特許第6516563号(P6516563)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6516563
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】シューズアッパーの編成方法
(51)【国際特許分類】
   A43B 23/02 20060101AFI20190513BHJP
   D04B 1/22 20060101ALI20190513BHJP
   D04B 1/18 20060101ALI20190513BHJP
【FI】
   A43B23/02 109
   D04B1/22
   D04B1/18
   A43B23/02 101B
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-106884(P2015-106884)
(22)【出願日】2015年5月26日
(65)【公開番号】特開2016-220713(P2016-220713A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(72)【発明者】
【氏名】寺井 健太
(72)【発明者】
【氏名】島崎 宜紀
【審査官】 村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−219421(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/078623(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/129068(WO,A1)
【文献】 特開昭56−037302(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0137434(US,A1)
【文献】 国際公開第2008/136186(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0115284(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 23/02
D04B 1/18
D04B 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも前後の針床を備える横編機を用いて、爪先側の第一筒部と、履き口側の第二筒部、及び第一筒部と第二筒部間に配置される踵部を含む中間部を備えたシューズアッパーの編成方法において、
第一筒部または第二筒部を編成した後、中間部が円周方向に並びタンとなる第一編地部とタン以外の第二編地部により筒状となり、該第一編地部と第二編地部のウェールが直交する様に、
第一編地部の編成後に第二編地部を編成、または第二編地部の編成後に第一編地部を編成する事で第一編地部の始端または終端と、第二編地部の第一編地部側の側端部を接続させると共に、第一編地部の側端部に後続して編まれる第一筒部または第二筒部を接続する為の増し目を形成することを特徴とするシューズアッパーの編成方法。
【請求項2】
前記中間部の編成では、第一編地部は、前記筒部に隣接する前後針床の空針で編み出しを行い、該編み出しを分岐させる様に、前後針床それぞれの編針に異なる編糸を給糸しながら左右往復編成を行うと共に、前記筒部側に移動させて第一筒部または第二筒部の終端と接続し、且つ、第二筒部または第一筒部を接続する為の増し目を編地端部に形成する工程と、
第二編地部は、第一編地部と接合しない前記筒部の編目列のウェール方向に続け、前後針床の境界を折り返し箇所としてC字状で前後交互に編成すると共に、第一編地部側の編地端部の編目を第一編地部の終端編目と接続する工程を備えることを特徴とする請求項1に記載のシューズアッパーの編成方法。
【請求項3】
前記中間部は、前後針床を用いて第一筒部を袋状に編成した後に行われ、
第二編地部は、該第一筒部の終端編目の一部に対して編幅の外側に向けて移動させ、前後針床の境界を折り返し箇所としてC字状で前後交互に編成すると共に、第一編地部側に第一編地部と接続する為の増し目を形成する工程と、
第一編地部は、前記増し目に続けて編成した後、前後針床それぞれの編針に異なる編糸を給糸しながら左右往復編成すると共に、第一編地部を前記第一筒部の残る終端編目に接合する様に移動する工程と、
前後針床のそれぞれに係止する第一編地部の終端編目列同士を伏目処理する工程を備えることを特徴とする請求項1に記載のシューズアッパーの編成方法。
【請求項4】
前記中間部の第一編地部の編地の編成では、増やしまたは減らし処理で成型することを特徴とする請求項または請求項3に記載のシューズアッパーの編成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横編機におけるシューズアッパーの編成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ランニング等で使用されるスポーツシューズに、横編機を用いて編成したシューズアッパーが使われている。例えば特許文献1は、足底は別に縫合するアッパーであるが、平面展開された状態のカバー部を一枚の編地で編成し、更にタンも一体に編成している。ここに示すタンは、着用者の足甲に当てがわれフィット性を向上させる部材である。特許文献1では、一つの針床でカバー部の左側部と右側部、およびタンを編幅方向に並べた状態で編成している。(特許文献1の図36A〜G等を参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第8621891号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の編成ではタンを一体に形成できるが、タンが爪先側の一部で繋がっているのみで、装着者がランニングする場合などには、重なっているカバーとタンがズレてしまいフィット感が下がってしまう。フィット感を下げない様にするには、タンがカバーとズレない様に一体化するのが最も良いが、爪先や足首が大きく折れ曲がる状態では、足甲が突っ張る傾向となる。
【0005】
本発明の目的は、横編機を用いてタンを一体化したシューズアッパーを無縫製で編成すると共に、アッパーに対してタンの編成方向を変え、編目特性により爪先と踵を結ぶ方向に高い伸縮性を有するシューズアッパーの編成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
少なくとも前後の針床を備える横編機を用いて、爪先側の第一筒部と、履き口側の第二筒部、及び第一筒部と第二筒部間に配置される踵部を含む中間部を備えたシューズアッパーの編成方法において、第一筒部または第二筒部を編成した後、中間部が円周方向に並びタンとなる第一編地部とタン以外の第二編地部により筒状となり、該第一編地部と第二編地部のウェールが直交する様に、第一編地部の編成後に第二編地部を編成、または第二編地部の編成後に第一編地部を編成する事で第一編地部の始端または終端と、第二編地部の第一編地部側の側端部を接続させると共に、第一編地部の側端部に後続して編まれる第一筒部または第二筒部を接続する為の増し目を形成することを特徴とする。
【0007】
前記中間部の編成では、第一編地部は、前記筒部に隣接する前後針床の空針で編み出しを行い、該編み出しを分岐させる様に、前後針床それぞれの編針に異なる編糸を給糸しながら左右往復編成を行うと共に、前記筒部側に移動させて第一筒部または第二筒部の終端と接続し、且つ、第二筒部または第一筒部を接続する為の増し目を編地端部に形成する工程と、第二編地部は、第一編地部と接合しない前記筒部の編目列のウェール方向に続け、前後針床の境界を折り返し箇所としてC字状で前後交互に編成すると共に、第一編地部側の編地端部の編目を第一編地部の終端編目と接続する工程を備えることを特徴とする。
【0008】
前記中間部は、前後針床を用いて第一筒部を袋状に編成した後に行われ、第二編地部は、該第一筒部の終端編目の一部に対して編幅の外側に向けて移動させ、前後針床の境界を折り返し箇所としてC字状で前後交互に編成すると共に、第一編地部側に第一編地部と接続する為の増し目を形成する工程と、第一編地部は、前記増し目に続けて編成した後、前後針床それぞれの編針に異なる編糸を給糸しながら左右往復編成すると共に、第一編地部を前記第一筒部の残る終端編目に接合する様に移動する工程と、前後針床のそれぞれに係止する第一編地部の終端編目列同士を伏目処理する工程を備えることを特徴とする。
【0009】
前記中間部の第一編地部の編地の編成では、増やしまたは減らし処理で成型することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシューズアッパーの編成方法によれば、タンとなる領域の編目のウェールをその領域に隣接するタン以外の領域の編目のウェールと直交させることができ、伸縮方向や程度について他の領域と差別化が図れる。
【0011】
本発明の編成方法によれば、形成されるタンの左右中央部が編み出しにより形成されており、綺麗に仕上がる。
【0012】
本発明の編成方法によれば、形成されるタンの左右中央部が伏目処理により接合するため、伏目処理の手法を変更する事で伸縮の調整が容易となる。
【0013】
本発明の編成方法によれば、アッパーの足挿入部分が緩やかな円弧状に形成する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明であるシューズアッパーを示す概略図である。
図2】本発明の実施形態1のシューズアッパーの編成概略図である。
図3】本発明の実施形態1の中間部の編成工程図である。
図4】本発明の実施形態2のシューズアッパーの編成概略図である。
図5】本発明の実施形態3のシューズアッパーの編成概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のシューズアッパーおよびその編成方法の実施形態を図に基づいて説明する。図1は本発明であるシューズアッパー1を示す概略図である。使用する編糸は、タンの箇所には弱弾性糸のポリウレタン糸を用い、1x1リブ組織で形成されるその箇所には、更に強弾性糸となるゴム糸をインレイ編成する。また、タン以外の箇所には、非弾性糸の熱融着糸を用いる。シューズアッパー1は、爪先から第一筒部3と中間部6、更には踵部5を経由して履き口となる第二筒部4に向けて編目のウェールが連続している。中間部6の一部であるタンとなる第一編地部7が、中間部6のタン以外に該当する第二編地部8との境界で編目のウェールが直交しており、筒径方向にそのウェールが向いている。なお、第二編地部8では、筒丈方向にウェールが向いている。
【0016】
後述する各実施形態では説明の都合上、図示はしないが、シューズアッパーの組織としては1x1リブ組織をベース組織として編成し、その1x1リブ組織に対してゴム糸を挿入している。例えば図3で、公知のインレイ編成となるその編成を示すと、天竺組織で示す状態から1目置きに対向する針床の上部に目移しし、1x1リブ組織を形成してその状態でニット編成を行う。更にその配置で、別の給糸口を用いてゴム糸を前後に配置した編目間にミス編成で配置する事を交互に繰り返す。
〈実施形態1〉
【0017】
図2は、本発明の実施形態1のシューズアッパーの編成概略図である。爪先側となる第一筒部3を袋状に形成するにあたり、爪先で編み出しを行う。編み出し方法は多数存在し、本実施形態においても限定はされないが、爪先を立体的な形状にするには、特許5330233号などの編成が好ましい。編み出しに続いて、1つの給糸口を周回させながら第一筒部3を筒状に編成する。タンに至るまでの筒状編成を完了すれば、続いて中間部6の編成を行う。中間部6は、タン以外に該当する第二編地部8とタンとなる第一編地部7により構成されているが、編成方法については詳細を後述する。なお、図2、4、5、に示す編成概略図において、外枠として示す矩形状の点線は、図における各端部等の位置関係を示す為の補助線である。
【0018】
中間部6の編成後、踵部5の編成を行う。踵部5の編成方法についても多数存在するが、本実施形態では踵の形状にフィットし易い編成としている。具体的には、前後針床を用いてC字状の編成を行いながら引き返す位置を順次ずらして行い、編幅を順次増やして編成した後、編地端部側の編針を順次編成から外して不作用状態としていく引き返し編成で形成する。上記編成を2回繰り返して踵部5を形成した後、履き口となる第二筒部4を筒状に編成する。該第二筒部4は、タンとなる第一編地部7の編目の一部と踵部5の引き返し編成で形成した編目にウェールが連続している。なお、踵部5の編成は、引き返し編成以外の例えば減らし編成による方法でも良い。多様な編成を用いることができる。
【0019】
図3は、本発明の実施形態1の中間部6の編成工程図である。本実施形態では下部前針床(以下FD)と下部後針床(以下BD)、及びこれらFDとBDの上方に設けられた上部前針床(以下FU)と上部後針床(以下BU)を備える4枚ベッド横編機を用いて、無縫製で編成を行う。使用する横編機は、2枚ベッド横編機でも良い。編成工程図の左欄のS+数字は編成工程の番号を、右欄は針床における編針の係止状態を示す。右欄の丸印は編目を、二重丸印は重ね目を、逆三角印は給糸口を、V字印は掛け目を、矢印は目移しの方向を示す。また、黒点は前針床と後針床の編針を、図中のアルファベットA〜Lは前編床の編針の位置を示し、a〜lは後編床の編針の位置を示す。なお、編目の数は、実際の編成よりも少なく表示している。
【0020】
以下編成工程S1〜S8を用い、中間部6の編成について説明する。S1では、爪先側となる第一筒部3の終端編目列としてFDの編針E〜編針Lに係止する編目に給糸口11を用いて新たな編目を形成する。S2では、第一筒部3の終端編目としてBDの編針l〜編針eに係止する編目に給糸口11の進行方向を変えて新たな編目を形成する。更に続けて、編地に隣接するFDの編針D〜編針AとBDの編針d〜編針aの空針を用いてFDの編針Dから前後交互に掛け目を形成し、タンとなる第一編地部7の編み出しを行う。S3では、S2で形成した前後針床の掛け目を右方に1目ずつ目移しし、FDの編針EとBDの編針eに重ね目が形成される。更に給糸口11を右方に移動させ、FDの編針Aに増し目となる掛け目と、編針B〜編針Eに新たな編目を形成する。
【0021】
S4では、新たな給糸口12を左方より糸入れして右方に移動させ、移動した逆側の編地端部となるBDの編針aに増し目となる掛け目と、編針b〜編針eに新たな編目を形成する。これらS2からS4の工程により、タンとなる第一編地部7を編み出し(S2)、その編み出しを分岐させる様にFDとBDで異なる給糸口を用い、筒状編地方向に移動させる。更に左右往復編成で新たな編目を形成し、第一筒部3の終端編目と接合している(S3,S4)。S5では、2つの給糸口(11,12)をそれぞれ左方に移動させ、FDの編針E〜編針Bと、BDの編針e〜編針bに係止する編目に新たな編目を形成する。S6では、前述したS3〜S5と同様の工程を2回繰り返した後の状態を示す。以上の編成により第一編地部7を形成する。
【0022】
なお、図3では実際の編成より編目が少なくて図示はしないが、図2図4図5に示した第一編地部7内に示す5つの紐孔は、例えばS5の編成の後に、紐孔を設けたい位置に係止する編目を左右どちらかに移動して重ね目と空針を設け、空針に掛け目、次いで新たな編目を形成することで孔が形成できる。また、第一編地部7内に示す一点鎖線で区分した増やしや減らしの領域17についても、同様にS5の編成の際に編目の移動を用いて形成する。具体的には、図2の増やしの場合には、編目を移動させて空針を設け、空針に掛け目、次いで新たな編目を形成すればよく、図5の減らしの場合には、編目を移動させて重ね目を設け、次いで新たな編目を形成すればよい。この様な編成を、複数コースで実施すれば成型とする事ができる。
【0023】
S7では、第一筒部3の終端編目列としてFDの編針L〜編針HとBDの編針l〜編針hに係止する編目を、第一編地部7の移動方向とは逆の左方に1目分ずつ移動する事で、FDの編針GとBDの編針gに重ね目が形成でき、第一編地部7の右方側端部と接合できる。この際、第一編地部7のウェール方向の編目に対し第二編地部8のコース方向の編目が接合されるため、2つの領域の編目のウェールが直行する。S8では、FDの編針H〜編針Lに係止する編目に新たな編目を形成し、重ね目の位置で第一編地部7と第二編地部8が接合した。図示はしないが、続いてBDの編針h〜編針lに係止する編目に新たな編目を形成し、S7、S8と同様の編成を行い、FDの編針A〜編針CとBDの編針a〜編針cに係止する掛け目を残すまで繰り返し、中間部6が完成する。
〈実施形態2〉
【0024】
図4は、本発明の実施形態2のシューズアッパーの編成概略図である。実施形態1では爪先を編み始めとしたが、本実施形態では爪先を編み終りとした。第二筒部4の編み出しを筒状に形成し、足挿入口の開口部を設ける。所望の高さの第二筒部4を周回編成した後、タンとなる第一編地部7を形成する。第一編地部7の形成については、前述の図3におけるS2〜S6と移動方向が逆だが、編成内容は同じであるため説明を省略する。続いて踵部5を編成するが、実施形態1と同様の引き返し編成を用いる。第二筒部4の左端部と同じ位置で踵部5の折り返しとなる様に位置を合わせ、C字状で前後交互に編成する。
【0025】
踵部5の形成後の編目に対し第二編地部8として新たな編目を形成する。更に図3におけるS7〜S8と同様の編成により、編目を右方へ移動させて重ね目を形成した後、新たな編目を形成する事で第一編地部7と接合する。第二編地部8の第一編地部7側端部の編目が第一編地部7のウェール方向終端部に重なり、それぞれの編目のウェールが直交する。第二編地部8の終端部の編目と、第一編地部7の終端部および側端部の編目に対して、爪先側に位置する第一筒部3を筒状に編成して接続し、編目を徐々に減らしながら爪先側を袋状に成型した後、解れ止めを行いシューズアッパーを完成させる。
〈実施形態3〉
【0026】
図5は、本発明の実施形態3のシューズアッパーの編成概略図である。実施形態1と同様に爪先側となる第一筒部3を袋状に形成した後、第二編地部8を形成する。第一筒部3の終端編目の右方側の前後の編目を用いて、前後針床の境界を折り返し箇所としてC字状で前後交互に新たな編目を形成し、編地を編幅の外側に向けた右方に順次移動させることを繰り返す。その後、踵部5を実施形態1と同様の引き返し編成を用いて形成し、第二編地部8の折り返し位置と踵部5の折り返し位置を右方端部で連続させる。
【0027】
更に続けて第一編地部7の編成を行う。第一筒部3終端の編目の一部と第二編地部8の側面に形成した増し目箇所の前後それぞれの編目に対し、ウェール方向に続けて第一編地部7の始端編地を編成した後、前後針床それぞれの編針に異なる編糸を給糸しながら左右往復編成する。更に前記第一筒部3の残る終端編目に接合するように、第二編地部8の移動とは逆方向の左方に移動する。その際、編地右側端部に掛け目となる増し目が行われており、踵部5を形成した後の編目と合わせ、ウェール方向に続けて第二筒部4の形成を行う。該第二筒部4の筒状編成を行う前に、前後針床に係止する第一編地部7の終端編目列同士で伏目処理による解れ止めを行う。第二筒部4は筒状に編成し、解れ止めを周回状に行い、足挿入の開口部を設けてシューズアッパーを完成させる。本実施形態では、タンとなる第一編地部7の編目に対して伏目処理を行う事ができ、伸びる伏目や伸びない伏目等の伏目処理を替えることで伏目部9の伸縮度を調整する事ができる。
【0028】
なお、各実施形態の編成では、第一編地部7の編地のウェールと第二編地部8のウェールを直交させる為に、該両編地部を同時に編成する事はできず、実施形態1、2は第一編地部7を先行して形成し、実施形態3は第二編地部8を先行して形成する。また、図2図5の各図に示す増やしまたは減らし領域17は無くてもよいが、形成する事でタンの形状が甲側に対して足底側が拡がっている成型となる為、第二筒部4と第一編地部7の繋がり箇所が突っ張らずシューズアッパーの品質が向上する。
【0029】
なお、各実施形態の編成を行うことで、タン以外に該当する第二編地部8とタンとなる第一編地部7の編目のウェールは直交し、更に編地の特性によりタンはシューズアッパーの長手方向に伸縮し易く、タン以外の箇所は高さ方向に伸縮し易くなる。ゴム糸をインレイ編成する事で、着用者がランニング等を行う際にも足の動きにシューズの動きが追従し易くなり、一体化したタンにおいても突っ張ることなくフィットする。
【符号の説明】
【0030】
1 シューズアッパー
3 第一筒部
4 第二筒部
5 踵部
6 中間部
7 第一編地部
8 第二編地部
9 伏目部
図1
図2
図3
図4
図5