(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6516987
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】振り子式ダンパ装置の取り付け方法
(51)【国際特許分類】
F16F 15/14 20060101AFI20190513BHJP
【FI】
F16F15/14 Z
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-169895(P2014-169895)
(22)【出願日】2014年8月22日
(65)【公開番号】特開2015-40631(P2015-40631A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2017年3月8日
(31)【優先権主張番号】1358154
(32)【優先日】2013年8月23日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】503041177
【氏名又は名称】ヴァレオ アンブラヤージュ
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100179338
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】レイ、マルク
(72)【発明者】
【氏名】ロエル、ベルオーグ
(72)【発明者】
【氏名】フランク、カイユレ
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル、エンヌベル
【審査官】
大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−217789(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/057440(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0150169(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振り子式のダンパ装置(1)の組立方法であって、支持体(2)に可動式に取り付けられた少なくとも1つの振り子式の質量体(3)を含み、前記質量体(3)が、支持体(2)の両側に配置された2つの部分(3a、3b)を含み、これらの部分が、支持体(2)の開口部(12)を貫通する少なくとも1つのスペーサ(17)によって接続され、転動体(15)が、前記スペーサ(17)と前記開口部(12)の縁との間に配置されている、方法において、
前記質量体(3)の第1の部分(3a)の開口部(26)にスペーサ(17)の第1の端部(17a)を圧力ばめするステップ(a)と、
前記スペーサ(17)が前記支持体(2)の対応する開口部(12)を貫通するように、前記支持体(2)を配置するステップ(b)と、
前記スペーサ(17)と前記支持体(2)の開口部(12)の縁との間に転動体(15)を配置するステップ(c)と、
前記質量体(3)の第2の部分(3b)の開口部(26)に前記スペーサ(17)の第2の端部(17b)を圧力ばめするステップ(d)と、
を含み、
前記スペーサ(17)の端部(17a、17b)は、それらが前記質量体(3)の部分(3a、3b)の外面(19)と同じ軸方向位置となるようにはめ込まれ、前記外面(19)とは、前記支持体(2)に向かい合った面と反対側の面である、方法。
【請求項2】
その後、前記スペーサの少なくとも1つの端部(17a、17b)が、前記質量体の部分(3a、3b)に溶接されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スペーサ(17)が、ガイドピン(39、40、41)を用いて、前記質量体(3)の第1の部分(3a)および/または前記質量体(3)の第2の部分(3b)に対して配置されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記質量体(3)の各部分(3a、3b)が、第1の台座(37)に対して、前記第1の台座(37)から突出する少なくとも1つの第1のガイドピン(39a、39b)を用いてガイドされることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記スペーサ(17)の第1の端部(17a)が、第1の台座(37)に対して、前記第1の台座(37)から突出する少なくとも1つの第2のガイドピン(40a、40b)を用いてガイドされることを特徴とする、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記スペーサ(17)の第2の端部(17b)が、第2の台座(38)に対して、前記第2の台座(38)から突出する少なくとも1つの第3のガイドピン(41a、41b)を用いてガイドされることを特徴とする、請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記スペーサ(17)の端部(17a、17b)は、前記質量体(3)の第1の部分(3a)と第2の部分(3b)とでそれぞれ支持される第1および第2の台座(37、38)の接近によって、前記質量体(3)のこれらの部分(3a、3b)の対応する開口部(26)に圧力ばめされることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第2のガイドピン(40a、40b)および/または第3のガイドピン(41a、41b)が、前記ステップ(a)とステップ(d)で、前記質量体(3)の対応する部分(3a、3b)の開口部を貫通することを特徴とする、請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記質量体(3)の各部分(3a、3b)が、半径方向内側の縁(20)と半径方向外側の縁(21)とを有し、第1の台座(37)が、3個の第1のガイドピン(39a、39b)を有し、そのうちの2個のガイドピン(39a)が、前記質量体(3)の各部分(3a、3b)の半径方向内側の縁(20)の係合ハウジング(25)に収容され、1個のガイドピン(39b)が、前記質量体(3)の各部分(3a、3b)の半径方向外側の縁(21)の係合ハウジング(23)に収容され、あるいはその逆に行われることを特徴とする、請求項3から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記スペーサ(17)が、半径方向内側の縁(31)と半径方向外側の縁(32)とを有し、第1の台座(37)または第2の台座(38)が、3個の第2のガイドピン(40a、40b)または3個の第3のガイドピン(41a、41b)を有し、そのうちの2個のガイドピン(40a、41a)が、各スペーサ(17)の半径方向内側の縁(31)で係合ハウジング(33)に収容され、1個のガイドピン(40b、41b)が、前記スペーサ(17)の半径方向外側の縁(32)で係合ハウジング(30)に収容され、あるいはその逆に行われることを特徴とする請求項4または5に記載の方法。
【請求項11】
前記スペーサ(17)の各端部(17a、17b)が、湾曲している半径方向内側の縁(31)および/または半径方向外側の縁(32)を含んでおり、それによって、各端部(17a、17b)は、前記質量体(3)の第1の部分(3a)および/または第2の部分(3b)の開口部(26)への端部の圧力ばめの際に、たわむようにされていることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記質量体(3)の各部分(3a、3b)が、前記開口部(26)の半径方向内側に配置されていてスペーサ(17)の圧力ばめに使用される可変ゾーンを有し、前記可変ゾーンが、前記スペーサ(17)の対応する端部(17a、17b)の圧力ばめの際に変形することを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記スペーサ(17)が、動作時に前記支持体(2)の開口部(12)の縁に当接するように構成された、少なくとも1つのストッパ(46、49)を備えていることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
振り子式のダンパ装置(1)であって、回転駆動される支持体(2)に可動式に取り付けられた少なくとも1つの振り子式の質量体(3)を含み、前記質量体(3)が、前記支持体(2)の両側に配置された2つの部分(3a、3b)を含み、これらの部分が、前記支持体(2)の開口部(12)を貫通する少なくとも1つのスペーサ(17)により接続され、転動体(15)が、前記スペーサ(17)と前記開口部(12)の縁との間に配置されており、前記スペーサ(17)の端部(17a、17b)が、圧力ばめにより前記質量体(3)の2つの部分(3a、3b)に固定されており、前記スペーサ(17)の端部(17a、17b)が、前記質量体(3)の部分(3a、3b)の外面(19)と同じ軸方向位置にあり、前記外面(19)とは、前記支持体(2)に向かい合った面と反対側の面である、ダンパ装置。
【請求項15】
前記スペーサ(17)の少なくとも1つの端部(17a、17b)が、溶接によって前記質量体(3)の部分(3a、3b)に同様に固定されることを特徴とする請求項14に記載のダンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振り子式のダンパ装置の取り付け方法に関する。
【0002】
このような装置は、振り子式振動子または振り子とも呼ばれ、特に、自動車のトランスミッションに装備されるように構成される。
【背景技術】
【0003】
自動車のトランスミッションでは、一般に、エンジンをギヤボックスに選択的に接続可能にするクラッチに、少なくとも1つのトーショナルダンパシステムが結合される。
【0004】
実際、内燃機関は、エンジンのシリンダ内で爆発が連続するために非周期性を有し、この非周期性は特にシリンダの数に応じて変化する。
【0005】
ダンパシステムは、一般に、エンジンの回転の非周期性による振動をフィルタリングする機能を有するスプリングと摩擦要素とを含み、このシステムは、エンジントルクがギヤボックスに伝達される前に介在する。これにより、ギヤボックスにこのような振動が伝わって、望ましくない衝撃、ノイズまたは騒音がギヤボックスで発生することを回避している。
【0006】
フィルタリングをさらに改善するために、通常のダンパ装置に加えて、振り子式のダンパ装置を使用することが知られている。
【0007】
本出願人名義の仏国特許出願第2981714号明細書では、その軸を中心として回転駆動される環状支持体と、この支持体の外周に取り付けられた振り子式の質量体とを含む、振り子式のダンパ装置が開示されている。質量体の各々は、動作時に振り子運動をするように作動され、支持体の軸方向両側に取り付けられた2つの部分を含み、これらの部分は、支持体の開口部をそれぞれが貫通する2つのスペーサによって接続されている。各スペーサに設けられた転がり軌道と支持体の対応する開口部の縁との間に転動体が取り付けられる。
【0008】
各質量体は、回転の不規則性または非周期性に反応するとき、この質量体の重心が振り子式に振動するように移動する。各質量体の振動周波数は、エンジンシャフトの回転速度に比例するものであり、対応する増倍は、たとえば、アイドリング付近で著しい回転不規則性の原因となる振動の支配的な高調波のレベルに近い値を取りうる。
【0009】
スペーサは、リベット締めにより質量体の2つの部分に固定される。リベットのヘッドは、質量体のこれらの部分の半径方向外側の面すなわち、環状支持体に向かい合った面に当接し、そのため、質量体の2つの部分から軸方向にはみ出す。動作時のこのような移動容量は比較的大きいので、周辺部品の寸法をそれ相応に決定することが必要になる。
【0010】
本質的に、リベットの強度断面は、結合すべき部品の全体断面よりも小さく、したがって、圧力ばめされるスペーサよりも小さい。スペーサの形状は、より単純であり、したがって製造がいっそう容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】仏国特許出願第2981714号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の不都合を解消することをめざしており、このため、振り子式のダンパ装置の組立方法を提案し、この方法は、支持体に可動式に取り付けられた少なくとも1つの振り子式の質量体を含み、この質量体が、支持体の両側に配置された2つの部分を含み、これらの部分が、支持体の開口部を貫通する少なくとも1つのスペーサにより接続され、転動体が、スペーサと開口部の縁との間に配置される。この方法は、
(a)第1の部分の開口部にスペーサの第1の端部を圧力ばめするステップと、
(b)スペーサが支持体の対応する開口部を貫通するように支持体を配置するステップと、
(c)スペーサと支持体の開口部の縁との間に転動体を配置するステップと、
(d)質量体の第2の部分の開口部にスペーサの第2の端部を圧力ばめするステップと、
を含んでいることを特徴とする。
【0013】
質量体のこれらの部分のうちの一方の部分の開口部にスペーサの各端部を圧力ばめすることによって、質量体の全体寸法を低減することができる。実際、スペーサの端部が上記開口部の軸方向外側に延びる必要性はない。
【0014】
好ましくは、スペーサの端部は、それらが質量体の双方の部分の外面すなわち支持体に向かい合った面と同じ高さ
(つまり、軸方向位置)になるようにはめ込まれる。
【0015】
本発明の1つの特徴によれば、その後、スペーサの少なくとも1つの端部が、質量体の部分に溶接される。
【0016】
本発明の1つの特徴によれば、スペーサは、ガイドピンを用いて質量体の第1の部分および/または質量体の第2の部分に対して配置される。
【0017】
このようにして、組立に沿って質量体の2つの部分とスペーサとを適切に配置する。
【0018】
特に、質量体の各部分を、第1の台座に対して、この第1の台座から突出する少なくとも1つの第1のガイドピンを用いてガイドすることができる。
【0019】
さらに、スペーサの第1の端部を、第1の台座に対して、この第1の台座から突出する少なくとも1つの第2のガイドピンを用いてガイドすることができる。
【0020】
さらに、スペーサの第2の端部を、第2の台座に対して、この第2の台座から突出する少なくとも1つの第3のガイドピンを用いてガイドすることができる。
【0021】
この場合、スペーサの端部を、質量体の第1の部分と第2の部分とでそれぞれ支持される第1および第2の台座の接近によって、質量体のこれらの部分の対応する開口部に圧力ばめすることができる。
【0022】
このようにして、各台座は、質量体の2つの部分のうちの一方の部分に当接し、それによって、これらの部分の開口部にスペーサの端部を確実にはめ込むようにされる。
【0023】
本発明の別の特徴によれば、第2のガイドピンおよび/または第3のガイドピンが、ステップ(a)とステップ(d)で、質量体の対応する部分の開口部を貫通する。
【0024】
好ましくは、質量体の各部分が、半径方向内側の縁と半径方向外側の縁とを有し、第1の台座が、3個の第1のガイドピンを有し、そのうちの2個のガイドピンが、質量体の各部分の半径方向内側の縁の係合ハウジングに収容され、1個のガイドピンが、質量体の各部分の半径方向外側の縁の係合ハウジングに収容され、あるいはその逆に行われる。
【0025】
このようにして、質量体の各部分が、第1のガイドピンを用いて第1の台座の所定の位置に保持される。
【0026】
さらに、スペーサは、半径方向内側の縁と半径方向外側の縁とを有し、第1の台座または第2の台座が、3個の第2のガイドピンまたは3個の第3のガイドピンを有し、そのうちの2個のガイドピンが、各スペーサの半径方向内側の縁で係合ハウジングに収容され、1個のガイドピンが、スペーサの半径方向外側の縁で係合ハウジングに収容され、あるいはその逆に行われる。
【0027】
有利には、スペーサの各端部が、湾曲している半径方向内側の縁および/または半径方向外側の縁を含み、それによって、各端部が、質量体の第1の部分および/または第2の部分の開口部への端部の圧力ばめの際に、たわむようにされている。
【0028】
同様に、質量体の各部分は、開口部の半径方向内側に配置されていてスペーサの圧力ばめに使用される可変ゾーンを有し、この可変ゾーンは、スペーサの対応する端部の圧力ばめの際に変形する。
【0029】
さらに、スペーサは、動作時に、すなわち支持体に対する質量体の運動時に、支持体の開口部の縁に当接するように構成された、少なくとも1つのストッパを備えることができる。
【0030】
本発明は、また、振り子式のダンパ装置に関し、この装置は、回転駆動される支持体に可動式に取り付けられた少なくとも1つの振り子式の質量体を含み、この質量体が、支持体の両側に配置された2つの部分を含み、これらの部分が、支持体の開口部を貫通する少なくとも1つのスペーサにより接続され、転動体が、スペーサと開口部の縁との間に配置されており、スペーサの端部が、圧力ばめにより質量体の2つの部分に固定されることを特徴とする。
【0031】
好ましくは、スペーサの端部が、質量体の2つの部分の外面すなわち、支持体に向かい合った面と同じ高さにされる。
【0032】
スペーサの少なくとも1つの端部は、圧力ばめに加えて、溶接によって質量体の部分に同様に固定される。この場合、質量体の部分の所定の位置にスペーサを保持するのにちょうど十分な深さだけスペーサの端部をはめ込むように構成することができ、その後、スペーサと質量体のこの部分との接合箇所を溶接する。
【0033】
好ましくは、スペーサの端部は、質量体の片面と同じ高さになるようにはめ込まれ、この面は、スペーサが導入されるこの同じ質量体の反対面に向かい合った面である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明は、添付図面に関して限定的ではなく例としてなされた以下の説明を読めば、いっそう理解され、本発明の他の細部、長所、および特徴が明らかになるであろう。
【
図1】本発明による振り子式ダンパ装置を示す斜視図である。
【
図3】本発明による
図1と
図2の装置の組立方法のさまざまな連続ステップを示す図である。
【
図4】本発明による
図1と
図2の装置の組立方法のさまざまな連続ステップを示す図である。
【
図5】本発明による
図1と
図2の装置の組立方法のさまざまな連続ステップを示す図である。
【
図6】本発明による
図1と
図2の装置の組立方法のさまざまな連続ステップを示す図である。
【
図7】本発明による
図1と
図2の装置の組立方法のさまざまな連続ステップを示す図である。
【
図8】本発明による
図1と
図2の装置の組立方法のさまざまな連続ステップを示す図である。
【
図9】本発明による
図1と
図2の装置の組立方法のさまざまな連続ステップを示す図である。
【
図10】本発明による
図1と
図2の装置の組立方法のさまざまな連続ステップを示す図である。
【
図11】本発明による
図1と
図2の装置の組立方法のさまざまな連続ステップを示す図である。
【
図12】本発明による
図1と
図2の装置の組立方法のさまざまな連続ステップを示す図である。
【
図13】圧力ばめの際にスペーサの一端が変形するところを概略的に示す、スペーサの一端の正面図である。
【
図14】対応する開口部にスペーサをはめ込む際の質量体の一部分の変形を概略的に示す、正面図である。
【
図15】質量体の一部分にスペーサをはめ込む3つの変形実施形態を示す正面図である。
【
図16】質量体の一部分にスペーサをはめ込む3つの変形実施形態を示す正面図である。
【
図17】質量体の一部分にスペーサをはめ込む3つの変形実施形態を示す正面図である。
【
図18】スペーサの一部分と質量体との2つの変形実施形態を示す軸方向断面図である。
【
図19】スペーサの一部分と質量体との2つの変形実施形態を示す軸方向断面図である。
【
図20】第1の実施形態による係止手段を備えたスペーサを示す斜視図である。
【
図21】1つの質量体の2つの部分に
図20のスペーサと係止手段とを組み立てるところを示す斜視図である。
【
図22】1つの質量体の2つの部分に
図20のスペーサと係止手段とを組み立てるところを示す斜視図である。
【
図23】第2の実施形態による係止手段を備えたスペーサを示す正面図である。
【
図25】第3の実施形態による係止手段を備えたスペーサを示す、それぞれ
図23と
図24に対応する図である。
【
図26】第3の実施形態による係止手段を備えたスペーサを示す、それぞれ
図23と
図24に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、本発明による振り子式ダンパ装置1を示しており、環状支持体2を含み、この環状支持体に、質量体3が可動式に取り付けられている。
【0036】
環状支持体2は、半径方向に延びる脚部6によって外側環状部分5に接続された内側環状部分4を含んでいる。内側環状部分4の面は、外側環状部分5の面に対して軸方向にオフセットされている。
【0037】
内側環状部分4の円筒形の内面は、半径方向内側に通じる環状溝7を含んでいる。内側環状部分4は、さらに、環状溝7に通じる半径方向の穴8を含んでいる。内側環状部分4は、また、平面ゾーン10を含み、この平面ゾーンに半径方向の穴9が通じている。環状溝には、軸方向および角方向のストッパの役割を果たすサークリップが収容される。半径方向の各脚部6は、主要なダンパ装置のスプリングの駆動システムへの固定リベットを通す役割を果たす3個の穴11を含んでいる。
【0038】
さらに、支持体2の外側環状部分5は、6組の開口部12を含んでいる(
図4)。各開口部12は、頂点が丸みを帯びていて底部13が半径方向内側に配置された、ほぼ二等辺三角形の形状である。底部13の反対側にある頂点14は湾曲しており、転動体15と協働するための転がり軌道を形成する。
【0039】
さらに、外側環状部分5の外周位置に半円形の刳り抜き16が設けられている。特に、各刳り抜き16は、同一組の2個の開口部12の間に周方向に配置されている。
【0040】
支持体2の外側環状部分5に、6個の質量体3が取り付けられている。各質量体3は、第1の部分3aと第2の部分3bとを含み、これらは、支持体2の軸方向両側に配置されて互いに向かい合っている。2個の部分3a、3bは、2個のスペーサ17により互いに接続される。
【0041】
質量体3の各部分3a、3bは、支持体2の側に向いた、いわゆる半径方向の内面18(
図3)と、半径方向の内面18の反対側にある半径方向の外面19(
図1)とを有している。さらに、各部分3a、3bは円弧状であり、これらの部分は、半径方向の側縁22により結合された、双方とも湾曲している半径方向の内周縁20と半径方向の外周縁21とを有している。外周縁21は、質量体3が
図1に示された位置(組立位置または初期位置)にあるとき、支持体2の外側環状部分5の刳り抜き16の1つに向かい合って配置された、半円形の刳り抜き23を含んでいる。
【0042】
各部分の内周縁20は、周方向の端部に切欠き24を有する。各切欠き24には、さらに、半円形の刳り抜き25が設けられている。
【0043】
各部分3a、3bは、さらに、スペーサ17の圧力ばめによる取り付けのための2個の開口部26を含んでいる。各開口部26は、細長い形状を有し、ほぼ直線状の半径方向内側の縁27と、アーチ状の半径方向外側の縁28とを有し、これらの縁が、2個の直線状の側縁29により結合されている。側縁29と、半径方向内側の縁27および半径方向外側の縁28との間の結合ゾーンは、丸みを帯びている。半径方向外側の縁28は、中央部分に丸みを帯びた刳り抜き30を有する。刳り抜き30は、また、組立後、転動体の存在を検知する役割を果たす。
【0044】
各スペーサは、その全長にわたってほぼ一定の断面を有している。特に、各スペーサは、双方とも湾曲した内周縁31と外周縁32とを含んでいる(特に
図2参照)。外周縁32は凹状であり、対応する転動体15のための転がり軌道を形成する。内周縁31は、凸状であり、その周方向端部位置に丸みを帯びた2個の刳り抜き33を有している。このようにして、正面から見ると、各スペーサ17が2個の丸みを帯びた側面突起34をその外周縁32の位置に有し、これらの側面突起は、対応する開口部26の半径方向外側の2個の結合ゾーン35に収容されている(特に
図2参照)。側面突起34とこの結合ゾーン35との丸みを帯びた形状が、ほぼ係合する。さらに、刳り抜き33によって、スペーサ17と開口部26の縁との間に空間36が形成されている。
【0045】
次に、第1の台座37と第2の台座38とを含む工具を用いた、このような振り子式ダンパ装置1の組立について説明する。各台座37、38は、環状であり、ほぼ半径方向の平面に延びている。
【0046】
第1の台座37は、3個の第1のガイドピン39a、39bからなる6個のグループと、第1のガイドピン39a、39bよりも短い長さの3個の第2のガイドピン40a、40bとからなる12個のグループとを含んでいる。
【0047】
第2の台座38は、3個の第3のガイドピン41a、41bからなる12個のグループを含んでいる。第3のガイドピン41a、41bは、第2のガイドピン40a、40bとほぼ同じ長さである。すべてのガイドピン39a、39b、40a、40b、41a、41bは、円筒形であり、それらの自由端は、面取り部分を含むことができる。
【0048】
振り子式ダンパ装置1の組立時に、第1のステップは、質量体3の第1の部分3aを第1の台座37に配置することからなり(
図3)、それによって、部分3a、3bの外面19が第1の台座17の面42に当接し、ガイドピン39aが刳り抜き25に係合され、かつガイドピン39bが刳り抜き23に係合されるようにする。このようにして、第1の部分3aは、第1のガイドピン39a、39bによって所定の位置に保持され、これらのガイドピンに沿ってのみ摺動することができる。
【0049】
その後、スペーサ17の第1の端部17aは、第1の部分3aの開口部26に面して配置される。この配置は、ガイドピン40bが刳り抜き30に係合されてスペーサ17の外周縁32に同様に当接することと、ガイドピン40aが空間36に係合されてスペーサ17に当接することとによって、容易にされる。このようにして、スペーサ17は、2個のガイドピン40a、40bによって所定の位置に保持され、これらのガイドピンに沿ってのみ摺動することができる。
【0050】
次いで、半径方向外側の環状部分5の半径方向の面の1つが質量体3の第1の部分3aの、いわゆる半径方向内側の面18に当接するように、支持体2を配置する(
図4)。このステップにおいて、ガイドピン39bは、刳り抜き16に係合され、ガイドピン39aは、開口部12の縁13に、特に丸みを帯びた頂点の位置で当接する。かくして、支持体2は、第1のガイドピン39a、39bにより所定の位置に保持され、これらのガイドピンに沿ってのみ摺動することができる。
【0051】
その場合、質量体3の第2の部分3bを第1の部分3aに向かい合うように配置し、それによって、ガイドピン39bが第2の部分3bの刳り抜き23に係合されて、ガイドピン39aが第2の部分3bの刳り抜き25に係合されるようにする(
図5と
図6)。
【0052】
次に、第2の台座38を第1の台座37に向かい合わせる(
図7)。
図6から
図12に示した実施形態では、第2の台座38は、第3のガイドピン41a、41bがそこから延びている第1の環状プレート38aと、この第1の環状プレート38aに対して軸方向に移動する第2の環状プレート38bとを含んでいる。第2の環状プレート38bは、第3のガイドピン41a、41bが貫通する穴と、第1のガイドピン39a、39bが貫通する穴とを含んでいる。
【0053】
第2の台座38は、第1のガイドピン39a、39bが第2の環状プレート38bの対応する穴を貫通するまで第1の台座37に近づけられる。
図8に示したこの位置で、第3のガイドピン41a、41bの端部が、刳り抜き30と、質量体3の第2の部分3bの空間36とにそれぞれ挿入される。このようにして、第3のガイドピン41a、41bは、第2のガイドピン40a、40bの軸方向の正面に配置され、スペーサの第2の端部17bを所定の位置に保持する(
図8)。第2のガイドピン40a、40bと第3のガイドピン41a、41bは、それに応じて適合され、特に、ガイドピン40bと41bの端部の間に転動体15を収容することができる。
【0054】
その場合、第2の環状プレート38bをプレス式に下降することにより、各質量体3の2つの部分3a、3bを接近させ、それによって、スペーサ17の第1の端部17aを質量体3の第1の部分3aの開口部26に圧入するとともに、スペーサ17の第2の端部17bを質量体3の第2の部分3bの開口部26に圧入する(
図9)。このような圧力ばめは、スペーサ17の各端部17a、17bの変形および/または質量体3の各部分3a、3bの変形を必要とする。これについては、
図13と
図14に関して詳しく説明する。
【0055】
第2の環状プレート38bは、再び第1の環状プレート38aに接近し(
図10)、次いで、第2の台座38のアセンブリが、第1の台座37から離隔されて(
図11、
図12)、このように組み立てられた振り子式のダンパ装置1を解放する。
【0056】
圧力ばめの際に、各スペーサ17の第1の端部17aと第2の端部17bは、第2の環状プレートにより及ぼされる応力下で変形可能である。
図13は、対応する開口部26への圧力ばめの前(破線)と開口部26への圧力ばめの後(実線)とで、スペーサ17の端部の断面を示している。この図では、変形は故意に誇張されている。
【0057】
さらに、圧力ばめに際して、質量体3の部分3a、3bは、スペーサ17の対応する端部17a、17bを、特に、開口部26の半径方向内側の縁27と各部分3a、3bの半径方向内側の縁20との間に配置されるゾーンにはめ込むときに、変形し得る。
図14は、スペーサ17の圧力ばめの前(破線)と、スペーサ17の圧力ばめの後(実線)とで、開口部26の半径方向内側の縁27を示している。この図でも同様に、変形は故意に誇張されている。
【0058】
取り付け前のスペーサ17の形状と開口部26の形状は、取り付け後すなわち圧力ばめによる変形後の、所望の幾何学的形状を得るように適合される。
【0059】
図15に示したように、スペーサ17の形状と開口部26の形状は、圧力ばめの後、スペーサ17の各端部17a、17bが、スペーサ17の側面突起34の位置と開口部26の結合ゾーン35の位置とで、対応する開口部26の半径方向外側の縁28に当接するように構成することができる。
【0060】
図16に示した別の実施形態では、スペーサ17の形状と開口部26の形状は、圧力ばめの後、スペーサ17の各端部17a、17bが、上記の側面突起34とスペーサ17の半径方向外側の縁32の中央ゾーンとの間に配置されるゾーンで、対応する開口部26の半径方向外側の縁28に当接するように構成することができる。
【0061】
図17に示したさらに別の実施形態によれば、スペーサ17の形状と開口部26の形状は、圧力ばめの後、スペーサ17の各端部17a、17bが、スペーサ17の半径方向外側の縁32に中央ゾーンで、対応する開口部26の半径方向外側の縁28に当接するように構成することができる。この場合、質量体3には刳り抜き30がない。
【0062】
これらの実施形態の各々では、スペーサ17の半径方向内側の縁31の中央ゾーンだけが、開口部26の半径方向内側の縁27に当接する。
【0063】
もちろん、他の実施形態も同様に可能である。
【0064】
さらに、
図18と
図19に示したように、内面18における各開口部26の輪郭44は、スペーサ17の対応する端部17aの挿入とはめ込みを容易にするように、丸みを帯びた部分または面取り部分を備えることができる。
【0065】
同様に、スペーサ17の端部17aの輪郭も、対応する開口部26へのスペーサの挿入または、はめ込みを容易にするように、面取り部分45または丸みを帯びた部分を有することができる。
【0066】
このようにして、振り子式のダンパ装置1の組立時に接触圧を制限し、質量体3の切り屑の形成または劣化を回避する。
【0067】
図20〜
図22は、各スペーサ17がエラストマー製の2個のストッパ46を備えている1つの実施形態を示している。各ストッパ46は、軸方向に延びており、空間36に挿入される面取りした2個の円筒形の端部47を含んでいる。各ストッパ46は、さらに、部分的に拡大された中央ゾーン48を含み、このゾーンは、対応する側面突起34と内縁31とを超えて周方向に延びることによって、支持体2の対応する開口部12の縁に当接できるようにされている。
【0068】
ストッパ46は、スペーサ17の全長にわたって延びているわけではなく、各ストッパ46の軸方向に両側に配置された空間36に常に存在するようにされて、装置1の組立時にピン40aと41aの端部を挿入可能にしていることが分かる。
【0069】
図23と
図24は、別の実施形態を示しており、各スペーサ17は、このスペーサ17の半径方向内側31に沿って側面突起34の間に延びるエラストマーバンド49の形状を呈するストッパを含んでいる。エラストマーバンド49は、スペーサ17の軸方向中央ゾーンに配置されており、
図23では、側面突起の下に配置された係合形状の刳り抜き33に係止される膨らんだ2つの端部50を含んでいる。この実施形態では、エラストマーバンド49をスペーサ17とは独立して構成し、その後で、たとえばスペーサ17にスナップ係合および/または貼り合わせ固定することができる。
【0070】
先に述べたように、エラストマーバンド49の厚み(軸方向寸法)が薄いので、エラストマーバンド49の軸方向に両側に配置された空間36を保持して、装置1の組立時にピン40a、41aの端部を挿入することができる。ピン41aの長さは、エラストマーストッパの幾何学的な形状または存在に応じて、質量体の厚みを上回るか、あるいは下回るものにされる。ストッパは、さらに、製品に影響を及ぼすことなく、組立時にピン41aによって瞬間的に変形可能である。
【0071】
図25と
図26は、
図23と
図24と同様の本発明によるさらに別の実施形態を示しているが、バンド49の端部50が膨らんでおらず、刳り抜き33にスナップ係合されている点が異なっている。この実施形態では、エラストマーバンド49は、好ましくはスペーサ17に一体成形される。
【0072】
このようなストッパ46、49は、特定の動作の場合、特にエンジンの停止または始動、ギヤチェンジ、より一般的には、自動車のトランスミッションにおける変速ショックの場合に、支持体2の対応する開口部12の縁に当接するように構成される。
【0073】
圧力ばめの後、スペーサ17の第1の端部17aを、質量体3の第1の部分3aと、この同じスペーサの第2の端部17bとの間の接合部で溶接するように構成することも可能である。このような溶接によって、質量体の2つの部分3a、3bへのスペーサ17の固定をさらに改善することができる。好ましくは、溶接はレーザで実施可能である。このような溶接は、上記のすべての実施形態に対して検討することができる。