特許第6516407号(P6516407)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三星ディスプレイ株式會社の特許一覧

特許6516407有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子
<>
  • 特許6516407-有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子 図000027
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6516407
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20190513BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20190513BHJP
   C07D 307/91 20060101ALI20190513BHJP
   C07D 333/76 20060101ALI20190513BHJP
【FI】
   H05B33/14 B
   C09K11/06 690
   C07D307/91
   C07D333/76
   H05B33/22 D
【請求項の数】8
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-264607(P2013-264607)
(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公開番号】特開2015-122381(P2015-122381A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2016年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110002619
【氏名又は名称】特許業務法人PORT
(72)【発明者】
【氏名】渕脇 純太
【審査官】 岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/061824(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/145016(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/059099(WO,A1)
【文献】 特開2012−186021(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0278551(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0001636(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0248426(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
C07D 307/91
C07D 333/76
C09K 11/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【化1】
[式中、X1〜X7はそれぞれ独立に水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上15以下のアルキル基、無置換の環形成炭素数6以上18以下のアリール基、又は無置換の環形成原子数5以上18以下のヘテロアリール基であり、Ar1及びAr2はそれぞれ独立に無置換のフェニル基、無置換のビフェニリル基又は無置換の環形成原子数5以上13以下のヘテロアリール基であり、Lは下記一般式(2)で表される2価の連結基であり、nは1又は2であり、Eは酸素原子又は硫黄原子を表す。
【化2】
]
【請求項2】
前記Ar1無置換のフェニル基、無置換のビフェニリル基であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【請求項3】
前記Eが酸素原子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【請求項4】
前記Ar2は、下記一般式(3)乃至(5)の何れかで表されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【化3】
【請求項5】
前記X1〜X7の全てが、水素原子、フッ素原子、重水素原子、炭素数1以上15以下のアルキル基、無置換の環形成炭素数6以上18以下のアリール基、又はフルオロアリール基で置換されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【請求項6】
下記構造式(6)乃至(12)の何れかで表されることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【化4】
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を発光層に含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れか一に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を発光層と陽極との間に配置される積層膜の一つの膜中に含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。特に、青色発光領域において、高効率で長寿命の有機エレクトロルミネッセンス素子材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(Organic Electroluminescence Display:有機EL表示装置)の開発が盛んになってきている。有機EL表示装置は、液晶表示装置等とは異なり、陽極及び陰極から注入された正孔及び電子を発光層において再結合させることにより、発光層における有機化合物を含む発光材料を発光させて表示を実現するいわゆる自発光型の表示装置である。
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)としては、例えば、陽極、陽極上に配置された正孔輸送層、正孔輸送層上に配置された発光層、発光層上に配置された電子輸送層及び電子輸送層上に配置された陰極から構成された有機エレクトロルミネッセンス素子が知られている。陽極からは正孔が注入され、注入された正孔は正孔輸送層を移動して発光層に注入される。一方、陰極からは電子が注入され、注入された電子は電子輸送層を移動して発光層に注入される。発光層に注入された正孔と電子とが再結合することにより、発光層内で励起子が生成される。有機エレクトロルミネッセンス素子は、その励起子の輻射失活によって発生する光を利用して発光する。尚、有機エレクトロルミネッセンス素子は、以上に述べた構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0004】
有機エレクトロルミネッセンス素子を表示装置に応用するにあたり、有機エレクトロルミネッセンス素子の高効率化及び長寿命化が求められている。特に、青色発光領域においては、赤色発光領域および緑色発光領域に比べて、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率と寿命は十分なものとは言い難い。有機エレクトロルミネッセンス素子の高効率化及び長寿命化を実現するために、正孔輸送層の定常化、安定化などが検討されている。正孔輸送層に用いられる正孔輸送材料としては、カルバゾールやアミンを含む化合物が知られており、これらを組み合わせてジベンゾフランとアミンを有する化合物も知られている。例えば、特許文献1にはフルオレンとジベンゾフランを含むアミン化合物が記載されており、特許文献2にはターフェニル基とジベンゾフランを有するアミン化合物が記載されている。しかし、特許文献1及び2のようなターフェニル基またはフルオレン環構造を含む化合物は、蒸着温度の上昇による材料の熱分解を生じるため製造上望ましくない。
【0005】
特許文献3にはジベンゾフランを有し、アミン部が2つ以上結合したポリアミン化合物が記載されている。また、特許文献4にはカルバゾールとジベンゾフランを有するアミン化合物が記載されている。特許文献5にはジベンゾフラン誘導体が記載されており、特許文献6にはジベンゾフランとアミンを置換基として有するアントラセン誘導体が記載されている。また、特許文献7にはジベンゾフラン上に直結したアミノ基を有する化合物が記載されており、特許文献8にはアミンを含む置換基を2位の位置に結合したジベンゾフランが記載されている。特許文献9には3−ジベンゾフラン基-フェニル基-アミンの順に連結した構造が記載されている。また、特許文献10にはフェニル基が重水素化されたアミン誘導体が記載されており、特許文献11にはジフェニル、又はトリフェニル化されたフェニル基とジベンゾフランを含むモノアミン材料が記載されている。さらに、特許文献12には3位で結合したジベンゾフランを複数含むモノアミン材料、ならびに3位以外で結合したジベンゾフランを1つ含むモノアミン材料を、複数の発光層を有する有機EL素子の1つの発光層のホストに用いることが記載されている。特許文献13にはカルバゾールとジベンゾフランの3位に結合したモノアミン材料が記載されている。
【0006】
しかしながら、これらの材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子も充分な発光効率と発光寿命を有しているとは言い難く、現在では一層、発光効率が高く、発光寿命の長い有機エレクトロルミネッセンス素子が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2011/021520号
【特許文献2】国際公開第2009/145016号
【特許文献3】国際公開第2011/102112号
【特許文献4】国際公開第2010/061824号
【特許文献5】国際公開第2006/128800号
【特許文献6】特開2006−151844号公報
【特許文献7】特開2008−021687号公報
【特許文献8】国際公開第2013/036044号
【特許文献9】特開2012−186021号公報
【特許文献10】韓国特許出願公開第2012−0111670号明細書
【特許文献11】国際公開第2011/059099号
【特許文献12】米国特許出願公開第2012/0119197号明細書
【特許文献13】欧州特許出願公開第2484665号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の問題を解決するものであって、高効率且つ長寿命の有機エレクトロルミネッセンス素子材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
【0009】
特に、本発明は、発光層又は発光層と陽極との間に配置される積層膜の一つの膜に用いる高効率で長寿命の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態によると、下記一般式(1)で表される有機エレクトロルミネッセンス素子用材料が提供される。
【化1】
式中、X1〜X7はそれぞれ独立に水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上15以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上18以下のアリール基、又は置換若しくは無置換の環形成原子数5以上18以下のヘテロアリール基であり、Ar1及びAr2はそれぞれ独立に置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上12以下のアリール基又は置換若しくは無置換の環形成原子数5以上13以下のヘテロアリール基であり、Lは下記一般式(2)で表される2価の連結基であり、nは1又は2であり、Eは酸素原子又は硫黄原子を表す。
【化2】
【0011】
本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、高い正孔耐性と電子耐性を有するジベンゾフラニル基又はジベンゾチオフェニル基の3位の位置に、フェニレン基又はビフェニレン基を介して結合したアミン化合物であることにより、従来多く報告されている2位の位置に結合したアミン化合物よりも、有機エレクトロルミネッセンス素子の長寿命化及び高効率化を達成することができる。また、Ar1及びAr2の環形成原子数を制限することにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の層を蒸着により形成する場合にも熱分解を抑制することができる。
【0012】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料において、前記Ar1は環形成炭素数6以上12以下のアリール基であってもよい。
【0013】
本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、Ar1の環形成原子数を制限することにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の層を蒸着により形成する場合にも熱分解を抑制することができる。
【0014】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料において、前記Eが酸素原子であってもよい。
【0015】
本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、高い正孔耐性と電子耐性を有するジベンゾフラニル基の3位の位置に、フェニレン基又はビフェニレン基を介して結合したアミン化合物であることにより、従来多く報告されている2位の位置に結合したアミン化合物よりも、有機エレクトロルミネッセンス素子の長寿命化及び高効率化を達成することができる。
【0016】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料において、前記Ar2は、下記一般式(3)乃至(5)の何れかで表されてもよい。
【化3】
【0017】
本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、Ar2の環形成原子数を制限することにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の層を蒸着により形成する場合にも熱分解を抑制することができる。
【0018】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料において、前記X1〜X7の全てが、水素原子、フッ素原子、重水素原子、炭素数1以上15以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上18以下のアリール基、又はフルオロアリール基で置換されてもよい。
【0019】
本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、ジベンゾフラニル基又はジベンゾチオフェニル基を置換する置換基の原子数を制限することにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の層を蒸着により形成する場合にも熱分解を抑制することができる。
【0020】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料において、下記構造式(6)乃至(12)の何れかで表されてもよい。
【化4】
【0021】
本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、高い正孔耐性と電子耐性を有するジベンゾフラニル基の3位の位置に、フェニレン基又はビフェニレン基を介して結合した上記の何れかのアミン化合物であることにより、従来多く報告されている2位の位置に結合したアミン化合物よりも、有機エレクトロルミネッセンス素子の長寿命化及び高効率化を達成することができる。また、Ar1及びAr2の環形成原子数、及びジベンゾフラニル基を置換する置換基の原子数を制限することにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の層を蒸着により形成する場合にも熱分解を抑制することができる。
【0022】
また、本発明の一実施形態によると、前記何れか一に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を発光層に含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【0023】
本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、高い正孔耐性と電子耐性を有するジベンゾフラニル基又はジベンゾチオフェニル基の3位の位置に、フェニレン基又はビフェニレン基を介して結合したアミン化合物を用いて発光層を形成することで、従来多く報告されている2位の位置に結合したアミン化合物よりも、有機エレクトロルミネッセンス素子の長寿命化及び高効率化を達成することができる。また、Ar1及びAr2の環形成原子数を制限することにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層を蒸着により形成する場合にも熱分解を抑制することができる。
【0024】
また、本発明の一実施形態によると、前記何れか一に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を発光層と陽極との間に配置される積層膜の一つの膜中に含む有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【0025】
本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、高い正孔耐性と電子耐性を有するジベンゾフラニル基又はジベンゾチオフェニル基の3位の位置に、フェニレン基又はビフェニレン基を介して結合したアミン化合物を用いて発光層と陽極との間に配置される積層膜の一つの膜を形成することで、有機エレクトロルミネッセンス素子の長寿命化及び高効率化を達成することができる。また、Ar1及びAr2の環形成原子数を制限することにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層と陽極との間に配置される積層膜の一つの膜を蒸着により形成する場合にも熱分解を抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、高効率且つ長寿命の有機エレクトロルミネッセンス素子材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。特に、本発明によると、発光層又は発光層と陽極との間に配置される積層膜の一つの膜に用いる高効率で長寿命の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
上述の問題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは、従来はジベンゾフラニル基又はジベンゾチオフェニル基の2位の位置に連結基を介して結合していたアミン化合物を、3位の位置に結合することにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の長寿命化及び高効率化を達成することができることを見出した。
【0029】
以下、図面を参照して本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子について説明する。但し、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0030】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、下記一般式(6)で示されるジベンゾフラニル基又はジベンゾチオフェニル基の3位の位置に、フェニレン基又はビフェニレン基を介して結合したアミン化合物を含む。
【化5】
【0031】
式(6)中、Eは酸素原子又は硫黄原子を表す。X1〜X7はそれぞれ独立に水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上15以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上18以下のアリール基、又は置換若しくは無置換の環形成原子数5以上18以下のヘテロアリール基である。ハロゲン原子としてはフッ素が好ましい。
【0032】
X1〜X7として用いる炭素数1以上15以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、1−ノルボルニル基、2−ノルボルニル基等が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。
【0033】
X1〜X7として用いる置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上18以下のアリール基としては、フェニル基、ビフェニリル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、トルイル基、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、フルオロビフェニリル基、ニトロビフェニリル基、シアノビフェニル基、シアノナフチル基、ニトロナフチル基、フルオロナフチル基、フェナントリル基、ターフェニル基、フルオロターフェニル基などが挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。
【0034】
X1〜X7として用いる置換若しくは無置換の環形成原子数5以上18以下のヘテロアリール基としては、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピラジル基、ピリミジニル基、トリアジン基、イミダゾリル基、アクリジニル基などが挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。
【0035】
Ar1及びAr2はそれぞれ独立に置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上12以下のアリール基又は置換若しくは無置換の環形成原子数5以上13以下のヘテロアリール基である。Ar1及びAr2の好ましい置換基としては、フルオロ基、クロロ基、炭素数が12以下のアルキル基、炭素数が12以下のフルオロアルキル基、シクロアルキル基、アセチル基、アリールエーテル基、アリールスルフィド基等が挙げられる。
【0036】
Ar1及びAr2として用いる置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上12以下のアリール基としては、フェニル基、ビフェニリル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、トルイル基、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、フルオロビフェニリル基、ニトロビフェニリル基、シアノビフェニル基、シアノナフチル基、ニトロナフチル基、フルオロナフチル基などが挙げられるが特にこれに限定されるものではない。上記の中でフェニル基、またはビフェニリル基、ナフチル基、フルオロフェニル基が特に好ましく、フェニル基、ビフェニリル基がさらに好ましい。
【0037】
Ar1及びAr2として用いる置換若しくは無置換の環形成原子数5以上13以下のヘテロアリール基としては、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピラジル基、ピリミジニル基、トリアジン基、イミダゾリル基、アクリジニル基、カルバゾリル基などが挙げられるが特にこれに限定されるものではない。
【0038】
Lは下記一般式(2)で表される2価の連結基であり、nは1又は2である。
【化6】
本発明において、Lはフェニレン基又はビフェニレン基である。なお、フェニレン基又はビフェニレン基とアミンの窒素原子との結合位置は特に限定されない。
【0039】
一実施形態において、本発明有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、Eが酸素原子、即ち、ジベンゾフラニル基を有することが好ましい。高い正孔耐性と電子耐性を有するジベンゾフラニル基の3位の位置に、フェニレン基又はビフェニレン基を介して結合したアミン化合物であることにより、従来多く報告されている2位の位置に結合したアミン化合物よりも、有機エレクトロルミネッセンス素子の長寿命化及び高効率化を達成することができる。
【0040】
一実施形態において、本発明有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、Ar1が環形成炭素数6以上12以下のアリール基が好ましい。Ar1の環形成原子数を制限することにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の層を蒸着により形成する場合にも熱分解を抑制することができる。
【0041】
また、一実施形態において、本発明有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、Ar2が、下記一般式(8)乃至(10)の何れかで表されることが好ましい。
【化7】
Ar2の環形成原子数を制限することにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の層を蒸着により形成する場合にも熱分解を抑制することができる。
【0042】
一実施形態において、本発明有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、X1〜X7の全てが、水素原子、フッ素原子、重水素原子、炭素数1以上15以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上18以下のアリール基、又はフルオロアリール基で置換されることが好ましい。X1〜X7として用いる置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上18以下のアリール基としては、フェニル基、ビフェニリル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、トルイル基、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、フルオロビフェニリル基、ニトロビフェニリル基、シアノビフェニル基、シアノナフチル基、ニトロナフチル基、フルオロナフチル基、フェナントリル基、ターフェニル基、フルオロターフェニル基などが挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。上記の中でフェニル基、またはビフェニリル基が特に好ましい。
【0043】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料においては、ジベンゾフラニル基又はジベンゾチオフェニル基は3位の連結部位でLと結合する。従来報告されている2位での結合では、アミン部位の窒素原子とジベンゾフラニル基又はジベンゾチオフェニル基の酸素原子又は硫黄原子がパラの位置に配置することになり、ラジカルカチオン、およびラジカルアニオンの反応性が高く、長寿命化を実現するのが困難であった。本発明においては、ジベンゾフラニル基又はジベンゾチオフェニル基は3位で連結基と結合することにより、正孔ならびに電子に対する化合物の安定性が高まり、更なる長寿命化を実現することができる。
【0044】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、高い正孔耐性と電子耐性を有するジベンゾフラニル基又はジベンゾチオフェニル基の3位の位置に、フェニレン基又はビフェニレン基を介して結合したアミン化合物であることにより、従来多く報告されている2位の位置に結合したアミン化合物よりも、有機エレクトロルミネッセンス素子の長寿命化及び高効率化を達成することができる。また、Ar1及びAr2の環形成原子数を制限することにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の層を蒸着により形成する場合にも熱分解を抑制することができる。
【0045】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化8】
【0046】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化9】
【0047】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化10】
【0048】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化11】
【0049】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化12】
【0050】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化13】
【0051】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化14】
【0052】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層に好適に用いることができる。また、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、発光層と陽極との間に配置された積層膜の何れか一層に用いることができる。これにより、正孔輸送性が向上し、有機エレクトロルミネッセンス素子の長寿命化と高効率化を実現することができる。
【0053】
(有機エレクトロルミネッセンス素子)
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100を示す模式図である。有機エレクトロルミネッセンス素子100は、例えば、基板102、陽極104、正孔注入層106、正孔輸送層108、発光層110、電子輸送層112、電子注入層114及び陰極116を備える。一実施形態において、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層に用いることができる。また、一実施形態において、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、発光層と陽極との間に配置された積層膜の何れか一層に用いることができる。
【0054】
例えば、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を正孔輸送層108に用いる場合について説明する。基板102は、例えば、透明ガラス基板や、シリコン等から成る半導体基板樹脂等のフレキシブルな基板であってもよい。陽極104は、基板102上に配置され、酸化インジウムスズ(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)等を用いて形成することができる。
【0055】
正孔注入層106は、陽極104上に配置され、例えば、下記式HI1〜HI3に示す化合物を含む。
【化15】
【0056】
正孔輸送層108は、正孔注入層106上に配置され、上述した本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を用いて形成される。
【0057】
発光層110は、正孔輸送層108上に配置され、例えば、下記式HO1〜HO4に示すホスト材料を含み、発光材料をドープして形成することができる。
【化16】
【0058】
発光層110にドープする発光材料としては、例えば、下記式DP1〜DP5に示す化合物を用いることができる。なお、発光材料は、例えば、ホスト材料に対して0.1%〜50%の割合でドープする。
【化17】
【0059】
電子輸送層112は、発光層110上に配置され、例えば、下記式ET1〜ET4に示す化合物を含む。
【化18】
【0060】
電子注入層114は、電子輸送層112上に配置され、例えば、フッ化リチウム(LiF)を含む材料により形成される。陰極116は、電子注入層114上に配置され、Al等の金属や酸化インジウムスズ(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)等の透明材料により形成される。上記薄膜は、真空蒸着、スパッタ、各種塗布など材料に応じた適切な成膜方法を選択することにより、形成することができる。
【0061】
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100においては、上述した本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を用いることにより、駆動電圧の低電圧化と高効率化を実現可能な正孔輸送層が形成される。なお、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、TFTを用いたアクティブマトリクスの有機EL発光装置にも適用することができる。
【0062】
また、本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100においては、上述した本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を発光層、又は発光層と陽極との間に配置された積層膜の何れか一層に用いることにより、駆動電圧の低電圧化と有機エレクトロルミネッセンス素子の長寿命化及び高効率化を実現することができる。
【実施例】
【0063】
(製造方法)
上述した本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、例えば、以下のように合成することができる。
【0064】
(化合物6の合成)
アルゴン雰囲気下、500mLの三つ口フラスコに、4−ビス(ビフェニリル)アミノフェニルボロン酸ピナコールエステル 4.2gと3−ブロモジベンゾフラン 2g、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) 0.1g、炭酸カリウム 3.3g、テトラヒドロフラン 180ml、水 20mlを加えた後、80℃で12時間加熱還流した。空冷後、水を加えて有機層を分取し溶媒留去した。得られた固体をフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製し、白色固体の化合物6を3.6g(収率80%)得た。
【0065】
(化合物6の同定法)
FAB−MS測定により測定された化合物6の分子量は、563.7であった。
【0066】
上述した化合物2、6及び26を正孔輸送材料として用いて、上述した製造方法により、実施例1〜3の有機エレクトロルミネッセンス素子を形成し、化合物13を正孔輸送材料として用いて実施例4の有機エレクトロルミネッセンス素子を形成した。また、比較例として、下記に示す化合物51〜55を正孔輸送材料として用いて、比較例1〜5の有機エレクトロルミネッセンス素子を形成した。なお、化合物53、54及び55は、それぞれ特許文献1、2及び11に基づく比較例化合物である。
【化19】
【化20】
【0067】
本実施例においては、基板102には透明ガラス基板を用い、150nmの膜厚のITOで陽極104を形成し、60nmの膜厚のTNATA(HI1)で正孔注入層106を形成し、実施例及び比較例の化合物を用いて30nmの膜厚の正孔輸送層108を形成し、ADN(HO1)にTBP(DP2)を3%ドープした25nmの膜厚の発光層110を形成し、25nmの膜厚のAlq3(ET3)で電子輸送層112を形成し、1nmの膜厚のLiFで電子注入層114を形成し、100nmの膜厚のAlで陰極116を形成した。
【0068】
作成した有機エレクトロルミネッセンス素子について、電圧及び発光効率及び寿命を評価した。なお、電流密度を10 mA/cmとして評価した。
【表1】
【0069】
表1に示した結果から、本発明の実施例1〜4では、比較例に比して、有機エレクトロルミネッセンス素子の高効率化及び長寿命化することが明らかとなった。実施例2と比較例2とを比較すると、ジベンゾフラニル基の3位の位置に、フェニレン基を介して結合したアミン化合物を正孔輸送層108に用いた実施例2は、2位の位置に結合したアミン化合物を正孔輸送層108に用いた比較例2に比して、長寿命化且つ高効率であり、結合位置による効果が実証された。これは、3位の位置に結合したアミン化合物を正孔輸送層108に用いた実施例2では、発光層110からの電子の流入を阻止したのに対して、2位の位置に結合したアミン化合物を正孔輸送層108に用いた比較例2では、電子のブロック性能が劣り、発光層110から正孔輸送層108に電子が侵入して、再結合確率の低下と正孔輸送層108の劣化を生じたものと推察される。また、実施例2と実施例3とを比較すると、ジベンゾフラニル基を導入することにより、ジベンゾチオフェニル基を導入するよりも長寿命化に有利であることが明らかとなった。また、アミノ基上の置換基Ar1、Ar2において複素環構造を導入した化合物13を正孔輸送層108に使用した場合、実施例4に示したごとく低電圧化、高効率化に効果が認められることが明らかになった。
【0070】
また、Ar1、Ar2がアリール基である場合、Ar1、Ar2が共にビフェニリル基である化合物6を使用した、実施例2が最も長寿命の素子が得られる。Ar1、Ar2がビフェニリル基より分子量の大きい置換基である比較例3〜5の例においては、電圧、発光効率において同等乃至同等以上の結果を与えるが、寿命においては低下が認められる。これは、分子量の増大および、π-π相互作用の増大により昇華性が低下し、製膜温度の上昇により、3−ジベンゾフラニル基部分に分解をきたした不純物が生じて、これが素子の寿命に悪影響を及ぼしたと考えられる。
【符号の説明】
【0071】
100 有機EL素子、102 基板、104 陽極、106 正孔注入層、108 正孔輸送層、110 発光層、112 電子輸送層、114 電子注入層、116 陰極
図1