【実施例1】
【0034】
図1(a)に示す本発明の第1実施例の保持材1は、取付状態〔同図(c),(d)に示す〕においてC型鋼である型鋼4のウエブ42に沿う中央縦片部11と、型鋼4の下フランジ41に沿う横片部12と、該横片部12から立ち上がる内側縦片部13と、外側縦片部14と、該外側縦片部14に設けられて型鋼4の背面側に配設する建材板5の端部51yを支持する支持部141と、を有し、型鋼4の下フランジ41に対して室内側から取付可能である。
【0035】
先に、
図1に示される保持材1以外の部材(型鋼4、化粧材3、押さえ材2、建材板5)について説明すると、型鋼4は縦方向に配されるウエブ42の両端(上下端)にフランジ43,41を有するリップ溝型鋼(C型鋼)であって、先端に上向き片411を備える下フランジ41は図面右方へ延在している。
【0036】
また、
図1(b)に示す化粧材3は、型鋼4の下フランジ41及び保持材1の取付部11を下方側から被覆する化粧カバーであって、底面である化粧面31の左右が立ち上がる断面略樋状の長尺材であり、この第1実施例では左右略対称状に形成されている。
そして、一方の側面(右側面)32には、前記保持材1の係止部13Bの上端に係合する係合片321が内向きに設けられ、他方の側面(左側面)33には、前記保持材1の横片部12の端縁から立ち上がる縦片14の外側に沿って前記支持部141の下方に設けられる嵌合溝142に側方から係合する係合片331が内向きに設けられ、前記保持材1に下方から嵌合状に取り付けることができる。
【0037】
また、前記建材板5は、隣り合う型鋼4,4間に架け渡されるように配設されるボード状の天井材であって、この第1実施例における両端に位置する端部51x,51yは、その表面から略垂直状に断裁されたものである。なお、便宜的に図面上、左端に位置する端部を51x、右方に位置する端部を51yとした。
【0038】
この第1実施例の保持材1について詳細に説明すると、
図1(a)に示すように取付状態において型鋼4のウエブ42に沿う中央縦片部11と、型鋼4の下フランジ41に沿う横片部12と、該横片部12から立ち上がる二片の内側縦片部13と、外側への傾斜片状の外側縦片部14と、該外側縦片部14の上端に設けられて型鋼4の背面側に配設する建材板5の端部51yを支持する支持部141と、を備えている。
【0039】
この第1実施例における前記中央縦片部11は、前述のように取付状態において型鋼4のウエブ42(の外面)に沿うものであって、鉛直状の縦片に形成され、外側(図中の左側)へ隆起する隆状係止部111を備えている。
【0040】
また、この第1実施例における前記横片部12は、前述のように取付状態において型鋼4の下フランジ41(の下面)に沿うものであって、前記中央縦片部11の下端から左右方向へ水平状に延在する横片である。この横片部12には、下方からビス止め(ビス1b)することにより、型鋼4の下フランジ41に強固に固定することができる。
この横片部12の下フランジ41側への延在部分には前記内側縦片部13が形成され、逆方向の延在部分には前記支持部141が設けられる外側縦片部14が形成される。
【0041】
この第1実施例における前記内側縦片部13は、前述のように前記横片部の下フランジ側への延在部分から立ち上がる二片の縦片を指し、より具体的には取付状態において型鋼の下フランジのリップに沿う規制片13Aと、上端が型鋼4の下フランジ41のリップより低い係止部13Bとを指している。
前記規制片13Aは、前記中央縦片部11と前記横片部12とこの規制片13Aとで上方が開放する略U字状を形成するための構成であり、この略U字状を型鋼4の下フランジ41に対して下方から嵌合状に仮止めすることができ、前記横片部12の下方からのビス止め作業を安定に行うことができる。
また、前記係止部13Bは、外側(図中の右側)への傾斜状縦片の上端を内側上方へ折り曲げた形状に形成されている。
【0042】
また、この第1実施例における前記支持部141は、前述のように前記横片部12の端縁から立ち上がって型鋼4の背面側に配設する建材板5の端部51yを支持するものであって、一方の端部51xを支持する型鋼4の下フランジ41のリップ411上端と支持高さを略同一としている。
この支持部141は、外側(図中の左側)への傾斜状縦片14の上端に設けられ、この支持部141の下方には、前記化粧カバー3の係合片331が嵌合状に取り付ける取付部位として、外方(図中の左方)が開放する嵌合溝142を設けている。
【0043】
なお、前記係止部13Bと前記支持部141が形成される傾斜状縦片14とは、左右対称状に形成されているので、前述のように左右略対称状に形成される化粧カバー3を前記保持材1の下方から容易に嵌合状に取り付けることができる。
【0044】
図1(e)は、前記各部材1〜3を用いて前記型鋼4に建材板5を保持する構造の施工手順の一例を示すものであって、この第1実施例では、まず各型鋼4に対して前記押さえ材2を固定している。
【0045】
次に、図面左側の型鋼4のリップ411に、建材板5の一方の端部51xを支持させる。
同図では、図面左側の型鋼4には前記保持材1及び前記化粧材(化粧カバー)3が既に取り付けられているが、取り付けていなくても同様であり、傾斜状に臨ませた建材板5の一方の端部51xの裏面を係合片321(及びその裏面側の係止部13B)に支持させ、端面を型鋼4のウエブ42に当接させる。
【0046】
続いて、建材板5の他方の端部51yを保持材1の支持部141に支持させつつ、建材板5が略水平状となるように回動(傾動)させると共に保持材1を図面右側の型鋼4に取り付ける。
この保持材1は、前述のように前記中央縦片部11と前記横片部12と前記規制片13Aとで上方が開放する略U字状を形成しているので、型鋼4の下フランジ41に対して下方から嵌合状に仮止めできる。また、保持材1の中央縦片部11には、押さえ材2の縦片部21に形成した孔状の係止受部211に係止する隆状係止部111を有するので、仮止め状態はより安定なものとなる。そして、その後の前記横片部12の下方からのビス止め作業を安定に行うことができ、建材板5も略水平状に保たれるものとなる。
【0047】
なお、建材板5は、略水平状に保たれる状態で保持されるが、両端面が隣り合う型鋼4,4のウエブ42,42に突き合わせ状に保持される。
また、特に建材板5の一方側の端部51xは、押さえ材2を固定するために用いたビス2bの先端が表面側に延在しているので、他端側の端部51yにおける押さえ片22と同様に押さえ保持する役割を果たす。
【0048】
その後、取り付けた保持材1に対し、前記化粧材(化粧カバー)3を下方から嵌合状に取り付ける。
この化粧カバー3は、前述のように一方(右方)の側面32に係合片321が内向きに設けられ、他方(左方)の側面33に係合片331が内向きに設けられているので、前記保持材1の係止部13B、嵌合溝142に下方から嵌合状に取り付けることができる。
【0049】
このように本発明の保持材1は、一方の端部51xを型鋼4の下フランジ41のリップ411に支持させた建材板5の他方の端部51yを支持することにより、建材板5を隣り合う型鋼4,4間に保持することができ、実質的にこの保持材1の一部材のみで保持構造を構築できる。
【0050】
また、この保持材1にて保持される建材板5は、その端面を隣り合う型鋼4,4のウエブ42,42に突き合わせ状に配設できる。そのため、断熱性能の弱点部を生ずることもない。
しかもこの第1実施例では、建材板5の一方側の端部51xも他方側の端部51yもそれぞれビス21b、押さえ片22にて押さえ保持する構成としたので、室内側(下方側)から建材板5を押し上げるような応力が作用した際にも、該応力に抗する作用を果たし、建材板の外れや落下等を防ぐことができる。
【0051】
さらに、この保持材1を用いた保持構造では、型鋼4の下フランジ41等を下方側から被覆する化粧カバー3は、建材板5の支持に関わっていないため、保持材1の施工が終わっていれば随時取り付けを行うことができ、施工に支障を生ずるものでもない。
【0052】
図2(a)に示す保持構造は、より安定な建材板5の保持を目的として押さえ材2を用いた例であって、前記構成の保持材1を配設する以前に各型鋼4に押さえ材2を取り付けておくことにより、より安定な建材板5の保持が得られるものである。
【0053】
前記押さえ材2は、
図2(d)に示すように押さえ材2は、前記型鋼4のウエブ42に沿う縦片部21と、該縦片部21から下方へ延在する押さえ片22とを備える。
また、前記縦片部21の上端には、略水平状に折曲されて型鋼4の上フランジ43に掛合する掛合片23が設けられ、側方から前記縦片部21にビス2bを打ち込んでこの押さえ材2を型鋼4に固定する際の仮止めとして利用できる。なお、前記押さえ片22は、複数の矩形状の切り込みによる切り起こしにて外側へ突出するように複数箇所に形成され、この押さえ片22の下端は取付状態において建材板5の表面に近接している。また、前記縦片部21の下方には、孔状に形成した係止受部211を設けている。
この押さえ材2の取付は、前記縦片部21を型鋼4のウエブ42に沿わせると共に前記掛止部23を型鋼4の上フランジ43に掛止させた仮止め状態とし、この状態でビス2bを側方(図面の左方)から打ち込んで固定する。
【0054】
図3(a)に示す保持構造は、リップZ型鋼4Cに対して前記構成の保持材1を配設して建材板5を保持する例であって、この型鋼4Cは、屋根構造を構成するコンクリート躯体6Cにアンカー6dを打ち込んで吊り下げ状に支持させたものである。
【0055】
この型鋼4Cは、
図3(c)に示すように縦方向に配されるウエブ44の両端(上下端)にフランジ46,45を有するリップZ型鋼であって、先端に上向き片451を備える下フランジ45は図面右方へ延在している(上フランジ46は左方へ延在している)。
またこの例では、
図3(d)に示す縦片部21cを
前記図2における押さえ材2の縦片部21に比べて短く形成した
小幅状の押さえ材2Cを用いた。この押さえ材2Cは、前記
図2における押さえ材2とは異なり、型鋼4Cへの仮止め構成を有していないが、ビス2bを側方(図面の左方)から打ち込んで固定する点や建材板5の表面を押さえ片22にて押さえ保持する点などは同様である。
【0056】
図4(a)に示す保持構造は、前記化粧材(化粧カバー)3に代えて、隣り合う型鋼4,4間に跨がって配設される別の化粧材(天井仕上げ材)7を用いた例であって、前記化粧カバー3と同様に前記保持材1等による建材板5の支持構造を形成した後、取り付けた保持材1に対してこの天井仕上げ材7を取り付ければよい。なお、図中に示される符号8は、屋根構造の端部に配設されるH型鋼である。
【0057】
この保持構造に用いられる化粧材(天井仕上げ材)7は、
図4(c)に示すように開口部711を備える化粧面部71と、該化粧面部71の左右から内側へ延在して前記保持材1の横片部12に沿う固定用横片部72,73とを有し、隣り合う保持材1,1間に亘って取り付けられる構成である。また、この図示実施例では、前記固定用横片72,73には、前記保持材1に仮止めするためのL字状片(係合横片721,731、縦片722,732)が設けられ、前記化粧面部71と前記固定用横片部72との間には縦片状の当接部74,74が形成されている。前記化粧カバー3を除く全ての部材(保持材1、押さえ材2、型鋼4、及び建材板5)については全く同様であるから、図面に同一符号を伏して説明を省略する。
なお、この天井仕上げ材7は、パンチングメタル製の成形板であって、前記開口部711とは、固定用ビス7bを取り付けるための穴を指している。即ちこの天井仕上げ材7には、無数の穴が形成されているが、固定用ビス7bを取り付ける穴のみを開口部711とするものである。
【0058】
前記構成の天井仕上げ材7を取り付ける保持材1については、既に説明した通りであるが、隣り合う保持材1,1間に亘って天井仕上げ材7を取り付ける点が前記化粧カバー3とは異なる。この
図4(a)の中央に配される天井仕上げ材7は、図中の左側に配設された保持材1の横片部12に、自身の左側に位置する固定用横片部73が沿い、図中の右側に配設された保持材1の横片部12に、自身の右側に位置する固定用横片部72が沿うように取り付けられる。
また、この実施例では、自身の左側に位置する固定用横片73に延設されたL字状片(731,732)が左の保持材1の係止部13Bに嵌合状に取り付けられ、自身の右側に位置する固定用横片72に延設されたL字状片(721,722)が右の保持材1の嵌合溝142に嵌合状に取り付けられるが、これらは仮止め用であって、開口部711から治具等を挿入して固定用ビス7bを打ち込んで固定する。
【0059】
なお、前記天井仕上げ材7の化粧面部71の左右に設けられる当接部74,74は、それに隣り合う天井仕上げ材7の配設を補助する役割を果たす。例えば図の左方の天井仕上げ材7を先に配設した場合には、その右方に位置する天井仕上げ材7は、当接部74,74同士を突き合わせるように前述の嵌合状の仮固定を行えばよく、より安定な仮固定を行うことができる。
【0060】
図5に示す保持構造及び
図6に示す保持構造では、中央2カ所に型鋼4の下フランジ41が同一方向に延在するように配設され、その外側2カ所には型鋼4,4'同士を背中合わせに接続して用いた例を示している。また、この保持構造では、中央2カ所の型鋼4に対しては前記保持材1を取り付けているが、その外側2カ所の型鋼4,4'同士を背中合わせに接続して用いている箇所には、
図5(c)に示す横片部12'の長さが約2倍の保持材1'を用いている。
この保持材1'は、前記隆状係止部111の代わりに逆の外側(図中の右側)へ隆起する隆状係止部112を備える中央縦片部11'が設けられ、前記規制片13Aの代わりに型鋼4,4間に配置される起立片15が設けられる以外は同様であるから図面に同一符号を付して説明を省略する。なお、前記隆状係止部112は、型鋼4'の下フランジ41のリップ411に係合する構成である。
また、この保持構造においては、中央2カ所の型鋼4,4の間隔より、この型鋼4からその外側の型鋼4,4'同士を背中合わせに接続した箇所までの間隔が小さく形成されているので、当該間隔においては、建材板5よりその分寸法が短い建材板5Bを用い、型鋼4'の内部には短尺の補助断熱材5Cを配設(収納)した。
【0061】
図5(a)では、化粧カバー3,3'の化粧面31,31'が略平坦状であって、型鋼4,4'同士を背中合わせに接続して用いている箇所には、化粧面31'の長さが約2倍の(幅広の)化粧カバー3'を用いている。
ここで用いる化粧カバー3'は、前記化粧カバー3と全く同様に施工できる。
また、型鋼4,4'同士を背中合わせに接続して用いている箇所に用いる押さえ材2'は、
図5(d)に示すように型鋼4'の下フランジ側へ取り付けるものであるが、その縦片部21には、型鋼4'の上フランジ43のリップ(下向き片)431に係合する係合部24が設けられている。
さらに、型鋼4'の内部には短尺の補助断熱材5Cが配設(収納)されているので、断熱性能の弱点部を生ずることもない。なお、この補助断熱材5Cは、前記建材板5,5Bと同質の素材であることが望ましく、その端材を充填してもよい。
【0062】
図5(b)では、前記化粧カバー3,3'に代えて、天井仕上げ材7を用いる点では前記
図4と同様であるが、型鋼4,4同士を背中合わせに接続して用いている箇所には逆ハット状の繋ぎ用化粧材9Aを併用している。
ここで用いる繋ぎ用化粧材9Aは、断面フラット状の化粧面91の左右を折り曲げ、フランジ状横片92を延設した構成であって、このフランジ状横片92に両面テープ9bを用いて固定部材1'の横片部12'に仮止めすることができる。また、このフランジ状横片92は、天井仕上げ材7の取付により、固定用横片部72,73と固定部材1'の横片部12'との間に挟着されるので、強固に取り付けられるものとなる。
なお、前述のようにこの保持構造においては、中央2カ所の型鋼4,4の間隔より、この型鋼4からその外側の型鋼4,4'同士を背中合わせに接続した箇所までの間隔が小さく形成されているので、天井仕上げ材7は、当該間隔においても同一のものを用いているが、間隔が短い分だけ下方へ大きく湾曲させることで調整しており、これを天井仕上げ材7'及び化粧面部71'として区別した。
【0063】
図6(a)では、化粧カバー3D,3Eの化粧面31d,31eが断面略V字状であって、型鋼4,4同士を背中合わせに接続して用いている箇所には、化粧面31eの長さが約2倍の(幅広の)化粧カバー3Eを用いている。
ここで用いる化粧カバー3D,3Eは、前記化粧カバー3,3'と全く同様に施工できる。
【0064】
図6(b)では、前記
図5(b)と同様に天井仕上げ材7を用いる構成であるが、型鋼4,4同士を背中合わせに接続して用いている箇所には断面略V字状の化粧面91cを有する繋ぎ用化粧材9Cを併用している。
ここで用いる繋ぎ用化粧材9Cは、前記
図5(b)における繋ぎ用化粧材9Aと全く同様に取り付けることができる。
【0065】
このように前記
図5(a),(b)の保持構造は、天井仕上げ材7を除く化粧カバー3,3'、及び繋ぎ用化粧材9Aの化粧面が全てフラット(略水平)状の意匠性を有し、前記
図6(a),(b)の保持構造は、天井仕上げ材7を除く化粧カバー3D,3E、及び繋ぎ用化粧材9Cの化粧面が全て断面略V字状で角波状の意匠性を有するものとなる。