特許第6516474号(P6516474)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カヤバ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6516474-電子機器及びその製造方法 図000002
  • 特許6516474-電子機器及びその製造方法 図000003
  • 特許6516474-電子機器及びその製造方法 図000004
  • 特許6516474-電子機器及びその製造方法 図000005
  • 特許6516474-電子機器及びその製造方法 図000006
  • 特許6516474-電子機器及びその製造方法 図000007
  • 特許6516474-電子機器及びその製造方法 図000008
  • 特許6516474-電子機器及びその製造方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6516474
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】電子機器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20190513BHJP
   H01L 23/40 20060101ALI20190513BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20190513BHJP
【FI】
   H05K7/20 E
   H01L23/40 E
   B62D5/04
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-3659(P2015-3659)
(22)【出願日】2015年1月9日
(65)【公開番号】特開2016-129213(P2016-129213A)
(43)【公開日】2016年7月14日
【審査請求日】2017年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100170346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 望
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】松田 瞬
【審査官】 征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−183644(JP,A)
【文献】 特開2003−309384(JP,A)
【文献】 特開2002−124791(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02458632(EP,A1)
【文献】 米国特許第05396404(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K7/20
H01L23/34−23/473
B62D5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部品と、
前記発熱部品を支持する支持面を有する放熱部材と、
前記発熱部品を前記支持面上の所定位置に位置決めする位置決め部と、前記所定位置に位置決めされた前記発熱部品を前記支持面に押圧して固定する固定部とを有する合成樹脂材料の一体成形品で構成され、前記放熱部材に取り付けられる保持部材と
を具備し、
前記放熱部材は、板状の台座部と、前記台座部に対向する頂部と前記台座部に対し傾斜して形成され前記支持面を構成する斜面部とを含む構造部とをさらに有し、
前記位置決め部は、前記発熱部品を収容し前記斜面部に位置決めする収容部を有し、
前記収容部は、前記頂部側に開口する開口部で構成される
電子機器。
【請求項2】
請求項に記載の電子機器であって、
前記保持部材は、前記固定部によって押圧された前記発熱部品の前記支持面からの浮き上がりを規制する規制部をさらに有する
電子機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子機器であって、
前記保持部材は、前記位置決め部と前記固定部とを支持し前記放熱部材に取り付けられる本体部をさらに有し、
前記固定部は、前記本体部に対して弾性変形可能に構成された少なくとも1つのアーム部を含む
電子機器。
【請求項4】
放熱部材の支持面に、位置決め部と固定部とを有する合成樹脂材料の一体成形品で構成された保持部材を設置し、
前記固定部を弾性変形させながら発熱部品を前記位置決め部によって区画された収容部に挿入することで、前記位置決め部によって前記発熱部品を前記支持面上の所定位置に位置決めし、前記固定部によって前記発熱部品を前記支持面に押圧して固定する
電子機器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱部品を備えた電子機器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動式パワーステアリング用の制御ユニットとして、電源回路を搭載した電源系基板や制御信号を生成する制御系基板などを含む電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)が用いられている。当該ECUは、例えば、ハンドルの操舵トルクセンサや車速センサ等からの出力に基づいて、運転者の操舵力を補助するためのモータを駆動する。モータを駆動する回路を構成する部品としては、例えば、パワーMOSFET等の発熱性のスイッチング素子が用いられる。このため、上記ECUには、この発熱部品により発生した熱を放熱するためのヒートシンクが底部に設けられ、当該ヒートシンクの周囲に、筐体の側壁等として構成されたケースが配置される。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数のスイッチングトランジスタを有する電流スイッチング回路装置が記載されている。この装置では、複数のスイッチングトランジスタ各々がネジによってヒートシンクに固定されている。
【0004】
一方、特許文献2には、複数の発熱部品をヒートシンクに一括的に固定することが可能な発熱部品固定構造が記載されている。この固定構造においては、プリント配線基板の周囲にヒートシンクが配置されており、ヒートシンクの上にはプリント配線基板に電気的に接続された複数の発熱部品が直線状に列をなして等間隔又は不等間隔で配列されている。そして上記固定構造においては、ヒートシンクに固定された固定金具によって、複数の発熱部品を一括的にヒートシンクへ押圧固定するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−309384号公報
【特許文献2】特開2013−214770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の構成では、複数の発熱部品を個々にヒートシンクへネジ固定する必要があるため、発熱部品の増加に伴って組立工数も増加するという問題がある。
【0007】
また、上記特許文献2の構成では、ヒートシンクに固定金具が固定される前の状態においては、ヒートシンクに対する各発熱部品の位置精度を安定に確保することができない。このため、プリント配線基板に対する各発熱部品の実装姿勢や放熱部材の形状に制限が生じたり、発熱部品の安定した放熱作用を確保することができなくなったりするおそれがある。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、発熱部品の組立作業性及び組立精度の向上を図ることができる電子機器及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る電子機器は、発熱部品と、放熱部材と、保持部材とを具備する。
上記放熱部材は、上記発熱部品を支持する支持面を有する。
上記保持部材は、位置決め部と、固定部とを有する。上記位置決め部は、上記発熱部品を上記支持面上の所定位置に位置決めする。上記固定部は、上記所定位置に位置決めされた上記発熱部品を上記支持面に押圧して固定する。上記保持部材は、上記放熱部材に取り付けられる。
【0010】
上記電子機器において、発熱部品は、保持部材によって、放熱部材の支持面上に固定される。保持部材は、典型的には、放熱部材にあらかじめ取り付けられた保持部材の位置決め部に装着される。位置決め部に装着された発熱部品は、保持部材の固定部により支持面上に押圧固定される。
上記電子機器によれば、発熱部品の数の増加に伴う組立作業性の低下を抑制することができる。また、放熱部材に対する発熱部品の組立精度を向上させることができるため、発熱部品の安定した放熱作用を確保することができる。
【0011】
上記放熱部材は、板状の台座部と、上記台座部に対し傾斜して形成され上記支持面を構成する斜面部とをさらに有し、上記位置決め部は、上記発熱部品を収容し前記斜面部に位置決めする収容部を有してもよい。これにより、支持面が斜面部で構成されている場合においても、発熱部品の組立作業性及び組立精度の向上を図ることが可能となる。
【0012】
上記保持部材は、規制部をさらに有してもよい。上記規制部は、上記固定部によって押圧された上記発熱部品の上記支持面からの浮き上がりを規制する。これにより、発熱部品の位置決め精度の向上を図ることが可能となる。
【0013】
上記保持部材は、本体部をさらに有してもよい。上記本体部は、上記位置決め部と上記固定部とを支持し、上記放熱部材に取り付けられる。この場合、上記固定部は、上記本体部に対して弾性変形可能に構成された少なくとも1つのアーム部を含む。これにより、放熱部材への発熱部品の組立てが容易となり、作業性の向上を図ることが可能となる。
【0014】
上記保持部材は、典型的には、合成樹脂材料の射出成形体で構成される。これにより、位置決め部及び固定部を有する保持部材を容易に作製することができる。また、合成樹脂材料の弾性を利用して、弾性変形可能な固定部を容易に形成することが可能となる。
【0015】
上記発熱部品は、単数に限られず、上記支持面上の複数の所定位置に各々配置される複数の発熱部品を含んでもよい。同様に、上記位置決め部は、上記複数の発熱部品を上記複数の所定位置に各々位置決めする複数の位置決め部を含んでもよい。これにより、1つの保持部材で複数の発熱部品を一括的に保持することができる。
【0016】
上記電子機器は、上記発熱部品と電気的に接続される配線基板をさらに具備してもよい。発熱部品は、保持部材によって放熱部材の支持面に高い位置決め精度で配置されるため、発熱部品と配線基板との電気的接続作業を容易に行うことができる。
【0017】
一方、本発明の一形態に係る電子機器の製造方法は、放熱部材の支持面に、位置決め部と固定部とを有する保持部材を設置することを含む。
上記位置決め部によって発熱部品が上記支持面上の所定位置に位置決めされる。
上記固定部によって上記発熱部品が上記支持面に押圧されて固定される。
【0018】
上記電子機器の製造方法によれば、発熱部品の数の増加に伴う組立作業性の低下を抑制することができる。また、放熱部材に対する発熱部品の組立精度を向上させることができるため、発熱部品の安定した放熱作用を確保することができる。
【0019】
上記発熱部品は、上記位置決め部によって上記所定位置に位置決めされると同時に、上記固定部によって上記支持面に固定されてもよい。これにより、放熱部材に対する発熱部品の組立作業性を向上させることができる。
【0020】
典型的には、上記発熱部品が上記支持面に固定された後、上記発熱部品が配線基板に電気的に接続される。発熱部品は、保持部材によって放熱部材の支持面に高い位置決め精度で配置されるため、発熱部品と配線基板との電気的接続作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、発熱部品の組立作業性及び組立精度の向上を図ることができる電子機器及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る電子機器を示す斜視図である。
図2】上記電子機器の分解斜視図である。
図3】上記電子機器における放熱部材の要部の拡大断面図である。
図4】上記電子機器における保持部材の全体斜視図である。
図5】上記保持部材の要部の正面図である。
図6】上記放熱部材への発熱部品の装着工程を説明する要部断面図である。
図7】上記放熱部材への発熱部品の装着工程を説明する要部斜視図である。
図8】上記放熱部材の構成の変形例を説明する要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る電子機器を示す斜視図、図2はその分解斜視図である。なお、各図においてX軸、Y軸、及びZ軸は、相互に直交する3軸を示し、X軸及びY軸方向は面内方向、Z軸方向は厚み方向(上下方向)をそれぞれ示す。
【0025】
本実施形態に係る電子機器100は、例えば電動式パワーステアリング用の電子制御ユニット(ECU)として用いられる。電動式パワーステアリングシステムは、ハンドルの操舵トルクや車速に基づいて、運転者の操舵力を補助するためのモータを制御することで、車両の運転者の操舵を補助する機構である。電子機器100は、図示しないトルクセンサや車速センサ等からの出力に基づいて、上記モータの駆動を制御する。以下、電子機器100の構成について説明する。
【0026】
[電子機器の構成]
図1に示すように電子機器100は、全体として略直方体状に形成される。電子機器100は、放熱部材11と、放熱部材11の上に配置される複数の発熱部品12と、複数の発熱部品12を放熱部材11に固定する保持部材18と、複数の発熱部品12並びに第1及び第2の配線基板13、14を収容するケース10とを備える。
【0027】
(放熱部材)
放熱部材11は、電子機器100の底部を構成するとともに、発熱部品12を外部へ放熱するヒートシンクとして機能する。放熱部材11は、典型的には、アルミニウム等の熱伝導性に優れた金属材料で構成される。放熱部材11は、略矩形の平面形状を有する板状の台座部111と、台座部111の内面を構成する一方の主面(図2において上面)に設けられた構造部112とを有する。構造部112は、略台形の断面形状を有し、台座部111の上面の略中央部に形成された凹所113の底部に設けられている。
【0028】
図3は、放熱部材11の要部の拡大断面図である。構造部112は、台座部111に対向する頂部112tと、台座部111と頂部112tとの間に設けられた一対の斜面部112sとを有する。頂部112sは、台座部111の上面よりも上方へ突出し、台座部111と平行な長方形状の平面で形成される。一対の斜面部112sは、頂部112sの各長辺にそれぞれ連接された所定の傾斜角を有する平面で形成される(図3では一方側の斜面部112sのみを示す)。各斜面部112sは、台座部111に対し傾斜して形成され、放熱部材11において複数の発熱部品12を支持する支持面110を構成する。なお、台座部111および構造部112は必ずしも一体の部材で構成される場合に限られない。例えば、放熱部材11は、台座部111を構成する部材と構造部112を構成する部材とを相互に組み合わせて構成されてもよい。
【0029】
(発熱部品)
各発熱部品12は、例えばパワーMOSFET(Metal-Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)等の半導体スイッチング素子で構成される。各発熱部品12は、樹脂モールドされた直方体形状の素子本体121と、素子本体121の一端部から突出する複数本の端子部122とをそれぞれ有する。各発熱部品12は、端子部122を構造部112の頂部112tに向けて各斜面部112sにそれぞれ複数個ずつ搭載されている。
【0030】
本実施形態において、各発熱部品12は、放熱シート19を介して放熱部材11の支持面110にそれぞれ支持されている。放熱シート19は、熱伝導性に優れた電気絶縁材料で構成され、典型的には、支持面110に粘着層を介して接着される。放熱シート19は、各斜面部112sにおいて、個々の発熱部品12に共通の単一のシートで構成されるが、これに限られず、個々の発熱部品12に対応する複数のシートで構成されてもよい。
【0031】
(保持部材)
保持部材18は、放熱部材11の上面に取り付けられ、複数の発熱部品12を放熱部材11の支持面110に固定する。
【0032】
図4は、保持部材18の全体斜視図である。図5は、保持部材18の要部の正面図である。
【0033】
保持部材18は、放熱部材11の構造部112の頂部112t及び斜面部112sを被覆し得る形状に屈曲した3次元構造を有する。保持部材18は、本体部181と、天面部182と、本体部181と天面部182との間に形成された位置決め部183と、固定部184とを有する。
【0034】
本体部181は、位置決め部183と固定部184とを支持し、放熱部材11の台座部111の上面に固定される。本体部181は、保持部材18のX軸方向の両端部にそれぞれ形成される。各本体部181は、Y軸方向に長手方向を有する板部で構成され、それらの所定位置には、ネジ部材S1(図3参照)が挿通される複数のネジ孔181aが設けられている。ネジ部材S1は、台座部111の上面に形成されたネジ孔(図示略)に螺着され、これにより各本体部181が台座部111に固定される。
【0035】
天面部182は、放熱部材11の頂部112tに対向するようにY軸方向に平行に延びる板部で構成される。天面部182は、典型的には、本体部181が台座部111に固定された際、頂部112tに接触するように構成されるが、勿論これに限られず、頂部112との間に所定の隙間が形成されてもよい。
【0036】
位置決め部183は、各本体部181と天面部182との間にそれぞれ形成される。位置決め部183は、放熱部材11の支持面110(斜面部112s)に対向して格子状に配列された複数の軸部183aと、これら軸部183aをそれらの下端部で連結する連結部183bとを含む。各軸部183aは、Y軸方向に直交する方向にそれぞれ直線的に形成され、連結部183bは、Y軸方向に平行に直線的に形成される。
【0037】
各軸部183aの間には発熱部品12を1つずつ収容可能な複数の収容部185が形成される。位置決め部183は、収容部185に収容された個々の発熱部品12が支持面110上の所定位置にそれぞれ配置されるように、各発熱部品12を位置決めする。本実施形態では、各収容部185は、各発熱部品を斜面部112sにそれぞれ位置決めすることが可能に構成される。
【0038】
各収容部185は、発熱部品12を収容可能な略矩形の開口部で構成される。各収容部185は、2つの軸部183aと連結部183bとによって区画され、個々の発熱部品12を所定の位置決め精度で収容できる大きさに形成されている。
【0039】
固定部184は、位置決め部183によって位置決めされた発熱部品12を支持面110に押圧して固定する。固定部184は、隣接する2つの軸部183aの間に1つずつ設けられ、本実施形態では、本体部181に対して弾性変形可能に構成されたアーム部で構成される。
【0040】
固定部184は、本体部181から天面部182に向かって延びる板部で構成される。固定部184は、収容部185を介して支持面110に対向しており、その一端部(基部)は本体部181に固定され、他端部(先端部)は収容部185の略中心に位置している。固定部184の先端部には、収容部185の内部に向かって突出する突起184aが形成され、この突起184aが図3に示すように収容部185に収容された発熱部品12の素子本体121に弾性的に接触するように構成される。
【0041】
保持部材18は、固定部184によって押圧された発熱部品12の支持面110からの浮き上がりを規制する規制部186をさらに有する。規制部186は、格子状の軸部183aの上面に形成され、収容部185を構成する開口部の一部を遮蔽する複数の板部で構成される。
【0042】
規制部186は、典型的には、本体部181と天面部182との間の所定位置に設けられ、本実施形態では、固定部184の先端部184aに対してY軸方向に対向する位置に設けられる。
【0043】
保持部材18は、合成樹脂材料の射出成形体で構成される。合成樹脂材料は特に限定されず、典型的には、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の耐熱性を有する電気絶縁性の樹脂材料が用いられる。これにより、位置決め部183、固定部184等を有する保持部材18を容易に作製することができる。また、合成樹脂材料の弾性を利用して、弾性変形可能な固定部184を容易に形成することが可能となる。さらに、複数の発熱部品12を同時に保持可能な保持部材18を容易に作製することができる。
【0044】
(ケース)
ケース10は、電子機器100の筐体として構成され、例えば、ケース本体15と、蓋部16とを有する。ケース10は、例えば図示しないシールリングを介して放熱部材11に組み付けられる。ケース10と放熱部材11との固定構造は特に限定されず、典型的には、ケース10(ケース本体15および蓋部16)の四隅に挿通される複数のネジ、ボルト等の締結具を用いて、ケース10と放熱部材11とが相互に結合される。
【0045】
ケース本体15は、矩形枠状に形成され、放熱部材11の台座部111の周縁に固定されることで、電子機器100の側面(周面)を構成する。ケース本体15は、第1の配線基板13、第2の配線基板14、あるいはこれらの双方に接続されるバスバー(図示略)を内蔵している。さらに、ケース本体15は、モータやセンサ等の外部機器と接続される複数のコネクタ151が形成されており、これらコネクタ151に接続されたケーブル類は、上記バスバーを介して第1の配線基板13、第2の配線基板14あるいはこれらの双方にそれぞれ電気的に接続される。
【0046】
ケース本体15は、例えば、PPS、PBT等の耐熱性を有する電気絶縁性の樹脂材料の射出成形体で構成される。上記バスバーは、インサート成形によりケース本体15に内蔵される。
【0047】
第1の配線基板13は、典型的には、耐熱性に優れたメタル基板やセラミック基板で構成される。第1の配線基板13は、図3に示すように、放熱部材11の直上に配置され、保持部材18によって放熱部材11に保持された複数の発熱部品12と電気的に接続される。各発熱部品12の端子部122は、第1の配線基板13に向かって上方に延び、第1の配線基板13に設けられた端子孔に挿入実装される。
【0048】
第2の配線基板14は、典型的には、ガラスエポキシ樹脂等で構成された有機基板で構成される。第2の配線基板14には、ICチップ等の集積回路やその周辺部品が搭載されており、第2の配線基板14は、電子機器100の全体を制御する制御基板として構成される。
【0049】
第1及び第2の配線基板13,14は、ケース本体15の内部に収容される。典型的には、第1及び第2の配線基板13,14は、Z軸方向に相互に対向するように間隔をあけて配置される。第1及び第2の配線基板13,14の支持構造は特に限定されず、例えば、これら配線基板13,14の周縁部がケース本体15の内周部に係止される。
【0050】
蓋部16は、図示しないシールリングを介してケース本体15の上に配置される。蓋部16は、電子機器100の上面を構成し、平面視において放熱部材11及びケース本体15と略同一の大きさの矩形に形成されている。蓋部16の構成材料は特に限定されず、例えば、ケース本体15と同様な材料、すなわち、PPS、PBT等の耐熱性を有する電気絶縁性の樹脂材料で構成される。
【0051】
[電子機器の製造方法]
次に、以上のように構成される電子機器100の製造方法について説明する。
【0052】
まず、放熱部材11の構造部112に保持部材18が設置される。構造部112への保持部材18の設置に際しては、支持面110(斜面部112s)に位置決め部183が配置された後、各本体部181が複数のネジ部材S1を介して放熱部材11の上面に固定される。なお放熱シート19は、保持部材18の取付け前に、支持面110に貼り付けられる。
【0053】
続いて、位置決め部183によって複数の収容部185に区画された支持面110に、発熱部品12がそれぞれ装着される。図6は、収容部185への発熱部品12の装着工程を説明する要部断面図、図7はその要部斜視図である。
【0054】
図6及び図7に示すように、各発熱部品12は、端子部122が突出する端部とは反対の端部123を先頭にして、天面部182側に開口する収容部185へそれぞれ挿入される。このとき、位置決め部183の各軸部183aの側面は、素子本体121の両側面に接触することで発熱部品12の挿入を誘導するガイド面として機能する。収容部185へ挿入された発熱部品12は、固定部184の先端部(突起184a)に当接しつつ、固定部184を本体部181に対して図6において時計回り方向へ弾性変形させる。そして、発熱部品12の端部123が連結部183bに当接するまで、発熱部品12が収容部185内へ押し込まれる。
【0055】
発熱部品12の端部123が連結部183bに当接した時点で、収容部185への発熱部品12の装着作業が完了する。この状態では、固定部184の突起184aは、固定部184の弾性復帰力によって発熱部品12の素子本体121を支持面110(放熱シート19)に向けて押圧する。したがって本実施形態においては、発熱部品12は、位置決め部183により支持面110上の所定位置に位置決めされると同時に、固定部184により支持面110に固定されることになる。
【0056】
固定部184の弾性復帰力は特に限定されず、所定の保持力で発熱部品12を支持面110に向けて押圧できる大きさに設定される。本実施形態では、突起184aは、素子本体121の上面に乗り上げた後、発熱部品12が所定位置(端部123が連結部183bに当接する位置)に達するまで素子本体121に対して相対移動する。したがって固定部184の弾性復帰力は、作業性の観点から、発熱部品12を上記所定位置へ移動させることが可能な適宜の大きさに設定されるのが好ましい。
【0057】
ここで、図7に示すように、素子本体121の上面に、固定部184の突起184aが係合可能な係合凹部121aが設けられてもよい。係合凹部121aは、典型的には、発熱部品12が上記所定位置に達したときに突起184aと係合することが可能な位置に設けられる。これにより、所定位置に装着された発熱部品12に対して一定の抜け止め作用を得ることができる。
【0058】
さらに、発熱部品12は、規制部186によって支持面110あるいは収容部185からの浮き上がりが防止される。すなわち、固定部184の突起184aが発熱部品12の素子本体121に乗り上げたとき、素子本体121は、固定部184の弾性復帰力によって突起184aを支点とするモーメントで収容部185から起き上がろうとする力が作用する。規制部186は、収容部185の一部を遮蔽するように設けられているため、上記のような素子本体121の浮上が抑制され、これにより発熱部品12の安定した挿入姿勢が維持される。また、発熱部品12が所定位置に達した後においても、規制部186によって収容部185からの発熱部品12の浮上や脱落を防止することができるため、発熱部品12の位置決め精度の向上が図れることになる。
【0059】
発熱部品12の装着後、第1の配線基板13は、放熱部材11の直上位置に配置された後、各発熱部品12と電気的に接続される。第1の配線基板13は、放熱部材11にケース本体15が組み付けられる前に配置されてもよいし、放熱部材11にケース本体15が組み付けられた後で配置されてもよい。あるいは、第1の配線基板13は、ケース本体15と一体化した状態で、放熱部材11へ組み付けられてもよい。
【0060】
第1の配線基板13と発熱部品12との電気的な接続は、典型的には、はんだ付けが採用される(挿入実装)。この場合、発熱部品12は所定位置に精度よく位置決め配置されているため、各々の端子部122と第1の配線基板13との相対位置を容易に設定あるいは調整することができる。
【0061】
その後、第2の配線基板14がケース本体15あるいは第1の配線基板13と電気的に接続され、蓋部16がケース本体15へ固定される。以上のようにして電子機器100が組み立てられる。
【0062】
本実施形態によれば、あらかじめ放熱部材11に設置された保持部材18の収容部185に発熱部品12を組み込むだけで、支持面110上の所定位置に発熱部品12を高精度に固定することができる。したがって複数の発熱部品12を個々にネジ止めすることなく放熱部材11に固定することができるため、発熱部品12の数の増加に伴う組立作業性の低下を抑制することができる。また、各収容部185に位置決め部183が設けられているため、放熱部材11に対する発熱部品12の組立精度を向上させることができる。さらに、固定部184の弾性変形を利用して発熱部品12を押圧保持することができるため、発熱部品12の固定が容易となり、かつ、安定した放熱作用を確保することができる。
【0063】
また本実施形態によれば、発熱部品12は、位置決め部183によって所定位置に位置決めされると同時に、固定部184によって支持面110に固定されるように構成されているため、放熱部材11に対する発熱部品12の組立作業性を向上させることができる。
【0064】
さらに本実施形態においては、発熱部品12を支持する支持面110が構造部112の斜面部112sに設けられており、保持部材18の各収容部185が構造部112の頂部112t側に開口している。このため、収容部185への発熱部品12の挿入作業が容易となり、作業性の向上が図れるようになる。また、発熱部品12と第1の配線基板13との間の相対距離を小さくできるため、端子部122の長さの短縮を図ることができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0066】
例えば以上の実施形態では、発熱部品12を支持する放熱部材11の支持面110が斜面部112sで構成されたが、これに限られず、平坦な面で構成されてもよい。
【0067】
また以上の実施形態では、各収容部185に固定部184が1つずつ設けられたが、各収容部185に固定部184が複数ずつ設けられてもよい。また、固定部184は、本体部184等とは別部材で構成されてもよく、例えば、金属製の板ばねで構成されてもよい。さらに固定部は、発熱部品が所定位置に配置されたときに初めて発熱部品を支持面に向けて押圧することが可能な機構部品で構成されてもよい。




【0068】
さらに以上の実施形態では、1つの保持部材18で同種の複数の発熱部品12が押圧保持される例を説明したが、発熱部品は単数であってもよいし、種類や形状の異なる複数の発熱部品が1つの保持部材で保持されるように構成されてもよい。
【0069】
さらに、放熱部材11の構造部112は、断面形状が台形の構造体で構成される場合に限られない。例えば図8に示すように、構造部212は、頂部112tを有する断面形状が三角形の構造体で構成されてもよい。この場合、構造部212の斜面部212sが発熱部品12を支持するための支持面110として構成される。
【0070】
そして以上の実施形態では、電子機器100として、電動式パワーステアリング用のECUを例に挙げて説明したが、これに限定されず、自動車用のエンジン制御システム、ブレーキ制御システム、サスペンション制御システムなどにおける車載用のECU等であってもよい。
【符号の説明】
【0071】
10…ケース
11…放熱部材
12…発熱部品
13…第1の配線基板
14…第2の配線基板
15…ケース本体
16…蓋部
18…保持部材
100…電子機器
111…台座部
110…支持面
181…本体部
183…位置決め部
184…固定部
185…収容部
186…規制部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8