特許第6516485号(P6516485)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6516485
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】光警報装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 29/10 20060101AFI20190513BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20190513BHJP
   G08B 23/00 20060101ALI20190513BHJP
【FI】
   G08B29/10
   G08B17/00 D
   G08B23/00 510A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-11784(P2015-11784)
(22)【出願日】2015年1月23日
(65)【公開番号】特開2016-136365(P2016-136365A)
(43)【公開日】2016年7月28日
【審査請求日】2018年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100188547
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴野 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健一
(72)【発明者】
【氏名】森田 英聖
【審査官】 白川 瑞樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−066738(JP,A)
【文献】 特開平02−291789(JP,A)
【文献】 特開2014−186430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D5/26−5/38
G08B1/00−9/20
17/00
19/00−31/00
H05B41/30−43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
前記発光素子を駆動する発光駆動手段と、
前記発光駆動手段を制御する制御手段と、
を備え、
火災等の非常事態を示す警報信号を受信すると、前記制御手段が、前記発光駆動手段を制御して、前記発光素子を間欠的にフラッシュ発光させることにより警報を報知する光警報装置において、
前記発光素子での放電を検出する放電検出手段を備え、
前記発光駆動手段は、前記発光素子を発光させるときにオンするスイッチ素子を有し、
前記制御手段は前記スイッチ素子のオン時間により、平常時に、前記発光駆動手段を制御して警報を報知するときの発光よりも短い時間で前記発光素子を定期的に発光させる試験発光を行い、前記放電検出手段が前記発光素子での放電を検出することにより、前記発光素子が正常であると判断する、
光警報装置。
【請求項2】
照度センサを備え、
前記制御手段は、前記照度センサが一定値以上の明るさを検出しているときに前記試験発光を行う、
請求項1の光警報装置。
【請求項3】
発光素子と、前記発光素子を駆動する発光駆動手段と、前記発光駆動手段を制御する制御手段と、
を備え、
火災等の非常事態を示す警報信号を受信すると、前記制御手段が、前記発光駆動手段を制御して、前記発光素子を間欠的にフラッシュ発光させることにより警報を報知する光警報装置において、
前記発光素子での放電を検出する放電検出手段と、
前記警報を報知する報知領域が無人であるか否かを判定する為に周辺状況を検出する周辺状況検出手段と、
前記周辺状況検出手段の検出結果に基づいて、前記報知領域が無人であるか否かを判定する無人判定手段と、
を備え、
前記制御手段は、平常時、且つ、前記無人判定手段が無人であると判定したときに、前記発光駆動手段を制御して前記発光素子を発光させる試験発光を行い、前記放電検出手段が前記発光素子での放電を検出することにより、前記発光素子が正常であると判断する、
光警報装置。
【請求項4】
前記周辺状況検出手段は、
前記報知領域の照度が所定値以下であるときに前記無人判定手段が無人であると判定する為に、前記報知領域の照度を検出する照度センサ、
前記報知領域に人の存在が検出されないときに前記無人判定手段が無人であると判定する為に、前記報知領域の人の存在を検出する人感センサ、
のいずれか又は両方である、
請求項3の光警報装置。
【請求項5】
前記放電検出手段は、前記試験発光のときに、前記発光素子の発光に伴う放電ノイズ、又は、前記発光素子を発光させる為の電荷を供給する蓄電素子の前記試験発光による電荷放出に伴う電位低下、を検出することにより、前記発光素子での放電を検出する、
請求項1乃至4のいずれかの光警報装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災発生時に間欠的なフラッシュ光で警報を発する自動火災報知設備の光警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動火災報知設備は、所定の音量を発する音響装置を所定の間隔で配設して火災発生を警報し、火災発生を知らせるとともに避難を促すものであった。
【0003】
しかしながら、火災等の非常事態発生時に避難するべき人に聴覚障害があるような場合、光等の聴覚以外の感覚に働きかけて非常事態を知らせる警報装置の普及が望まれている。そして、強烈な閃光を発するストロボ(登録商標)に代表されるエレクトロニック・フラッシュや、大光量のLEDランプ等を光源に用い、間欠的にフラッシュ光を発して警報する光警報装置が知られている(特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−161679号公報
【特許文献2】特開2011−198194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の光警報装置は、平常時は消灯し、火災等の異状時には間欠的にフラッシュ発光することによって警報を報知する(特許文献1等)。また、火災時には煙を通して視認できるだけの強い光を発生する必要がある(参考文献:1970年消防研究所報告「煙中の視程について(I)」、1971年日本火災学会論文集「煙中の見通し距離について」、等、神忠久の一連の研究論文)。そのため、発光素子には、強烈な閃光を発するストロボ(登録商標)に代表されるエレクトロニック・フラッシュや、大光量のLEDランプ等を用いる。
光警報装置は警報時に確実に動作することが求められるため、その発光素子に異常がないか試験を行って維持管理する必要があり、従来は、警報を報知するフラッシュ発光を行って作業員が目視で動作を確認していた。さらに、試験のためのフラッシュ発光が警報と誤認されて混乱を招かないように、事前に周知する必要があるが、光警報装置が主として聴覚障害者を対象とする警報装置であることを鑑みると、館内放送によるアナウンスで済ませることはできない。このため、試験が煩雑であった。
特許文献2には、警報を報知するフラッシュ発光を行って発光素子の発光回数や発光時の放電を検出することによって、発光素子の劣化をユーザに通知する技術が開示されている。この技術によれば目視確認する作業員を要しないが、試験のためのフラッシュ発光が警報と誤認されて混乱を招く虞がある。つまり、光警報装置の試験は、警報と誤認され得る発光を行って混乱を招くものであってはならない。そして光警報装置の確実な動作を維持管理するための試験は、平常時に、常時又は高い頻度で定期的に、且つ、自動的に行うことが望ましい。このような試験を行う方法としては、発光しない程度の微弱電流を発光素子に流すことにより断線等の異常を検出することが考えられる。しかし、キセノン管のような発光素子は放電により発光するため、微弱電流を流して断線等の異常を検出する試験は難しかった。本発明は、上記課題を解決するために、微弱電流を流すことによる試験ができない発光素子を用いた光警報装置であっても、平常時に警報と誤認されることなく、定期的かつ自動的に発光素子を試験することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、発光素子と、前記発光素子を駆動する発光駆動手段と、前記発光駆動手段を制御する制御手段と、を備え、火災等の非常事態を示す警報信号を受信すると、前記制御手段が、前記発光駆動手段を制御して、前記発光素子を間欠的にフラッシュ発光させることにより警報を報知する光警報装置において、前記発光素子での放電を検出する放電検出手段を備え、前記制御手段は、平常時に、前記発光駆動手段を制御して警報を報知するときの発光よりも短い時間で前記発光素子を定期的に発光させる試験発光を行い、前記放電検出手段が前記発光素子での放電を検出することにより、前記発光素子が正常であると判断する、光警報装置である。
【0007】
(2)また、本発明は、前記(1)において、照度センサを備え、前記制御手段は、前記照度センサが一定値以上の明るさを検出しているときに前記試験発光を行う、光警報装置である。
【0008】
(3)また、本発明は、発光素子と、前記発光素子を駆動する発光駆動手段と、前記発光駆動手段を制御する制御手段と、を備え、火災等の非常事態を示す警報信号を受信すると、前記制御手段が、前記発光駆動手段を制御して、前記発光素子を間欠的にフラッシュ発光させることにより警報を報知する光警報装置において、前記発光素子での放電を検出する放電検出手段と、前記警報を報知する報知領域が無人であるか否かを判定する為に周辺状況を検出する周辺状況検出手段と、前記周辺状況検出手段の検出結果に基づいて、前記報知領域が無人であるか否かを判定する無人判定手段と、を備え、前記制御手段は、平常時、且つ、前記無人判定手段が無人であると判定したときに、前記発光駆動手段を制御して前記発光素子を発光させる試験発光を行い、前記放電検出手段が前記発光素子での放電を検出することにより、前記発光素子が正常であると判断する、光警報装置である。
【0009】
(4)また、本発明は、前記(3)において、前記周辺状況検出手段は、前記報知領域の照度が所定値以下であるときに前記無人判定手段が無人であると判定する為に、前記報知領域の照度を検出する照度センサ、前記報知領域に人の存在が検出されないときに前記無人判定手段が無人であると判定する為に、前記報知領域の人の存在を検出する人感センサ、のいずれか又は両方である、光警報装置である。
【0010】
(5)また、本発明は、前記(1)乃至(4)のいずれかにおいて、前記放電検出手段は、前記試験発光のときに、前記発光素子の発光に伴う放電ノイズ、又は、前記発光素子を発光させる為の電荷を供給する蓄電素子の前記試験発光による電荷放出に伴う電位低下、を検出することにより、前記発光素子での放電を検出する、光警報装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に記載の構成によると、キセノン管のような放電管型の発光素子であっても、平常時に、定期的且つ自動的に、目立つことなく発光素子を試験することができるという効果を奏する。
【0012】
また、本発明の請求項2に記載の構成によると、照度センサが一定値以上の明るさを検出しているときに試験を行うことにより、試験発光がさらに目立たないという効果を奏する。
【0013】
また、本発明の請求項3に記載の構成によると、平常時、且つ、警報を報知する範囲が無人であると判定されたときに試験発光を行うことにより、試験発光を認識する人がおらず、警報と誤認されることがないという効果を奏する。
【0014】
また、本発明の請求項4に記載の構成によると、照度センサが報知領域の所定値以下の照度を検出しているとき、報知領域に人の存在が検出されないとき、のいずれか又は両方のときに、無人であると判定して試験発光を行うことにより、試験発光を認識する人がおらず、警報と誤認されることがないという効果を奏する。
【0015】
また、本発明の請求項5に記載の構成によると、放電ノイズ、又は、蓄電素子の電位低下を検出することにより発光素子での放電を検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例1に係る光警報装置を含む、光警報システムの構成を表す図。
図2】本発明の実施例1に係る光警報装置1の内部構成を示す図。
図3】本発明の実施例1に係る発光駆動手段10の構成を説明する図。
図4】本発明の実施例1に係る放電検出手段19の一例を示す図
図5】本発明の実施例1に係る放電検出手段19の他の例を示す図
図6】本発明の実施例1の変形例に係る光警報装置100および本発明の実施例2に係る光警報装置101の内部構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明による光警報装置の実施例を示す。
実施例1,2ではフラッシュ発光させる発光素子として、放電管であるキセノン管を用いて説明する。発光素子の間欠的フラッシュ発光の周波数は0.5〜2Hzであることが好ましい。火災感知器の一例として煙感知器を用いた自動火災報知設備による実施例を説明するが、火災感知器は煙感知器に限らず炎感知器や熱感知器等でもよい。
【実施例1】
【0018】
まず、本発明の実施例1に係る光警報装置を説明する。図1は、実施例1の光警報装置を含む、自動火災報知設備の構成を表す。1は光警報装置、2は受信機、3は煙感知器である。光警報装置1は警報信号線5を介して受信機2と接続され、受信機2は感知信号線4を介して複数の煙感知器3に接続されている。光警報装置1に設けられている6は発光素子であるキセノン管である。また、さらにブザー7を設け、火災時に音響で警報するようにしてもよい。なお、他に音響で火災を報知する、自動火災報知設備の地区音響装置や、非常放送設備等が設けられている場合は、ブザー7を設ける必要はない。また、ブザー7に代えて、音声メッセージで火災を警報する音声警報手段を設けてもよい。
【0019】
煙感知器3が煙を感知すると感知信号線4を通じて受信機2に火災感知信号が伝えられ、受信機2は蓄積機能等の火災判断手段に基づいて火災判断を行う。受信機2は、火災と判断すると、警報信号線5を通じて火災警報信号を複数の光警報装置1に出力し、全ての光警報装置1のキセノン管6が間欠的にフラッシュ発光する。このとき、ブザー7を鳴動させるようにしてもよい。
【0020】
図2は光警報装置1の内部構成である。キセノン管6、ブザー7は、それぞれ発光駆動手段10、ブザー駆動手段11により駆動される。また、発光駆動手段10は、キセノン管6の放電を検出する放電検出手段19も有している。これらの駆動手段は、制御手段14により制御される。
【0021】
図3は、本発明の実施例1に係る光警報装置1の発光駆動手段10に関する構成を説明する図であり、発光駆動手段10は、昇圧回路20と、トリガ手段30と、放電検出手段19とから構成される。そして、これらは制御手段14によって制御される。
【0022】
電源16は、例えば約24Vの直流電圧を出力する直流電源装置、あるいは、電池電源であり、24V以外の直流電圧を出力するようにしてもよい。また、電源16を設けずに、外部の電源装置から電路を介して電力を供給するようにしてもよい。その際、外部の交流電源から電力を供給するようにし、これを整流して出力する電源装置を設けるようにしてもよい。
【0023】
昇圧回路20は、上記電源16の出力を、キセノン管6を放電させるに足る電圧まで昇圧する電源回路の一例であり、スイッチ素子21、昇圧トランス22、ダイオード23、コンデンサ24を有する。
【0024】
スイッチ素子21は、制御手段14が出力する制御信号(繰り返しのオンオフ信号)によって、オンオフを繰り返し、電源16を繰り返し断続制御して略方形の交流電流を発生させる。つまり、スイッチ素子21は、制御手段14が出力する制御信号によって、昇圧トランス22の1次側に電源16の出力を交流電流として与える。昇圧トランス22は、1次側の交流電流によって、例えば約300Vの交流電圧を出力する。なお、昇圧トランス22の出力は300Vの交流電圧に限るものではなく、後述するように昇圧トランス22の出力を整流・蓄電した後の出力が、発光素子としてのキセノン管6を放電させるに足ればよく、発光素子がキセノン管以外の場合は、その発光素子が発光するに足る出力とすればよい。また、発光素子を放電させる際に昇圧の必要がなければ昇圧回路20を設けなくてもよく、その場合は制御手段14からの制御信号によって制御される図示しないスイッチ素子によって、電源16から発光素子に電力を供給するようにしてもよい。
【0025】
ダイオード23は、昇圧トランス22の出力を整流するものであり、ここでは昇圧トランス22が出力する交流電圧を半波整流している。なお、ダイオード23による半波整流に代えて、ブリッジ回路等によって全波整流するようにしてもよい。コンデンサ24は、ダイオード23の整流した出力によってキセノン管6を発光させる為の電荷(電気エネルギ)を蓄積する蓄電素子としてのコンデンサである。そして、コンデンサ24は、キセノン管6を発光させる為の電荷を蓄積する。このとき、コンデンサ24に電荷が蓄積されるにしたがって、すなわちコンデンサ24が充電されるにしたがって、コンデンサ24の両端の電圧Vは蓄積された電荷量Qをコンデンサ24の静電容量Cで除した電圧V=Q/Cの値に上昇する。この電圧Vは接続されたキセノン管6両端の電極に印加されるとともに、充電抵抗33を介してトリガコンデンサ34を充電する。
【0026】
トリガ手段30は、スイッチ素子31と、トリガトランス32とを有する。トリガ手段30は、トリガコンデンサ34に蓄積された電荷をトリガトランス32の1次側に通電させることによって、キセノン管6のトリガ電極6aに、キセノン管6を発光させるための発光トリガを出力する。この発光トリガは、制御手段14からの発光命令(トリガ信号)に基づいて、出力される。
【0027】
トリガ信号に応じてスイッチ素子31がオンすると、トリガコンデンサ34に蓄積されている電荷がトリガトランス32の1次側に流れ、2次側にインパルス電圧が誘起され、発光トリガが出力される。
【0028】
制御手段14は、昇圧回路20のスイッチ素子21に繰り返し断続する制御信号を出力してコンデンサ24とトリガコンデンサ34の充電を行い、さらに、トリガ手段30のスイッチ素子31にトリガ信号(発光命令)を出力してキセノン管6を発光させる。
【0029】
19は放電検出手段であり、キセノン管6両端の放電電極に接続されて、キセノン管6の発光に伴う放電ノイズ、又は、発光によるコンデンサ24の電荷放出に伴うキセノン管6への供給電圧の低下を、キセノン管6両端への供給電圧を分圧した点での電位低下によって検出し、放電検出信号を制御手段14に出力する。
【0030】
次に、発光駆動手段10の動作について説明する。火災警報信号によりキセノン管6を間欠的にフラッシュ発光させて警報を報知する場合には次のように動作する。光警報装置1は、送受信手段15を介して火災警報信号を受信すると、制御手段14は発光駆動手段10にスイッチ素子21を断続(オンオフ)させる制御信号を送出し、次いでスイッチ素子31をオンさせるトリガ信号を送出する。そうすると、発光駆動手段10は、次のようにコンデンサ24とトリガコンデンサ34とを充電した後に、トリガ信号に基づいてキセノン管6を発光させる。
【0031】
コンデンサ24とトリガコンデンサ34を充電する動作は次のようになる。送受信手段15を介して火災警報信号を受信した制御手段14は、スイッチ素子21を繰り返しオンオフするパルスである制御信号を昇圧回路20に出力する。この制御信号に基づいてスイッチ素子21が繰り返しオンオフされることによって、電源16と、その電源16の電圧(たとえば24V)を昇圧して出力するための昇圧トランス22の1次側とを繰り返し断続する。これによって、昇圧トランス22の1次側に略方形の交流電流が流れ、昇圧トランス22の2次側に昇圧された交流電圧、例えば330Vが発生する。昇圧トランス22の2次側出力は、ダイオード23によって半波整流され、コンデンサ24に電荷を蓄積させる。このとき、昇圧トランス22の2次側出力は、ダイオード23で半波整流され、さらにコンデンサ24で平滑されて、キセノン管6の放電電極に印加されるとともにトリガ手段30にも送出される。トリガ手段30のスイッチ素子31は、キセノン管6をフラッシュ発光させるに足る電荷がコンデンサ24に蓄積されるまでは制御手段14によりオフ状態としておく。このとき、トリガコンデンサ34にも充電抵抗33を介して電荷が蓄積される。
【0032】
キセノン管6をフラッシュ発光させる動作は次のようになる。制御手段14は、昇圧回路20に制御信号を出してからキセノン管6をフラッシュ発光させるに足る電荷がコンデンサ24に蓄積される所定時間が経過すると、スイッチ素子21を開放して上記オンオフを停止した後、トリガ手段30にトリガ信号(発光命令)を送出する。このトリガ信号によって、トリガ手段30のスイッチ素子31がオンし、トリガコンデンサ34に蓄積された電荷がトリガトランス32の1次側に印加される。そうすると、トリガトランス32の2次側にはインパルスが発生し、このインパルスはキセノン管6のトリガ電極6aに印加される。このとき、キセノン管6の両端に設けられた放電電極には、キセノン管6をフラッシュ発光させるに足る電荷量を蓄積した昇圧回路20の出力が印加されており、トリガ電極6aに印加されたインパルスによって、キセノン管6は放電を開始する。そして、コンデンサ24に蓄積されている電荷を消費してフラッシュ発光する。
【0033】
そして、上記のコンデンサ24とトリガコンデンサ34とを充電する動作と、キセノン管6を発光させる動作を繰り返すことにより、間欠的なフラッシュ発光が行われる。
【0034】
一方、キセノン管6で試験発光を行う場合には次のように動作する。試験発光は、警報信号が制御手段に供給されていない状態で、すなわち平常時に、定期的に行い、警報を報知するときの発光よりも短い時間で、キセノン管6を発光させる(すなわちキセノン管6で放電させる)。
【0035】
試験発光させる場合、コンデンサ24とトリガコンデンサ34を充電する動作は、上記のキセノン管6を間欠的にフラッシュ発光させて警報を報知する場合と同様である。ただし試験発光において、キセノン管6を発光させる時間、すなわちキセノン管6での放電時間は、警報を報知する場合よりも短い時間となるようにする。人間の目には光を積分する特性があることから、キセノン管6での放電が短時間であると発光は暗く感じるため、試験発光が目立つことはなく、警報の報知と誤認されないようにすることができる。さらに、試験発光の間隔は、警報を報知する場合よりも長く(例えば24時間、1週間、1箇月)とし、試験発光をより目立たなくすると良い。
【0036】
試験発光でキセノン管6を短時間放電する動作は、例えば、キセノン管6を発光させるまでにコンデンサ24へ蓄積する電荷量を、警報を報知する場合よりも少なくすることによって実現できる。つまり、警報を報知する場合よりもコンデンサ24への充電を少なくするとよく、例えば、コンデンサ24への充電時間を、警報を報知するときよりも短い所定時間とする。制御手段14は、昇圧回路20にスイッチ素子21を繰り返しオンオフする制御信号を送出してから上記所定時間が経過すると、制御信号を停止することによってスイッチ素子21を開放させて上記オンオフの繰り返しを停止し、その後にスイッチ素子31をオンする。これにより、警報を報知する場合よりも少ない電荷量でキセノン管6を発光させることとなり、警報を報知する場合よりも短い時間でキセノン管6での放電が終了する。
【0037】
一方、キセノン管6両端の放電電極には、キセノン管6での放電を検出する放電検出手段19が接続される。放電検出手段19がキセノン管6での放電を検出するには、試験発光のときにキセノン管6の発光に伴う放電ノイズ、すなわち放電管であるキセノン管6内の電子なだれによって両端の放電電極に誘起されるスパイク状のノイズ電圧を検出することによって実現できる。この場合の放電検出手段19は、図4に示すように、キセノン管6両端の放電電極への接続点19a、19bのそれぞれに、直流成分をカットするコンデンサC1、C2を接続し、コンデンサC1、C2を介して放電ノイズの交流成分を検出するノイズ検出手段をその間に設ける。このように放電ノイズの交流成分を検出することにより、高圧の直流成分よりも小さな放電ノイズを検出し、キセノン管6での放電を検出することができる。
【0038】
また、キセノン管6を発光させる為の電荷を供給するコンデンサ24の、試験発光による電荷放出に伴う電位低下を検出することによってキセノン管6での放電を検出するようにしてもよい。先に述べたように、コンデンサ24の電圧Vは蓄積された電荷量Qをコンデンサ24の静電容量Cで除した値であり、電圧V=Q/Cとなるので、放電によって電荷を消費するにしたがって、コンデンサ24の電圧Vは低下する。この場合の放電検出手段19は、図5に示すように、キセノン管6両端の放電電極への接続点19a、19bのそれぞれに接続した抵抗R1と抵抗R2との中間の接続点に電位検出手段を設け、所定値以上の電位低下を検出する。
【0039】
上記のいずれの場合も、放電検出手段19がキセノン管6の試験発光による放電を検出したときに、放電検出手段19はその出力点19cを介して放電を検出したことを示す放電検出信号を制御手段14へ送出する。そして、制御手段14は、この放電検出信号に基づいてキセノン管6が正常であるか異常であるかを判断し、異常と判断した場合は送受信手段15を介して発光素子異常信号を受信機2へ送出し、発光素子異常信号を受信した受信機2は光警報装置1の異常を警報する。上記において、放電検出手段19が検出した値を制御手段14へ送出して、制御手段14がその検出した値に基づいてキセノン管6が正常であるか異常であるかを判断するようにしてもよい。
【実施例2】
【0040】
本実施例では、実施例1において試験発光の発光時間を、警報を報知するときよりも短くすることに代えて、警報を報知する報知領域が無人であるときに試験発光を行う光警報装置101について示す。
【0041】
光警報装置101は、図1,6に記載されているように、実施例1の光警報装置1に、さらに、警報を報知する報知領域が無人であるか否かを判定する為に周辺状況を検出する周辺状況検出手段と、前記周辺状況検出手段の検出結果に基づいて、前記報知領域が無人であるか否かを判定する無人判定手段とを備える。なお、周辺状況検出手段は、照度センサ8、増幅回路12、A/Dコンバータ13から成る環境照度測定手段である。また、無人判定手段は、環境照度測定手段が測定した環境照度が予め定めた一定値以下の照度であるときに前記報知領域が無人であると判定する機能的構成として制御手段14aに設けられる。他の構成は上記実施例で説明したとおりである。
【0042】
光警報装置101が置かれている環境の明るさは、照度センサ8によって検出され、増幅回路12で増幅された後にA/Dコンバータ13でデジタル信号に変換されて環境照度の測定値として制御手段14aに入力される。そして、制御手段14aは、平常時、且つ、無人判定手段が無人であると判定することを条件に、発光駆動手段10を制御してキセノン管6を定期的に発光させる試験発光を行うようにする。試験発光させるときには、周囲に人がいないので、試験発光を見る人がおらず、試験発光を行っても警報と誤認される虞はない。したがって本実施例では、実施例1のように警報を報知するときよりも試験発光の発光時間を短く制御する必要はないが、試験発光の発光時間を短くするようにしてもよい。なお、無人判定手段は、環境照度測定手段の測定した環境照度が、予め定めた一定値以下の照度となって所定時間が経過していることを条件として無人と判定するようにしてもよい。このようにすることにより、より確実に、周囲に人がいないことを判定することができる。
[変形例]
【0043】
上記の実施形態は下記のように変形してもよい。また、下記の変形例は他の1以上の変形例と組み合わせてもよい。
[変形例1]
【0044】
実施例1の変形例として、環境照度により試験を行うタイミングを制御する光警報装置100の例を示す。実施例1では、短い時間で試験発光させることによって、試験発光が目立たないようにするものであるが、この変形例は、より目立たないタイミングで試験発光を行うものである。
【0045】
光警報装置100は、図1,6に記載されているように、実施例1の光警報装置1に、さらに、照度センサ8、増幅回路12、A/Dコンバータ13から成る環境照度測定手段を備えて、環境照度を測定することができるようにする。他の構成は実施例1で説明したとおりである。光警報装置100が置かれている環境の明るさは、照度センサ8によって検出され、増幅回路12で増幅された後にA/Dコンバータ13でデジタル信号に変換されて環境照度の測定値として制御手段14に入力される。そして、制御手段14は予め定めた一定値以上の照度があるときに試験発光を行うようにする。つまり、試験発光を行う「平常時」且つ「定期的(所定周期毎)」という条件に、「一定値以上の環境照度であること」、すなわち周囲が明るいことを試験発光の条件に加える。このようにすることにより、試験発光をより目立たせずに試験を行うことができる。なお、照度センサ8の受光素子が飽和して照度センサ8の応答速度が低下しないように、キセノン管6が発した光が照度センサ8に入射しない構造としておいてもよい。このとき、キセノン管6と照度センサ8の受光部との間に、遮光壁9を設けるようにしてもよい。
[変形例2]
【0046】
実施例1では、警報を報知する場合よりも短い時間で昇圧回路20のコンデンサ24を充電するように制御手段14が制御することにより、キセノン管6で放電させる為の電荷の蓄積を少なくし、平常時且つ定期的に行う試験発光の発光時間を短くしていたが、これに限るものではない。
例えば、図5に示す放電検出手段19に備わる電位検出手段を用いて、充電中のコンデンサ24両端の電圧Vを測定し、その電圧Vが警報を報知するときよりも低い所定値となった場合に、制御手段14がトリガ信号を出力するようにしてもよい。すなわち、電荷量Qは電圧Vとコンデンサ24の静電容量Cとの積となるので、電圧Vが警報を報知するときの値よりも低い予め定めた値のとき、コンデンサ24に蓄積された電荷量は警報を報知するときよりも少なく、このときにキセノン管6で放電させるようにすると警報を報知するときよりも発光時間を短くして試験発光させることができる。
また、例えば、図3における昇圧回路20の出力とキセノン管6の放電電極との間に、キセノン管6を発光させるときにオンする第3のスイッチ素子(図示せず)を設け、この第3のスイッチ素子のオン時間が制御手段14から制御されるようにしてもよい。
つまり、コンデンサ24の充電時間を短くして試験発光する代わりに、第3のスイッチ素子のオン時間を短くするようにする。このとき、試験発光させるには多い電荷がコンデンサ24に蓄積されていたとしても、短い時間だけオンする第3のスイッチ素子によって電荷の供給が断たれるので、コンデンサ24の充電時間を特に短くする必要はない。
[変形例3]
【0047】
実施例2の周辺状況検出手段は、実施例2に示した環境照度測定手段に限るものではなく、周囲に人がいないことを検出し得るものであればよい。例えば、報知領域の人の存在を検出する人感センサを周辺状況検出手段とし、この人感センサが人の存在を検出していないとき、すなわち報知領域に人の存在が検出されないときに、無人判定手段が無人であると判定するようにしてもよい。なお、無人判定手段は、人感センサが人の存在を検出しなくなってから所定時間が経過していることを条件として無人と判定するようにしてもよい。このようにすることにより、より確実に、周囲に人がいないことを判定することができる。
[変形例4]
【0048】
実施例1、2では、キセノン管6の発光を検出する放電検出手段として、試験発光のときに、キセノン管6の発光に伴う放電ノイズ、又は、キセノン管6を発光させる為の電荷を供給する蓄電素子としてのコンデンサ24の試験発光による電荷放出に伴う電位低下、を検出するようにしたが、これに限るものではなく、キセノン管での放電を検出するものであればよい。例えば、昇圧回路20又は電源16からキセノン管6へ流れる電流を検出することによって、キセノン管6での放電を検出するようにしてもよい。また例えば、昇圧回路20又は電源16からキセノン管6へ流れる電流の経路と近接して併走する配線パターンを設け、キセノン管6へ流れる電流に起因してこの配線パターンに生ずる誘導ノイズを検出することによって、キセノン管6での放電を検出するようにしてもよい。また例えば、サーミスタ等の温度検出手段を、キセノン管6に接して又は直近に設け、キセノン管6での放電に伴う発熱による温度上昇を検出することによって、キセノン管6での放電を検出するようにしてもよい。
[変形例5]
【0049】
実施例1、2および変形例では、フラッシュ発光させる発光素子として放電管であるキセノン管を用いて説明したが、これに限るものではなく、煙を通して視認できるだけの強い光でフラッシュ発光できるものであればよい。例えば、発光素子として他の放電管を用いても良く、また高輝度LEDなどの発光素子を用いても良い。
[変形例6]
【0050】
実施例1、2では、平常時に定期的に試験発光を行うものであるが、所定時間間隔が経過した後に、上述した試験発光の条件が揃ったときに試験発光させるようにしてもよいし、所定時刻の後に、上述した試験発光の条件が揃ったときに試験発光させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1、100、101 光警報装置、2 受信機、3 煙感知器、4 感知信号線、5 警報信号線、6 キセノン管(発光素子)、6a トリガ電極、7 ブザー、8 照度センサ、9 遮光壁、10 発光駆動手段、11 ブザー駆動手段、12 増幅回路、13 A/Dコンバータ、14、14a 制御手段、15 送受信手段、16 電源、19 放電検出手段、20 昇圧回路、21 スイッチ素子、22 昇圧トランス、23 ダイオード、24 コンデンサ、30 トリガ手段、31 スイッチ素子、32 トリガトランス、33 充電抵抗、34 トリガコンデンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6