(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6516530
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】生体情報モニター
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20190513BHJP
【FI】
A61B5/00 102E
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-68762(P2015-68762)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-187439(P2016-187439A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2018年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】副島 良太
【審査官】
▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−067281(JP,A)
【文献】
特開2015−016216(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0053663(US,A1)
【文献】
特開2014−176498(JP,A)
【文献】
特開2008−212539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/22
G06Q 50/22
G16H 10/00−80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラーム処理を含む生体情報のモニタリングの中断操作を行うための中断操作部と、
前記中断操作部が中断操作されたときに、前記生体情報のモニタリングを中断する制御部と、
を具備し、
前記制御部は、モニタリング対象である信号の入力の有無に基づいて、中断した前記モニタリングの再開を制御する、
生体情報モニター。
【請求項2】
アラーム処理を含む生体情報のモニタリングの中断操作を行うための中断操作部と、
前記中断操作部の中断操作に応じて、前記生体情報のモニタリングを中断する制御部と、
を具備し、
前記制御部は、前記中断操作の有無と、モニタリング対象である信号の入力の有無と、に基づいて、前記モニタリングの中断を制御する、
生体情報モニター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報モニターに関する。
【背景技術】
【0002】
生体情報モニターは、心電図、血圧及び酸素飽和度などの生体情報を計測し、その計測値及び波形をディスプレイに一括表示することができる。生体情報モニターの例としては、病室などのベッドサイドに設置して使用されるベッドサイドモニターやナースステーションなどに設置して使用されるセントラルモニターなどがある。
【0003】
生体情報モニターに表示された計測値及び波形を見ることで、医療従事者(医師及び看護師など)は、患者の容体を把握することができる。また、生体情報モニターは一般に、計測値の異常などが生じたときにアラーム音などにより異常を通知するアラーム機能を有するため、医療従事者は、患者の異常を即座に知ることができる。
【0004】
特許文献1には、モニタリングの中断機能を備えた生体情報モニターが開示されている。この生体情報モニターは、生体情報をモニタリングしている患者が検査などで一時的に離床する場合には、不要なデータの取り込みや、誤アラームを防ぐため、モニタリングを中断するようになっている。特許文献1に開示された生体情報モニターは、患者が戻ってきたのにもかかわらず、モニタリングを再開するのを忘れ、患者の急変を見逃すことがないようにタイマー機能を備えている。すなわち、決められた時間までにモニターが再開しなかった場合は、このタイマー機能によって喚起音を鳴らすようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5290108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、モニタリングの中断機能はそもそも、患者が一時的に生体情報モニターから離れる間にモニタリングを中断するという機能であるのにもかかわらず、特許文献1のようにタイマーを用いた場合には、予定の時間になっても患者が戻らないときは、喚起音が鳴ってしまい、中断時間を延長するという煩わしい操作をしなくてはならない欠点がある。また、患者が予定の時間よりも早く戻ってきてかつモニタリングの再開を忘れてしまうと、喚起音が鳴るまでの間はモニタリングされていないというリスクが発生する欠点がある。
【0007】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、本来の生体情報のモニタリング機能を損なうことのない中断処理を行うことができる、生体情報モニターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の生体情報モニターの一つの態様は、
アラーム処理を含む生体情報のモニタリングの中断操作を行うための中断操作部と、
前記中断操作部が中断操作されたときに、前記生体情報のモニタリングを中断する制御部と、
を具備し、
前記制御部は、モニタリング対象であ
る信号の入力の有無に基づいて、中断した前記モニタリングの再開を制御する。
【0009】
本発明の生体情報モニターの一つの態様は、
アラーム処理を含む生体情報のモニタリングの中断操作を行うための中断操作部と、
前記中断操作部の中断操作に応じて、前記生体情報のモニタリングを中断する制御部と、
を具備し、
前記制御部は、前記中断操作の有無と、モニタリング対象であ
る信号の入力の有無と、に基づいて、前記モニタリングの中断を制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、本来の生体情報のモニタリング機能を損なうことのない中断処理を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係る生体情報モニターの構成を示すブロック図
【
図3】実施の形態の中断処理の説明に供するフローチャート
【
図4】従来の装置構成を用いた場合における、モニタリングしている患者に異常が生じた状況下での、中断操作とアラームとの関係を示す図
【
図5】他の実施の形態の中断処理の説明に供するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態の生体情報モニター100の構成を示すブロック図である。生体情報モニター100は、コネクタ部101を有する。コネクタ部101は、患者に装着された生体情報検出部を生体情報モニター100に接続するためのコネクタである。コネクタ部101には生体情報測定装置群110が接続される。生体情報測定装置群110には、心電図を検出するための心電電極111、血圧を検出するための血圧測定用カフ112、体温を検出するための体温センサ113、SpO
2を検出するためのSpO
2センサ114、及び心拍出量を検出するための心拍出量センサ115等の生体情報検出部などが含まれる。コネクタ部101は、生体情報測定装置群110と制御部102との間のインタフェースとして機能する。
【0014】
制御部102は、記憶部103に記憶されたプログラムを実行することで、生体情報モニター100の全体の制御、及び、所定の計測処理を実行する。この計測処理によって、制御部102は、コネクタ部101に接続された生体情報測定装置群110を用いて患者の生体情報を計測する。なお、上記生体情報測定装置群110を用いた各種生体情報の計測方法については従来周知のものを適用可能であるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0015】
ディスプレイ104は、制御部102の計測処理によって得られた生体情報を、計測値又は波形の形式で表示する。ディスプレイ104は、例えばタッチパネル付き液晶表示器であり、生体情報を表示する表示機能を有するだけでなく、操作者による入力操作を受け付ける入力部としての機能も有する。具体的には、ディスプレイ104は、操作者によるタッチ操作に従って、ディスプレイ104の表示形式や生体情報モニター100のモード変更などを行うことができる。
【0016】
さらに、生体情報モニター100は操作ボタン120を有する。操作ボタン120は、
図2に示すように、生体情報モニター100の前面のディスプレイ104の近傍に設けられている。なお、
図2は、生体情報モニター100を前面方向から見た外観図である。生体情報モニター100の筐体上部には、アラームインジケータ105が設けられている。アラームインジケータ105は、制御部102(
図1)によって生体情報に異常が生じたと検知されたときに例えば赤色に発光するようになっている。
【0017】
操作ボタン120は、複数のボタンにより構成されている。操作ボタン120としては、例えば電源スイッチ121や、測定開始/停止ボタン122、データ記録ボタン123、アラーム音停止ボタン124などが含まれる。
【0018】
本実施の形態の場合、操作ボタン120の一つとして、中断ボタン125が設けられている。中断ボタン125が押圧操作されると、生体情報モニター100は、生体情報のモニタリングを中断する。
【0019】
ここで、本実施の形態の生体情報モニター100におけるモニタリングの中断とは、制御部102による計測処理の中断、ディスプレイ104への生体情報の表示の中断、アラームの中断、及び又は、生体情報の記録の中断を意味する。
【0020】
本実施の形態においては、ユーザーによってモニタリングの中断操作が行われた場合でも、制御部102は、コネクタ部101への各生体情報の入力の監視(センシング)は中断せずに行うようになっている。そして、制御部102は、中断ボタン125が押圧操作された後に、いずれかの生体情報が入力されたことを検知すると、モニタリング処理を再開するようになっている。
【0021】
生体情報モニター100は、通信部106を介して他の生体情報モニターと通信することができる。具体的には、生体情報モニター100は、取得した生体情報や自装置の状態などを通信部106を介してセントラルモニターなどに送信可能である。また、セントラルモニターからの制御信号を通信部106を介して入力可能である。よって、生体情報モニター100の中断処理は、セントラルモニターによる中断制御信号を入力することで行うこともできる。
【0022】
図3に、本実施の形態による中断処理の処理手順を示す。制御部102は、ステップS0で処理を開始すると、ステップS1で通常のモニタリング処理を行い、続くステップS2で中断操作が有ったか否か判断する。具体的には、制御部102は、中断ボタン125が押圧操作されたか或いはセントラルモニターから中断制御信号が入力されたかを検知することで、中断操作が有ったか否か判断する。中断操作が無いと判断した場合(ステップS2;NO)、ステップS1に戻って通常のモニタリング処理を続行する。
【0023】
これに対して、制御部102は中断操作が有ったと判断した場合(ステップS2;YES)、ステップS3に移って中断処理を行う。具体的には、上述したように、生体情報の計測処理の中断、ディスプレイ104への生体情報の表示の中断、アラームの中断、及び又は、生体情報の記録の中断を行う。
【0024】
次に、制御部102は、ステップS4において、コネクタ部101にいずれかの生体情報の入力が有るか否か判断する。制御部102は、いずれの生体情報の入力も無いと判断した場合(ステップS4;NO)、ステップS3に戻って中断処理を続行する。
【0025】
これに対して、制御部102は、いずれかの生体情報が入力されていると判断した場合(ステップS4;YES)、ステップS5に移ってモニタリングの再開処理を行って、ステップS1に移る。
【0026】
本実施の形態によれば、生体情報測定装置群110からのモニタリング対象である生体情報の信号の入力の有無に基づいて、中断されたモニタリングの再開を制御するようにしたことにより、患者が生体情報モニターに戻って生体情報測定装置群110のいずれかを装着し次第、自動的にモニタリングを再開できるようになり、この結果、本来の生体情報のモニタリング機能を損なうことのない中断処理を行うことができるようになる。
【0027】
つまり、本実施の形態の生体情報モニター100においては、患者が戻る予定時間を推測してモニタリングの中断時間を設定しなくても、患者が離床するときにモニタリングを中断するだけで、患者が戻り次第、自動的にモニタリングを再開できる。また、患者が予定時間に戻らなくても、中断時間を延長する手間を省くことができ、さらに、予定時間よりも早く戻ってきたときに、再開を忘れ一時的にモニタリングされないというリスクを解消できる。
【0028】
図4は、従来の装置構成を用いた場合における、モニタリングしている患者に異常が生じた状況下での、中断操作とアラームとの関係を示す。ケース1は、ベッドサイドモニター及びセントラルモニターの両方で中断操作が行われた場合であり、この場合にはベッドサイドモニター及びセントラルモニターでアラームが出力されない。ケース2は、ベッドサイドモニターで中断操作が行われ、セントラルモニターで中断操作が行われなかった場合であり、この場合にはベッドサイドモニターではアラームが出力されず、セントラルモニターではアラームが出力される。ケース3は、ベッドサイドモニターで中断操作が行われず、セントラルモニターで中断操作が行われた場合であり、この場合にはベッドサイドモニターではアラームが出力され、セントラルモニターではアラームが出力されない。ケース4は、ベッドサイドモニター及びセントラルモニターの両方で中断操作が行われない場合であり、この場合にはベッドサイドモニター及びセントラルモニターでアラームが出力される。
【0029】
つまり、ケース1は、例えば患者が離床してベッドサイドモニターとセントラルモニターの両方でモニタリングを中断した場合であり、ケース2は、例えば患者が離床した際ベッドサイドモニターでのみモニタリングを中断した場合であり、ケース3は、例えば患者が戻ってベッドサイドモニターでのみモニタリングを再開し、セントラルモニターで再開を忘れた場合であり、ケース4は、例えば患者が離床していない場合または患者が戻ってベッドサイドモニターとセントラルモニターの両方でモニタリングを再開している場合である。
【0030】
一番問題となるのは、ケース3の場合である。ケース3の場合には、患者の容体が悪くなったにもかかわらず、それがセントラルモニターで出力されないため、医療従事者が患者の下に急行することができなくなってしまう。このように、ベッドサイドモニターとセントラルモニターにおいて、独自に中断操作を行うことができるシステムを採用した場合には、容体が悪くなった患者への対応が遅れるおそれがある。しかし、中断操作されたセントラルモニターにモニタリング対象である生体情報の信号が入力されたときに、セントラルモニターのモニタリングを再開するようにすれば、ケース3のような不都合を回避できる。本発明は、セントラルモニターに適用した場合にも大きな効果を得ることができる。つまり、本発明の生体情報モニターにはセントラルモニターも含まれる。
【0031】
因みに、従来は、生体情報モニター(ベッドサイドモニター)で患者がモニタリングを行っているにもかかわらず、セントラルモニターで誤ってモニタリングを中断してしまうこともあった。実施の形態の生体情報モニター100を用いれば、生体情報が入力されると自動的にモニタリングが再開されるので、もし誤ってモニタリングの中断操作を行ってしまっても、生体情報が入力されている限りモニタリングは再開される。よって、誤った中断操作によってモニタリングが中断されるといったリスクを回避できる。
【0032】
なお上述の実施の形態では、
図3の処理を行うことで、中断されたモニタリング機能の再開を制御した場合について述べたが、
図5の処理を行うことで、中断操作の有無と、生体情報測定装置からの信号の入力の有無と、に基づいて、モニタリング機能の中断を制御するようにしてもよい。具体的には、中断操作が有り(ステップS2;YES)、かつ、いずれの生体情報の入力も無い場合(ステップS4;NO)にのみ中断処理を行うようにする。換言すれば、中断操作されたとしても、いずれかの生体情報が入力されている場合(ステップS4;YES)には、中断処理を行わないようにする。このようにすれば、ユーザーによって誤ってモニタリングの中断操作が行われた場合でも、中断操作を無効にすることができるようになる。
【0033】
ここで、生体情報モニター100においては、生体情報測定装置群110の意図しない電極外れ(コネクタ外れといってもよい)のことなども想定して、生体情報測定装置群110からの生体情報の入力の有無のみによってモニタリングの中断を全て自動的に制御することはしないようにしている。つまり、生体情報測定装置群110から生体情報の入力が無い場合に、自動的に中断制御を行ってしまうと、意図しない電極外れが原因となっているときにモニタリングが中断されてしまい不都合である。本発明は、このような点を見据えた上で、中断の開始は中断操作部によって行い、中断の再開のみを生体情報測定装置群110から生体情報の入力に基づいて行うようになっている。
【0034】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、モニタリングの中断機能を有する生体情報モニターに広く適用できる。
【符号の説明】
【0036】
100 生体情報モニター
101 コネクタ部
102 制御部
103 記憶部
104 ディスプレイ
105 アラームインジケータ
106 通信部
110 生体情報測定装置群
125 中断ボタン