特許第6516765号(P6516765)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6516765
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】ヒンジ付共振電力伝送コイル
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/04 20060101AFI20190513BHJP
   A61B 5/0408 20060101ALI20190513BHJP
   A61M 1/12 20060101ALI20190513BHJP
   H01F 38/14 20060101ALI20190513BHJP
【FI】
   A61B5/04 R
   A61B5/04 300Z
   A61M1/12 100
   H01F38/14
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-553264(P2016-553264)
(86)(22)【出願日】2014年11月11日
(65)【公表番号】特表2017-502794(P2017-502794A)
(43)【公表日】2017年1月26日
(86)【国際出願番号】US2014064959
(87)【国際公開番号】WO2015070202
(87)【国際公開日】20150514
【審査請求日】2017年9月8日
(31)【優先権主張番号】61/902,694
(32)【優先日】2013年11月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517073591
【氏名又は名称】ティーシー1 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヌエン, ジョン ドゥック
(72)【発明者】
【氏名】ホアラウ, カリン
(72)【発明者】
【氏名】ジマーマン, スティーブン
【審査官】 松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0331919(US,A1)
【文献】 特表2011−502634(JP,A)
【文献】 特表2012−532584(JP,A)
【文献】 特表2013−523260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/04−5/05
A61M1/12
H02J50/12
H01F38/14
A61N1/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体に沿うようヒンジで調整可能なコイル外装を成形するよう前記ヒンジで別の節に接続された複数の節であって、前記複数の節が、閉ループを成形するために、端と端で接続される、複数の節と、
前記コイル外装に取り付けられ、無線電力伝送または受電するよう構成されたフレキシブル導線であって、前記フレキシブル導線が、少なくとも一つの送信コイル、少なくとも一つの受信コイル、及び、少なくとも一つのエキサイタコイルを備える、フレキシブル導線と
を備える、無線電力伝送システムの共振器。
【請求項2】
前記フレキシブル導線が、前記複数の節によって成形される前記閉ループに沿って伸びる、請求項1に記載の共振器。
【請求項3】
前記共振器が前記患者の胸部に沿うよう構成された、請求項1に記載の共振器。
【請求項4】
前記コイル外装がシリコンを備える、請求項1に記載の共振器。
【請求項5】
前記コイル外装が円形を有する、請求項1に記載の共振器。
【請求項6】
前記コイル外装が長方形を有する、請求項1に記載の共振器。
【請求項7】
前記コイル外装が楕円形を有する、請求項1に記載の共振器。
【請求項8】
前記共振器が非平面構造に屈曲可能である、請求項1に記載の共振器。
【請求項9】
さらに、前記コイル外装を好適な位置に固定するよう構成された固定機構を備える、請求項1に記載の共振器。
【請求項10】
前記複数の節の一部に配置された少なくとも一つの磁気シールドエレメントをさらに備える、請求項1に記載の共振器。
【請求項11】
前記少なくとも一つの磁気シールドエレメントがフェライト材を備える、請求項10に記載の共振器。
【請求項12】
前記フレキシブル導線が前記コイル外装の外部に配置される、請求項1に記載の共振器。
【請求項13】
前記フレキシブル導線が前記コイル外装の内部に配置される、請求項1に記載の共振器。
【請求項14】
前記フレキシブル導線が前記コイル外装の溝内に配置される、請求項13に記載の共振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、引用により組入れられた2013年11月11日出願の、「Hinged Resonant Power Transfer Coil(ヒンジ付共振電力伝送コイル)」と題する米国仮出願第61/902,694号に基づく優先権を主張する。
【0002】
参照による組込み
本明細書にて記載された全ての刊行物及び特許出願は、個々の刊行物または特許出願のそれぞれが引用により包含されるよう特段に、かつ個別に記載がなされたと見なす程度まで、引用により包含される。
【0003】
本分野は一般的に共振無線電力伝送システムに関し、特に、埋込型共振無線電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0004】
埋込型医療用機器の多くは、埋込型機器に電力供給する電気システムを要する。一般的には、経皮配線を使用して電源を埋込型機器に接続している。
【0005】
近年、磁場を振動させるなどする経皮エネルギー伝達(TET)システムを使用して埋め込んだ機器に対し無線での電力供給が開発されている。TETシステムを有用にするには、外部電力が止まるか使用不可の場合に、電気エネルギー貯蔵装置及び処理が提供されなければならない。電気エネルギー貯蔵装置及び処理は、固体電子工学及びバッテリを使って実施可能である。
【0006】
一般的に、埋込型センサなどの埋込型医療機器を動作させるには、ごくわずかな微電力でよい。そのような小電力レベル(数ミリワット程度)を使用することで、電力伝送レベル及び伝送効率が低下することがある。より高い電力機器(例えば、数ワット程度から15ワットまで、またはそれ以上)を使用した効率的な無線電力伝送は極めて重要である。さらに、大きな埋込型機器を体内に埋め込める位置は限定され、皮膚表面から深い位置もある。このような埋込位置は、伝送効率を向上させ最大にする技術の他に、送信コイル及び受信コイルの両方の位置と向きに対する注意も必要になる。
【0007】
埋込型医療機器の従前のTETシステムでは、受信コイルを皮膚直下の位置に埋め込む必要があり、一般的に、受信コイル及び送信コイルの位置を調整し合わせたままにしておくという機械上の特徴があった。これらの機器を皮膚直下に埋め込む方法では、TETシステムで電力供給が行われる場合にはこれらの埋込型機器のサイズ及び電力要件が限定される。
【0008】
従来の無線電力伝送システムでは、一般的に、無線電力の受送信には硬質コイルを使用する。硬質コイルの利点は、生産しやすく、コイルで使用されるワイヤに応力がかからないことにある。しかし、硬質コイルでは、患者の形状の起伏に沿わせることができず、そのため患者が着用し使用するには不快さがあるかもしれない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
無線電力伝送システムの共振器は、患者の体に沿うようヒンジで調整可能なコイル外装を成形するようヒンジで別の節と接続された複数の節、及び、コイル外装に取り付けられ、無線電力伝送または受電するよう構成されたフレキシブル導線を備える。
【0010】
いくつかの実施形態において、共振器はさらに、ヒンジで曲がり実質的に患者の生体構造に沿うよう構成される。別の実施形態において、共振器は患者の腹部に沿うよう構成される。いくつかの実施形態において、共振器は患者の胸部に沿うよう構成される。
【0011】
一つの実施形態において、フレキシブル導線は、少なくとも一つの送信コイル及び少なくとも一つの受信コイルを備える。別の実施形態において、フレキシブル導体層は、少なくとも一つの送信コイル、少なくとも一つの受信コイル、及び、少なくとも一つのエキサイタコイルを備える。
【0012】
いくつかの実施形態において、コイル外装はシリコンを備える。他の実施形態において、コイル外装は円形を有する。別の実施形態において、コイル外装は長方形を有する。一つの実施形態において、コイル外装は楕円形を有する。
【0013】
いくつかの実施形態において、共振器は非平面構造に屈曲可能である。
【0014】
一つの実施形態において、共振器はさらに、コイル外装を好適な位置に固定するよう構成された固定機構を備える。
【0015】
別の実施形態において、共振器はさらに、複数の節の一部に配置された少なくとも一つの磁気シールドエレメントを備える。一つの実施形態において、少なくとも一つの磁気シールドエレメントはフェライト材を備える。
【0016】
いくつかの実施形態において、フレキシブル導線はコイル外装の外部に配置される。別の実施形態において、フレキシブル導線はコイル外装の内部に配置される。さらに別の実施形態において、フレキシブル導線はコイル外装の溝内に配置される。
【0017】
また、患者への無線電力伝送方法も提供され、患者の体に送信コイルを設置し、送信コイルを患者の体に沿わせ、患者に埋め込まれた受信コイルに送信コイルから無線で電力伝送する。
【0018】
一つの実施形態において、体に沿わせるステップでは、送信コイルのヒンジで送信コイルの複数の節を曲げ送信コイルの形状を調整する。
【0019】
別の実施形態において、当該方法ではさらに、体に沿わせるステップ後、送信コイルの形状を固定するステップを備える。
本願明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
患者の体に沿うようヒンジで調整可能なコイル外装を成形するよう前記ヒンジで別の節に接続された複数の節、及び
前記コイル外装に取り付けられ、無線電力伝送または受電するよう構成されたフレキシブル導線を備える、無線電力伝送システムの共振器。
(項目2)
前記ヒンジで曲がり実質的に患者の生体構造に沿うようさらに構成された、項目1に記載の共振器。
(項目3)
前記共振器が前記患者の腹部に沿うよう構成された、項目1に記載の共振器。
(項目4)
前記共振器が前記患者の胸部に沿うよう構成された、項目1に記載の共振器。
(項目5)
前記フレキシブル導線が少なくとも一つの送信コイル及び少なくとも一つの受信コイルを備える、項目1に記載の共振器。
(項目6)
前記フレキシブル導体層が少なくとも一つの送信コイル、少なくとも一つの受信コイル、及び、少なくとも一つのエキサイタコイルを備える、項目1に記載の共振器。
(項目7)
前記コイル外装がシリコンを備える、項目1に記載の共振器。
(項目8)
前記コイル外装が円形を有する、項目1に記載の共振器。
(項目9)
前記コイル外装が長方形を有する、項目1に記載の共振器。
(項目10)
前記コイル外装が楕円形を有する、項目1に記載の共振器。
(項目11)
前記共振器が非平面構造に屈曲可能である、項目1に記載の共振器。
(項目12)
さらに、前記コイル外装を好適な位置に固定するよう構成された固定機構を備える、項目1に記載の共振器。
(項目13)
前記複数の節の一部に配置された少なくとも一つの磁気シールドエレメントをさらに備える、項目1に記載の共振器。
(項目14)
前記少なくとも一つの磁気シールドエレメントがフェライト材を備える、項目13に記載の共振器。
(項目15)
前記フレキシブル導線が前記コイル外装の外部に配置される、項目1に記載の共振器。
(項目16)
前記フレキシブル導線が前記コイル外装の内部に配置される、項目1に記載の共振器。
(項目17)
前記フレキシブル導線が前記コイル外装の溝内に配置される、項目16に記載の共振器。
(項目18)
前記患者の体に送信コイルを設置し、
前記送信コイルを前記患者の体に沿わせ、
前記送信コイルから、前記患者に埋め込まれた受信コイルに無線で電力伝送することを備える、患者への無線電力伝送方法。
(項目19)
前記体に沿わせるステップでは、前記送信コイルのヒンジで前記送信コイルの複数の節を曲げ前記送信コイルの形状を調整する、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記体に沿わせるステップ後、前記送信コイルの形状を固定することをさらに備える、項目18に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の新規性は、特に以下の請求項で定める。本発明の特徴及び利点は、本発明の原理を利用した例示的な実施形態を定める以下の詳細説明を参考にして、より理解されるであろう。添付図を以下に示す。
図1】基本的な無線電力伝送システムを示す。
図2】一対のコイルにより生成された磁束を示す。
図3A】結合係数に関するコイル配置の効果を示す。
図3B】結合係数に関するコイル配置の効果を示す。
図4A】典型的なヒンジ付共振コイルの実施形態を示す。
図4B】典型的なヒンジ付共振コイルの実施形態を示す。
図4C】フェライトシールドタイルを備えるヒンジ付コイルの一つの実施形態を示す。
図4D】フェライトシールドタイルを備えるヒンジ付コイルの一つの実施形態を示す。
図5】患者の体に沿ったヒンジ付コイルを示す。
図6】フレキシブルまたはヒンジ付コイルの別の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の説明において、同一の参照番号が付された構成部品は、異なる実施形態で示されていても同一であるとする。本開示の実施形態を明瞭かつ簡潔な方法で示すため、本図は必ずしも縮尺通りでないことがあり、所定の特徴も概略的に表示されていることがある。一つの実施形態について説明及び/または図示された特徴は、1以上の他の実施形態において、及び/または、他の実施形態の特徴と併せて、またはその代わりに、同一方法または類似方法で使用されてもよい。
【0022】
本発明の多様な態様は、国際特許公開第WO2012045050号;米国特許第8,140,168号;第7,865,245号;第7,774,069号;第7,711,433号;第7,650,187号;第7,571,007号;第7,741,734号;第7,825,543号;第6,591,139号;第6,553,263号;及び5,350,413号;並びに米国公開第2010/0308939号;第2008/027293号;及び第2010/0102639号に記載の態様に類似しており、その特許及び出願の全内容を全ての目的で本明細書に包含する。
【0023】
無線電力伝送システム
電力は磁気誘導により無線伝送されてもよい。多様な実施形態において、送信器及び受信器は密結合される。
【0024】
「密結合され」または「密結合している」は、動作するためには互いに極めて近接したコイルを要するシステムを意味する場合がある。「疎結合され」または「疎結合している」は、コイル同士が著しく離間、及び/または、コイルの軸同士が離間している場合、時には、最大でコイルのうち大きい方の半径長さ以下離間した場合に、動作するよう構成されたシステムを意味することがある。また、「疎結合され」または「疎結合している」は、送信器及び受信器の物理距離及び/または方向性の変化に比較的鈍感なシステムを意味する場合がある。
【0025】
多様な実施形態において、送信器及び受信器は非共振コイルである。例えば、一つのコイルの電流変化が磁場変動を引き起こす。磁場内にある第二コイルは磁束を拾い、それにより第二コイルは電流を誘起される。非共振コイルを有する密結合されたシステムの実施例は、引用により全ての目的で本明細書に含まれる国際公開第WO2000/074747号で説明されている。従来のトランスは密結合された非共振システムの別の実施例である。多様な実施形態において、送信器及び受信器は共振コイルである。例えば、一方または両方のコイルは、同調コンデンサ、または、各コイルのその他の周波数制御手段に接続される。共振コイルを有する密結合されたシステムの実施例は、引用により全ての目的で本明細書に含まれる、国際公開第WO2001/037926号;第WO2012/087807号;第WO2012/087811号;第WO2012/087816号;第WO2012/087819号;第WO2010/030378号;及び第WO2012/056365号、並びに、米国公開第2003/0171792号で説明されている。
【0026】
多様な実施形態において、送信器及び受信器は疎結合されている。例えば、送信器は共振して、比較的離れた位置にある受信器により拾われる磁束を伝播し得る。エネルギーを数メートルにわたり伝播し得ることがある。疎結合されたシステムにおいて、電力伝送性は必ずしも距離に依存していなくてもよい。むしろ、本システムは送信器と受信器との結合係数に対応して調節可能であってもよい。疎結合されたシステムの実施例は、引用により全ての目的で本明細書に含まれる国際公開第WO2012/045050号で説明されている。
【0027】
電力はエネルギー放射により無線伝送されてもよい。多様な実施形態において、本システムはアンテナを備える。アンテナは、共振性であっても非共振性であってもよい。例えば、非共振性アンテナは、電磁波を放射し磁場を形成してもよい。磁場は近傍界であっても遠方界であってもよい。磁場は指向性を有し得る。一般的に遠方界の領域は広いが、電力伝送率は低い。そのような共振器を有するエネルギー放射システムの実施例は、引用により全ての目的で本明細書に含まれる国際公開第WO2010/089354号で説明されている。そのような非共振システムの実施例は、引用により全ての目的で本明細書に含まれる国際公開第WO2009/018271号で説明されている。本システムは、アンテナの代わりにレーザなどの高エネルギー光源を備えてもよい。本システムは、光子が送信点から受信点までの、空間的制約がある直コヒーレント経路で電磁エネルギーを運ぶよう、構成され得る。そのようなシステムの実施例は、引用により全ての目的で本明細書に含まれる国際公開第WO2010/089354号で説明されている。
【0028】
また、電力は、エネルギーを通す材または媒体を利用して伝送されてもよい。例えば、体積伝導では、送信点と受信点の間の組織を通して電気エネルギー伝送する。そのような実施例は、引用により全ての目的で本明細書に含まれる国際公開第WO2008/066941号で説明されている。
【0029】
また、電力は、コンデンサ充電技術を使用して伝送されてもよい。本システムは共振性であっても非共振性であってもよい。無線エネルギー伝送用コンデンサ充電の実施例は、引用により全ての目的で本明細書に含まれる国際公開第2012/056365号で説明されている。
【0030】
本発明の多様な態様による本システムを、磁気誘導による無線エネルギー伝送システムに関連させて説明する。典型的なシステムでは共振電力伝送を利用する。本システムは、二つの誘導結合されたコイル間の電力伝送により動作する。しかし、典型的なコイルは、トランスほど互いに密に結合されていない。一般的にトランスでは、コイルが互いに直に隣接して並べて配置されなければならない。典型的なシステムは、コイルの疎結合に対応している。
【0031】
一つの送信コイル及び一つの受信コイルについて説明したが、本明細書の説明から、本システムでは二つ以上の受信コイル及び二つ以上の送信コイルを使用してもよいと理解されるであろう。例えば、送信器は、二つのコイルを有し、第一コイルが磁束を共振させ、第二コイルが第一コイルを励磁するよう構成されてもよい。さらに、本明細書の説明から、「共振器」及び「コイル」は交換可能に使用してもよいと理解されるであろう。様々な観点において、「共振器」は、コイルとコンデンサが接続されたものを意味する。
【0032】
本開示の多様な実施形態によると、本システムは、1以上の受信器に無線で電力伝送するよう構成された1以上の送信器を備える。多様な実施形態において、本システムは、一つの送信器及び多重配列した複数の受信器を含む。周波数発生器を送信器に電気接続し、送信器を駆動し特定の周波数または周波数帯で電力伝送してもよい。周波数発生器は電圧制御発振器及び1以上の切替え式コンデンサアレイ、電圧制御発振器及び1以上のバラクタ、位相ロックループ、ダイレクトデジタルシンセサイザ、またはそれらの組合せを含んでもよい。送信器は、複数周波数で同時に電力伝送するよう構成可能である。周波数発生器は、共通の基準発振器と電気接続された二つ以上の位相ロックループ、二つ以上の独立した電圧制御発振器、またはそれらの組合せを含んでもよい。送信器は、共通の周波数で複数の受信器に同時に電力伝達するよう配置可能である。
【0033】
多様な実施形態において、送信器は特定周波数で小電力信号を送信するよう構成される。送信器は特定期間及び/または間隔で小電力信号を送信してもよい。多様な実施形態において、送信器は大電力信号を特定周波数で無線送信するよう構成される。送信器は特定期間及び/または間隔で大電力信号を送信してもよい。
【0034】
多様な実施形態において、受信器は、受信器が受信可能な周波数または周波数帯を共振器が変更できるよう配置され、受信コイルに電気接続された周波数選択機構を含む。周波数選択機構は、切替え式ディスクリートコンデンサアレイ、可変コンデンサ、受信アンテナと電気接続された1以上のインダクタ、受信アンテナコイルの追加ターン、またはそれらの組合せを含んでもよい。
【0035】
一般的に、送信コイルからの磁束の多くは受信コイルに達しない。送信コイルによって生成され、受信コイルに達する磁束量を「k」で示し、「結合係数」と呼ぶ。
【0036】
多様な実施形態において、本システムは、k値が約0.2から約0.01の範囲を維持するよう構成される。多様な実施形態において、本システムは、k値が少なくとも0.01、少なくとも0.02、少なくとも0.03、少なくとも0.04、または少なくとも0.05を維持するよう構成される。
【0037】
多様な実施形態において、複数のコイルは、物理的に別個である。多様な実施形態において、離間距離は、受信コイルの厚さより大きい。多様な実施形態において、離間距離は、受信コイルと送信コイルのうち大きい方の径以下である。
【0038】
磁束の多くが受信器に達しないため、送信コイルは、受信器に繋がる磁場よりはるかに大きい磁場を生成しなければならない。そのため、多様な実施形態において、コイルのアンペアターン数が多い送信器を構成する手段をとる。
【0039】
受信器に繋がった磁束のみ実負荷に繋がるため、磁場のエネルギーの殆どが無効である。コイルの電流は、コンデンサがコイルに接続されて共振器が形成され、維持される。そのため、電源は受信器により使用されるエネルギーを供給するだけでよい。共振コンデンサは受信器に繋がらない余剰磁束を維持する。
【0040】
多様な実施形態において、受信器のインピーダンスは送信器に整合される。これにより、受信器からの効率的なエネルギー伝達が可能になる。この場合、受信コイルは共振コンデンサを備えなくてもよい。
【0041】
図1に戻って、概略化した無線エネルギー伝送回路を示す。典型的なシステムは直列接続を示すが、本システムを送信器側、受信器側のいずれかの位置で直列接続しても並列接続してもよい。
【0042】
典型的な送信器は、コンデンサCxを介して電源Vsに接続されたコイルLxを含む。典型的な受信器は、コンデンサCyを介して負荷に接続されたコイルLyを含む。コンデンサCxは、Lxを所望の周波数で共振させるよう構成されてもよい。送信コイルのコンデンサCxは幾何学的配列で定義されてもよい。インダクタLx及びLyは、結合係数kで接続される。Mxyは二つのコイルの相互インダクタンスである。相互インダクタンスMxyは、結合係数kと関連性がある。
【0043】
【数1】
【0044】
典型的なシステムにおいて、電源Vsは送信コイルLxと直列であり、全ての無効電流を流す必要があるかもしれない。これが電源の定格電流の負荷を増大させ、電源の抵抗が損失に繋がる。
【0045】
典型的なシステムは、送信器により無線伝送されたエネルギーを受電するよう構成された受信器を備える。典型的な受信器は負荷に接続されている。受信器及び負荷は制御可能なスイッチを用いて電気接続されてもよい。
【0046】
多様な実施形態において、受信器は、電子制御可能なスイッチにより受信コイルから接続または切断されるよう構成された回路エレメントを備える。電気接続には直列配列及び並列配列のいずれも含み得る。回路エレメントは、抵抗器、コンデンサ、インダクタ、アンテナ構造部分、またはそれらの組合せを含み得る。本システムは、電力が送信器により伝送され、所定時間増分における受信器での受電が可能になるよう構成され得る。
【0047】
多様な実施形態において、送信コイル及び/または受信コイルは、実質的に二次元構造である。多様な実施形態において、送信コイルは送信インピーダンス整合構造に接続されてもよい。同様に、受信コイルは受信インピーダンス整合構造に接続されてもよい。適するインピーダンス整合構造の実施例は、コイル、ループ、トランス、及び/またはインピーダンス整合ネットワークを含むが、これらに限定されない。インピーダンス整合ネットワークは、信号源を共振器構造に接続するよう構成されたインダクタまたはコンデンサを含んでもよい。
【0048】
多様な実施形態において、送信器はコントローラ(図示せず)及び駆動回路により制御される。コントローラ及び/または駆動回路は、方向性結合器、信号生成器、及び/または増幅器を含んでもよい。コントローラは、送信周波数またはアンプゲインを調整し受信器と送信器との結合に対し変動を補償するよう、構成されもよい。
【0049】
多様な実施形態において、送信コイルはインピーダンス整合コイルループに接続される。ループは電源に接続され、送信コイルを励磁するよう構成される。第一コイルループは、有限出力インピーダンスを有してもよい。信号生成出力は増幅され、送信コイルに送られてもよい。使用電力は、第一コイルループとメイン送信コイルとの間で磁気伝送され、それにより受信器に磁束を送る。受信コイルにより受電されたエネルギーはオーミック接続により負荷に送られる。
【0050】
実際の回路における課題の一つに、共振器に対しどのようにエネルギー入出力を行うかがある。単に電源及び負荷を共振器に直列または並列に繋ぐとしても、必要な電圧及び電流が難しい。多様な実施形態において、本システムは、システム特性を分析し、必要な電圧及び電流を概算し、受信器が要する電力を送るよう回路エレメントを制御して、エネルギーバランスが大体取れるよう構成される。
【0051】
典型的な実施形態において、システム負荷電力Pを15ワットとし、システムの動作周波数fを250kHzとする。そこで、1サイクル毎に負荷は共振から所定エネルギー量を取りだす。
【0052】
【数2】
【0053】
受信共振のエネルギーは、一般的に、埋込型医療機器用として動作可能な負荷が取り出すエネルギーの数倍大きいことが分かっている。多様な実施形態において、本システムでは、受信器でのエネルギー対負荷が取り出すエネルギーの割合を、7:1とする。この場合、典型的な受信共振での瞬時エネルギーは420μJである。
【0054】
典型的な回路を分析し、受信コイルの自己インダクタンスが60uHであることがわかった。エネルギー及びインダクタンスから、共振器の電圧及び電流が計算できる。
【0055】
【数3】
【0056】
【数4】
【0057】
【数5】
【0058】
電圧及び電流は互いにトレードオフの関係であってもよい。インダクタはターン数に関係なく同一磁束量に接続してもよい。本実施例ではコイルのアンペアターンを同じにする必要があり、ターン数を増やすと電流は減少する。しかし、コイル電圧を上げる必要がある。同様に、電流を増加させると電圧が低下することがある。送信コイルはより多くの磁束を提供する必要がある。送信磁束は受信磁束に対し結合係数の関係にある。よって、送信コイルからの磁界エネルギーは、kでスケーリングされる。
【0059】
【数6】
【0060】
kを0.05とすると、
【0061】
【数7】
【0062】
同回路に関し、送信コイルの自己インダクタンスは上記のように146uHであった。その結果、
【0063】
【数8】
【0064】
【数9】
【0065】
本実施例から、競合するファクタ、並びに、環境に合った所望の結果が得られる電圧、電流及びインダクタンスのバランスのとり方が理解されるであろう。受信器のように、電圧及び電流は互いにトレードオフの関係であってもよい。本実施例において、本システムの電圧及び電流は比較的高い。負荷が低ければ、同調を調整し受信器の電圧及び/または電流を下げることができる。
【0066】
結合係数及び相互インダクタンスの推定
上記のように、結合係数kは様々な理由で有用であってもよい。一つの実施例において、結合係数を使用して、適切な性能を確保するために同調調整ができるようコイル相互の配置を判断してもよい。受信コイルを送信コイルから離すと、相互インダクタンスは低下し、他の条件が同じであれば、電力伝送は減少する。多様な実施形態において、本システムは、同調調整を行い結合係数の急落を補償するよう構成される。
【0067】
上記の典型的なシステムは、しばしば不完全な情報をもたらす。当業者であれば理解するであろう様々な要因があるが、本システムでは全てのパラメータデータを収集していない。さらに、コイル同士の物理的ギャップがあり、且つ、二つの共振器間に外的通信手段が無いために、送信器は受信器が持たない情報を持っているかもしれず、またその逆もあるかもしれない。こういった制約のために、結合係数kをリアルタイムに直接測定し求めることは困難である。
【0068】
所定の幾何学的配列の二つのコイルにおける結合係数kを推定するいくつかの原理を以下で説明する。本手法では、ビオ・サバール計算または有限要素法などの技法を使ってもよい。簡潔に理解できるよう、推定及び概括は、特定方向でのコイルの相互作用を基に行う。電気回路の観点から、一般的に、物理上幾何学的配列を置換すると結合係数に影響し得る。
【0069】
二つのコイルを同一平面内に、一方のコイルで他方を取り囲んで配列する場合、結合係数は、二つのコイルの面積比にほぼ比例すると推定できる。これにより、コイル1により生成された磁束は、図2に示すコイル1が囲む全エリアでほぼ均一であると推定できる。
【0070】
コイルが一直線上に無く、ある相対角を有して位置する場合、結合係数は低下する。低下量は図3Aで示す角度の余弦に略等しくなると推定される。コイルが互いに直交しシータ(θ)が90度である場合、磁束は受信器で受電されず、結合係数はゼロとなる。
【0071】
図3Bに示すように、一方のコイルからの磁束の半分が一方向にあり、残り半分が他方にある場合、磁束は相殺し結合係数はゼロとなる。
【0072】
最後に挙げる原則はコイルのつり合いに依存する。一方のコイルから他方への結合係数及び相互インダクタンスは、どちらのコイルが励磁されるかに関係なく同じであると推定される。
【0073】
【数10】
【0074】
従来の無線電力システムでの送信コイル及び受信コイルは、一般的に硬く平面状に設計される。このような硬い平面コイルは比較的製造しやすいが、特に、患者にエネルギーを伝送するために皮膚に装着しなければならない送信コイルの場合、装着中不快感を伴うことがある。
【0075】
本開示において、TETシステムのヒンジ付コイルを設計し、装着中の患者にとってより快適に便利にすることができる。本明細書で開示される実施形態は、TETシステムの送信共振コイルまたは受信共振コイルのいずれにも適用可能であり、非平面またはフレキシブル/調整可能コイルを設計することで、患者の皮膚(送信コイル)に、または体内の埋込位置(受信コイル)に沿うようできることが利点である。
【0076】
典型的なヒンジ付コイル
図4Aは、TETシステムで使用するヒンジ付及び/または非平面共振コイル400の一つの実施形態を示す。共振コイルは図のように一般的に卵型/楕円コイルであってもよく、或いは、円形コイル、長方形コイル、または正方形コイルなどであってもよい。共振コイル400は、直線状節402及びカーブ状節404など複数の節で構成される。典型的な実施形態において、節はヒンジ406で互いに結合される。
【0077】
図4Bはヒンジ付共振コイル400の別の実施形態を示す。図の実施形態において、コイルは、一対のヒンジ406で互いに結合された一対の節403を備え得る。図4Bに示す単純な二部構成のヒンジは、患者の胸郭に沿わせるなど、患者の体の所定部に沿ってまたは所定部を成形するには好適である。
【0078】
従来の無線電力伝送システムには、硬いコイルが設計される。硬いコイルを使うと、送信器と受信器との間の相互作用は確実に一定にできる。当業者であれば理解するであろうが、非平面コイルは効率的に電力伝送するよう同調するのが難しいことがある。さらに、コイル形状が変わることで、送信コイルが作り出す磁場が影響を受ける。このため、従来硬く平面なコイルが使用されてきた。典型的なコイルは硬いコイルとフレキシブルコイルの両方の利点を備える。本コイルは特定用途用に成形可能で、例えば、患者の体に解剖学的にフィットするようにできる。同時に、本コイルは、使用中に高い性能を発揮する特定形状に設定可能である。さらに、本明細書で記述するように、本システムは、コイルの形状が非平面で複雑であっても効率的に結合しやすく電力伝送しやすいその他の特徴を備える。
【0079】
ヒンジ付コイルについて説明してきたが、その他の構成を採用してもよいことは理解されるであろう。例えば、比較的硬い節をエラストマヒンジ及び円筒形ヒンジで結合できる。エラストマヒンジの場合、比較的硬い節がエラストマ材で結合される。一つの実施形態において、節は、熱可塑性材などの形状設定可能な形状記憶材で結合される。
【0080】
隣り合った節を曲げ、コイル400の形状を非常に調整しやすく湾曲させるよう調整できる。図に示すように、図4A〜4Bの実施形態は、コイル共振器の一部が折れ、残りのコイルから曲がるので、非平面に調整できる。いくつかの実施形態において、ヒンジは、それぞれの節が好適な位置に曲げられた後、特定の形状でコイル400を固定するよう構成可能である。別の実施形態において、ヒンジには抵抗がなく、コイルを互いにゆるく固定することができ、まるで、張力が無い時に鎖の節がたるみ曲がっているようにできる。
【0081】
多様な実施形態において、コイルの節は固定機構を備え、好適な位置で固定可能である。一つの実施形態において、節はネジロックを有するヒンジで接続される。臨床医または患者は、ヒンジが固定状態にない場合コイルを体の形状または快適な位置に合わせることができる。その後、ネジを締めてヒンジを固定し、成形したコイルを所定の位置に固定できる。当業者であればわかるであろうが、クイックロッククランプやバレルロックなど他の固定機構タイプを採用してもよい。
【0082】
コイル400は、銅ワイヤなどのワイヤ407を節上または節内に備え得る。図4Aにおいて、ワイヤ407はコイルの外側に配置されている。その他の図では、図を簡潔にするためにワイヤを示していないか、複数の節の内部に配置されているため見えない。ワイヤは、各節または各節を周ってコイル全周囲で輪を形成し、共振コイルのループを形成し得る。いくつかの実施形態において、節はワイヤを固定する溝または管を備え得る。他の実施形態において、節を実質的に窪ませて、ワイヤを収容する空間を形成し得る。さらに、節の溝、管または空間により、ワイヤがコイルのヒンジ部において節と節の間で伸びるようすることができる。いくつかの実施形態において、複数のコイルを共振器に備え得る。例えば、共振器は送信コイル、受信コイル、及び/またはエキサイタコイルのいずれの組合せでも備え得る。
【0083】
いくつかの実施形態において、コイル共振器を、特定の形状かR形状に事前に曲げるか、事前に成形し得る。例えば、コイル共振器をTETシステムで送信共振器として使用する場合、コイル共振器を、患者の生体構造の特定部に沿うようヒンジ部を事前成形し得る。この事前成形した形状は、特定用途または患者の体の対象位置次第、或いは受信コイルを患者に埋め込む位置次第であり様々になり得る。例えば、患者の胸部に配置され、胸部付近に埋め込まれた受信コイルにアクセスするよう構成された送信コイルは、患者の体側部または傾斜部に設置され、患者の体の当該部位に埋め込まれた受信コイルにアクセスするよう構成された送信コイルに比べ、湾曲度が少ない形状に事前成形されてもよい。一つの実施形態において、事前成形コイルは非直線節を有する。節の形状は事前成形して湾曲させるか、患者の体の一部に解剖学的に適合することにより優れたその他形状にし得る。例えば、節の形状は胸郭の傾斜部または側面を包むように若干湾曲させてもよい。
【0084】
他の実施形態において、図4A〜4Bのコイル共振器の形状は、事前成形または事前湾曲されていないが、所望の形状にユーザまたは医師により湾曲させるか沿うように調整されてもよい。TETシステムで使用する調整可能ヒンジ付コイルを設計することで、システムの節のそれぞれを、形状またはサイズに関わらず無限にカスタマイズ可能になり患者一人一人が快適になるようにできる。製造者は、各個別用途及びコイル設置場所に最適な湾曲または非平面コイルを設計する必要は無いが、コイルを患者の体に沿って容易に湾曲させるか押しつけ、患者それぞれの体の形に完全に沿うようにすることができる。本明細書で記述したコイルの設計における別の利点として、従来の平面コイルに比べ、本コイルは体の形状により適合し、患者の生活の質(QoL)を劇的に向上できることがある。
【0085】
図4C〜4Dは、図4Bとは異なる別のヒンジ付コイル400の実施形態を示す。この実施形態において、コイル400は、さらにフェライトタイル408の形状の磁気シールドエレメントを備え、コイルに磁性シールドを提供してもよい。フェライトタイル408は、図4C〜4Dで示すように、組立式タイルであり、コイルのヒンジ付コンポーネントのみに組立式シールドを提供できる。図4Cは、各節403の外面に配置された一対のフェライトタイル408を有するコイル400を示している。図4Dは、対応する節403から外されたフェライトタイル408を示している。本組立式フェライトタイルの設計の利点は、フェライト材が本質的に脆いため、コイル400の耐久性及び製造性を向上できることである。
【0086】
図5は、患者の外部に設置させる送信共振コイル500の一つの実施形態を示す。図5において、送信コイルは患者の生体構造に沿うよう構成された事前屈曲共振コイルまたは事前成形共振コイルのいずれでもよい。また或いは、送信コイルは、患者の生体構造に沿って屈曲可能に構成されたヒンジ付共振コイルまたはフレキシブル共振コイルであってもよい。送信共振コイル500は、患者に埋め込まれた受信共振コイル502に無線でエネルギー伝送するよう構成され得る。いくつかの実施形態において、受信共振コイルは、心臓ポンプなど埋込型医療機器504に電気接続され、医療機器の動作用エネルギーを提供し得る。
【0087】
図6は、ヒンジ付またはフレキシブル共振コイル600のまた別の実施形態を示す。示した実施形態において、コイルはフレキシブルまたは屈曲可能な外装601を備え得る。外装自体全体で屈曲可能または形状適合が可能で、例えば、コイルの形状を患者の体に沿うよう変えることができる。別の実施形態において、外装は外装601の内部または外装の外部に多数のヒンジ606を備え、コイルの形状を上記のように変形可能にしてもよい。また示したように、コイル600は、中央部に蜘蛛の巣状または通気性のある構造610を備え、コイルの通気性をよくしてもよい。上記のように、コイル600は、銅などのループ状メタルコイルを多数備え、無線での受送電を可能にしてもよい。
【0088】
多様な例示的実施形態を説明してきたが、以下の請求項で説明するような本発明の範囲から逸脱することなく、数多い変更のうちいずれであっても多様な実施形態に加えてもよい。例えば、代替実施形態において上記の多様な方法ステップの実行順序をしばしば変更してもよく、また他の代替実施形態において、1以上の方法ステップをまとめて省略してもよい。多様な装置及びシステムの実施形態における選択可能な特徴を、実施形態が含む場合も含まない場合もある。故に、上の説明は主に例を挙げるためのものであり、請求項で定めるように、本発明の範囲を限定する意図はない。
【0089】
本明細書に含まれる実施例及び例示は、例示であって限定でなく、主題が実施されてもよい特定の実施形態を示すものである。上記のように、本開示の範囲から逸脱することなく、構成及び論理の置換変更を行うよう、他の実施形態を利用し導き出してもよい。発明の主題のそのような実施形態を個別にまたはまとめて、本明細書で単に便宜上「発明」と呼ぶことがあっても、実際には複数を開示する場合、本出願の範囲をいずれかの単一発明または発明の概念に任意に限定する意図はない。このため、本明細書では特定の実施形態を図に示し説明してきたが、同一目的の達成を意図する配置は全て、示した特定の実施形態の代用であるとしてもよい。本開示は、多様な実施形態のあらゆる適用または変形を包含することを意図している。上記の実施形態及び本明細書に特段に説明のない他の実施形態の組み合わせは、上記の見解において、当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6