特許第6516862号(P6516862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6516862排ガス浄化用触媒及びその製造方法並びにそれを用いた排ガス浄化装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6516862
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒及びその製造方法並びにそれを用いた排ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20190513BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20190513BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20190513BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20190513BHJP
【FI】
   B01J23/63 AZAB
   B01J37/08
   B01J37/02 101Z
   B01D53/94 222
   B01D53/94 150
   B01D53/94 245
【請求項の数】14
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-547788(P2017-547788)
(86)(22)【出願日】2016年10月24日
(86)【国際出願番号】JP2016081494
(87)【国際公開番号】WO2017073527
(87)【国際公開日】20170504
【審査請求日】2018年3月6日
(31)【優先権主張番号】特願2015-211243(P2015-211243)
(32)【優先日】2015年10月27日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】桜田 雄
(72)【発明者】
【氏名】松枝 悟司
(72)【発明者】
【氏名】星野 将
(72)【発明者】
【氏名】中島 諒太
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−117190(JP,A)
【文献】 特開2006−298682(JP,A)
【文献】 特表2014−509241(JP,A)
【文献】 特開2011−183317(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103769074(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
DWPI(Derwent Innovation)
B01J 21/00−38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の担体粒子、第2の担体粒子、並びに前記第1及び第2の担体粒子に担持されている貴金属触媒粒子を有する排ガス浄化用触媒であって、
前記第1の担体粒子が、シリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも1種の金属酸化物と、セリアではない希土類酸化物とを含有し、
前記第2の担体粒子が、セリアではない希土類酸化物を含有し、そしてシリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも1種の金属酸化物を含有してもよく
前記第1の担体粒子の前記金属酸化物の含有量が、前記第2の担体粒子の前記金属酸化物の含有量よりも高く、
前記第2の担体粒子の前記希土類酸化物の含有量が、前記第1の担体粒子の前記希土類酸化物の含有量よりも高く、
前記第1の担体粒子の前記希土類酸化物の含有量が20重量%未満であり、前記第2の担体粒子の前記希土類酸化物の含有量が、20重量%以上であり、かつ
走査透過型電子顕微鏡によって前記第1の担体粒子と前記第2の担体粒子とを観察した場合に、前記第2の担体粒子の投影面積の、前記第1の担体粒子の投影面積に対する比(第2の担体粒子の面積/第1の担体粒子の面積)が、0.050以上0.100以下の範囲である、
排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記第1の担体粒子の前記金属酸化物及び存在する場合の前記第2の担体粒子の前記金属酸化物が、セリアジルコニア固溶体であり、かつ
前記第1の担体粒子の前記希土類酸化物及び前記第2の担体粒子の前記希土類酸化物が、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム及びサマリウムからなる群より少なくとも1種選択される希土類元素の酸化物である、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
第1の担体粒子、第2の担体粒子、並びに前記第1及び第2の担体粒子に担持されている貴金属触媒粒子を有する排ガス浄化用触媒であって、
前記第1の担体粒子が、シリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも1種の金属酸化物と、セリアではない希土類酸化物とを含有し、
前記第2の担体粒子が、セリアではない希土類酸化物を含有し、そしてシリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも1種の金属酸化物を含有してもよく
前記第1の担体粒子の前記金属酸化物の含有量が、前記第2の担体粒子の前記金属酸化物の含有量よりも高く、
前記第2の担体粒子の前記希土類酸化物の含有量が、前記第1の担体粒子の前記希土類酸化物の含有量よりも高く、
前記第1の担体粒子の前記金属酸化物及び存在する場合の前記第2の担体粒子の前記金属酸化物が、セリアジルコニア固溶体であり、かつ
前記第1の担体粒子の前記希土類酸化物及び前記第2の担体粒子の前記希土類酸化物が、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム及びサマリウムからなる群より少なくとも1種選択される希土類元素の酸化物である、
排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
前記第1の担体粒子の前記希土類酸化物の含有量が20重量%未満であり、前記第2の担体粒子の前記希土類酸化物の含有量が、20重量%以上である、請求項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
走査透過型電子顕微鏡によって前記第1の担体粒子と前記第2の担体粒子とを観察した場合に、前記第2の担体粒子の投影面積の、前記第1の担体粒子の投影面積に対する比(第2の担体粒子の面積/第1の担体粒子の面積)が、0.050以上0.100以下の範囲である、請求項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
前記第1の担体粒子が、50〜95重量%のジルコニア、5.0〜45重量%のセリア、及び1.0以上20重量%未満のセリアではない希土類酸化物を含有し、かつ
前記第2の担体粒子が、0.0〜40重量%のジルコニア、0.0〜40重量%のセリア、及び20〜60重量%のセリアではない希土類酸化物している、請求項2〜5のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項7】
走査透過型電子顕微鏡によって測定される、前記第1の担体粒子及び前記第2の担体粒子平均粒径が、それぞれ0.50〜100μm及び0.50〜5μmである、請求項1、2、4及び5のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項8】
前記貴金属触媒粒子が、白金粒子、パラジウム粒子、ロジウム粒子又はこれらの組合せを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項9】
走査型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分析によって得られる特性X線の強度測定を行ったときに、以下の式で計算される相関係数が65.0%以上である、請求項1、2、4、5及び7のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒:
【数1】
(ここで、貴金属触媒粒子iに含まれる貴金属元素のスペクトル強度値をxとし、貴金属元素のスペクトル強度平均値をxavとし、その貴金属触媒粒子iの位置でのセリウムではない希土類元素のスペクトル強度値をyiとし、セリウムではない希土類元素のスペクトル強度平均値をyavとする)。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒及び基材を含む、排ガス浄化装置。
【請求項11】
以下を含む、排ガス浄化用触媒の製造方法:
シリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも1種の金属酸化物と、セリアではない希土類酸化物とを含有している担体粒子の水系分散体、触媒貴金属の塩を含む水溶液、及び有機カルボン酸を混合して、前記担体粒子に触媒貴金属を担持し、それによって未焼成の排ガス浄化用触媒を含む水系分散体を得る工程;
前記未焼成の排ガス浄化用触媒を含む水系分散体を、乾燥させ、そして焼成する工程。
【請求項12】
前記担体粒子の前記金属酸化物が、セリアジルコニア固溶体であり;前記担体粒子の前記希土類酸化物が、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム及びサマリウムからなる群より少なくとも1種選択される希土類元素の酸化物であり;かつ前記触媒貴金属の塩が、白金、パラジウム、ロジウム又はこれらの組合せの硝酸塩又は硫酸塩である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記有機カルボン酸が、分子量300以下の有機カルボン酸である、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記担体粒子に含有されている希土類元素の総和物質量に対する、前記有機カルボン酸の物質量比[mol/mol−Ln]が、0.5以上3.5以下である、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な排ガス浄化用触媒及びその製造方法並びにそれを用いた排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジン等の内燃機関からの排ガス中は、窒素酸化物(NO)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等を含む。したがって、CO及びHCを酸化し、かつNOを還元する排ガス浄化用触媒によって浄化した後で、これらの排ガスを大気中に放出している。排ガス浄化用触媒の代表的なものとしては、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)等の貴金属を、γ−アルミナ等の多孔質金属酸化物担体に担持させた三元触媒が知られている。
【0003】
この金属酸化物担体は、様々な材料で作ることができるが、従来は高表面積を得るためにアルミナ(Al)を使用することが一般的であった。しかしながら近年では、担体の化学的性質を利用して排ガスの浄化を促進するために、セリア(CeO)、ジルコニア(ZrO)、チタニア(TiO)等の様々な他の材料を、アルミナと組み合わせて又は組み合わせないで、使用することも提案されている。また、このような担体としてセリアジルコニア固溶体を用いることも提案されている。
【0004】
セリアジルコニア固溶体に関して、セリアジルコニア固溶体にアルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類からなる群より選択される元素を加えることによって、セリアジルコニア固溶体の耐熱性を改良できることが知られている(例えば特許文献1)。また特許文献2では、希土類添加ジルコニア担体粒子にロジウムを担持させることによって、良好な排ガス浄化性能が得られることを開示している。
【0005】
特許文献3及び4は、セリアジルコニア固溶体粒子表面に希土類富化領域を与えた担体粒子を開示している。特許文献3及び4に記載の発明では、希土類酸化物とロジウムとの親和性に着目し、希土類富化領域において、粒子表面におけるロジウムの移動及びシンタリングを抑制し、かつロジウムの酸化を防止するによって、ロジウムの触媒活性を高い状態に維持している。
【0006】
このように金属酸化物担体を、希土類元素と組み合わさることによって、触媒貴金属のシンタリング等を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−275919号公報
【特許文献2】特表2002−518171号公報
【特許文献3】特開2008−018323号公報
【特許文献4】特開2008−104928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の排ガス浄化用触媒よりも、さらに貴金属の触媒活性を高い状態に維持できる、新規な排ガス浄化用触媒及びその製造方法並びにそれを用いた排ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施態様としては、以下の態様を挙げることができる:
《態様1》
第1の担体粒子、第2の担体粒子、並びに前記第1及び第2の担体粒子に担持されている貴金属触媒粒子を有する排ガス浄化用触媒であって、
前記第1の担体粒子が、シリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも1種の金属酸化物と、セリアではない希土類酸化物とを含有し、
前記第2の担体粒子が、セリアではない希土類酸化物を含有し、そしてシリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも1種の金属酸化物を含有してもよく
前記第1の担体粒子の前記金属酸化物の含有量が、前記第2の担体粒子の前記金属酸化物の含有量よりも高く、かつ
前記第2の担体粒子の前記希土類酸化物の含有量が、前記第1の担体粒子の前記希土類酸化物の含有量よりも高い、排ガス浄化用触媒。
《態様2》
前記第1の担体粒子の前記希土類酸化物の含有量が20重量%未満であり、前記第2の担体粒子の前記希土類酸化物の含有量が、20重量%以上である、態様1に記載の排ガス浄化用触媒。
《態様3》
走査透過型電子顕微鏡によって前記第1の担体粒子と前記第2の担体粒子とを観察した場合に、前記第2の担体粒子の投影面積の、前記第1の担体粒子の投影面積に対する比(第2の担体粒子の面積/第1の担体粒子の面積)が、0.050以上0.100以下の範囲である、態様2に記載の排ガス浄化用触媒。
《態様4》
前記第1の担体粒子の前記金属酸化物及び存在する場合の前記第2の担体粒子の前記金属酸化物が、セリアジルコニア固溶体であり、かつ
前記第1の担体粒子の前記希土類酸化物及び前記第2の担体粒子の前記希土類酸化物が、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム及びサマリウムからなる群より少なくとも1種選択される希土類元素の酸化物である、態様1〜3のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
《態様5》
前記第1の担体粒子が、50〜95重量%のジルコニア、5.0〜45重量%のセリア、及び1.0以上20重量%未満のセリアではない希土類酸化物を含有し、かつ
前記第2の担体粒子が、0.0〜40重量%のジルコニア、0.0〜40重量%のセリア、及び20〜60重量%のセリアではない希土類酸化物している、態様4に記載の排ガス浄化用触媒。
《態様6》
走査透過型電子顕微鏡によって測定される、前記第1の担体粒子及び前記第2の担体粒子平均粒径が、それぞれ0.50〜100μm及び0.50〜5μmである、態様2〜5のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
《態様7》
前記貴金属触媒粒子が、白金粒子、パラジウム粒子、ロジウム粒子又はこれらの組合せを含む、態様1〜6のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
《態様8》
走査型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分析によって得られる特性X線の強度測定を行ったときに、以下の式で計算される相関係数が65.0%以上である、態様2〜7のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒:
【数1】
(ここで、貴金属触媒粒子iに含まれる貴金属元素のスペクトル強度値をxとし、貴金属元素のスペクトル強度平均値をxavとし、その貴金属触媒粒子iの位置でのセリウムではない希土類元素のスペクトル強度値をyiとし、セリウムではない希土類元素のスペクトル強度平均値をyavとする)。
《態様9》
態様1〜8のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒及び基材を含む、排ガス浄化装置。
《態様10》
以下を含む、排ガス浄化用触媒の製造方法:
シリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも1種の金属酸化物と、セリアではない希土類酸化物とを含有している担体粒子の水系分散体、触媒貴金属の塩を含む水溶液、及び有機カルボン酸を混合して、前記担体粒子に触媒貴金属を担持し、それによって未焼成の排ガス浄化用触媒を含む水系分散体を得る工程;
前記未焼成の排ガス浄化用触媒を含む水系分散体を、乾燥させ、そして焼成する工程。
《態様11》
前記担体粒子の前記金属酸化物が、セリアジルコニア固溶体であり;前記担体粒子の前記希土類酸化物が、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム及びサマリウムからなる群より少なくとも1種選択される希土類元素の酸化物であり;かつ前記触媒貴金属の塩が、白金、パラジウム、ロジウム又はこれらの組合せの硝酸塩又は硫酸塩である、態様10に記載の方法。
《態様12》
前記有機カルボン酸が、分子量300以下の有機カルボン酸である、態様10又は11に記載の方法。
《態様13》
前記担体粒子に含有されている希土類元素の総和物質量に対する、前記有機カルボン酸の物質量比[mol/mol−Ln]が、0.5以上3.5以下である、態様10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来の排ガス浄化用触媒よりも、さらに貴金属の触媒活性を高い状態に維持できる、新規な排ガス浄化用触媒及びその製造方法並びにそれを用いた排ガス浄化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1(a)は、従来の排ガス浄化用触媒の概念図であり、図1(b)は、本発明の排ガス浄化用触媒の概念図である。
図2図2は、実施例3と比較例3の排ガス浄化用触媒について行った、走査透過型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分析による元素マッピングである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
《排ガス浄化用触媒》
本発明の排ガス浄化用触媒は、第1の担体粒子、第2の担体粒子、並びに前記第1及び第2の担体粒子に担持されている貴金属触媒粒子を有する。第1の担体粒子は、シリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも1種の金属酸化物と、セリアではない希土類酸化物とを含有し、第2の担体粒子は、セリアではない希土類酸化物を含有し、そしてシリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも1種の金属酸化物を含有してもよい。第1の担体粒子の金属酸化物の含有量は、第2の担体粒子の金属酸化物の含有量よりも高く、かつ第2の担体粒子の前記希土類酸化物の含有量は、前記第1の担体粒子の前記希土類酸化物の含有量よりも高い。
【0013】
従来技術においては、金属酸化物担体表面に希土類富化領域を与えて、希土類富化領域において貴金属触媒粒子の移動及びシンタリングを抑制し、かつ貴金属触媒粒子の酸化を防止することによって、触媒活性を高い状態に維持している。それに対して、本発明においては、通常の金属酸化物担体と共に、希土類酸化物の含有量が高い第2の担体を併用することによって、さらに貴金属触媒粒子にさらに高い活性を与えることができた。理論に拘束されないが、本発明では、貴金属触媒粒子が、希土類酸化物の含有量が高い第2の担体に、集中的に担持されることによって、触媒活性をさらに高くすることができたものであると考えられる。
【0014】
図1(a)は、従来の排ガス浄化用触媒の概念図であり、図1(b)は、本発明の排ガス浄化用触媒の概念図である。図1(a)において、排ガス浄化触媒(10)は、金属酸化物担体粒子(1)及び貴金属触媒粒子(3)を有し、金属酸化物粒子(1)には、希土類富化領域(1a)が存在している。図1(b)において、排ガス浄化触媒(10)は、金属酸化物の第1の担体粒子(1)、希土類酸化物の含有量が高い第2の担体粒子(2)及び貴金属触媒粒子(3)を有し、貴金属触媒粒子(3)は、その多くが第2の担体粒子(2)に担持されている。
【0015】
(担体粒子)
本発明の排ガス浄化用触媒には、貴金属触媒粒子の担体として、少なくとも第1の担体粒子と第2の担体粒子とを用いる。第1の担体粒子及び第2の担体粒子以外の第3の担体粒子をさらに用いることもできる。
【0016】
例えば、第1の担体粒子を、セリアではない希土類酸化物の含有量が20重量%未満である粒子と定義し、第2の担体粒子を、セリアではない希土類酸化物の含有量が、20重量%以上である粒子と定義し、そして走査透過型電子顕微鏡によって第1の担体粒子及び第2の担体粒子を観察した場合に、本発明の排ガス浄化用触媒に含まれる第2の担体粒子の投影面積の、第1の担体粒子の投影面積に対する比(第2の担体粒子の面積/第1の担体粒子の面積)は、0.005以上、0.01以上、0.03以上、0.05以上、又は0.06以上であってもよく、0.30以下、0.25以下、0.20以下、0.15以下、0.10以下、又は0.08以下であってもよい。このような範囲であれば、貴金属触媒粒子を第2の担体粒子に集中的に担持させ、かつ貴金属触媒粒子のシンタリング等を実質的に防ぐことができ、NOx浄化温度の上昇を防げる傾向にある。なお、上記の第1の担体粒子と第2の担体粒子の定義が変更された場合でも、上記の投影面積比は、同じ範囲とすることができる。
【0017】
担体粒子は、特開2015−85241号公報に記載のような基材の一部であってもよい。
【0018】
(担体粒子−第1の担体粒子)
本発明の排ガス浄化用触媒で用いられる第1の担体粒子は、シリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも1種の金属酸化物と、セリアではない希土類酸化物とを含有する。好ましくは、第1の担体粒子は、セリア及び/又はジルコニアを少なくとも含有する。
【0019】
例えば、第1の担体粒子を、セリアではない希土類酸化物の含有量が20重量%未満である粒子と定義し、第2の担体粒子を、セリアではない希土類酸化物の含有量が、20重量%以上である粒子と定義した場合、第1の担体粒子の平均粒径は、0.50μm以上、1.0μm以上、3.0μm以上、5.0μm以上、8.0μm以上、又は10.0μm以上であってもよく、100μm以下、80μm以下、50μm以下、30μm以下、又は20μm以下であってもよい。上記の第1の担体粒子と第2の担体粒子の定義が変更された場合でも、第1の担体粒子の平均粒径は、同じ範囲とすることができる。
【0020】
ここで、平均粒径の測定は、日本エフイー・アイ社製の走査透過型電子顕微鏡Tecnai Osiras及びその装置に付随しているエネルギー分散型X線分析によって行う。すなわち、この装置で20,000倍の測定倍率によって映し出された画面において、等価直径が0.10μm以上である粒子の中から、エネルギー分散型X線分析によって、第1の担体粒子を見つけ出す。そして、それらの粒子の等価直径を粒子の投影面積から計算する。この作業を任意の20画面において行い、その全ての平均値を、第1の担体粒子の平均粒径と認定する。ここで、粒子の等価直径とは、粒子の外周長さと等しい外周長さを有する正円の直径をいう。
【0021】
第1の担体粒子は、シリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも1種の金属酸化物を含有し、その含有量は、第1の担体粒子の重量に対して、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、又は70重量%以上であってもよく、95重量%以下、90重量%以下、85重量%以下、又は80重量%以下であってもよい。
【0022】
第1の担体粒子が金属酸化物としてセリアを含む場合、第1の担体粒子のセリア及びセリアではない希土類酸化物の合計の含有量は、第1の担体粒子の重量に対して、5.0重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、又は25重量%以上であってもよく、50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、又は35重量%以下であってもよい。
【0023】
第1の担体粒子が金属酸化物としてセリアを含む場合、セリアの含有量は、5.0重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、又は20重量%以上であってもよく、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、又は30重量%以下であってもよい。さらに、セリアではない希土類酸化物の含有量は、1.0重量%以上、3.0重量%以上、5.0重量%以上、又は7.0重量%以上であってもよく、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、20重量%未満、15重量%以下、又は10重量%以下であってもよい。
【0024】
第1の担体粒子は、好ましくは上記の金属酸化物の固溶体の形態であり、例えば上記の金属酸化物としてセリアジルコニア固溶体を含有することが好ましい。この場合、第1の担体粒子のジルコニアの含有量は、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、又は70重量%以上であってもよく、95重量%以下、90重量%以下、85重量%以下、又は80重量%以下でもよい。また、この場合、第1の担体粒子のセリアの含有量は、5.0重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、又は25重量%以上であってもよく、50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、又は35重量%以下でもよい。ここで、これらの含有量は、元素分析から計算して求めることができる。
【0025】
第1の担体粒子の希土類酸化物としては、希土類元素のうちの原子番号が若く、且つ4f電子軌道に空きがある又は空きが多いイオンを形成する元素、例えばイットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)及びサマリウム(Sm)からなる群より選択される希土類元素の酸化物を挙げることができる。
【0026】
第1の担体粒子は、上記以外の成分を含有していてもよく、例えば酸化バリウム等を含有していてもよい。
【0027】
第1の担体粒子は、上記の特許文献等に記載された公知の方法によって製造することができる。
【0028】
(担体粒子−第2の担体粒子)
本発明の排ガス浄化用触媒で用いられる第2の担体粒子は、セリアではない希土類酸化物を含有し、そしてシリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも1種の金属酸化物を含有してもよい。ここで、第2の担体粒子の前記金属酸化物の含有量は、第1の担体粒子の前記金属酸化物の含有量よりも低く、かつ第2の担体粒子の希土類酸化物の含有量は、第1の担体粒子の希土類酸化物の含有量よりも高い。これにより、貴金属触媒粒子を第2の担体粒子に集中的に担持させることができる。
【0029】
例えば、第1の担体粒子を、セリアではない希土類酸化物の含有量が20重量%未満である粒子と定義し、第2の担体粒子を、セリアではない希土類酸化物の含有量が、20重量%以上である粒子と定義した場合、第2の担体粒子の平均粒径は、0.50μm以上、1.0μm以上、2.0μm以上、又は3.0μm以上であってもよく、50μm以下、20μm以下、15μm以下、10μm以下、又は5.0μm以下であってもよい。このような範囲であれば、貴金属触媒粒子を第2の担体粒子に集中的に担持させ、かつ貴金属触媒粒子のシンタリング等を実質的に防ぐことができ、NOx浄化温度の上昇を防げる傾向にある。上記の第1の担体粒子と第2の担体粒子の定義が変更された場合でも、第2の担体粒子の平均粒径は、同じ範囲とすることができる。この平均粒径は、上記の第1の担体粒子の平均粒径と同一の方法によって測定される。
【0030】
第2の担体粒子は、セリアではない希土類酸化物を含有し、その含有量は、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、又は30重量%以上であってもよく、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下、45重量%以下、又は40重量%以下であってもよい。
【0031】
第2の担体粒子は、シリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも1種の金属酸化物を含有していてもよく、含有していなくてもよい。金属酸化物を含有する場合、その含有量は、第2の担体粒子の重量に対して、1.0重量%以上、2.0重量%以上、3.0重量%以上、5.0重量%以上、10重量%以上、又は15重量%以上であってもよく、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、又は25重量%以下であってもよい。
【0032】
第2の担体粒子は、セリア及びセリアではない希土類酸化物を含有する場合、その合計の含有量は、第2の担体粒子の重量に対して、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、又は80重量%以上であってもよく、99重量%以下、95重量%以下、93重量%以下、又は90重量%以下であってもよい。
【0033】
第2の担体粒子がセリアを含有する場合、その含有量は、20重量%以上、25重量%以上、又は30重量%以上であってもよく、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下、45重量%以下、又は40重量%以下であってもよい。
【0034】
第2の担体粒子の希土類酸化物としては、第1の担体粒子に含有される希土類酸化物と同種のものを用いることができる。
【0035】
第2の担体粒子は、第1の担体粒子と同様に、ジルコニア及び希土類酸化物以外の第3の成分を含有していてもよく、例えばアルミナ、シリカ、チタニア等を含有していてもよい。
【0036】
第2の担体粒子は、上記の特許文献等に記載された公知の方法によって製造することができる。ただし、第2の担体粒子は、下記に詳細に示すように、担体粒子を、有機カルボン酸溶液に投入し、担体粒子から溶出させて得ることが好ましい。
【0037】
(貴金属触媒粒子)
本発明の排ガス浄化用触媒で用いられる貴金属触媒粒子としては、特に白金属粒子を挙げることができ、より好ましくは白金粒子、パラジウム粒子、ロジウム粒子又はこれらの組合せを挙げることができる。
【0038】
貴金属触媒粒子は、排ガスとの接触面積を高める観点から、十分に小さい粒径の微粒子であることが好ましい。典型的には、触媒粒子の平均粒径は、TEM観察によって求められる等価直径の平均値として、1〜20nm程度であってもよく、10nm以下、7nm以下又は5nm以下であってもよい。
【0039】
貴金属触媒粒子は、第1の担体粒子及び第2の担体粒子の合計100質量部に対して、合計で0.1質量部以上、0.3質量部以上、0.5質量部以上、又は1.0質量部以上で担持されていてもよく、10質量部以下、5質量部以下、3.0質量部以下、2.0質量部以下で担持されていてもよい。
【0040】
希土類酸化物の含有率が高い第2の担体に貴金属触媒粒子が集中的に担持されるという点に関して、本発明においては、走査型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分析によって得られる特性X線強度測定を行った場合に、相関係数が65.0%以上、70.0%以上、75.0%以上、又は80.0%以上で一致していることが好ましい。ここで、相関係数は、次のようにして計算される:
【数2】
(ここで、貴金属触媒粒子iに含まれる貴金属元素のスペクトル強度値をxとし、貴金属元素のスペクトル強度平均値をxavとし、その貴金属触媒粒子iの位置でのセリウムではない希土類元素のスペクトル強度値をyiとし、セリウムではない希土類元素のスペクトル強度平均値をyavとする)。
【0041】
このような測定は、日本エフイー・アイ社製の走査透過型電子顕微鏡Tecnai Osirasを用いて行うことができる。具体的には、この走査型電子顕微鏡で測定した5000倍の複数の画像中で、貴金属触媒粒子iの重心点分析を実施し、その重心点位置での貴金属触媒粒子iの貴金属元素のスペクトル強度値と、その重心点位置でのセリウムではない希土類元素のスペクトル強度値とを測定し、上記の計算を行う。ここで、貴金属元素及びセリウムではない希土類元素が複数種ある場合には、それらの強度の加算を行う。なお、「スペクトル強度平均値」とは、同一視野、異なる視野で視認可能な貴金属触媒粒子に含まれる貴金属元素又は第2の担体に含まれるセリウムではない希土類元素の全ての特性X線強度の平均値をいう。上記の計算を行う場合には、第2の担体及び貴金属触媒粒子をそれぞれ300個以上用いることが好ましい。
【0042】
《排ガス浄化装置》
本発明の排ガス浄化装置は、上述の排ガス浄化用触媒及び基材を含む。排ガス浄化用触媒は、下記の本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法によって得られる排ガス浄化用触媒であってもよい。
【0043】
基材としては、排気ガス浄化装置において一般的に使用されているストレートフロー型又はウォールフロー型のハニカム型基材等を挙げることができる。基材の材質も特に限定されず、例えば、セラミック、炭化ケイ素、金属等の基材を挙げることができる。このような基材を用いる場合には、上述の排ガス浄化用触媒を有する触媒層を基材上に形成することができる。
【0044】
本発明の排ガス浄化装置では、特開2015−85241号公報に記載のような基材の一部であってもよく、この場合、上記第1及び第2の担体粒子がその基材の一部であってもよい。上記基材を用いる際は、貴金属を溶解した溶液に基材を浸漬することにより貴金属を担持させてもよい。このような基材に、上述の排ガス浄化用触媒を有する触媒層を基材上に形成してもよい。
【0045】
《排ガス浄化用触媒の製造方法》
排ガス浄化用触媒を製造する本発明の方法は、シリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも1種の金属酸化物と、セリアではない希土類酸化物とを含有している担体粒子の水系分散体、貴金属の塩を含む水溶液、及び有機カルボン酸を混合して、担体粒子に貴金属を担持し、それによって未焼成の排ガス浄化用触媒を含む水系分散体を得る工程;及び未焼成の排ガス浄化用触媒を含む水系分散体を、乾燥させ、そして焼成する工程を含む。
【0046】
この方法によれば、有機カルボン酸によって担体粒子から希土類酸化物が溶出して、希土類酸化物が富化した第2の担体粒子と金属酸化物が富化した第1の担体粒子とが得られる。この場合、貴金属は、希土類酸化物が富化した第2の担体粒子に主に担持され、これにより触媒である貴金属のシンタリング及び酸化を防止することができるため、貴金属の触媒活性を高い状態に維持できる好適な排ガス浄化用触媒を得ることができる。出発物質である担体粒子が、金属酸化物の固溶体を含む場合には、固溶していない希土類酸化物が有機カルボン酸によって溶出しやすいため、このような態様は特に好ましい。
【0047】
さらに、驚くべきことに、この方法によって得られた排ガス浄化触媒の貴金属触媒粒子は、有機カルボン酸を添加しない従来の方法と比較して、小径化されることが分かった。理論に拘束されないが、これは、有機カルボン酸添加後に、有機カルボン酸希土が形成され、有機カルボン酸希土に貴金属が選択的に吸着し、焼成後に希土類と貴金属と間の相互作用によって、貴金属が固定化される為であると考えられる。貴金属触媒粒子の粒径が小さいと、単位重量当りの貴金属触媒粒子の表面積が大きくなり、触媒の反応点が増えるため、非常に有利である。
【0048】
排ガス浄化用触媒を製造する本発明の方法によれば、特に本発明の排ガス浄化用触媒を製造することができる。したがって、本発明の方法で用いる担体粒子の粒径、担体粒子のジルコニア、セリア、及びセリアではない希土類酸化物の添加量、セリアではない希土類酸化物の種類及び添加量、貴金属の種類及び添加量等については、上記の本発明の排ガス浄化用触媒の記載を参照して選択することができる。
【0049】
例えば、未焼成の排ガス浄化用触媒を含む水系分散体を得る工程においては、担体粒子に含まれる固溶していない希土類成分の量に対して、過不足なく反応する量(反応当量点)の有機カルボン酸を水系溶液に溶解させる。そして、有機カルボン酸の水溶液に、貴金属の塩を混合し、そして有機カルボン酸及び貴金属を含有する水溶液を、担体粒子が分散している分散液と混合する。
【0050】
本発明の方法において用いられる有機カルボン酸の量は、担体粒子に含有されている希土類元素の総和物質量[mol−Ln]に対し、添加する有機カルボン酸の物質量比[mol/mol−Ln]で表わすことができる。好ましい物質量比[mol/mol−Ln]は、0.5以上、1.0以上、又は1.5以上であり、3.5以下、3.0以下、又は2.5以下であってもよい。このような範囲であれば、担体粒子の金属酸化物が溶解しづらく、かつ希土類酸化物は溶解しやすくなるため、第2の担体粒子を生成しやすい。
【0051】
ここで、担体粒子としては、上記の本発明の排ガス浄化用触媒で用いられる第1の担体粒子と同じ組成を有していてもよい。
【0052】
貴金属の塩としては、貴金属の強酸塩を挙げることができ、特に貴金属の硝酸塩又は硫酸塩を挙げることができる。貴金属としては、白金、パラジウム、及び/又はロジウムを挙げることができる。
【0053】
有機カルボン酸としては、好ましくは分子量300以下の有機カルボン酸を挙げることができ、例えばC〜C20の飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、ヒドロキシ酸、芳香族カルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、オキソカルボン酸等を挙げることができる。具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸等を挙げることができる。
【0054】
有機カルボン酸の添加量は、担体粒子に含まれる希土類成分、好ましくは固溶していない希土類成分のモル量に対して過不足なく反応するモル量(反応当量点)の0.50倍以上、1.0倍以上、又は2.0倍以上であってもよく、5.0倍以下、4.5倍以下、4.0倍以下、又は3.5倍以下であってもよい。
【0055】
未焼成の排ガス浄化用触媒を得た後、これを含む水系分散体を乾燥させ、そして焼成する。乾燥温度は、例えば150℃以上、200℃以上、250℃以上であってもよく、400℃以下、350℃以下、又は300℃以下であってもよい。乾燥時間は、16時間以上、12時間以上、又は8時間以上であってもよく、24時間以下又は20時間以下であってもよい。また、焼成温度は、例えば500℃以上、550℃以上、又は600℃以上であってもよく、1000℃以下、800℃以下、又は700℃以下であってもよい。焼成時間は、30分以上、1時間以上、2時間以上、又は4時間以上であってもよく、12時間以下、10時間以下、又は8時間以下であってもよい。
【0056】
このようにして得られた排ガス浄化用触媒をさらに粉砕して、担体粒子の粒径を、本発明の排ガス浄化用触媒の第1の担体粒子の粒径の範囲にすることができる。
【実施例】
【0057】
《サンプル調製》
〈実施例1〉
担体粒子に含まれるセリウムではない希土類の総和に対して、過不足なく反応する物質量の酢酸をイオン交換水に溶解させ、酢酸水溶液を調製した。次いで、酢酸溶液に、ロジウム量が担体粒子の0.50重量%となるように、硝酸ロジウム溶液を投入し、酢酸及び酢酸ロジウムを含有する水溶液を得た。この水溶液と、担体粒子をイオン交換水に分散させた分散液とを混合した。これを撹拌し、250℃で8時間乾燥し、500℃で1時間焼成し、粉砕することによって、実施例1の排ガス浄化用触媒を得た。
【0058】
〈実施例2〜4及び比較例1〜3〉
酢酸の代わりに他の有機カルボン酸を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2〜4の排ガス浄化用触媒を得た。また、有機カルボン酸の代わりに他の酸を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1及び2の排ガス浄化用触媒を得た。さらに、酢酸を使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較例3の排ガス浄化用触媒を得た。これらの例の組成の詳細を表1に示す。
【0059】
〈実施例5〜6及び比較例4〜5〉
担体粒子及び貴金属の塩の種類を実施例2から変更して、実施例5〜6の排ガス浄化用触媒を得た。また、有機カルボン酸を使用しなかったこと以外は、実施例5及び6と同様にして、それぞれ比較例4及び5の排ガス浄化用触媒を得た。これらの例の組成の詳細を表2に示す。
【0060】
〈実施例7〜15〉
実施例4から担体粒子の組成を変更し、また有機カルボン酸の添加量を変更することによって、実施例7〜15の排ガス浄化用触媒を得た。これらの例の組成の詳細を表3に示す。
【0061】
〈実施例16〜19及び比較例6〜9〉
実施例1で用いた担体粒子の種類等を変更して、実施例16〜19及び比較例6〜9の排ガス浄化用触媒を得た。これらの例の組成の詳細を表4に示す。
【0062】
〈耐久試験後の排ガス浄化用触媒〉
上記のようにして得られた排ガス浄化用触媒を、流通式の耐久試験装置に配置した。そして、試験装置内温度を1000℃にし、窒素ガスに酸素を1%添加したリーンガスと、窒素ガスに一酸化炭素を2%加えたリッチガスとを、500mL/分の流量で、2分周期で交互に10時間流通させた。その後の排ガス浄化用触媒を、耐久試験後の排ガス浄化用触媒として評価した。
【0063】
〈排ガス浄化装置の作製〉
上記のようにして得られた排ガス浄化触媒とアルミナ粉末とを質量混合比1:1で混合し、固形分が30重量%となるように純水に分散させてスラリーを得た。このスラリーを、モノリスハニカム基材(容積0.35L)に、貴金属量が0.25g/Lとなるようにコートした。コートしたモノリスハニカム基材を250℃で10分乾燥し、次に500℃で20分焼成することによって、排ガス浄化装置を得た。
【0064】
〈耐久試験後の排ガス浄化装置〉
上記のようにして得られた排ガス浄化装置を、流通式の耐久試験装置に配置した。そして、試験装置内温度を1000℃にし、窒素ガスに酸素を1%添加したリーンガスと、窒素ガスに一酸化炭素を2%加えたリッチガスとを、500mL/分の流量で、2分周期で交互に10時間流通させた。その後の排ガス浄化装置を、耐久試験後の排ガス浄化装置として評価した。
【0065】
《評価方法》
〈第2担体の平均粒径及び存在比〉
排ガス浄化用触媒の担体粒子の平均粒径の測定を、日本エフイー・アイ社製の走査透過型電子顕微鏡Tecnai Osiras及び、その装置に付随しているエネルギー分散型X線分析によって行った。
【0066】
具体的には、まずこの装置で20,000倍の測定倍率によって映し出された画面において、等価直径が0.10μm以上である粒子の中から、エネルギー分散型X線分析によって、ジルコニアを50重量%〜95重量%で、かつセリア及びセリアではない希土類酸化物を5.0〜50重量%で含有する粒子を見つけ出し、これを第1の担体粒子と認定した。そして、それらの粒子の等価直径を粒子の投影面積から計算した。この作業を任意の20画面において行い、その全ての平均値を、第1の担体粒子の平均粒径とした。
【0067】
さらに、等価直径が0.10μm以上である粒子の中から、ジルコニアを1.0〜40重量%で、かつセリア及びセリアではない希土類酸化物を60重量%〜99重量%で含有する粒子を見つけ出し、これを第2の担体粒子と認定した。そして、それらの粒子の等価直径を粒子の投影面積から計算した。この作業を任意の20画面において行い、その全ての平均値を、第2の担体粒子の平均粒径とした。
【0068】
さらに、各排ガス浄化用触媒について、第2の担体粒子の投影面積の、第1及び第2の担体粒子の投影面積に対する投影面積比(第2の担体粒子の面積/第1及び第2の担体粒子の面積)を計算し、これを第2の担体粒子の存在比とした。
【0069】
〈触媒位置の相関係数〉
日本エフイー・アイ社製の走査透過型電子顕微鏡Tecnai Osirasを用いてエネルギー分散型X線分析を行い、希土類元素と貴金属の元素マッピング像を得た。担体粒子の希土類元素の位置と、貴金属元素の位置とを比較し、相関係数が65%以上で一致していた場合には、第2の担体上に担持されており、相関係数が65%未満であった場合には、担体上に担持されていないと定義した。
【0070】
〈触媒粒子の粒径変化〉
上記の耐久試験後の排ガス浄化用触媒を、X線回折装置によって分析し、貴金属触媒粒子の粒径を解析した。ロジウムは2θ=41.1°;パラジウムは2θ=40.1°;そして白金は2θ=39.8°の回折ピークの半値幅を用いて、シェラーの式から粒径を算出した。この結果から、実施例1〜4及び7〜19並びに比較例1〜2及び6〜9については、有機カルボン酸を添加していない比較例3を基準として、有機カルボン酸の添加によって貴金属粒径が何%変化したかを算出した。実施例5及び6については、それぞれ比較例4及び5を基準として、貴金属粒径が何%変化したかを算出した。ただし、ここでは、表1中で「−」は粒径の減少を意味し、「+」は粒径の肥大を意味している。
【0071】
〈50%NO浄化温度〉
耐久試験後の排ガス浄化装置を、常圧固定床式流通反応装置に配置し、ストイキ相当のモデルガスを流通させながら100℃〜500℃まで12℃/分の速度で消音し、その間のNO浄化率を連続的に測定した。排ガスが50%浄化された時の温度を、各サンプルについて調べた。
【0072】
〈STEM−EDX画像〉
実施例3及び比較例3について、走査透過型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分析による元素マッピングを撮影した。
【0073】
《結果》
上記のようにして評価した結果を表1〜表4に示す。また、実施例3及び比較例3のSTEM−EDX画像を図2に示す。
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【0077】
表1から理解できるように、有機カルボン酸を用いた場合(実施例1〜4)に、適切な平均粒径を有する第2の担体が容易に得られた。比較例1及び2を見ると、第2の担体粒子自体は生成していることが分かるが非常に粒径が小さく、この場合には相関係数から判断できるように、触媒粒子が第2の担体粒子に実質的に担持されていなかった。これは、第2の担体粒子が小さすぎるために、第1の担体粒子にも貴金属触媒粒子が担持されて、そこで貴金属触媒粒子がシンタリングを起こしたためと考えられる。
【0078】
また、有機カルボン酸を用いた場合(実施例1〜4)には、耐久後に貴金属触媒粒子が小径化したことが分かる。有機カルボン酸の代わりにベンゼンスルホン酸及び硝酸を用いた場合(比較例1及び2)には、酸を用いていない場合(比較例3)に比べて、貴金属触媒粒子が肥大化していた、さらに、実施例1〜4の場合には、50%NO浄化温度が非常に低い温度となった。
【0079】
表2及び表4から理解できるように、このような傾向は、出発担体粒子の組成及び貴金属の種類を変更した場合であっても、同様であった。
【0080】
表3を見ると、有機カルボン酸の添加量を増やすと、第2担体の粒径が大きくなることが分かる。ただし、貴金属触媒粒子については、有機カルボン酸の量を増やしていくと、小径化しなくなることが分かる。それに対応して、50%NO浄化温度も変化した。
【0081】
図2の比較例3の排ガス浄化触媒の元素マッピングを見ると、各元素の存在率の分布は、一様であることが分かる。それに対して、実施例3の元素マッピングを見ると、ジルコニウム(Zr)の存在率が低くなっている場所で、セリウム(Ce)及びネオジム(Nd)の存在率が非常に高くなっており、その場所が第2の担体粒子であることが分かる。また、第2の担体粒子の位置において、ロジウム(Rh)の存在率が高くなっており、貴金属触媒粒子が第2の担体粒子に集中的に担持されていることが分かる。
【符号の説明】
【0082】
1 第1の担体粒子
1a 希土類富化領域
2 第2の担体粒子
3 触媒粒子
10 排ガス浄化用触媒
図1
図2