特許第6516511号(P6516511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6516511
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/00 20060101AFI20190513BHJP
   G06F 13/38 20060101ALI20190513BHJP
【FI】
   G06F3/00 A
   G06F13/38 350
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-41186(P2015-41186)
(22)【出願日】2015年3月3日
(65)【公開番号】特開2016-162269(P2016-162269A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2018年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】516177656
【氏名又は名称】センスシングスジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】郷地 学
(72)【発明者】
【氏名】松浦 史和
【審査官】 打出 義尚
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−031501(JP,A)
【文献】 特開2013−050859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/00
G06F 13/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対1通信で用いられる信号線と、
前記信号線に接続される第1デバイスと、
前記信号線との通信的な接続/非接続を選択し、前記信号線と接続した状態において前記第1デバイスと通信を行う第2デバイスと、
外部の第1接続構造と着脱可能に接続される第2接続構造と
を備え、
前記第2接続構造は、
前記信号線に接続されるとともに、前記第1接続構造を介して外部装置に接続される第1接続部と、
所定の第1電源電位に接続される第2接続部と、
前記第2デバイスに接続されるとともに、前記第1接続構造を介して前記第2接続部と接続される第3接続部と
を備え、
前記第2デバイスは、前記第1接続構造が前記第2接続構造に接続されたときの前記第3接続部の電位に応じて、前記信号線通信的に切り離し
前記第1デバイスは、前記第2デバイスが前記信号線通信的に切り離した状態で、前記信号線を介して前記外部装置と通信し、
前記第1接続構造が前記第2接続構造に接続されたときの前記第3接続部の電位が、リセット信号として前記第2デバイスに入力される、電子機器。
【請求項2】
前記第1デバイスによって実行されるプログラムが書き込み可能な記憶部を更に備え、
前記第1デバイスは、前記第2デバイスが前記信号線通信的に切り離した状態で、前記信号線を介して前記外部装置から受け取った前記プログラムを前記記憶部に書き込む、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記記憶部は、自身のアクセスについての有効/無効の入力を受け付け、
前記電子機器は、
前記第1接続構造が接続された状態で前記第1デバイスが前記記憶部から前記プログラムを読み込むときに、前記記憶部へのアクセスを無効にし、所定期間の経過後に、前記記憶部へのアクセスを有効にする、有効/無効設定部を更に備え、
前記第1デバイスは、前記第2デバイスが前記信号線通信的に切り離し、かつ、前記記憶部から前記プログラムを読み込むことができないときに、前記外部装置からの前記プログラムの送信を待つ、請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記第1デバイスと前記外部装置との間の通信速度を、前記第1デバイスと前記第2デバイスとの間の通信速度よりも低く設定する、請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の電子機器。
【請求項5】
前記信号線は所定の基板上に形成されたパターンである、請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記信号線は、USB用の信号線であり、
前記第1デバイスはマスタ/スレーブを選択可能に通信し、
前記第1デバイスおよび前記第2デバイスはそれぞれマスタおよびスレーブとして動作して互いに通信し、
前記第1接続構造が前記第2接続構造に接続された状態で、前記第1デバイスは前記外部装置に対してスレーブとして動作して通信する、請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の電子機器。
【請求項7】
1対1通信で用いられる信号線と、
前記信号線に接続される第1デバイスと、
前記信号線との通信的な接続/非接続を選択し、前記信号線と接続した状態において前記第1デバイスと通信を行う第2デバイスと、
外部の第1接続構造と着脱可能に接続される第2接続構造と
を備え、
前記第2接続構造は、
前記信号線に接続されるとともに、前記第1接続構造を介して外部装置に接続される第1接続部と、
所定の第1電源電位に接続される第2接続部と、
前記第2デバイスに接続されるとともに、前記第1接続構造を介して前記第2接続部と接続される第3接続部と
を備え、
前記第2デバイスは、前記第1接続構造が前記第2接続構造に接続されたときの前記第3接続部の電位に応じて、前記信号線を通信的に切り離し、
前記第1デバイスは、前記第2デバイスが前記信号線を通信的に切り離した状態で、前記信号線を介して前記外部装置と通信し、
前記第2接続構造は、
第1電源電位と異なる第2電源電位に接続される第4接続部と、
前記第1デバイスに接続されるとともに、前記第1接続構造が接続された状態で前記第4接続部に接続される第5接続部と
を更に備え、
前記第1デバイスは、前記第1接続構造が接続されたときの前記第5接続部の電位に応じて、前記信号線を介して前記外部装置と通信する、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関し、特に1対1通信を利用した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から1対1のデバイス間通信が用いられている。このような通信として、例えばUSB(Universal Serial Bus)通信が挙げられる。このUSB通信においては、第1デバイスと第2デバイスとが信号線を介して互いに通信する。なおUSB通信では、第1デバイスおよび第2デバイスの一方がマスタとして動作し、他方がスレーブとして動作する。例えばマスタのデバイスとして、パーソナルコンピュータを採用でき、スレーブのデバイスとして、例えばUSBメモリなどを採用できる。
【0003】
近年、マスタとしてもスレーブとしても動作可能な通信規格として、USB OTG(USB On The Go)が提案されている。例えば第1デバイスはマスタおよびスレーブとして動作可能である。これにより、第1デバイスは、相手方の第2デバイスのマスタ/スレーブに応じて、マスタ/スレーブを選択して動作することができる。したがって、第1デバイスは種々の第2デバイスとUSB通信を行うことができるのである。
【0004】
ところで、第1デバイスは演算処理部と記憶部とを備えており、この演算処理部は、記憶部に記憶されたプログラム(例えばファームウェア)を読み出し、このプログラムに則って動作する。これにより、第1デバイスは第2デバイスに対してマスタとして動作することができる。
【0005】
このプログラムは、例えば製造工程において、外部の書込装置(例えばパーソナルコンピュータ)を用いて記憶部に書き込まれる。この書込装置を第1デバイスに接続すべく、第1デバイスには、第2デバイスと接続するためのUSBポートとは別に、書込装置と接続するためのUSBポートも設けられる。
【0006】
また本願に関連する技術として、特許文献1を掲示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2006−500672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、第2デバイス専用のUSBポートと、書込装置専用のUSBポートとを設けることは、製造コストの観点で好ましくない。
【0009】
また、一つのUSBポートを第1デバイスに設けるべく、この一つのUSBポートにHUB(ハブ)を接続し、このHUBに、書込装置および第2デバイスを接続することが考えられる。しかしながら、このようなHUBは高価であるので、HUBの搭載も製造コストの観点では望ましくない。
【0010】
そこで、本願は、低コストで書込装置とも通信可能な電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
電子機器の第1の態様は、1対1通信で用いられる信号線と、前記信号線に接続される第1デバイスと、前記信号線との通信的な接続/非接続を選択し、前記信号線と接続した状態において前記第1デバイスと通信を行う第2デバイスと、外部の第1接続構造と着脱可能に接続される第2接続構造とを備え、前記第2接続構造は、前記信号線に接続されるとともに、前記第1接続構造を介して外部装置に接続される第1接続部と、所定の第1電源電位に接続される第2接続部と、前記第2デバイスに接続されるとともに、前記第1接続構造を介して前記第2接続部と接続される第3接続部とを備え、前記第2デバイスは、前記第1接続構造が前記第2接続構造に接続されたときの前記第3接続部の電位に応じて、前記信号線通信的に切り離し、前記第1デバイスは、前記第2デバイスが前記信号線通信的に切り離した状態で、前記信号線を介して前記外部装置と通信し、前記第1接続構造が前記第2接続構造に接続されたときの前記第3接続部の電位が、リセット信号として前記第2デバイスに入力される
【0012】
電子機器の第2の態様は、第1の態様にかかる電子機器であって、前記第1デバイスによって実行されるプログラムが書き込み可能な記憶部を更に備え、前記第1デバイスは、前記第2デバイスが前記信号線通信的に切り離した状態で、前記信号線を介して前記外部装置から受け取った前記プログラムを前記記憶部に書き込む。
【0013】
電子機器の第3の態様は、第2の態様にかかる電子機器であって、前記記憶部は、自身のアクセスについての有効/無効の入力を受け付け、前記電子機器は、前記第1接続構造が接続された状態で前記第1デバイスが前記記憶部から前記プログラムを読み込むときに、前記記憶部へのアクセスを無効にし、所定期間の経過後に、前記記憶部へのアクセスを有効にする、有効/無効設定部を更に備え、前記第1デバイスは、前記第2デバイスが前記信号線通信的に切り離し、かつ、前記記憶部から前記プログラムを読み込むことができないときに、前記外部装置からの前記プログラムの送信を待つ。
【0014】
電子機器の第4の態様は、第1から第3のいずれか一つの態様にかかる電子機器であって、前記第1デバイスと前記外部装置との間の通信速度を、前記第1デバイスと前記第2デバイスとの間の通信速度よりも低く設定する。
【0015】
電子機器の第5の態様は、第4の態様にかかる電子機器であって、前記信号線は所定の基板上に形成されたパターンである。
【0016】
電子機器の第6の態様は、第1から第5のいずれか一つの態様にかかる電子機器であって、前記信号線は、USB用の信号線であり、前記第1デバイスはマスタ/スレーブを選択可能に通信し、前記第1デバイスおよび前記第2デバイスはそれぞれマスタおよびスレーブとして動作して互いに通信し、前記第1接続構造が前記第2接続構造に接続された状態で、前記第1デバイスは前記外部装置に対してスレーブとして動作して通信する。
【0017】
電子機器の第7の態様は、1対1通信で用いられる信号線と、前記信号線に接続される第1デバイスと、前記信号線との通信的な接続/非接続を選択し、前記信号線と接続した状態において前記第1デバイスと通信を行う第2デバイスと、外部の第1接続構造と着脱可能に接続される第2接続構造とを備え、前記第2接続構造は、前記信号線に接続されるとともに、前記第1接続構造を介して外部装置に接続される第1接続部と、所定の第1電源電位に接続される第2接続部と、前記第2デバイスに接続されるとともに、前記第1接続構造を介して前記第2接続部と接続される第3接続部とを備え、前記第2デバイスは、前記第1接続構造が前記第2接続構造に接続されたときの前記第3接続部の電位に応じて、前記信号線を通信的に切り離し、前記第1デバイスは、前記第2デバイスが前記信号線を通信的に切り離した状態で、前記信号線を介して前記外部装置と通信し、前記第2接続構造は、第1電源電位と異なる第2電源電位に接続される第4接続部と、前記第1デバイスに接続されるとともに、前記第1接続構造が接続された状態で前記第4接続部に接続される第5接続部とを更に備え、前記第1デバイスは、前記第1接続構造が接続されたときの前記第5接続部の電位に応じて、前記信号線を介して前記外部装置と通信する。
【発明の効果】
【0018】
電子機器の第1および第2の態様によれば、外部装置専用の信号線と、第2デバイス専用の信号線を設ける必要がない。換言すれば、第1デバイスに、外部装置専用の通信ポートと第2デバイス専用の通信ポートとを設ける必要がない。よって製造コストを低減できる。
【0019】
しかも、第1デバイスを、第2デバイスおよび外部装置と接続するために、HUBやスイッチなどを必要としない。よって、製造コストを低減することができる。
【0020】
電子機器の第3の態様によれば、記憶部にプログラムが記憶された状態であっても、記憶部にプログラムを書き込むこと(更新すること)ができる。
【0021】
また、記憶部からのプログラムを読み込むことができないときに、外部装置からプログラムの送信を待つ第1デバイスは既設であるところ、そのような第1デバイスをそのまま流用することができる。よって、記憶部におけるプログラムの更新のために、第1デバイスを開発・変更する必要がない。
【0022】
電子機器の第4の態様によれば、プログラムを高い通信品質で第1デバイスへと送信することができる。
【0023】
電子機器の第5の態様によれば、第1デバイスと第2デバイスとの間の通信速度を高く設定しても、通信品質を確保しやすい。
【0024】
電子機器の第6の態様によれば、外部装置としてマスタとして動作する装置、例えばパーソナルコンピュータを採用することができる。
【0025】
電子機器の第7の態様によれば、第1デバイスと第2デバイスとの電源電圧を異ならせることができる。よって第1デバイスと第2デバイスの設計の自由度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】電子機器の内部構成の一例を概略的に示す図である。
図2】接続構造の構成の一例を概略的に示す図である。
図3】電子機器の動作の一例を示すフローチャートである。
図4】情報の流れを概略的に示す図である。
図5】電子機器の動作の一例を示すフローチャートである。
図6】情報の流れを概略的に示す図である。
図7】電子機器の内部構成の一例を概略的に示す図である。
図8】電子機器の動作の一例を示すフローチャートである。
図9】情報の流れを概略的に示す図である。
図10】情報の流れを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
第1の実施の形態.
図1は電子機器の概略的な構成の一例を示す図である。電子機器1は特に限定されないが、例えばセキュリティシステムに搭載される装置であってもよい。かかる電子機器1には、例えば外部の監視カメラなどが接続され、撮像画像などに対して適宜に画像処理を施してもよい。
【0028】
電子機器1は、第1デバイス(例えば制御部)10と、第2デバイス(例えば内蔵デバイス)20と、接続構造30と、不揮発性の記憶部40と、信号線50とを備えている。制御部10、内蔵デバイス20、接続構造30および記憶部40は例えば所定の基板上に設けられる。この基板上には配線パターンも形成されており、後述のように、各部が電気的に接続される。信号線50も例えば配線パターンで形成される。配線パターンは、例えば導電体(例えば金属)が基板上に積層され、これが所定の形状にエッチングされることによって、形成される。
【0029】
信号線50は1対1通信で用いられる信号線であり、正極側の信号線と負極側の信号線とを有している。信号線50は制御部10と内蔵デバイス20とを相互に接続する。制御部10および内蔵デバイス20は、この信号線50を介して、1対1通信で互いに信号を送受信する。1対1通信としては例えばUSBに準拠した通信を採用できる。以下では、USBに準拠した通信を例に採って電子機器1を説明する。
【0030】
制御部10は例えば半導体チップ(例えばSoC(Silicon on Chip))で形成されており、例えば演算処理部(例えばCPU)を有している。また制御部10は通信ポート11を有しており、この通信ポート11に信号線50が接続される。この通信ポート11は通信インターフェース(例えばUSBインターフェース)を有しており、この通信インターフェースが信号線50との通信を実現する。USBに準拠した通信(以下、USB通信と呼ぶ)においては、周知のように、一方のデバイスがマスタとして動作し、他方のデバイスがスレーブとして動作する。このUSB通信では、主としてマスタからスレーブへの信号の送信によって通信が行われる。言い換えれば、スレーブは主としてマスタからの信号に応答する形で、信号を送信する。
【0031】
本実施の形態では、制御部10はUSB−OTG(USB On-The-Go)に準拠している。即ち、制御部10はマスタおよびスレーブを選択して動作することができる。例えば制御部10は内蔵デバイス20に対してマスタとして動作しつつ、内蔵デバイス20と通信を行う。つまりこの通信では、内蔵デバイス20はスレーブとして動作する。また制御部10は、外部装置の一例たる書込装置60(後述)に対してスレーブとして動作しつつ、書込装置60と通信を行う。つまりこの通信では、書込装置60はマスタとして動作する。
【0032】
記憶部40は例えばROM(Read Only Memory)などであって、この記憶部14には、プログラムが書き込まれている。このプログラムは例えばファームウェアであり、制御部10は、例えば電源投入をトリガとして、このファームウェアを記憶部40から読み込み、このファームウェアに則った動作を行う。例えば制御部10は当該ファームウェアを実行して内蔵デバイス20との通信を行うことができる。
【0033】
内蔵デバイス20は例えば変換部21と内蔵メモリ22とを有している。内蔵メモリ22は例えばSDメモリカードであり、変換部21は信号線50と内蔵メモリ22との間の通信を仲介するインターフェースとして機能する。
【0034】
この内蔵デバイス20は信号線50との通信的な接続/非接続を選択できる。例えば、内蔵デバイス20は信号線50との接続/遮断を選択するスイッチを有し、このスイッチをオン/オフすることで、内蔵デバイス20が信号線50との接続/非接続を選択してもよい。スイッチがオフすることで、内蔵デバイス20は信号線50から見てハイインピーダンス状態を採り、信号線50から内蔵デバイス20が実質的に切り離される。ハイインピーダンス状態は、内蔵デバイス20が信号線50に対して電気的に絶縁された状態と考えることができる。
【0035】
このスイッチには、信号線50とは別の経路で制御信号が入力され、当該スイッチは当該制御信号によって制御される。図1の例示では、変換部21に後述の信号S1が入力されており、例えば、この信号S1を制御信号として用いることができる。
【0036】
あるいは、内蔵デバイス20が信号線50を用いた通信を行わないことで、信号線50に対する通信的な非接続を実現してもよい。例えば信号線50とは別の経路で内蔵デバイス20にリセット信号を入力し、内蔵デバイス20がこのリセット信号に応じてリセット状態(アイドル状態)を維持してもよい。リセット状態では、内蔵デバイス20は信号線50に信号を送信せず、また信号線50からの信号を受信しない。
【0037】
図1の例示では、変換部21に後述の信号S1が入力されており、例えば、この信号S1を上述のリセット信号として入力することができる。変換部21は、リセット信号が入力されている期間において、リセット状態(アイドル状態)を維持する。リセット状態では、変換部21は信号線50に信号を送信せず、信号線50から信号を受信しない。つまり、内蔵デバイス20は信号線50の電位に実質的に影響を与えない。言い換えれば、内蔵デバイス20はハイインピーダンス状態と同様に、実質的に信号線50から切り離される。
【0038】
接続構造30は外部の書込装置60と接続可能であり、この書込装置60を信号線50に接続することができる。書込装置60は記憶部40にファームウェアを書き込むための装置であり、例えば電子機器1を製造する工程において用いられる。
【0039】
例えば書込装置60は入力部を有しており、作業員はこの入力部を介して書込装置60へと入力を行ってもよい。作業員は、この入力部への入力によって、ファームウェアの書き込みの開始を指示する。書込装置60としては、例えばパーソナルコンピュータを採用することができる。このとき、入力部は例えばキーボードまたはマウスなどである。
【0040】
図1の例示では、接続構造30は、外部の専用ケーブル61を介して書込装置60と接続可能である。つまり、接続構造30は専用ケーブル61を信号線50に接続することによって、書込装置60を信号線50に接続する。信号線50は1対1通信で用いられる信号線であるところ、書込装置60が信号線50に接続されるときには、内蔵デバイス20は信号線50に対する通信的な非接続を採用する。つまり、書込装置60が接続構造30に接続されるときには、内蔵デバイス20を実質的に信号線50から実質的に切り離すのである。これにより、1対1通信用の信号線50には、制御部10と書込装置60とが接続されることとなる。
【0041】
また図1の例示では、接続構造30は、専用ケーブル61が接続されたことに起因して、信号S2を制御部10へと入力させる。これにより、制御部10は専用ケーブル61が接続されたこと、ひいては書込装置60が接続されたことを了知できる。
【0042】
図2は接続構造30の具体的な内部構成の一例を概略的に示している。接続構造30は複数の接続部31〜36を備えている。接続部31〜36は例えば接続端子である。専用ケーブル61の一端には、接続構造62が形成されており、この接続構造62は接続部611〜616を備えている。接続部31〜36はそれぞれ接続部621〜622に接続される。接続構造30および接続構造62は、互いに着脱可能に接続するコネクタであってもよい。
【0043】
接続部31は信号線50のうち、一方(例えば正極側)の信号線に接続され、接続部32は他方(例えば負極側)の信号線に接続される。これらの接続部31,32と接続される接続部621,622は、それぞれ専用ケーブル61の信号線を介して、書込装置60に接続される。よって、接続部31,32は接続構造62を介して書込装置60に接続されることとなる。
【0044】
接続部33には第1電源電位(ここでは接地電位)が印加される。接続部34の電位は信号S1として内蔵デバイス20に入力される。また接続部34は例えば抵抗R1を介して第2電源電位(例えば直流電源E1の高電位端)に接続される。ここでは直流電源E1の低電位端は接地される。
【0045】
接続部33,34にそれぞれ接続可能な接続部623,624は、互いに接続されている。よって、接続構造62が接続構造30に接続された状態では、接続部34は接続部33に電気的に接続されることとなり、接続部34には接地電位が印加される。一方で、接続構造62が接続構造30に接続されていない状態では、接続部34には直流電源E1の高電位(直流電源E1の直流電圧)が印加される。
【0046】
以上のように、接続部34の電位(信号S1)は、接続構造62が接続されているか否かに応じて変化する。内蔵デバイス20は、接続構造62が接続されているときの接続部34の電位(例えば接地電位)に応じて、信号線50に対して通信的な非接続を採用する。よって、作業員が接続構造62を接続構造30に接続することによって、言い換えれば、書込装置60を信号線50に接続することによって、内蔵デバイス20が信号線50から実質的に切り離される。したがって、制御部10および書込装置60が信号線50を用いた1対1通信を行うことができる。
【0047】
なお図2の例示では、接続部623は専用ケーブル61の配線を介して書込装置60に接続される。これにより、書込装置60と電子機器1とにおいて共通の接地電位を採用することができる。
【0048】
また図2の例示では、接続部35,36も設けられている。接続部35は例えば抵抗R2を介して第1電源電位(接地電位)に接続される。接続部35の電位は信号S2として制御部10に入力される。接続部36は例えば抵抗R3を介して第2電源電位(例えば直流電源E2の高電位端)に接続される。直流電源E2の低電位端はここでは接地されている。これらの接続部35,36にそれぞれ接続可能な接続部625,626は、互いに接続されている。よって、接続構造62が接続構造30に接続された状態では、接続部35には接地電位が印加されることとなり、接続構造62が接続構造30に接続された状態では、接続部35の電位は、直流電源E1の電圧と抵抗R1,R2の抵抗値によって決まる値を採る。
【0049】
以上のように、接続部35の電位(信号S2)は、接続構造62が接続されているか否かに応じて変化する。これにより、制御部10は書込装置60が接続されているか否かを了知することができる。
【0050】
なお、抵抗R2,R3の両方が設けられる必要はなく、いずれか一方のみが設けられていればよい。また抵抗R1が設けられずに、接続部33と接地電位との間に抵抗が設けられてもよく、あるいは、抵抗R1に加えて、接続部33と接地電位との間に抵抗が設けられてもよい。いずれにおいても、信号S1,S2の電位は、接続構造62が接続されたか否かに応じて変化するからである。
【0051】
制御部10は、書込装置60が接続された状態において、書込装置60に対してスレーブとして動作する。書込装置60は信号線50を介して制御部10と通信する。より具体的には、書込装置60はファームウェアを制御部10へと送信し、制御部10は、受け取ったファームウェアを記憶部40へと書き込む。
【0052】
<通常動作>
図3は、記憶部40にファームウェアが記憶された状態における電子機器1の通常動作の一例を示すフローチャートである。また図4では、電子機器1における情報の流れがブロック矢印で示されている。通常動作においては、書込装置60は接続されていない。まずステップST1にて、ユーザが電源を投入すると、電子機器1の上記の各部に電源が供給される。次にステップST2にて、電源が供給された制御部10は起動動作を行う。起動動作の一つとして、制御部10は記憶部40にアクセスしてファームウェアFW1を読み込む。かかる起動動作の手順は予め設定されており、例えば制御部10の内部に設けられた記憶部(例えばROM)にプログラムとして記憶されている。制御部10はまずこのプログラムを実行して、起動動作を行う。
【0053】
次に、ステップST3にて制御部10はファームウェアFW1に則って動作を行い、内蔵デバイス20と情報D1の送受信を行う。
【0054】
<ファームウェアの書き込み動作>
図5は、記憶部40にファームウェアが記憶されていない状態での、ファームウェアの書き込み動作の一例を示すフローチャートである。この動作は、例えば電子機器1の製造工程において行われる。
【0055】
まずステップST11にて、作業員が書込装置60を電子機器1に接続する。より具体的には、書込装置60に接続された専用ケーブル61の接続構造62を、接続構造30に接続する。
【0056】
次にステップST12にて、作業員は電源を投入する。例えば電子機器1に、電源投入のスイッチを設け、作業員がこれを操作することで、電源を投入する。これにより、電子機器1の上記の各部に電源が供給される。
【0057】
内蔵デバイス20には、書込装置60が接続されたときの信号S1が入力され、制御部10には、書込装置60が接続されたときの信号S2が入力される。信号S2に応じて、ステップST12において、内蔵デバイス20がハイインピーダンス状態になる。これにより、内蔵デバイス20が信号線50から実質的に切り離される。
【0058】
次にステップST14にて、電源が供給された制御部10は上述のように、起動動作を行う。起動動作の一つとして、制御部10は記憶部40にアクセスして、ファームウェアFW1を読み込もうとする。しかるに、ここでは記憶部40には未だファームウェアFW1が記憶されていなので、ファームウェアFW1が読み込めない。図6の例示では、ファームウェアFW1を読み込めないことが、「×」付のブロック矢印で示されている。
【0059】
なおステップST13,ST14の実行順序は逆でもよく、ステップST13,ST14が互いに並行して実行されてもよい。
【0060】
制御部10は、記憶部40からファームウェアFW1を読み込むことができず、かつ、書込装置60が接続されたときの信号S2を受け取っているので、ステップST15において、書込装置60に対してスレーブとして動作する。制御部10と書込装置60とは互いに通信設定を行って、制御部10および書込装置60がそれぞれスレーブおよびマスタとして動作する。
【0061】
次にステップST16にて、例えば作業員が書込装置60へとファームウェアの書き込みの指示を入力する。これにより、書込装置60は制御部10へとファームウェアFW1を送信し、制御部10は受け取ったファームウェアFW1を記憶部40へと書き込む。
【0062】
以上のように、本電子機器1によれば、通信ポート11は、書込装置60および内蔵デバイス20の両方と接続されて、その両方と選択的に通信を行うことができる。よって、書込装置60専用の通信ポートと、内蔵デバイス20専用の通信ポートとを設ける場合に比べて、製造コストを低減できる。
【0063】
また本実施の形態とは異なって、接続構造30の替わりにHUBまたはスイッチを設けることも考えられるものの、これらは製造コストの増大を招く。一方で、本接続構造30は、スイッチ等のアクティブ素子を有する必要がなく、安価である。
【0064】
なお上述の例では、専用ケーブル61を用いて書込装置60を信号線50に接続した。しかるに専用ケーブル61は必須ではない。例えばフィクスチャを用いてもよい。フィクスチャは、例えば、電子機器1を支持する台と、当該台に形成された接続構造62とを備えている。このとき、接続部621〜622は例えば導電性のピンによって形成される。書込装置60は上述のとおり接続構造62に接続されている。
【0065】
電子機器1側の接続部31〜36は、例えばパッドとして所定の絶縁基板上に形成される。接続部621〜626たるピンが、それぞれ接続部31〜36たるパッドに当接することで、これらが適宜に電気的に接続される。これによっても、書込装置60を信号線50に接続することができる。さらに、信号S1,S2をそれぞれ内蔵デバイス20および制御部10へと印加できる。
【0066】
また、上述の例では、内蔵デバイス20および制御部10のそれぞれに信号S1,S2が入力された。しかるに、例えば制御部10と内蔵デバイス20とが同程度の電源電圧によって動作する場合には、共通の信号が入力されてもよい。他方、異なる信号S1,S2をそれぞれ内蔵デバイス20および制御部10へと入力する場合には、異なる電源電圧で動作する内蔵デバイス20および制御部10を採用することができる。よって制御部10と内蔵デバイス20の設計の自由度を向上することができる。
【0067】
第2の実施の形態.
第1の実施の形態では、ファームウェアFW1が記憶部40に未だ書き込まれていないときに、ファームウェアFW1を書き込んだ。第2の実施の形態では、ファームウェアFW1の少なくとも一部が記憶部40に書き込まれた状態においても、ファームウェアFW1を記憶部40に書き込むことができる電子機器1を提供することを企図する。
【0068】
図7は電子機器1の構成の一例を概略的に示している。図7の電子機器1は、図1の電子機器1に比して、有効/無効設定部70を更に備えている。
【0069】
有効/無効設定部70は記憶部40へとイネーブル信号S3を出力する。イネーブル信号S3は、記憶部40へのアクセスが有効か無効かを示す信号であり、例えばイネーブル信号S3が非活性(例えば低電位)を採るときに、記憶部40は自身へのアクセスを無効にする。よってこの状態においては、制御部10は記憶部40からファームウェアFW1を読み込むことができない。
【0070】
有効/無効設定部70は、接続構造30からの信号S1を入力する。これにより、有効/無効設定部70は書込装置60が接続されているか否かを判別できる。また有効/無効設定部70は例えば電源の供給を受けており、ユーザによる電源投入を認識できる。
【0071】
有効/無効設定部70は、書込装置60が接続された状態において電源が投入されると、記憶部40へのアクセスを無効にするイネーブル信号S3を、所定期間に亘って出力する。有効/無効設定部70は計時部(例えばタイマ回路)を有しており、所定期間はこの計時部によって計時されればよい。所定期間は、例えば予め設定されていればよく、例えば数秒よりも小さい値を採用できる。
【0072】
図8は電子機器1の動作の一例を示すフローチャートである。ステップST21において、作業員は、接続構造62を接続構造30に接続して、書込装置60を信号線50に接続させる。次にステップST22において、作業員は電子機器1に電源を投入する。このとき、接続構造30は、書込装置60が接続されたときの信号S1,S2を制御部10、内蔵デバイス20および有効/無効設定部70へと適宜に出力することとなる。
【0073】
有効/無効設定部70は、電源が投入され、かつ、書込装置60が接続されたときの信号S1を受け取っているので、ステップST23において、記憶部40を無効にするイネーブル信号S3を所定期間に亘って出力する。図9では、イネーブル信号S3は非活性である。この所定期間は後述するステップST27までの期間であり、例えば予め設定される。
【0074】
ステップST23,ST24の実行順序は互いに逆であってもよく、ステップST23,ST24が互いに並行して実行されてもよい。
【0075】
一方で制御部10は、ステップST25において、電源投入に応答して、記憶部40へのアクセスを開始する。これは上述のようにファームウェアFW1の読み出しを行うためである。しかるに、有効/無効設定部70によって記憶部40へのアクセスが無効になっているので、図9に示すように、制御部10はファームウェアFW1の読み込みを行うことができない。ファームウェアFW1を読み込めず、かつ、書込装置60が接続されているので、制御部10はファームウェアFW1を書き込むべく、書込装置60に対してスレーブとして通信を行い、ファームウェアFW1の送信を待つ。
【0076】
なおステップST25は記憶部40へのアクセスが無効になった状態で実行されればよく、この限りにおいて、ステップST23〜ST25の実行順序は適宜に変更でき、またステップST23〜ST25が互いに並行に実行されてもよい。
【0077】
ステップST24から所定期間が過経したステップST27において、有効/無効設定部70は、記憶部40へのアクセスを有効にするイネーブル信号S3を出力する。これにより、記憶部40へのアクセスが有効になる。図10では、イネーブル信号S3が活性している。
【0078】
次にステップST28において、作業員が書込装置60へとファームウェアFW1の書き込みの指示を入力する。書込装置60は作業員の入力に基づいて、図10に示すように、ファームウェアFW1を制御部10へと送信し、制御部10がこのファームウェアFW1を記憶部40へと書き込む。
【0079】
以上のように、本電子機器1によれば、たとえ記憶部40にファームウェアFW1の少なくとも一部が記憶されていた場合でも、この記憶部40にファームウェアFW1を書き込むことができる。よって、例えばファームウェアFW1の一部が欠損して書き込まれた場合であっても、この記憶部40に再度ファームウェアFW1を書き込むことができる。
【0080】
かかる書き込みは例えば検査工程において実行される。例えば検査工程において、適切にファームウェアFW1が記憶部40に記憶されていないと判断したときに、本動作によって、記憶部40にファームウェアFW1を書き直すことができるのである。
【0081】
そして本実施の形態によれば、次の場合に比べて製造コストを低減できる。即ち、ファームウェアFW1が欠損して書き込まれた記憶部40を破棄し、ファームウェアFW1が書き込まれていない記憶部40を取り付けた上で、この記憶部40にファームウェアFW1を書き込む場合に比べて、製造コストを低減できるのである。
【0082】
なお制御部10は、記憶部40からファームウェアFW1の少なくとも一部を読み込むことができたときには、ファームウェアFW1の書き込みを行わないように設計されている。かかる制御部10は既設の制御部であり、本電子機器1にこの既設の制御部10を流用することができる。逆に言えば、このような制御部10を採用しても、記憶部40にファームウェアを書き直すことができるのである。そして既設の制御部10を採用すれば、制御部10を開発・変更するコストを回避できる。
【0083】
第3の実施の形態.
第3の実施の形態では転送速度について述べる。例えばUSBに準拠した通信では、例えば高速(High Speed)と、高速よりも遅い全速(Full Speed)と、全速よりも遅い低速(Low Speed)とを選択的に採用することができる。
【0084】
そこで、制御部10と書込装置60との間の通信速度を、制御部10と内蔵デバイス20との間の通信速度よりも低く設定する。例えば制御部10と書込装置60との通信速度として低速を採用し、制御部10と内蔵デバイス20との間の通信速度として高速または全速を採用する。
【0085】
これにより、高速に対応しない安価な専用ケーブル61またはフィクスチャを採用しても、適切な通信品質でファームウェアFW1を制御部10へと送信することができる。
【0086】
また通常通信で用いる制御部10と内蔵デバイス20との間では、比較的に高い通信速度で通信を行う。これにより、電子機器1の処理速度を向上することができ、製品の能力を向上することができる。
【0087】
また、信号線50が例えば配線パターンとして形成される場合には、比較的に高い通信速度で通信を行っても通信品質を確保することができる。よって、信号線50は配線パターンとして形成されることが望ましい。
【0088】
上述の各実施の形態は、互いに阻害しない限り、相互に組み合わせることができる。
【0089】
以上のように、電子機器1は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例えばUSB通信に替えて、SATA(Serial ATA)に準拠した通信を採用することもできる。また、上述した各種実施の形態は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0090】
10 制御部
20 内蔵デバイス
30 接続構造
31〜36 接続部
40 記憶部
50 信号線
60 書込装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10