特許第6516893号(P6516893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイアール西日本新幹線テクノスの特許一覧

<>
  • 特許6516893-会話補助装置 図000003
  • 特許6516893-会話補助装置 図000004
  • 特許6516893-会話補助装置 図000005
  • 特許6516893-会話補助装置 図000006
  • 特許6516893-会話補助装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6516893
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】会話補助装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 25/00 20060101AFI20190513BHJP
   G10K 11/28 20060101ALI20190513BHJP
   H04R 1/34 20060101ALI20190513BHJP
【FI】
   H04R25/00 B
   G10K11/28
   H04R1/34 310
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-53384(P2018-53384)
(22)【出願日】2018年3月20日
【審査請求日】2018年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】508349193
【氏名又は名称】株式会社ジェイアール西日本新幹線テクノス
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(74)【代理人】
【識別番号】100194984
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 圭太
(72)【発明者】
【氏名】毛利 順
【審査官】 堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/054323(WO,A1)
【文献】 特開2010−268018(JP,A)
【文献】 米国特許第05850060(US,A)
【文献】 特開2008−028786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 25/00
G10K 11/28
H04R 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想基準平面上に設定された第1の焦点と第2の焦点からなる楕円の長軸からなる対称軸を回転軸として、前記楕円を回転させて得られる楕円曲面の、前記回転軸を横切る切断面において切断された前記第1の焦点と前記第2の焦点を含まない面で形成された部分楕円曲面からなる反射板を備え、
前記部分楕円曲面は、前記長軸の中点から前記第1の焦点までの間にある第1の切断面と、前記中点から前記第2の焦点までの間にある第2の切断面で切断された
会話補助装置。
【請求項2】
前記第1の切断面、及び前記第2の切断面の少なくとも一方は、前記回転軸に対して垂直な切断面である
請求項に記載の会話補助装置。
【請求項3】
前記楕円は、
前記第1の焦点と前記第2の焦点との前記回転軸上における焦点間距離が略20cm〜60cmの範囲内、
前記楕円の短軸長さが5cm以上、
前記第1の焦点と該第1の焦点側の前記楕円の頂点との前記回転軸上における頂点距離、及び前記第2の焦点と該第2の焦点側の前記楕円の頂点との前記回転軸上における頂点距離がそれぞれ5cm以下、
前記楕円の短軸長さの2分の1の長さが前記焦点間距離の3分の1以下の長さ、である条件を満たす
請求項1または請求項に記載の会話補助装置。
【請求項4】
仮想基準平面上に設定された特定の対象点を焦点とする放物線の対称軸を回転軸として、前記放物線を回転させて得られる放物曲面の前記回転軸を通る切断面で分離した一方の面で形成された部分放物曲面からなる反射板を備える
会話補助装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、会話補助装置に関する。詳しくは、会話時の声を第三者に聞かれることなく、確実に会話の相手にのみ会話内容を伝達することができるととともに、簡素な構造により低コストで製造することができる会話補助装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、難聴者とは、日常生活での対話が困難になる程に聞こえ難い者をいい、難聴の種類としては障害の原因や部位によって感音性難聴、伝音性難聴、及び混合性難聴に大きく分類される。
【0003】
特に超高齢化社会を迎えている現代の日本においては、加齢とともに進行する感音性難聴の一つである老人性難聴が大きな社会問題となっている。老人性難聴は、時間をかけてゆっくりと進行する場合が多いため、本人も気が付かないうちに周囲とのコミュニケーションが円滑に出来なくなり、職場や家庭生活において支障をきたしている人も少なくない。
【0004】
このような問題を改善するために、難聴者の聴力を補う補聴装置としての補聴器を難聴者の耳介に装着し、難聴者が聞き取りづらい周波数帯域を増幅して難聴者の聴力を補うことが行われている。このような補聴器は、基本的にはマイク、増幅回路部、駆動用電池とから構成され、スピーカーとしては、通常音圧型イヤホンが使用されている(特許文献1)。
【0005】
前記した補聴器に使用される駆動用電池としては、一般的には内部に空気を取り入れて電池内の溶剤と化学反応を起こさせて電気を発生させる、所謂「空気電池」が使用されている。この空気電池は、安価である一方で電池寿命が短いため、難聴者の装着期間が限られてしまうという欠点がある。そこで、近年では充電式の電池が利用できる補聴器(特許文献2)や、燃料電池を搭載した補聴器も提案されている(特許文献3)。
【0006】
また、特許文献4には、電気的なエネルギーを使用しない耳介装着型の補聴装置が開示されている。具体的には、放物面、又は楕円面からなる部分湾曲面を形成する反射面を直接難聴者の両耳に装着し、音源からの音波をこの反射面で反射させて両耳に集音することで、難聴者の聴力を補うことが可能なものとなっている。
【0007】
一方で、前記した特許文献1乃至特許文献4に係る補聴器においては、一般にそれぞれの難聴者の耳や耳孔の形状等に合わせて補聴器を設計する必要があるため、製造コストが高くなるとともに、当該難聴者のみしか利用できず汎用性の低いものとなっていた。
【0008】
さらに、常時身体に装着することによる違和感、又は適正に装着されなかった場合に生じるハウリング等による不快な音の発生等、本来、難聴者の聴力を補う役割である補聴装置が難聴者の心身上のストレスの原因となることが懸念されるとともに、補聴器を装着していることが外観上一目瞭然であるため、第三者からの視線を気にする難聴者にとっては補聴器の装着を躊躇してしまい、必ずしも難聴者にとって使い勝手のよいものとはなっていなかった。
【0009】
そのため、わが国における補聴器の普及率は依然として低く、難聴者を相手とする会話に際しては、難聴者が聞き取れるように大きい声で話すといった対応を取らざるを得ない状況があった。しかしながら、例えば、病院や介護施設の公共施設等において、周囲に人がいる状況下で難聴者と大声で会話をすると、周囲の人に迷惑がかかるとともに、聞かれたくない会話の内容まで周囲の人に聞かれてしまうという問題が生じていた。この点、周囲の人に配慮して互いが声を小さくして会話をすると、難聴者にとっては会話内容が聞き取りづらく、お互いに会話をすることがストレスとなってしまう。
【0010】
このような問題を解決するために、前記したような難聴者の耳介装着型の補聴装置に代わるものとして、特許文献5には筒型をした会話補助装置が提案されている。具体的には、内部に声の伝達路が形成された筒本体と、筒本体の両端部に接続された拡大部から構成され、一方の拡大部を話し手の口元に、他方の拡大部を聞き手の耳元に近接して使用することで、周囲の雑音により会話が遮断されたり、会話内容が周囲に漏れることなく、話し手の声を確実に聞き手に伝達することができるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平08−237798号公報
【特許文献2】特開2008−278329号公報
【特許文献3】特開2014−127720号公報
【特許文献4】特開2004−015796号公報
【特許文献5】特開2008−28786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記した特許文献5に開示の会話補聴装置においては、難聴者の身体に常時装着するものではなく、相手との会話時にのみ使用するものであるため、装着に伴う違和感等は生じないとともに、会話時の声が周囲の人に聞かれることなく確実に会話の相手にのみ伝達することができるため、使い勝手の良いものとなっている。
【0013】
しかしながら、前記特許文献5に開示の会話補助装置は、音波が伝達される本体部の形状については何ら考慮されておらず、音源としての話し手から発せられた音波は円筒状の本体内部で拡散してしまい、必ずしも聞き手の耳元付近に音波が効率的に伝達される構成とはなっていなかった。そのため、本体部にマイクロホンやスピーカー等の電気的エネルギーを利用する必要があり、システム全体として高価なものとなっていた。
【0014】
さらに、話し手が会話補聴装置に向かって話す際には、口元を本体部に近接して会話をするため、繰り返しの利用により筒体内部に唾液が付着してしまうが、本体部が円筒状であるとともに、前記した通りマイクロホンやスピーカー等の電気機器が内蔵されていることから、分解洗浄が困難であり、衛生上において好ましくないという問題があった。
【0015】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、会話時の声を第三者に聞かれることなく、確実に会話の相手にのみ会話内容を伝達することができるととともに、簡素な構造により低コストで製造することができる会話補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の目的を達成するために、本発明の会話補助装置は、仮想基準平面上に設定された対象点を焦点とする二次曲線であって、該第二次曲線の対称軸を回転軸として、前記二次曲線を回転させて得られる二次曲面を切断してできる部分二次曲面からなる反射板を備える。
【0017】
ここで、仮想基準平面上に設定された対象点を焦点とする二次曲線であって、二次曲線の対称軸を回転軸として、二次曲線を回転させて得られる二次曲面を切断してできる部分二次曲面からなる反射板を備えることにより、音源から出射された音波が、略湾曲凹状に形成された反射板で反射され、部分二次曲面の焦点である対象点に向けて確実に集音させることができる。
【0018】
また、反射板が、第1の焦点と第2の焦点からなる楕円の長軸からなる対称軸を回転軸として、楕円を回転させて得られる楕円曲面の部分楕円曲面である場合には、楕円の一方の焦点である第1の焦点を話し手の口元、楕円の他方の焦点である第2の焦点を聞き手の耳介に設定することで、話し手の口元に対応する第1の焦点から発射された音波を、聞き手の耳介に対応する第2の焦点に向けて確実に集音させることができる。
【0019】
また、部分楕円曲面は、回転軸を通る切断面で切断して得られる場合には、反射板が一方向に開放された略湾曲凹状であることから、反射板の内面に汚れが付着したとしても、清掃が容易であるため衛生的である。
【0020】
また、部分楕円曲面は、切断面で切断した断面視における短手方向の端部が切り欠かれている場合には、集音効果を維持したまま会話補助装置全体をコンパクトにすることができるとともに、重量も軽くなることから、老若男女を問わず操作性に優れたものとなる。さらに、持ち運び時の携帯性にも優れるとともに、不使用時の収納スペースも容易に確保することができる。
【0021】
また、反射板は、第1の焦点と第2の焦点からなる楕円の長軸からなる対称軸を回転軸として、楕円を回転させて得られる楕円曲面の、回転軸を横切る切断面であって、長軸の中点から第1の焦点までの間にある第1の切断面で切断された面のうち、第1の焦点を含まない面で形成された部分楕円曲面である場合には、例えば第1の焦点を会話補助装置の話し手側の焦点として会話補助装置を使用する際には、話し手は、部分楕円曲面の外側にある第1の焦点近傍から反射板に向かって会話をすることができるため、相手側を向いて、より自然な体勢での会話を行うことができる。
【0022】
また、反射板は、第1の焦点と第2の焦点からなる楕円の長軸からなる対称軸を回転軸として、楕円を回転させて得られる楕円曲面の、回転軸を横切る切断面であって、長軸の中点から第2の焦点までの間にある第2の切断面で切断された面のうち、第2の焦点を含まない面で形成された部分楕円曲面である場合には、例えば第2の焦点を会話補助装置の聞き手側の焦点として会話補助装置を使用する際には、聞き手の耳介を含む顔側面に会話補助装置を密着させる必要がないため衛生的であるとともに、会話補助装置の端面で聞き手の顔側面を傷付ける等の怪我をさせることを回避することができる。
【0023】
また、第1の切断面、及び前記第2の切断面の少なくとも一方は、回転軸に対して垂直な切断面である場合には、例えば垂直な切断面を有する側を話し手側に向けて使用することにより、話し手は聞き手側をより真っ直ぐに向いた状態で会話を行うことができる。
【0024】
また、楕円の第1の焦点と第2の焦点との回転軸上における焦点間距離が略20cm〜60cmの範囲内で、かつ短軸長さの2分の1の長さが焦点間距離の3分の1以下の長さである場合には、会話補助装置全体として適度な大きさとすることができる。即ち、短軸の長さに対する長軸の長さが適度に細長くなることにより、使用時の操作性が良く、携帯性にも優れ、不使用時の収納も容易に行うことができる大きさとなる。
【0025】
なお、焦点間距離が20cmよりも短くなると、話し手と聞き手の対話距離が近接し、会話者同士間において適度な距離を保つことができず、話し手が会話時に不自然な姿勢を強いられることになる。
【0026】
一方、焦点間距離が60cmよりも長くなると、会話補助装置全体が楕円の長軸方向に長くなって大型化し、重量も増えるため、収納する際のスペース確保が困難となるとともに、携帯性、及び使用時の操作性が悪化する。
【0027】
更に、短軸長さの2分の1の長さが焦点間距離の3分の1の長さを超えた場合には、楕円の長軸長さと短軸長さの比率が略同じとなる円形に近い形状となる。そのため、反射板が話し手の口元から聞き手の耳介まで大きな弧を描いたような形状となるため、会話補助装置の操作性が悪化するとともに、収納時の安定性にも欠けたものとなる。
【0028】
また、第1の焦点と第1の焦点側の楕円の頂点との回転軸上における頂点距離、及び第2の焦点と第2の焦点側の楕円の頂点との回転軸上における頂点距離がそれぞれ5cm以下である場合には、反射板の回転軸上における一方の頂点付近で囲われた湾曲凹部を目安に話し手の口元を置いたときに、会話補助装置の話し手側の焦点(例えば第1の焦点)と話し手の口元が適度に近接するとともに、反射板の回転軸上における他方の頂点付近で囲われた湾曲凹部で聞き手の耳介を覆うようにすれば、聞き手側の焦点(例えば第2の焦点)と聞き手の耳介が適度に近接することから、会話補助装置を使用する際の話し手と聞き手の位置決めを容易に行うことができる。
【0029】
なお、それぞれの頂点距離が5cmを超えた場合には、反射板の回転軸上における頂点、及び頂点付近で囲われた湾曲凹部から焦点が大きく外れているために、話し手の口元や聞き手の耳介を置く位置の目安が曖昧となり、話し手の口元や聞き手の耳介の位置が焦点と一致し難くなるため、会話補助装置の集音効果を充分に発揮できない虞がある。
【0030】
また、楕円の短軸長さが5cm以上である場合には、反射板の面積が適度に大きくなり、会話補助装置の集音効果を高めることができる。
【0031】
なお、楕円の短軸長さが5cmよりも短くなると、反射板の面積が小さくなり、会話補助装置の集音効果が低下する。さらに、反射板の形状として、楕円曲面の回転軸を横切る切断面で切断した部分楕円面から構成される場合、切断面の開口面積が小さくなるため、例えば話し手が切断面に向かって話し掛ける際に、反射板を構成する部分楕円曲面の湾曲凹部内に音波が伝播しづらくなるとともに、切断面の周囲に唾液が付着しやすくなり衛生的にも好ましくないものとなる。
【0032】
また、反射板は、対象点を焦点とする放物線の対称軸を回転軸として、放物線を回転させて得られる放物曲面の回転軸を通る切断面で分離した一方の面で形成された部分放物曲面である場合には、例えば放物曲面の回転軸上に音源となる話し手の口元が存在すれば、話し手と聞き手の距離に関係なく、話し手から発せられた音波を聞き手の耳介に確実に集音させることができる。
【0033】
また、部分放物曲面が、一方向に開放された略湾曲凹状であることから、反射板の内面に汚れが付着したとしても、清掃が容易であるため衛生的である。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る会話補助装置は、会話時の声を第三者に聞かれることなく、確実に会話の相手にのみ会話内容を伝達することができるととともに、簡素な構造により低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の第1の実施形態に係る会話補助装置を示す図であり、(a)、(b)は会話補助装置の全体外観図、(c)は反射板の設計方法を示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る会話補助装置の使用状態を示す図である。
図3】本発明の第2の実施形態に係る会話補助装置の全体外観図である。
図4】本発明の第3の実施形態に係る会話補助装置を示す図であり、(a)は会話補助装置の使用状態を示す図、(b)、(c)は会話補助装置の全体外観図である。
図5】本発明の第4の実施形態に係る会話補助装置を示す図であり、(a)は会話補助装置の全体外観図、(b)は反射板の設計方法を示す図、(c)は会話補助装置の使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、会話補助装置に関する本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
【0037】
[実施例1]
まず、本発明の第1の実施形態に係る会話補助装置1について図1を用いて説明する。会話補助装置1は、繊維強化プラスチック(FRP)材からなり、図1(a)、(b)に示すように、一方向が開口された略湾曲凹状の部分楕円曲面から構成された反射板2と、会話補助装置1にて対話者同士が会話をする際に、話し手Aと聞き手Bの一方が把持して会話補助装置1を所定の位置に保持するための把持部3から主に構成されている。
【0038】
ここで、必ずしも、把持部3を備えている必要はない。但し、会話補助装置1は楕円曲面の一部を切り取った部分楕円曲面からなる略湾曲凹状であるため、会話補助装置1の使用時における操作性や携帯性が悪い。そのため、把持部3を備えることにより、会話補助装置1の使用時の操作性が向上するとともに、持ち運び時の携帯性も向上する。さらには、収納時の支持部材としも機能することから、把持部3は備えていることが好ましい。
【0039】
また、必ずしも、反射板2は繊維強化プラスチック材から構成されている必要はない。例えば、樹脂材、金属材、ガラス材、木材等、公知の材料から適宜選択することができるものであって、その素材については特に限定されるものではない。
【0040】
図1(c)は、実施例1に係る会話補助装置1を構成する反射板2の設計方法を示す図である。反射板2は、図1(c)に示すように、第1の焦点F1と第2の焦点F2とする楕円の長軸からなる対称軸を回転軸Rとして回転させた楕円曲面Eであって、回転軸Rを通る切断面Sで切断した一方の部分楕円曲面EPから構成されている。
【0041】
このとき、楕円曲面Eの基準となる楕円は、第1の焦点F1と第2の焦点F2の回転軸R上における焦点間距離L1が略20cm〜60cm、第1の焦点F1と第1の焦点F1側の楕円の頂点T1との回転軸R上における頂点距離L2、及び第2の焦点F2と第2の焦点F2側の楕円の頂点T2との回転軸R上における頂点距離L3がそれぞれ略5cm以下、短軸長さL4が略5cm以上、短軸長さL4の2分の1の長さが焦点間距離L1の3分の1以下の長さの範囲に設定された楕円に基づき楕円曲面Eが構成されている。
【0042】
ここで、必ずしも、楕円曲面Eの基となる楕円として、焦点間距離L1が略20cm〜60cmの範囲内で構成される必要はない。例えば、焦点間距離L1が20cmよりも短く、また60cmよりも長くなるように構成されていてもよい。
【0043】
但し、焦点間距離L1が略20cmよりも短くなると、会話補助装置1の使用時における話し手Aと聞き手Bの対話距離が近接し、会話者同士間において適度な距離を保つことができず、話し手Aが会話時に不自然な姿勢を強いられることになる。
【0044】
一方、焦点間距離L1が略60cmより長くなると、会話補助装置1の全体が楕円の長軸方向に長くなって大型化し、重量も増えるため、携帯性、及び使用時の操作性が悪化するとともに、収納する際のスペース確保が困難なものとなる。
【0045】
また、必ずしも、楕円曲面Eの基となる楕円として、頂点距離L2(L3)が5cm以下となるように構成されている必要はない。例えば、5cmを超えるように構成されていてもよい。
【0046】
但し、例えば頂点距離L2(L3)が5cmを超えた場合には、反射板の回転軸上における頂点、及び頂点付近で囲われた湾曲凹部から焦点が大きく外れているために、話し手Aの口元や聞き手Bの耳介を置く位置の目安が曖昧となり、話し手Aの口元や聞き手Bの耳介の位置が焦点と一致し難くなるため、会話補助装置の集音効果を充分に発揮できない虞がある。
【0047】
また、必ずしも、短軸長さL4の2分の1の長さが焦点間距離L1の3分の1以下の長さの範囲に設定されている必要はない。例えば、短軸長さL4の2分の1の長さが焦点間距離L1の3分の1を超える長さで構成されていてもよい。
【0048】
但し、例えば短軸長さL4の2分の1の長さが焦点間距離L1の3分の1を超えた場合には、楕円の長軸長さと短軸長さの比率が略同じとなる円形に近い形状となる。そのため、反射板2が話し手Aの口元から聞き手Bの耳介まで大きな弧を描いたような形状となるため、会話補助装置1の操作性が悪化するとともに、収納時の安定性にも欠けたものとなる。
【0049】
また、必ずしも、楕円曲面Eの基となる楕円として、短軸長さL4が略5cm以上となるように構成されている必要はない。例えば、短軸長さL4として5cmよりも短くなるように構成されていてもよい。但し、短軸長さL4として5cmよりも短くなる場合には、反射板2の総面積が小さくなり、会話補助装置1の集音効果が低下するため、集音効果を高めるという観点からは、短軸長さL4は5cm以上であることが好ましい。
【0050】
表1は、縦軸に焦点間距離L1、横軸に頂点距離L2(L3)とした場合の楕円の短軸長さL4の変化を示すテーブルデータである。
【0051】
[表1]
【0052】
前記した条件、即ち、焦点間距離L1が略20cm〜60cm、頂点距離L2(L3)が略5cm以下、短軸長さL4が略5cm以上、短軸長さL4の2分の1の長さが焦点間距離L1の3分の1以下の長さの範囲、これら全てを満たす条件が、表1における点線で囲った部分に表1の行および列が直交するような焦点距離L1と頂点距離L2、L3の組合せとなる。即ち、これを満たす焦点距離L1と頂点距離L2(L3)の組み合わせにより設定された楕円を基準として反射板2を設計すると、会話補助装置1を使用する際の話し手Aと聞き手Bの距離が適度に保てるとともに、操作性、及び携帯性に優れた会話補助装置1とすることができる。
【0053】
以上のように構成された会話補助装置1は、例えば図2に示すように、対話者の一方である話し手Aが把持部3を把持し、反射板2の第2の焦点F2付近を聞き手Bの耳介付近に位置させる。この状態で、話し手Aは第1の焦点F1に口元を置いて話し掛けると、音源としての話し手Aの口元から発せられた音波は、反射板2で反射され、第2の焦点F2付近にある聞き手Bの耳介に集音させることができる。
【0054】
[実施例2]
実施例2に係る発明について図3に基づき説明する。なお、実施例1と共通する部分についてはその説明を省略する。実施例2に係る会話補助装置1を構成する反射板2も、実施例1と同様に、第1の焦点F1と第2の焦点F2とする楕円の長軸からなる対称軸を回転軸Rとして回転させた楕円曲面Eであって、回転軸Rを通る切断面Sで切断した一方の部分楕円曲面EPから構成され、さらに切断面Sによる断面視において反射板2の短手方向の両端部が長軸方向に沿って切り欠かれた形状となっている。
【0055】
このように、反射板2の短手方向の両端部を長軸方向に沿って部分的に切り欠くことにより、会話補助装置1の軽量化を行えるため、会話時の操作性が向上するとともに、携帯性にも優れ、さらには省スペース内に収納することができる。
【0056】
また、反射板2の短手方向の両端部を切り欠いても、第1の焦点F1と第2の焦点F2を含む長軸方向に沿って一定の反射面積を有することから、音波の反射範囲に大きな影響を与えないため、実施例1と同様の集音効果を発揮することができる。
【0057】
ここで、必ずしも、反射板2の短手方向の両端部を切り欠く必要はない。例えば、一方の端部のみを切り欠くようにしてもよい。
【0058】
[実施例3]
実施例3に係る発明について図4に基づき説明する。なお、実施例1と共通する部分についてはその説明を省略する。実施例3に係る会話補助装置1は、図4に示すように、第1の焦点F1と第2の焦点F2が反射板2の外側に位置して、一部が断面略湾曲凹状となるように、切断面で切断された部分楕円曲面EPから構成されている。
【0059】
なお、実施例3に係る反射板2を構成する楕円曲面Eの基準となる楕円は、表1に記載の通りである。即ち、焦点間距離L1が略20cm〜60cm、頂点距離L2(L3)が略5cm以下、短軸長さL4が略5cm以上、短軸長さL4の2分の1の長さが焦点間距離L1の3分の1以下の長さの範囲に設定された楕円を基準として反射板2が設計される。
【0060】
実施例3に係る反射板2は、前記のように構成された楕円曲面Eの第1の焦点F1と第2の焦点F2との中点Oを基準として、中点Oから第1の焦点F1までの間であって回転軸Rと略垂直に交差する第1の切断面S1と、中点Oから第2の焦点F2までの間であって回転軸Rを横切る第2の切断面S2によって切断された部分楕円曲面EPから構成されている。
【0061】
ここで、必ずしも、第1の切断面S1は回転軸Rと略垂直に交差する必要はなく、回転軸Rと所定の角度で交差すればよい。但し、第1の切断面S1が回転軸Rと略垂直に交差する場合には、第1の切断面S1により切断された切断面には、回転軸Rに対して垂直な円形の開口部4が形成される。このとき、第1の切断面S1により形成された開口部4を話し手A側とすると、話し手Aは、開口部4に向かって会話をすることができるため、話し手Aは聞き手Bの方を向いた自然な体勢での会話を行うことができる。
【0062】
さらに、中点Oと第1の焦点F1間に開口部4が位置するため、話し手Aが開口部4の近傍に口元を近づけると、必然的に話し手Aの口元が第1の焦点F1付近に位置することから、話し手Aから発せられた音波は反射板2内で反射して、第2の焦点F2にて確実に集音させることができる。
【0063】
また、必ずしも、反射板2の一部は断面略湾曲凹状とする必要はない。例えば、反射板2の全体が筒状となっていてもよい。但し、反射板2の一部が断面略湾曲凹状となっていることにより、例えば、反射板2の内部に唾液等の汚れが付着した場合でも、清掃が容易に行うことができる。従って、衛生上の観点からは、反射板2の一部が断面略湾曲凹状となっていることが好ましい。
【0064】
また、必ずしも、第2の切断面S2は、図4(a)に示すように、回転軸Rに対して聞き手B側に鋭角な角度で交差する切断面である必要はない。例えば第1の切断面S1と同様に、回転軸Rに対して垂直な切断面となるように第2の切断面S2を設定してもよい。
【0065】
但し、第2の切断面S2を回転軸Rに対して聞き手B側に鋭角な角度となるように交差する断面で切断することにより、例えば、第2の切断面S2による切断面側を聞き手B側とすると、聞き手Bの耳介と接する部分が切り欠かれた形状となる。従って、聞き手Bの耳介を含む顔側面に会話補助装置1を密着させる必要がないため衛生的であるとともに、会話補助装置1の端面で聞き手Bの顔側面を傷付ける等の怪我をさせることを回避することができる。
【0066】
[実施例4]
実施例4に係る発明について図5に基づき説明する。なお、実施例1と共通する部分についてはその説明を省略する。実施例4に係る会話補助装置1は、図5(a)に示すように、断面略湾曲凹状の反射板2と、反射板2の一部に形成された開口部よりなる把持部3から構成されている。
【0067】
ここで、必ずしも、把持部3を備えている必要はない。但し、会話補助装置1は放物曲面Cの一部を切り取った部分放物曲面CPからなる略湾曲凹状であるため、会話補助装置1の使用時における操作性や携帯性が悪い。そのため、把持部3を備えることにより、会話補助装置1の使用時の操作性が向上するとともに、持ち運び時の携帯性も向上するため、把持部3は備えていることが好ましい。
【0068】
また、必ずしも、把持部3は反射板2の一部に形成された開口部である必要はない。例えば、反射板2の外側面に別体で取り付ける形態であってもよい。
【0069】
反射板2は、図5(b)に示すように、焦点Fに基づく放物線の対称軸を回転軸Rとして回転させた放物曲面Cであって、回転軸Rを通る切断面Sで切断した一方の部分放物曲面CPから構成されている。
【0070】
ここで、必ずしも、反射板2は、回転軸Rを通る切断面Sで切断した一方の部分放物曲面CPから構成されている必要はない。例えば、部分放物曲面CPの開放端面の一部を切り欠いた形状であってもよい。
【0071】
このように構成された反射板2を備える会話補助装置1は、図5(c)に示すように、焦点F近傍が聞き手Bの耳介付近に対応するように、例えば話し手Aが把持部3を把持した状態で会話補助装置1の位置調整を行い、聞き手Bに向かって会話をすることにより、話し手Aから発せられる音波は反射板2で反射され、聞き手Bの耳介付近に集音させることができる。
【0072】
以上、本発明に係る会話補助装置は、会話時の声を第三者に聞かれることなく、確実に会話の相手にのみ会話内容を伝達することができるととともに、簡素な構造により低コストで製造することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 会話補助装置
2 反射板
3 把持部
4 開口部
A 話し手
B 聞き手
C 放物曲面
CP 部分放物曲面
E 楕円曲面
EP 部分楕円曲面
F 焦点
F1 第1の焦点
F2 第2の焦点
L1 焦点間距離
L2、L3 頂点距離
L4 短軸長さ
O 中点
R 回転軸
S 切断面
S1 第1の切断面
S2 第2の切断面
T1、T2 頂点
【要約】
【課題】会話時の声を第三者に聞かれることなく、確実に会話の相手にのみ会話内容を伝達することができるととともに、簡素な構造により低コストで製造することができる会話補助装置を提供することを目的とする。
【解決手段】会話補助装置1は、反射板2、把持部3から構成されている。反射板2は第1の焦点F1と第2の焦点F2とする楕円の長軸からなる対称軸を回転軸Rとして回転させた楕円曲面Eであって、回転軸Rを通る切断面Sで切断した一方の部分楕円曲面EPから構成されている。反射板2は、焦点間距離L1が20cm〜60cm、頂点距離L2(L3)が5cm以下、短軸長さL4が5cm以上、短軸長さL4の2分の1の長さが焦点間距離の3分の1以下の長さの範囲となる楕円を基準として設計される。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5