(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図の構成を説明する際には、XY´Z´座標系を用いる。このXY´Z´座標系における各軸は、後述する水晶の結晶軸と以下の関係を有している。すなわち、X軸が電気軸であり、Z´軸が光学軸であるZ軸に対してX軸周りに35度15分だけ傾いた軸であり、Y´軸がX軸およびZ´軸に直交する軸である。また、X方向、Y´方向およびZ´方向は、図中矢印方向を+方向とし、矢印とは反対の方向を−方向として説明する。
【0020】
(第1実施形態、圧電振動片および圧電振動子)
最初に、第1実施形態の圧電振動片および圧電振動子について説明する。
図3は、第1実施形態の圧電振動子を示す、分解斜視図である。
【0021】
図3に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板3とリッド基板5とで2層に積層された箱状に形成されており、内部のキャビティ7内に圧電振動片10がマウントされている。
【0022】
圧電振動片10は、圧電板20と、圧電板20上に形成された電極膜50と、を備えている。電極膜50は、第2主面23に形成された一対のマウント電極55を有している。
圧電振動片10は、導電性接着剤等の実装部材を利用して、ベース基板3上の上面3aにマウントされる。より具体的には、ベース基板3の上面3aに形成された一対のインナー電極8に対して、圧電振動片10に形成された一対のマウント電極55が、実装部材9を介してマウントされる。
これにより、圧電振動片10は、ベース基板3の上面3aに機械的に保持されると共に、インナー電極8とマウント電極55とがそれぞれ導通された状態となっている。
【0023】
図1は、第1実施形態に係る圧電振動片の平面図であり、
図2は側面図である。
図1および
図2に示すように、本実施形態の圧電振動片10は、ATカットにより形成され、第1主面21、第2主面23、および側面25を備えた圧電板20を有する圧電振動片であって、第1主面21および第2主面23のうち少なくとも一方に形成されたメサ部40を有し、メサ部40の側面には、メサ部40の頂面に連なる曲面が形成されている。なお本願では、平面と曲面との接続状態を表現する際に、曲面とその接線との接点を曲面と平面との接続部に近付けたとき、接線の傾きが平面の傾きに一致する状態を「連続する」と表現し、接線の傾きが平面の傾きに近似する状態を「連なる」と表現する。すなわち「連なる」は「連続する」を含んでいる。
【0024】
圧電振動片10は、ATカットにより形成され、第1主面21、第2主面23、および側面25を備えた圧電板20を有する。
圧電板20は、ランバード加工された人工水晶からATカットにより、所定の厚さの矩形板状に形成される。ATカットは、人工水晶の結晶軸である電気軸(X軸)、機械軸(Y軸)及び光学軸(Z軸)の3つの結晶軸のうち、Z軸に対してX軸周りに35度15分だけ傾いた方向(Z´軸方向)に切り出す加工手法である。ATカットによって切り出された圧電板20を有する圧電振動片10は、周波数温度特性が安定しており、構造や形状が単純で加工が容易であり、CI値が低いという利点がある。本実施形態の圧電板20は、Z´方向の長さがX方向の長さより長くなるように形成されている。
【0025】
また、圧電板20は、XZ´平面に平行で+Y´方向側に形成された第1主面21と、−Y´方向側に形成された第2主面23と、外周4辺に形成された側面25を有する。
側面25は、圧電板20の外周4辺のうち、+Z´方向側の辺に形成された第1側面26と、−Z´方向側の辺に形成された第2側面27と、+X方向側の辺に形成された第3側面28と、−X方向側の辺に形成された第4側面29と、を有する。
【0026】
また、圧電振動片10は、第1主面21に形成された第1励振電極51と、第2主面23に形成された第2励振電極53と、を有する。
第1励振電極51は、Y´方向視矩形状で、第1主面21の中央部の位置に形成されている。第2励振電極53は、Y´方向視矩形状で、第2主面23の中央部の位置に形成されている。第2励振電極53は、Y´方向視において第1励振電極51と重なるように形成されている。
【0027】
さらに、圧電振動片10は、第2主面23に形成され、第1励振電極51および第2励振電極53に接続された一対のマウント電極55を有する。
一対のマウント電極55は、第1マウント電極55aおよび第2マウント電極55bを有する。第1マウント電極55aは、Y´方向視矩形状に形成され、第2主面23のうち+X側かつ−Z´側の角部であって、第2励振電極53に重ならない位置に設けられている。第1マウント電極55aは、圧電板20の+X側の端部および−Z´側の端部のうち少なくとも一方に形成された第1接続部61を介して、第1主面21に形成された第1マウント裏電極65に接続されている。第1マウント裏電極65は、Y´方向視において第1マウント電極55aと重なるように形成され、第1引き回し配線57を介して、第1励振電極51に接続されている。
【0028】
第2マウント電極55bは、Y´方向視矩形状に形成され、第2主面23のうち−X側かつ−Z´側の角部であって、第2励振電極53に重ならない位置に設けられている。第2マウント電極55bは、第2引き回し配線59を介して、第2励振電極53に接続されている。また、第2マウント電極55bは、圧電板20の−X側の端部および−Z´側の端部のうち少なくとも一方に形成された第2接続部63を介して、第1主面21に形成された第2マウント裏電極67に接続されている。第2マウント裏電極67は、Y´方向視において第2マウント電極55bと重なるように形成されている。
【0029】
なお、上述した励振電極、マウント電極、引き回し配線、マウント裏電極および接続部は、金等の金属の単層膜や、クロム等の金属を下地層とし、金等の金属を上地層とした積層膜などで形成されている。
【0030】
また、圧電振動片10は、第1主面21および第2主面23のうち少なくとも一方に形成されたメサ部40を有する。本実施形態では、第1主面21に第1メサ部41が形成され、第2主面23に第2メサ部46が形成されている。
第1メサ部41は、Y´方向視矩形状に形成されている。第1メサ部41は、第1主面21の中央部分であって、かつ第1マウント裏電極65および第2マウント裏電極67に重複しない位置に形成されている。第1メサ部41の頂面41aは、第1主面21と平行な平面状に形成されている。また第1メサ部41の頂面41a上には、第1励振電極51が形成されている。
【0031】
第2メサ部46は、Y´方向視矩形状に形成されている。第2メサ部46は、第2主面23の中央部分であって、かつ第1マウント電極55aおよび第2マウント電極55bに重複しない位置に形成されている。第2メサ部46の頂面46aは、第2主面23と平行な平面状に形成されている。また第2メサ部46の頂面46a上には、第2励振電極53が形成されている。
【0032】
(メサ部の側面)
そして、メサ部40の側面には、メサ部40の頂面に連なる曲面が形成されている。本実施形態では、第1メサ部41の全ての側面41b〜41eに、頂面41aに連なる曲面が形成され、第2メサ部46の全ての側面46b〜46eに、頂面46aに連なる曲面が形成されている。
第1メサ部41は、+Z´方向側に形成された第1側面41bと、−Z´方向側に形成された第2側面41cと、+X方向側に形成された第3側面41dと、−X方向側に形成された第4側面41eと、を有する。
【0033】
第1メサ部41の第1側面41bには、主面に対する仰角が約87度となる水晶結晶のR面をベースにした曲面が形成されている。具体的には、R面によって平面状に形成された第1側面41bと、第1メサ部41の頂面41aとの接続部が、後述するウェットエッチングにより丸みを帯びるように加工されることで、第1側面41bには曲面が形成される。すなわち第1側面41bは、第1主面21との接続部から(+Y´,−Z´)方向に傾斜し、第1メサ部41の頂面41aの+Z´方向側の端部に接続している。第1側面41bは、(+Y´,+Z´)方向に凸となる湾曲面で形成されている。なお第1側面41bは、X方向に均一に形成されている。第1側面41bは頂面41aに連なる曲面で形成されているため、第1側面41bと頂面41aとの接続部42bにおける稜線は鈍くなっている。本実施形態では、第1側面41bと頂面41aは連続しているため、稜線がなくなっている。
【0034】
第1メサ部41の第2側面41cには、主に主面に対する仰角が約30度となる水晶結晶のm面をベースにした曲面が形成されている。具体的には、m面(およびr面)によって平面状に形成された第2側面41cと、第1メサ部41の頂面41aとの接続部が、後述するウェットエッチングにより丸みを帯びるように加工されることで、第2側面41cには曲面が形成される。すなわち第2側面41cは、第1主面21との接続部から(+Y´,+Z´)方向に傾斜し、第1メサ部41の頂面41aの−Z´方向側の端部に接続している。第2側面41cは、(+Y´,−Z´)方向に凸となる湾曲面で形成されている。なお第2側面41cは、X方向に均一に形成されている。第2側面41cは頂面41aに連なる曲面で形成されているため、第2側面41cと頂面41aとの接続部42cにおける稜線は鈍くなっている。
【0035】
第1メサ部41の第3側面41dには、主面に対する仰角が30度以上87度未満となる水晶結晶のm面およびR面以外の自然結晶面をベースにした曲面が形成されている。具体的には、m面およびR面以外の自然結晶面によって平面状に形成された第3側面41dと、第1メサ部41の頂面41aとの接続部が、後述するウェットエッチングにより丸みを帯びるように加工されることで、第3側面41dには曲面が形成される。すなわち第3側面41dは、第1主面21との接続部から(−X,+Y´)方向に傾斜し、第1メサ部41の頂面41aの+X方向側の端部に接続している。第3側面41dは、(+X,+Y´)方向に凸となる湾曲面で形成されている。なお第3側面41dは、Z´方向に均一に形成されている。第3側面41dは頂面41aに連なる曲面で形成されているため、第3側面41dと頂面41aとの接続部42dにおける稜線は鈍くなっている。
【0036】
第1メサ部41の第4側面41eには、主面に対する仰角が30度以上87度未満となる水晶結晶のm面およびR面以外の自然結晶面をベースにした曲面が形成されている。具体的には、m面およびR面以外の自然結晶面によって平面状に形成された第4側面41eと、第1メサ部41の頂面41aとの接続部が、後述するウェットエッチングにより丸みを帯びるように加工されることで、第4側面41eには曲面が形成される。すなわち第4側面41eは、第1主面21との接続部から(+X,+Y´)方向に傾斜し、第1メサ部41の頂面41aの−X方向側の端部に接続している。第4側面41eは、(−X,+Y´)方向に凸となる湾曲面で形成されている。なお第4側面41eは、Z´方向に均一に形成されている。第4側面41eは頂面41aに連なる曲面で形成されているため、第4側面41eと頂面41aとの接続部42eにおける稜線は鈍くなっている。
【0037】
ところで、従来の圧電振動片は、メサ部の全ての側面が水晶結晶の自然結晶面により平面状に形成されている。そのため、メサ部の頂面と側面との全ての接続部には稜線が形成されている。特にメサ部の頂面とR面で形成される側面との接続部の稜線は鋭くなっているので、その接続部にて振動の反射が大きくなり、スプリアスが発振される。
一方で、
図1および
図2に示す本実施形態のように、第1メサ部41の全ての側面41b〜41eに頂面41aと連なる曲面を形成することで、第1メサ部41の頂面41aと側面41b〜41eとの接続部42b〜42eにおける稜線は全て鈍くなる。特に従来構造で問題となるR面で形成される第1側面41bとの接続部42bの稜線が鈍くなることで、その接続部42bにおける振動の反射が小さくなり、スプリアス発振が抑制される。また、その他の接続部42c〜42eの稜線も鈍くなるため、その接続部42c〜42eにおいて発生するスプリアス発振も抑制される。
【0038】
また、第1メサ部41の全ての側面41b〜41eに、頂面41aと連なる曲面を形成することで、第1メサ部41の断面形状は、+Y´方向に向かって先細る形状となる。そのため、メサ部の側面が主面に対して直角に近い角度で形成された従来の圧電振動片に比べて、メサ部自体の変形量が減少し、スプリアス発振が抑制される。よって、第1メサ部41の段差を高くすることが可能となり、エネルギー閉じ込め効率が向上する。したがって、CI値を低下させることができる。
【0039】
第2メサ部46は、−Z´方向側に形成された第1側面46bと、+Z´方向側に形成された第2側面46cと、−X方向側に形成された第3側面46dと、+X方向側に形成された第4側面46eと、を有する。
【0040】
第2メサ部46の第1側面46bは、第2主面23との接続部から(−Y´,+Z´)方向に傾斜し、第2メサ部46の頂面46aの−Z´方向側の端部に接続している。第1側面46bは、第1メサ部41の第1側面41bと同様に形成されている。
【0041】
第2メサ部46の第2側面46cは、第2主面23との接続部から(−Y´,−Z´)方向に傾斜し、第2メサ部46の頂面46aの+Z´方向側の端部に接続している。第2側面46cは、第1メサ部41の第2側面41cと同様に形成されている。
【0042】
第2メサ部46の第3側面46dは、第2主面23との接続部から(+X,−Y´)方向に傾斜し、第2メサ部46の頂面46aの−X方向側の端部に接続している。第3側面46dは、第1メサ部41の第3側面41dと同様に形成されている。
【0043】
第2メサ部46の第4側面46eは、第2主面23との接続部から(−X,−Y´)方向に傾斜し、第2メサ部46の頂面46aの+X方向側の端部に接続している。第4側面46eは、第1メサ部41の第4側面41eと同様に形成されている。
【0044】
このように第2メサ部46の全ての側面46b〜46eに、頂面46aと連なる曲面を形成することで、第1メサ部41と同様の理由により、スプリアス発振が抑制され、またCI値を低下させることができる。
【0045】
さらに本実施形態では、第1引き回し配線57および第2引き回し配線59が、メサ部40の頂面に連なる曲面が形成された側面を通っている。これにより、従来の圧電振動片で、特にR面で形成された側面と頂面との接続部において発生しやすかった、鋭い稜線上を通ることによる引き回し配線の段切れを防止できる。
【0046】
図4は、第1実施形態に係る圧電振動子の説明図であり、
図3のIV−IV線における断面図である。
本実施形態では、マウント電極55は、第2メサ部46の側面46b〜46eのうち、第2主面23への投影幅が最小となる第1側面46bに隣接する領域に形成されている。具体的には、マウント電極55は第1側面46bを挟んで、第2メサ部の頂面46aの反対側の領域に配置されている。第1側面46bは、第2主面23に対する仰角が他の側面より大きいため、第2主面23への投影幅が他の側面より小さく、第2主面23における第1側面46bに隣接する領域の面積は広くなる。これにより、マウント電極55から第2メサ部46までの距離を広く確保できる。したがって、
図4に示すように、このマウント電極55に対してインナー電極8上に配置した実装部材9を接触させることで、実装部材9の濡れ広がり、または実装位置のずれにより、実装部材9が第2メサ部46に付着することを防止できる。
【0047】
このように、本実施形態の圧電振動片10は、ATカットにより形成され、第1主面21、第2主面23、および側面25を備えた圧電板20を有する圧電振動片であって、第1主面21および第2主面23のうち少なくとも一方に形成されたメサ部40を有し、メサ部40の側面には、メサ部40の頂面に連なる曲面が形成されている、ことを特徴とする。
本実施形態によれば、メサ部40の側面には、メサ部40の頂面に連なる曲面が形成されているため、側面が斜面で形成されている場合に比べて、頂面と側面とが滑らかに接続され、両面の接続部における稜線が鈍くなる。これにより、その接続部における振動の反射が小さくなり、スプリアス発振が抑制される。また、メサ部40の側面に曲面を形成することでメサ部40自体の変形が抑制され、スプリアス発振が抑制される。そのため、メサ部40の段差を高くすることが可能となり、圧電振動片10のエネルギー閉じ込め効率が向上する。その結果、圧電振動片10のCI値を低下させることができる。したがって、振動特性の優れた圧電振動片を得ることができる。
【0048】
また、本実施形態の圧電振動片10は、メサ部40の全ての側面に、曲面が形成されている、ことを特徴とする。
本実施形態によれば、メサ部40の頂面とメサ部40の側面との全ての接続部の稜線が鈍くなるため、スプリアス発振をより確実に抑制することができる。したがって、より振動特性の優れた圧電振動片を得ることができる。
【0049】
さらに、本実施形態の圧電振動片10は、第2主面23に形成された一対のマウント電極55と、第2主面23に形成された第2メサ部46と、を有し、第2メサ部46は、第2主面23への投影幅が異なる複数の側面46b〜46eを有する。そして第2メサ部46の複数の側面46b〜46eのうち投影幅が最小となる第1側面46bを挟んで、第2メサ部46の頂面46aの反対側に、一対のマウント電極55のうち少なくとも一方が配置されている、ことを特徴とする。
本実施形態によれば、第2メサ部46の第1側面46bに隣接する領域では、第2主面23の面積が広くなる。その領域にマウント電極55を設けることで、マウント電極55から第2メサ部46までの距離が長くなる。これにより、圧電振動片10の実装時において、圧電振動片10とパッケージとの固定に用いる実装部材9の濡れ広がり量および実装位置精度にマージンを確保できる。そのため、実装部材9がマウント電極55上から濡れ広がって第2メサ部46に付着することによる振動特性の劣化を防止できる。したがって、振動特性の安定した圧電振動片を得ることができる。
【0050】
本実施形態の圧電振動子1は、圧電振動片10を備える、ことを特徴とする。
本実施形態によれば、圧電振動子1は、前述した振動特性の優れた圧電振動片10を備えるため、振動特性の優れた圧電振動子を得ることができる。
【0051】
(第1実施形態、圧電振動片の製造方法)
次に第1実施形態の圧電振動片の製造方法について説明する。
図5〜14は、第1実施形態に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図であって、
図1のV−V線に相当する部分における断面図である。
【0052】
本実施形態の圧電振動片10の製造方法は、まずメサ部40を形成し、次に圧電板20の外形を形成する。そのうちメサ部40の形成は、ウエハSの表面に、メサ部40の外形パターンのメサマスク81aを形成するメサマスク形成工程と、メサマスク81aを介してウエハSをエッチングし、メサ部40の外形パターンを形成するメサ形成工程と、ウエハSをウェットエッチングすることで、メサ部40の側面に、メサ部40の頂面に連なる曲面を形成する曲面形成工程と、を備える。
【0053】
まず、水晶のランバート原石をATカットして一定の厚みとしたウエハをラッピングして粗加工した後、加工変質層をエッチングで取り除き、この後、ポリッシュなどの鏡面研磨加工を行なった所定の厚みのウエハSを準備する。
【0054】
(メサマスク形成工程)
次に、メサマスク形成工程について説明する。
図5に示すように、ウエハSの両面にエッチング保護膜81とフォトレジスト膜83とをそれぞれ成膜する。
エッチング保護膜81は、後述する水晶からなるウエハSのエッチングに対する耐性を有する。例えば、厚さが数10nmのクロム(Cr)の金属層と、厚さが数10nmの金(Au)の金属層とが、順次積層された積層膜である。
この工程においては、まず、ウエハSの表裏主面に、エッチング保護膜81を、それぞれスパッタリング法や蒸着法などにより成膜する。
【0055】
次いで、エッチング保護膜81上に、スピンコート法などによりレジスト材料を塗布して、フォトレジスト膜83を形成する。
本実施形態で用いるレジスト材料としては、環化ゴム(たとえば、環化イソプレン)を主体にしたゴム系ネガレジストが好適に用いられている。ゴム系ネガレジストは、環化ゴムを有機溶剤に溶解し、さらにビスアジド感光剤を加えて、ろ過し、不純物を除去することで精製されたものである。
【0056】
次に、
図6および
図7に示すように、ウエハSの表面にメサ部の外形パターンのメサマスク81aを形成する。
具体的には、まず、エッチング保護膜81およびフォトレジスト膜83が成膜されたウエハSの一方側の面を、メサ部の外形パターンが形成されたフォトマスクを用いて露光する。同様に、ウエハSの他方側の面を、メサ部の外形パターンが形成されたフォトマスクを用いて露光する。そして、ウエハSの両面に成膜されたフォトレジスト膜83を一括で現像する。これにより、
図6に示すように、ウエハSの両面に成膜されたフォトレジスト膜83に、メサ部の外形パターン83aを形成する。
【0057】
次いで、メサ部の外形パターン83aが形成されたフォトレジスト膜83をマスクとして、ウエハSの両面に成膜されたエッチング保護膜81にエッチング加工を行ない、マスクされていないエッチング保護膜81を選択的に除去する。これにより、
図7に示すように、ウエハSの両面に、メサ部の外形パターンのメサマスク81aが形成される。
このエッチング保護膜81のエッチング加工には、エッチング保護膜81とフォトレジスト膜83が形成されたウエハSを、薬液に浸漬して行うウェットエッチング方式を用いることができる。例えば、エッチング保護膜81が金(Au)からなる場合には、薬液としてヨウ素を用いてエッチングすることができる。
【0058】
(メサ形成工程)
次に、メサ形成工程について説明する。
図8に示すように、メサマスク81aを介してウエハSをエッチングし、メサ部40の外形パターンを形成する。
このウエハSのエッチング加工は、メサマスク81aが形成されたウエハSを薬液に浸漬して行うウェットエッチング方式を用いることができる。例えば、薬液としてフッ酸を用いてエッチングすることができ、エッチング時間は30分程度とする。これにより、メサ部40の外形パターンが形成される。このとき、メサ部40の側面には、水晶結晶の自然結晶面が現れる。
【0059】
次に、
図9に示すように、エッチング保護膜81およびフォトレジスト膜83を除去する。これにより、メサ部40は頂面および側面が露出した状態になる。なお、フォトレジスト膜83の除去は、先述したエッチング保護膜81のエッチング加工後(メサ形成工程の前)に行ってもよい。
【0060】
(曲面形成工程)
次に、曲面形成工程について説明する。
図10に示すように、ウエハSをウェットエッチングすることで、メサ部40の側面に、メサ部40の頂面に連なる曲面を形成する。
このウェットエッチング加工は、先述したメサ部40の外形パターンを形成するウェットエッチング加工と同様に行うことができる。このとき、エッチング時間は例えば30分程度とする。
【0061】
このように、メサ部40の頂面と側面との接続部近傍のマスクを除去した状態でウェットエッチングを行うと、頂面と側面との稜線が鈍くなるようにエッチングされ、側面は凸曲面状に変化する。なお、水晶結晶のエッチング異方性により、m面で形成された側面41c,46cと頂面との接続部はエッチングの進行が他の接続部に比べて遅くなる。そのため、m面で形成された側面41c,46cと頂面との接続部に形成される曲面は、他の接続部に比べて、その曲面が形成された側面に対する面積比率が小さくなるように形成される。
【0062】
(外形マスク形成工程)
次に外形マスク形成工程について説明する。
図11に示すように、メサ部40を形成したウエハSの両面に、エッチング保護膜91およびフォトレジスト膜93をそれぞれ成膜する。エッチング保護膜91およびフォトレジスト膜93の材質および形成方法は、メサマスク形成工程におけるエッチング保護膜81およびフォトレジスト膜83と同様である。
【0063】
次に、
図12に示すように、ウエハSの表面に、圧電板20の外形パターンの外形マスク91aを形成する。
具体的には、まず、エッチング保護膜91およびフォトレジスト膜93が成膜されたウエハSの一方側の面を、圧電板20の外形パターンが形成されたフォトマスクを用いて露光する。同様に、ウエハSの他方側の面を、圧電板20の外形パターンが形成されたフォトマスクを用いて露光する。そして、ウエハSの両面に成膜されたフォトレジスト膜93を一括で現像する。これにより、ウエハSの両面に成膜されたフォトレジスト膜93に、圧電板20の外形パターン93aを形成する。
次いで、圧電板20の外形パターン93aが形成されたフォトレジスト膜93をマスクとして、ウエハSの両面に成膜されたエッチング保護膜91にエッチング加工を行ない、マスクされていないエッチング保護膜91を選択的に除去する。これにより、
図12に示すように、ウエハSの両面に圧電板20の外形パターンの外形マスク91aが形成される。エッチング保護膜91のエッチング加工は、メサマスク形成工程におけるエッチング保護膜81の加工と同様に行う。
【0064】
(外形形成工程)
次に外形形成工程について説明する。
図13に示すように、外形マスク91aを介してウエハSをウェットエッチングし、圧電板20の外形パターンを形成する。
このウエハSのエッチング加工は、外形マスク91aが形成されたウエハSを薬液に浸漬して行うウェットエッチング方式を用いることができる。メサ形成工程と同様に、例えば薬液としてフッ酸を用いてエッチングすることができる。エッチング時間は3時間程度とする。これにより、圧電板20が形成される。
【0065】
次に、
図14に示すように、エッチング保護膜91およびフォトレジスト膜93を除去する。これにより、側面に曲面が形成されたメサ部40を有する圧電板20が得られる。なお、フォトレジスト膜93の除去は、先述したエッチング保護膜91のエッチング加工後(外形形成工程の前)に行ってもよい。
【0066】
最後に、圧電板20の表面上に励振電極、マウント電極、引き回し配線、マウント裏電極および接続部を形成することで、圧電振動片10が得られる。
【0067】
このように、本実施形態の圧電振動片10の製造方法は、ウエハSの表面に、メサ部40の外形パターンのメサマスク81aを形成するメサマスク形成工程と、メサマスク81aを介してウエハSをエッチングし、メサ部40の外形パターンを形成するメサ形成工程と、ウエハSをウェットエッチングすることで、メサ部40の側面に、メサ部40の頂面に連なる曲面を形成する曲面形成工程と、を備えることを特徴とする。
本実施形態によれば、メサ部40の外形パターンを形成したウエハSに対してウェットエッチングを行うことで、メサ部40の頂面とメサ部40の側面との稜線が丸みを帯び、メサ部40の側面は曲面状に変化する。したがって、メサ部の頂面に連なる曲面状のメサ部の側面を備える圧電振動片を簡単に製造できる。
【0068】
(第1実施形態、第1変形例、圧電振動片および圧電振動子)
次に第1実施形態の第1変形例の圧電振動片について説明する。
図15は、第1実施形態の第1変形例に係る圧電振動片の底面図であり、
図16は、第1実施形態の第1変形例に係る圧電振動子の説明図であり、
図15のXVI−XVI線を通る切断面に沿った断面を示す断面図である。
【0069】
図1に示す第1実施形態は、第2メサ部46の第1側面46bの近傍に、一対のマウント電極55の両方が形成されている。これに対して、
図15に示す第1変形例では、第2メサ部46の第1側面46bの近傍に、一対のマウント電極55のうち第2マウント電極55bのみが形成されている点で異なっている。なお、
図1および
図2に示す第1実施形態と同様の構成となる部分については、詳細な説明を省略する。
【0070】
図15に示すように、第2マウント電極55bは、第2メサ部46の側面46b〜46eのうち、第2主面23への投影幅が最小となる第1側面46bを挟んで、第2メサ部46の頂面46aの反対側に配置されている。
第2マウント電極55bは、Y´方向視矩形状に形成され、第2主面23のうち−Z´方向側の外周に沿って配置されている。
【0071】
また、第1マウント電極55aは、第2メサ部46の側面46b〜46eのうち第1側面46bとは異なる第2側面46cを挟んで、第2メサ部46の頂面46aの反対側に配置されている。
第1マウント電極55aは、Y´方向視矩形状に形成され、第2主面23のうち+Z´方向側の外周に沿って配置されている。また、第1マウント電極55aは、圧電板20の+Z´側の端部に形成された第1接続部61を介して、第1主面21に形成された第1マウント裏電極65に接続されている。第1マウント裏電極65は、Y´方向視において第1マウント電極55aと重なるように形成されている。
【0072】
図16に示すように、圧電振動片10aをベース基板3(パッケージ)に封入した圧電振動子1aは、一対のマウント電極55とベース基板3との間に配置され、圧電振動片10aをベース基板3に固定する一対の実装部材9を有する。
一対の実装部材9は、第1実装部材9aと第2実装部材9bとを有する。第1実装部材9aは、インナー電極8aと第1マウント電極55aとを接続する。第2実装部材9bは、インナー電極8bと第2マウント電極55bとを接続する。
【0073】
そして、第2マウント電極55b上における第2実装部材9bの接触面積は、第1マウント電極55a上における第1実装部材9aの接触面積より広くなっている。
第2実装部材9bは、第1実装部材9aよりも体積が大きくなるようにインナー電極8上に配置されている。第2実装部材9bの量は、単独で圧電振動片10aの固定強度を確保しうる量である。第1実装部材9aの量は、インナー電極8aと第1マウント電極55aとの電気接続を少なくとも確保できる量である。
【0074】
第2マウント電極55bは、第2主面23への投影幅の狭い第2メサ部46の第1側面46bに隣接する領域に配置されており、第2メサ部46までの距離が広く確保されている。そのため、第2実装部材9bを第2マウント電極55bへ接触させる際には、十分に広い面積で接触させて、圧電振動片10aの固定強度を確保することができる。そして、第1実装部材9aは、インナー電極8aと第1マウント電極55aとの電気接続を確保できる最低限の量を、第1マウント電極55aに接触させればよいため、第1実装部材9aの濡れ広がりによる圧電振動片10aの振動特性の劣化を防止できる。
【0075】
このように、本変形例の圧電振動子1aは、圧電振動片10aをパッケージに封入し、第2マウント電極55bが、第1側面46bを挟んで、第2メサ部46の頂面46aの反対側に配置される。第1マウント電極55aは、第2メサ部46の複数の側面のうち第1側面46bとは異なる第2側面46cを挟んで、第2メサ部46の頂面46aの反対側に配置される。また、圧電振動子1aは、圧電振動片10aの一対のマウント電極55とベース基板3との間に配置され、圧電振動片10aをベース基板3にマウントする一対の実装部材9を有する。そして、第2マウント電極55b上における第2実装部材9bの接触面積は、第1マウント電極55a上における第1実装部材9aの接触面積より広い、ことを特徴とする。
本変形例によれば、圧電振動片10aの第2メサ部46の第1側面46bに隣接する領域では、第2主面23の面積が広くなる。その領域に第2マウント電極55bを設けることで、第2マウント電極55bから第2メサ部46までの距離が長くなる。これにより、圧電振動片10aの実装時において、第2マウント電極55bに第2実装部材9bを接触させる際に、第2マウント電極55b上に第2実装部材9bを広く接触させて圧電振動片10aの固定強度を確保することができる。そして、第1マウント電極55a上には、インナー電極8aとの電気接続を確保できるだけの最小限の量の実装部材9を接触させればよいので、第1マウント電極55a上の第1実装部材9aの濡れ広がりによる振動特性の劣化を防止できる。したがって、振動特性の安定した圧電振動片を備えた圧電振動子を得ることができる。
【0076】
なお、本変形例では第2メサ部46の第2側面46c近傍に第1マウント電極55aを配置したが、第3側面46d近傍または第4側面46e近傍に配置してもよい。ただし、本変形例のように第2側面46c近傍に第1マウント電極55aを配置すれば、一方向の両端で圧電振動片10aがマウントされるので、圧電振動片10aを安定して支持できる。
【0077】
(第2実施形態、圧電振動片)
次に第2実施形態の圧電振動片について説明する。
図17は、第2実施形態に係る圧電振動片の平面図である。
図18は、第2実施形態に係る圧電振動片の説明図であり、
図17のXVIII−XVIII線における断面図である。
図19は、第2実施形態に係る圧電振動片の説明図であり、
図17のXIX−XIX線における断面図である。
【0078】
図1および
図2に示す第1実施形態は、圧電板20の側面が平面で形成されているが、
図17〜19に示す第2実施形態では、圧電板20の側面に曲面が形成されている点で異なっている。なお、
図1および
図2に示す第1実施形態と同様の構成となる部分については、詳細な説明を省略する。
【0079】
図17および
図18に示すように、圧電板20の第1側面26は、第1主面21に連なる曲面で形成されている。すなわち第1側面26は、第1主面21の+Z´方向側の端部から(−Y´,+Z´)方向に傾斜し、第2主面23の+Z´方向側の端部に接続している。第1側面26は、(+Y´,+Z´)方向に凸となる湾曲面で形成されている。なお第1側面26は、X方向に均一に形成されている。第1側面26は第1主面21に連なる曲面で形成されているため、第1側面26と第1主面21との接続部21aにおける稜線は鈍くなっている。本実施形態では、第1側面26と第1主面21は連続しているため、稜線がなくなっている。
【0080】
ところで、従来の圧電振動片は、側面が主面に対して90度に近い角度で接続される。すなわち側面と両主面との接続部には鋭い稜線が形成される。そのため、圧電振動片の端部まで十分に減衰されないまま振動が伝わると、その振動は側面と両主面との接続部において反射してスプリアスが発振する。
一方で、
図17および
図18に示す本実施形態のように第1側面26を曲面で形成することで、接続部21aの稜線は鈍くなり、第1側面26と第1主面21または第2主面23との接続部のうち、稜線の鋭い接続部は接続部23bの1箇所のみとなる。これにより、圧電振動片110の+Z´方向側の端部にて発生するスプリアス発振が抑制される。
【0081】
第2側面27は、第2主面23に連なる曲面で形成されている。すなわち第2側面27は、第2主面23の−Z´方向側の端部から(+Y´,−Z´)方向に傾斜し、第1主面21の−Z´方向側の端部に接続している。第2側面27は、(−Y´,−Z´)方向に凸となる湾曲面で形成されている。なお第2側面27は、X方向に均一に形成されている。第2側面27は第2主面23に連なる曲面で形成されているため、第2側面27と第2主面23との接続部23aにおける稜線は鈍くなっている。本実施形態では、第2側面27と第2主面23は連続しているため、稜線がなくなっている。その結果、第2側面27と第1主面21または第2主面23との接続部のうち、稜線の鋭い接続部は接続部21bの1箇所のみとなり、第1側面26と同様の理由により、圧電振動片110の−Z´方向側の端部にて発生するスプリアス発振が抑制される。
【0082】
図17および
図19に示すように、第3側面28は、第1主面21に連なる第1部分側面28aと、第2主面23に連なる第2部分側面28bと、第1部分側面28aと第2部分側面28bとを接続する第3部分側面28cと、を有する。
【0083】
第3側面28の第1部分側面28aは、第1主面21の+X方向側の端部から(+X,−Y´)方向に傾斜しつつ、(+X,+Y´)方向に凸となる湾曲面で形成されている。なお第1部分側面28aは、Z´方向に均一に形成されている。第1部分側面28aは第1主面21に連なる曲面で形成されているため、第1部分側面28aと第1主面21との接続部21cにおける稜線は鈍くなっている。本実施形態では、第1部分側面28aと第1主面21は連続しているため、稜線がなくなっている。
【0084】
第3側面28の第2部分側面28bは、第2主面23の+X方向側の端部から(+X,+Y´)方向に傾斜しつつ、(+X,−Y´)方向に凸となる湾曲面で形成されている。なお第2部分側面28bは、Z´方向に均一に形成されている。第2部分側面28bは第2主面23に連なる曲面で形成されているため、第2部分側面28bと第2主面23との接続部23cにおける稜線は鈍くなっている。本実施形態では、第2部分側面28bと第2主面23は連続しているため、稜線がなくなっている。
【0085】
第3側面28の第3部分側面28cは、第1部分側面28aの+X方向側の端部、および第2部分側面28bの+X方向側の端部に連なり、+X方向に凸となる湾曲面で形成されている。なお第3部分側面28cは、Z´方向に均一に形成されている。
【0086】
このように第3側面28を形成することで、第3側面28が有する全ての稜線が鈍くなるため、圧電振動片110の+X方向側の端部にて発生するスプリアス発振が抑制される。
【0087】
第4側面29は、第1主面21に連なる第1部分側面29aと、第2主面23に連なる第2部分側面29bと、第1部分側面29aと第2部分側面29bとを接続する第3部分側面29cと、を有する。
【0088】
第4側面29の第1部分側面29aは、第1主面21の−X方向側の端部から(−X,−Y´)方向に傾斜しつつ、(−X,+Y´)方向に凸となる湾曲面で形成されている。なお第1部分側面29aは、Z´方向に均一に形成されている。第1部分側面29aは第1主面21に連なる曲面で形成されているため、第1部分側面29aと第1主面21との接続部21dにおける稜線は鈍くなっている。本実施形態では、第1部分側面29aと第1主面21は連続しているため、稜線がなくなっている。
【0089】
第4側面29の第2部分側面29bは、第2主面23の−X方向側の端部から(−X,+Y´)方向に傾斜しつつ、(−X,−Y´)方向に凸となる湾曲面で形成されている。なお第2部分側面29bは、Z´方向に均一に形成されている。第2部分側面29bは第2主面23に連なる曲面で形成されているため、第2部分側面29bと第2主面23との接続部23dにおける稜線は鈍くなっている。本実施形態では、第2部分側面29bと第2主面23は連続しているため、稜線がなくなっている。
【0090】
第4側面29の第3部分側面29cは、第1部分側面29aの−X方向側の端部、および第2部分側面29bの−X方向側の端部に連なり、−X方向に凸となる湾曲面で形成されている。なお第3部分側面29cは、Z´方向に均一に形成されている。
【0091】
このように第4側面29を形成することで、第4側面29が有する全ての稜線が鈍くなるため、圧電振動片110の−X方向側の端部にて発生するスプリアス発振が抑制される。
【0092】
本実施形態の圧電振動片110は、圧電板20の側面に第1主面21および第2主面23のうち少なくとも一方に連なる曲面が形成されている、ことを特徴とする。
本実施形態によれば、圧電板20の側面は、第1主面21および第2主面23のうち少なくとも一方と滑らかに接続され、両面の接続部における稜線は鈍くなる。これにより、十分に減衰されないままその接続部に伝わった振動の反射は小さくなり、スプリアス発振が抑制される。したがって、より振動特性の優れた圧電振動片を得ることができる。
【0093】
(第2実施形態、圧電振動片の製造方法)
次に第2実施形態の圧電振動片の製造方法について説明する。
図20〜27は、第2実施形態に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図であって、
図18に相当する部分における断面図である。
【0094】
本実施形態の圧電振動片110の製造方法では、第1実施形態とは逆に、まず圧電板20の外形を形成し、次にメサ部40を形成する。そのメサ部40の形成において、メサ部40の外形パターンを形成するメサ形成工程およびメサ部40の側面に曲面を形成する曲面形成工程では、ウエハSをウェットエッチングすることで、圧電板20の側面25に、第1主面21および第2主面23のうち少なくとも一方に連なる曲面を形成する。
【0095】
まず、
図5に示す第1実施形態と同様に、ウエハSの両面にエッチング保護膜191およびフォトレジスト膜193をそれぞれ成膜する。
【0096】
次に、
図20に示すように、ウエハSの表面に、圧電板20の外形パターンの外形マスク191aを形成する。エッチング保護膜191およびフォトレジスト膜193の加工は、第1実施形態における外形マスク形成工程と同様に行う。
【0097】
次に、
図21に示すように、外形マスク191aを介してウエハSをウェットエッチングし、圧電板20の外形パターンを形成する。このウエハSのエッチング加工は、第1実施形態における外形形成工程と同様に行う。
【0098】
次に、
図22に示すように、エッチング保護膜191およびフォトレジスト膜193を除去する。これにより、圧電板20の外形パターンが形成されたウエハSが得られる。
【0099】
次に、メサマスク形成工程を行う。
図23に示すように、圧電板20の外形パターンを形成したウエハSの両面に、エッチング保護膜181およびフォトレジスト膜183をそれぞれ成膜する。エッチング保護膜181およびフォトレジスト膜183の材質および形成方法は、上述したエッチング保護膜191およびフォトレジスト膜193と同様である。
【0100】
次に、
図24に示すように、ウエハSの表面に、メサ部の外形パターンのメサマスク181aを形成する。エッチング保護膜181およびフォトレジスト膜183の加工は、第1実施形態におけるメサマスク形成工程と同様に行う。なお、圧電板20の外形パターン形成後にエッチング保護膜191を除去することなく、エッチング保護膜191からメサマスク181aを形成してもよい。
【0101】
次に、メサ形成工程を行う。
図25に示すように、メサマスク181aを介してウエハSをウェットエッチングし、メサ部40の外形パターンを形成する。このウエハSのエッチング加工は、第1実施形態におけるメサ形成工程と同様に行う。これにより、メサ部40の外形が形成される。このとき、圧電板20の第1主面21および第2主面23と側面25との接続部近傍は露出した状態であるため、メサ部40の外形形成時のウェットエッチングにより、圧電板20の側面25に曲面が同時に形成される。
【0102】
次に、
図26に示すように、エッチング保護膜181およびフォトレジスト膜183を除去する。これにより、メサ部40は頂面および側面が露出した状態になる。
【0103】
次に、曲面形成工程を行う。
図27に示すように、ウエハSをウェットエッチングすることで、メサ部40の側面に、メサ部40の頂面に連なる曲面を形成する。このウェットエッチング加工は、第1実施形態における曲面形成工程と同様に行う。このとき、圧電板20の第1主面21および第2主面23と側面25との接続部近傍は露出した状態であるため、圧電板20の側面25に形成された曲面はさらにエッチングが進行し、主面との接続部における稜線が鈍くなる。
【0104】
最後に、圧電板20の表面上に励振電極、マウント電極、引き回し配線、マウント裏電極および接続部を形成することで、第1主面21および第2主面23のうち少なくとも一方に連なる曲面で形成された側面25を有する圧電振動片110が得られる。
【0105】
なお、本実施形態では、圧電板20の外形パターンを形成後に、メサマスク形成工程、メサ形成工程および曲面形成工程を行ったが、メサ形成工程の後(曲面形成工程の前)に圧電板20の外形パターンを形成してもよい。この場合、圧電板20の外形パターン形成後に行う曲面形成工程で、圧電板20の側面にも曲面が形成される。ただし、本実施形態の製造方法のように、圧電板20の外形パターンをメサ形成工程より前に形成することで、圧電板20の側面25の曲面形成をメサ形成工程および曲面形成工程の2つの工程で行うことができる。そのため、圧電板20の側面25に曲面をより確実に形成することができる。
【0106】
このように、本実施形態の圧電振動片110の製造方法は、メサ部40の外形パターンを形成するメサ形成工程およびメサ部40の側面に曲面を形成する曲面形成工程において、ウエハSをウェットエッチングすることで、圧電板20の側面25に、第1主面21および第2主面23のうち少なくとも一方に連なる曲面を形成する。
この方法によれば、メサ部40の外形形成時およびメサ部の側面への曲面形成時と同時に圧電板20の側面25に曲面を形成できる。したがって、特別な工程を加えることなく、圧電板20の側面25に、第1主面21および第2主面23のうち少なくとも一方に連なる曲面を簡単に形成することができる。
【0107】
(第3実施形態、圧電振動片)
次に第3実施形態の圧電振動片について説明する。
図28は、第3実施形態に係る圧電振動片の平面図であり、
図29は側面図である。
【0108】
図1および
図2に示す第1実施形態は、第1メサ部41および第2メサ部46がそれぞれ1段で形成されているが、
図28および
図29に示す第3実施形態では、第1メサ部241および第2メサ部246がそれぞれ複数段で形成されている点で異なっている。なお、
図1および
図2に示す第1実施形態と同様の構成となる部分については、詳細な説明を省略する。
【0109】
図28および
図29に示すように、第1メサ部241は、階段状に積層配置され、圧電板20の厚さ方向の内側に配置された第1メサ段部243、および圧電板20の厚さ方向の外側に配置された第2メサ段部244を有する。
第1メサ部241の第1メサ段部243は、第1主面21上に形成されている。第1メサ段部243の全ての側面には、第1メサ段部243の頂面243aに連なる曲面が形成されている。第1メサ段部243は、第1実施形態の圧電振動片10における第1メサ部41と略一致する形状に形成されている。
第1メサ部241の第2メサ段部244は、第1メサ段部243の頂面243a上に形成されている。第2メサ段部244の全ての側面は、水晶結晶の自然結晶面である平面で形成されている。第2メサ段部244の頂面244aには、第1励振電極51が配置されている。
第1メサ段部243の側面に曲面を形成することで、第1実施形態におけるメサ部40の側面と頂面との接続部において発生するスプリアス発振の抑制と同様の効果が得られる。なお、第2メサ段部244の側面にも曲面を形成することで、さらにスプリアス発振を抑制できる。
【0110】
このように第1メサ部241を階段状に形成することで、第1メサ部241の側面は、圧電板20の側面25に向かって段階的に近付いていく。これにより第1メサ部241自体の変形が小さくなり、スプリアス発振が抑制される。そのため、第1メサ部241の段差を高くすることが可能となり、よりエネルギー閉じ込め効率を向上させることが可能となる。
【0111】
第2メサ部246は、第1メサ部241と同様に形成されている。このように第2メサ部246を階段状に形成することで、第1メサ部241と同様の理由により、第2メサ部246におけるエネルギー閉じ込め効率をより向上させることが可能となる。
【0112】
本実施形態の圧電振動片210は、第1メサ部241および第2メサ部246が階段状に積層配置された複数のメサ段部を有し、複数のメサ段部のうち少なくとも1つのメサ段部の側面に、メサ段部の頂面に連なる曲面が形成されている、ことを特徴とする。
本実施形態によれば、第1メサ部241および第2メサ部246の側面が圧電板20の側面25に向かって段階的に近付いていくため、メサ部自体の変形が小さくなり、スプリアス発振が抑制される。そのため、第1メサ部241および第2メサ部246の段差を高くすることが可能となり、よりエネルギー閉じ込め効率を向上させることが可能となる。したがって、より振動特性の優れた圧電振動片を得ることができる。
【0113】
なお、本実施形態では、第1メサ部241および第2メサ部246に2段のメサ段部を形成したが、3段以上のメサ段部を形成してもよい。これにより、メサ段部自体の変形がさらに小さくなり、スプリアス発振がより抑制される。
【0114】
(第3実施形態、圧電振動片の製造方法)
次に第3実施形態の圧電振動片の製造方法について説明する。
図30〜32は、第3実施形態に係る圧電振動片の製造方法を説明する工程図であって、
図28のXXX−XXX線に相当する部分における断面図である。
【0115】
本実施形態の圧電振動片210の製造方法は、メサマスクを形成するメサマスク形成工程と、メサ部の外形パターンを形成するメサ形成工程とを繰り返し行って、第1メサ段部243,248および第2メサ段部244,249を形成する。メサ部の側面に曲面を形成する曲面形成工程では、第1メサ段部243,248の側面に、第1メサ段部243,248の頂面243a,248aに連なる曲面を形成する。その第1メサ段部243,248の側面に曲面を形成する工程は、第2メサ段部244,249の外形パターンを形成する工程において、ウエハSをウェットエッチングすることで行う。
【0116】
まず、第1メサ段部243,248を形成するため、第1メサマスク形成工程と、第1メサ形成工程とを行う。第1メサマスク形成工程および第1メサ形成工程は、第1実施形態のメサマスク形成工程およびメサ形成工程と同一である。なお
図9に相当する第1メサ形成工程までは、詳細な説明を省略する。
【0117】
次に、第2メサ段部244,249を形成するため、第2メサマスク形成工程と、第2メサ形成工程とを行う。第2メサマスク形成工程および第2メサ形成工程は、第1実施形態のメサマスク形成工程およびメサ形成工程と同様である。
具体的には、
図30に示すように、第2メサマスク形成工程を行い、第1メサ部241の第1メサ段部243の頂面243a上、および第2メサ部246の第1メサ段部248の頂面248a上に、第2メサ段部のマスク281aを形成する。
【0118】
次に、
図31に示すように、第2メサ形成工程を行い、第2メサ段部244,249のマスク281aを介してウエハSをウェットエッチングすることで、第2メサ段部244,249の外形パターンを形成する。このとき、第1メサ段部243,248の頂面と側面との接続部近傍には、第2メサ段部244,249のマスク281aが配置されていない。すなわち第1メサ段部243,248の頂面と側面との接続部近傍は露出した状態である。そのため、第1メサ部241の第1メサ段部243の全ての側面には、第1メサ段部243の頂面243aに連なる曲面が形成され、第2メサ部246の第1メサ段部248の全ての側面には、第1メサ段部248の頂面248aに連なる曲面が形成される。
【0119】
次に、
図32に示すように、エッチング保護膜281およびフォトレジスト膜283を除去する。なお、上述したメサマスク形成工程およびメサ形成工程を繰り返し行うことで、メサ部に対して3段以上のメサ段部を形成することも可能である。その場合でも、上段のメサ段部の外形形成と同時に、下段のメサ段部の側面に曲面を形成することができる。また、最後にウエハSのウェットエッチングを追加すれば、最上段のメサ段部の側面にも曲面を形成することができる。
【0120】
次に、第1実施形態と同様に、
図11〜14に示す外形マスク形成工程および外形形成工程を行う。そして最後に、圧電板20の表面上に励振電極、マウント電極、引き回し配線、マウント裏電極および接続部を形成することで、メサ部が階段状に積層配置された複数のメサ段部を有する圧電振動片210が得られる。
【0121】
このように、本実施形態の圧電振動片の製造方法は、メサマスクを形成するメサマスク形成工程と、メサ部の外形パターンを形成するメサ形成工程とを繰り返し行って、第1メサ段部243,248および第2メサ段部244,249を形成する。メサ部の側面に曲面を形成する曲面形成工程では、第1メサ段部243,248の側面に、第1メサ段部243,248の頂面に連なる曲面を形成する。その第1メサ段部243,248の側面に曲面を形成する工程は、第2メサ段部244,249の外形パターンを形成する工程において、ウエハSをウェットエッチングすることで行う、ことを特徴とする。
この方法によれば、第1メサ部241および第2メサ部246の第2メサ段部244,249の形成と同時に、第1メサ段部243,248の側面に第1メサ段部243,248の頂面に連なる曲面を形成できる。したがって、複数の段部を備えるメサ部を有する圧電振動片に対し、特別な工程を加えることなく、メサ段部の頂面に連なる曲面をメサ段部の側面に形成することができる。
【0122】
なお、この発明は上述した実施形態に限られるものではない。
例えば、上記実施形態の圧電振動片においては、Z´方向の長さがX方向の長さより長くなるように形成されていたが、X方向の長さがZ´方向の長さより長くなるように形成されていてもよい。