特許第6516405号(P6516405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6516405
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/12 20160101AFI20190513BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20190513BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20190513BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20190513BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20190513BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20190513BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20190513BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20190513BHJP
   B60W 30/14 20060101ALI20190513BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20190513BHJP
【FI】
   B60W20/12
   B60W10/06 900
   B60W10/08 900
   B60W10/26 900
   B60K6/48ZHV
   B60K6/54
   B60L11/14
   B60L15/20 J
   B60W30/14
   G01C21/26 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-241941(P2013-241941)
(22)【出願日】2013年11月22日
(65)【公開番号】特開2015-101145(P2015-101145A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 享
(72)【発明者】
【氏名】田邊 圭樹
(72)【発明者】
【氏名】飯島 吾郎
【審査官】 神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−016473(JP,A)
【文献】 特開2011−020571(JP,A)
【文献】 特開2007−187090(JP,A)
【文献】 特開2001−157305(JP,A)
【文献】 特開2000−333305(JP,A)
【文献】 特開平10−150701(JP,A)
【文献】 特開2000−324609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00〜50/16
B60K 6/20〜 6/547
B60K 31/00〜31/18
B60L 1/00〜 3/12
B60L 7/00〜13/00
B60L 15/00〜15/42
B60L 50/00〜58/40
G01C 21/00〜21/36
G01C 23/00〜25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行用駆動源としてのエンジン及びモータと、
前記モータに電力を供給するバッテリと、
前記車両の前方の経路情報を取得する経路情報取得部と、
前記経路情報取得部により取得した経路情報に基づき各地点における前記車両の運転状態を予測し、要求トルクが予め定めた低負荷判定閾値以下となる低負荷区間を検出する低負荷区間検出部と、
前記低負荷区間内にて、前記エンジンにより前記要求トルクを発生させ且つ前記モータを回転させて発電を行うエンジン発電走行モード、及び、当該エンジン発電走行モードで発電した電力を用いて前記モータにより前記要求トルクを発生させるモータ走行モードのそれぞれの実行範囲を設定する走行モード設定部と、
前記車両が前記低負荷区間内を走行する際に、前記走行モード設定部により設定されたエンジン発電走行モード及びモータ走行モードの実行範囲に従って前記エンジン及び前記モータを制御する低負荷走行制御部と、を備え
前記走行モード設定部は、前記エンジン発電走行モードにより発電した電力を前記モータ走行モードにより前記低負荷区間終了地点で使い切る量の目標充電量を設定し、
前記低負荷走行制御部は、前記低負荷区間内において前記エンジン発電走行モードにより発電した電力により前記バッテリの充電量が前記目標充電量に達したときに前記モータ走行モードに切り替えるハイブリッド車両の走行制御装置。
【請求項2】
前記走行モード設定部は、前記エンジン発電走行モードにて発電した電力を前記モータ走行モードにより前記低負荷区間の終了地点で使い切るように、前記エンジン発電走行モード及び前記モータ走行モードの実行範囲を設定する請求項1記載のハイブリッド車両の走行制御装置。
【請求項3】
記経路情報取得部により取得される経路情報に基づき、前記車両前方の経路上における前記バッテリの充電量を予測する充電量予測部を備え、
前記低負荷走行制御部は、前記充電量予測部により予測される前記低負荷区間開始地点における前記バッテリの充電量が、予め定めた所定量以下である場合に、前記走行モード設定部により設定されたエンジン発電走行モード及びモータ走行モードの実行範囲に従って前記エンジン及び前記モータを制御する請求項1又は2記載のハイブリッド車両の走行制御装置。
【請求項4】
前記低負荷走行制御部は、前記車両が前記低負荷区間内を走行する際に、前記走行モード設定部により設定されたエンジン発電走行モード及びモータ走行モードの実行範囲に従い、且つ運転者により設定された目標車速を維持するように前記エンジン及び前記モータを制御する請求項1からのいずれか1項に記載のハイブリッド車両の走行制御装置。
【請求項5】
前記エンジン発電走行モードは、燃費効率が最適かつ前記モータのモータ効率が最も良くなる前記エンジンの運転点で発電する請求項1から4のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行駆動源としてエンジンとモータとを備えるハイブリッド車両の走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のハイブリッド車両においては、ナビゲーションシステム等を活用して車両前方の走行経路における道路環境情報(以下、経路情報という)を取得し、当該経路情報を利用してエンジンの燃料消費率が最小となるようにエンジン及びモータを制御する技術の開発が進められている。
【0003】
例えば特許文献1では、経路情報を利用して、走行経路における車両の車速予測値、制駆動力予測値から、エンジンの運転点の予測値を算出し、燃料消費率が悪い場所で優先的にエンジンによりモータを回転させて発電を行っている。これにより、エンジンの燃料消費率がよりよい値となるよう運転点を変化させ、その地点での燃料消費率を向上させて、ひいては区間内での燃料消費量の最小化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−324609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、緩い降坂路等のエンジンの燃料消費率が悪い低負荷区間においてエンジンによりモータを回転させて発電を行うことで、エンジンの負荷を燃料消費率の良い領域まで高めて燃料消費率の改善を図っているが、発電を行う分エンジンの燃料消費量は増加する。
【0006】
モータ、インバータ、バッテリ等は充放電に伴い必ずロスを生じることからエンジンによる発電により得られた電力(エネルギ)を全てモータの動力として用いることはできない。つまり、単純にエンジンのアシストとしてモータを使用していてはエンジンによる発電のために使用した燃料分のエネルギを全て回収することはできず、総合的にみると却って燃料消費量を増加させるおそれがある。
【0007】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、ハイブリッド車両において、エンジンによりモータを回転させて発電して得られた電力を効率的に使用して、総合的に燃料消費量を削減することのできるハイブリッド車両の走行制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、第1の発明では、車両の走行用駆動源としてのエンジン及びモータと、前記モータに電力を供給するバッテリと、前記車両の前方の経路情報を取得する経路情報取得部と、前記経路情報取得部により取得した経路情報に基づき各地点における前記車両の運転状態を予測し、要求トルクが予め定めた低負荷判定閾値以下となる低負荷区間を検出する低負荷区間検出部と、前記低負荷区間内の要求トルクを平均化した平均要求トルクを算出する平均トルク算出部と、前記低負荷区間内にて、前記エンジンにより前記平均要求トルクを発生させ且つ前記モータを回転させて発電を行うエンジン発電走行モード、及び、当該エンジン発電走行モードで発電した電力を用いて前記モータにより前記平均要求トルクを発生させるモータ走行モードのそれぞれの実行範囲を設定する走行モード設定部と、前記車両が前記低負荷区間内を走行する際に、前記走行モード設定部により設定されたエンジン発電走行モード及びモータ走行モードの実行範囲に従って前記エンジン及び前記モータを制御する低負荷走行制御部と、を備え、前記走行モード設定部は、前記エンジン発電走行モードにより発電した電力を前記モータ走行モードにより前記低負荷区間終了地点で使い切る量の目標充電量を設定し、前記低負荷走行制御部は、前記低負荷区間内において前記エンジン発電走行モードにより発電した電力により前記バッテリの充電量が前記目標充電量に達したときに前記モータ走行モードに切り替える
【0009】
第2の発明では、前記第1の発明において、前記走行モード設定部は、前記エンジン発電走行モードにて発電した電力を前記モータ走行モードにより前記低負荷区間の終了地点で使い切るように、前記エンジン発電走行モード及び前記モータ走行モードの実行範囲を設定する。
【0010】
第3の発明では、前記第1又は第2の発明において、前記経路情報取得部により取得される経路情報に基づき、前記車両前方の経路上における前記バッテリの充電量を予測する充電量予測部を備え、前記低負荷走行制御部は、前記充電量予測部により予測される前記低負荷区間開始地点における前記バッテリの充電量が、予め定めた所定量以下である場合に、前記走行モード設定部により設定されたエンジン発電走行モード及びモータ走行モードの実行範囲に従って前記エンジン及び前記モータを制御する。
【0012】
の発明では、前記第1から第のいずれかの発明において、前記低負荷走行制御部は、前記車両が前記低負荷区間内を走行する際に、前記走行モード設定部により設定されたエンジン発電走行モード及びモータ走行モードの実行範囲に従い、且つ運転者により設定された目標車速を維持するように前記エンジン及び前記モータを制御する。
第5の発明では、前記第1から第5のいずれかの発明において、前記エンジン発電走行モードは、燃費効率が最適かつ前記モータのモータ効率が最も良くなる前記エンジンの運転点で発電する。
【発明の効果】
【0013】
上記手段を用いる本発明によれば、ハイブリッド車両において、エンジンによりモータを回転させて発電して得られた電力を効率的に使用して、総合的に燃料消費量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態における走行制御装置を備えたハイブリッド車両の概略構成図である。
図2】低負荷走行制御における走行モード設定ルーチンを示すフローチャートである。
図3】低負荷走行制御における走行モード実行ルーチンを示すフローチャートである。
図4】低負荷走行制御を実行したときの各種運転状態の推移を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本実施形態の走行制御装置が搭載されたハイブリッド車両を示す全体構成図である。
ハイブリッド車両1はいわゆるパラレル型ハイブリッドのトラックとして構成されており、以下の説明では、車両と称する場合もある。
【0016】
車両1には走行用動力源としてディーゼルエンジン(以下、エンジンという)2、及び例えば永久磁石式同期電動機のように発電機としても作動可能なモータ3が搭載されている。エンジン2の出力軸にはクラッチ4が連結され、クラッチ4にはモータ3の回転軸を介して自動変速機5の入力側が連結されている。自動変速機5の出力側にはプロペラシャフト6を介して差動装置7が連結され、差動装置7には駆動軸8を介して左右の駆動輪9が連結されている。
【0017】
自動変速機5は一般的な手動式変速機をベースとしてクラッチ4の断接操作及び変速段の切換操作を自動化したものであり、本実施形態では、前進6速後退1速の変速段を有している。当然ながら、変速機5の構成はこれに限るものではなく任意に変更可能であり、例えば手動式変速機として具体化してもよいし、2系統の動力伝達系を備えたいわゆるデュアルクラッチ式自動変速機として具体化してもよい。
【0018】
モータ3にはインバータ10を介してバッテリ11が接続されている。バッテリ11に蓄えられた直流電力はインバータ10により交流電力に変換されてモータ3に供給され、モータ3が発生した駆動力は自動変速機5で変速された後に駆動輪9に伝達されて車両1を走行させる(これを力行運転という)。また、例えば車両1の減速時や降坂路での走行時には、駆動輪9側からの逆駆動によりモータ3が発電機として作動する。モータ3が発生した負側の駆動力は制動力として駆動輪9側に伝達されると共に、モータ3が発電した交流電力がインバータ10で直流電力に変換されてバッテリ11に充電される(これを回生運転という)。さらに、エンジン2が発生する駆動力によりモータ3を回転させて発電を行い、バッテリ11を充電することも可能である(これをエンジン発電という)。
【0019】
このようなモータ3が発生する駆動力は上記クラッチ4の断接状態に関わらず駆動輪9側に伝達され、これに対してエンジン2が発生する駆動力はクラッチ4の接続時に限って駆動輪9側に伝達される。従って、クラッチ4の切断時には、上記のようにモータ3が発生する正側または負側の駆動力が駆動輪9側に伝達されて車両1が走行する。また、クラッチ4の接続時には、エンジン2及びモータ3の駆動力が駆動輪9側に伝達されたり、或いはエンジン2の駆動力のみが駆動輪側に伝達されたりして車両1が走行する。
【0020】
車両ECU13は車両全体を統合制御するための制御回路である。そのために車両ECU13には、アクセルペダル14の操作量を検出するアクセルセンサ15、ブレーキペダル16の踏込操作を検出するブレーキスイッチ17、車両1の速度を検出する車速センサ18、エンジン2の回転速度を検出するエンジン回転速度センサ19、及びモータ3の回転速度を検出するモータ回転速度センサ20などの各種センサ・スイッチ類が接続されている。
【0021】
また、車両ECU13には、図示はしないがクラッチ4を断接操作するアクチュエータ、及び自動変速機5を変速操作するアクチュエータなどが接続されると共に、エンジン制御用のエンジンECU22、インバータ制御用のインバータECU23、及びバッテリ11を管理するバッテリECU24が接続されている。
【0022】
車両ECU13は、運転者によるアクセル操作量などに基づき車両1を走行させるために必要な要求トルクを算出し、その要求トルクやバッテリ11のSOC(充電量:State Of Charge)などに基づき車両1の走行モードを選択する。本実施形態では走行モードとして、エンジン2の駆動力のみを用いて走行するエンジン走行モード、モータ3の駆動力のみを用いて走行するモータ走行モード、及びエンジン2及びモータ3の駆動力を共に用いて走行するハイブリッド走行モード、エンジン2の駆動力を用いての走行を行いつつ、エンジン2の駆動力を用いてモータ3を回転させて発電を行うエンジン発電走行モードが設定されており、その何れかの走行モードを車両ECU13が選択するようになっている。
【0023】
車両ECU13は選択した走行モードに基づき、要求トルクをエンジン2やモータ3が出力すべきトルク指令値に換算する。例えばハイブリッド走行モードでは要求トルクをエンジン2側及びモータ3側に配分した上で、その時点の変速段に基づきエンジン2及びモータ3のトルク指令値を算出する。また、エンジン走行モードでは要求トルクを変速段に基づきエンジン2へのトルク指令値に換算し、モータ走行モードでは要求トルクを変速段に基づきモータ3へのトルク指令値に換算する。さらにエンジン発電走行モードでは、要求トルクとモータ3による発電に要するトルクとを合わせた値をエンジン2のトルク指令値として算出する。
【0024】
そして、車両ECU13は選択した走行モードを実行すべく、モータ走行モードでは上記クラッチ4を切断し、エンジン走行モード、ハイブリッド走行モード及びエンジン発電走行モードではクラッチ4を接続した上で、エンジンECU22及びインバータECU23にトルク指令値を適宜出力する。また、車両1の走行中において車両ECU13は、アクセル操作量や車速などに基づき図示しないシフトマップから目標変速段を算出し、この目標変速段を達成すべく、アクチュエータによりクラッチ4の断接操作及び変速段の切換操作を実行する。
【0025】
一方、エンジンECU22は、車両ECU13において選択された走行モードに基づくトルク指令値を達成するように噴射量制御や噴射時期制御を実行する。例えばエンジン走行モード、ハイブリッド走行モード及びエンジン発電走行モードでは、正側のトルク指令値に対してエンジン2に駆動力を発生させ、負側のトルク指令値に対してエンジンブレーキを発生させる。また、モータ走行モードの場合には、燃料噴射の中止によりエンジン2を停止保持する、またはアイドル運転状態とする。
【0026】
また、インバータECU23は、車両ECU13において選択された走行モードに基づくトルク指令値を達成するように、インバータ10を介してモータ3を駆動制御する。例えばモータ走行モードやハイブリッド走行モードでは、正側のトルク指令値に対してモータ3を力行制御して正側の駆動力を発生させ、負側のトルク指令値に対してはモータ3を回生制御して負側の駆動力を発生させる。また、エンジン走行モードの場合には、モータ3の駆動力を0に制御する。さらにエンジン発電走行モードの場合には、エンジン2の駆動力を受けて発電を行う。
【0027】
また、バッテリECU24は、バッテリ11の温度、バッテリ11の電圧、インバータ10とバッテリ11との間に流れる電流などを検出すると共に、これらの検出結果からバッテリ11のSOC(充電量)を算出し、このSOCを検出結果と共に車両ECU13に出力する。
【0028】
一方、車両ECU13は、運転者により設定された目標車速VStを維持するようにエンジン2及びモータ3を制御するオートクルーズ制御を実行可能である。運転者により図示しないオートクルーズ制御の実行スイッチが操作されて目標車速VStが設定されると、車両ECU13は車速VSを目標車速VStとするようにエンジン2及びモータ3のトルクを制御して加速及び減速を行う。
【0029】
本実施形態におけるオートクルーズ制御では、車両前方の走行経路における道路環境情報(経路情報)に基づき各地点における車両1の運転状態を予測した上で走行モードの選択を行っている。そのため車両ECU13には、自車前方の経路情報を検出するために、図1に示すようにナビゲーション装置31が接続されている。
【0030】
ナビゲーション装置31は自己の記憶領域に記憶されている地図データ、及びアンテナを介して受信されるGPS情報やVICS(登録商標)情報などに基づき、車両1の走行中に地図上の自車位置及び自車前方の路面勾配及びカーブ等を特定する。
【0031】
車両ECU13は、オートクルーズ制御において、これらナビゲーション装置31から例えば路面勾配情報を取得し、当該路面勾配情報に基づき車両前方の経路を区分する。そして、例えば降坂路の区間においては回生運転を行うべくモータ走行モードに設定する。また、登坂路又は平坦路の区間においては、当該区間において予測されるSOCが比較的多ければモータ走行モード、SOCが比較的少なければエンジン走行モードに設定する。
【0032】
特に本実施形態では、車両前方の経路上にエンジン2の燃費効率が悪化する緩い降坂路のような低負荷区間がある場合であって、当該低負荷区間におけるSOCが0又は極少量である場合には、エンジン発電走行モードとモータ走行モードとを組み合わせた低負荷走行制御を実行する。
【0033】
詳しくは、車両ECU13は、図1に示すように、低負荷走行制御を実行するための低負荷走行制御部40を含んでおり、当該低負荷走行制御部40は、経路情報取得部41、低負荷区間検出部42、SOC予測部43、及び走行モード設定部44を含んでいる。
【0034】
低負荷走行制御部40は、経路情報取得部41にて、ナビゲーション装置31により検出された自車前方の経路情報を取得する。そして当該経路情報取得部41は、自車前方の各地点における道路勾配、自車の重量等に基づき目標車速VStを維持するのに必要な要求トルクDTを算出する。
【0035】
低負荷区間検出部42は、自車の重量情報や取得した経路情報に含まれる路面勾配情報等から各地点において目標車速VStを維持するために必要とされる要求トルク等を算出し、当該要求トルクが予め定めた低負荷判定閾値DTa以下である低負荷区間を検出する。また、当該低負荷区間検出部42は検出した低負荷区間を目標車速VStで走行した場合にかかる低負荷走行時間ΔTが予め定めた所定時間Taより大であるか否かの判定も行う。当該所定時間Taはエンジン発電走行モードからモータ走行モードへの切り替えに伴うクラッチ4の断接時間等を考慮し、頻繁にクラッチ4の断接が行われないよう任意に設定される時間である。
【0036】
SOC予測部43は、バッテリECU24からバッテリ11のSOC情報を取得し、経路情報や予測される運転状態等から各地点におけるSOCを予測する。また、当該SOC予測部43は低負荷区間開始地点におけるSOCが予め定めた所定値Sa以下であるか否かの判定も行う。当該所定値Saはエンジン発電を必要とするようなSOCの許容下限値に設定されている。
【0037】
走行モード設定部44は、要求トルクDTに基づき、低負荷区間内においてエンジン発電走行モードを実行する範囲と、その後にモータ走行モードを実行する範囲の比率を設定する。これは、低負荷区間を目標車速VStで走行した場合にかかる走行時間ΔTのうち、エンジン発電走行モードにより走行する期間をΔT1とし、当該ΔT1の間にバッテリ11に充電される充電量を、残りの期間(T−ΔT1)のモータ走行モードにより使い切るように、エンジン発電走行モードの実行範囲とモータ走行モードの実行範囲の比率ΔT:T−ΔT1を設定する。
【0038】
具体的には、エンジン発電走行モードにおいてバッテリ11に充電される充電量と、モータ走行モードにおいてバッテリ11から消費される充電量が等しくなる下記式(1)から得られる下記(2)によりΔT1を算出する。
【0039】
ΔT1×CPave=(ΔT−ΔT1)×MPave・・・(1)
ΔT1=ΔT×MPave/(CPave+MPave)・・・(2)
ここで、低負荷区間をエンジン発電走行モードにより走行した場合にバッテリ11に充電される単位時間当たりの平均充電量CPave及びモータ走行モードで走行するのに必要な単位時間当たりの平均モータ仕事MPaveは、エンジン2及びモータ3の特性マップから燃料消費が最小になるように算出可能である。
【0040】
例えば、平均充電量CPaveは、エンジン2の特性マップから平均要求トルクDTave以上であって燃費効率が最適かつモータ3で発電する際にモータ3の特性マップからモータ効率が最も良くなるエンジン2の運転点を算出し、平均要求トルクを超える分のトルクによって生成されるものとして算出される。また、平均モータ仕事MPaveは、エンジン2とモータ3の特性マップによりモータ走行により燃費低減が可能な平均要求トルクDTaveを出力するのに必要な仕事に相当する。
【0041】
さらに、走行モード設定部44は、エンジン発電走行モードの走行期間ΔT1と平均充電量CPaveとから、低負荷区間における目標SOC St(目標充電量(=ΔT1×CPave)よりも溜まる量)を設定する。
低負荷走行制御部40は、車両1が低負荷区間を走行する際には、走行モード設定部44において設定された比率で、エンジン発電走行モード及びモータ走行モードを実行するようにエンジンECU22を介してエンジン2を、インバータECU23を介してモータ3をそれぞれ制御する。
【0042】
ここで、図2、3を参照すると、図2には低負荷走行制御における走行モード設定ルーチンが、図3には低負荷走行制御における走行モード実行ルーチンがそれぞれフローチャートで示されており、以下同フローチャートに沿って本実施形態における低負荷走行制御の流れについて説明する。なお、当該低負荷走行制御はオートクルーズ制御実行中に行われる。
【0043】
まず、低負荷走行制御部40は、図2に示すように、ステップS1として経路情報取得部41において、ナビゲーション装置31により検出された自車前方の経路情報を取得する。
そして、ステップS2では、低負荷区間検出部42において、各地点における要求トルクDTを算出し、当該要求トルクDTが低負荷判定閾値DTa以下である低負荷区間が検出されたか否かを判定する。当該判定結果が偽(No)である場合、即ち車両前方に低負荷区間が存在しないような場合は、当該低負荷走行制御を行う必要はなく当該ルーチンを終了する。一方、当該判定結果が真(Yes)である場合は次のステップS3に進む。
【0044】
ステップS3では、低負荷区間検出部42において、低負荷区間を目標車速VStで走行した場合にかかる低負荷走行時間ΔTが所定時間Taより大であるか否かの判定を行う。当該判定結果が偽(No)である場合も当該ルーチンを終了する。一方、当該判定結果が真(Yes)である場合は、次のステップS4に進む。
【0045】
ステップS4では、SOC予測部43において、低負荷区間開始地点におけるSOCが極少量の所定値Sa以下であるか否かを判定する。当該判定結果が偽(No)である場合は当該ルーチンを終了する。一方、当該判定結果が真(Yes)である場合は、次のステップS5に進む。
【0046】
ステップS5では、走行モード設定部44において、低負荷区間内においてエンジン発電走行モードを実行する範囲とモータ走行モードを実行する範囲の比率を設定する。具体的には上述した式(2)からエンジン発電走行モードで走行する期間ΔT1を設定し、残りの期間T−ΔT1をモータ走行モードの期間に設定する。
【0047】
そして、次のステップS6では、走行モード設定部44において、エンジン発電走行モードの走行期間ΔT1と平均充電量CPaveとから、低負荷区間における目標SOC St(=ΔT1×CPave)を設定する。
このように、低負荷走行制御部40は、走行モード設定ルーチンに基づき、低負荷区間内におけるエンジン発電走行モードの範囲とモータ走行モードの範囲の比率を設定した後、図3に示す走行モード実行ルーチンを実行する。
【0048】
詳しくは、低負荷走行制御部40は、図3に示すように、ステップS10として車両1が低負荷区間の開始地点に到達したか否かを判定する。当該判定結果が偽(No)である場合は、未だ低負荷走行制御を実行する時期ではないことから、当該ステップS10の判定を繰り返す。一方、当該判定結果が真(Yes)である場合は次のステップS11に進む。
【0049】
ステップS11において低負荷走行制御部40は、低負荷区間開始地点からエンジン発電走行モードを実行する。
そして、ステップS12において低負荷走行制御部40は、バッテリ11のSOCが目標SOC Stより大となったか否かを判定する。当該判定結果が偽(No)である場合は、当該ステップS12の判定を繰り返す。一方、当該判定結果が真(Yes)となった場合は、次のステップS13に進む。
【0050】
ステップS13において低負荷走行制御部40は、走行モードをモータ走行モードに切り替える。
そして、ステップS14において低負荷走行制御部40は、車両1が低負荷区間の終了地点に到達したか、又は、SOCが許容下限値である所定値Sa以下となったか否かを判定する。当該判定結果が偽(No)である場合は、当該ステップS12の判定を繰り返す。一方、当該判定結果が真(Yes)となった場合は、当該ルーチンを終了する。
【0051】
ここで図4に低負荷走行制御を実行したときの各種運転状態の推移を示す説明図が示されている。具体的には、各種運転状態として、車両前方の経路の標高及び勾配、要求トルク、エンジントルク、モータトルク、SOC、及び燃料消費量が示されている。なお、図4では各種運転状態は、その推移を理解し易いよう簡略的に示している。以下、同図に基づき本実施形態に係るハイブリッド車両の走行制御装置の作用効果について説明する。
【0052】
まず、車両1は自車前方の経路情報を取得することで、図4に示すように自車前方経路の標高や路面勾配を認識する。そして、各地点の勾配から目標車速VStで走行するのに必要な要求トルクDTが算出され、当該要求トルクDTが低負荷判定閾値DTa以下の範囲であるs1地点からs3地点が低負荷区間として検出される。また、SOCの推移も予測され、低負荷区間の開始地点であるs1地点ではSOCの許容下限値(所定値Sa)以下であることから、s1地点からs3地点までにおいて低負荷走行制御が実行される。
【0053】
また、図4に示すように、上記式(2)より求められる低負荷区間前半のΔT1の期間はエンジン発電走行モードとすることで、エンジントルクを要求トルク以上にまで上昇させて、余剰となるエンジントルクをモータ3による発電に用い、SOCを目標SOC Stまで充電させている。そして残りのΔT−ΔT1の期間はモータ走行モードとし、目標SOC Stまで充電されたSOCを使い切るようにモータ3のみによる走行を行っている。
【0054】
このように、低負荷区間において、前半はエンジン発電走行モードによりエンジン2を燃費効率よく運転し、後半はエンジン2をアイドリング状態としモータ3で走行することで、当該低負荷区間における燃料消費量を最小限に抑えている。
【0055】
図4では、低負荷区間を全てエンジン走行モードで走行した場合のエンジントルク及び燃料消費量が破線で示されている。実線で示されている本実施形態の燃料消費量と比較すると、本実施形態ではs1地点からs2地点まではモータ3による発電を行う分エンジントルクを増加させることから燃料消費量の上昇が大きくなるが、s2地点からのモータ走行モードに移行後はアイドリング分の燃料が消費されるだけであり燃料消費量の上昇が抑えられている。そして、低負荷区間終了地点のs3地点においてはエンジン走行モードのみで走行した場合よりも燃料消費量を削減することができている。
【0056】
このように、本実施形態における低負荷走行制御では、低負荷区間において、エンジン2は前半に燃費効率のよい運転を行い後半にアイドリング状態とし、前半に当該エンジン2により発電された電力をモータ走行により効率的に使用して、総合的に燃料消費量を削減することができる。
【0057】
また、エンジン発電走行モードとモータ走行モードの実行範囲は、エンジン発電走行モードで発電された電力をモータ走行モードで使い切るように設定することで、エンジン発電走行モードで発電した電力を低負荷区間終了後に残すことがなくなる。これにより、例えば、低負荷区間終了直後に長い降坂路がある場合等にも、モータ3の回生運転によりバッテリ11のSOCを0から上限まで充電することができ、エンジン発電走行モードで発電した電力を非効率に使うことを防ぐことができる。つまり低負荷区間内でSOCを使い切っておくことで、低負荷区間終了後の経路状態によらず、確実に燃費向上効果を得ることができる。
【0058】
また、SOCが所定値Sa以下である場合に限り低負荷走行制御を行うことで、低負荷区間をモータ走行モードで走行しきれないような場合にも極力広い範囲で効率よくモータ走行モードによる走行を行うことができる。一方で、低負荷区間開始前にバッテリ11のSOCが十分にあるような場合には無駄にエンジン発電走行モードを行うことを防止できる。
【0059】
さらに、低負荷走行制御における走行モードの切り替えはバッテリ11のSOCが目標SOC Stに達したことで行うことから、走行モードの切り替え制御を容易なものとすることできる。
そして、本実施形態における低負荷走行制御はオートクルーズ制御の一環として行われることから、オートクルーズ制御における燃料消費量を確実に低減することができる。
【0060】
以上で本発明に係るハイブリッド車両の走行制御装置の実施形態についての説明を終えるが、実施形態は上記実施形態に限られるものではない。
上記実施形態では、低負荷走行制御をオートクルーズ制御の一環として実行しているが、当該低負荷走行制御は必ずしもオートクルーズ制御中に実行されるものに限られるものではない。例えば車両前方の経路情報を取得し、運転履歴等から各地点の要求トルク及び車速を推定し、低負荷区間及び当該低負荷区間の走行時間ΔTを算出可能であれば、オートクルーズ制御中に限らず本発明に係る低負荷走行制御を適用することができる。
【0061】
上記実施形態に加えて、低負荷区間に入る時点でのSOCが許容下限値(所定値Sa)とならないことが予測された場合は、低負荷区間に入る前にSOCを許容下限値まで使い切ってから、もしくはSOCを使い切る地点をさらに予測してその地点から低負荷走行制御をスタートさせることもできる。
【符号の説明】
【0062】
2 エンジン
3 モータ
4 クラッチ
11 バッテリ
13 車両ECU
22 エンジンECU
23 インバータECU
31 ナビゲーション装置
40 低負荷走行制御部
41 経路情報取得部
42 低負荷区間検出部
43 SOC予測部(充電量予測部)
44 走行モード設定部
図1
図2
図3
図4