特許第6516881号(P6516881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6516881
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】車両の位置特定のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/30 20060101AFI20190513BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20190513BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20190513BHJP
【FI】
   G01C21/30
   G09B29/10 A
   G09B29/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-562633(P2017-562633)
(86)(22)【出願日】2016年5月10日
(65)【公表番号】特表2018-523104(P2018-523104A)
(43)【公表日】2018年8月16日
(86)【国際出願番号】EP2016060428
(87)【国際公開番号】WO2016192934
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2017年12月1日
(31)【優先権主張番号】102015210015.4
(32)【優先日】2015年6月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー ピンク
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ベッカー
(72)【発明者】
【氏名】ゼーレン カメル
【審査官】 鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−264983(JP,A)
【文献】 特開2013−025401(JP,A)
【文献】 特開2010−160777(JP,A)
【文献】 特開2007−102357(JP,A)
【文献】 特開平11−249552(JP,A)
【文献】 特開平10−300493(JP,A)
【文献】 特開平07−134735(JP,A)
【文献】 米国特許第08612135(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0103298(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00−99/00
G01C 21/00−21/36
G01C 23/00−25/00
G09B 23/00−29/14
G05D 3/00− 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の位置特定のための方法において、
・GNSユニット(203)を用いてGNS車両位置を特定するステップ(101)と、
・前記車両のレーダセンサシステム(205)を用いて前記GNS車両位置の周囲をセンシングによって把握し、把握された前記周囲に対応するレーダデータ(513,601)を算出するステップ(103)と、
・前記レーダデータ(513,601)に基づいて前記周囲に存在する対象物(507,509,511)を検出するステップ(105)と、
・検出された対象物(507,509,511)から車両固定の基準点までを指示する方向ベクトル(701)を算出するステップ(107)と、
・前記レーダデータ(513,601)と算出された前記方向ベクトル(701)とを、デジタルマップと比較するステップ(109)であって、前記デジタルマップは、対象物(507,509,511)と、当該対象物(507,509,511)に対応付けられた方向ベクトル(701)とを有し、前記対象物(507,509,511)に対応付けられた前記方向ベクトル(701)は、前記レーダセンサシステム(205)を用いた当該対象物(507,509,511)の検出の起点となった位置を前記デジタルマップ内において指示する、ステップ(109)と、
・前記GNS車両位置と前記比較とに基づいて、正しい車両位置を特定するステップ(111)と、
を含み、
どの検出された対象物(507,509,511)が静止している対象物(507,509,511)であるか、及び、どの検出された対象物(507,509,511)が移動する対象物(507,509,511)であるかを、前記レーダデータ(513,601)に基づいて特定し、前記比較の際に前記移動する対象物(507,509,511)を無視する一方、前記静止している対象物(507,509,511)だけを前記比較の対象とするために、前記検出された対象物(507,509,511)のうちの前記静止している対象物(507,509,511)だけを前記デジタルマップにフィッティングさせ、前記フィッティングを、反復最近傍点(Iterative Closest Point)アルゴリズム及び/又は粒子ベースのフィッティングアルゴリズムを用いて実施する、
方法。
【請求項2】
車両の位置特定のための装置(201)において、
・GNS車両位置を特定するためのGNSユニット(203)と、
・前記GNS車両位置の周囲をセンシングによって把握し、把握された前記周囲に対応するレーダデータ(513,601)を算出するためのレーダセンサシステム(205)と、
・プロセッサ(207)と、を含み、
・前記プロセッサ(207)は、前記レーダデータ(513,601)に基づいて前記周囲に存在する対象物(507,509,511)を検出するように、かつ、検出された対象物(507,509,511)から車両固定の基準点までを指示する方向ベクトル(701)を算出するように構成されており、
・前記プロセッサ(207)はさらに、前記レーダデータ(513,601)と算出された前記方向ベクトル(701)とを、対象物(507,509,511)と当該対象物(507,509,511)に対応付けられた方向ベクトル(701)とを有するデジタルマップと比較するように構成されており、
・前記対象物(507,509,511)に対応付けられた前記方向ベクトル(701)は、前記レーダセンサシステム(205)を用いた当該対象物(507,509,511)の検出の起点となった位置を前記デジタルマップ内において指示し、
・前記プロセッサ(207)はさらに、前記GNS車両位置と前記比較とに基づいて、正しい車両位置を特定するように構成されており、
・前記プロセッサ(207)はさらに、どの検出された対象物(507,509,511)が静止している対象物(507,509,511)であるか、及び、どの検出された対象物(507,509,511)が移動する対象物(507,509,511)であるかを、前記レーダデータ(513,601)に基づいて特定し、前記比較の際に前記移動する対象物(507,509,511)を無視する一方、前記静止している対象物(507,509,511)だけを前記比較の対象とするために、前記検出された対象物(507,509,511)のうちの前記静止している対象物(507,509,511)だけを前記デジタルマップにフィッティングさせ、前記フィッティングを、反復最近傍点(Iterative Closest Point)アルゴリズム及び/又は粒子ベースのフィッティングアルゴリズムを用いて実施するように構成されている、
装置(201)。
【請求項3】
デジタルマップを作成するための方法において、
・GNSユニット(403)を用いて車両のGNS車両位置を特定するステップ(301)と、
・前記車両のレーダセンサシステム(405)を用いて前記GNS車両位置の周囲をセンシングによって把握し、把握された前記周囲に対応するレーダデータ(513,601)を算出するステップ(303)と、
・前記レーダデータ(513,601)に基づいて、前記周囲に存在する対象物(507,509,511)を検出するステップ(305)と、
・検出された対象物(507,509,511)から前記GNS車両位置までを指示するそれぞれの方向ベクトル(701)を算出するステップ(307)と、
・前記レーダデータ(513,601)と算出された前記方向ベクトル(701)とに基づいて前記デジタルマップを作成し、これによって前記デジタルマップが、検出された対象物(507,509,511)と、当該対象物(507,509,511)に対応付けられた方向ベクトル(701)とを含むようにするステップ(309)と、
を含み、
どの検出された対象物(507,509,511)が静止している対象物(507,509,511)であるか、及び、どの検出された対象物(507,509,511)が移動する対象物(507,509,511)であるかを、前記レーダデータ(513,601)に基づいて特定し、前記検出された対象物(507,509,511)のうちの前記静止している対象物(507,509,511)だけを前記デジタルマップにフィッティングさせ、前記フィッティングを、反復最近傍点(Iterative Closest Point)アルゴリズム及び/又は粒子ベースのフィッティングアルゴリズムを用いて実施する、
方法。
【請求項4】
デジタルマップを作成するための装置(401)において、
・車両のGNS車両位置を特定するためのGNSユニット(403)と、
・前記GNS車両位置の周囲をセンシングによって把握し、把握された前記周囲に対応するレーダデータ(513,601)を算出するためのレーダセンサシステム(405)と、
・プロセッサ(407)と、を含み、
・前記プロセッサ(407)は、前記レーダデータ(513,601)に基づいて前記周囲に存在する対象物(507,509,511)を検出するように、かつ、検出された対象物(507,509,511)から前記GNS車両位置までを指示するそれぞれの方向ベクトル(701)を算出するように構成されており、
・前記プロセッサ(407)はさらに、前記レーダデータ(513,601)と算出された前記方向ベクトル(701)とに基づいて前記デジタルマップを作成し、これによって前記デジタルマップが、検出された対象物(507,509,511)と、当該対象物(507,509,511)に対応付けられた方向ベクトル(701)とを含むこととなるように構成されており、
・前記プロセッサ(407)はさらに、どの検出された対象物(507,509,511)が静止している対象物(507,509,511)であるか、及び、どの検出された対象物(507,509,511)が移動する対象物(507,509,511)であるかを、前記レーダデータ(513,601)に基づいて特定し、前記検出された対象物(507,509,511)のうちの前記静止している対象物(507,509,511)だけを前記デジタルマップにフィッティングさせ、前記フィッティングを、反復最近傍点(Iterative Closest Point)アルゴリズム及び/又は粒子ベースのフィッティングアルゴリズムを用いて実施するように構成されている、
装置(401)。
【請求項5】
コンピュータ上で実行された場合に、請求項1又は3に記載の方法を実施するためのプログラムコードを含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の位置特定のための方法及び装置に関する。本発明はさらに、デジタルマップを作成するための方法及び装置に関する。本発明はさらに、コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
米国特許出願公開第2013/0103298号明細書(US 2013/0103298 A1)は、車両の位置を特定するための方法を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0103298号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明の開示
従って、本発明の基礎となる課題は、車両の位置特定のための改善された方法及び改善された装置を提供することにあると認識することができる。
【0005】
本発明の基礎となる課題はさらに、デジタルマップを作成するための方法及び装置を提供することにあると認識することができる。
【0006】
本発明の基礎となる課題はまた、上記の課題、即ち、改善された位置特定及び/又はデジタルマップの作成のためのコンピュータプログラムを提供することにもあると認識することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の各課題は、各独立請求項のそれぞれの対象によって解決される。本発明の有利な実施形態は、それぞれの従属請求項の対象である。
【0008】
1つの態様によれば、車両の位置特定のための方法において、
・GNSユニットを用いてGNS車両位置を特定するステップと、
・前記車両のレーダセンサシステムを用いて前記GNS車両位置の周囲をセンシングによって把握し、把握された前記周囲に対応するレーダデータを算出するステップと、
・前記レーダデータに基づいて前記周囲に存在する対象物を検出するステップと、
・検出された対象物から前記レーダセンサシステムまで又は別の車両固定の基準点までを指示する方向ベクトルを算出するステップと、
・前記レーダデータと算出された前記方向ベクトルとを、デジタルマップと比較するステップであって、前記デジタルマップは、対象物と、当該対象物に対応付けられた方向ベクトルとを有し、前記対象物に対応付けられた前記方向ベクトルは、前記レーダセンサシステムを用いた当該対象物の検出の起点となった位置を前記デジタルマップ内において指示する、ステップと、
・前記GNS車両位置と前記比較とに基づいて、正しい車両位置を特定するステップと、
を含む方法が提供される。
【0009】
別の1つの態様によれば、車両の位置特定のための装置において、
・GNS車両位置を特定するためのGNSユニットと、
・前記GNS車両位置の周囲をセンシングによって把握し、把握された前記周囲に対応するレーダデータを算出するためのレーダセンサシステムと、
・プロセッサと、を含み、前記プロセッサは、前記レーダデータに基づいて前記周囲に存在する対象物を検出するように、
・かつ検出された対象物から前記レーダセンサシステムまで又は別の車両固定の基準点までを指示する方向ベクトルを算出するように構成されており、
・前記プロセッサはさらに、前記レーダデータと算出された前記方向ベクトルとを、対象物と当該対象物に対応付けられた方向ベクトルとを有するデジタルマップと比較するように構成されており、前記対象物に対応付けられた前記方向ベクトルは、前記レーダセンサシステムを用いた当該対象物の検出の起点となった位置を前記デジタルマップ内において指示し、
・前記プロセッサはさらに、前記GNS車両位置と前記比較とに基づいて、正しい車両位置を特定するように構成されている、
装置が提供される。
【0010】
さらにもう1つの態様によれば、デジタルマップを作成するための方法において、
・GNSユニットを用いて車両のGNS車両位置を特定するステップと、
・前記車両のレーダセンサシステムを用いて前記GNS車両位置の周囲をセンシングによって把握し、把握された前記周囲に対応するレーダデータを算出するステップと、
・前記レーダデータに基づいて、前記周囲に存在する対象物を検出するステップと、
・検出された対象物から前記GNS車両位置までを指示するそれぞれの方向ベクトルを算出するステップと、
・前記レーダデータと算出された前記方向ベクトルとに基づいてデジタルマップを作成し、これによって前記デジタルマップが、検出された対象物と、当該対象物に対応付けられた方向ベクトルとを含むようにするステップと、
を含む方法が提供される。
【0011】
さらにもう1つの態様によれば、デジタルマップを作成するための装置において、
・車両のGNS車両位置を特定するためのGNSユニットと、
・前記GNS車両位置の周囲をセンシングによって把握し、把握された前記周囲に対応するレーダデータを算出するためのレーダセンサシステムと、
・プロセッサと、を含み、前記プロセッサは、前記レーダデータに基づいて前記周囲に存在する対象物を検出するように、
・かつ検出された対象物から前記GNS車両位置までを指示するそれぞれの方向ベクトルを算出するように構成されており、
・前記プロセッサはさらに、前記レーダデータと算出された前記方向ベクトルとに基づいてデジタルマップを作成し、これによって前記デジタルマップが、検出された対象物と、当該対象物に対応付けられた方向ベクトルとを含むこととなるように構成されている、
装置が提供される。
【0012】
さらに別の1つの態様によれば、コンピュータ上で実行された場合に、車両の位置特定のための方法及び/又はデジタルマップを作成するための方法を実施するためのプログラムコードを含む、コンピュータプログラムが提供される。
【0013】
即ち、本発明は特に、車両の位置特定のために、検出された対象物からレーダセンサシステムまで又は別の車両固定の基準点まで(レーダセンサシステムは車両固定の基準点であるが、一般的に別の車両固定の基準点を設けることも可能である)を指示する方向ベクトルを追加的に使用して、この方向ベクトルを、デジタルマップの方向ベクトルと比較するという着想を含み、なお、デジタルマップの方向ベクトルは、デジタルマップの対象物に対応付けられており、これらの方向ベクトルは、マップ作成の枠内におけるレーダセンサを用いた当該対象物の検出の起点となったそれぞれの位置をデジタルマップ内において指示する。算出された方向ベクトルがデジタルマップの方向ベクトルと一致している場合には、基本的に、レーダセンサシステムを用いて検出された対応する対象物が、デジタルマップ内における同一の対象物であるということを前提とすることができる。つまり、これによって、デジタルマップ内における車両の精確な位置特定が可能となる。このことは、特に有利である。なぜなら、GNSユニットのみによる位置特定は、不正確性を有する可能性が十分にあるからである。本発明によれば、場合によって生じ得るこのような不正確性を、方向ベクトルに基づいて補正又は補償することが可能である。明細書の冒頭で挙げた米国特許出願公開第2013/0103298号明細書(US 2013/0103298 A1)は、このような方向ベクトルを開示していない。
【0014】
つまり、方向ベクトルは、特に角度情報を提供する。このような角度情報は、例えば方向ベクトルと車両長手軸線との間の角度に相当する。
【0015】
つまり、本発明の着想は、特にデジタルマップの作成時にさらに追加的にこの角度情報も一緒にデジタルマップに採用するということにある。このことはつまり、検出された対象物に加えてさらに、この検出された対象物がどの場所から又はどの位置からレーダセンサシステムを用いて検出されたのかを表す方向が提示されるということを意味する。というのは、GNS車両位置は、少なくとも測定精度の枠内においてはレーダセンサシステムを用いたレーダ測定の場所に一致するからである。その後、このようなデジタルマップに基づいた位置特定時に、検出された対象物に関する1つ又は複数のこのような方向ベクトルも特定される。算出された方向ベクトルがデジタルマップの方向ベクトルに一致していればいるほど、車両の位置特定の枠内で検出された対象物が、デジタルマップ内における対象物である確率も増加する。車両の位置特定の枠内で算出されたレーダデータに基づくレーダ画像と、同じくレーダデータに基づいているデジタルマップとの間の調整が、これによって簡単に可能となる。
【0016】
“GNS”という略称は、“Global Navigation System(全地球航法システム)”を表しており、例えば複数の衛星の伝播時間の測定に基づいた全地球規模の位置特定システムに対するプレースホルダとして使用すべきである。このことはつまり、GNSユニットとして、例えば、GPSユニット、Galileoユニット、又は、GLONASSユニットを設けることができるということを意味する。つまり、GNSは、Global Navigation Systemを表していて、地上局を介した無線測位も含み、GNSS(Global Navigation Satellite System)の形態では、GPSと同様にGalileoや、好ましくは別の解決方法も含む。
【0017】
1つの実施形態では、どの検出された対象物が静止している対象物であるか、及び、どの検出された対象物が移動する対象物であるかが、前記レーダデータ及び/又は別のセンサ情報に基づいて特定され、前記比較の際に前記移動する対象物が無視される。このステップは、位置特定のための方法にも、デジタルマップを作成するための方法にも同様に当てはまる。この場合における着想は、静止している対象物と移動する対象物とを区別することである。移動する対象物は無視される。好ましくは、移動する対象物は、対応するレーダデータ及び/又は別のセンサデータから除去される。このことはつまり、例えばデジタルマップが、静止している対象物だけを依然として含むということを意味する。このことはつまり、特に車両の位置特定の枠内で算出されたレーダ画像が、静止している対象物だけを依然として含むということを意味する。というのは、もしデジタルマップが移動する対象物も含んでいれば、このデジタルマップは、移動する対象物がその移動性に基づいて当初の位置から離れ得る場合には、もはや必ず精確ではなくなってしまうからである。これにより、デジタルマップと、車両の位置測定の枠内で算出されたレーダ画像との間の調整は、不必要に困難となってしまうであろう。
【0018】
このような別のセンサデータは、例えば周囲センサシステムによって供給され、この周囲センサシステムは、例えば超音波センサ、ライダセンサ、ビデオセンサのような周囲センサのうちの1つ又は複数を有することができる。
【0019】
このことはつまり、1つの実施形態によれば、レーダデータに加えてさらに別のセンサデータが位置特定のために使用されるということを意味する。
【0020】
検出された対象物が静止している対象物であるか又は移動する対象物であるかを区別するために、1つの実施形態によれば、レーダ測定によって検出された対象物に速度が対応付けられる。即ち、好ましくは検出された対象物のそれぞれの速度が検出又は測定される。これによってつまり、有利には、移動する対象物と静止している対象物とを区別することができる。
【0021】
1つの実施形態によれば、速度閾値が設けられており、この速度閾値を上回っている場合には、検出された対象物が移動する対象物として分類され、この速度閾値を下回っている場合には、検出された対象物が静止している対象物として分類される。このような閾値を設けることにより、好ましくはレーダ測定時に場合によって生じ得る測定の不正確性を補償又は考慮することができる。
【0022】
1つの実施形態によれば、前記比較は、前記レーダデータを前記デジタルマップにフィッティングさせることを含む。即ち、有利には、適合又は回帰又は補償計算が実施される。このことはつまり、特に位置特定の枠内で算出されたレーダデータが、デジタルマップのレーダデータに一致させられるということを意味する。この場合、できるだけ最大の一致が実施される。
【0023】
1つの実施形態によれば、前記フィッティングは、反復最近傍点(Iterative Closest Point)アルゴリズム及び/又は粒子ベースのフィッティングアルゴリズムを用いて実施される。上に挙げたアルゴリズムを設けることによって有利には、効率的な補償計算又は効率的なフィッティングをもたらすことができる。
【0024】
1つの実施形態によれば、レーダセンサシステムは、100m乃至250mの検知射程範囲又は検出射程範囲を有し、及び/又は、30°乃至70°の検知視界又は検出視界を有する。
【0025】
本方法の機能は、対応する本装置の機能からも同様にして得られ、その逆もまた同様である。このことはつまり、本方法の特徴が本装置の特徴から得られ、その逆もまた同様であるということを意味する。
【0026】
以下では本発明を、好ましい実施例に基づいてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】車両の位置特定のための方法のフローチャートである。
図2】車両の位置特定のための装置を示す図である。
図3】デジタルマップを作成するための方法のフローチャートである。
図4】デジタルマップを作成するための装置を示す図である。
図5】レーダ画像が重畳されている道路場面を示す図である。
図6】レーダ画像が重畳されている道路場面を示す図である。
図7】レーダ画像が重畳されている道路場面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、車両の位置特定のための方法のフローチャートを示す。
【0029】
ステップ101では、GNSユニットを用いてGNS車両位置が特定される。ステップ103では、車両のレーダセンサシステムを用いて前記GNS車両位置の周囲がセンシングによって把握され、把握された前記周囲に対応するレーダデータが算出される。このことはつまり、特にGNS車両位置の周囲のレーダ画像が算出されるということを意味する。本発明の意味におけるレーダセンサシステムは、特に1つ又は複数のレーダセンサを含む。
【0030】
本発明の意味におけるGNSユニットは、特に1つ又は複数のGNSセンサを含む。
【0031】
ステップ105では、前記レーダデータに基づいて前記GNS車両位置の前記周囲に存在する対象物が検出される。このことはつまり、特にレーダデータに基づいてGNS車両位置の周囲に存在する対象物を検出するために、レーダデータが相応に処理されるということを意味する。
【0032】
ステップ107では、検出された前記対象物から前記レーダセンサシステムまで又は別の車両固定の基準点までを指示する方向ベクトルが算出される。特に複数の対象物が検出された場合にはそれぞれの方向ベクトルが算出される。方向ベクトルは、特に位置特定時において、GNSからは独立している。
【0033】
ステップ109では、前記レーダデータと(1つ又は複数の)算出された前記方向ベクトルとが、デジタルマップと比較される。前記デジタルマップは、対象物と、当該対象物に対応付けられた方向ベクトルとを有し、前記対象物に対応付けられた前記方向ベクトルは、前記レーダセンサシステムを用いた当該対象物の検出の起点となった位置を前記デジタルマップ内において指示する。このマップは、例えばデジタルマップを作成するための本方法によって作成されたものである。
【0034】
その後、ステップ111では、前記GNS車両位置と前記比較とに基づいて、正しい車両位置が特定される。
【0035】
ステップ109による比較の際には、例えば特定されたレーダデータが、算出された方向ベクトルと共にデジタルマップにフィッティングされる。特にステップ109では、比較の枠内において、算出された方向ベクトルがデジタルマップの方向ベクトルと比較される。ここでは特に、これらの方向ベクトル同士の一致に関する尺度が求められる。このような尺度は、車両の位置特定の枠内において検出された対象物が、どの程度までデジタルマップの対象物であるかを表す確率であり、又は、例えば確率を計算するための基礎として使用することができる。
【0036】
図2は、車両の位置特定のための装置201を示す。装置201は、
・GNS車両位置を特定するためのGNSユニット203と、
・前記GNS車両位置の周囲をセンシングによって把握し、把握された前記周囲に対応するレーダデータを算出するためのレーダセンサシステム205と、
・プロセッサ207と、を含み、前記プロセッサ207は、前記レーダデータに基づいて前記周囲に存在する対象物を検出するように、
・かつ検出された前記対象物から車両固定の基準点までを指示する方向ベクトルを算出するように構成されており、
・前記プロセッサ207はさらに、前記レーダデータと算出された前記方向ベクトルとを、前記対象物と当該対象物に対応付けられた方向ベクトルとを有するデジタルマップと比較するように構成されており、
前記対象物に対応付けられた前記方向ベクトルは、前記レーダセンサシステム205を用いた当該対象物の検出の起点となった位置を前記デジタルマップ内において指示し、
・前記プロセッサ207はさらに、前記GNS車両位置と前記比較とに基づいて、正しい車両位置を特定するように構成されている。
【0037】
1つの実施形態によれば、装置201は、図1の方法を実行又は実施するように構成されている。
【0038】
図3は、デジタルマップを作成するための方法のフローチャートを示す。
【0039】
ステップ301では、GNSユニットを用いて車両のGNS車両位置が特定される。ステップ303では、前記車両のレーダセンサシステムを用いて前記GNS車両位置の周囲がセンシングによって把握され、把握された前記周囲に対応するレーダデータが算出される。ステップ305では、前記GNS車両位置の周囲に存在する対象物が検出される。前記検出は、前記レーダデータに基づいて実施される。ステップ307では、検出された前記対象物から前記GNS車両位置までを指示するそれぞれの方向ベクトルが算出される。その後、ステップ309によれば、前記レーダデータと、算出された前記方向ベクトルとに基づいてデジタルマップが作成され、これによって前記デジタルマップは、検出された対象物と、当該対象物に対応付けられた方向ベクトルとを含むこととなる。
【0040】
即ち、これによって有利には、検出された対象物に関する情報を含んでいるのと同様に、この(又はこれらの)検出された対象物が、デジタルマップ内におけるどの位置又はどの場所からデータセンサシステムを用いて検出されたのかに関する情報も含んでいるデジタルマップが提供される。このことはつまり、特に方向ベクトルが、検出された対象物から対応する測定位置までを指示するということを意味する。
【0041】
図4は、デジタルマップを作成するための装置401を示す。
【0042】
装置401は、
・車両のGNS車両位置を特定するためのGNSユニット403と、
・前記GNS車両位置の周囲をセンシングによって把握し、把握された前記周囲に対応するレーダデータを算出するためのレーダセンサシステム405と、
・プロセッサ407と、を含み、前記プロセッサ407は、前記レーダデータに基づいて前記周囲に存在する対象物を検出するように、
・かつ検出された前記対象物から前記GNS車両位置までを指示するそれぞれの方向ベクトルを算出するように構成されており、
・前記プロセッサ407はさらに、前記レーダデータと算出された前記方向ベクトルとに基づいてデジタルマップを作成し、これによって前記デジタルマップが、検出された対象物と、当該対象物に対応付けられた方向ベクトルとを含むこととなるように構成されている。
【0043】
1つの実施形態によれば、装置401は、デジタルマップを作成するための本方法を実行又は実施するように構成されている。
【0044】
図5乃至図7は、車両のレーダセンサシステムを用いて把握されたレーダ画像が重畳されているそれぞれ1つの道路場面を示す。
【0045】
参照符号501は、レーダ画像が重畳された道路場面を例示的に示し、この道路場面は、複数の道路503,505と、道路付きの2つの橋507,509とを含む。参照符号511は、道路503,505又は橋507,509の上を走行している車両を示す。
【0046】
参照符号513は、車両が自身のレーダセンサシステムを用いて対象物を検出した場所である、記録されたレーダロケーションを示す。即ち、レーダロケーション(英語:Radar location)とは、レーダセンサシステムが対象物を検出した場所を意味する。この場合には、レーダ測定に基づいて複数のレーダロケーションが1つの物理的な対象物に相当している場合がある。従って、例えば橋は、その長さに起因して複数のこのようなレーダロケーションを有する。これらの対象物513は、例えば橋507,509に、即ち、静止している対象物に相当している場合がある。記録されたレーダロケーション513は、例えば車両511に、即ち、移動する対象物に相当している場合もある。
【0047】
図6は、図5の記録されたレーダロケーション513と、デジタルマップに由来するレーダロケーションとを有する道路場面501を示す。後者のレーダロケーションには、ここでは参照符号601が付されている。
【0048】
図7は、図6に加えてさらに、参照符号701が付された矢印を示す。これらの矢印701は、記録されたレーダロケーションから対応する測定点まで、即ち、レーダ測定の場所までを指示する方向ベクトルである。
【0049】
本発明は、角度情報(方向ベクトル)を考慮することにより、米国特許出願公開第2013/0103298号明細書(US 2013/0103298 A1)に比べて格段に改善されている。本発明は、例えば通常の市販のレーダセンサ及び通常のGNSセンサを使用可能であることによってコストの削減が可能であるという利点を維持したまま、アプローチの精度及び信頼性を改善する。
【0050】
本提案のアプローチは、有利には標準的なGNSベースのシステムに比べて位置特定の推定の精度を改善する。本発明によるアプローチによって達成可能な典型的な精度は、1車線未満の精度、即ち、副車線の精度での精確な位置特定である。このことはつまり、本システムによって少なくとも車両の目下の車線を精確に特定することができるということを意味する。
【0051】
GNSベースの位置特定においてそうであるように、密集した市街地の環境における相互反射によって精度及び信頼性が悪化してしまうことはない。本発明による方向ベクトルによれば、視覚ベースの位置特定システムの場合にそうであるように、照明状況の変化によって精度及び信頼性が制限されてしまうこともない。
【0052】
本提案のシステムは、ますます多くの新車において利用可能となっている1つ(又は複数の)車載レーダセンサしか必要としない(GNSシステムに加えて)。本提案のシステムの利点は、ソフトウェアによるだけで達成することができる。このことはつまり、有利には追加的なハードウェアが不要であり、従って、追加的なハードウェアコストも発生しないということを意味する。
【0053】
以下の特徴又は実施形態を、例えば個々に又は組み合わせて提供することができる。
【0054】
マップ作成(デジタルマップの作成):
1.走行
1つの実施形態によれば、周囲のデジタルマップが作成される。車載レーダセンサ及びGNSが搭載された車両が、走行中に道路をマッピングする。
【0055】
2.レーダ目標の走査(対象物の検出)
(好ましくは1つ又は複数のレーダセンサを含む)レーダセンサシステムが、センサに対するレーダエコーの位置と、レーダセンサシステムの視界内におけるレーダ測定の半径方向の瞬間速度とを記録する(図5参照)。これらの位置は、車両の目下のGNS位置と一緒に記録される。つまり、レーダセンサシステムは、車両の周囲に対応するレーダデータ、即ち、レーダ画像を提供する。レーダエコーの個々の位置は、好ましくはレーダロケーションと呼ばれる。
【0056】
3.動的な障害物又は対象物と、静止している障害物又は対象物との区別
このステップでは、例えば静止している地上位置と、動的な位置とが区別される。静止している位置は、標識、駐車車両、柵の杭柱、防壁、及び、側道の沿道に一般的に設けられているようなその他の移動不可能な金属の表面において存在する。動的な位置は、例えば動いている他車両とすることができる。好ましくはオンボードオドメトリ、ステアリングホイール角度、慣性センサなどから入手可能な車両の自己移動が、観察対象である他車両の相対速度と組み合わされ、これによって有利には、道路マップの固定枠に対する当該障害物の移動を推定することが可能となる。所定の閾値(例えば1時間当たり3マイル)を下回る絶対速度を有する位置は、静止しているとして分類される。その他全ての位置は、動的であるとして分類される。
【0057】
4.駐車車両
主として静止しているインフラストラクチャは基本的に重要であるので、1つの実施形態によれば、レーダデータ又はレーダ画像において、対象物に対する位置が自動車の形でマーキングされるか、又は、動く可能性のある他の対象物がそのようなものとしてマーキングされる(動く可能性があるか又は動いている)。
【0058】
5.マッピング
全ての静止している位置又は対象物は、レーダ位置のマップとも呼ぶことができる地理的に符号化されたデータベースに入力される。特に、動かずに静止しているインフラストラクチャの位置が、マップに一緒に記入される。動的であるとして又は動く可能性があるとして分類された位置は、マップに一緒に記入されるべきではない。
【0059】
重要な役割を果たす本発明の新規性は、対象物に対する位置が検出された角度方向を、マップに一緒に取り入れることである。この方向は、対象物が測定された角度から導出される(図7参照)。
【0060】
車両の位置把握又は位置特定
1.GNS位置特定
GNSシステム又はGNSユニットが、GNSを介して自身の位置の大まかな推定を決定する。
【0061】
2.レーダ位置の走査
レーダセンサシステムが、相対位置と、走行中の視界内のレーダ測定の半径方向の瞬間速度とを記録する。この測定は、位置が検出される方向を潜在的に含む。
【0062】
3.オンラインでの位置特定のための処理
静止していない(動いている)位置は全て無視される。その後、静止しているレーダ測定が、予め記録されたマップに適合される。この場合には適合アルゴリズム、例えば反復最近傍点(Iterative Closest Point)アルゴリズム又は粒子ベースの手法が使用される。
【0063】
角度情報(方向ベクトル)、即ち、測定時にレーダ位置が把握される方向が、マップに保存されている角度情報と比較される。方向がより近接して隣接すればするほど、同一の対象物である可能性が増加する。
【0064】
以上をまとめると、特にGNSユニットを使用しておおよその位置を把握することによって車両の位置を特定するための方法であって、レーダセンサのオンラインでのセンサ測定を、データベース又はデジタルマップからの予め保存されたセンサ測定と比較することによって前記位置を精密化し、測定が実施される方向を位置特定のために明示的に使用する、方法が提供される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7