(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい一実施形態に係る導電性粘着テープについて、適宜図面を参照しつつ説明する。
【0019】
なお、一般的に「導電性粘着テープ」は、「導電性粘着シート」、「導電性粘着フィルム」等と異なった名称で呼ばれることもあるが、本明細書では、表現を「導電性粘着テープ」に統一する。また、導電性粘着テープにおける導電性粘着剤層の表面を、「粘着面」と称する場合がある。
【0020】
本実施形態の導電性粘着テープは、テープの両面が粘着面となっている両面粘着型であってもよいし、テープの片面のみが粘着面となっている片面粘着型であってもよい。
【0021】
両面粘着型の導電性粘着テープとしては、基材を備えていない、いわゆる基材レス導電性両面粘着テープであってもよいし、基材を備えている、いわゆる基材付き導電性両面粘着テープであってもよい。
【0022】
図1〜3に、各種構成の導電性粘着テープの模式図を示す。
図1は、基材レスの両面粘着型導電性粘着テープの例として、導電性粘着剤層2のみからなる導電性粘着テープ1Aを模式的に表したものである。
図2には、前記片面型の基材付導電性粘着テープの一例として、例えば金属箔からなる導電性基材3の一方の面に導電性粘着剤層2が形成された導電性粘着テープ1Bが模式的に表されている。また、
図3には、前記両面型の基材付導電性粘着テープの一例として、例えば金属箔からなる基材3の一方の面に導電性粘着剤層2が、他方の面に他の粘着剤層4が形成された導電性粘着テープ1Cが模式的に表されている。
【0023】
さらに、片面粘着型の導電性粘着テープとしては、
図4に示されるように、例えば金属箔からなる基材3の一方の面に、導電性粘着剤層2が形成され、他方の面に印刷による着色層6を備えた樹脂フィルム5等が積層された導電性粘着テープ1Dが挙げられる。
【0024】
上記導電性粘着テープ1Dのような着色層を備えた導電性粘着テープは、電気・電子機器において、液晶ディスプレイやフレキシブルプリント基板と筐体の接合等に使用されるなど、機能性(光漏れ防止)や意匠性が要求される用途において数多く用いられている。本発明の導電性粘着テープを、ディスプレイの表面又は側面とベゼルとの間に貼付して、表示装置として提供することができる。
【0025】
なお、本実施形態の導電性粘着テープは、導電性基材、導電性粘着剤層以外にも、本発明の目的を損なわない範囲において、他の層(例えば、中間層、下塗り層、上塗り層等)を備えていてもよい。
【0026】
本実施形態に係る導電性粘着テープは、アクリル系粘着剤と、導電性フィラーとを含む導電性粘着剤層(以下、粘着剤層と称する場合がある)を、少なくとも1層有する。
【0027】
〔導電性粘着剤層〕
本実施形態における導電性粘着剤層は、導電性粘着テープの粘着面を提供しつつ、導電性(電気伝導性)を備える層となっている。導電性粘着剤層の粘着面が、導体等の被着体に貼り付けられると、被着体と導電性粘着剤層との間の電気的導通が確保される。
【0028】
本実施形態における導電性粘着剤層は、粘着性能を確保するためのアクリル系粘着剤と、導電性能を発現させるための導電性フィラーとを含む。なお、導電性粘着剤層は、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の成分(樹脂成分や添加剤等)を含んでいてもよい。
【0029】
<アクリル系粘着剤>
上記アクリル系粘着剤は、ポリマーの設計の容易さ、粘着力の調整のし易さ、導電性粒子の分散性の確保等の観点より好ましい。なお、本実施形態における導電性粘着剤層(100重量%)中におけるアクリル系粘着剤の含有率(重量%)(下限値)は、35重量%以上であることが好ましく、より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは45質量%以上である。また、上記アクリル系粘着剤の含有率(重量%)(上限値)は、導電性粘着剤層(100重量%)中、99重量%以下であることが好ましく、より好ましくは98重量%以下、さらに好ましくは95重量%以下である。
【0030】
アクリル系粘着剤中のアクリル系ポリマーの含有量(下限値)は、上記アクリル系粘着剤100重量%中、50重量%以上であることが好ましい。より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは65重量%以上である。また、アクリル系ポリマー含有量(上限値)は、特に限定されないが、アクリル系粘着剤100重量%中、98重量%以下であることが好ましく、より好ましくは95重量%以下、さらに好ましくは90重量%以下である。
【0031】
(アクリル系ポリマー)
上記アクリル系ポリマーとしては、例えば、炭素数が1〜20の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以下、単に(メタ)アクリル酸アルキルエステルと称する)を必須のモノマー成分として含むものが好ましい。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および/又は「メタクリル」(「アクリル」および「メタクリル」のうち、何れか一方又は両方)を表すものとする。
【0032】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等が挙げられる。このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0033】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数が4〜8の(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。例えば、アクリル酸n−ブチルを好ましく用いることができる。
【0034】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量(下限値)は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、50重量%以上であることが好ましく、より好ましくは55重量%以上であり、さらに好ましくは60重量%以上である。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量(上限値)は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、99重量%以下であることが好ましく、より好ましくは98重量%以下であり、さらに好ましくは97重量%以下である。
【0035】
また、上記アクリル系ポリマーは、共重合性モノマー成分として、極性基含有モノマーを含んでいてもよい。極性基含有モノマーは、少なくとも極性基を1種類有すると共に、重合性不飽和結合を含むモノマーからなる。極性基含有モノマー成分が含まれることによって、例えば、各種被着体への粘着性を向上させることができる。
【0036】
極性基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー(無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマーも含む);(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、ビニルアルコール、アリルアルコール等のヒドロキシル基(水酸基)含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド等のアミド基含有モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル等のアミノ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル等のグリシジル基含有モノマー;アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー;N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリンの他、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;ビニルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェート等のリン酸基含有モノマー;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド等のイミド基含有モノマー;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマー等が挙げられる。これらの極性基含有モノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0037】
極性基含有モノマーとしては、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基(水酸基)含有モノマーが好ましく、カルボキシル基含有モノマーがより好ましく、アクリル酸がさらに好ましい。
【0038】
極性基含有モノマーの含有量(下限値)は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、好ましくは0.1重量%以上であり、さらに好ましくは1重量%以上である。また、極性基含有モノマーの含有量(上限値)は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、好ましくは20重量%以下であり、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0039】
アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、極性基含有モノマー以外にも、必要に応じて、多官能性モノマー等のその他の共重合モノマーを、モノマー成分(構成成分)として含んでもよい。多官能性モノマーは、重合性の官能基を2個以上有するモノマーからなるものであり、多官能性モノマー成分が含まれることによって、例えば、導電性粘着剤層の凝集力を高めることができる。
【0040】
多官能性モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等が挙げられる。これらの多官能性モノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0041】
多官能性モノマーの含有量(下限値)は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、好ましくは0.001重量%以上であり、より好ましくは0.01重量%以上である。また、多官能モノマーの含有量(上限値)は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、好ましくは0.5重量%以下であり、より好ましくは0.3重量%以下である。多官能性モノマーの含有量が、このような範囲であると、導電性粘着剤層の凝集力が高くなり過ぎず、粘着力を向上させることができる。
【0042】
多官能モノマー以外のその他の共重合モノマーとしては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4−エトキシブチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル;シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;フェニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン等のオレフィン又はジエン類;ビニルアルキルエーテル等のビニルエーテル類;塩化ビニル等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0043】
(アクリル系ポリマーの重合)
アクリル系ポリマーは、公知もしくは慣用の重合方法を用いて調製することができる。なかでも、アクリル系ポリマーの重合方法としては、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法や、活性エネルギー線照射による重合法(活性エネルギー線重合方法)等が挙げられる。これらの中でも、コストや耐水性等の観点から、溶液重合法、活性エネルギー線重合法が好ましく、溶液重合法が特に好ましい。
【0044】
溶液重合に際しては、一般的な各種溶剤を用いることができる。例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類等の有機溶剤が挙げられる。これらの溶剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0045】
アクリル系ポリマーの重合に際して用いる重合開始剤等は、特に制限されるものではなく、公知もしくは慣用のものの中から適宜選択して使用することができる。重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド(過酸化ベンゾイル)、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン等の過酸化物系重合開始剤等の油溶性重合開始剤が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量としては、特に限定されず、従来、重合開始剤として利用可能な範囲であればよい。
【0046】
上記アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、−70〜−30℃が好ましく、より好ましくは−65〜−35℃である。ガラス転移温度を−70℃以上とすることにより、耐熱性が向上する。一方、ガラス転移温度を−30℃以下とすることにより、圧着時の粘着力が向上する。
【0047】
上記アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、下記式1で表されるガラス転移温度(理論値)である。
【0048】
<式1>
1/Tg = W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn
上記式1中、Tgはアクリル系ポリマーのガラス転移温度(単位:K)、Tgiはモノマーiがホモポリマーを形成した際のガラス転移温度(単位:K)、Wiはモノマーiの全モノマー成分中の重量分率を表す(i=1、2、・・・・n)。なお、上記はアクリル系ポリマーがモノマー1、モノマー2、・・・、モノマーnのn種類のモノマー成分から構成される場合の計算式である。
【0049】
なお、上記アクリル系ポリマーのガラス転移温度は、例えば、アクリル系ポリマーを構成するモノマーの種類や含有量等によって制御することができる。
【0050】
上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは40万以上150万以下(40万〜150万)であり、より好ましくは60万〜90万、さらに好ましくは60万〜80万である。アクリル系ポリマーの重量平均分子量がこのような範囲であると、粘着剤として必要な粘着力、凝集力を発揮し、また粘着剤の粘度上昇による塗工性不良等が抑制される。
【0051】
なお、上記クリル系ポリマーや後述するアクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定できる。より具体的には、GPC測定装置として、商品名「HLC−8120GPC」(東ソー株式会社製)を用いて、ポリスチレン換算値により、次のGPCの測定条件で測定して求めることができる。
GPCの測定条件
・サンプル濃度:0.2重量%(テトラヒドロフラン溶液)
・サンプル注入量:10μl
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・流量(流速):0.6mL/min
・カラム温度(測定温度):40℃
・カラム:商品名「TSKgelSuperHM−H/H4000/H3000/H2000」(東ソー株式会社製)
・検出器:示差屈折計(RI)
【0052】
アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、重合開始剤や連鎖移動剤の種類やその使用量、重合の際の温度や時間の他、モノマー濃度、モノマー滴下速度等により制御できる。
【0053】
(アクリル系オリゴマー)
上記アクリル系粘着剤は、上記アクリル系ポリマーと共に、アクリル系オリゴマーを含有してもよい。アクリル系オリゴマーは、一般的な(メタ)アクリル酸エステルをモノマー主成分として構成される重合体である。前記モノマー主成分として用いられる(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、分子内に環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。アクリル系オリゴマーは、上記モノマー主成分の他に、カルボキシル基含有モノマーを必須の共重合モノマー成分として含む。また、必要に応じてさらに他のモノマー成分が用いられていてもよい。
【0054】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、前述のアクリル系ポリマーのモノマー主成分として例示した、炭素数が1〜20の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを好ましく用いることができる。
【0055】
特に、耐熱性、耐湿性等を得る観点からは、上記のモノマー主成分の中でも、分子内に環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【0056】
上記分子内に環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステルにおける環としては、芳香族性環、非芳香族性環のいずれであってもよいが、非芳香族性環が好適である。なお、前記芳香族性環としては、例えば、芳香族炭化水素環(例えば、ベンゼン環や、ナフタレン等における縮合炭素環等)や、各種芳香族性複素環などが挙げられる。また、前記非芳香族性環としては、非芳香族性脂環式環(シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環等のシクロアルカン環;シクロヘキセン環などのシクロアルケン環など)、非芳香族性橋かけ環(例えば、ピナン、ピネン、ボルナン、ノルボルナン、ノルボルネンなどにおける二環式炭化水素環;アダマンタン等における三環式炭化水素環の他、四環式炭化水素環などの橋かけ式炭化水素環等)等が挙げられる。
【0057】
分子内に環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル等の非芳香族性環含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、具体的には、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)が好ましく例示される。
【0058】
アクリル系オリゴマーにおいて、上記モノマー主成分は、モノマー成分全量に対して、50重量%以上であり、好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。なお、モノマー成分全量に対する割合の上限としては、99重量%以下であり、好ましくは97重量%以下である。なお、上記モノマー主成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0059】
また、アクリル系オリゴマーには、必須の共重合モノマー成分として、カルボキシル基含有モノマーが用いられている。このようなカルボキシル基含有モノマーとしては、前記アクリル系ポリマーのカルボキシル基含有モノマーと同様に、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。また、これらのカルボキシル基含有モノマーの酸無水物(例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー)も、カルボキシル基含有モノマーとして用いることが可能である。
【0060】
上記カルボキシル基含有モノマーの割合としては、アクリル系オリゴマーを構成する全モノマー成分100重量部に対して、1〜10重量部であり、好ましくは3〜8重量部である。カルボキシル基含有モノマーの割合がこのような範囲であると、粘着剤組成物の粘度上昇等が抑制され、また、重合時の温度を制御し易い。
【0061】
なお、アクリル系オリゴマーでは、上記モノマー成分に加え、必要に応じて、他の共重合可能なモノマーが併用されていてもよい。
【0062】
アクリル系オリゴマーは、公知乃至慣用の重合方法により調製することができる。アクリル系オリゴマーの重合方法としては、前記アクリル系ポリマーの重合方法と同様に、例えば、溶液重合方法、乳化重合方法、塊状重合方法や紫外線照射による重合方法などが挙げられ、コストなどの点で、溶液重合方法が好適である。
【0063】
なお、アクリル系オリゴマーの重合に際して用いられる重合開始剤、溶剤などは、上記アクリル系ポリマーに用いられるものと同様のものを用いることが可能である。重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、全モノマー成分100重量部に対して0.1〜15重量部程度の範囲から選択することができる。
【0064】
また、アクリル系オリゴマーにおいては、分子量を制御する目的で、連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、2−メルカプトエタノール、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノール、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。連鎖移動剤の使用量としては、例えば、全モノマー成分100重量部に対して0.01〜15重量部程度が好ましい。
【0065】
アクリル系オリゴマーの重量平均分子量は、3000以上6000未満であり、好ましくは3300〜5500、さらに好ましくは3500〜5000である。重量平均分子量は、重合開始剤や連鎖移動剤の種類やその使用量、重合の際の温度や時間の他、モノマー濃度、モノマー滴下速度等により制御できる。
【0066】
アクリル系オリゴマーをアクリル系粘着剤として用いる場合、アクリル系オリゴマーの含有量(下限値)は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、10重量部以上が好ましく、より好ましくは20重量部以上である。また、アクリル系オリゴマーの含有量(上限値)は、35重量部以下であることが好ましく、より好ましくは30重量部以下である。アクリル系オリゴマーの含有量が上記の範囲であると、導電性粘着剤層の耐熱性、耐湿性等が確保される。
【0067】
(架橋剤)
本実施形態におけるアクリル系粘着剤は、後で詳述するゲル分率を調整するため、架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤を用いることにより、導電性粘着剤層を構成するアクリル系ポリマー等を架橋させ、導電性粘着剤層の凝集力を一層大きくすることができる。
【0068】
上記架橋剤としては、公知もしくは慣用のものの中から適宜選択して使用することができる。具体的には、例えば、多官能性メラミン化合物(メラミン系架橋剤)、多官能性エポキシ化合物(エポキシ系架橋剤)、多官能性イソシアネート化合物(イソシアネート系架橋剤)が好ましく使用される。
【0069】
上記架橋剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができるが、本実施形態においては、架橋反応機構の異なる2種以上の架橋剤を併用することが好ましい。反応機構の異なる2種以上の架橋剤を併用することにより、アクリル系粘着剤のゲル分率を所望の範囲に高い精度で調整することができる。
【0070】
上記架橋剤の中でも、イソシアネート系架橋剤とエポキシ系架橋剤とを併用することが特に好ましい。イソシアネート系架橋剤は単独で架橋することが多いため、単独で使用すると架橋度(ゲル分率)を制御しにくくなることがあるが、エポキシ系架橋剤を併用すれば、架橋剤全体の添加量を抑えることができ、架橋度の制御が容易となる。また、エポキシ系架橋剤は反応性が非常に高く、添加量の調整による架橋度の制御が困難である一方、イソシアネート系架橋剤は比較的反応性の穏やかであり、添加量の調整による架橋度の制御が容易である。よって、エポキシ系架橋剤によってベースとなる架橋反応を確保した上で、イソシアネート系架橋剤の添加量を調整し、所望の架橋度(ゲル分率)となるように制御することができる。
【0071】
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類等が挙げられ、その他、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートL」)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート付加物(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートHL」)等も用いられる。
【0072】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂等が挙げられる。市販品としては、例えば、三菱ガス化学(株)製、商品名「テトラッドC」を用いることができる。
【0073】
イソシアネート系架橋剤の含有量(下限値)は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、例えば、0.08重量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.4重量部以上、さらに好ましくは0.6重量部以上である。また、イソシアネート系架橋剤の含有量(上限値)は、例えば、6重量部以下であることが好ましく、より好ましくは1.2重量部以下、さらに好ましくは1重量部以下である。イソシアネート系架橋剤の含有量が上記の範囲であると、フィラーを添加しても強固な粘着力を維持することができる。さらに基材との投錨性が確保され、被着体への糊残りが低減する。
【0074】
エポキシ系架橋剤の含有量(下限値)は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、例えば、0.001重量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.01重量部以上、さらに好ましくは0.02重量部以上である。また、エポキシ系架橋剤の含有量(上限値)は、1重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.5重量部以下、さらに好ましくは0.8重量部以下である。エポキシ系架橋剤の含有量が上記の範囲であれば、ゲル分率をよりコントロールしやすくなり、フィラーを添加しても曲げに対する反発力が高くなり浮きが生じにくくなる。
【0075】
本実施形態におけるアクリル系粘着剤は、さらに、酸化防止剤(老化防止剤)を含むことが好ましい。酸化防止剤を含むことにより、導電性粘着剤層の熱劣化が抑制されるため、経時劣化による粘着力の低下を抑制できる。
【0076】
酸化防止剤としては公知慣用のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤等のフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤等のアミン系酸化防止剤等が挙げられる。なお、酸化防止剤としては、例えば、商品名「Irganox1010」(チバ・ジャパン(株)製)等の市販品を用いることもできる。
【0077】
アクリル系粘着剤中の酸化防止剤の含有量(下限値)は、特に制限されるものではないが、例えば、アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.5重量部以上とすることが好ましい。また、アクリル系粘着剤中の酸化防止剤の含有量(上限値)は、5重量部以下とすることが好ましく、3重量部以下とすることがより好ましい。含有量を0.5重量部以上とすることにより、導電性粘着剤層の熱劣化が抑制されるため、経時劣化による粘着力の低下を抑制できる。
【0078】
本実施形態におけるアクリル系粘着剤は、さらに、必要に応じて、架橋促進剤、充填剤、着色剤(顔料や染料等)、紫外線吸収剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤、シランカップリング剤等の公知の添加剤や溶剤(前述のアクリル系ポリマーの溶液重合の際に使用可能な溶剤等)を含んでいてもよい。
なお、本実施形態の一例として、アクリル系粘着剤に着色剤を入れて導電性粘着剤層を着色させる構成が挙げられる。これにより、意匠性を高めたり、また、黒色に着色することで遮光性を付与したりすることができる。また、支持基材を備える場合、支持基材と同色に着色することで意匠性や遮光性をより高めたりすることができる。
【0079】
<導電性フィラー>
本実施形態における導電性粘着剤層は、導電性能を発現させるための成分として、導電性フィラーを含む。
【0080】
導電性フィラーとしては、金属粉等の導電性を有する粒子が利用される。導電性フィラーに利用される材質としては、例えば、ニッケル、鉄、クロム、コバルト、アルミニウム、アンチモン、モリブデン、銅、銀、白金、金等の金属、半田、ステンレス等の合金、金属酸化物、カーボンブラック等のカーボン等の導電性材料が挙げられる。導電性フィラーは、前記導電性材料からなる粒子(粉末)であってもよいし、ポリマービーズ、ガラスビーズ等の粒子の表面を、金属被覆した金属被覆粒子(金属コート粒子)であってもよい。また、金属粒子の表面に、他の金属を被覆したものを導電性フィラーとして用いてもよい。
【0081】
導電性フィラーの形状は、球状、フレーク状(薄片状)、スパイク状(毬栗状)、フィラメント状等の様々な形状からなり、公知のものから適宜、選択される。なお、導電性フィラーの形状としては、粘着力の確保や、導電性粘着剤層中における導電性フィラー同士の接触による導電路の形成し易さ等の観点より、球状が好ましい。
【0082】
導電性粘着剤層中の上記導電性フィラーの含有量(上限値)は、導電性粘着剤層の全重量(100重量%)に対し、50重量%以下であることが好ましい。より好ましくは30重量%以下であり、さらに好ましくは15重量%以下である。また、導電性フィラーの含有量(下限値)は、導電性粘着剤層の全重量(100重量%)に対し、1重量%以上であることが好ましく、より好ましくは3重量%以上である。導電性フィラーの含有量が、このような範囲であると、導電性粘着剤層の粘着力を低下させることなく、一般的用途において十分な導電性を確保することができる。
【0083】
導電性フィラーは、導電性粘着剤層中において実質的に均一に分散されることが好ましい。導電性粘着剤層中に実質的に均一に分散されていれば、当該層中に不均質な欠点部分を生じることがないため、応力集中による導電性粘着剤層の亀裂の発生や破損等を回避することができ、導電性を確保しつつ、十分な粘着力を長期間維持する上で好ましい。
【0084】
<粘着付与樹脂>
本実施形態における導電性粘着剤層は、上記アクリル系粘着剤および導電性フィラーに加えて、フェノール性水酸基を有する粘着付与樹脂(粘着付与剤)を含むことが好ましい。フェノール性水酸基を有する粘着付与樹脂を含むことにより、導電性粘着剤層の粘着性能を向上させ、導電性粘着剤層の形態保持性を適度に調整することができる。なお、「フェノール性水酸基」とは、芳香族環を構成する炭素原子に直接結合している水酸基(ヒドロキシル基)をいう。
【0085】
フェノール性水酸基を有する粘着付与樹脂としては、テルペンフェノール系粘着付与樹脂、フェノール変性ロジン系粘着付与樹脂、およびその他のフェノール系粘着付与樹脂等が挙げられる。フェノール性水酸基を有する粘着付与樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて、用いることができる。上記の中でも、テルペンフェノール系粘着付与樹脂、フェノール変性ロジン系粘着付与樹脂、又はその他のフェノール系粘着付与樹脂から選択された少なくとも1種以上の粘着付与樹脂が好ましく、フェノール変性ロジン系粘着付与樹脂が特に好ましい。
【0086】
テルペンフェノール系粘着付与樹脂としては、例えば、各種テルペン系樹脂(α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体等)をフェノール変性した、フェノール変性テルペン系樹脂(テルペンフェノール系樹脂)等が挙げられる。
【0087】
フェノール変性ロジン系粘着付与樹脂としては、例えば、各種ロジン類(未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体等)に、フェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより各種ロジン類をフェノール変性した、フェノール変性ロジン系樹脂(ロジン変性フェノール系樹脂)等が挙げられる。
【0088】
その他のフェノール系粘着付与樹脂としては、各種フェノール類[例えば、フェノール、レゾルシン;クレゾール類(m−クレゾール、p−クレゾール)、キシレノール類(3,5−キシレノール等)、p−イソプロピルフェノール、p−t−ブチルフェノール、p−アミルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−ドデシルフェノール等のアルキルフェノール類(特にp−アルキルフェノール類)等]と、ホルムアルデヒドとの縮合物(例えば、アルキルフェノール系樹脂、フェノールホルムアルデヒド系樹脂、キシレンホルムアルデヒド系樹脂等)の他、前記フェノール類とホルムアルデヒドとをアルカリ触媒で付加反応させたレゾールや、前記フェノール類とホルムアルデヒドとを酸触媒で縮合反応させて得られるノボラック等が挙げられる。なお、アルキルフェノール類におけるアルキル基の炭素数としては、特に限定されないが、例えば、1〜18の範囲から適宜選択することができる。
【0089】
上記フェノール性水酸基を有する粘着付与樹脂のフェノール性水酸基価は、特に限定されないが、例えば、1〜50mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは1〜40mgKOH/g、さらに好ましくは1〜35mgKOH/gである。フェノール性水酸基価を1mgKOH/g以上とすることにより、耐反発性を向上させて適度な形態保持性を持たせることができる。一方、フェノール性水酸基価を50mgKOH/g以下とすることにより、圧着時の初期粘着力が向上する。
【0090】
なお、上記フェノール性水酸基価は、フェノール性水酸基を有する粘着付与樹脂1g中に含まれるフェノール性水酸基の量を、前記フェノール性水酸基をアセチル化させたときにフェノール性水酸基と結合した酢酸を中和するために必要な水酸化カリウムの量(mg)で表したものである。従って、前記フェノール性水酸基価は、フェノール性水酸基を有する粘着付与樹脂中に存在するフェノール性水酸基の量の指標となる。上記フェノール性水酸基価は、JIS K0070に準じて測定することができる。具体的には、例えば、以下の[フェノール性水酸基価の測定方法]により測定することができる。
【0091】
[フェノール性水酸基価の測定方法]
<試薬>
・アセチル化試薬:無水酢酸25gを取り、ピリジンを加えて全量を100mLとし、十分に攪拌したもの。
・滴定試薬:0.5mol/L 水酸化カリウムエタノール溶液
・その他:トルエン、ピリジン、エタノール、蒸留水
<操作>
(1)平底フラスコに試料(フェノール性水酸基を有する粘着付与樹脂)を約2g精秤採取し、アセチル化試薬5mLおよびピリジン10mLを加え、空気冷却管を装着する。
(2)100℃で70分間加熱後、放冷し、空気冷却管の上部から溶剤としてトルエンを35mL加え、攪拌後、蒸留水1mLを加えて攪拌し、無水酢酸を分解する。分解を完全にするため、再度10分間加熱し、放冷する。
(3)エタノールにて空気冷却管を洗い、取り外した後、溶剤としてピリジン50mLを加え攪拌する。
(4)0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液を、ホールピペットを用いて25mL加える。
(5)0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で電位差滴定を行う。フェノール性水酸基価は、下記式2により算出する。
【0092】
<式2>
フェノール性水酸基価(mgKOH/g)={(B−C)×f×28.05}/S +D
なお、上記式2中、Bは空試験に用いた0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)、Cは試料に用いた0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)、fは0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクター、Sは試料の採取量(g)、Dは試料の酸価を表し、28.05は水酸化カリウムの分子量である56.11の半分の量(56.11×1/2)である。
【0093】
導電性粘着剤層中の、上記フェノール性水酸基を有する粘着付与樹脂の含有量(下限値)は、特に限定されないが、例えば、アクリル系ポリマー100重量部に対して、10重量部以上であることが好ましく、より好ましくは13重量部以上、さらに好ましくは15重量部以上である。また、フェノール性水酸基を有する粘着付与樹脂の含有量(上限値)は、50重量部以下であることが好ましく、より好ましくは48重量部以下、さらに好ましくは45重量部以下である。含有量を10重量部以上とすることにより、導電性粘着剤層の耐反発性が向上し適度な形態保持性が得られる。一方、含有量を50重量部以下とすることにより、低温での粘着力が向上する。
【0094】
導電性粘着剤層におけるフェノール性水酸基を有する粘着付与樹脂の、フェノール性水酸基価を上記範囲に制御する方法としては、例えば、フェノール性水酸基価が1〜50mgKOH/gである粘着付与樹脂を用いる方法を挙げることができる。フェノール性水酸基価が1〜50mgKOH/gである粘着付与樹脂としては、例えば、商品名「タマノル803L」(荒川化学工業(株)製、フェノール性水酸基価:1mgKOH/g以上、20mgKOH/g未満)、商品名「タマノル901」(荒川化学工業(株)製、フェノール性水酸基価:1mgKOH/g以上、20mgKOH/g未満)、商品名「スミライトレジンPR−12603」(住友ベークライト(株)製、フェノール性水酸基価:1mgKOH/g以上、20mgKOH/g未満)等の市販品を使用することもできる。
【0095】
なお、導電性粘着剤層がフェノール性水酸基を有する粘着付与樹脂を2種類以上含む場合には、フェノール性水酸基を有する粘着付与樹脂全量(100重量%)に対する、フェノール性水酸基価が1〜50mgKOH/gである粘着付与樹脂の割合(配合割合)は、特に限定されないが、30重量%以上であることが好ましく、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上である。配合割合を30重量%以上とすることにより、導電性粘着剤層中のフェノール性水酸基を有する粘着付与樹脂のフェノール性水酸基価を上述の特定範囲に制御することが容易となる。
【0096】
<その他の成分>
本実施形態における導電性粘着剤層は、本願発明の目的を達成できる範囲において、例えば、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤等の粘着剤を含んでもよい。これらは、単独で、又は2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0097】
<導電性粘着剤層の形成>
本実施形態における導電性粘着剤層の形成方法は、特に制限されず、公知もしくは慣用の粘着剤層の形成方法の中から適宜選択して用いることができる。例えば、所定量の上記アクリル系ポリマーや、架橋剤、粘着付与樹脂、酸化防止剤等のアクリル系粘着剤を構成する成分と、導電性フィラーとを混合して、導電性粘着剤組成物を調製してもよい。この導電性粘着剤組成物を、所定の面上(例えば、支持基材の面上)に、乾燥後の厚さが所望の厚さとなるように塗布し、必要に応じて硬化又は乾燥させて導電性粘着剤層を形成することができる。さらに、必要に応じて、導電性粘着剤層を所定の面上(例えば、支持基材の面上)に転写・移植する方法(転写法)等が考えられる。
【0098】
なお、上記において導電性粘着剤組成物を所定の面上(支持基材の面上)に塗布するにあたっては、慣用の塗工機(例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等)を用いることができる。
【0099】
<導電性粘着剤層の厚み>
本実施形態における導電性粘着剤層の1層あたりの厚み(μm)(下限値)は、特に制限されないが、4μm以上であることが好ましく、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上である。また、導電性粘着剤層の厚み(μm)の上限値は、50μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以下である。上記の範囲であれば、良好な粘着性を得つつ、製品の小型化による要請(導電性テープの薄膜化)にも対応することができる。また、導電性粘着テープが2つの導電性粘着剤層を備える場合、それの厚みらは互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0100】
なお、粘着剤層の厚みは、後述のように、JIS B 7503に規定されたダイヤルゲージを用いて測定される。
【0101】
〔支持基材〕
本実施形態に係る導電性粘着テープは、支持基材を備えていてもよい。すなわち、本実施形態に係る導電性粘着テープは、
図2〜4に示したように基材付きのものであってもよい。また、支持基材は、用途や機能に応じて、単層であっても、2つ以上の層が積層された積層基材であってもよい。
【0102】
支持基材の厚み(下限値)は、特に制限されないが、1μm以上であることが好ましく、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。また、前記支持基材の厚み(上限値)は、200μm以下であることが好ましく、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。支持基材の厚みが、このような範囲であると、導電性粘着テープの強度が十分確保され、加工や貼付等の作業性が向上する一方、支持基材に基づく反発力を抑制することができる。
【0103】
支持基材は、特に限定されるものではないが、電磁波吸収性や面方向の導通信頼性を得るために、導電性基材を用いてもよい。導電性基材は、自己支持性を有し、かつ導電性を有するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜、選択することができる。導電性基材としては、金属箔が好ましい。導電性基材に利用される金属箔の材質としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、鉄、鉛やこれらの合金等が挙げられる。中でも、導電性、コスト、加工性の点から、アルミニウム箔、銅箔が好ましい。金属箔は、各種表面処理が施されていてもよい。例えば、錫メッキ、銀メッキ、金メッキ等の金属による表面メッキ処理が施されていてもよい。特に、腐食による抵抗値上昇を抑制する点で、錫メッキが施されていることが好ましい。
【0104】
導電性粘着テープが導電性基材を備えている場合は、金属箔と導電性粘着剤層の被着体との貼着面との間に厚み方向の電気的導通性が付与されるため、導電性粘着テープ本体は、面方向並びに厚み方向の両方向に導電性を発揮する。
【0105】
また、支持基材としては、意匠性(たとえば周辺部材の色と同化させて目立たなくする)等の観点から、着色基材を用いてもよい。着色基材は、樹脂フィルムや金属フィルム(金属箔を含む)等の基材に着色層が積層されたものであってもよいし、樹脂等の基材材料に顔料や染料が添加されて着色されてもよい。
【0106】
着色層は、例えば、黒色インク等の各種インクを樹脂フィルムに印刷することで形成される着色印刷層であってもよい。その他、着色層は、グラビア印刷、スクリーン印刷等の方法で形成することができる。着色層の色は、黒色以外に、白色、黄色、青色、赤色、緑色等、使用目的に応じて適宜変更し得る。
【0107】
着色層の厚さは、例えば、0μm超5μm以下が好ましく、より好ましくは0.3μm〜5μm、さらに好ましくは0.5μm〜5μmである。さらに、0.6μm〜3μmであることが一層好ましく、0.8μm〜2μmであることが特に好ましい。
【0108】
着色層には、種々の表面処理が施されていてもよい。例えば、特開平10−306237号公報に記載されている塗料を塗工することによって耐指紋処理層が形成されていてもよい。このような塗料の中でも、アジピン酸エチル等のアジピン酸エステルとイソホロンジイソシアネート等の窒素含有成分とを含むものがより好ましい。
【0109】
上記耐指紋処理層は透明であることが好ましい。具体的には、透過率が70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。耐指紋処理が施された耐指紋処理層の外表面は、Waが150Å以上であることが好ましく、より好ましくは250Å以上、さらに好ましくは350Å以上である。上限については、特には限定されないが、1000Å以下とすることが好ましく、より好ましくは900Å以下、さらに好ましくは800Å以下である。同時に、耐指紋処理が施された耐指紋処理層の外表面は、Raが2000Å以上であることが好ましく、より好ましくは2100Å以上である。上限については、特には限定されないが、5000Å以下とすることが好ましく、より好ましくは4000Å以下、さらに好ましくは3000Å以下である。
【0110】
なお、上記において、Waは算術平均うねりを意味し、基準長さ(表面粗さやうねり成分を算出するために抜き取る輪郭曲線)における輪郭曲線の絶対値の平均を示す値である。耐指紋処理層外表面のWa、Raは、それぞれ、表面形状測定装置(名称;P−11(Tencor製)を用いて評価することができる。
なお、耐指紋処理層外表面のWaやRaは、耐指紋処理層の塗布速度、塗布回数、乾燥条件等を適宜調整することにより前記範囲に調整することができる。
【0111】
上記耐指紋処理層の厚さは、特には限定されないが、例えば、0μm超2μm以下が好ましく、より好ましくは0.4μm〜2μm、さらに好ましくは0.6μm〜1.4μm、特に好ましくは0.8μm〜1.2μmである。
【0112】
上記のような耐指紋処理層を外表面に備えた支持基材では、着色層が表面に露出しておらず保護されている。また、支持基材側の外表面に指が触れた場合でも、耐指紋処理層によって指紋を目立ち難くすることができる。さらには、着色層と耐指紋処理層とを別々に設けることにより、着色基材において発色性と耐指紋性とを両立できる。
【0113】
特に、着色層が黒色である場合には、着色層による遮光効果により、被着体を視認しづらくさせつつ、支持基材側外表面に指が触れた場合に、耐指紋処理層によって指紋を目立ち難くすることができる。この結果、このような支持基材を備えた導電性粘着テープを貼付することで、これを含む製品の意匠性を向上させることができる。
【0114】
また、支持基材として、金属からなる導電層と着色層との積層基材を用いることもできる。積層基材としては、プラスチック層/金属層の層構成、金属層/プラスチック層/金属層の層構成、プラスチック層/金属層/プラスチック層の層構成、金属層/プラスチック層/金属層/プラスチック層の層構成とすることができる。面方向への導電性を付与するためには、金属層と導電性粘着剤層とが接するような構成とすることが好ましい。
【0115】
着色層と金属箔との積層基材を用いる場合、着色層の色を被着体と同じとすれば、製品の外観を損なうことなく導通信頼性や電磁波吸収性を確保できる。具体的には、導電性粘着テープが、各種部材を接合するにあたり、プリント基板と筐体とを導電性粘着テープで接合させつつアース取りする場合、液晶ディスプレイやタッチパネル等のディスプレイ装置における表示部材表面とリアケースやベゼル等の金属部材とを導電性粘着テープで接合させつつ、電気的に接続して表示部材表面の電荷を除去する場合(特にモバイル用途等のベゼル幅が狭い場合)等において、着色基材との積層基材を特に好適に用いることができる。
【0116】
〔剥離ライナー〕
本実施形態に係る導電性粘着テープは、使用時までは、各粘着剤層の粘着面を保護するための剥離ライナーを備えていてもよい。このような剥離ライナーとしては、特に限定されるものではなく、公知の剥離ライナーから適宜選択して用いることができる。
【0117】
剥離ライナーとしては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離剤により表面処理されたプラスチックフィルム、紙等の剥離層を有する基材;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等のフッ素系ポリマーからなる低接着性基材;オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)等の無極性ポリマーからなる低接着性基材等が挙げられる。
【0118】
〔特性〕
<アクリル系粘着剤のゲル分率>
本実施形態の導電性粘着テープに含まれる上記アクリル系粘着剤は、凝集力向上のために三次元架橋構造を形成するのが好ましい。架橋構造形成の指標として、導電性粘着剤層をアクリル系粘着剤の良溶媒であるトルエンに24時間浸漬した後、不溶分を測定して算出するゲル分率(重量%)を用いる。ゲル分率(重量%)の詳しい算出方法については、後出の〔評価〕(アクリル系粘着剤のゲル分率)に記載する。上記アクリル系粘着剤のゲル分率(重量%)(下限値)は、15重量%以上であり、好ましくは17重量%以上、さらに好ましくは20重量以上である。また、上記アクリル系粘着剤のゲル分率(上限値)は、75重量%以下であり、好ましくは55重量%以下、さらに好ましくは53重量%以下である。ゲル分率が上記範囲であれば、導電性粘着剤層の剪断方向の凝集力が良好となり、かつ、導電性粘着剤層自体の反発力が適度に調整される結果、耐剥がれ性が向上する。
【0119】
<導電性能>
(抵抗値)
本実施形態に係る導電性粘着テープは、後出の〔評価〕(抵抗値)に記載する方法に従って測定した抵抗値が、1Ω未満であることが好ましく、より好ましくは0.10Ω未満であり、さらに好ましくは0.07Ω未満であり、またさらに好ましくは0.05Ω未満である。導電性粘着テープ(導電性粘着剤層)の抵抗値をこのような範囲とすることで、一般的な導電用途において十分な導電性能を発揮させることができる。
【0120】
<粘着性能>
(定荷重剥離試験)
本実施形態に係る導電性粘着テープは、後出の〔評価〕(定荷重剥離試験)に記載する方法に従って測定した24時間後の剥がれ距離が3.5mm以下であることが好ましい。より好ましくは3.3mm以下(例えば3.0mm以下)、さらに好ましくは2.7mm以下である。粘着性能をこのような範囲に調整することで、一定の荷重や反発力がかかるような態様で導電性粘着テープが貼付された場合にも、耐剥がれ性に優れたものとすることができる。
【0121】
(保持力)
本実施形態に係る導電性粘着テープは、後出の〔評価〕(保持力)に記載する方法に従って80℃1000g荷重下で測定した1時間後の剥がれ距離が、12mm以下であることが好ましい。より好ましくは5mm以下であり、さらに好ましくは1mm以下である。粘着性能をこのような範囲に調整することで、一定の荷重や反発力がかかるような態様で導電性粘着テープが貼付された場合にも、長期間にわたって十分な粘着力を保持できるものとすることができる。
【0122】
〔用途〕
本実施形態の導電性粘着テープは、例えば、電源装置や電子機器等(例えば、携帯型情報端末、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパー等の表示装置、太陽電池等)の部材の接合に用いることができる。また、離隔した2か所間を電気的に導通させる用途、電気・電子機器やケーブルの電磁波シールド用途等にも用いることができる。
【0123】
特に、着色層と導電層と含む積層基材を備えた構成の導電性粘着テープは、製品の外観を損なうことなく、導通信頼性や電磁波シールド性が確保される接合を実現しうるため、表示装置において、ディスプレイの表面又は側面とベゼルとの間に貼付するような用途に好適に用いることができる。
【0124】
本実施形態の導電性粘着テープは、十分な導電性能を備えたものでありながら一定荷重下でも十分な粘着力を保持できるため、一定の荷重や反発力がかかるような態様で貼付されるような用途、例えば、部材の角部や曲面部、段差部における接合等に好適に使用できる。特に、着色層と導電層と含む積層基材を備えた構成の導電性粘着テープは、小型の電子・電気機器(例えば、携帯型情報端末、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話、カーナビゲーションシステム等)に好適に用いることができる。
【0125】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0126】
〔実施例1〕
(導電性粘着剤組成物の調製)
モノマー成分として、アクリル酸n−ブチル(BA)100重量部、アクリル酸(AA)5.0重量部、重合開始剤として過酸化ベンゾイル0.2重量部、および重合溶媒としてトルエン240重量部を、セパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら2時間攪拌した。このようにして、重合系内の酸素を除去した後、62℃に昇温し、7時間反応させて固形分濃度30重量%のアクリル系ポリマー溶液(該アクリル系ポリマー溶液中のアクリル系ポリマーのTg:−49℃)を得た。
【0127】
表1に示すように、上記アクリル系ポリマー溶液中のアクリル系ポリマー100重量部に対して、架橋剤としてエポキシ系架橋剤(三菱ガス化学(株)製、商品名「テトラッドC」)0.03重量部、およびイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートL」)1重量部、粘着付与樹脂としてフェノール変性ロジン系樹脂(荒川化学工業(株)製、商品名「タマノル803L」、フェノール性水酸基価:1mgKOH/g以上、20mgKOH/g未満)30重量部およびテルペンフェノール系樹脂(ヤスハラケミカル(株)製、商品名「YSポリスターS145」、フェノール性水酸基価:77mgKOH/g)10重量部、導電性フィラー(福田金属箔粉工業社製、商品名「Ni123」、ニッケルフィラー、平均粒径11μm)7重量部を配合して、導電性粘着剤組成物(アクリル系粘着剤組成物)を得た。
【0128】
(導電性粘着剤層の形成)
片面がシリコーン系剥離剤により剥離処理されたシート状のPET製剥離ライナー(三菱ポリエステルフィルム社製、商品名「MRF♯38」、厚さ38μm)を用意した。この剥離ライナーの剥離処理面に上記で得た導電性粘着剤組成物を塗付し、100℃で3分間の乾燥処理を行い、導電性粘着剤層を形成した。
【0129】
(導電性粘着テープの作製)
導電性基材として電解銅箔(福田金属箔粉工業社製、商品名「CF-T8G-UN-35」、厚さ35μm)を用意し、この導電性基材の片面に上記で得た導電性粘着剤層を転写した。このようにして、厚さ20μmの導電性粘着剤層が銅箔基材の片面に設けられた片面粘着型の導電性粘着テープを作製した。
【0130】
なお、導電性粘着剤層の厚みは、JIS B 7503に規定されたダイヤルゲージを用いて測定した。ダイヤルゲージの接触面は平面とし、径は5mmとした。幅150mmの試験片を用いて、1/1000mm目盛りのダイヤルゲージで幅方向に等間隔で5点の厚みを測定し、その測定結果の平均値を導電性粘着剤層の厚みとした。以降の実施例、比較例についても同様にして、導電性粘着剤層の厚みを求めた。
【0131】
〔実施例2〕
表1に示すように、導電性粘着剤組成物の調製において、イソシアネート系架橋剤(コロネートL)を1.0重量部ではなく0.1重量部配合した以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmの導電性粘着剤層が銅箔基材の片面に設けられた片面粘着型の導電性粘着テープを作製した。
【0132】
〔実施例3〕
表1に示すように、導電性粘着剤組成物の調製において、イソシアネート系架橋剤(コロネートL)を1.0重量部ではなく5.0重量部配合した以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmの導電性粘着剤層が銅箔基材の片面に設けられた片面粘着型の導電性粘着テープを作製した。
【0133】
〔実施例4〕
表1に示すように、導電性粘着剤組成物の調製において、エポキシ系架橋剤(テトラッドC)を0.03重量部ではなく0.01重量部配合した以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmの導電性粘着剤層が銅箔基材の片面に設けられた片面粘着型の導電性粘着テープを作製した。
【0134】
〔実施例5〕
表1に示すように、導電性粘着剤組成物の調製において、エポキシ系架橋剤(テトラッドC)を0.03重量部ではなく0.10重量部配合した以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmの導電性粘着剤層が銅箔基材の片面に設けられた片面粘着型の導電性粘着テープを作製した。
【0135】
〔実施例6〕
(アクリル系ポリマーの調製)
モノマー成分として、アクリル酸n−ブチル(BA):95重量部、アクリル酸(AA):5重量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル:0.2重量部、および重合溶媒として酢酸エチル:233.3重量部を、セパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら、1時間攪拌した。このようにして、重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し、10時間反応させて、トルエンを加え、固形分濃度25重量%のアクリル系ポリマー溶液Aを得た。該アクリル系ポリマー溶液Aにおけるアクリル系ポリマーの重量平均分子量は80万であった。
【0136】
(アクリル系オリゴマーの調整)
モノマー成分として、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA):95重量部、アクリル酸(AA):5重量部、連鎖移動剤としてα−メチルスチレンダイマー:10重量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル:10重量部、および重合溶媒としてトルエン:120重量部を、セパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら、1時間攪拌した。このようにして、重合系内の酸素を除去した後、85℃に昇温し、5時間反応させて、固形分濃度50重量%のアクリル系オリゴマー溶液Bを得た。該アクリル系オリゴマー溶液Bにおけるアクリル系オリゴマーの重量平均分子量は4000であった。
【0137】
前記アクリル系ポリマー溶液A中のアクリル系ポリマー:100重量部(固形分換算)に対して、前記アクリル系オリゴマー溶液B中のアクリル系オリゴマー:25重量部(固形分換算)、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学(株)製、商品名「テトラッドC」):0.01重量部、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートL」):1.0重量部、黒色顔料(大日精化工業株式会社製、商品名「AT−DN101ブラック」):12重量部、導電性フィラー(福田金属箔粉工業社製、商品名「Ni123」、ニッケルフィラー、平均粒径11μm):18重量部を配合して、導電性粘着剤組成物(アクリル系粘着剤組成物)を得た。
【0138】
実施例6の導電性粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ20μmの導電性粘着剤層が銅箔基材の片面に設けられた片面粘着型の導電性粘着テープを作製した。
【0139】
〔実施例7〕
エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学(株)製、商品名「テトラッドC」)の配合量を0.05重量部に代えたこと以外は、実施例6と同様にして、導電性粘着剤組成物(アクリル系粘着剤組成物)した。そして、その導電性粘着剤組成物(アクリル系粘着剤組成物)を用いて、実施例1と同様にして、厚さ20μmの導電性粘着剤層が銅箔基材の片面に設けられた片面粘着型の導電性粘着テープを作製した。
【0140】
〔実施例8〕
エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学(株)製、商品名「テトラッドC」)の配合量を0.05重量部に代え、更に、シランカップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学株式会社製、「KBM−403」):0.05重量部を追加したこと以外は、実施例6と同様にして、導電性粘着剤組成物(アクリル系粘着剤組成物)した。そして、その導電性粘着剤組成物(アクリル系粘着剤組成物)を用いて、実施例1と同様にして、厚さ20μmの導電性粘着剤層が銅箔基材の片面に設けられた片面粘着型の導電性粘着テープを作製した。
【0141】
〔実施例9〕
実施例1と同様にして、2つの導電性粘着剤層を形成した。実施例1と同様にして、厚さ20μmの導電性粘着剤層が銅箔基材(CF-T8G-UN-35)の片面に設けられた導電性片面粘着シートを作製した。さらに、この導電性片面粘着シートの銅箔基材側の面に、もう1つの導電性粘着剤層を転写し、導電性粘着剤層/銅箔/導電性粘着剤層からなる層構成の両面粘着型の導電性粘着テープを作製した。この導電性粘着テープの総厚みは75μmであった。
【0142】
〔実施例10〕
実施例1と同様にして、導電性粘着剤層を形成した。一方、厚さ12μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(透明)の一方に面全体に黒色インクを用いて印刷を行(印刷回数1回)って厚さ1μmの着色層を形成し、さらに着色層側にグラビア印刷を用いて耐指紋処理層を積層した。この印刷PETフィルムの非印刷面に、ドライラミネート接着によりアルミニウム箔(9μm)を積層し、複合基材(約26μm)を作製した。この導電性複合基材のアルミニウム箔の面全体に、上記の導電性粘着剤層を転写し、耐指紋処理層/着色層/PETフィルム/アルミニウム箔/導電性粘着剤層からなる層構成の片面粘着型導電性粘着テープを作製した(表2)。この導電性粘着テープの総厚みは46μmであった。
【0143】
〔比較例1〕
表1に示すように、導電性粘着剤組成物の調製において、イソシアネート系架橋剤(コロネートL)を配合しなかった以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmの導電性粘着剤層が銅箔基材の片面に設けられた片面粘着型の導電性粘着テープを作製した。
【0144】
〔比較例2〕
表1に示すように、導電性粘着剤組成物の調製において、エポキシ系架橋剤(テトラッドC)を配合しなかった以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmの導電性粘着剤層が銅箔基材の片面に設けられた片面粘着型の導電性粘着テープを作製した。
【0145】
〔評価〕
(アクリル系粘着剤のゲル分率)
実施例1〜8、ならびに比較例1および2で得られた片面粘着型の導電性粘着テープから5cm×5cmの測定サンプルを切り出す一方、試験に使用する、平均孔径0.2μmの孔を有する多孔質ポリテトラフルオロエチレンシート(以下、「PTFE膜」と称することがある)(商品名「NTF1122」日東電工株式会社製)、タコ糸、およびアルミシャーレの重量を測定した(重量A=アルミシャーレ+PTFE膜+タコ糸)。測定サンプルの導電性粘着剤層から剥離ライナーを剥がしてPTFE膜で包み、タコ糸で結束した後、これをアルミシャーレに乗せて、重量を測定した(重量B=アルミシャーレ+PTFE膜+タコ糸+導電性粘着テープ)。測定サンプルを包んだPTFE膜を50mlのスクリュー管に入れてトルエンを満たし、23℃にて7日間常温で放置した。7日間経過後、測定サンプルを包んだPTFE膜をスクリュー管より取り出し、スクリュー管ごとアルミシャーレに乗せ、130℃で2時間乾燥させ取り出し、約20分冷却した後に乾燥重量(重量C)を測定した。ゲル分率を、以下の式3に従って算出した。
【0146】
<式3>
ゲル分率(%)={(C−A)/((B−A)/(100−w)/100))}×100
なお、式3中、wは導電性粘着剤層中におけるフィラーの配合比(重量%)を表す。
【0147】
(抵抗値)
各実施例および比較例に係る導電性粘着テープから、幅25mm×長さ50mmの測定サンプル1を切り出した。一方、ガラス板7(ソーダライムガラス)の上に、幅5mmの長尺状銅箔8(圧延銅箔、厚さ35μm)を25mmの間隔を空けて配置し、測定サンプル1の導電性粘着剤層の粘着面が、隣り合う2本の長尺状銅箔8Aおよび8Bの表面と接するように貼り合わせた。この状態で、測定サンプル1と2本の長尺状銅箔8Aおよび8Bとは、貼り合わせ部分(
図5において網掛けが施された領域)にて接触している(片側の接触領域の面積:1.25cm
2)。圧着は、常温環境下にて、ハンドローラー(幅30mm)を用いて圧力5.0N/cmの条件で行った。なお、両面粘着型の導電性粘着テープに係る測定サンプルでは、他方の粘着剤層の粘着面から剥離ライナーを剥離し、厚さ23μmのPETフィルムを貼り付けて裏打ちした。そして、常温環境下で15分放置した後、
図5に示したように、上記接触部分の片側(
図5の上方側)において、圧延状銅箔8Aおよび8Bの端部に電流計A(KIKUSUI社製、直流安定化電源「PMC18−S」)の端子を接続した。また、同じく
図5に示したように、上記接触部分のもう一方の側(
図5の下方側)において、圧延状銅箔8Aおよび8Bの端部にデジタルマルチメーターB(IWATSU社製、商品名「VOAC7521A」)の端子を接続した。そして、電流計にて0.1Aの電流を流した際の電位差をデジタルマルチメーターにて測定した。得られた電位差から、オームの法則により抵抗値を求めた。
【0148】
(プローブタック:100gf/1sec)
各実施例および比較例で得られた導電性粘着テープを測定サンプルとし、ASTM D2979に準じた倒立プローブタックテスターを用いて23℃で測定を行った。測定用サンプルの導電性粘着剤層表面に、直径5mmのステンレス製プローブを、接触荷重100gf、接触時間1秒で接触させて、引き離し速さ:60mm/分で引き離す際に生じる剥離力を測定し、100gf/1secプローブタックの値とした。
【0149】
(プローブタック:500gf/3sec)
各実施例および比較例で得られた導電性粘着テープを測定サンプルとし、ASTM D2979に準じた倒立プローブタックテスターを用いて23℃で測定を行った。測定用サンプルの導電性粘着剤層表面に、直径5mmのステンレス製プローブを、接触荷重500gf、接触時間3秒で接触させて、引き離し速さ:60mm/分で引き離す際に生じる剥離力を測定し、500gf/3secプローブタックの値とした。
【0150】
(180°引き剥がし粘着力)
実施例、比較例で得られた導電性粘着テープから、幅25mm×長さ100mmの測定サンプルを切り出した。この測定サンプルを、ステンレス板(SUS304BA)に、2kgのローラーを1往復させる方法で圧着して貼付し、温度23℃の雰囲気下で20分間放置した。なお、両面粘着型の導電性粘着テープに係る測定サンプルでは、他方の粘着剤層の粘着面から剥離ライナーを剥離し、厚さ23μmのPETフィルムを貼り付けて裏打ちした。20分後、JIS Z 0237法に準じ、引張試験機を使用して、引張り速度:300mm/分、剥離角度:180°で(測定環境:23℃、50%RH)引き剥がして、その剥離に要する力(180°剥離力)(N/20mm)を測定し、粘着力を評価した。
【0151】
(定荷重剥離)
実施例、比較例で得られた導電性粘着テープから、幅20mm×長さ150mmの測定サンプル1を切り出した。この測定サンプル1の粘着面(導電性粘着剤層2)を、温度23℃の雰囲気下で、ステンレス板9(ステンレス304BA板)に、2kgのローラーを1往復させる方法で圧着して貼付し、温度25℃の雰囲気下で30分間放置した。なお、両面粘着型の導電性粘着テープに係る測定サンプルでは、他方の粘着剤層の粘着面から剥離ライナーを剥離し、厚さ23μmのPETフィルムを貼り付けて裏打ちした。30分後、測定サンプル1が貼付されたステンレス板9を、測定サンプル1が貼付されている面が下側となるようにクランプを用いて水平に設置した。次いで、ステンレス板9から、測定サンプル1を、長さ方向の一方の末端から長さ方向に5mm剥離させた。測定サンプル1における剥離させた部分側の一方の端部から、100gの錘10をヒモで吊し、ステンレス板表面に対して垂直方向(90°剥離方向)に、100g重の荷重をかけ、試験を開始した。試験は、温度23℃の雰囲気下で行った。なお、錘10は、測定サンプル1の幅方向の中央、長さ方向の末端から5mmの部分に穴をあけて通したヒモの先に取り付けた。
図6は、定荷重剥離試験開始時の、ステンレス板9、測定サンプル1、錘10の位置関係を示す。
試験開始から24時間後、試験を終了し、24時間の間に測定サンプル1がステンレス板9から剥離した距離を測定し、定荷重剥離(24hrs剥がれ距離)(mm)とした。
【0152】
(保持力)
実施例、比較例で得られた導電性粘着テープから、幅10mm×長さ100mmの測定サンプル1を切り出した。上記測定サンプル1の粘着面(導電性粘着剤層2)を、ベークライト板11に、幅10mm、長さ20mmの接着面積にて、2kgのローラーを1往復させる方法で圧着して貼付し、80℃の環境下に垂下して30分間放置した。なお、両面粘着型の導電性粘着テープに係る測定サンプルでは、他方の粘着剤層の粘着面から剥離ライナーを剥離し、厚さ23μmのPETフィルムを貼り付けて裏打ちした。30分後、測定サンプル1の自由端に1kgの錘10を付加して試験を開始した。
図7は、保持力測定試験開始時の、ベークライト板11、測定サンプル1、錘10の位置関係を示す。JIS Z0237に準じて、該荷重が付与された状態で80℃環境下に1時間放置し、1時間の間に測定サンプル1がずれた距離(mm)を測定し、保持力(80℃×1000g・1hr)とした。
【0153】
表1に、実施例1〜8、ならびに比較例1および2に係る片面粘着型の導電性粘着テープについての評価結果を示す。また、表2に、実施例1、9および10に係る導電性粘着テープについての評価結果を示す。なお、表おいて使用した略語は、以下のものを表している。
【0154】
TC:三菱ガス化学(株)製、商品名「テトラッドC」
CL:日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートL」
Cu箔:福田金属箔粉工業社製、商品名「CF-T8G-UN-35」
着色層:黒色インク印刷層
PET:ポチエチレンテレフタレートフィルム(12μm厚)
Al箔:アルミニウム箔(9μm厚)
【0157】
表に示されるように、実施例1〜10、ならびに比較例1および2に係る導電性粘着テープは、どれも上記の方法に従って測定した抵抗値が0.10Ω以下であり、十分な導電性能を有していた。
【0158】
一方、粘着性能について、実施例1〜10の導電性粘着テープは、特に定荷重剥離および保持力において優れていることが確かめられた。定荷重剥離試験では、イソシアネート系架橋剤の添加量が増えるにつれて性能が向上している様子が認められるが、エポキシ系架橋剤を併用することで、イソシアネート系架橋剤を単独で使用したものよりも格段に粘着力が維持されることが知られた。また、保持力については、比較例1および2に係る導電性粘着テープが、1000gの荷重に抗する粘着力を1時間維持しきれずに落下したのに対し、実施例1〜10に係るものは全て1時間以上粘着力を維持していた。1時間の間にずれた距離は何れも1mm以下であり、非常に良好な粘着力を維持していることが確かめられた。
【0159】
また、表2より、エポキシ系架橋剤とイソシアネート系架橋剤とを併用した導電性粘着剤層を有する両面型の導電性粘着テープ(実施例9)、片面型の着色導電性粘着テープ(実施例10)も、0.050Ω以下の十分な導電性能を有していた。
【0160】
実施例9および10に係る導電性粘着テープは、定荷重剥離試験および保持力においても良好な結果を示し、優れた粘着性能を維持できることが確かめられた。産業用途においては、機能性や意匠性といった観点から着色層等を含む複合基材を備えた導電性粘着テープに対するニーズが高く、このような材料についても良好な結果が得られたことは、非常に有用な知見といえる。
【0161】
以上より、エポキシ系架橋剤とイソシアネート系架橋剤とを併用した系において、十分な導電性能を発現しながら、長期間にわたって粘着力を維持できる導電性粘着剤層が得られることが確かめられた。導電性フィラーを含む導電性粘着剤層では、要求特性を実現できるゲル分率の範囲が一般的な粘着剤層よりも狭く、最適範囲に調整することが困難であるが、反応機構の異なる2種類の架橋剤を併用したことにより、導電性粘着剤層中のゲル分率を最適範囲(15〜75重量%)に調整できたと推察できる。