(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記任意の不規則な凹凸形状が平面上に形成された凹凸形状であり、光学特性を調整した凹凸パターンを含む形状を形成する工程が、光学部材用の凹凸パターン形成シートの曲面上に光学特性を調整した凹凸パターンを含む形状を形成する工程である請求項1に記載の光学部材用の凹凸パターン形成シートの製造方法。
前記光学部材用の凹凸パターン形成シートの凹凸パターンの最頻ピッチが1〜500μm、アスペクト比が0.1〜3.0となるように凹凸パターンを含む形状を形成する請求項1または2に記載の光学部材用の凹凸パターン形成シートの製造方法。
前記光学特性を調整した凹凸パターンを含む形状を形成する工程が、全光線透過率85%以上の樹脂を印刷することにより前記光学特性を調整した凹凸パターンを含む形状を形成する工程である請求項1〜4のいずれかに記載の光学部材用の凹凸パターン形成シートの製造方法。
前記光学特性を調整した凹凸パターンを含む形状を形成する工程が、基材を切削することにより前記光学特性を調整した凹凸パターンを含む形状を形成する工程である請求項1〜3のいずれかに記載の光学部材用の凹凸パターン形成シートの製造方法。
前記光学特性を調整した凹凸パターンを含む形状を形成する工程が、基材上にフォトレジスト層を積層する工程、前記光学特性を調整した凹凸パターンの3次元の数値情報を元に、フォトレジスト層上に、露光位置および露光量が制御されたレーザー光を照射する工程、前記フォトレジスト層を現像してマスクパターンを形成する工程、および前記マスクパターンを介して前記基材をエッチングすることにより、光学特性を調整した凹凸パターンを含む形状を形成する工程を含む請求項1〜3のいずれかに記載の光学部材用の凹凸パターン形成シートの製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(任意の不規則な凹凸形状)
本発明においては、任意の不規則な凹凸形状の表面の位置情報を計測して3次元の数値情報を得る。表面の位置情報を計測する凹凸形状は、製造する光学部材用の凹凸パターン形成シートに求められる性能に合わせて適宜選択される。
【0008】
前記光学部材用の凹凸パターン形成シートの凹凸パターンの大きさは、特に限定するものではないが、本発明の製造方法は、凹凸パターン最頻ピッチが1〜500μm、アスペクト比が0.1〜3の範囲の凹凸パターンを形成するのに適した製造方法である。
【0009】
例えば、本発明の光学部材用の凹凸パターン形成シートを光拡散体として製造する場合は、所望の光拡散性を有することが予めわかっている凹凸形状の表面の位置情報を計測する。
凹凸形状が規則構造である場合は、印刷パターンを単純な数値制御により形成できるため、本発明のような方法を採用することは必要ないが、例えば、不規則な凹凸形状であって、特定の効果を奏する凹凸形状であるが、どのような要因で効果を奏するのか判明しない場合または判明することが困難な場合、本発明の方法が有効である。
特定の効果を奏する凹凸形状の一例として光拡散機能を有する凹凸形状を以下に示す。
【0010】
(光拡散機能を有する凹凸形状)
図1、
図2及び
図3に、光拡散機能を有する凹凸形状の一例を示す。
図1は、光拡散機能を有する凹凸形状の一例を示す拡大斜視図である。
図2は、光拡散機能を有する凹凸パターンの断面の模式図である。
図3は、光拡散機能を有する光学部材用の凹凸パターン形成シートの表面顕微鏡写真である。
【0011】
凹凸形状12aは、表面から見た場合、略一方向に延在しているが蛇行しており、また、凹凸形状12aの延在方向と直交する断面から見た場合、波状の形状である。
また、断面から見た場合、硬質層12は全体が折れ曲がるように変形しており、加熱収縮性フィルム11の表面は硬質層12の変形に追従するように変形している。
【0012】
凹凸形状12aの最頻ピッチAは1μmを超え20μm以下であることが好ましい。最頻ピッチAが1μm未満であると、凹凸形状物10の製造が困難になり、前記上限値を超えると、凹凸形状物10の製造が困難になる場合があるからである。
【0013】
凹凸形状12aの最頻ピッチAに対する凹凸形状12aの平均深さBの比(B/A、以下、アスペクト比という。)は0.1〜3.0であることが好ましく、0.3〜1.0であることがより好ましい。アスペクト比が0.1未満であると、凹凸形状物10の製造にて凹凸形状12aを表面全面に形成しにくくなる傾向がある。一方、アスペクト比が3.0より大きくなると、凹凸形状物10の製造において凹凸形状12aを形成しにくくなる傾向にある。
ここで、平均深さBとは、凹凸形状の底部12bの平均深さのことである。
【0014】
また、底部12bとは、凹凸形状12aの凹部の極小点であり、平均深さBは、凹凸形状12aを凹凸の延在方向と直交する方向に沿って切断した断面(
図2参照)を見た際の、凹凸形状物10全体の面方向と平行な基準線L
1から各凸部の頂部までの長さB
1,B
2,B
3・・・の平均値(B
AV)と、基準線L
1から各凹部の底部までの長さb
1,b
2,b
3・・・の平均値(b
AV)との差(b
AV−B
AV)のことである。
平均深さBを測定する方法としては、原子間力顕微鏡により撮影した凹凸形状12aの断面の画像にて各底部の深さを測定し、それらの平均値を求める方法などが採られる。
【0015】
最頻ピッチAを求めるためには、まず、表面光学顕微鏡により凹凸形状12aの上面を撮影し、その画像をグレースケールのファイル(例えば、tiff形式等)に変換する。グレースケールのファイルの画像(
図3参照)では、白度が低いところ程、凹部の底部が深い(白度が高いところ程、凸部の頂部が高い)ことを表している。次いで、グレースケールのファイルの画像をフーリエ変換する。
図4にフーリエ変換後の画像を示す。
図4の画像の中心から両側に広がる白色部分は凹凸形状12aのピッチおよび向きの情報が含まれる。
次いで、
図4の画像の中心から水平方向に補助線L
2を引き、その補助線上の輝度をプロット(
図5参照)する。
図5のプロットの横軸はピッチの逆数を、縦軸は頻度を表し、頻度が最大となる値Xの逆数1/Xが凹凸形状12aの最頻ピッチを表す。
【0016】
(凹凸パターンの配向度)
前記凹凸パターンの配向度を0.2以上0.8以下、より好ましくは0.25以上0.40以下とすることで、前記凹凸パターンを、異方性を有する光拡散構造とすることもできる。前記凹凸パターンの配向度が0.2未満であると顕著な異方性を有する光拡散構造が得られない、前記凹凸パターンの配向度が0.8を超えると拡散された拡散した光の均一性が低下する場合がある。
【0017】
(配向度の測定方法)
本発明の凹凸パターンとしては、凹凸パターン12aがある程度蛇行して、隣り合った凸部同士のピッチが凹凸パターン12aの方向に沿ってばらついていることが好ましい。ここで、凹凸パターン12aの配向のばらつきのことを配向度という。配向度が大きいほど、配向がばらついている。この配向度は、以下の方法で求められる。
【0018】
まず、表面光学顕微鏡により凹凸パターンの上面を撮影し、その画像をグレースケールのファイル(例えば、tiff形式等)に変換する。グレースケールのファイルの画像(
図3参照)では、白度が低いところ程、凹部の底部が深い(白度が高いところ程、凸部の頂部が高い)ことを表している。次いで、グレースケールのファイルの画像をフーリエ変換する。
図4にフーリエ変換後の画像を示す。
図4の画像の中心から両側に広がる白色部分は凹凸パターン12aのピッチおよび向きの情報が含まれる。
【0019】
次いで、
図4の画像の中心から水平方向に補助線L2を引き、その補助線上の輝度をプロット(
図5参照)する。
図5のプロットの横軸はピッチを、縦軸は頻度を表し、頻度が最大となる値Xが凹凸パターン12aの最頻ピッチを表す。
【0020】
次いで、
図4において、補助線L2と値Xの部分にて直交する補助線L3を引き、その補助線L3上の輝度をプロット(
図6参照)する。ただし、
図6の横軸は、各種の凹凸構造との比較を可能にするため、Xの値で割った数値とする。
図6の横軸は、凹凸の形成方向(
図3における上下方向)に対する傾きの程度を示す指標(配向性)を、縦軸は頻度を表す。
図6のプロットにおけるピークの半値幅W1(頻度が最大値の半分になる高さでのピークの幅)が凹凸パターンの配向度を表す。半値幅W1が大きい程、蛇行してピッチがばらついていることを表す。
【0021】
(光拡散機能を有する凹凸形状の製造方法の一例)
凹凸形状物10の製造方法は、特許第5098450号公報に記載の方法が適用できる。
凹凸形状物10は、樹脂製の基材である加熱収縮性フィルム11aの片面に、表面が平滑な硬質層13(以下、表面平滑硬質層13という。)を設けて積層シート10aを形成する工程(以下、第1の工程という。)と、加熱収縮性フィルム11aを加熱収縮させて、積層シート10aの少なくとも表面平滑硬質層13を折り畳むように変形させる工程(以下、第2の工程という。)と、を有する方法により形成することができる。ここで、表面平滑硬質層13とは、JIS B0601に記載の中心線平均粗さ0.1μm以下の層である。
【0022】
加熱収縮性フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系収縮フィルム、ポリスチレン系収縮フィルム、ポリオレフィン系収縮フィルム、ポリ塩化ビニル系収縮フィルム、ポリカーボネート系収縮フィルムなどを用いることができる。
加熱収縮性フィルムの中でも、50〜70%収縮するものが好ましい。50〜70%収縮する加熱収縮性フィルムを用いれば、変形率を40%以上にでき、凹凸パターン12aの最頻ピッチAが1μmを超え20μm以下、アスペクト比0.1以上の凹凸形状物10を容易に製造できる。
ここで、変形率とは、(変形前の長さ−変形後の長さ)/(変形前の長さ)×100(%)のことである。
【0023】
また、硬質層12が、樹脂の場合、加熱収縮性フィルムを構成する樹脂(以後、第1の樹脂とも言う。)より、ガラス転移温度が10℃以上高い樹脂(以後、第2の樹脂とも言う。)を少なくとも一種を含むように構成する。第1の樹脂のガラス転移温度と第2の樹脂のガラス転移温度の関係にあることにより、凹凸パターン12aの最頻ピッチAを、確実に1μmを超え20μm以下にできる。
【0024】
第2の樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂などを使用することができる。
また、硬質層12が、金属及び金属化合物の場合、硬質層12を、金、アルミニウム、銀、炭素、銅、ゲルマニウム、インジウム、マグネシウム、ニオブ、パラジウム、鉛、白金、シリコン、スズ、チタン、バナジウム、亜鉛、ビスマスよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属で構成することが好ましい。
【0025】
また、硬質層12を、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化銅、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化鉛、酸化ケイ素、フッ化バリウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、硫化亜鉛、ガリウムヒ素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物で構成することも可能である。
【0026】
(3次元の数値情報を得る工程)
本発明の製造方法においては、前記任意の不規則な凹凸形状の表面を原子間力顕微鏡などで計測することにより、3次元の数値情報、例えば、X軸方向の数値情報、Y軸方向の数値情報、及びZ軸方向の数値情報を得る。
【0027】
(3次元の数値情報を電子的情報として格納する工程)
次に3次元の数値情報を電子的情報として格納する、電子的情報は、前記電子的情報を元にシート状基材の表面に前記凹凸形状を基本とした凹凸パターンを含む形状を形成する工程において制御データとして使用できる任意の形式で保管すれば良く、記録媒体は、例えば、半導体メモリ、ハードディスク、磁気記録ディスク、光ディスクなど、利用しやすい媒体を適宜選択して使用可能である。
【0028】
(光学特性を調整した凹凸パターンを含む形状を形成する工程)
前記光学特性を調整した凹凸パターンの3次元の数値情報を元に、光学特性を調整した凹凸パターンを含む形状を形成する工程では、電子的情報により制御された機械によって、前記凹凸形状を基本とした凹凸パターンをシート状基材の表面に形成する。
【0029】
具体的には、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷などの印刷により前記凹凸パターンを含む形状を形成する方法、3次元切削機械による基材の切削により前記凹凸パターンを含む形状を形成する方法などが挙げられる。
【0030】
印刷の中でもインクジェットにより樹脂を基材表面に付着させて凹凸パターンを形成する方法は、1μm以下の単位で凹凸パターンの形状を制御でき、且つ凹凸パターンのアスペクト比の制御ができるため好ましい。
【0031】
前記光学特性を調整した凹凸パターンを含む形状は以下のようにして形成できる。
前記任意の不規則な凹凸形状前記X軸方向の数値情報、Y軸方向の数値情報、及びZ軸方向の数値情報の内、少なくとも1つの数値情報を拡大または縮小することによって、光学特性を調整した凹凸パターンを表す電子的情報を作成する。その電子的情報により制御された機械によって、光学特性を調整した凹凸パターンを形成する。
【0032】
或いは、前記3次元の数値情報を得る工程において得られた3次元の数値情報の内、特定の光学特性を示す部分を抽出し、前記特定の光学特性を示す部分を1次元または2次元に繰り返すように組み合わせることによって作成された凹凸パターンを表す電子的情報を作成する。その電子的情報により制御された機械によって、光学特性を調整した凹凸パターンを形成する。
【0033】
前記特定の光学特性を示す部分とは、例えば、不規則な凹凸形状を表面に有するサンプルを10mm×10mmの区画に区切り、その区画の光学特性(例えば、光拡散角度、光反射特性、意匠性など)を測定したとき、優れた光学特性を示す区画である。
前記特定の光学特性を示す部分の1つを1次元的または2次元的に繰り返すように組み合わせても良いし、2つ以上の異なる特定の光学特性を示す部分を1次元的または2次元的に繰り返すように組み合わせても良い。また前記凹凸形状を基本とした凹凸パターンを一部分として含み、残りの部分が、規則的凹凸形状や平坦部としてもよい。
【0034】
前記特定の光学特性を示す部分を1次元的または2次元的に繰り返すように組み合わせることによって、計測データの容量が膨大になることによりデータ処理が困難になることを防ぐことができる。更に、前記特定の光学特性を示す部分が、小面積でしか得られない場合であっても、1次元的または2次元的に繰り返すように組み合わせることによって、大面積の特定の効果を奏する凹凸形状を得ることが可能となる。
【0035】
前記特定の光学特性を示す部分を1次元的または2次元的に繰り返すように組み合わせる場合、繰り返し単位の境界線が明確に現れると、光学特性が損なわれる場合がある。このような場合は、繰り返し単位の境界付近の形状が滑らかに変化するように前記3次元の数値情報を加工することが好ましい。
【0036】
前記任意の不規則な凹凸形状の前記X軸方向の数値情報、Y軸方向の数値情報、及びZ軸方向の数値情報の内、少なくとも1つの数値情報を拡大または縮小した3次元の数値情報から凹凸パターンを作成しても良い。
【0037】
例えば、
図1に示した凹凸パターンにおいて、1方向に対して所望する光拡散角度が足りない場合、その方向に沿って凹凸パターンを縮小変形することによって、光拡散角度を広げることができる。
例えば、
図1に示した凹凸パターンにおいて、1方向に対して光拡散角度が大き過ぎる場合、その方向に沿って凹凸パターンを拡大変形することによって、光拡散角度を狭めることができる。
【0038】
前記任意の不規則な凹凸形状が平面上に形成された凹凸形状であり、光学部材用の凹凸パターン形成シートが曲面を有している場合は、前記3次元の数値情報に光学部材用の凹凸パターン形成シートが有する曲面のベースラインの数値情報を足して、前記曲面にフィットした凹凸形状を形成することもできる。
しかし、曲面のベースラインの数値情報を足しただけでは、凹凸形状が面の傾きにより歪曲してしまい、平面上に形成された元の凹凸形状の光学特性が保てない場合がある。
このような場合は、曲面を含む仮想球の中心点から出る光により、平面上に形成された凹凸形状を前記曲面上に投影したと仮定して、凹凸形状の3次元の数値情報を計算し、曲面上の凹凸形状を決定することによって、凹凸形状の歪曲を抑えることができる。この方法では、凹凸形状が曲面上に拡大投影されるため、所望する大きさに調整するため、平面上に形成された凹凸形状を予め縮小しておくこともできる。
【0039】
また、前記Z軸方向の数値情報に−1を乗じて、前記任意の不規則な凹凸形状をZ軸方向に反転させた凹凸パターンを作成しても良い。
【0040】
光拡散体として本発明の光学部材用の凹凸パターン形成シートを製造する場合は、拡散したい光の波長に合わせて、最頻ピッチの凹凸パターンの数値情報を拡大または縮小して最適な光拡散特性を有する光拡散体を得ることができる。
【0041】
光反射防止構造として本発明の光学部材用の凹凸パターン形成シートを製造する場合は、可視光の波長以下の最頻ピッチの凹凸パターンとなるように数値情報を縮小することができる。
【0042】
導光モード光の光取出し構造として本発明の光学部材用の凹凸パターン形成シートを製造する場合は、取出したい光の波長に合わせて、最頻ピッチの凹凸パターンの数値情報を拡大または縮小して最適な光拡散特性を有する光拡散体を得ることができる。
【0043】
前記Z軸方向の数値情報を拡大、または縮小することによって、上記、光拡散体、光反射防止構造、光取出し構造の効果を最適化することも可能である。
【0044】
前記Z軸方向の数値情報の拡大または縮小倍率は好ましくは0.01倍〜100倍でありより好ましくは0.1倍〜50倍である。拡大または縮小倍率が前記範囲外になると、印刷技術での凹凸パターン形成が困難になる場合がある。
【0045】
前記X軸方向の数値情報、Y軸方向の数値情報をそれぞれ別の比率で拡大または縮小することによって変形させ、光学的な異方性が調整された光拡散体を得ることも可能である。
【0046】
前記X軸方向の数値情報、Y軸方向の数値情報の拡大または縮小倍率は好ましくは0.01倍〜100倍でありより好ましくは0.1倍〜50倍である。拡大または縮小倍率が前記範囲外になると、印刷技術での凹凸パターン形成が困難になる場合がある。
【0047】
前記3次元の数値情報から、X軸方向の断面形状データを抽出し、該断面形状データのY軸方向への繰り返しデータを作成して、基材表面に単位断面パターンがY軸方向に延在するように凹凸パターンを形成してもよい。また、任意の不規則な凹凸形状が一方向に沿った波状の凹凸パターンである場合、凹凸パターンの最頻ピッチ情報を元に、前記一方向に沿った波状の凹凸パターンに近似した凹凸パターンを形成することも可能となる。
これらの方法によれば、計測データの容量が膨大になることによりデータ処理が困難になることを防ぐことができる。
【0048】
光拡散体などの光透過性を要求される光学部材として、本発明の凹凸パターン形成シートを製造する場合は、基材として透明性の高い材料を用いることが好ましい。透明性の高い材料としては、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ウレタン樹脂、塩化ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂などの樹脂、ガラスなどが挙げられる。
【0049】
光拡散体などの光透過性を要求される光学部材として、本発明の凹凸パターン形成シートを製造する場合は、前記凹凸パターンを形成する材料として透明性の高い材料を用いることが好ましく、JIS K 7361−1で規定された全光線透過率が85%以上の材料を用いることが好ましい。透明性の高い材料としては、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ウレタン樹脂、塩化ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂などの樹脂、ガラスなどが挙げられる。
【0050】
本発明の製造方法により得られた光学部材用の凹凸パターン形成シートをインプリント用の母型、または、射出成型用の母型として製造する態様も本発明は包含する。
ここで、前記光学部材用の凹凸パターン形成シートをインプリント用または射出成型用の母型として製造する、とは、前記光学部材用の凹凸パターン形成シートそのものを型としてインプリントまたは射出成型を行う場合、および前記光学部材用の凹凸パターン形成シートの凹凸パターンが転写されたニッケルモールド等の二次転写型を用いてインプリントまたは射出成型を行う場合を含む。
【0051】
前記光学特性を調整した凹凸パターンを含む形状を切削により形成して前記母型を形成すれば、母型として必要な強度、耐熱性などを有する材料を切削加工可能な無機、有機の既知のあらゆる材料から選択できる。母型として必要な強度、耐熱性などを有する材料としては、金属、金属化合物、硬質プラスチック、セラミクス等が挙げられる。
【0052】
或いは、以下のようなエッチング法により得られた光学部材用の凹凸パターン形成シートを母型として用いることもできる。
即ち、基材上にフォトレジスト層を積層する工程、前記光学特性を調整した凹凸パターンの3次元の数値情報を元に、前記フォトレジスト層上に、露光位置および露光量が制御されたレーザー光を照射し、前記フォトレジスト層上の位置によってフォトレジスト層の現像液に対する溶解性が異なるマスクパターンを形成する工程、前記マスクパターンを現像する工程、および前記マスクパターンを介して前記基材をエッチングすることにより、光学特性を調整した凹凸パターンを含む形状を形成する工程を含むエッチング法である。
基材としては、エッチング可能な無機、有機の既知の材料を用いることができる。
前記基材上にフォトレジスト層を積層する方法としては、例えばフォトレジスト液を基材上に塗布、乾燥または固化する方法が挙げられる。
前記光学特性を調整した凹凸パターンの3次元の数値情報を元に、前記フォトレジスト層上に、露光位置および露光量が制御されたレーザー光を照射する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0053】
フォトレジスト層の表面を走査しながらレーザー光を照射する。
このとき、前記光学特性を調整した凹凸パターンの3次元の数値情報を元に、位置によってレーザー光による露光量を調整する。露光量を調整はレーザー光の強弱により行っても良いし、露光時間または露光回数により行っても良い。ここで使用されるフォトレジストは、ポジ型であってもネガ型であっても良い。フォトレジスト層上の基材面に平行な2次元平面位置の露光後のフォトレジストの現像液に対する溶解性を、前記光学特性を調整した凹凸パターンの3次元の数値情報の高さ情報に対応させる。
【0054】
このようにして露光処理を行ったフォトレジストを現像してフォトマスクを作成する。その後、洗浄して現像液を除去してから、エッチング処理によって凹凸パターン形成シートを得る。
エッチング処理は、腐食性ガス、イオンビーム、原子ビーム、粒子ビーム、プラズマ等によるドライエッチングであっても良いし、酸性溶液またはアルカリ性溶液によるウエットエッチングであっても良い。
【0055】
一方、前記光学特性を調整した凹凸パターンを含む形状をインクジェット方式のような印刷方式みより前記母型を形成した場合は、形成される凹凸パターンの耐熱性が低く、インプリントや射出成型に向かない場合がある。
このような場合は、前記光学部材用の凹凸パターン形成シートから直接転写して成型品を得るよりも、耐熱性樹脂やニッケルモールド等の二次転写型を用いて成型品を得ることが、型の耐久性が高くより多くの成型品を生産できることから望ましい。
【0056】
前記光学部材用の凹凸パターン形成シートの凹凸パターンを1回以上転写することにより前記凹凸パターンと同等の凹凸パターンを有する光拡散体などを製造することができる。
凹凸パターンの転写方法は、例えば特開2012−022292に記載された方法を使用することができる。
【0057】
前記光学部材用の凹凸パターン形成シートとしてロール状物を使用し、該ロール状物の曲面に前記凹凸パターンを形成すれば、連続シートや押出し樹脂板の表面に凹凸パターンを転写して光拡散シートなどを製造するためのロール状スタンパーとして使用することが可能である。
【0058】
前記光学部材用の凹凸パターン形成シートと同様に、前記任意の不規則な凹凸形状を2つ以上組み合わせることもでき、境界付近の形状が滑らかに変化するように前記3次元の数値情報を加工することにより、シームレスロールを製造することが可能となる。
【0059】
(光拡散体の拡散角度)
本発明の製造方法により、光拡散性の程度を表す指標である光拡散角度を、X軸およびY軸方向で自由にコントロールできる光拡散体を製造することが可能である。
【0060】
例えば光拡散機能を有する凹凸形状物凹凸パターンが、光拡散角度がX方向で5°、Y方向で30°の特性を有する場合、Z軸方向の数値情報(計測データ)を1より小さい倍率にした変形データを元に光拡散体を製造すれば、X軸およびY軸方向の光拡散角度を小さくすることができ、またZ軸方向の数値情報(計測データ)を1より大きい倍率にした変形データを元に光拡散体を製造すれば、X軸およびY軸方向の光拡散角度を大きくすることができる。
【0061】
X軸方向の数値情報(計測データ)を1より小さい倍率にした変形データを元に光拡散体を製造すれば、X軸方向の光拡散角度を大きくすることができ、X軸方向の数値情報(計測データ)を1より大きい倍率にした変形データを元に光拡散体を製造すれば、X軸方向の拡散角度を小さくすることができる。
【0062】
Y軸方向の数値情報(計測データ)を1より小さい倍率にした変形データを元に光拡散体を製造すれば、Y方向の光拡散角度を大きくすることができ、Y軸方向の数値情報(計測データ)を1より大きい倍率にした変形データを元に光拡散体を製造すれば、Y軸方向の光拡散角度を小さくすることができる。
【0063】
X軸、Y軸およびZ軸方向の数値情報(計測データ)を同一倍率にした変形データを元に光拡散体を製造すれば、拡散角度がX方向で5°、Y方向で30°であり、凹凸パターンがマスター凹凸パターンと相似である光拡散体を製造できる。このような方法により、印刷により形成される凹凸に適したサイズの凹凸パターンを有する光拡散体が製造できる。
【0064】
ここで拡散角度とは、光拡散体の凹凸パターンが形成されていない側の面から、シート面の法線方向に沿って測定光を入射させ、凹凸パターンが形成された面から出射させ、その照度を測定する際、シート面の法線方向(この方向を出光角度0°とする)における相対照度を1とした場合に相対照度が0.5以上となる±の角度範囲である。例えば、出光角度が±15°の範囲で相対照度が0.5以上である場合、拡散角度は30°となる。