特許第6516401号(P6516401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6516401
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 3/026 20060101AFI20190513BHJP
   A47C 1/024 20060101ALI20190513BHJP
【FI】
   A47C3/026
   A47C1/024
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-224241(P2013-224241)
(22)【出願日】2013年10月29日
(65)【公開番号】特開2015-84859(P2015-84859A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年9月15日
【審判番号】不服2018-7230(P2018-7230/J1)
【審判請求日】2018年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】林 克明
【合議体】
【審判長】 中川 真一
【審判官】 出口 昌哉
【審判官】 仁木 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−97148(JP,A)
【文献】 特開2008−302083(JP,A)
【文献】 特開2011−161123(JP,A)
【文献】 特開2003−310378(JP,A)
【文献】 米国特許第5203853(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 3/026
A47C 1/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚に支持され前後方向に延びる長孔が前端部に設けられている支持基部と、この支持基部の上に配され前端側を前記長孔に沿って前後移動可能な往復動部材を介して前記支持基部に支持させた座支持部材と、この座支持部材の上に支持された座と、前記支持基部に後傾動作可能に支持された背凭れと、この背凭れの後傾動作に伴わせて前記座及び座支持部材を後退動作させるシンクロロッキング機構と、前記長孔の前端側に取り付けられ前記往復動部材の前進を初期位置において規制する規制部材と、前記往復動部材を前記規制部材に向けて前方へ付勢するためのもので前記背凭れに対する後方への押圧力が解消した場合に前記往復動部材を初期位置にまで移動させて前記座及び前記背凭れを使用位置に自己復帰させるスプリングとを備え、
前記背凭れが前記使用位置からロッキング位置にまで後傾動作するのに伴い前記往復動部材が前記規制部材に当接する前記初期位置から後方のロッキング位置にまで移動するように構成され、前記初期位置においては前記スプリングの予圧により前記往復動部材が前記初期位置に安定保持される椅子であって、
前記規制部材を前記長孔の前端側に取付ける前の状態において前記往復動部材が前記スプリングの付勢力がゼロとなる組み付け位置から前記初期位置を経由して前記ロッキング位置にまで後退動作し得るように構成しておき、前記往復動部材を前記初期位置よりもロッキング位置側に移動させた状態で前記規制部材を後付けできるように構成したことを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記長孔の前端側に前記規制部材を後付けするための規制部材取付部を備えている請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記支持基部の前端部に前記長孔を有するブッシュを取り付けたものであって、このブッシュに前記規制部材を後付けするための規制部材取付部が設けられている請求項2記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィス等において好適に使用される椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、座及び背凭れが連動してそれぞれ初期位置からロッキング位置までの間で移動するシンクロロッキング動作が可能な椅子には、座及び背凭れに初期位置に向かう反力を与えるためのスプリングが備えられている。
【0003】
このような椅子において、座及び背凭れがそれぞれ初期位置にあるときのがたつきを抑えるべく、前記スプリングを利用して初期反力を供給することが知られている。そのための構成として、スプリングにより座及び背凭れに反力を供給する一方、初期位置において前記座、背凭れ、又はこれらのシンクロロッキング動作に伴って移動する部材を規制部材に衝き当てて座及び背凭れを初期位置に係止するものが採用されている。
【0004】
従来のこの種の椅子における規制部材の例として、圧縮コイルスプリングの固定端側のバネ受けに衝き当たり圧縮コイルスプリングを弾性復帰させる方向への移動を規制するバネ受けスライダ等が挙げられる(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
しかし、従来の規制部材の構成では、バネ受けスライダにバネ受けを嵌め、バネ受けスライダを左右にスライドさせ、くさび作用によりバネ受けを進退させるようにする等、構造が複雑なものとなりやすい。さらに、初期反力を付与すべくバネ受けスライダを支持基部に取り付ける際には、バネ受けスライダにバネ受けを嵌め、このバネ受けにスプリングの固定端が衝き当たるようにスプリングを取り付けつつ、スプリング、バネ受けスライダ及びバネ受けを支持基部内に取り付ける作業が必要であるが、このような作業はスプリングを圧縮させつつ行う必要があり、煩雑であると感じられることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−302083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたもので、座及び背凭れに対する初期反力の付与作業を容易に行うことができ、かつ構造が簡単な椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の椅子は次の構成をなしている。
【0009】
請求項1に記載の椅子は、脚に支持され前後方向に延びる長孔が前端部に設けられている支持基部と、この支持基部の上に配され前端側を前記長孔に沿って前後移動可能な往復動部材を介して前記支持基部に支持させた座支持部材と、この座支持部材の上に支持された座と、前記支持基部に後傾動作可能に支持された背凭れと、この背凭れの後傾動作に伴わせて前記座及び座支持部材を後退動作させるシンクロロッキング機構と、前記長孔の前端側に取り付けられ前記往復動部材の前進を初期位置において規制する規制部材と、前記往復動部材を前記規制部材に向けて前方へ付勢するためのもので前記背凭れに対する後方への押圧力が解消した場合に前記往復動部材を初期位置にまで移動させて前記座及び前記背凭れを使用位置に自己復帰させるスプリングとを備え、前記背凭れが前記使用位置からロッキング位置にまで後傾動作するのに伴い前記往復動部材が前記規制部材に当接する前記初期位置から後方のロッキング位置にまで移動するように構成され、前記初期位置においては前記スプリングの予圧により前記往復動部材が前記初期位置に安定保持される椅子であって、前記規制部材を前記長孔の前端側に取付ける前の状態において前記往復動部材が前記スプリングの付勢力がゼロとなる組み付け位置から前記初期位置を経由して前記ロッキング位置にまで後退動作し得るように構成しておき、前記往復動部材を前記初期位置よりもロッキング位置側に移動させた状態で前記規制部材を後付けできるように構成している。
【0010】
請求項2に記載の椅子は、請求項1に係る構成において、前記長孔の前端側にに前記規制部材を後付けするための規制部材取付部を備えている。
【0011】
請求項3に記載の椅子は、請求項2に係る構成において、前記支持基部の前端部に前記長孔を有するブッシュを取り付けたものであって、このブッシュに前記規制部材を後付けするための規制部材取付部が設けられている
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、座及び背凭れに対する初期反力の付与作業を容易に行うことができ、かつ構造が簡単な椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態を示す斜視図。
図2】同実施形態における正面図。
図3】同実施形態における背面図。
図4】同実施形態における側面図。
図5】同実施形態における平面図。
図6】同実施形態における斜視図。
図7】同実施形態における分解斜視図。
図8】同実施形態における分解斜視図。
図9】同実施形態における分解斜視図。
図10】同実施形態における分解斜視図。
図11】同実施形態におけるブッシュ等を示す拡大斜視図。
図12】同実施形態における支持基部等を示す部分拡大断面図。
図13】同実施形態における内部構造を説明するための側面図。
図14】同実施形態における内部構造を説明するための側面図。
図15】同実施形態におけるブッシュ等を示す拡大側面図。
図16】同実施形態におけるブッシュ等を示す拡大側面図。
図17】同実施形態におけるブッシュ等を示す拡大側面図。
図18】同実施形態における分解斜視図。
図19】同実施形態における座インナーシェル等を示す平面図。
図20】同実施形態における座インナーシェル等を示す平面図。
図21図20におけるX−X線拡大断面図。
図22】同実施形態における支持基部等を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、図1図22を参照して説明する。
【0019】
この実施形態は、本発明を、オフィス等において好適に使用される事務用回転椅子である椅子Aに適用したものである。
【0020】
椅子Aは、椅子本体Cに物品たる災害対応用品セットBを装着したものである。
【0021】
椅子本体Cは、下端にキャスタ11を有した脚1と、この脚1に支持された支持基部2と、この支持基部2の上に配された座支持部材3と、この座支持部材3の上に支持された座4と、基端部を前記支持基部2に枢着した背支桿5と、この背支桿5に支持された背凭れ6とを具備してなる。以下、詳述する。
【0022】
脚1は、先端部下面にキャスタ11を備え放射状に配された複数本の脚羽根12と、これら脚羽根12の集合部分に立設された脚支柱13と、この脚支柱13の主要部をなすガススプリング131とを具備してなる。ガススプリング131は、脚羽根12に固定されたシリンダ131aとこのシリンダ131aに対して昇降可能なロッド131bを備えた通常のものでロッド131bの先端部に前記支持基部2が装着されている。ガススプリング131の先端には、当該ガススプリング131のロック及びロック解除を行うための操作ボタン131cが設けられている。操作ボタン131cの操作は、支持基部2に回転可能に取り付けられた昇降操作用レバー24により行われる。
【0023】
支持基部2は、支持基部本体21と、この支持基部本体21の下面側を覆う支持基部カバー22とを備えたものである。
【0024】
支持基部本体21は、金属製のもので、底壁211と、この底壁211の両側辺から立設された左右の側壁212と、前記底壁211の後辺に立設された後壁213と、前記底壁211の後半部分に対応させて前記両側壁212間に設けられた天壁214とを備えたもので、前記ガススプリング131のロッド131bが前記底壁211及び天壁214に貫着されている。前記両側壁212の前端側には、後述するブッシュ26を取り付けるための前後方向に延びる取付孔212xが形成されている。後壁213には後述する背傾動ロック機構8を構成するロック孔213aが上下方向に所定の間隔をあけて複数列設けられている。支持基部2の前半部には前記取付孔212xに装着されたブッシュ26の長孔261に関連させて後述する傾動反力発生機構が収容されている。なお、長孔261内には、前後方向に移動する往復動部材たる前軸j1が配されている。
【0025】
支持基部カバー22は、樹脂製のもので、脚支柱13が通過する通過孔221aが形成された底壁221と、この底壁221の前縁から斜め前方に延びた傾斜壁222と、この傾斜壁222の前端縁から立設された前壁223と、前記底壁221及び傾斜壁222の左右両側縁からそれぞれ立設された左右の側壁224とを備えている。傾斜壁222は、外面側に取扱説明書を取り付けるための説明書取付部222aを備えている。
【0026】
座支持部材3は、金属製のもので、天壁31と、この天壁31の左右両側縁からそれぞれ下方に垂下させた左右の側壁32と、これら各側壁32の下縁から外方に向けて延出させた鍔33とを備えたものである。左右の側壁32の前端部は、前記支持基部2に配されたブッシュ26の長孔261に挿通された前軸j1を介して支持基部2に前後動可能に支持されている。左右の側壁32の後端部は、前記背支桿5の途中に後軸j2を介して枢着されている。
【0027】
座4は、前記座支持部材3に固定された座受である座アウターシェル41と、上面を座面4sとしており前記座アウターシェル41上に案内レール機構43を介して前後方向に移動可能に配された座本体42と、座本体42を座アウターシェル41に対して移動不能にロックするためのロック機構44とを備えたものである。
【0028】
座アウターシェル41は、合成樹脂製のもので、下面側の中央部分に前記座支持部材3が収容される凹陥部411を有するとともに上面に補強用のリブ412を備えており、前記座支持部材3の鍔33上にビスv1を用いて固定されている。座アウターシェル41の上面には、先端部stが基端部ktよりも幅広に形成された突起413が複数本突設されている。座アウターシェル41の下面には、前記ロック機構44を構成するレバーユニット45を取り付けるためのレバーユニット取付部414が設けられている。
【0029】
座本体42は、座アウターシェル41の上に前後方向にスライド可能に配された座インナーシェル421と、この座インナーシェル421の上に設けられた座クッション(図示せず)と、この座クッション及び座インナーシェル421の周縁部を包みこむ張地である外装材422とを備えている。
【0030】
座インナーシェル421は、合成樹脂製のもので、前記座アウターシェル41の突起413と協働して前記案内レール機構43を構成する前後方向に延びる複数本のスリット421aを備えている。各スリット421aは、平面視において前記突起413の基端部ktに対応した幅寸法を有する幅狭部wnと、この幅狭部wnに連続して設けられ前記突起413の先端部stの通過を許容する幅寸法を有する幅広部wmとを備えている。すなわち、座本体42は、座アウターシェル41から離脱できない状態で当該座アウターシェル41に対してスライド移動可能なスライド領域rsと座アウターシェル41から離脱可能な離脱領域rdとに位置させることができるものであり、スライド領域rsにおいては突起413がスリット421aの幅狭部wnに位置し、離脱領域rdにおいては突起413がスリット421aの幅広部wmに位置するようになっている。そして、レバーユニット45が座アウターシェル41のレバーユニット取付部414に正規の姿勢で取り付けられた場合に、離脱禁止部451aによって座本体42が離脱領域rdに移動できないように構成している。
【0031】
レバーユニット45は、上面に突起状をなす離脱禁止部451aを備えたフレーム451と、このフレーム451に上下方向に回動可能に支持され一端側を操作端452bとして外部に露出させるとともに他端側に係合爪452aを備えたレバー452と、前記レバー452を前記係合爪452aが上方に突出する方向に付勢するスプリング453とを備えたものである。そして、フレーム451を、座アウターシェル41のレバーユニット取付部414にビスv2を用いて取り付けた状態で、離脱禁止部451aが座アウターシェル41に設けた第一の窓415を介して座アウターシェル41上に突出するとともに、係合爪452aが座アウターシェル41に設けた第二の窓416を介して座アウターシェル41上に突出するようにしてある。座インナーシェル421の第一の窓415に対応する部位には離脱禁止部451aが挿入される溝421bが形成されている。この溝421bの前後方向の長さ寸法はスライド領域rsに略対応させてある。すなわち、座本体42が、スライド領域rs外にスライドしようとした場合には、当該離脱禁止部451aが溝421bの端部に当接して座本体42が離脱領域rdにまで移動することができないようになっている。換言すれば、離脱禁止部451aは、座本体42の座アウターシェル41に対する前後方向のスライド範囲を規制するためのスライド範囲規制手段46を兼ねているものである。スライド範囲規制手段46は、溝421bと離脱禁止部451aとを主体に構成されている。
【0032】
座インナーシェル421の第二の窓415に対応する部位には、前記レバーユニット45の係合爪452aが選択的に係合する複数の係合爪係合部421cが前後方向に間隔をあけて設けられている。すなわち、このレバーユニット45と前記複数の係合爪係合部421cとによって、座本体42を座アウターシェル41に対して移動不能にロックするためのロック機構44が構成されている。換言すれば、前記ロック機構44は、前記座受たる座アウターシェル41に設けられフレーム451に支持されたレバー452を操作することにより係合爪452aがロック位置plとロック解除位置puとの間で作動するレバーユニット45と、座本体42に設けられ前記レバーユニット45の係合爪452aが係脱する係合爪係合部421cとを備えたものであり、前記レバー452の操作端452bを上方に回動操作して係合爪452aと係合爪係合部421cとの係合を一時的に解除し前記係合爪452aを異なった孔である係合爪係合部421cに係合させることにより座本体42の座アウターシェル41に対する位置を変更することができるようになっている。
【0033】
このように、レバーユニット45は、座アウターシェル41に正規の姿勢で取付けられた場合に前記座本体42が座アウターシェル41から離脱するのを禁止するとともに前記正規の姿勢を解除した場合に前記座本体42が座アウターシェル41から離脱するのを許容する離脱禁止部451aを備えたものであるため、レバーユニット45を座アウターシェル41から取り外すことにより座インナーシェル421を離脱領域まで移動させることが可能になり座アウターシェル41から取り外すことができる。
【0034】
背支桿5は、基端部を主軸j3を介して支持基部2に支持された背支桿本体51と、この背支桿本体51の基端側をカバーする下の背支桿カバー52と、上の背支桿カバー53とを具備してなる。
【0035】
背支桿本体51は、板材により構成された下部フレーム511と、主にパイプ材により構成された上部フレーム512とを備えたものである。下部フレーム511は、支持基部2における側壁224の外面側に近接配置された左右の支持板511aとこれら支持板511aを剛結する立体構造をなす横架材511bとを具備してなる。
【0036】
左右の支持板511aは、鋼板により作られた平板状のもので、前端部が主軸j3を介して支持基部3に回動可能に支持されている。左右の支持板511aの後端部には、上部フレーム512を剛結するためのパイプ取付部511cを備えている。横架材511bは、上方に開放されたチャンネル状のもので、両端を溶接継ぎ手を介して前記支持板511aの内側面に剛結されている。具体的には、横架材511bは、底壁x1と、この底壁x1の前縁に立設した前壁x2と、この前壁x2に対面させて前記底壁x1の後縁に立設した後壁x3とを備えたものである。
【0037】
上部フレーム512は、基端部を前記パイプ取付部511cに溶接継ぎ手を介して剛結されたパイプ材512aと、これらパイプ材512aを結合する下ブラケット512b及び上ブラケット512cとを備えたものである。前記下ブラケット512b及び上ブラケット512cは前記パイプ材512aに溶接継ぎ手を介して剛結されたもので、これら下ブラケット512b及び上ブラケット512cに前記背凭れ6が取付けられるようになっている。
【0038】
そして、この背支桿5と前記支持基部2との間に、背凭れ6を所望の後傾位置でロックするための背傾動ロック機構8が設けられている。背傾動ロック機構8は、背支桿5に設けられた係合部材513を支持基部3の壁を利用して設けられたロック孔213aに係合させて背支桿5を所定の傾動位置にロックできるようにしたものである。すなわち、この背傾動ロック機構8は、支持基部2の後壁213に複数列の係合部たるロック孔213aを上下方向に間隔をあけて設けておき、背支桿5に保持されて移動する係合部材513をそれらロック孔213aの何れかに選択的に係合することができるようにしたものである。具体的には、前記係合部材513は、前記背支桿5の横架材511bの前壁x2及び後壁x3の下端に設けられたスリットにより前後動可能に保持された板状のもので、その前縁に前記ロック孔213aのいずれかの列に係合可能な突起513aを備えている。係合部材513は、付勢機構8aにより前方に弾性付勢されるロック可能状態と後方に弾性付勢されるロック解除状態(図示せず)のいずれかの状態におかれる。付勢機構8aは、ロック位置Paとロック解除位置Pbとの間で移動操作可能な後傾ロック操作レバー514と、この後傾ロック操作レバー514がロック位置Paにある場合に係合部材513を前方に弾性付勢するとともに前記後傾ロック操作レバー514がロック解除位置Pbにある場合に係合部材513を後方に弾性付勢するねじりコイルスプリング515とを具備してなる。ねじりコイルスプリング515は、一端を前記後傾ロック操作レバー514に支持させるとともに他端を係合部材513 に支持させたものであり、前記後傾ロック操作レバー514をロック位置Paからロック解除位置Pbまで移動させる際に思案点を通過して前記係合部材513に対する付勢方向が反転するように配置されている。この実施形態における付勢機構8aは、後傾ロック操作レバー514がロック位置Paにある場合は前記係合部材513を前方に付勢し、後傾ロック操作レバー514がロック解除位置Pbにある場合は前記係合部材513を後方に付勢するように構成されている。
【0039】
下の背支桿カバー52は、座面4aよりも下に設けられており、ベルト等の支持部材Eによって吊り下げ支持された物品である災害対応用品セットBが添接し得る添接部521を備えている。添接部521は、災害対応用品セットBにおける収納部材B2の側面側が添接し得る縦部たる立壁521aと前記収納部材B2の上面側が添接し得る横部たる天壁521bとを備えたものである。そして、立壁521a及び天壁521bを主体にして災害対応用品セットBを配するための空間spが形成されている。すなわち、添接部521は背支桿5に配されたものであり、前記縦部が前記背支桿5に形成された立壁521aであり、前記横部が前記背支桿5に形成された天壁521bである。
【0040】
具体的に説明すれば、前記下の背支桿カバー52は、支持基部2及び背支桿5の下部フレーム511の一部を下側から覆う底壁522と、この底壁522の後端から上方に立ち上がる前記立壁521aと、この立壁521aの上端から後方に延びる前記天壁521bと、これら天壁521b、立壁521a、及び底壁522の両側に一体に設けられた左右の側壁524とを備えた合成樹脂製のもので、前記天壁521bと立壁521aとによって、側面視L字状の部位を形成している。このようにして立壁521aと天壁521bとを備えた物品の取付部である添接部521によって囲まれた前記空間spは、前記支持基部3の後方に形成されており、この空間spに前記天壁521b及び立壁521aに添接させた状態で物品である災害対応用品セットBが配されている。災害対応用品セットBは、収納部材B2に災害発生時に応急的に対応するための頭部保護用帽子や懐中電灯等の災害対応用品を収納させたものである。
【0041】
上の背支桿カバー53は、背支桿5の下部フレーム511と上部フレーム512の結合部分を覆うためのもので、ボルト挿通孔(図示せず)を通して下の背支桿カバー52のナット部521cに螺着したボルト(図示せず)により背支桿本体51に取付けられている。
【0042】
背凭れ6は、背凭れ本体61とこの背凭れ本体61の後に配された背アウターシェル62とを備えたものである。
【0043】
背凭れ本体61は、背インナーシェル612と、この背インナーシェル612の前面に添接させた背クッション(図示せず)と、この背クッション及び前記背インナーシェル612の周縁部を覆う張地である外装材613とを具備している。背インナーシェル612は、背アウターシェル62により覆われる背アウターシェル取付領域612aと、この背アウターシェル取付領域612aよりも上に延出する上部延出領域612bとに区成される合成樹脂製のもので、前記背アウターシェル取付領域612aは囲繞壁yaにより包囲されている。背アウターシェル取付領域612aの背面側には、多数の縦リブyb及び横リブycが格子状に設けられており、これら縦リブyb及び横リブycを避ける位置に、上下の背支桿取付部ydと、背アウターシェル62の周縁部を取付けるための複数のボス部yeと、前記背アウターシェル62の上縁部を固定するためのナット部yfとが設けられている。上部延出領域612bは、背面側に多数の縦リブyg及び横リブyhを備えたもので、前面及び背面のすべてが外装材613により覆われている。
【0044】
背アウターシェル62は、背アウターシェル本体621と、この背アウターシェル本体621の上部に配され使用者が把持し得るハンドル部622を有したハンドルユニットHUと、前記ハンドル部622の下側に形成された手指挿通用の開口部624の背面視における奥方に配された立壁部623とを備えている。
【0045】
詳述すれば、背アウターシェル本体621は、前記背インナーシェル612の背アウターシェル取付領域612aに対応する形状をなすもので、その周縁に前記背インナーシェル612の囲繞壁yaの外側に嵌合する周囲壁621aを備えている。なお、背アウターシェル本体621の上端部中間領域には背面側に凹陥部621bが形成されておりこの凹陥部621bに対応する部分は前記周囲壁yaが存在していない。凹陥部621bは、前記ハンドル部622を装着するためのもので、その奥壁wkに前記ハンドル部622を取付けるための取付部621cが設けられている。取付部621cは、平坦な座面zaとこの座面zaに対応する部位に貫設されたボルト挿通孔zbとを備えている。背アウターシェル本体621における背インナーシェル612のボス部yeに対応する部位にはボス部yeに係わり合う凸状部621eが形成されている。
【0046】
ハンドルユニットHUは、前記背アウターシェル本体621と別体に形成された合成樹脂製のもので、このハンドルユニットHUと背アウターシェル本体621とが、共通のボルトv3により前記背凭れ本体61に対して共締めされている。具体的に説明すれば、ハンドルユニットHUは、前記背アウターシェル本体621の凹陥部621bに嵌合するもので左右の側壁zcと、これら側壁zcの上側に架設されたハンドル部622と、前記側壁zcの下縁部間に架設された下壁zdと、前記側壁zcの前縁部間に架設された前壁zeとを備えたもので、前記ハンドル部622と前記下壁zdとの間に手指を挿入するための開口部624が形成されている。前記前壁zeには、ボルト挿通孔zfが形成されており、このハンドルユニットHUを背アウターシェル62の凹陥部621bに嵌合させた状態で前記前壁zeが前記凹陥部621bの奥壁wkに添接するとともにこの前壁zeのボルト挿通孔zfと前記奥壁wkのボルト挿通孔zbが合致するようになっている。そして、これらボルト挿通孔zf、zbを通過させたボルトv3を背インナーシェル612のナット部yfに螺着することによってハンドル部622と背アウターシェル本体621とを背凭れ本体61に共締めしている。ハンドルユニットHUを背アウターシェル本体621の凹陥部621bに装着した状態では、このハンドルユニットHUの背面と背アウターシェル本体621の背面とが面一に連続するようになっている。なお、ハンドルユニットHUの前壁に設けられたボルト挿通孔zfはボルトv3の頭部を収容するための座ぐり孔zf1を備えており、共締めしたボルトv3の頭部は前記前壁ze内に埋没するようになっている。この状態で、前記前壁zeの背面に立壁部を構成するカバー623を着脱可能に添設している。
【0047】
カバー623は、ボルトv3の頭部やその周囲の部位を外部から視認されないように覆い隠すとともに開口部624から挿入された手指が奥方に及んだ場合に当接され得るようにしたものである。カバー623は、背面視において前記開口部624を通して背凭れ本体61が視認できない大きさに設定された樹脂製のものである。カバー623は、長方形状のもので下縁にハンドルユニットHUの位置決め孔zgに係合する係合突起623aを有するとともに、上縁に背アウターシェル本体621の係合孔621dに部材の弾性変形を利用して係合する弾性爪623bを備えている。このカバー623は後傾した状態で係合突起623aを位置決め孔zgに係合させた上で前方に回動させることにより前記弾性爪623bが前記係合孔621dに係合してハンドルユニットHUの前壁zeの背面に添接した状態で装着されるようになっている。
【0048】
以上のようにしてなる椅子本体Cは、図13及び図14に示すように、使用位置(U)からロッキング位置(R)まで背凭れ6を移動させることができるようになっており、後方への押圧力が解消した場合に前記背凭れ6が傾動反力発生機構9の働きにより使用位置(U)に自己復帰するようになっている。そして、シンクロロッキング機構SYの働きにより、背凭れ6を傾動させた場合に、その傾動に連動して座4が一定の割合で傾動するように構成されている。
【0049】
傾動反力発生機構9は、前記支持基部2内に設けられたもので、対をなすスプリングSと、これらスプリングSの基端部を保持する基端側スプリングリテーナ91と、前記スプリングSの先端部を保持する先端側スプリングリテーナ92とを具備してなるもので、前記スプリングSの付勢力を前記先端側スプリングリテーナ92を介して前軸j1に伝達することにより前記座4及び背凭れ6を使用位置(U)方向に付勢するようになっている。そして、前記基端側スプリングリテーナ91の位置を反力調整機構93により変更することにより前記スプリングSによる付勢力の大きさを変更することができるようになっている。先端側スプリングリテーナ92は、その前面に断面半円形をなす溝921を備えておりその溝921に前記前軸j1の中間部分を保持させている。反力調整機構93は、軸心を左右方向に向けて配設され反力調整レバー94を回転操作することにより軸心回りに当該反力調整レバー94と一体に回転する送りねじ部材941と、この送りねじ部材941に螺着され、当該送りねじ部材941の正逆回転に伴って左右方向に往復動作する進退部材95と、この進退部材95の左右方向への進退動作を前記基端側スプリングリテーナ91の前後方向の位置変化に変換するカム機構96とを備えた通常の構成のものである。
【0050】
シンクロロッキング機構SYは、座4を支持する座支持部材3の前端側を前軸j1を介して支持基部2に前後移動可能に支持させるとともに前記座支持部材3の後端側を後軸j2を介して背支桿5の途中に支持させたものである。このシンクロロッキング機構SYによれば、背凭れ6を使用位置(U)からロッキング位置(R)まで後傾させた場合に、座支持部材3が後端側を沈み込ませながら後退動作を行うことになり、前軸jが支持基部2に配されたブッシュ26の長孔261に沿って使用位置(U)からロッキング位置(R)にまで移動するようになっている。この椅子本体Cは、前記座4及び背凭れ6のシンクロロッキング動作に伴って往復動作を行う往復動部材たる前軸j1と、この前軸j1を図15に示す初期位置p2において係止する規制部材25とを具備してなり、前記規制部材25を取付ける前の状態において前記前軸j1が前記スプリングSの付勢力がゼロとなる図17に示す組み付け位置p1から前記初期位置p2を経由して図16に示すロッキング位置p3にまで移動し得るように構成しておき、前記前軸j1を前記初期位置p2よりもロッキング位置p3側に移動させた状態で前記規制部材25を後付けできるように構成されている。すなわち、前記長孔261の一端側に前記規制部材25を後付けするための規制部材取付部262が設けられている。
【0051】
詳述すれば、図7に示すように、前記支持基部2の前端部に長孔状をなす取付孔212xを形成しておき、この取付孔212xに前軸j1を前後方向に往復動作可能に案内するための長孔261を有した樹脂製のブッシュ26が設けられている。このブッシュ26の前端側に前記長孔261に連続させて前記規制部材取付部262が形成されている。前記長孔261は、前記前軸j1に対応した幅寸法を有しており、前記規制部材取付部262は、前記長孔261の幅寸法よりも大きな開口幅を有したものである。規制部材25は、前記規制部材取付部262に嵌合し得る異形横断面を有する軸状のもので、図11及び図15図17に示すように、前記長孔261に臨む部位に前軸j1を係止するための係止部251を備えている。前記前軸j1は、通常使用時においては、規制部材25の係止部251に当接する初期位置p2から後方のロッキング位置p3までの間で前後方向に往復動作するようになっている。規制部材25は、図7に示すように、内方端に位置決め用の鍔252を有するとともにその鍔252の内側に手指でつまむようにして把持可能なつまみ部253を備えており、そのつまみ部253を摘んで規制部材25を前記規制部材取付部262に内側から挿入することにより後付けできるようにしてある。
【0052】
なお、この規制部材25と前記ブッシュ26との間には、図11及び図15図17に示すように、前記鍔252が前記ブッシュ26に当接する正規の位置まで規制部材25が挿入された状態で相互に係合する抜け止め機構27が設けられている。抜け止め機構27は、規制部材25側に設けられた係合部254と、ブッシュ26側に設けられ前記規制部材25の挿入動作を利用して前記係合部254に弾性係合する弾性爪263とを備えたものである。前記長孔261を形成するブッシュ26と規制部材25は、前記前軸j1の両端部に対応させて支持基部2の左右の側壁212にそれぞれ設けられている。
【0053】
前記両規制部材25が装着される前の段階においては、図17に示すように、前軸j1が前記規制部材取付部262内に進入する位置すなわち前記スプリングSの付勢力がゼロとなる組み付け位置p1に存在することが可能となる。そのため、規制部材25を取付けていない前段階において組み付け位置p1に前軸j1を挿入して無負荷状態で先端側スプリングリテーナ92に当接させ、しかる後に、背凭れ6を後傾させながら前軸j1を前記初期位置p2を通過させてロッキング位置p3方向に移動させその状態で図11及び図16に示すように前記各規制部材25を前記各規制部材取付部262にそれぞれ内側から装着する。その状態で背凭れ6に対する後方への押圧力を解除すれば前記スプリングSの付勢力により前記前軸j1が前方に移動し前記規制部材25、より厳密には該規制部材25の係止部251に当接する初期位置p2で係止されることになる。初期位置p2においては、図15に示すように、スプリングSの予圧により前記前軸j1が初期位置p2に安定保持され前記背凭れ6及び座4が使用位置(U)に静止した状態となる。
【0054】
この実施形態における椅子本体Cは、前記座4及び背凭れ6のシンクロロッキング動作に伴って往復動作を行う往復動部材たる前軸j1と、この前軸j1の動作範囲における略全域に亘って当該前軸j1を対向する二方向から挟圧しその往復動作に摩擦抵抗を与える樹脂製の抵抗部材28とを具備している。
【0055】
前記抵抗部材28は、図11及び図15図17に示すように、前記前軸j1を挟持する対をなす挟圧部281とこれら挟圧部の一端同士を連結する第一の連結部282と前記挟圧部281の他端同士を連結する第二の連結部283とを備えた環状のものである。前記抵抗部材28は、前記挟圧部281間の離間寸法w2を前記前軸j1の直径w1、すなわち前軸j1における挟圧方向の外径寸法w1よりも小さく設定したものであり、部材の弾性反発力により前記両挟圧部281を前記抵抗部材28に弾性的に圧接している。なお、前記挟圧部281間の離間距離w2は、前軸j1の前記外形寸法w1の約5分の3に設定されている。前記抵抗部材28は、前記ブッシュ26に一体的に設けられたものである。抵抗部材28は、前記第一、第二の連結部282、283が前記ブッシュ26に一体化されているとともに前記両挟圧部281の大部分がスリット284を介して前記ブッシュ26と離間している。具体的に説明すれば、前記両挟圧部281は板ばね状のものであり、前記第一の連結部282はこれら両挟圧部281の端部を連結する側面視U字状をなすものである。第二の連結部283は、前記規制部材取付部262を兼ねたものであり、この規制部材取付部262と前記第一の連結部282とは前記ブッシュ26と一体化されている。ブッシュ26と抵抗部材28は、POM(ポリアセタール)樹脂を用いて一体に成形されたものである。
【0056】
この実施形態における椅子本体Cは、以上説明した構造に加え、次のような構成をなしている。この椅子本体Cの背凭れ6は、下半部6bがやや前傾した状態でその両端部が着座者の両側を包囲するように湾曲した幅広な形状をなすものである。上半部6aは、側面視においてくの字状に屈曲する屈曲部6cを介して前記下半部6bに連続するやや後傾したものである。上半部6aは、前記下半部6bよりも幅の狭い形態をなしている。そして、上半部6aよりも前側方に延出した下半部6bの上面6sが肘掛け7の上面7sと略連続するように設定されている。
【0057】
肘掛け7は、後方に開放された側面視コ字形をなす肘掛本体71と、この肘掛本体71を座4の座アウターシェル41に取付ける取付アーム72とを備えたもので、前記肘掛本体71の上面である肘当て面7sが前記背凭れ6の下半部6bの上面6sに略連続するように設定されている。また、肘掛本体71の下面711は、背凭れ6の下面6uと略連続するように設定されている。このようにしてなる椅子本体Cに前記災害対応用品セットBが装着されている。換言すれば、この椅子Aは、災害時に使用され得る災害対応用品を備えたもので、前記椅子本体Cと前記災害対応用品セットBとを具備してなる。
【0058】
災害対応用品セットBは、収納部材B2の内部に一人分の内容に略相応する前記災害対応用品を収納させたものであり、この災害対応用品セットBを取り付けるための取付部である添接部521を前記背支桿5に配している。すなわち、災害対応用品は、前記座4の座面4sよりも下の位置に配されている。災害対応用品セットBは、添接部521に添接した状態で背支桿5に対して支持部材Eによって吊り下げ支持されている。この実施形態における支持部材Eは、端部に着脱可能な面ファスナを備えたベルト状の部材を主体に構成されたものであり、上の背支桿カバー53上を通過させて背支桿5に巻回された上で、災害対応用品セットBを吊り下げ支持している。
【0059】
以上説明したように、本実施形態に係る椅子Aは、前記規制部材25を取り付ける前の状態において前記前軸j1が前記スプリングSの付勢力がゼロとなる組み付け位置p1から前記初期位置p2を経由して前記ロッキング位置p3にまで移動し得るとともに、前記前軸j1を前記初期位置p2よりもロッキング位置p3側に移動させた状態で前記規制部材25を後付けできるように構成している。従って、簡単な構成により、規制部材25の取り付け、ひいては座4及び背凭れ6に対する初期反力の付与を容易に行うことができる。
【0060】
また、前記前軸j1が、前記長孔261に案内されて往復動する軸状のものであり、前記長孔261の一端側に前記規制部材25を後付けするための規制部材取付部262を備えているので、簡単な構成により支持基部2に規制部材25を後付けする構造を実現できる。
【0061】
規制部材取付部262が、前記支持基部2の取付孔212xに装着された樹脂製のブッシュ26に設けられたものであるので、支持基部2側には取付孔212xを設けるだけでよく、規制部材25を取り付け可能にするための設計変更を行う必要がない。
【0062】
前記前軸j1を案内する長孔261が前記ブッシュ26に形成されているので、支持基部2の取付孔212xでなく前記長孔261が前軸j1に摺接することとなる。従って、取付孔212xを設けた部位は摩耗しにくく、ブッシュ26の長孔261を設けた部位が摩耗した場合はブッシュ26を交換すればよいので、メンテナンスが容易である。
【0063】
前記前軸j1を挟持する対をなす挟圧部281と、これら挟圧部281の一端同士を連結する連結部282とを備えた抵抗部材28を有することにより、前軸j1の往復動作に摩擦抵抗を与えることができ、また、座4及び背凭れ6を後傾させる際に底づき感を緩和させることができる。加えて、スプリングSを弱いもの、すなわちばね定数が小さなものとすることもできる。
【0064】
前記規制部材25と前記規制部材取付部262との間に抜け止め機構27を設けているので、規制部材25をブッシュ26及び支持基部2に安定して取り付けておくことができる。
【0065】
前記抜け止め機構27が、規制部材25側に設けられた係合部254と、規制部材取付部側262に設けられ前記規制部材25の挿入動作を利用して前記係合部254に弾性係合する弾性爪263とを備えたものであるので、このような抜け止め機構27を容易に形成することができる。
【0066】
そして、前記規制部材25が、前記長孔261に臨む部位に前軸j1を係止するための係止部251を備えているので、前軸j1を初期位置p2に安定して係止しておくことができる。
【0067】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0068】
例えば、往復動部材として、座支持部材の前軸でなく、例えば、座支持部材の下面から下方に突出する突起を設け、この突起を支持基部側に設けた長孔に案内させる等、往復動部材として他の部材を利用することも考えられる。
【0069】
規制部材を後付けするための規制部材取付部は、長孔の一端側に限らず、他の箇所に設けてもよい。
【0070】
上述した実施形態のように支持基部の取付孔に樹脂製のブッシュを装着し、このブッシュに設けた長孔に往復動部材である座支持部材の前軸を案内させる替わりに、支持基部に設けた長孔に直接往復動部材を案内させる態様も採用できる。
【0071】
規制部材と規制部材取付部との間に抜け止め機構を設ける替わりに、例えば、規制部材取付部に規制部材を圧入させ、規制部材を規制部材取付部から取り外す際にこれらの間に大きな摩擦力を発生させるようにする等、他の方法により規制部材を規制部材取付部に保持させてもかまわない。
【0072】
また、前記抜け止め機構を設ける場合であっても、規制部材側の係合部と規制部材取付部側の弾性爪とを弾性係合させる態様に限らず、逆に規制部材側に弾性爪を設け規制部材取付部側の係合部に係合させる等、他の態様を採用可能である。
【0073】
往復動部材を初期位置に係止するための係止部は、規制部材の長孔に臨む部位に限らず、他の箇所に設けてもよいのはもちろんである。
【0074】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0075】
A…椅子
1…脚
2…支持基部
25…規制部材
4…座
6…背凭れ
j1…前軸
p1…組み付け位置
p2…初期位置
p3…ロッキング位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
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