントに結合されてもよい。さらに、第1コンポーネントは、第2コンポーネントの一部及び/又は延長として形成されることにより、第2コンポーネントに関連付けられるとみなされることがある。
【0036】
移動システム111は、伝送システム118を操作するよう構成され、伝送システム118の出力122から放射されるパルスレーザービーム121が、複合構造104に沿って所望の経路に従って方向付けられる。場合によっては、伝送システム118の出力122は、移動システム111の出力とされてもよい。
【0037】
一つの実施例では、移動システム111は、ロボットアーム127の形態をとる。任意の数の光ファイバー126は、ロボットアーム127を介して動作する。ロボットアーム127は、パルスレーザービーム121が複合構造104に沿って移動できるように、移動する。要するに、ロボットアーム127により、パルスレーザービーム121は、所望の経路に沿って複合構造104を走査することができる。
【0038】
生成レーザーシステム114は、任意の数のプロパティを有し、任意の数のプロパティの各々が選択された範囲内にあるパルスレーザービーム121を生成するように構成される。任意の数のプロパティ128の各プロパティの選択範囲が選択され、選択された公差外の複合構造104に任意の好ましくない不整合性をもたらすことなく、パルスレーザービーム121が複合構造104に遭遇すると、任意の数の超音波138が複合構造104で形成されるように、パルスレーザービーム121が生成される。
【0039】
任意の数のプロパティ128は、たとえば、限定されないが、パルス繰返し率130、スポットサイズ132、パルス毎のエネルギー134、吸収材料136、及び/又は他のプロパティを含む。これらのプロパティの各々は、選択された範囲内の値を有する。
【0040】
パルス繰返し率130は、パルスレーザービーム121を形成するためにレーザーエネルギーのパルスが放射される割合である。パルス繰返し率130は、たとえば、限定されないが、周波数の観点から説明することができる。これらの実施例では、生成レーザーシステム114が、パルスレーザービーム121を生成するように構成され、パルスレーザービーム121は、約10,000ヘルツ(Hz)から約500,000ヘルツ(Hz)のパルス繰り返し率を有する。この範囲内のパルス繰返し率は高いと考えられる。
【0041】
さらに、パルスレーザービーム121が複合構造104に沿って移動する速度が選択された公差内となる程、パルス繰返し率130が十分に高くなるように、パルス繰返し率130の選択範囲が選択される。具体的には、パルス繰返し率130の高い値は、パルス繰返し率130が複合構造104を走査する速度を同様に高くする。要するに、パルス繰返し率130が増加するにつれ、走査速度も加速する。
【0042】
スポットサイズ132は、パルスレーザービーム121により照射される複合構造104の表面積の大きさである。これらの実施例では、生成レーザーシステム114は、スポットサイズ132が約1ミリメートル(mm)未満となるように、パルスレーザービーム121を生成するように構成される。1ミリメートル(mm)未満のスポットサイズは、これらの例では小さなスポットと見なされる。
【0043】
パルスレーザービーム121が複合構造104を走査する際にパルスレーザービーム121により形成される経路が、複合構造104のより小さな特性の特徴付けを可能にするほど十分に狭い幅を有するように、パルスレーザービーム121のスポットサイズ132の選択範囲が選択される。
【0044】
さらに、パルス毎のエネルギー134は、パルスレーザービーム121を形成するレーザーエネルギーの各パルス内に含まれるエネルギー量とされる。選択された公差外の複合構造104に任意の数の不整合性をもたらすことなく、パルス毎のエネルギー134が、任意の数の超音波138が複合構造104で形成されるように選択された範囲内となるように、パルスレーザービーム121が生成される。これらの実施例では、パルス毎のエネルギー134が約1マイクロジュール(μJ)から約10,000マイクロジュール(μJ)の範囲内となるように、生成レーザーシステム114が、パルスレーザービーム121を生成するように構成される。
【0045】
これらの実施例では、スポットサイズ132とパルス毎のエネルギー134との組み合わせが、所望の範囲内の光学フルエンスを作成するために使用される。ここで使用されるように、「フルエンス」は、単位面積を介して伝送されるエネルギーである。パルス毎の光学フルエンスが約0.1ミリジュール/平方センチメートル(mJ/(cm))から約1000ミリジュール/平方センチメートル(mJ/(cm))までの範囲となるように、パルスレーザービーム121が生成される。パルスレーザービーム121が選択された公差外の複合構造104の上及び/又はその中に任意の不整合性をもたらさないように、パルス毎の光学フルエンスに選択されたこの範囲内の値が選択される。
【0046】
吸収材料136は、パルスレーザービーム121のエネルギーの少なくとも一部が吸収される任意の数の複合材料106の構成材料である。また、吸収材料136は、主要な吸収材料とも言われる。これらの実施例では、パルスレーザービーム121のエネルギーの少なくとも一部が、任意の数の複合材料106のマトリックス材料の代わりに任意の数の複合材料106の強化材料に吸収されるように、パルスレーザービーム121が生成される。
【0047】
任意の数の複合材料106の強化材料は、任意の数の複合材料106のマトリックス材料より高弾性率を有する。さらに、強化材料は、マトリックス材料により囲まれ、ゆえに、マトリックス材料により抑制される。結果として、パルスレーザービーム121のエネルギーを強化材料に吸収させることにより、空間位置確認の向上及び任意の数の超音波138へのエネルギー変換が可能になる。さらに、この種の変換により、任意の数の超音波138においてより高い周波数成分がもたらされる。次いで、周波数成分が高くなればなるほど、周波数成分が低い超音波を使用する場合に比べ、複合構造104についての細かいレベルのディテールの情報を、任意の数の超音波138を使用して特徴づけることが可能になる。
【0048】
図示されたように、検出レーザーシステム116は、パルス検出レーザービーム142を生成するように構成される。パルス検出レーザービーム142は、伝送システム118を介して伝送され、かつ伝送システム118の出力122から放射される。複合構造104で生成される任意の数の超音波138が検出されるように、パルス検出レーザービーム142は、選択された位置で複合構造104に方向付けられる。
【0049】
たとえば、パルス検出レーザービーム142が任意の数の超音波138の少なくとも一つの超音波と遭遇すると、パルス検出レーザービーム142の経路は変更される。この変更は、検出システム112により検出される。検出システム112は、たとえば、限定されないが、任意の数の検出器144を含む。一つの実施例では、任意の数の検出器144は、任意の数の光検出器とする。
【0050】
任意の数の検出器144は、レーザーエネルギーを検出するように構成される。検出システム112は、このレーザーエネルギーの検出に応じてデータ146を生成する。データ146は、複合構造104についての情報を特定するために使用される。この情報は、たとえば、限定されないが、複合構造104の厚さ、複合構造104の材料構造、任意の好ましくない不整合性が複合構造104の上及び/又は中に存在するかどうかの表示、並びに/若しくは他の種類の情報を含むことができる。
【0051】
これらの実施例では、検出システム112により生成されたデータ146は、複数のデータポイントからなる。データ146に含まれる任意の数のデータポイントを増やすと、現在入手可能な信号処理技術を使用して、より高い信号対雑音比が実現される。データ146の任意の数のデータポイントは、パルスレーザービーム121が複合構造104を走査する速度を加速することにより、増加する。
【0052】
パルスレーザービーム121が複合構造104を操作する速度は、スポットサイズを縮小しパルスレーザービーム121のパルス繰返し率を増加させることにより、加速する。その結果、パルスレーザービーム121が小さなスポットサイズ及び高い繰返し率を有するときに生成されるデータ146は、パルスレーザービーム121が大きなスポットサイズ及び低い繰返し率を有するときに比べ、高い信号対雑音比を有する。
【0053】
図1の検査環境100の図は、実施形態が実行される方法に対して物理的な又は構造的な限定を表すことを意図していない。図示したコンポーネントに加えて又は代えて、他のコンポーネントを使用することができる。幾つかのコンポーネントは任意選択になることもある。また、ブロックは、幾つかの機能的なコンポーネントを示すために提示されている。実施形態において実施される場合、一又は複数のこれらのブロックは結合、分割、又は異なるブロックに結合及び分割される。
【0054】
たとえば、場合によっては、レーザーシステム110は、移動システム111と関連付けられる。いくつかの実施例では、伝送システム118は、移動システム111の部分と見なされる。他の実施例では、パルス検出レーザービーム142は、伝送システム118以外の伝送システムから放射されるように構成されてもよい。
【0055】
ここで図2を参照すると、検査環境の図が実施形態に従って示される。図2では、検査環境200は、図1の検査環境100を実施する一つの例である。図示されたように、レーザー超音波検査システム201は、複合構造202を検査するように構成される。
【0056】
レーザー超音波検査システム201は、図1のレーザー超音波検査システム102を実施する一例である。さらに、複合構造202は、図1の複合構造104を実施する一例である。
【0057】
この実施例では、レーザー超音波検査システム201は、生成レーザーシステム204、伝送システム206、及び移動システム208を含む。生成レーザーシステム204は、図1の生成レーザーシステム114を実施する一例である。さらに、伝送システム206及び移動システム208は、伝送システム118及び移動システム111をそれぞれ実施する例である。
【0058】
図示されたように、生成レーザーシステム204は、プラットフォーム209に取り付けられる。生成レーザーシステム204は、伝送システム206を介して運ばれるパルスレーザービームを生成するように構成される。伝送システム206は、この実施例では、光ファイバー伝送システム210の形態をとる。具体的には、光ファイバー伝送システム210は、パルスレーザービームを運ぶように構成された任意の数の光ファイバー212を含む。
【0059】
移動システム208は、本実施例では、ロボットアーム214の形態をとる。ロボットアーム214は、伝送システム206から放射されるパルスレーザービームが異なる方向に方向付けられるよう移動するように構成される。
【0060】
たとえば、生成レーザーシステム204は、伝送システム206を介して伝送され、パルスレーザービーム216として伝送システム206から放射されるパルスレーザービームを生成する。パルスレーザービーム216は、図1のパルスレーザービーム121を実施する一例である。ロボットアーム214は、パルスレーザービーム216が向けられる方向を制御するように構成される。このように、ロボットアーム214は、パルスレーザービーム216が複合構造202を走査するために使用されるよう移動するように構成される。
【0061】
この実施例では、パルスレーザービーム216を伝送及び放射するために光ファイバー伝送システム210を使用すれば、レーザー超音波検査システム201が、種々の環境で使用できる。たとえば、検査環境200は、部屋、アセンブリライン周囲のエリア、工場内のエリア、屋外エリア、カウンタートップ上面のエリア、又は別の種類の環境とすることができる。パルスレーザービーム216は、検査環境200が大規模な遮蔽を有する必要のない方法で、生成及び放射される。
【0062】
ここで図3を参照すると、二つのパルスレーザービームの図が、実施形態に従って示される。この実施例では、パルスレーザービーム300は、図1のパルスレーザービーム121を実施する一例である。
【0063】
パルスレーザービーム300は、スポット302を形成する。スポット302は、本実施例では、約1ミリメートル(mm)未満のスポットサイズを有する。パルスレーザービーム300は、ビーム経路306を形成するために、矢印304の方向に移動する。
【0064】
パルスレーザービーム310は、たとえば、ガスレーザー源を使用するレーザーシステムなどの現在入手可能な生成レーザーシステムを使用して形成される。パルスレーザービーム310は、スポット312を形成する。スポット312は、本実施例では、約5ミリメートル(mm)のスポットサイズを有する。パルスレーザービーム310は、ビーム経路316を形成するために、矢印314の方向に移動する。
【0065】
図示されたように、ビーム経路306は、ビーム経路316よりも狭い。ビーム経路306を使用して生成されるデータにより、ビーム経路316を使用して生成されるデータよりも細かいレベルのディテールが特徴付けられる。この実施例では、ビーム経路306は、励起体積が小さいので超音波データのより細かいレベルのディテールを提供し、信号処理を利用できることより、その限界値まで空間分解能を向上させることができる。
【0066】
ここで図4を参照すると、フローチャート形式の複合構造を検査する工程が、実施形態に従って示される。図4に示された工程は、図1のレーザー超音波検査システム102を使用して実施される。
【0067】
工程は、任意の数のプロパティを有し、任意の数のプロパティの各々が選択された範囲内にあるパルスレーザービームを生成することにより開始する(工程400)。これらのプロパティは、たとえば、限定されないが、パルス繰返し率、スポットサイズ、パルス毎のエネルギー、及び吸収材料のうちの少なくとも一つを含むことができる。
【0068】
その後、工程は、生成レーザーシステムにより生成されるパルスレーザービームを任意の数の複合材料からなる複合構造に方向付ける(工程402)。選択された公差外の複合構造に任意の好ましくない不整合性をもたらすことなく、パルスレーザービームが複合構造に接触すると、任意の数の超音波が複合構造で形成される。
【0069】
ゆえに、パルスレーザービームが複合構造を走査するように、工程はパルスレーザービームを移動させ(工程404)、その後工程は終了する。パルスレーザービームが複合構造を走査する際に複合構造で形成される超音波が、複合構造を特徴付けるために使用される。
【0070】
示された異なる実施形態でのフローチャート及びブロック図は、実施形態で実施できる装置及び方法の構造、機能、及び動作を示す。これに関し、フローチャート又はブロック図の各ブロックは、1つの工程又はステップの1つのモジュール、セグメント、機能及び/又は部分を表わすことができる。
【0071】
実施形態の幾つかの代替的な実施においては、ブロックに記載された一又は複数の機能は、図中に記載の順序を逸脱して現れることがある。例えば、場合によっては、連続して示さる二つのブロックがほぼ同時に実行されてもよく、又はときには、含まれる機能次第で、ブロックが逆の順番に実施されてもよい。また、フローチャートやブロック図のブロックに他のブロックが付加されてもよい。
【0072】
種々の例示的な実施形態の説明は、例示及び説明を目的とするものであり、完全な説明であること、又はこれらの実施形態を開示された形態に限定することを意図していない。当業者には、多くの修正例及び変形例が自明である。さらに、種々の実施形態は、他の実施形態と比較して別の利点を提供することができる。選択された一又は複数の実施形態は、実施形態の原理、実際の用途を最もよく説明するため、及び他の当業者に対し、様々な実施形態の開示内容と、考慮される特定の用途に適した様々な修正との理解を促すために選択及び記述されている。
【符号の説明】
【0073】
200 検査環境
201 レーザー超音波検査システム
202 複合構造
204 生成レーザーシステム
206 伝送システム
208 移動システム
210 光ファイバー伝送システム
212 光ファイバー
214 ロボットアーム
216 パルスレーザービーム
300 パルスレーザービーム
302 スポット
304 矢印
306 ビーム経路
310 パルスレーザービーム
312 スポット
314 矢印
316 ビーム経路
図1
図2
図3
図4