(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6516722
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】ビームポジショナのレーザ出射に基づく制御
(51)【国際特許分類】
B23K 26/062 20140101AFI20190513BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20190513BHJP
B23K 26/38 20140101ALI20190513BHJP
【FI】
B23K26/062
B23K26/082
B23K26/38 Z
【請求項の数】17
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-503316(P2016-503316)
(86)(22)【出願日】2014年3月15日
(65)【公表番号】特表2016-516585(P2016-516585A)
(43)【公表日】2016年6月9日
(86)【国際出願番号】US2014030043
(87)【国際公開番号】WO2014145305
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2017年2月24日
(31)【優先権主張番号】61/800,903
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593141632
【氏名又は名称】エレクトロ サイエンティフィック インダストリーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(74)【代理人】
【識別番号】100192809
【弁理士】
【氏名又は名称】桑原 宏光
(72)【発明者】
【氏名】フランケル,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ビューチャイン,ボブ
(72)【発明者】
【氏名】ギブソン,ダグ
【審査官】
岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−167491(JP,A)
【文献】
特開2004−042103(JP,A)
【文献】
特表2005−533658(JP,A)
【文献】
特開2011−056521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーム軸位置及びビーム軸速度を一定のレーザパルス繰り返し率でのレーザの出射に連係するためのレーザ加工方法であって、
レーザからの光路に沿った伝搬に関して一定のレーザパルス繰り返し率でレーザパルスからなるビームを生成し、
前記光路に沿って配置され、ワークピース上で前記光路のビーム軸を移動パターンに方向付けることが可能なファーストポジショナを含むビーム位置決めシステムを利用し、前記移動パターンは、前記ワークピースの非切断領域上で前記ビーム軸を方向付けること及び前記ワークピースに対する開始位置及び終了位置の間の切断経路上をビーム軸速度で前記ビーム軸を方向付けて前記レーザパルス繰り返し率で、かつ前記切断経路に沿って前記ワークピースの物理的特性を変化させる放射照度で前記レーザパルスを伝搬することを含み、
前記レーザパルスのうち選択されたものが前記光路に沿って前記ワークピースに伝搬することを許可又は阻止するパルス選別デバイスを利用し、前記ワークピースに伝搬することを許可された前記レーザパルスは作動レーザパルスであり、前記ワークピースに伝搬することを阻止された前記レーザパルスは非作動レーザパルスであり、
ワークピースの前記物理的特性を変化させるレーザ加工パラメータを受信可能で、前記レーザ、ビーム位置決めシステム、及び前記パルス選別デバイスに直接的又は間接的に制御信号を供給可能なコントローラを利用し、前記レーザ加工パラメータは、前記レーザパルス繰り返し率、前記切断経路、前記ビーム軸速度、及び前記放射照度を含むか、あるいはこれらを決定し、
前記コントローラに関連付けられた処理回路であって、前記ファーストポジショナにファーストポジショナ制御信号を供給可能な処理回路を利用して、前記ワークピース上の前記切断経路に沿って移動するように前記ビーム軸を案内し、前記レーザパルス繰り返し率に基づいて、前記処理回路は、前記ワークピースに対する前記開始位置に前記ビーム軸を案内し、前記作動レーザパルスのうち最初のレーザパルスが前記ワークピースに当たったときに前記ビーム軸速度で移動させることが可能であり、前記タイミングデバイスを通してゲートされた1以上のパルス選別デバイス信号が、前記パルス選別デバイスに前記ワークピースの非切断領域上の非作動レーザパルスの伝搬を阻止させ、前記ワークピースに対する前記開始位置と前記終了位置とを含みこれらの間の前記切断経路上で前記ワークピースに当てさせることができ、
前記処理回路は、前記ファーストポジショナ制御信号の伝達と、前記ビーム軸速度での前記ワークピースに対する前記開始位置への前記ビーム軸への案内との間のファーストポジショナ遅延を提供可能である、レーザ加工方法。
【請求項2】
ビーム軸位置及びビーム軸速度を一定のレーザパルス繰り返し率でのレーザの出射に連係するためのレーザ加工方法であって、
レーザからの光路に沿った伝搬に関して一定のレーザパルス繰り返し率でレーザパルスからなるビームを生成し、
前記光路に沿って配置され、ワークピース上で前記光路のビーム軸を移動パターンに方向付けることが可能なファーストポジショナを含むビーム位置決めシステムを利用し、前記移動パターンは、前記ワークピースの非切断領域上で前記ビーム軸を方向付けること及び前記ワークピースに対する開始位置及び終了位置の間の切断経路上をビーム軸速度で前記ビーム軸を方向付けて前記レーザパルス繰り返し率で、かつ前記切断経路に沿って前記ワークピースの物理的特性を変化させる放射照度で前記レーザパルスを伝搬することを含み、
前記レーザパルスのうち選択されたものが前記光路に沿って前記ワークピースに伝搬することを許可又は阻止するパルス選別デバイスを利用し、前記ワークピースに伝搬することを許可された前記レーザパルスは作動レーザパルスであり、前記ワークピースに伝搬することを阻止された前記レーザパルスは非作動レーザパルスであり、
ワークピースの前記物理的特性を変化させるレーザ加工パラメータを受信可能で、前記レーザ、ビーム位置決めシステム、及び前記パルス選別デバイスに直接的又は間接的に制御信号を供給可能なコントローラを利用し、前記レーザ加工パラメータは、前記レーザパルス繰り返し率、前記切断経路、前記ビーム軸速度、及び前記放射照度を含むか、あるいはこれらを決定し、
前記コントローラに関連付けられた処理回路であって、前記ファーストポジショナにファーストポジショナ制御信号を供給可能な処理回路を利用して、前記ワークピース上の前記切断経路に沿って移動するように前記ビーム軸を案内し、前記レーザパルス繰り返し率に基づいて、前記処理回路は、前記ワークピースに対する前記開始位置に前記ビーム軸を案内し、前記作動レーザパルスのうち最初のレーザパルスが前記ワークピースに当たったときに前記ビーム軸速度で移動させることが可能であり、前記タイミングデバイスを通してゲートされた1以上のパルス選別デバイス信号が、前記パルス選別デバイスに前記ワークピースの非切断領域上の非作動レーザパルスの伝搬を阻止させ、前記ワークピースに対する前記開始位置と前記終了位置とを含みこれらの間の前記切断経路上で前記ワークピースに当てさせることができ、
前記処理回路は、前記ワークピース上の非作動レーザパルスの伝搬の阻止から作動レーザパルスの伝搬の許可への前記パルス選別デバイスの有効な変更と、前記最初の作動レーザパルスの前記パルス選別デバイスの通過との間のパルス選別デバイスリードタイムを提供可能である、レーザ加工方法。
【請求項3】
ビーム軸位置及びビーム軸速度を一定のレーザパルス繰り返し率でのレーザの出射に連係するためのレーザ加工方法であって、
レーザからの光路に沿った伝搬に関して一定のレーザパルス繰り返し率でレーザパルスからなるビームを生成し、
前記光路に沿って配置され、ワークピース上で前記光路のビーム軸を移動パターンに方向付けることが可能なファーストポジショナを含むビーム位置決めシステムを利用し、前記移動パターンは、前記ワークピースの非切断領域上で前記ビーム軸を方向付けること及び前記ワークピースに対する開始位置及び終了位置の間の切断経路上をビーム軸速度で前記ビーム軸を方向付けて前記レーザパルス繰り返し率で、かつ前記切断経路に沿って前記ワークピースの物理的特性を変化させる放射照度で前記レーザパルスを伝搬することを含み、
前記レーザパルスのうち選択されたものが前記光路に沿って前記ワークピースに伝搬することを許可又は阻止するパルス選別デバイスを利用し、前記ワークピースに伝搬することを許可された前記レーザパルスは作動レーザパルスであり、前記ワークピースに伝搬することを阻止された前記レーザパルスは非作動レーザパルスであり、
ワークピースの前記物理的特性を変化させるレーザ加工パラメータを受信可能で、前記レーザ、ビーム位置決めシステム、及び前記パルス選別デバイスに直接的又は間接的に制御信号を供給可能なコントローラを利用し、前記レーザ加工パラメータは、前記レーザパルス繰り返し率、前記切断経路、前記ビーム軸速度、及び前記放射照度を含むか、あるいはこれらを決定し、
前記コントローラに関連付けられた処理回路であって、前記ファーストポジショナにファーストポジショナ制御信号を供給可能な処理回路を利用して、前記ワークピース上の前記切断経路に沿って移動するように前記ビーム軸を案内し、前記レーザパルス繰り返し率に基づいて、前記処理回路は、前記ワークピースに対する前記開始位置に前記ビーム軸を案内し、前記作動レーザパルスのうち最初のレーザパルスが前記ワークピースに当たったときに前記ビーム軸速度で移動させることが可能であり、前記タイミングデバイスを通してゲートされた1以上のパルス選別デバイス信号が、前記パルス選別デバイスに前記ワークピースの非切断領域上の非作動レーザパルスの伝搬を阻止させ、前記ワークピースに対する前記開始位置と前記終了位置とを含みこれらの間の前記切断経路上で前記ワークピースに当てさせることができ、
前記処理回路は、前記ワークピース上の作動レーザパルスの伝搬の許可から非作動レーザパルスの伝搬の阻止への前記パルス選別デバイスの有効な変更と、前記ワークピース上の前記切断経路の前記終了位置に当たる前記作動レーザパルスの前記パルス選別デバイスの通過との間のパルス選別デバイス遅れ時間を提供可能である、レーザ加工方法。
【請求項4】
前記処理回路は、前記パルス選別デバイス信号の伝達と前記切断経路に沿った前記作動レーザパルスのうち前記最初の作動レーザパルスの前記ワークピースの表面への到達との間のレーザパルス伝搬遅延を提供可能である、請求項1から3のいずれか一項のレーザ加工方法。
【請求項5】
前記処理回路は、前記パルス選別デバイス信号の伝達と前記パルス選別デバイスの動作能力との間のパルス選別デバイス伝搬遅延を提供し、前記ワークピース上での非作動レーザパルスの伝搬の阻止から作動レーザパルスの伝搬の許可へ切り替え可能である、請求項1から4のいずれか一項のレーザ加工方法。
【請求項6】
前記ファーストポジショナは、前記移動パターンを含むのに十分な大きさの利用可能なスキャン領域を有し、前記ファーストポジショナは、前記利用可能なスキャン領域内で複数のパスにわたって前記移動パターンを繰り返すことができる、請求項1から5のいずれか一項のレーザ加工方法。
【請求項7】
前記ワークピースは、前記ファーストポジショナの第1の利用可能なスキャン領域及び前記ファーストポジショナの第2の利用可能なスキャン領域を含むのに十分大きく、前記第2の利用可能なスキャン領域は前記第1の利用可能なスキャン領域に隣接しており、前記第1の利用可能なスキャン領域内の第1の切断経路の前記終了位置は、前記第2の利用可能なスキャン領域内の第2の切断経路の前記開始位置に隣接しており、レーザ照射により変化させた前記物理的特性は、前記第1の切断経路、前記第2の切断経路、及びこれらの接続点において同一である、請求項1から6のいずれか一項のレーザ加工方法。
【請求項8】
前記ファーストポジショナは、レーザ加工システム内に固定位置を有しており、前記ワークピースは、前記ファーストポジショナの前記固定位置に対して移動するステージにより支持されている、請求項1から7のいずれか一項のレーザ加工方法。
【請求項9】
表面を有するワークピースを加工するためのレーザ加工システムであって、
レーザからの光路に沿った伝搬に関してあるレーザパルス繰り返し率でレーザパルスを出射させるレーザトリガデバイスを含むレーザと、
前記光路に沿って配置され、ワークピース上で前記光路のビーム軸を移動パターンに方向付けることが可能なファーストポジショナを含むビーム位置決めシステムであって、前記移動パターンは、前記ワークピースの非切断領域上で前記ビーム軸を方向付けること及び前記ワークピースに対する開始位置及び終了位置の間の切断経路上をビーム軸速度で前記ビーム軸を方向付けて前記レーザパルス繰り返し率で、かつ前記切断経路に沿って前記ワークピースの物理的特性を変化させる放射照度で前記レーザパルスを伝搬することを含むビーム位置決めシステムと、
前記光路に沿って配置され、前記レーザパルスのうち選択されたものが前記光路に沿って前記ワークピースに伝搬することを許可又は阻止することが可能なパルス選別デバイスであって、前記ワークピースに伝搬することを許可された前記レーザパルスは作動レーザパルスであり、前記ワークピースに伝搬することを阻止された前記レーザパルスは非作動レーザパルスであるパルス選別デバイスと、
ワークピースの前記物理的特性を変化させるレーザ加工パラメータを受信可能で、前記レーザ、前記ビーム位置決めシステム、及び前記パルス選別デバイスに直接的又は間接的に制御信号を供給可能なコントローラであって、前記レーザ加工パラメータは、前記レーザパルス繰り返し率、前記切断経路、前記ビーム軸速度、及び前記放射照度を含むか、あるいはこれらを決定するコントローラと、
前記コントローラと通信をするタイミングデバイスであって、前記レーザの前記レーザパルス繰り返し率を一定にするために、レーザトリガ信号を一定の繰り返し率でレーザトリガデバイスに送信させることができ、これにより、安定的で予測可能なパルス特性を呈するように前記レーザパルスの出射を一定にするタイミングデバイスと、
前記コントローラに関連付けられ、前記ファーストポジショナにファーストポジショナ制御信号を供給可能な処理回路であって、前記ワークピース上の前記切断経路に沿って移動するように前記ビーム軸を案内し、前記レーザパルス繰り返し率に基づいて、前記処理回路は、前記ワークピースに対する前記開始位置に前記ビーム軸を案内し、前記作動レーザパルスのうち最初のレーザパルスが前記ワークピースに当たったときに前記ビーム軸速度で移動させることが可能であり、前記タイミングデバイスを通してゲートされた1以上のパルス選別信号が、前記パルス選別デバイスに前記ワークピースの非切断領域上の非作動レーザパルスの伝搬を阻止させ、前記ワークピースに対する前記開始位置と前記終了位置とを含みこれらの間の前記切断経路上で前記ワークピースに当てさせることができる処理回路と、
を備え、
前記処理回路は、前記ファーストポジショナ制御信号の伝達と、前記ビーム軸速度での前記ワークピースに対する前記開始位置への前記ビーム軸への案内との間のファーストポジショナ遅延を提供可能である、レーザ加工システム。
【請求項10】
表面を有するワークピースを加工するためのレーザ加工システムであって、
レーザからの光路に沿った伝搬に関してあるレーザパルス繰り返し率でレーザパルスを出射させるレーザトリガデバイスを含むレーザと、
前記光路に沿って配置され、ワークピース上で前記光路のビーム軸を移動パターンに方向付けることが可能なファーストポジショナを含むビーム位置決めシステムであって、前記移動パターンは、前記ワークピースの非切断領域上で前記ビーム軸を方向付けること及び前記ワークピースに対する開始位置及び終了位置の間の切断経路上をビーム軸速度で前記ビーム軸を方向付けて前記レーザパルス繰り返し率で、かつ前記切断経路に沿って前記ワークピースの物理的特性を変化させる放射照度で前記レーザパルスを伝搬することを含むビーム位置決めシステムと、
前記光路に沿って配置され、前記レーザパルスのうち選択されたものが前記光路に沿って前記ワークピースに伝搬することを許可又は阻止することが可能なパルス選別デバイスであって、前記ワークピースに伝搬することを許可された前記レーザパルスは作動レーザパルスであり、前記ワークピースに伝搬することを阻止された前記レーザパルスは非作動レーザパルスであるパルス選別デバイスと、
ワークピースの前記物理的特性を変化させるレーザ加工パラメータを受信可能で、前記レーザ、前記ビーム位置決めシステム、及び前記パルス選別デバイスに直接的又は間接的に制御信号を供給可能なコントローラであって、前記レーザ加工パラメータは、前記レーザパルス繰り返し率、前記切断経路、前記ビーム軸速度、及び前記放射照度を含むか、あるいはこれらを決定するコントローラと、
前記コントローラと通信をするタイミングデバイスであって、前記レーザの前記レーザパルス繰り返し率を一定にするために、レーザトリガ信号を一定の繰り返し率でレーザトリガデバイスに送信させることができ、これにより、安定的で予測可能なパルス特性を呈するように前記レーザパルスの出射を一定にするタイミングデバイスと、
前記コントローラに関連付けられ、前記ファーストポジショナにファーストポジショナ制御信号を供給可能な処理回路であって、前記ワークピース上の前記切断経路に沿って移動するように前記ビーム軸を案内し、前記レーザパルス繰り返し率に基づいて、前記処理回路は、前記ワークピースに対する前記開始位置に前記ビーム軸を案内し、前記作動レーザパルスのうち最初のレーザパルスが前記ワークピースに当たったときに前記ビーム軸速度で移動させることが可能であり、前記タイミングデバイスを通してゲートされた1以上のパルス選別信号が、前記パルス選別デバイスに前記ワークピースの非切断領域上の非作動レーザパルスの伝搬を阻止させ、前記ワークピースに対する前記開始位置と前記終了位置とを含みこれらの間の前記切断経路上で前記ワークピースに当てさせることができる処理回路と、
を備え、
前記処理回路は、前記ワークピース上の作動レーザパルスの伝搬の許可から非作動レーザパルスの伝搬の阻止への前記パルス選別デバイスの有効な変更と、前記ワークピース上の前記切断経路の前記終点位置に当たる前記作動レーザパルスの前記パルス選別デバイスの通過との間のパルス選別デバイス遅れ時間を提供可能である、レーザ加工システム。
【請求項11】
前記処理回路は、前記ワークピース上の非作動レーザパルスの伝搬の阻止から作動レーザパルスの伝搬の許可への前記パルス選別デバイスの有効な変更と、前記切断経路に沿った前記作動レーザパルスのうちの1つの前記パルス選別デバイスの通過との間のパルス選別デバイスリードタイムを提供可能である、請求項9又は10のレーザ加工システム。
【請求項12】
前記処理回路は、前記パルス選別デバイス信号の伝達と前記切断経路に沿った前記作動レーザパルスのうち前記最初の作動レーザパルスの前記ワークピースの前記表面への到達との間のレーザパルス伝搬遅延を提供可能である、請求項9から11のいずれか一項のレーザ加工システム。
【請求項13】
前記処理回路は、前記パルス選別デバイス信号の伝達と前記パルス選別デバイスの動作能力との間のパルス選別デバイス伝搬遅延を提供し、前記ワークピース上での非作動レーザパルスの伝搬の阻止から作動レーザパルスの伝搬の許可へ切り替え可能である、請求項9から12のいずれか一項のレーザ加工システム。
【請求項14】
前記ファーストポジショナは、前記移動パターンを含むのに十分な大きさの利用可能なスキャン領域を有し、前記ファーストポジショナは、前記利用可能なスキャン領域内で複数のパスにわたって前記移動パターンを繰り返すことができる、請求項9から13のいずれか一項のレーザ加工システム。
【請求項15】
前記ワークピースは、前記ファーストポジショナの第1の利用可能なスキャン領域及び前記ファーストポジショナの第2の利用可能なスキャン領域を含むのに十分大きく、前記第2の利用可能なスキャン領域は前記第1の利用可能なスキャン領域に隣接しており、前記第1の利用可能なスキャン領域内の第1の切断経路の前記終了位置は、前記第2の利用可能なスキャン領域内の第2の切断経路の前記開始位置に隣接しており、レーザ照射により変化させた前記物理的特性は、前記第1の切断経路、前記第2の切断経路、及びこれらの接続点において同一である、請求項9から14のいずれか一項のレーザ加工システム。
【請求項16】
前記レーザトリガデバイスはQスイッチであり、加えて/あるいは、前記ファーストポジショナは1対のガルバノメータミラーであり、加えて/あるいは、前記パルス選別デバイスはAOMであり、加えて/あるいは、前記タイミングデバイスはフィールドプログラマブルゲートアレイであり、加えて/あるいは、前記処理回路はデジタル信号プロセッサであり、加えて/あるいは、前記ワークピースは1mm未満の厚さを有する、請求項9から15のいずれか一項のレーザ加工システム。
【請求項17】
前記ファーストポジショナは、前記レーザ加工システム内に固定位置を有しており、前記ワークピースは、前記ファーストポジショナの前記固定位置に対して移動するステージにより支持されている、請求項9から16のいずれか一項のレーザ加工システム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2013年3月15日に提出された米国仮特許出願第61/800,903号の本出願であり、当該出願の内容はその全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(c) 2014 Electro Scientific Industries, Inc.この特許文書の開示の一部には、著作権保護を受ける構成要素が含まれている。この特許文書又は特許開示は米国特許商標庁の特許ファイル又は記録に記載されているので、著作権者は、いかなる者による特許文書又は特許開示のファクシミリによる複製に対して異議を唱えることはないが、それ以外についてはどのようなものであってもすべての著作権を留保する。米国連邦規則集第37巻第1.71条(d)。
【技術分野】
【0003】
本出願は、ビーム位置をレーザ出射に同期させるためのシステム及び方法に関するものであり、特に、ワークピース及びビーム軸位置をレーザパルスの出射のタイミングに同期させるためのシステム及び方法に関するものである。
【0004】
レーザ加工システムは、一般的に、ビーム位置決めシステムによって生成され、レーザ制御電子機器に外部入力として伝搬されるトリガ信号によってワークピース上の位置へのレーザパルスの照射を調整する。そのような手法においては、いつレーザを照射するかについてのタイミングの判断がビーム位置決めシステムによって全面的に計算され決定されるので、ビーム位置決めシステムを「マスタ装置」として考えることができ、レーザは「スレーブ装置」として考えられる。ビーム位置決めシステムからのトリガ信号によって、レーザ制御電子機器は、レーザパルスを出射するようにQスイッチのようなパルス初期化デバイスを始動する。
【0005】
これらの位置決めを利用した加工システムの一部は、ビームポジショナがターゲット位置に到達したときにのみレーザパルスが照射される「デフォルトオフ」アプローチを使ってパルスエネルギーの変動性を最小限にしようとしている。低いレーザパワー、このプロセスの性質、及びシステム構成によって、そのようなシステムにおけるレーザパルスのデューティサイクルが比較的低くなる。一部のウェハダイシングレーザ加工システムにおいては、ガルバノメータコントローラが、任意にトリガ信号をQスイッチに送信し、ガルバノメータミラーによって方向付けられたビーム軸が既知の速度で所望の位置に到達したときにレーザパルスの出射を開始する。
【0006】
上述した「レーザがビームポジショナに追随する」シナリオの問題点は、レーザが定常状態で駆動されているときに、レーザが最善の状態となり、それらのパルスパラメータがより一貫性のあるものになることである。また、Qスイッチに送信されるトリガ信号パルス列のタイミングにおいて、開始や停止、周波数変化などが一定でなければ、初期ホットパルスのようなレーザ出力ビームにおける望ましくない過渡状態が生じ、低周波数平均パワードリフトが生じ、パルス間のパルス幅の変動性が高まり、ピークパワーの変動性が高くなってしまう。これらの変化によって、ワーク表面に適用されるレーザパラメータの制御が縮小され、これにより加工ウィンドウが縮小してしまい、レーザ加工品質が悪化することがある。Brian Baird等による米国特許第6,172,325号及びKeith Grant等による米国特許第7.61,669号は、ビーム位置決めシステムがマスタ装置であるビーム位置をベースとしたレーザ同期方法における改良について述べている。これらの特許は、いずれも本出願の譲受人に譲渡されており、いずれも本明細書に参照により組み込まれる。
【0007】
本概要は、本発明の詳細な説明においてさらに述べられる概念を厳選したものを簡略化した形態で紹介するために提供されるものである。本概要は、特許請求の範囲に記載された主題の重要な又は必須の創作的な概念を特定すること意図しているものでも、あるいは、特許請求の範囲に記載された主題の範囲を決定することを意図しているものでもない。
【0008】
ある実施形態において、ビーム軸位置及びビーム軸速度を一定のレーザパルス繰り返し率でのレーザの出射に連係するための方法では、レーザからの光路に沿った伝搬に関して一定のレーザパルス繰り返し率でレーザパルスからなるビームを生成し、上記光路に沿って配置され、ワークピース上で上記光路のビーム軸を移動パターンに方向付けることが可能なファーストポジショナを利用し、上記移動パターンは、上記ワークピースの非切断領域上で上記ビーム軸を方向付けること及び上記ワークピースに対する開始位置及び終了位置の間の切断経路上をビーム軸速度で上記ビーム軸を方向付けて上記レーザパルス繰り返し率で、かつ上記切断経路に沿って上記ワークピースの物理的特性を変化させる放射照度で上記レーザパルスを伝搬することを含み、上記レーザパルスのうち選択されたものが上記光路に沿って上記ワークピースに伝搬することを許可又は阻止するパルス選別デバイスを利用し、上記ワークピースに伝搬することを許可された上記レーザパルスは作動レーザパルスであり、上記ワークピースに伝搬することを阻止された上記レーザパルスは非作動レーザパルスであり、ワークピースの上記物理的特性を変化させるレーザ加工パラメータを受信可能で、上記レーザ、上記ビーム位置決めシステム、及び上記パルス選別デバイスに直接的又は間接的に制御信号を供給可能なコントローラを利用し、上記レーザ加工パラメータは、上記レーザパルス繰り返し率、上記切断経路、上記ビーム軸速度、及び上記放射照度を含むか、あるいはこれらを決定し、上記コントローラと通信をする又は上記コントローラに関連付けられたタイミングデバイスを利用し、上記タイミングデバイスは、上記レーザの上記レーザパルス繰り返し率を一定にするために、レーザトリガ信号を一定の繰り返し率でレーザトリガデバイスに送信させることができ、これにより、安定的で予測可能なパルス特性を呈するように上記レーザパルスの出射を一定にし、上記コントローラに関連付けられた処理回路であって、上記ファーストポジショナにファーストポジショナ制御信号を供給可能な処理回路を利用して、上記ワークピース上の上記切断経路に沿って移動するように上記ビーム軸を案内し、上記レーザパルス繰り返し率に基づいて、上記処理回路は、上記ワークピースに対する上記開始位置に上記ビーム軸を案内し、上記作動レーザパルスのうち最初のレーザパルスが上記ワークピースに当たったときに上記ビーム軸速度で移動させることが可能であり、上記タイミングデバイスを通してゲートされた1以上のパルス選別信号が、上記パルス選別デバイスに上記ワークピースの非切断領域上の非作動レーザパルスの伝搬を阻止させ、上記ワークピースに対する上記開始位置と上記終了位置とを含みこれらの間の上記切断経路上で上記ワークピースに当てさせることができる。
【0009】
ある実施形態において、表面を有するワークピースを加工するためのレーザ加工システムは、レーザからの光路に沿った伝搬に関してあるレーザパルス繰り返し率でレーザパルスを出射させるレーザトリガデバイスを含むレーザと、上記光路に沿って配置され、ワークピース上で上記光路のビーム軸を移動パターンに方向付けることが可能なファーストポジショナを含むビーム位置決めシステムであって、上記移動パターンは、上記ワークピースの非切断領域上で上記ビーム軸を方向付けること及び上記ワークピースに対する開始位置及び終了位置の間の切断経路上をビーム軸速度で上記ビーム軸を方向付けて上記レーザパルス繰り返し率で、かつ上記切断経路に沿って上記ワークピースの物理的特性を変化させる放射照度で上記レーザパルスを伝搬することを含むビーム位置決めシステムと、上記光路に沿って配置され、上記レーザパルスのうち選択されたものが上記光路に沿って上記ワークピースに伝搬することを許可又は阻止することが可能なパルス選別デバイスであって、上記ワークピースに伝搬することを許可された上記レーザパルスは作動レーザパルスであり、上記ワークピースに伝搬することを阻止された上記レーザパルスは非作動レーザパルスであるパルス選別デバイスと、ワークピースの上記物理的特性を変化させるレーザ加工パラメータを受信可能で、上記レーザ、上記ビーム位置決めシステム、及び上記パルス選別デバイスに直接的又は間接的に制御信号を供給可能なコントローラであって、上記レーザ加工パラメータは、上記レーザパルス繰り返し率、上記切断経路、上記ビーム軸速度、及び上記放射照度を含むか、あるいはこれらを決定するコントローラと、上記コントローラに関連付けられたタイミングデバイスであって、上記レーザの上記レーザパルス繰り返し率を一定にするために、レーザトリガ信号を一定の繰り返し率でレーザトリガデバイスに送信させることができ、これにより、安定的で予測可能なパルス特性を呈するように上記レーザパルスの出射を一定にするタイミングデバイスと、上記コントローラに関連付けられ、上記ファーストポジショナにファーストポジショナ制御信号を供給可能な処理回路であって、上記ワークピース上の上記切断経路に沿って移動するように上記ビーム軸を案内し、上記レーザパルス繰り返し率に基づいて、上記処理回路は、上記ワークピースに対する上記開始位置に上記ビーム軸を案内し、上記作動レーザパルスのうち最初のレーザパルスが上記ワークピースに当たったときに上記ビーム軸速度で移動させることが可能であり、上記タイミングデバイスを通してゲートされた1以上のパルス選別信号が、上記パルス選別デバイスに上記ワークピースの非切断領域上の非作動レーザパルスの伝搬を阻止させ、上記ワークピースに対する上記開始位置と上記終了位置とを含みこれらの間の上記切断経路上で上記ワークピースに当てさせることができるできる処理回路とを備える。
【0010】
他の実施形態又は追加の実施形態においては、上記処理回路は、上記パルス選別器信号の伝達と上記最初の作動レーザパルスの上記ワークピースの上記表面への到達との間のレーザパルス伝搬遅延を提供可能である。
【0011】
他の実施形態、追加の実施形態、又は累積的な実施形態においては、上記処理回路は、上記パルス選別器信号の伝達と上記パルス選別器の動作能力との間のパルス選別器伝搬遅延を提供し、上記ワークピース上での非作動レーザパルスの伝搬の阻止から作動レーザパルスの伝搬の許可へ切り替え可能である。
【0012】
他の実施形態、追加の実施形態、又は累積的な実施形態においては、上記処理回路は、上記ファーストポジショナ制御信号の伝達と、上記ビーム軸速度での上記ワークピースに対する上記開始位置への上記ビーム軸への案内との間のファーストポジショナ遅延を提供可能である。
【0013】
他の実施形態、追加の実施形態、又は累積的な実施形態においては、上記処理回路は、上記ワークピース上の非作動レーザパルスの伝搬の阻止から作動レーザパルスの伝搬の許可への上記パルス選別器の有効な変更と、上記最初の作動レーザパルスの上記パルス選別デバイスの通過との間のパルス選別器リードタイムを提供可能である。
【0014】
他の実施形態、追加の実施形態、又は累積的な実施形態においては、上記処理回路は、上記ワークピース上の作動レーザパルスの伝搬の許可から非作動レーザパルスの伝搬の阻止への上記パルス選別器の有効な変更と、上記ワークピース上の上記切断経路の上記終点位置に当たる上記作動レーザパルスの上記パルス選別デバイスの通過との間のパルス選別器遅れ時間を提供可能である。
【0015】
他の実施形態、追加の実施形態、又は累積的な実施形態においては、上記ファーストポジショナは、上記移動パターンを含むのに十分な大きさの利用可能なスキャン領域を有し、上記ファーストポジショナは、上記利用可能なスキャン領域内で複数のパスにわたって上記移動パターンを繰り返すことができる。
【0016】
他の実施形態、追加の実施形態、又は累積的な実施形態においては、上記ワークピースは、上記ファーストポジショナの第1及び第2の隣接する利用可能なスキャン領域を含むのに十分大きく、上記第1のスキャン領域内の第1の切断経路の上記終了位置は、上記第2の切断経路内の第2の切断経路の上記開始位置に隣接しており、上記レーザ照射により変化させた上記物理的特性は、上記第1の切断経路、上記第2の切断経路、及びこれらの接続点において同一である。
【0017】
他の実施形態、追加の実施形態、又は累積的な実施形態においては、上記レーザトリガデバイスはQスイッチであり、加えて/あるいは、上記ファーストポジショナは1対のガルバノメータミラーであり、加えて/あるいは、上記パルス選別デバイスはAOMであり、加えて/あるいは、上記タイミングデバイスはフィールドプログラマブルゲートアレイであり、加えて/あるいは、上記処理回路はデジタル信号プロセッサであり、加えて/あるいは、上記ワークピースは1mm未満の厚さを有する。
【0018】
他の実施形態、追加の実施形態、又は累積的な実施形態においては、上記レーザはモードロックレーザであり、加えて/あるいは、上記レーザトリガデバイスは上記レーザ内の内部クロックであり、加えて/あるいは、上記ファーストポジショナは1対のガルバノメータミラーであり、加えて/あるいは、上記パルス選別デバイスはAOMであり、加えて/あるいは、上記タイミングデバイスはフィールドプログラマブルゲートアレイであり、加えて/あるいは、上記処理回路はデジタル信号プロセッサであり、加えて/あるいは、上記ワークピースは1mm未満の厚さを有する。
【0019】
他の実施形態、追加の実施形態、又は累積的な実施形態においては、上記ファーストポジショナは、上記レーザ加工システム内に固定位置を有しており、上記ワークピースは、上記ファーストポジショナの上記固定位置に対して移動するステージにより支持されている。
【0020】
これらの実施形態の多くの利点のうちの1つは、レーザパルスが、一定で安定的で予測可能なパラメータを有することである。
【0021】
追加の態様及び利点は、添付図面を参照して述べられる以下の好ましい実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、ビーム位置決めシステムを利用した簡略版レーザ微細加工システムの模式図である。
【
図2】
図2は、ワークピース上でレーザパスを実現するためのレーザパルス及び様々なビーム伝搬及び位置決めシステム構成要素の例示タイミング図である。
【
図3】
図3は、ガルバノメータミラーのスキャン領域上のガルバノメータミラールートの例示レーザパスのシミュレーションにおけるレーザパルス及び様々なビーム伝搬及び位置決めシステム構成要素のタイミング図である。
【
図4】
図4は、ガルバノメータミラーの2軸スキャン領域にわたるレーザビーム軸の代表的な移動パターンの上面図である。
【
図5】
図5は、
図4の移動パターンの拡大部の上面図であり、レーザパスの開始時のレーザパルスの相対位置を示すものである。
【
図6A】
図6Aは、開示された手法の一部を実現するためのデジタル信号プロセッサにおけるリアルタイム論理状態の例のタイミング図である。
【
図6B】
図6Bは、利用可能なスキャン領域にわたる
図6Aのタイミング図により表されるビーム軸移動とパルス選別器との連係を示している。
【
図6C】
図6Cは、
図6Aの例に関してパルス選別デバイスへの指令例を示す一般的なフロー図である。
【0023】
以下、添付図面を参照しつつ実施形態の例を説明する。本開示の精神及び教示を逸脱することのない多くの異なる形態及び実施形態が考えられ、本開示を本明細書で述べた実施形態に限定して解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態の例は、本開示が完全かつすべてを含むものであって、本開示の範囲を当業者に十分に伝えるように提供されるものである。図面においては、理解しやすいように、構成要素のサイズや相対的なサイズが誇張されている場合がある。明細書において使用される用語は、特定の例示的な実施形態を説明するためだけのものであり、限定を意図しているものではない。本明細書で使用される場合には、内容が明確にそうではないことを示している場合を除き、単数形は複数形を含むことを意図している。さらに、「備える」及び/又は「備えている」という用語は、本明細書で使用されている場合には、述べられた特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を特定するものであるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそのグループの存在又は追加を排除するものではないことも理解されよう。特に示している場合を除き、値の範囲が記載されているときは、その範囲は、その範囲の上限と下限の間にあるサブレンジだけではなく、その上限及び下限を含むものである。
【0024】
図1は、ワークピース26上でビーム軸24を位置決めするレーザ制御を行うことができるビーム位置決めシステム22を利用した簡略版レーザ微細加工システム20の模式図である。本明細書において述べられる実施形態は、「ビーム位置決めシステム22がレーザ28に追従する」ようにビーム位置決めシステムとレーザ28との間の主従関係を逆転させている。ビーム位置決めシステム22が、ビーム軸24をワークピース26の表面36上の所望のスポット位置30にワークピース26に対する所望の速度で案内したとき、レーザ28からレーザパルスを出射するのではなく、レーザシステムが初期化された後、コントローラ40によりQスイッチ信号経路38に沿ってレーザ28のレーザ共振器内のQスイッチ42に送られたパルス列を一定の周波数に維持することができる。ワークピース26上での所定の動作に対するレーザ加工ウィンドウ内にあり、一定のレーザ出力を維持するのに好適なレーザ28の動作パラメータであるレーザ繰り返し率を提供するように、Qスイッチコマンドトリガ信号のパルス列を選択することができる。初期化後は、トリガ信号は停止されず、開始されず、あるいは周波数偏移されることがなく、レーザ共振器の不安定性が最小限にされる。
【0025】
Qスイッチコマンドトリガ信号に応答してレーザパルスが生成されると、ビーム位置決めシステム22のビーム軸24の軌跡が時間的及び空間的に少し調整され、レーザ28の出力に合わされ、これにより、所望のレーザパルスがワークピース26の表面36に到達するときに、ビーム軸24が所望のスポット位置30に所望の速度で到達する。また、レーザ28からのレーザパルスの出射のタイミングは、ワークピース26に対するビーム軸24の位置を気にしていない。この能力は、デジタルレーザコントローラとビーム位置決めコントローラとの間のタイミングを正確に較正するだけでなく、コントローラ40によって実現されるビーム位置決めとレーザパワー制御の複合構造に対する制約を利用し、高速デジタル加工を利用するものである。
【0026】
レーザパルスを一定の速度で連続して出射し続けることの1つの利点は、レーザ28がレーザ共振器内で過渡状態を経ることなく、したがって、生成可能なものの中で最も一貫したレーザパルスを生成することである。
【0027】
レーザパルスパラメータの例としては、レーザの種類、波長、パルス持続時間、パルス補充速度、パルス数、パルスエネルギー、パルス時間的形状、パルス空間的形状、及び焦点スポットサイズ及び形状が挙げられる。付加的なレーザパルスパラメータには、ワークピース26の表面36に対して焦点スポットの位置を特定すること及びワークピース26に対してレーザパルスの相対運動を方向付けることが含まれる。
【0028】
ある実施形態において、一部の実施形態に対して有利に利用され得るレーザパラメータとしては、IRからUV、特に約10.6ミクロンから約266nmまでの範囲の波長を有するレーザ28を用いることが挙げられる。レーザ28は、1Wから100W、より好ましくは1Wから12Wの範囲にある2Wで動作し得る。パルス持続時間は、1ピコ秒から1000ns、より好ましくは約1ピコ秒から200nsの範囲にある。レーザ繰り返し率は、1KHzから100MHz、より好ましくは10KHzから1MHzの範囲にあり得る。レーザフルエンスは、約0.1×10
-6J/cm
2から100J/cm
2、より好ましくは1.0×10
-2J/cm
2から10J/cm
2の範囲にあり得る。ビーム軸24がワークピース26に対して移動する速度は、1mm/sから10m/s、より好ましくは100mm/sから1m/sの範囲にある。ワークピース26の表面36で測定した静止レーザスポット32(
図5)の空間的長軸は、10ミクロンから1000ミクロン、あるいは50ミクロンから500ミクロンの範囲にあり得る。ビーム軸24の速度は、ワークピース26上でのレーザスポット32の有効サイズを増加させ得る。ある実施形態においては、スポットサイズが1/e
2、FWHMでのレーザパルスのビームウェストを表しているものと考えることができる。
【0029】
ほとんどどんなタイプのレーザ28でも使用することができる。ある実施形態は、5MHzまでのパルス繰り返し率で約366nm(UV)から約1320nm(IR)の波長を出射するように構成可能なダイオード励起固体レーザ28を用いる。しかしながら、適切なレーザやレーザ光学系、部品取り扱い機器、及び制御ソフトウェアを代用したり追加したりすることによって、これらのシステムを上述したようにワークピース26上に選択されたレーザスポット32を確実に繰り返し生成するように適合させることができる。これらの修正により、レーザ加工システムが適切なレーザパラメータを使って所望の速度及び所望のレーザスポット32間バイトサイズで、適切に位置決めされ保持されたワークピース26上の所望の位置にレーザパルスを案内することが可能となる。
【0030】
ある実施形態においては、特定の周波数でレーザパルスをトリガするために内部クロックが使用されるモードロックレーザを用いることができる。
【0031】
ある実施形態においては、レーザ加工システム20は、532nm、355nm、又は266nmで出射し、532nmで45Wもの出力パワーのあるCoherent Aviaダイオード励起固体Qスイッチレーザを用いる。
【0032】
ある実施形態においては、レーザ加工システム20は、ドイツ連邦共和国カイザースラウテルンのLumera Laser社により製造されるモデルRapidのような、1064nm波長で動作するダイオード励起Nd:YVO
4固体レーザ28を用いる。このレーザは、必要に応じて固体調波発生器を用いて波長を532nmに下げて二逓倍され、これにより可視(緑色)レーザパルスを生成することができ、あるいは、約355nmに三逓倍され、あるいは、266nmに四逓倍され、これにより紫外(UV)レーザパルスを生成することができる。このレーザ28は、6ワットの連続パワーを生成するとされており、1000KHzの最大パルス繰り返し率を有する。このレーザ28は、コントローラ40と連係して1ピコ秒から1,000ナノ秒の持続時間を有するレーザパルスを生成する。
【0033】
これらのレーザパルスは、ガウス型であるか、あるいはレーザ光学系、典型的には、光路50に沿って配置された1以上の光学構成要素を備えたレーザ光学系によって特別に整形され、レーザスポット32で所望の特性を実現する。回折光学要素又は他のビーム整形構成要素を用いて特別に整形された空間プロファイルを生成してもよい。レーザスポット32の空間放射照度プロファイルを修正することについての詳細な説明がCorey Dunsky等による米国特許第6,433,301号に見られる。この米国特許は、本出願の譲受人に譲渡されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
再び
図1を参照すると、レーザ微細加工システム例20のレーザ28は、様々な光学構成要素52、パルス選別デバイス54、1以上の折り畳みミラー56を通って、最終的に光路50のビーム軸24をワークピース26の表面36のスポット位置30上に案内するビーム位置決めシステム22のファーストポジショナ
68まで広がる光路50に沿ってレーザパルスビームを出射する。光学構成要素52は、光路50に沿った様々な位置に配置されるビームエキスパンダレンズ要素、音響光学デバイスや電気光学デバイスなどの光学減衰器、及び/又はエネルギー用、タイミング用、又は位置用のフィードバックセンサなどの既知の様々な光学系を含み得る。
【0035】
パルス選別デバイス54は、レーザパルスがさらに光路に沿って伝搬するのを阻止又は許容し、ワークピース26上に当てるレーザパルスを決定する高速シャッタとして動作する。パルス選別デバイス54は、電気光学デバイス又は音響光学変調器(AOM)60を含み得る。便宜上、本明細書においては、AOM60に対する例としてパルス選別器54を述べる。AOM60は、AOM信号経路58に沿ってコントローラ40から送られるAOMコマンド信号に応答するものである。AOMコマンド信号により、AOM60上の変換器は、AOM60を通過するビームを光路50に揃っているか揃っていない所定の出口角に方向転換させる音波をAOM内でファーストポジショナ68に向けて開始する。
【0036】
ファーストポジショナ68は、比較的大きなスキャン領域72(
図4)を有する任意の高速ビーム位置決めデバイスを含み得る。ある実施形態では、ファーストポジショナ68は、ワークピース26を横断する比較的大きな視野72にわたってビーム軸24の方向を素早く変更可能な、ガルバノメータにより駆動される1対のX軸及びY軸ミラー70を含み得る。ある実施形態においては、利用可能な視野72は10mmから100mmの直径(又は長軸)を有している。ある実施形態においては、利用可能な視野72は15mmより大きな直径を有している。ある実施形態においては、利用可能な視野72は25mmから50mmの直径を有している。ある実施形態においては、利用可能な視野72は75mmより小さな直径を有している。ある実施形態においては、利用可能な視野72は、スキャンレンズのエッジ効果によってレーザ加工には使用されないガルバノメータ移動領域を含んでいてもよく、このため、利用可能な加工領域が利用可能な視野72よりも小さくなっていてもよい。
【0037】
あるいは、所望のスキャン領域72のサイズによっては、ファーストポジショナ68は、ガルバノメータミラー70よりビーム偏向範囲が小さい傾向があるものの、音響光学デバイス又は変形可能ミラー(又は他のファーストステアリングミラー)のような高速ポジショナを用いてもよい。あるいは、ガルバノメータミラー70に加えて高速ポジショナを利用してもよく、ガルバノメータミラー70によるビーム軸24の制御及び移動と一体化することができ、あるいは、エラー補正などのために、ガルバノメータミラー70によるビーム軸24の移動に重ね合わせることができる。ある実施形態においては、ファーストポジショナ68は、ワークピース26上の固定位置に支持される。他の実施形態においては、ファーストポジショナ68は、ワークピース26に対して移動可能なステージにより分割軸システム(split-axis system)内などに支持される。例示的なファーストポジショナ68は、数百キロヘルツの帯域幅を有し、約2又は3m/sから約10m/sの線速度及び約1000から2000Gの加速度を実現することができる。線速度がこれらの範囲より遅くてもよいことは言うまでもない。
【0038】
ある実施形態においては、ビーム位置決めシステム22は、好ましくはワークピース26を支持する上側ステージ82及び上側ステージ82を支持する下側ステージ84のような少なくとも2つのプラットフォームを制御するワークピース位置決めステージ80を用いている。これらの上側ステージ82及び下側ステージ84は、典型的にはリニアモータにより移動され、一般的には、上側ステージがある軸に移動可能で下側ステージが別の軸に移動可能なX−Yステージと呼ばれる。典型的なワークピース位置決めステージ80は、数十キロヘルツの帯域幅を有し、約2又は3m/secの速度及び1.5G以上の加速度を実現することができる。現在費用対効果のよい並進ステージは約400mm/sから約1m/sの範囲で動作する。これらは、これよりずっと遅く移動してもよいことは言うまでもない。ワークピース位置決めステージ80の動作包絡面は、典型的には、ガルバノメータミラー70の視野72よりもずっと大きい。
【0039】
ある実施形態においては、レーザ加工システム20は、段階ごとに繰り返しレーザダイシングを行い、ファーストポジショナ68により行われるダイシング動作中にワークピース位置が維持されるようにワークピース位置決めステージ80がファーストポジショナ68及びビーム軸24に対してワークピース26をある位置まで移動する。特に、ワークピース位置決めステージ80は、ワークピース26の特定の領域をガルバノメータミラー70の利用可能な視野72内に位置付けてもよい。スキャン領域72上でワークピース位置決めステージ80を完全に停止させてもよいが、ガルバノメータミラー70は、ワークピース26にわたるスキャン領域72内で1以上の切断経路92を含む1以上の移動パターン90を実行するようにビーム軸24を方向付けてもよい。ある実施形態においては、所望のスループットのために、与えられたスキャン領域72中の移動パターン90のパスのすべてが完了するまでビーム軸24は停止しない。
【0040】
移動パターン90におけるビーム軸24の1以上のパスの後、ガルバノメータミラー70のスキャン領域72を隣接する領域といったワークピース26の異なる領域に位置付けるために、ワークピース位置決めステージ80が移動してもよい。このように、ある実施形態に関しては、ビーム軸が加速している間はレーザ加工が行われない。一定速度の移動と一定の繰り返し率のパルスとともにビーム軸を用いることの利点は、レーザパルスの特性が安定し、予測可能になることである。
【0041】
ある実施形態においては、既知のビーム軸24の速度でワークピース26上の切断経路92に沿って所望の放射照度を達成するように既知の間隔で離された一連のレーザパルスを生成することによってレーザダイシングが行われる。このプロセスは、切断経路92に沿った第1のレーザパルスの開始位置におけるオフセットをパスごとに変化させ、ワークピース26が所望のパラメータに加工されるまで任意の1つのスポット位置で累積放射照度を均等に分布させつつ、このプロセスを繰り返すことができる。しかしながら、パルス分離やパス分離が必要とされるものではない。したがって、パスは、スポットサイズよりも小さなパルス分離を有する重複パルスを含んでいてもよく、パルスの連続パスが空間的にオフセットされている必要はない。
【0042】
上述した構成要素の一部又はすべてを含み、ワークピース26上又はワークピース26内で切断経路92(
図4)に沿って切溝を形成可能なレーザ加工システムの例としては、いずれもオレゴン州97229ポートランドのElectro Scientific Industries社により製造されるESI 5320、MM5330、ML5900、及び5955微細加工システムが挙げられる。
【0043】
ある実施形態においては、ファーストポジショナ68及びワークピース位置決めステージ80は、コントローラ40からコマンドを受信する。ガルバノメータミラー70は、コントローラ40から直接的又は間接的に1以上のガルバノメータ信号経路104に沿ってガルバノメータコマンド信号を受信し得る。上側ステージ82及び下側ステージ84は、コントローラから直接的又は間接的に単一のステージ経路に沿って又は別個のステージ信号経路106a及び106bに沿って独立してワークピース位置決めステージ80コマンド信号を受信し得る。コマンド信号の性質を変更したり、それらのタイミングに影響を及ぼしたりするために、必要に応じていずれかの信号経路に沿ってサブコントローラを配置してもよい。例えば、ガルバノメータミラーは、JANUSアナログインタフェイス/ドライバモジュールを用いてもよい。
【0044】
ある実施形態においては、本明細書に開示されるレーザを利用した位置決め手法を行うために、コントローラ40は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)のような主クロック又はタイミングデバイスを利用する。ある実施形態においては、FPGAは、基本クロック周波数f
fgpa[Hz]を有しており、これは、典型的には、そのレジスタを更新可能な最速の周波数となるように選択される。割込率やレーザ繰り返し率などの他のパラメータが、推測的に選択されるコントローラ40に対する外因性入力であってもよい。
【0045】
例えば、DSP割込率f
s[Hz]は、コントローラ40内のデジタル信号プロセッサ(DSP)がリアルタイム実行ループを行うサーボ割込率である。FPGAは、割込要求(IRQ)出力を介してDSPに対する割込を生成する。割込がf
fgpa[Hz]の整数倍ではない場合、FPGAにおける量子効果によって割込が少し異なることがある。この例では、この状態を仮定している。
【0046】
レーザ繰り返し率f
laser[Hz]は、レーザ28のレーザ共振器から出射したレーザパルスの繰り返し率に等しい。実際の繰り返し率がf
fgpa[Hz]の整数倍ではない場合、FPGAにおける量子効果によって実際の繰り返し率が少し異なることがある。この例では、この状態を仮定している。
【0047】
特定のレーザシステム構成要素及びスキャン領域72におけるガルバノメータミラー70の相対運動速度に対して、レーザ伝搬遅延、AOM伝搬遅延、サーボ遅れ時間、AOM−レーザリードタイム、及びAOM−レーザ遅れ時間などのパラメータを較正することができる。
【0048】
レーザ伝搬遅延T
laser_prop[s]は、FPGAからQスイッチコマンドパルスが出力されてからワークピース26の表面にレーザパルスが到達するまでの推測時間である。
【0049】
AOM伝搬遅延T
aom_prop[s]は、FPGAからAOMコマンドレジスタの立ち上がり/立ち下がりが出力されてから、AOM60から出る所望の光路に沿ってレーザパルスが所望の減衰レベルで伝搬可能な完全励起AOM結晶状態になるまでの推測時間である。すなわち、T
aom_prop[s]は、AOM60がAOMコマンド信号に応答して「開」又は「閉」になるのにかかる時間である。ある実施形態においては、AOM60から出る所望の光路は1次光路である。
【0050】
サーボ遅れ時間K
lag[s
2/m]は、ガルバノメータミラーコマンド信号と、ガルバノメータミラー70によりワークピース26とビーム軸24との間で一定速度の相対運動を行っているときのワークピース26上の位置との間の時間遅延を推測したスケールファクターである。
【0051】
AOM−レーザリードタイムT
aom_lead[s]は、AOMを開いてから、切断経路92に沿ってAOM60を通過してワークピース26の表面36に至る最初のレーザパルスまでの特定の時間である。AOM−レーザリードタイムは、レーザ繰り返し率f
laserに関連付けられたレーザ期間よりも短くなるように選択される。
【0052】
AOM−レーザ遅れ時間T
aom_lag[s]は、AOM60を通過してワークピース26の表面に至る最後のレーザパルスからAOMを閉じるまでの特定の時間である。この時間は、AOM伝搬遅延T
aom_propとレーザ繰り返し率f
laserに関連付けられたレーザ期間との合計よりも短くなるように選択される。
【0053】
ダイスレーン開始位置、ダイスレーン終了位置、公称パルス分離、公称パス速度、及びプロファイルされた移動時間などのレシピパラメータをユーザが選択するか、あるいはユーザ入力、位置データ、ルックアップテーブル、及び/又はプロファイリングソフトウェアに基づいてコントローラ40が決定することができる。
【0054】
ダイスレーン開始位置p
1[μm]は、X−Yワークピースステージ82及び84の現在位置に対するガルバノメータミラー座標でのレーザ切断経路92の所望の開始点である。
【0055】
ダイスレーン終了位置p
2[μm]は、レシピパラメータに基づくX−Yワークピースステージ82及び84の現在位置に対するガルバノメータミラー座標でのレーザ切断経路92の所望の終了点である。
【0056】
公称パルス分離Δp
pulse[μm]は、ワークピース26の表面36に当たるレーザパルス間の所望の距離である。リアルタイム制御システムにおける量子効果によりこの値を少し調整することができる。
【0057】
公称パス速度V
pass[μm/s]は、レシピパラメータに基づくワークピース26の表面36でのビーム軸24の所望の速度である。リアルタイム制御システムにおける量子効果によりこの値を少し調整することができる。
【0058】
プロファイルされた移動時間t
prof[s]は、移動のプロファイルされた(加速度制限された)部分をワークピース26内の移動の一定速度切断経路部分にするのに必要な時間である。この値は、コントローラ40又は他のシステムコンピュータ内のプロファイリングソフトウェアにより計算することができ、移動時間計算器と呼ぶこともできる。
【0059】
リアルタイム測定は、Qスイッチパルスから、切断経路92に沿った切断が開始するDSP割込サイクルの開始までに経過した時間であるレーザパルス位相オフセットt
φ[s]を含んでいる。この値は、FPGAにより与えられる。
【0060】
図2は、ワークピース26の切断経路92に沿ったレーザパスを実現するためのレーザパルス及び様々なビーム伝搬及び位置決めシステム構成要素の例示タイミング図である。
図2を参照すると、ある実施形態においては、p
1及びp
2により特定される切断経路92の開始位置及び終了位置に正確に位置するように2点間でレーザを用いて切断経路92に沿って線を形成することが目標となる。繰り返し率f
laserが一定のレーザ28を用いると、公称パルス分離Δp
pulse及びパス速度V
passは互いに独立しているのでこれらが独立して特定される。位置に基づくレシピについて、公称パス速度は、
V
pass=Δp
pulsef
laser (1)
である。あるいは、速度に基づくレシピについて、公称パルス分離は、
Δp
pulse=V
pass/f
laser (2)
である。いずれの場合も、切断経路92に沿って並ぶであろうパルス数は、round()関数が0.5以上の端数を切り上げることによって整数値を得るものであり、切断経路92の終端で余分なパルスを入れるために+1が追加されるとすると、
N
pulse=(round(p
2−p
1)/Δp
pulse))+1 (3)
である。
【0061】
FPGAの量子効果は、外部からトリガされたQスイッチレーザがFPGAにより制御される場合、レーザの実際の繰り返し期間は、T
laser=1/f
laserであるとして、
T
laser=(round(T
laser/T
fpga))T
fpga (4)
であることを意味している。
【0062】
そして、レーザ繰り返し率の量子効果後の実際のパス速度は、
V
pass=(p
2−p
1)/((N
pulse−1)T
laser) (5)
から算出される。
【0063】
移動のプロファイルセグメント中に生じるレーザパルスの数は、floor()関数がその数の端数値を切り捨てることにより整数値を得るものであるとすると、
n
start=floor(t
prof/T
laser) (6)
である。
【0064】
ある実施形態においては、パターン90の一定速度セグメントが、最後のレーザパルスが切断経路92の終点に到達した後、単一のDSP割込内で終了することが好ましい場合がある。すなわち、n
irqがパターン90内の移動の一定速度セグメント中の生じるDSP割込の数であるとすると、
n
irqT
s≦n
pulseT
laser≦(n
irq+1)T
s (7)
である。n
irqを以下のように選択すれば、この関係を維持することができる。
n
irq=floor((n
pulse)(T
laser/T
s)+1)) (8)
【0065】
移動パターン90が始まるDSP割込サイクルの開始時に、プロファイルされたセグメントの終点直後の最初のレーザパルスがワークピース26の表面36に到達するまでの時間は、レーザパルス位相オフセットt
φがFPGAレジスタに維持され、DSPにより読み取られるとすると、
T
start=((n
start+1)T
laser)+(T
laser_prop−t
φ) (9)
である。
【0066】
ガルバノメータサーボループに対する位置コマンドと、ガルバノメータミラー70により指示されたビーム軸24の実際の位置との間の遅れ時間は、およそ以下のようになり得る。
T
lag=K
lagV
pass (10)
レーザスケーリングK
lagはパス速度の範囲にわたって独立して特徴付けることができる。
【0067】
ガルバノメータミラー70により指示されたワークピース26上のビーム軸24の位置を時間的に前方に見積もり、推測されるガルバノメータ遅れを考慮すると、コマンドがp
1に到達する時点に対する調整は、
δ
t=t
start−t
prof+t
lag (11)
となる。式(11)においては、時間上の遅れの方向を考慮してガルボ遅れ時間t
lagがこの式の右項から引かれるのではなく、足されているいることに留意されたい。
【0068】
その後、最初のパルスランドp
1などに適用されるプロファイルされた移動セグメントδ
pの最終位置に対する調整が、以下のように最初のレーザパルスに対して時間的に後方に見積もることにより計算される。
δ
p=−V
passδ
t (12)
【0069】
最後に、プロファイルされた移動セグメントの開始に対するAOMのアンブロック時間及びブロック時間は、
T
unblock=t
start−t
aom_lead−T
aom_prop (13)
及び
T
block=t
start+((n
pulse−1)T
laser)+T
aom_lag (14)
により計算される。AOMのアンブロック時間及びブロック時間は、浮動小数点演算として計算することができ、以下のようにFPGAクロックサイクルの整数に計算される。
n
unblock=round(T
unblock/T
laser) (15)
及び
n
block=round(T
block/T
laser) (16)
そして、得られた数字は、t
φが読み込まれたサイクルに対してAOMコマンドをゲートするためにFPGAタイマにおいて使用される。
【0070】
これらの実施形態の一部を実証するために、FPGA及びDSP割込ロジックの挙動をエミュレートするシミュレーションを行った。シミュレーションはリアルタイムコントローラ/ガルバノメータ組み込みソフトウェア(TaskProcessorやServoThreadなど)に非常によく似ており、FPGAクロック周波数レベルでの時間に対してQSW、IRQ、AOMパルス列、及びビーム軸位置を捕捉するためにこのシミュレーションを用いた。
【0071】
図3は、ワークピース26中のスキャン領域72を通る選択されたビーム軸のルート内の切断経路92の異なるセグメントに沿った単一のパスに対するシミュレーションのタイミング図を示している。上側の3つのプロットは、100MHzのFPGA及び140kHzのレーザパルスにより生成されたパルス列を示すものであり、下側の2つのプロットは、ビーム軸24が加工領域を前後にスキャンする際にガルバノメータにより方向付けられ、20kHzで更新されるビーム軸位置を示すものである。しかしながら、理解を容易にするために、上側のレーザプロットに示されているレーザパルス間の間隔は誇張されている。さらに、Qスイッチトリガ信号は図示されていないが、レーザパルスのそれぞれの間の白色の領域で生じている。しかしながら、ある実施形態においては、一定で予測可能なレーザパルスパラメータを再確立するためにQスイッチトリガとレーザパルス化が切断セグメントの十分前に再起動される限り、切断工程間でQスイッチトリガとレーザパルス化が抑制されることがある。
【0072】
同様に、IRQ信号間の間隔が誇張されている。IRQ信号はそれ自身の周波数を有しており、不連続性を有し得るが、レーザパルスは自律的に一定速度で作動する。
【0073】
図4は、ガルバノメータミラー70の2軸スキャン領域72にわたるレーザビーム軸24の代表的な移動パターン90の上面図であり、
図5は、
図4の移動パターン90の拡大部の上面図であり、レーザパスの開始時のレーザパルスの相対位置を示すものである。
図4を参照すると、切断経路92は、異なる方向に加工される4つのストリートセグメントを形成している。本明細書において開示された手法により提供されるパルスの一貫性と位置決め能力と連係するパルス選別デバイスは、ストリートセグメントの交差を過度に加工することを防止するように有利な方法で配置することができる。
【0074】
図4及び
図5を参照すると、公称パス速度v
pass及びSSC上のレシピから特定されるレーザパルス分離は、それぞれ2850mm/s及び20.36μmであった。DSP及びレーザ繰り返し率の制約を満たすためにリアルタイムソフトウェアによる調整をした後は、これらの数値が2852mm/s及び20.00μmとなり、この特定のパスに関してプロファイルされた移動δ
pに対する得られた位置調整は14.89μmとなった。
【0075】
図6Aは、開示された手法の一部を実現するためのデジタル信号プロセッサにおけるリアルタイム論理状態の例のタイミング図である。より簡単なステップのプロセスフローは、1)一定のパラメータでレーザをトリガし、2)同期に対するタイミングオフセットを算出し、3)リアルタイムでδ
p及びδ
tを算出し、4)位置と時間に関してプロファイルコマンドを調整し、5)実行することを含み得る。
【0076】
図6Bは、利用可能なスキャン領域72にわたる
図6Aのタイミング図により表されるビーム軸移動とパルス選別器の連係を示している。
図6Cは、
図6Aの例に関してパルス選別デバイス
54への指令例を示す一般的なフロー図である。
【0077】
本明細書に開示された手法は、レーザ切断動作だけではなく、レーザマーキング、レーザスクライビング、又はレーザビア穿孔にも有用であり得ることは理解できよう。加えて、本明細書に開示された手法は、James N. O'Brien等による米国再発行特許第RE43,440号に述べられたセグメント切断手法のような様々な他の切断手法とともに用られてもよい。この米国再発行特許は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0078】
上記は、本発明の実施形態を説明したものであって、これに限定するものとして解釈されるものではない。いくつかの特定の実施形態例が述べられたが、当業者は、本発明の新規な教示や利点から大きく逸脱することなく、開示された実施形態例及び他の実施形態に対して多くの改良が可能であることを容易に認識するであろう。
【0079】
したがって、そのような改良はすべて、以下の特許請求の範囲において規定される発明の範囲に含まれることを意図している。例えば、当業者は、そのような組み合わせが互いに排他的になる場合を除いて、いずれかの文や段落の主題を他の文や段落の一部又は全部の主題と組み合わせることができることを理解するであろう。
【0080】
本発明の根底にある原理を逸脱することなく上述の実施形態の詳細に対して多くの変更をなすことが可能であることは当業者にとって自明なことであろう。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲とこれに含まれるべき請求項の均等物とによって決定されるべきである。