特許第6516616号(P6516616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6516616トングレールと転てつ棒との連結構造及び連結ピンの取付方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6516616
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】トングレールと転てつ棒との連結構造及び連結ピンの取付方法
(51)【国際特許分類】
   E01B 7/02 20060101AFI20190513BHJP
【FI】
   E01B7/02
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-149620(P2015-149620)
(22)【出願日】2015年7月29日
(65)【公開番号】特開2017-31569(P2017-31569A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】712004783
【氏名又は名称】株式会社総合車両製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松川 周平
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−195202(JP,A)
【文献】 特開平11−190318(JP,A)
【文献】 実開昭53−001709(JP,U)
【文献】 特開2006−300277(JP,A)
【文献】 実開昭59−177813(JP,U)
【文献】 米国特許第1330914(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 1/00−26/00
F16B 21/00−21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道軌道の分岐器のトングレールと転てつ棒との連結構造であって、
トングレールに固定され該トングレールの側方へと延びる連結板と、
前記転てつ棒に固定され前記連結板を上下から回動可能に挟み込むためのU字形状を有する連結金具と、
前記連結板及び前記連結金具の重合部分に各々穿孔された円形貫通孔と、
該円形貫通孔と連通する態様で前記転てつ棒に穿孔されたロック用貫通孔と、
前記連結板及び前記連結金具の円形貫通孔に挿通される連結ピンと、を含み、
該連結ピンは、円柱部と、該円柱部の底面から該円柱部の中心軸に沿って、前記円柱部よりも小径かつ前記転てつ棒の板厚を越える長さに延びる軸方向延伸部と、該軸方向延伸部の先端に前記円柱部の中心軸と交差する方向に延び、前記円柱部の底面の平面視で、前記円柱部の外周を越えない大きさかつ前記中心軸に対して非対称形を有する交差部とで構成され、
前記ロック用貫通孔は、前記交差部の平面視形状に対応した孔形状を有し、
前記連結ピンは、前記円柱部の底面が、前記転てつ棒の上面の、前記ロック用貫通孔の縁の周囲に当接し、前記交差部が前記ロック用貫通孔から下方へ突出した状態で、前記中心軸を回転軸として回転可能に、前記円形貫通孔の上方から該円形貫通孔と前記ロック用貫通孔とに挿通されていることを特徴とするトングレールと転てつ棒との連結構造。
【請求項2】
前記連結ピンは、前記円形貫通孔と前記ロック用貫通孔とに挿通され、前記交差部が前記ロック用貫通孔を通過した状態から、前記中心軸を回転軸として180度回転された状態に保持されることを特徴とする請求項1記載のトングレールと転てつ棒との連結構造。
【請求項3】
前記軸方向延伸部は、前記円柱部と同軸の円柱状であり、
前記交差部は、前記円柱部の径方向に沿って延びる長尺板状を成し、長尺方向の中央部が前記中心軸からオフセットした位置にあることを特徴とする請求項1又は2記載のトングレールと転てつ棒との連結構造。
【請求項4】
前記円柱部の、前記軸方向延伸部と反対側の端部に、二面幅が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のトングレールと転てつ棒との連結構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載のトングレールと転てつ棒との連結構造における連結ピンの取付方法であって、
前記連結ピンを前記交差部を先端にして前記円形貫通孔に上方から挿通し、前記連結ピンを前記円柱部の中心軸を回転軸として回転させて、前記ロック用貫通孔の孔形状と前記交差部の平面視形状とが一致するように回転位相を合わせた後、前記交差部及び前記軸方向延伸部を前記ロック用貫通孔に挿通して、前記交差部を前記ロック用貫通孔から突出させた状態で、前記連結ピンを前記中心軸を回転軸として回転させて、前記交差部の上面の少なくとも一部を前記転てつ棒の下面と対向させることを特徴とする連結ピンの取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道軌道の分岐器のトングレールと転てつ棒との連結構造、及び、この連結構造に用いる連結ピンの取付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道軌道の分岐器は、図8に示されるように、枕木1に床板2を介して基本レール3が敷設され、基本レール3の内側にリードレール4が敷設され、リードレール4の先端部に、一対のトングレール5がスライド可能に配置されている。一対のトングレール5は、軌道を横切るようにして、基本レール3及びトングレール5の下方に配置された転てつ棒6により互いに連結され、連動するようになっている。
又、トングレール5と転てつ棒6との連結構造は、従来から様々なものが考案されている。最も一般的な連結構造は、図9に示されるように、トングレール5に対しボルトナットにより固定され、トングレール5の側方へと延びる連結板9と、転てつ棒6に溶接により固定され、連結板9を上下から挟み込むためのU字形状を有する連結金具7とを備えている。又、連結板9、連結金具7及び転てつ棒6の重合部分に各々円形貫通孔が穿孔されると共に、連結板9の円形貫通孔に転換不良を防止するための円筒形のカラーが挿入され、このカラーの内部と、連結金具7及び転てつ棒6の円形貫通孔とにボルトナット8を挿通して、連結するものである。ボルトナット8は、締付作業を考慮して、ボルトを転てつ棒6の下方から上方へと挿通し、上方からナットを締め付けるように取り付けられる。又、仮にボルトが破断したような場合のボルトの脱落を防ぐために、ボルト頭部を下方から支える脱落防止金具10が、転てつ棒6及び連結金具7に固定されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、上述したような、従来の最も一般的なトングレール5と転てつ棒6との連結構造は、トングレール5に固定された連結板9と、転てつ棒6に固定された連結金具7とを、ボルトナット8を用いて連結することから、トングレール5の作動時に、ボルトの軸部がせん断力を受けることとなる。したがって、ボルトのねじ溝に応力が集中することによるボルトの破断を防ぐために、ボルトナット8の点検や交換を頻繁に行うことが必要であり、又、ボルトナット8の交換の度に、ボルトナット8の着脱作業が必要であった。そこで、ボルトナットではなく連結ピンを用いて、トングレール5に固定された連結板9と、転てつ棒6に固定された連結金具7とを連結する発明が考案されている(例えば、特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭57−26402号公報
【特許文献2】特開平9−195202号公報
【特許文献3】特開2008−231792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した連結ピンを用いる発明は、押さえ金具と脱落防止金具とで、或いは、脱落防止金具と転てつ棒とで、連結ピンの上下を挟み込むようにして、連結ピンの抜けや脱落を防止しているが、これらの防止策には、連結作業の作業性等の観点から、改善の余地があった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、トングレールと転てつ棒とを連結するための連結ピンの抜けや脱落を、より確実に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0007】
(1)鉄道軌道の分岐器のトングレールと転てつ棒との連結構造であって、トングレールに固定され該トングレールの側方へと延びる連結板と、前記転てつ棒に固定され前記連結板を上下から回動可能に挟み込むためのU字形状を有する連結金具と、前記連結板及び前記連結金具の重合部分に各々穿孔された円形貫通孔と、該円形貫通孔と連通する態様で前記転てつ棒に穿孔されたロック用貫通孔と、前記連結板及び前記連結金具の円形貫通孔に挿通される連結ピンと、を含み、該連結ピンは、円柱部と、該円柱部の底面から該円柱部の中心軸に沿って、前記円柱部よりも小径かつ前記転てつ棒の板厚を越える長さに延びる軸方向延伸部と、該軸方向延伸部の先端に前記円柱部の中心軸と交差する方向に延び、前記円柱部の底面の平面視で、前記円柱部の外周を越えない大きさかつ前記中心軸に対して非対称形を有する交差部とで構成され、前記ロック用貫通孔は、前記交差部の平面視形状に対応した孔形状を有し、前記連結ピンは、前記円柱部の底面が、前記転てつ棒の上面の、前記ロック用貫通孔の縁の周囲に当接し、前記交差部が前記ロック用貫通孔から下方へ突出した状態で、前記中心軸を回転軸として回転可能に、前記円形貫通孔の上方から該円形貫通孔と前記ロック用貫通孔とに挿通されているトングレールと転てつ棒との連結構造(請求項1)。
【0008】
本項に記載のトングレールと転てつ棒との連結構造は、トングレールに固定され該トングレールの側方へと延びる連結板と、転てつ棒に固定され連結板を上下から回動可能に挟み込むためのU字形状を有する連結金具との重合部分に、各々、円形貫通孔が形成されている。そして、これらの円形貫通孔に対して、円柱部を含む連結ピンが挿通されることで、連結板と連結金具との連結が行われるものである。すなわち、連結板と連結金具との連結にボルトナットを用いていないため、ボルトナットを用いた従来の連結構造で連結板の円形貫通孔に挿入していたカラーが不要になる。しかも、連結ピンには、円柱部の底面から円柱部の中心軸に沿って延びる、円柱部よりも小径の軸方向延伸部が設けられており、これにより、円柱部の底面の面形状は、軸方向延伸部に侵食されて環状をなすこととなる。更に、連結ピンには、軸方向延伸部の先端に円柱部の中心軸と交差する方向に延び、円柱部の底面の平面視で、円柱部の外周を越えない大きさの交差部が設けられている。又、転てつ棒には、連結金具の円形貫通孔と連通する態様で、連結ピンの交差部の平面視形状に対応した孔形状を有するロック用貫通孔が形成されている。すなわち、このロック用貫通孔は、円形貫通孔に挿通される円柱部の外周を越えない大きさの、交差部の平面視形状に対応した孔形状を有することから、円形貫通孔よりも小さい孔形状を有することとなる。このため、円形貫通孔の上方から円形貫通孔内を見ると、ロック用貫通孔と、転てつ棒の上面の、ロック用貫通孔の縁の周囲部分とが確認できる。
【0009】
上記のような構成により、連結ピンは、交差部を先端にして、円形貫通孔の上方から、円形貫通孔及びロック用貫通孔に挿通されると、交差部が円形貫通孔を通過して対応する形状のロック用貫通孔へ進入すると共に、円柱部が円形貫通孔へ進入する。そして、連結ピンは、円柱部の環状の底面が、転てつ棒の上面の、ロック用貫通孔の縁の周囲に当接するまで挿通されて、下方への抜け止めが施されるものである。この際、円柱部と交差部との間に延びる軸方向延伸部が、ロック用貫通孔が形成された転てつ棒の板厚を越える長さに延びていることから、連結ピンの交差部は、ロック用貫通孔を通過して該貫通孔から下方へ突出する。この状態で、連結ピンは、円柱部の中心軸を回転軸として回転可能であるため、所定回転角度の位置に回転されると、ロック用貫通孔から突出した交差部の上面の少なくとも一部が、転てつ棒の下面の、ロック用貫通孔の縁の周囲部分と対向する態様となる。これにより、連結ピンの上方への抜け止めが施されることとなる。すなわち、連結ピンは、円柱部の底面と交差部の上面とによって、転てつ棒を挟み込む態様となることで、上下両方向への移動が規制されるものである。
【0010】
しかも、連結ピンは、交差部が円柱部の中心軸に対して非対称の平面視形状を有することから、例えば、時計回りに所定回転角度に回転された状態から、交差部がロック用貫通孔へ進入し得る状態、すなわち、転てつ棒の下面の平面視で、ロック用貫通孔の孔形状と交差部の平面視形状とが一致する状態になるためには、上記の所定回転角度に反時計回りに、或いは、360度から所定回転角度を引いた角度に時計回りに回転される必要がある。更に、交差部が下方からロック用貫通孔へ進入するためには、上述した回転に加え、上方向の力が連結ピンに作用しなければならない。このように、本項に記載のトングレールと転てつ棒との連結構造は、交差部がロック用貫通孔から突出した連結ピンに対して、交差部の平面視形状がロック用貫通孔の孔形状に平面視で一致するまでの、回転方向の位相差が与えられることで、連結ピンの抜け止めが強固に施されるものである。更に、連結ピンの抜け止めは、連結ピンの挿通及び回転という単純な動作で施されるものであるため、抜け止めの実施や解除を人為的に行う場合の、作業時間の短縮が期待されるものである。又、連結ピンの抜け止めに、後付けの部材が用いられるものではないため、抜け止めの実施忘れを抑制するものとなる。
【0011】
(2)上記(1)項において、前記連結ピンは、前記円形貫通孔と前記ロック用貫通孔とに挿通され、前記交差部が前記ロック用貫通孔を通過した状態から、前記中心軸を回転軸として180度回転された状態に保持されるトングレールと転てつ棒との連結構造(請求項2)。
本項に記載のトングレールと転てつ棒との連結構造は、円形貫通孔とロック用貫通孔とに挿通された連結ピンが、交差部がロック用貫通孔を通過した状態から、円柱部の中心軸を回転軸として180度回転された状態に保持されるものである。すなわち、連結ピンは、時計回り又は反時計回りに180度回転されないと、円柱部の中心軸に対して非対称の平面視形状を有する交差部が、ロック用貫通孔へ進入できない状態にある。従って、より一層強固に、連結ピンの抜け止めが施されるものである。
【0012】
(3)上記(1)(2)項において、前記軸方向延伸部は、前記円柱部と同軸の円柱状であり、前記交差部は、前記円柱部の径方向に沿って延びる長尺板状を成し、長尺方向の中央部が前記中心軸からオフセットした位置にあるトングレールと転てつ棒との連結構造(請求項3)。
本項に記載のトングレールと転てつ棒との連結構造は、軸方向延伸部が円柱部と同軸の円柱状であり、連結ピンの交差部が、円柱部の径方向に沿って延びる長尺板状を成すと共に、その長尺方向の中央部が、円柱部の中心軸からオフセットした位置にあるものである。すなわち、円柱部を上方にした連結ピンの側面視で、軸方向延伸部と交差部とは、横棒が一方へ偏倚した逆T字状やL字状をなすものである。このように、軸方向延伸部や交差部を単純な形状にすることで、連結ピンの抜け止めをより強固にしながらも、連結ピンの製造の容易化や、交差部の平面視形状に対応した孔形状を有するロック用貫通孔の、加工の容易化を図るものである。
【0013】
(4)上記(1)から(3)項において、前記円柱部の、前記軸方向延伸部と反対側の端部に、二面幅が設けられているトングレールと転てつ棒との連結構造(請求項4)。
本項に記載のトングレールと転てつ棒との連結構造は、連結ピンの円柱部に二面幅が設けられていることで、連結ピンの取り付けや取り外しを行う場合等の、人為的に連結ピンを回転させる際の作業性を高めるものである。
【0014】
(5)上記(1)から(4)項において、前記連結金具を挟持するクランプ部及び前記連結ピンの上端を被うカバー部を備え、前記連結金具に取り付けられた状態で、前記カバー部と前記連結ピンの上端とに隙間が形成される脱落防止金具を含むトングレールと転てつ棒との連結構造。
本項に記載のトングレールと転てつ棒との連結構造は、クランプ部によって脱落防止金具が連結金具に固定され、脱落防止金具のカバー部が連結ピンの上端を隙間を空けて被うことで、連結ピンから転てつ棒へと無理な圧力を加えることなく、連結ピンの上方への抜け止めに万全を期すものである。
【0015】
(6)上記(1)から(5)項のトングレールと転てつ棒との連結構造における連結ピンの取付方法であって、前記連結ピンを前記交差部を先端にして前記円形貫通孔に上方から挿通し、前記連結ピンを前記円柱部の中心軸を回転軸として回転させて、前記ロック用貫通孔の孔形状と前記交差部の平面視形状とが一致するように回転位相を合わせた後、前記交差部及び前記軸方向延伸部を前記ロック用貫通孔に挿通して、前記交差部を前記ロック用貫通孔から突出させた状態で、前記連結ピンを前記中心軸を回転軸として回転させて、前記交差部の上面の少なくとも一部を前記転てつ棒の下面と対向させる連結ピンの取付方法(請求項5)。
【0016】
本項に記載の連結ピンの取付方法は、まず、連結ピンの交差部を先端にして、連結板及び連結金具に形成した円形貫通孔に対し、上方から連結ピンを挿通する。そして、連結ピンの交差部が、円形貫通孔を通り、転てつ棒の上面の、円形貫通孔に連通する態様で転てつ棒に形成されたロック用貫通孔の縁の周囲に達する前、或いは達した後に、円柱部の中心軸を回転軸として連結ピンを回転させ、ロック用貫通孔の孔形状と交差部の平面視形状とが一致するように回転位相を合わせる。これにより、ロック用貫通孔に対して交差部を挿通できる状態になるため、交差部及びそれに続く軸方向延伸部をロック用貫通孔に挿通すると共に、円柱部を円形貫通孔の底まで挿通する。そして、円柱部の環状の底面を、転てつ棒の上面の、ロック用貫通孔の縁の周囲に当接させて、環状の座面として機能させることで、連結ピンの下方への抜け止めを施すものである。
【0017】
更に、軸方向延伸部の先端に設けられた交差部は、軸方向延伸部が円柱部の底面から転てつ棒の板厚を越える長さに延びていることから、円柱部の底面をロック用貫通孔の縁の周囲に当接させると、ロック用貫通孔から下方へ突出する。この状態で、連結ピンを、円柱部の中心軸を回転軸として回転させ、交差部の上面の少なくとも一部を転てつ棒の下面と対向させることで、連結ピンの上方への抜け止めを施すものである。このようにして、連結ピンの上方及び下方への抜け止めを、強固に施すものである。
なお、上記の説明では、交差部をロック用貫通孔に挿通するために、連結ピンを円形貫通孔に挿通した後に回転させているが、連結ピンを円形貫通孔に挿通する前に、円形貫通孔の上方で円柱部の中心軸を回転軸として連結ピンを回転させ、ロック用貫通孔の孔形状と交差部の平面視形状とが一致するように回転位相を合わせた状態で、連結ピンを円形貫通孔に挿通することで、円形貫通孔内で連結ピンを回転させることなく、交差部をロック用貫通孔に挿通してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上記のような構成であるため、トングレールと転てつ棒とを連結するための連結ピンの抜けや脱落を、より確実に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態に係るトングレールと転てつ棒との連結構造を示す模式図であり、(a)は側面図、(b)は平面図である。
図2図1の連結ピンの周囲の連結構造を拡大して示したものであり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図3図1に示された連結ピンの単体図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。
図4図1の転てつ棒及び連結金具のみを拡大して示したものであり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。
図5図1に示された脱落防止金具の単体図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
図6】本発明の実施の形態に係るトングレールと転てつ棒との連結構造で用いる、図3の連結ピンと形態が異なる連結ピンの単体図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。
図7】本発明の実施の形態に係る連結ピンの取付方法を説明するための、円形貫通孔及びロック用貫通孔に挿通される連結ピンの状態を、側方から連続的に示したものであり、(a)は円形貫通孔に挿通された状態、(b)は円形貫通孔内で回転された状態、(c)はロック用貫通孔に挿通された状態、(d)は抜け止めが施された状態を示している。
図8】従来の鉄道軌道の分岐器の平面図である。
図9図8のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
本発明の実施の形態に係るトングレールと転てつ棒との連結構造12は、図1に示されるように、トングレール5に対しボルトナットにより固定され、トングレール5の側方へと延びる連結板9と、転てつ棒6に溶接により固定され、連結板9を上下から回動可能に挟み込むためのU字形状を有する連結金具7と、連結板9及び連結金具7の重合部分に各々穿孔された円形貫通孔9a、7a(図2図4参照)と、円形貫通孔7aと連通する態様で転てつ棒6に穿孔されたロック用貫通孔6b(図2図4参照)と、円形貫通孔9a、7aに挿通される連結ピン20とを備えている。又、連結構造12は、脱落防止金具16を含むものである。又、トングレールと転てつ棒との連結構造12は、より詳細には、図2で確認できるように、連結ピン20が、連結板9及び連結金具7に形成された円形貫通孔9a、7aと、転てつ棒6に形成されたロック用貫通孔6bとに挿通される構成を有している。なお、図2(a)では、脱落防止金具16の図示を省略している。
【0021】
各部位の構成を具体的に確認すると、まず、連結ピン20は、図3に示されるように、円柱部22と軸方向延伸部24と交差部26とで構成されている。円柱部22は、全長に渡り略一定の外径をなしており、図3の例では、軸方向延伸部24と反対側(図3(a)(b)における上側)の端部に、二面幅22bが形成されている。軸方向延伸部24は、円柱部22の底面22aから円柱部22の中心軸C1に沿って延びており、図3の例では、円柱部22よりも小径かつ円柱部22と同軸の円柱状をなしている。このため、円柱部22の底面22aの面形状は、軸方向延伸部24に侵食されて、中心軸C1を中心とした円環状をなしている。又、軸方向延伸部24は、図1図2に示した転てつ棒6の板厚(図2中上下方向の厚み)を越える長さを有している。
【0022】
又、交差部26は、軸方向延伸部24の先端から円柱部22の中心軸C1と交差する方向に延びており、図3(c)で確認できるように、円柱部22の底面22aの平面視で、円柱部22の外周を越えない大きさ、かつ、中心軸C1に対して非対称形を有している。より具体的に、図3の例において、交差部26は、軸方向延伸部24の外径と同じ大きさの幅を有すると共に、円柱部22の径方向に沿って延びる長尺板状を成しており、図3(b)(c)で確認できるように、長尺方向の中央部が中心軸C1からオフセットした位置にある。そして、図3(c)に示されるように、交差部26の長尺方向の一方の端部(図中下側の端部)は、円柱部22の底面22aの平面視で、円柱部22の外周と略同じ位置まで延び、円柱部22の外周と同じ曲率の円弧状をなしている。又、交差部26の長尺方向の他方の端部(図中上側の端部)は、円柱部22の底面22aの平面視で、平坦な直線をなしている。このため、軸方向延伸部24と交差部26とは、図3(b)に示されるように、側面視で、横棒が右側へ偏倚した逆T字状を形成している。
【0023】
又、連結ピン20は、一例として、円柱部22の外径が38mm、軸方向延伸部24の外径が10mm、軸方向延伸部24の長さが20mm、交差部26の幅が10mm、中心軸C1から交差部26の長尺方向の一方の端部までの長さが19mm、中心軸C1から交差部26の長尺方向の他方の端部までの長さが10mmである。又、連結ピン20は、例えば、円柱状の部材に対して切削加工を施すこと等により作製される。
【0024】
一方、転てつ棒6に形成されたロック用貫通孔6bは、図4に示されるように、連結ピン20の交差部26の平面視形状に対応した孔形状を有している。図4の例では、ロック用貫通孔6bは、長尺方向(図中左右方向)の端部が円弧状をなした長尺楕円状の孔形状を有しており、連結金具7の円形貫通孔7aに対して、図中左方向へ偏倚した位置に形成されている。ロック用貫通孔6bは、一例として、図4(a)(c)中の上下方向の幅が11mm、長尺方向両端部の円弧の半径が5.5mm、円形貫通孔7aの中心軸C2から長尺方向の一方の端部(図中左側の端部)の円弧の中心までの距離が18mm、円形貫通孔7aの中心軸C2から長尺方向の他方の端部(図中右側の端部)の円弧の中心までの距離が10mmである。又、ロック用貫通孔6bの深さ、すなわち、転てつ棒6の板厚は19mmである。一方、連結金具7に設けられた円形貫通孔7aの内径は38.5mmであり、連結板9に設けられた円形貫通孔9a(図2参照)の内径は42mmとなっている。
【0025】
さて、図2を再度参照すると、上述したように、連結ピン20が、連結板9及び連結金具7に形成された円形貫通孔9a、7aと、転てつ棒6に形成されたロック用貫通孔6bとに挿通されている。連結ピン20は、脱落防止金具16の取り付け前に、円形貫通孔9a、7aに上方から挿通され、円柱部22の底面22a(図3参照)が、転てつ棒6の上面6aの、ロック用貫通孔6bの縁の周囲6d(図4参照)に当接している。更に、円柱部22の底面22aから延びる軸方向延伸部24が、ロック用貫通孔6bに挿通されて、軸方向延伸部24の先端に設けられた交差部26が、ロック用貫通孔6bから下方へ突出している。又、連結ピン20は、円柱部22の中心軸C1(図3参照)を回転軸として回転され、交差部26の上面26aの少なくとも一部が、転てつ棒6の下面6cと対向する回転位置にされた状態であり、図2の例では、ロック用貫通孔6bの長尺方向と、交差部26の長尺方向とが、略90度をなす回転位置にある。
【0026】
又、図2及び図5に示されるように、脱落防止金具16は、連結金具7を挟持するクランプ部16a及び連結ピン20の上端を被うカバー部16bを備え、連結金具7に取り付けられた状態で、カバー部16bと連結ピン20の上端とに隙間Sが形成される。更に、脱落防止金具16のクランプ部16aには、穴16cが設けられており、この穴16cにワイヤを通し、ワイヤによるクランプ部16aの締め付けを行うことにより、クランプ部16aの弾性挟持力と合わせて、脱落防止金具16が連結金具7に確実に固定される。
なお、図2中の符号9bは、トングレール5の作動時に、連結金具7が当接して連結ピン20の負担を軽減するための、連結板9に固定された突起を示している。
【0027】
続いて、上述したトングレールと転てつ棒との連結構造12において連結ピン20を取り付けるための、本発明の実施の形態に係る連結ピンの取付方法ついて、図7を参照しながら説明する。なお、図7では、連結ピン20の状態を分かり易く示すために、転てつ棒6、連結金具7及び連結板9を、仮想線で示している。
まず、図7(a)に示すように、連結板9及び連結金具7に各々穿孔された円形貫通孔9a、7aに、上方から交差部26を先端にして連結ピン20を挿通する。このとき、図7に示す各部材が、図3及び図4を用いた各部材の説明の際に例示した寸法を有していると仮定すると、円形貫通孔7aの内径が38.5mmであるのに対し、連結ピン20の円柱部22の外径が38mmであるため、円柱部22の中心軸C1と円形貫通孔7aの中心軸C2とが、略一致した状態となる。この状態で、交差部26がロック用貫通孔6bに達する直前まで、連結ピン20を挿通する。
【0028】
次に、図7(b)に示すように、円柱部22に形成された二面幅22bを利用して、連結ピン20を中心軸C1を回転軸として回転させ、ロック用貫通孔6bの孔形状と交差部26の平面視形状とが一致するように、回転位相を合わせる。すなわち、図7の例では、長尺楕円状の孔形状を有するロック用貫通孔6bが、図中左右方向を長尺方向として、円形貫通孔7aに対して図中左側に偏倚した位置に形成されているため、長尺板状をなす交差部26が、図中左右方向を長尺方向として、中心軸C1から図中左側へオフセットした状態になるまで、連結ピン20を回転させる。具体的に、図7(a)の状態から図7(b)の状態へは、連結ピン20を約90度回転させている。
【0029】
連結ピン20の上述した回転により、ロック用貫通孔6bに対して、連結ピン20の交差部26を挿通できる状態になるため、連結ピン20を更に下方へ挿通し、図7(c)に示すように、円柱部22の底面22aを、転てつ棒6の上面6aの、ロック用貫通孔6bの縁の周囲6dに当接させる。すると、円柱部22の底面22aから延びる軸方向延伸部24が、転てつ棒6の板厚(例えば19mm)を越える長さ(例えば20mm)を有しているため、軸方向延伸部24の先端に設けられた交差部26は、ロック用貫通孔6bから下方へ突出する。
【0030】
続いて、図7(d)に示すように、二面幅22bを利用して、連結ピン20を中心軸C1を回転軸として回転させて、交差部26の上面26aの少なくとも一部を、転てつ棒6の下面6cと対向させる。具体的に、図7(c)の状態から図7(d)の状態へは、連結ピン20を約180度回転させている。ここまでの作業により、連結ピンの取付方法が終了となる。
なお、図7(d)に示した回転位置に連結ピン20を保持するための機構を、予め設けてもよい。例えば、転てつ棒6の下面6cの、図7(d)に示した交差部26の図中右側の先端を紙面の手前側と奥側とで挟み込む2つの位置に、レールの振動等に起因する連結ピン20の回転を抑制し、かつ、連結ピン20の人為的な回転を妨げない高さの、2つの突起を設けてもよい。この場合には、連結ピン20を取り付ける際に、交差部26をロック用貫通孔6bから突出させた後、長尺板状をなす交差部26の偏倚方向側の先端が、転てつ棒6の下面6cに設けた2つの突起の間に位置するように、連結ピン20を中心軸C1を回転軸として回転させればよい。又、この場合、例えば、2つの突起の、転てつ棒6の下面6cからの突出量は、連結ピン20の回転時に、交差部26が軽く摺接して回転抵抗が生じる程度に設定することが望ましい。
【0031】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係るトングレールと転てつ棒との連結構造12は、図1及び図2に示されるように、トングレール5に固定され該トングレール5の側方へと延びる連結板9と、転てつ棒6に固定され連結板9を上下から回動可能に挟み込むためのU字形状を有する連結金具7との重合部分に、各々、円形貫通孔9a、7aが形成されている。そして、これらの円形貫通孔9a、7aに対して、円柱部22を含む連結ピン20が挿通されることで、連結板9と連結金具7との連結が行われるものである。すなわち、連結板9と連結金具7との連結にボルトナット8(図9参照)を用いていないため、ボルトナット8を用いた従来の連結構造では、転換不良の防止のために連結板9の円形貫通孔に挿入していたカラーが、本トングレールと転てつ棒との連結構造12では不要になる。
【0032】
しかも、図3に示すように、連結ピン20には、円柱部22の底面22aから円柱部22の中心軸C1に沿って延びる、円柱部22よりも小径の軸方向延伸部24が設けられており、これにより、円柱部22の底面22aの面形状は、軸方向延伸部24に侵食されて環状をなすこととなる。更に、連結ピン20には、軸方向延伸部24の先端に円柱部22の中心軸C1と交差する方向に延び、円柱部22の底面22aの平面視で、円柱部22の外周を越えない大きさの交差部26が設けられている。又、図4に示すように、転てつ棒6には、連結金具7の円形貫通孔7aと連通する態様で、連結ピン20の交差部26の平面視形状に対応した孔形状を有するロック用貫通孔6bが形成されている。すなわち、このロック用貫通孔6bは、円形貫通孔7aに挿通される円柱部22の外周を越えない大きさの、交差部26の平面視形状に対応した孔形状を有することから、円形貫通孔7aよりも小さい孔形状を有することとなる。このため、図4(a)に示されるように、円形貫通孔7aの上方から円形貫通孔7a内を見ると、ロック用貫通孔6bと、転てつ棒6の上面6aの、ロック用貫通孔6bの縁の周囲部分6dとが確認できる。
【0033】
このため、連結ピン20は、図2で確認できるように、交差部26を先端にして、円形貫通孔7aの上方から、円形貫通孔9a、7a及びロック用貫通孔6bに挿通されると、交差部26が円形貫通孔7aを通過して対応する形状のロック用貫通孔6bへ進入すると共に、円柱部22が円形貫通孔9a、7aへ進入する。そして、連結ピン20は、円柱部22の環状の底面22aが、転てつ棒6の上面6aの、ロック用貫通孔6bの縁の周囲6dに当接するまで挿通されて、下方への抜け止めが施されるものである。この際、円柱部22と交差部26との間に延びる軸方向延伸部24が、ロック用貫通孔6bが形成された転てつ棒6の板厚を越える長さに延びていることから、連結ピン20の交差部26は、ロック用貫通孔6bを通過して該貫通孔6bから下方へ突出する。この状態で、連結ピン20は、円柱部22の中心軸C1を回転軸として回転可能であるため、所定回転角度の位置に回転されると、ロック用貫通孔6bから突出した交差部26の上面26aの少なくとも一部が、転てつ棒6の下面6cの、ロック用貫通孔6bの縁の周囲部分と対向する態様となる。これにより、連結ピン20の上方への抜け止めが施されることとなる。すなわち、連結ピン20は、円柱部22の底面22aと交差部26の上面26aとによって、転てつ棒6を挟み込む態様となることで、上下両方向への移動が規制されるものである。
【0034】
しかも、連結ピン20は、交差部26が円柱部22の中心軸C1に対して非対称の平面視形状を有することから、例えば、時計回りに所定回転角度に回転された状態から、交差部26がロック用貫通孔6bへ進入し得る状態、すなわち、転てつ棒6の下面6cの平面視で、ロック用貫通孔6bの孔形状と交差部26の平面視形状とが一致する状態になるためには、上記の所定回転角度に反時計回りに、或いは、360度から所定回転角度を引いた角度に時計回りに回転される必要がある。更に、交差部26が下方からロック用貫通孔6bへ進入するためには、上述した回転に加え、上方向の力が連結ピン20に作用しなければならない。このように、トングレールと転てつ棒との連結構造12は、交差部26がロック用貫通孔6bから突出した連結ピン20に対して、交差部26の平面視形状がロック用貫通孔6bの孔形状に平面視で一致するまでの、回転方向の位相差を与えることで、連結ピン20の抜け止めを強固に施すことができる。これにより、連結ピン20の抜けや脱落を、より確実に防止することが可能となる。更に、連結ピン20の抜け止めは、連結ピン20の挿通及び回転という単純な動作で施されるものであるため、抜け止めの実施や解除を人為的に行う場合の、作業時間の短縮を期待することができる。又、連結ピン20の抜け止めに、後付けの部材が用いられるものではないため、抜け止めの実施忘れを抑制することもできる。
【0035】
又、本発明の実施の形態に係るトングレールと転てつ棒との連結構造12は、円形貫通孔9a、7aとロック用貫通孔6bとに挿通された連結ピン20が、交差部26がロック用貫通孔6bを通過した状態から、円柱部22の中心軸C1を回転軸として180度回転された状態に保持されてもよい(図7(d)参照)。この場合、連結ピン20は、時計回り又は反時計回りに180度回転されないと、円柱部22の中心軸C1に対して非対称の平面視形状を有する交差部26が、ロック用貫通孔6bへ進入できない状態にある。従って、より一層強固に、連結ピン20の抜け止めを施すことができる。
【0036】
又、トングレールと転てつ棒との連結構造12は、図3で確認できるように、軸方向延伸部24が円柱部22と同軸の円柱状であり、連結ピン20の交差部26が、円柱部22の径方向に沿って延びる長尺板状を成すと共に、その長尺方向の中央部が、円柱部22の中心軸C1からオフセットした位置にあるものである。すなわち、円柱部22を上方にした連結ピン20の側面視(図3(b)参照)で、軸方向延伸部24と交差部26とは、横棒が一方へ偏倚した逆T字状をなすものである。このように、軸方向延伸部24や交差部26を単純な形状にすることで、連結ピン20の抜け止めをより強固にしながらも、連結ピン20の製造の容易化や、交差部26の平面視形状に対応した孔形状を有するロック用貫通孔6bの、加工の容易化を図ることができる。なお、軸方向延伸部24は、ロック用貫通孔6b内で中心軸C1回りに回転できるものであれば、多角柱又は板状であってもよい。
又、本発明の実施の形態に係るトングレールと転てつ棒との連結構造12では、図6に示すように、円柱部22を上方にした側面視で、軸方向延伸部24と交差部26とがL字状を形成するような連結ピン20’を用いてもよい。すなわち、連結ピン20’は、交差部26’が軸方向延伸部24の先端から一方向(図6(b)中の右方向)のみに延びているものである。この場合には、連結ピン20’の製造が更に容易になる。
【0037】
更に、連結ピン20、20’の円柱部22に、二面幅22bを設けることとすれば、連結ピン20、20’の取り付けや取り外しを行う場合等の、人為的に連結ピン20、20’を回転させる際の作業性を高めることができる。
又、トングレールと転てつ棒との連結構造12は、図2及び図5に示すように、クランプ部16aによって脱落防止金具16が連結金具7に固定され、脱落防止金具16のカバー部16bが連結ピン20の上端を隙間Sを空けて被うことで、連結ピン20から転てつ棒6へと無理な圧力を加えることなく、連結ピン20の上方への抜け止めに万全を期すものである。
【0038】
一方、本発明の実施の形態に係る連結ピンの取付方法は、まず、図7(a)に示すように、連結ピン20の交差部26を先端にして、連結板9及び連結金具7に形成した円形貫通孔9a、7aに対し、上方から連結ピン20を挿通する。そして、連結ピン20の交差部26が、円形貫通孔9a、7aを通り、転てつ棒6の上面6aの、円形貫通孔7aに連通する態様で転てつ棒6に形成されたロック用貫通孔6bの縁の周囲6dに達する前、或いは達した後に、図7(b)に示すように、円柱部22の中心軸C1を回転軸として連結ピン20を回転させ、ロック用貫通孔6bの孔形状と交差部26の平面視形状とが一致するように回転位相を合わせる。これにより、ロック用貫通孔6bに対して交差部26を挿通できる状態になるため、図7(c)に示すように、交差部26及びそれに続く軸方向延伸部24をロック用貫通孔6bに挿通すると共に、円柱部22を円形貫通孔7aの底まで挿通する。そして、円柱部22の環状の底面22aを、転てつ棒6の上面6aの、ロック用貫通孔6bの縁の周囲6dに当接させて、環状の座面として機能させることで、連結ピン20の下方への抜け止めを施すものである。
【0039】
更に、軸方向延伸部24の先端に設けられた交差部26は、軸方向延伸部24が円柱部22の底面22aから転てつ棒6の板厚を越える長さに延びていることから、円柱部22の底面22aをロック用貫通孔6bの縁の周囲6dに当接させると、ロック用貫通孔6bから下方へ突出する。この状態で、図7(d)に示すように、連結ピン20を、円柱部22の中心軸C1を回転軸として回転させ、交差部26の上面26aの少なくとも一部を転てつ棒6の下面6cと対向させることで、連結ピン20の上方への抜け止めを施すものである。このようにして、連結ピン20の上方及び下方への抜け止めを強固に施すことで、連結ピン20の抜けや脱落を、より確実に防止することができる。
【0040】
なお、これまでの説明において、ロック用貫通孔の孔形状と交差部の平面視形状とが「一致する」状態とは、交差部の平面視形状に対応した孔形状を有するロック用貫通孔に対して、交差部が挿通可能になるように、平面視で、ロック用貫通孔の内周の内側に、交差部の外周が収まる状態になることを示している。このため、図3及び図4で確認できるように、連結ピン20の交差部26の平面視形状と、転てつ棒6のロック用貫通孔6bの孔形状とが、必ずしも同じ形状である必要はない。
【符号の説明】
【0041】
5:トングレール、6:転てつ棒、6a:転てつ棒の上面、6b:ロック用貫通孔、6c:転てつ棒の下面、6d:ロック用貫通孔の縁の周囲、7:連結金具、7a:円形貫通孔、9:連結板、9a:円形貫通孔、12:トングレールと転てつ棒との連結構造、20、20’:連結ピン、22:円柱部、22a:円柱部の底面、22b:二面幅、24:軸方向延伸部、26、26’:交差部、26a、26a’:交差部の上面、C1:円柱部の中心軸
図1
図2
図3
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図5
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図7
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図9