(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カメラは、前記縞生成光学部材によって生み出された前記受信した干渉縞に対応し単一画像内の複数のインターフェログラムに対応する信号を生成するようになっており、
前記プロセッサは、前記複数のインターフェログラムのそれぞれのフーリエ変換を実行し前記インターフェログラムの前記フーリエ変換の平均をとることによって、前記物体の前記分光特性を計算するようになっている、
請求項2に記載の分光計。
前記第1の複屈折層は、X軸およびZ軸によって形成されたX−Z平面に形成される第1の角度に第1の光学軸を有し、前記Z軸は、前記複屈折光学部材を通る光の伝送方向であり、
前記第2の複屈折層は、前記Z軸に垂直な平面に第2の光学軸を有する、
請求項2に記載の分光計。
前記第2の複屈折層は前記第1の複屈折層の複屈折の反対の複屈折を有し、第2の角度の第2の光学軸がX軸およびZ軸によって形成されたX−Z平面に形成され、前記Z軸は前記複屈折光学部材を通る光の伝送方向である、請求項2に記載の分光計。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付の図面は必ずしも縮尺が正確ではなく、本発明の基本原理を示す様々な特徴をある程度単純化した表現で示すことを理解されたい。例えば複屈折層の特定の寸法を含む、ここに開示するコンパクトな分光計の設計の特定の特徴は、一つには特定の所期の用途および使用環境によって決定される。明確な理解の実現を助けるために図示の実施形態の特定の特徴を他の特徴より拡大するかまたは歪めている。具体的には、例えば図表を明確にするために薄い特徴を厚くすることがある。方向および配置についての言及は全て、別段の指示がない限り、図面に示された向きを指す。
【0011】
ここに開示するコンパクトな分光計には多くの使用および設計の変更が可能であることが、当業者、すなわち、当技術分野の知識または経験を有する者には明らかである。様々な代替の特徴および実施形態の以下の詳細な検討は、従来の携帯機器に組み込まれるようなデジタルカメラと共に使用するのに適した撮像装置に関する本発明の概略的な原理を示す。本開示の利益が与えられる当業者には他の用途に適した他の実施形態が明らかである。
【0012】
ここで図面を参照すると、
図1は、従来の携帯電話90に組み込まれる標準的なデジタルカメラ65と一緒に使用されるのに適した、一実施形態による分光計10の等角図である。本明細書に開示するようなコンパクトな分光計は、物体の分光特性を得るために使用することができ、例えば、測色用途、環境モニタリング、化学分析、物質の分析および特定、汚染物質モニタリング、農作物モニタリング、鉱物特定、工業オートメーションの分光の用途、医療診断および科学捜査の用途など、幅広い用途に使用することができる。本明細書に開示するコンパクトな分光計の他の使用は本開示に利益を与えられる当業者には容易に明らかになるであろう。
【0013】
有利には、分光計10はコンパクトかつ軽量であり、実装面積が極めて小さい。分光計10は縞生成光学部材12を備え、縞生成光学部材12は正面光学部材45および複屈折光学部材55から構成される。分光特性が測定される物体から反射される光またはその物体によって生成される光は、順次、正面光学部材45を通って複屈折光学部材55に至り、そこから、ここでは携帯電話90である携帯機器に内蔵されたカメラ65、通常はデジタルカメラに至る。携帯機器とは、本明細書では、広く携帯電話、タブレット、ラップトップなどを指し、さらに、一部の用途ではpcs(パーソナル通信サービス)を指すものと理解される。デジタルカメラは、受信する画像に基づいて信号を生成し、さらに、その信号をプロセッサに中継する。プロセッサは分光特性を生成する。縞生成光学部材12のサイズは、好ましくは、カメラ65の開口全体をカバーできる程度に十分に大きいが、それよりも大きくする必要は全くない。さらに、縞生成光学部材の厚さは、従来の携帯電話が収まるのと同じようにして装置が簡単にポケットに収まる程度に十分に小さい。別の非常に有利な特徴によれば、通常、電話90に見られるプロセッサは、本明細書に開示する分光計を使用して物体の分光特性を計算するためには十分なものである。制御および電源管理の付属品を追加する必要なしに、分光特性および関係する制御インターフェースを携帯機器の現行の表示パネル上で表示および制御することができる。
【0014】
縞生成光学部材12はハウジング80内に配置することができる。さらに、縞生成光学部材12は、縞生成光学部材12がカメラ65の正面に配置された動作位置(
図2)と、カメラが通常通りに機能できる非動作位置(
図3)との間で調節可能にすることができる。
図1〜
図3の実施形態では、ハウジング80は、携帯機器上に配置されるようになっている外部アタッチメントであり、本実施形態では、電話90の周りを延在しランチャネル70を画定するバンド形として示されている。縞生成光学部材12はランチャネル70内で複数の位置の間を摺動可能である。あるいは、ハウジング80は装置カバー(図示せず)の一部分として形成することができ、縞生成光学部材は動作位置と非動作位置との間で交替することができる。任意選択で、ハウジング80は携帯機器に組み込むこともできる。
【0015】
動作の際には、分光計は、反射される光が主に物体からのものになるように縞生成光学部材/携帯機器の比較的近くの物体に対して最も良く機能する。物体からの光は、本明細書では、通常、分光特性が求められる物体の表面から反射される光、またはその物体によって放射される光、またはその物体を通して伝送される光を意味すると理解される。物体を照明するばらつきのない一様な光源を有することは、物体の分光反射率または分光吸収率を得るために測定される分光特性を標準化する観点から、有益である。携帯機器に内蔵された従来のデジタルカメラの場合、フラッシュ照明または光源77がほとんど必ず設けられており、その光源には高水準の品質管理が行われ、したがって、その光源は電話間で比較的ばらつきがない。光源77は通常、カメラからある程度の距離の位置に比較的一様な光の光源を設けるように設計され、その距離は通常、分光特性を得るための通常の動作距離より大きい。したがって、縞生成光学部材は、任意選択で、
図1〜
図3に示すような光拡散器75を備えることができる。光拡散器75は、縞生成光学部材12(正面光学部材45および複屈折光学部材55)がカメラの正面に配置されているときはフラッシュ77の正面に配置されることになり、そうすることにより、物体に照射される光またはフラッシュが比較的一様になりばらつきがなくなる。あるいは、光拡散器75は、物体上へのより一様でありばらつきのない照明のために光を拡散する前に光ガイド(図示せず)を内蔵することもできる。分光計は、フラッシュ77の分光特性に較正を実行するために、組み込まれた付属品または外部の付属品として基準反射率の材料または表面を設けることもできる。
【0016】
図4は、縞生成光学部材12が動作位置にあるときの好ましい順序を示す単純な概略図である。光が、正面光学部材45を通って複屈折光学部材55に至り、そこからカメラ65に至る。カメラは信号を生成し、その信号をプロセッサに中継する。プロセッサは、以下により詳細に記述する手法で物体の分光特性を生成する。
【0017】
図5に、単一層の光拡散器40として形成された正面光学部材45の一実施形態を示す。拡散器40は受信した背景光を均質化または散乱するように作用するどんな物質も含むことができる。例えば、
図5の実施形態では、拡散器40は、任意選択で複屈折光学部材のすぐ隣に配置された、複屈折光学部材55とは別個の粗い下地の半透明の層を備えることができる。拡散器40は、複屈折光学部材55の第1の偏光子20の粗い下地の前面として形成してもよい。あるいは、拡散器40は、複屈折光学部材55に入る前に受信した光を散乱および均質化する、マイクロレンズのレンズシートまたはマイクロレンズのレンズアレイとすることもできる。また、正面光学部材45および複屈折光学部材55はフレーム76に収容してもよい。フレーム76は上記で言及したようにランチャネル内で摺動可能にすることができる。
図5の、正面光学部材45として使用される単純な拡散器により、分光計の実装が非常に低コストになり、コンパクトになり、光学的な位置調整不良からの影響を比較的受けにくくなる。
【0018】
非常に有利な特徴によれば、拡散器40は背景を均質化するように作用し、そうすることで、複屈折光学部材55によって生成されカメラ65によって取り込まれる縞画像が主として物体の分光特性を示す。一様な背景の正面に縞が存在する場合、カメラ65からの単一のスナップショット画像が分光特性を生み出すのに十分であり、複屈折光学部材55の走査がもはや必要なくなる。一様な背景は、有利には、Phuaらには必要とされた複雑な処理アルゴリズムなしで分光特性を与えるようにインターフェログラムの単純な直接フーリエ変換も可能にする。このことは、これにより、現行の携帯機器の処理能力を用いて単純かつ迅速に分光特性を得ることができるということを意味する。一様な背景の場合、有利には、
図11または
図12に示すような単一の縞画像により、フーリエ変換で物体の分光特性が得られる単一のインターフェログラムを多数(容易に千を超える)提供することができる。この多数の分光特性を平均することによって、ノイズが有意に低減された質の高い物体の分光特性を得ることができる。
【0019】
図5の実施形態は拡散器40によって均質化された光の分光特性を測定するので、対象物が比較的近くにあるときに、最も好ましくは縞生成光学部材/携帯機器から数センチメートル未満のときに良く機能する。
図6の実施形態は、測定にある程度の方向性を与え、分光計が、遠くにある物体の、例えば数メートル程度の位置にある物体の分光特性を目標としそれを測定することを可能にする。正面光学部材45は、追加の集束レンズ44およびマスク42として形成される。マスク42は、拡散器40上に至る光の量を制限する開口43を画定する。開口43は距離47だけ拡散器40から離間している。追跡光線により、通常は分光特性が求められる物体からそれた側方から入る光49を、本実施形態が制限する状態を示す。距離47は、好ましくは、拡散器40において追跡光線によってカバーされる面積がカメラ65の開口の断面積より大きくなるように設定される。
【0020】
複屈折光学部材55には、複屈折プリズムまたは平坦な平行複屈折板を使用することができる。しかし、一般に、携帯機器で機能するには空間が制約されること、および設計の単純化から、平坦な平行板の複屈折層が好ましい。平坦な平行板の複屈折層の場合、複屈折光学部材55を1mm程度の薄さに構築することができる。
図7に、コンパクトな分光計の複屈折光学部材55の一実施形態の概略的な光学的レイアウトを示す。分光特性が求められる物体から反射される光が、正面光学部材45を通して投影され、Z軸に沿って延在する光軸を有する。Z軸は
図7に示すように紙面内では水平の軸である。光は第1の偏光角21を有する第1の偏光子20を通る。偏光角21はX−Y平面に形成されるように示されている。X−Y平面は、概して、
図7に示すように、Z軸(複屈折光学部材55を通って正面光学部材45からデジタルカメラ65に至る光の伝送方向)に垂直である。偏光子は、X−Y平面の偏光角に直線偏光された光を伝送する。一実施形態によれば、偏光角はX軸に対して45°とすることができる。偏光子を通る光は直線偏光されたビームであり、そのビームは、第1の角度を成す第1の光学軸23を有する第1の複屈折層22に、次いで、第2の角度を成す第2の光学軸29を有する第2の複屈折層24に、次いで、(検光子と称されることもある)第2の偏光子26に伝送される。複屈折層22、24は例えば方解石から形成することができる。複屈折光学部材は、携帯機器のデジタルカメラ65の検出器アレイに光を集束するレンズを通して投影される、
図12の正則曲線の縞の画像を生成するように協働する。第2の偏光子26は、偏光角21に関係する第2の偏光角31を有する。好ましくは、第2の偏光角は、X軸に対して第1の偏光角と同じであるか、または縞のコントラストを最大にするために第1の偏光角に対して90°である。例えば、第1の偏光角21はX軸に対して45°または−45°とすることができ、第2の偏光角31はX軸に対して−45°または+45°とすることができる。
【0021】
第1の偏光子20を通った後に、直線偏光された光は第1の複屈折層22を通って、2つのビームに分けられる。その2つのビームは偏光された光の直交要素である。これらの要素は、異常光線すなわちe光線および常光線すなわちo光線と呼ばれることがある。e光線およびo光線は互いに異なる屈折率を有する。o光線の屈折率は一定であり、光の伝播方向とは関係なく、e光線の屈折率は光の伝播方向と共に変化する。したがって、一方の光線は他方の光線より速く層22を通って進み、その結果、e光線とo光線との位相差が生じる。結果として生じる位相差は層22および光のいくつかの特徴に応じて変わり、その特徴には、層22内のe光線およびo光線の伝播方向、第1の光学軸23に対する層22の切断角、第1の光学軸23を含む面と光の入射面との間の角度、偏光される光の波長、層の厚さ25および層22の材料が含まれる。この位相差は複屈折光学部材55への光の入射角と共に変化する。
【0022】
図7の実施形態では、第1の複屈折層22は、e光線およびo光線が第1の複屈折層22を出てすぐに第2の複屈折層24に入るように、第1の偏光子20と第2の複屈折層24との間に配置される。好ましくは、複屈折層22と24とは互いに直接接している。第2の複屈折層24は、第1の角度23に関係する第2の光角29を有する。
図7の実施形態では、第2の複屈折層24は、第1の複屈折層の遅軸に直交する第2の複屈折層の遅軸を有することにより、第1の複屈折層22によって生成された位相差を補償する。第2の複屈折層の補償される位相差の量は層24および光のいくつかの特徴に応じて変わり、その特徴には、層24内のe光線およびo光線の伝播方向、第2の光学軸29に対する層24の切断角、偏光される光の波長、層の厚さ27および層24の材料が含まれる。
図7の実施形態では、第2の複屈折層24を出る際に、光の偏光変調をもたらす、複屈折光学部材への光の入射角と共に変化する正味の位相差がある。この光が第2の偏光子26によって分析されると、第2の偏光子26は入射角により、伝送された光の強度の変調をもたらす。この強度変調は、
図12に示すようにカメラ65によって検出される画像の曲線の縞として現れる。
【0023】
図7の実施形態では曲線の縞を生成するために複屈折層が2つだけ使用される。第1の複屈折層22の第1の光学軸23はX−Z平面においてX軸からある角度の位置にあり、ここで、X−Z平面はX軸およびZ軸によって画定され、Z軸は複屈折光学部材を通る光の伝播方向である。任意選択で、第1の光角はX軸から−90°から90°の間にあり、より好ましくはX軸から±45°である。というのは、この角度が層の厚さを最小限に抑え計算処理の低減も可能にする縞の生成と関連するからである。本実施形態では、第2の複屈折層24の第2の光学軸29はY軸の±20°以内にあり、より好ましくは、Z軸に垂直でありY軸に沿っている。これは、X軸またはZ軸に対して90°の角度にあると表すこともできる。これらの実施形態では、第2の光角29は、第1の光角23に直交する平面でありかつZ軸に垂直な平面内にある。第1の光角が45°であり第2の光角が90°であることは、層の厚さを最小限に抑え計算処理を低減する縞の生成と関連し、したがって好ましい。
図7の実施形態では、常光線の速度が異常光線より大きくなるように層22も24も正の複屈折を有する。本実施形態では第1の光角が45°であり第2の光角が90°であると記載されているが、層22、24の厚さ25、27または材料の選択を調節することによって、他の角度で同様の結果を実現することができる。第1の複屈折層を出る際に、偏光されたビームは第2の複屈折層に入る。第1の複屈折層のe光線は第2の複屈折層のo光線になる。同様に、第1の複屈折層のo光線は第2の複屈折層のe光線になる。本実施形態では、正の第1の複屈折層22の厚さ25は正の第2の複屈折層24の厚さ27とは異なり(より大きく)、両方の結晶が、同じまたは異なる正の複屈折の複屈折材料から作製することができる。
【0024】
上記で説明した実施形態は、第1の層の第1の角度または複屈折を調節することによって変更できるが、複屈折を調節する場合は、第2の層の複屈折も調節しなければならない。例えば、正の第1の複屈折層22は、X軸から−45°の位置にX−Z平面の光学軸を有することができる。対応する第2の複屈折層24は、すぐ上の段落に記載したのと同じ第2の角度を有し、正の複屈折を有する。第1の層22の複屈折が負の複屈折に切り替えられる場合は、第2の層24の複屈折は同様に負に切り替えられる。同じ符号の複屈折を有するという意味では両方の層が単に同じ複屈折を有し、より詳細には両方が正または負である。これらの実施形態のそれぞれにおいて、第2の厚さ27は第1の厚さ25より小さい。
【0025】
図8に、第1の複屈折層22と第2の複屈折層124とが互いに異なる材料から作られる別の実施形態の光学的レイアウトの概略図を示す。層22、124は、単に一方が正のときは他方が負であるという意味で、反対の複屈折を有する。第1の複屈折層22の光学軸はX−Z平面にあり、第2の複屈折層124の光学軸もX−Z平面にある。第1の角度23は第2の角度129と同じ大きさにすることができるが、X軸に対する符号が反対になる。第1の層22は正の複屈折を有し、第2の層124は負の複屈折を有する。任意選択で、第1の光角23は−90°から90°の間にあり、第2の光角129はX軸から90°から−90°の間にあり、より好ましくは
図8に示すようにX軸から±45°である。というのは、この角度が層の厚さを最小限に抑え、計算処理の低減も可能にする縞の生成に関連し、したがって好ましいからである。また、層の複屈折は、第1の層22が負の複屈折を有し第2の層124が正の複屈折を有するように切り替えることができる。層22、124が異なる材料を含むので、結果として生じる信号にチャープが導入される。チャープは、有利には、信号対雑音比を改善するのに必要なダイナミックレンジを低減するのを助ける。
【0026】
図7の実施形態と同様に、第1の複屈折層22の厚さ25は正の第2の複屈折層124の厚さ127とは異なる。また、偏光子から直線偏光されたビームは第1の複屈折層22に入り、2つの偏光要素、o光線およびe光線に分けられる。第1の複屈折層を出る際に、e光線およびo光線は第2の複屈折層124に入る。反対の複屈折を有する
図8の実施形態の場合、第1の複屈折層のe光線は第2の複屈折層においてe光線のままである。同様に、第1の複屈折層のo光線は第2の複屈折層においてo光線のままである。上記のいずれの実施形態でも、第2の複屈折層を出る際に、e光線とo光線との正味の位相差がある。この位相差は、複屈折光学部材55に入る光の入射角と共に変化し、光の偏光変調をもたらす。この光が第2の偏光子26によって分析されると、第2の偏光子26は入射角により、伝送された光の強度の変調をもたらす。この強度変調は、カメラ65によって検出されるときに
図11に示すインターフェログラムの線の縞として現れる。
【0027】
図9に複屈折光学部材55の別の実施形態を開示する。ここで、複屈折板22、224には同じ複屈折材料が使用され、それらの板は
図8の第2の実施形態と同じ光学軸23、229を有するが、等しい厚さ25、227を有する。任意選択で、第1の光角23は−90°から90°の間にあり、第2の光角229はX軸から90°から−90°の間にあり、より好ましくは、X軸から±45°である。というのは、この角度が層の厚さを最小限に抑え、計算処理の低減も可能にする縞の生成に関連し、したがって好ましいからである。そのために調節し有用なインターフェログラムを生産するために、半波長板またはリターダ50を使用して直線偏光された光の偏光を切り替える。リターダ50は2つの複屈折層22と224との間に配置される。最も好ましくは、第1の複屈折板、半波長板および第2の複屈折層は
図9に示すように一緒になってサンドイッチ状になる。また、第1の偏光子20から直線偏光されたビームは、第1の複屈折層22に入り、2つの偏光要素、o光線およびe光線に分けられる。第1の複屈折層を出る際に、e光線およびo光線はリターダ50に入り、第1の複屈折層22のe光線が第2の複屈折層224に入るときにo光線になるように、偏光が切り替えられる。同様に、第1の複屈折層22のo光線は第2の複屈折層224ではe光線になる。第2の複屈折層を出る際には、e光線とo光線との正味の位相差がある。この位相差は、複屈折光学部材55への光の入射角と共に変化し、光の偏光変調をもたらす。この光が第2の偏光子26によって分析されると、第2の偏光子26は入射角により、伝送された光の強度の変調をもたらす。この強度変調は、やはり
図11に示すように、カメラ65によって検出される画像に直線の縞として現れる。
【0028】
図10に複屈折光学部材55の別の実施形態を開示する。複屈折光学部材の最初の3つの代表的な実施形態は一軸複屈折結晶または二軸複屈折結晶を使用して構築できるが、
図10の実施形態では二軸複屈折結晶のみ使用される。非常に有利な特徴によれば、複屈折光学部材55には単一の複屈折板122が使用される。この単一の複屈折層122は、例えばチタン酸リン酸カリウム(KTP)などの二軸複屈折結晶を使用して構築される。複屈折層122の光学軸は両方ともX−Z平面にある。任意選択で、光学軸の一方の角度、光角23は−90°から90°の間にあり、より好ましくは、層122の光学軸の一方はZ軸に沿っている。というのは、この角度は計算処理を低減するのに必要な縞の生成と関連するからである。
【0029】
開示した実施形態のそれぞれについて、最後の複屈折層を出る際に、直交偏光された2つの光線の間に正味の位相差がある。この位相差は複屈折光学部材55への光の入射角と共に変化し、第2の偏光子26に入る光の偏光変調をもたらす。この光が第2の偏光子26によって分析されると、第2の偏光子26は入射角により、伝送された光の強度の変調をもたらす。この強度変調は、カメラ65によって検出されるときに、(
図8および
図9の実施形態では)
図11の通常の直線の縞として、または(
図7および
図10の実施形態では)
図12に示す正則曲線の縞として現れる。
【0030】
上記で言及したように、拡散器40がない場合、複屈折光学部材55の生成された縞は、外部の情報源の画像に重ねられる。このような画像から得られるインターフェログラムの直接フーリエ変換は不正確な物体の分光特性を生み出す。非常に有利な要素によれば、拡散器40は、背景を一様かつ均質にするように作用して、本質的に背景状況の情報を信号から無くすことが可能になり、そうなると、正確な物体の分光特性を与えるインターフェログラムの直接フーリエ変換が可能になる。背景データを低減すると、従来の携帯機器に見られるプロセッサによって対処できる処理を簡単にすることが可能である。
【0031】
上記で言及したように、複屈折光学部材55を通った後の入射角による強度変調は、カメラ65によって検出される画像に、
図11に示すような通常の直線の縞、または
図12に示すような正則曲線の縞を生み出す。
図11は、
図8および/または
図9の実施形態を用いてカメラ65によって取り込まれた直線の縞の代表的な画像であり、
図12は、
図7および
図10の実施形態のいずれかを用いてカメラ65によって取り込まれた曲線の縞の代表的な画像である。画像の各列全体にわたって画素値をプロットすることによって、光度変調対複屈折光学部材55への光の入射角を示す単一の列のインターフェログラムが得られる。単純なフーリエ変換をこのインターフェログラムに適用すると分光特性が与えられる。背景が一様な場合、
図11または
図12に示すような単一の縞画像は、有利には、フーリエ変換で物体の分光特性が得られる単一の未加工インターフェログラムを多数(容易に千を超える)提供することができる。多数の分光特性の平均をとることによって、ノイズが有意に低減された、質の高い物体の分光特性の測定が開発される。
【0032】
携帯機器のデジタルカメラは通常、比較的多数(数百万)の画素を有する。
図11および
図12に示すような単一の縞画像には、通常、1千を超える列がある。各列は対応するインターフェログラムを生み出すことができる。各インターフェログラムにフーリエ変換を実行することによって、物体の1千を超える分光特性を得ることができる。重要なことに、これは全て、拡散器40によって均質化された光によって、単一の縞画像のみを用いて実現することができる。これらの測定された分光特性は、拡散器40によって均質化された同じ光のものである。
【0033】
したがって、非常に有利な特徴によれば、測定値のスペクトルノイズを低減するために平均化を行うことができる。ソフトウェア制御モジュールまたは「app(アプリケーションプログラム)」が、目標とされる特定の集合の命令を実行するように設計される。この場合は、appは、元の設備に内蔵することもでき、標準的なインターネット接続を介して携帯機器のプロセッサにロードすることもできる。ソフトウェア制御モジュールは、縞生成光学部材によって生み出される干渉縞に基づき単一画像内の複数のインターフェログラムに対応する信号を受信する。単一の分光特性を得るために単一の未加工インターフェログラムごとにフーリエ変換が実行され、次いで、処理が繰り返される。単一の分光特性をいくつか一緒にして平均すると、物体の平均の分光特性が生み出される。既知の基準から経験的に導かれたこの平均の分光特性は、このような既知の基準の実際の分光特性とよく相関することが分かっている。
【0034】
図14にこの平均の技法の例を示す。3つの異なる平均値を示す。概して、より多くの特性の平均をとるほどノイズが大幅に低減される。第1の曲線が10の分光特性の平均であり、著しいノイズを示す。しかし、100の分光特性の平均をとるとノイズが低減され、1000の分光特性の平均をとるとノイズがさらに低減される。平均化の後の単純なフーリエ変換は、携帯機器のプロセッサ(単数または複数)によって計算することができる。
【0035】
フーリエ変換および平均化を用いることによって、縞の生画像に対応する、カメラによって生成された信号を処理して処理済みの分光特性にするために、通常、携帯機器の一部分として内蔵されたプロセッサを使用することができる。物質分析では、処理済みの分光特性の特徴的な波長はスペクトル指紋とすることができる。このスペクトル指紋は、携帯機器のデータベースに格納された基準スペクトルまたはネットワークを介してアクセスされる離間した基準スペクトルと照合するために使用することができる。
【0036】
物質分析において有用な光のパラメータが分光反射率(または分光吸収率)である。物体の分光特性は、(本質的な材料の性質である)物体の分光反射率および物体を照明する光のスペクトルに応じて変わる。先に言及したように、フラッシュ照明または光源77は、電話間または装置間で比較的ばらつきがない。フラッシュ照明の分光特性は、基準物質から固定の距離において、既知の較正済み分光反射率を有する基準物質の分光特性を測定することによって、判定することができる。フラッシュ照明の分光特性が分かると、物体の分光反射率を判定することができる。物体の分光反射率は、物体によって反射される光の分光特性をフラッシュ照明の分光特性で除算したものである。
【0037】
物体の分光特性は物体上に照射される光に応じて変わる。室内の光、屋外の自然光、LED、蛍光灯などにより物体が異なって見える。物体の分光反射率は物体の固有の性質であり、物体の分光特性は物体に当たる(さらに分光計に反射される)光に応じて変わる。非常に有利な特徴によれば、本明細書に開示するコンパクトな分光計は、精密であり調整された色測定のために使用することを可能にし、このことは、異なる照明条件でのアイテムの色を重視する見込み客に対する売り主による(売り主または売り主の代理人および顧客を含む、広範囲にわたる人々を含むものと理解される)、販売およびマーケティングのツールとして有用とすることができる。例えば衣類など、広範囲にわたる色を提供するアイテムの売り主は、例えば、アイテムの分光反射率および広範囲にわたる様々な光源下でそのアイテムを視認するという選択肢を顧客に提示することができる。必要なステップは、分光特性と分光反射率との関係に基づくものであり、標準的な(例えばウェブサイト上にアイテムを表示するために見ることができるような標準的なものとして用いられる)光源の分光特性を較正するステップまたはフラッシュ照明の較正済み分光特性を使用するステップと、アイテムの分光反射率を測定するステップと、見込み客がアイテムの分光反射率を利用できるようにするステップとを含む。次に、見込み客は、アイテムの分光反射率および光源の分光特性または対象となる特定の照明条件に関する情報を用いて、アイテムの模擬的な分光特性を判定する。このようにして、見込み客は様々な異なる照明条件でアイテムがどのように見えるかを理解することができる。
【0038】
コンパクトな分光計を使用するこの方法をより詳細に見ると、まず光源の分光特性が較正される。装置間でフラッシュ照明が全く同じである場合は、工場の較正で十分である。しかし、フラッシュ照明の実際の分光特性はわずかにはずれることがあり、経時的に劣化することがあり、したがって、フラッシュ照明の実際の分光特性を測定するために基準物質を使用することができる。あるいは、売り主は、同じ技術を用いて対象となる代替の光源/照明条件を較正することができる。次に、売り主はアイテムの分光反射率を測定する。次いで、売り主は(ここでは売り主または売り主の代理人を意味すると理解される)アイテムの較正済みの分光反射率を見込み客が利用できるようにする。これは、例えば、アイテムの較正済みの分光反射率を売り主のウェブサイト上で利用できるようにすることによって行われる。このような見込み客は、アイテムの分光反射率をロードし、異なる照明条件(屋外、LEDを使用した屋内、ディスコ、パブ、明るいビーチ、など)を模擬する見込み客自身の比較光源の測定または記録した分光特性を用いて、アイテムの模擬的な分光特性を判定し、アイテムが異なる照明条件でどのように見えるかを可視化することができる。
【0039】
上記で説明した、アイテムの色測定を行う方法は、本明細書に開示するコンパクトな分光計を使用することにより劇的に単純化される。売り主は、アイテムの分光反射率を測定するステップの間に分光計を使用する。売り主は、任意選択で、標準光源の分光特性を得る最初のステップの間に分光計を使用することもできる。顧客または見込み客は、アイテムの模擬的な分光特性を判定するステップの間に分光計を使用することになる。顧客によって使用される分光計は、売り主によって使用される分光計と同じでも異なっていてもよい。
【0040】
前述の開示および特定の実施形態の詳細な説明から、本発明の真の範囲および精神から逸脱することなしに、様々な修正形態、追加形態および他の代替の実施形態が可能であることが明らかである。検討した実施形態は、本発明の原理およびその現実的な用途の最も良い例示を提供し、そうすることで、企図される特定の使用に適した様々な実施形態および様々な修正形態で当業者が本発明を利用できるように、選択および説明した。このような修正形態および変更形態は全て、公平に、法的に、公正に権利が与えられた範囲に従って解釈されるときに、添付の特許請求の範囲によって決定される本発明の範囲内に包含される。