(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記密閉容器は、前記検出窓が鉛直方向の下部に位置するように配置され、前記放射線照射器は、前記密閉容器の下方から前記検出窓に向けて放射線を照射することを特徴とする請求項1に記載の廃液中における金属酸化物の検出装置。
前記密閉容器は、廃液を充填する開口部が設けられ、前記開口部にポリエチレンシートが装着されて閉塞されることで、前記ポリエチレンシートにより前記検出窓が形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の廃液中における金属酸化物の検出装置。
放射線照射器は、エックス線を照射するエックス線照射器であり、前記検出器は、エックス線の照射によって廃液から発生する蛍光エックス線を検出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の廃液中における金属酸化物の検出装置。
上部に形成された開口部から密閉容器内に廃液を充填する工程と、前記開口部にポリエチレンシートを装着して前記開口部を閉塞する工程と、前記密閉容器を上下逆に配置する工程とが設けられ、前記密閉容器の下方から前記ポリエチレンシートにより形成された検出窓に向けてエックス線を照射することを特徴とする請求項5に記載の廃液中における金属酸化物の検出方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、再処理工程で生じた核分裂生成物を含む高レベル放射性廃液は、ガラス材料により固化されて安定化されて貯蔵される。この場合、高レベル放射性廃液に対して供給するガラス材料の量は、高レベル放射性廃液中の金属酸化物の総量に応じて設定される。そのため、事前に、高レベル放射性廃液中の金属酸化物の総量を化学分析により把握する必要がある。一般的に、高レベル放射性廃液中の金属酸化物の総量を把握する場合、この高レベル放射性廃液を強制加熱処理して固形とし、この固形試料の質量を測定することで行っていた。しかし、高レベル放射性廃液の成分により、金属酸化物の形態が変化したり、周囲の環境により固形試料の湿分が変化したりして測定値が変動し、高レベル放射性廃液中の金属酸化物の総量を精度良く把握することが困難であった。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、高レベル放射性廃液中の金属酸化物の総量を精度良く検出することができる廃液中における金属酸化物の検出装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の廃液中における金属酸化物の検出装置は、廃液を充填すると共に放射線が透過可能な検出窓を有する密閉容器と、前記密閉容器の検出窓を通して廃液に放射線を照射する放射線照射器と、放射線の照射によって廃液から発生する放射線を検出する検出器と、前記検出器の検出結果に基づいて廃液に含有する金属酸化物の濃度を計測する測定装置と、を有することを特徴とするものである。
【0009】
従って、放射線照射器が密閉容器の検出窓を通して廃液に放射線を照射すると、検出器が放射線の照射によって廃液から発生する放射線を検出し、測定装置に出力するため、この測定装置は、検出器の検出結果に基づいて廃液に含有する金属酸化物の濃度を計測する。その結果、高レベル放射性廃液中の金属酸化物の総量を精度良く検出することができる。
【0010】
本発明の廃液中における金属酸化物の検出装置では、前記密閉容器は、前記検出窓が鉛直方向の下部に位置するように配置され、前記放射線照射器は、前記密閉容器の下方から前記検出窓に向けて放射線を照射することを特徴としている。
【0011】
従って、密閉容器内の金属酸化物を含む固形物が溶液中で沈殿することから、下部に位置する検出窓側に集められることとなり、放射線照射器が下方からこの検出窓に向けて放射線を照射することで、適正に放射線を金属酸化物を含む固形物に照射することができる。
【0012】
本発明の廃液中における金属酸化物の検出装置では、前記密閉容器は、廃液を充填する開口部が設けられ、前記開口部にポリエチレンシートが装着されて閉塞されることで、前記ポリエチレンシートにより前記検出窓が形成されることを特徴としている。
【0013】
従って、密閉容器に開口部を設けることで、容易に密閉容器内に廃液を充填することができ、また、この開口部にポリエチレンシートを装着することで、容易に開口部を閉塞して検出窓を形成することができ、構造の簡素化を可能とすることができる。
【0014】
本発明の廃液中における金属酸化物の検出装置では、前記測定装置は、検出した放射線と複数種類の元素における放射線の強度比とに基づいて廃液に含有する金属酸化物の濃度を算出することを特徴としている。
【0015】
従って、例えば、廃液に所定濃度の内標準物質を添加しておき、検出した放射線における内標準物質と各元素における放射線の強度比を比較することで、複数の金属酸化物の濃度を高精度に算出することができる。
【0016】
本発明の廃液中における金属酸化物の検出装置では、前記測定装置は、検出した放射線と複数種類の元素における放射線の強度比とに基づいて廃液に含有する元素の濃度を算出し、廃液に含有する元素の濃度と金属酸化物の分子量に基づいて金属酸化物の濃度を算出することを特徴としている。
【0017】
従って、各元素における放射線の強度比から各元素の濃度を算出し、この各元素の濃度と金属酸化物の分子量に基づいて金属酸化物の濃度を算出することで、金属酸化物の濃度を高精度に算出することができる。
【0018】
本発明の廃液中における金属酸化物の検出装置では、放射線照射器は、エックス線を照射するエックス線照射器であり、前記検出器は、エックス線の照射によって廃液から発生する蛍光エックス線を検出することを特徴としている。
【0019】
従って、エックス照射器が密閉容器の検出窓を通して廃液にエックスを照射すると、検出器がエックスの照射によって廃液から発生する蛍光エックスを検出し、測定装置に出力するため、この測定装置は、検出器の検出結果に基づいて廃液に含有する金属酸化物の濃度を計測する。その結果、高レベル放射性廃液中の金属酸化物の総量を精度良く検出することができる。
【0020】
また、本発明の廃液中における金属酸化物の検出方法は、廃液に対して所定濃度の標準物質を添加する工程と、密閉容器内に充填された廃液における沈殿物に対して放射線を照射する工程と、放射線の照射によって廃液から発生する放射線を検出する工程と、検出結果に基づいて前記標準物質と複数種類の元素における放射線の強度比とに基づいて廃液に含有する金属酸化物の濃度を算出する工程と、を有することを特徴とするものである。
【0021】
従って、検出した放射線における内標準物質と各元素における放射線の強度比を比較することで、複数の金属酸化物の濃度を高精度に算出することができる。その結果、高レベル放射性廃液中の金属酸化物の総量を精度良く検出することができる。
【0022】
本発明の廃液中における金属酸化物の検出方法では、検出した放射線と前記標準物質と複数種類の元素における放射線の強度比とに基づいて廃液に含有する元素の濃度を算出し、廃液に含有する元素の濃度と金属酸化物の分子量に基づいて金属酸化物の濃度を算出することを特徴としている。
【0023】
従って、各元素における放射線の強度比から各元素の濃度を算出し、この各元素の濃度と金属酸化物の分子量に基づいて金属酸化物の濃度を算出することで、金属酸化物の濃度を高精度に算出することができる。
【0024】
本発明の廃液中における金属酸化物の検出方法では、上部に形成された開口部から密閉容器内に廃液を充填する工程と、前記開口部にポリエチレンシートを装着して前記開口部を閉塞する工程と、前記密閉容器を上下逆に配置する工程とが設けられ、前記密閉容器の下方から前記ポリエチレンシートにより形成された検出窓に向けて放射線を照射することを特徴としている。
【0025】
従って、廃液が充填された密閉容器を上下逆に配置することで、密閉容器内の金属酸化物を含む固形物が溶液中で沈殿して下部に位置する検出窓側に集められることとなり、放射線照射器が下方からこの検出窓に向けて放射線を照射することで、適正に放射線を金属酸化物を含む固形物に照射することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の廃液中における金属酸化物の検出装置及び方法によれば、放射線分析を用いるので、高レベル放射性廃液中の金属酸化物の総量を精度良く検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に添付図面を参照して、本発明の廃液中における金属酸化物の検出装置及び方法の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0029】
図7は、使用済核燃料の再処理工程を表す概略図である。
【0030】
本実施形態の廃液中における金属酸化物の検出装置及び方法は、使用済核燃料の再処理工程にて、せん断・溶解工程で排出された高レベル放射線溶液に対して使用されるものである。
【0031】
使用済核燃料の再処理工程について説明する。この使用済核燃料の再処理工程は、
図7に示すように、使用済核燃料の受入れ・貯蔵工程と、せん断・溶解工程と、分離工程と、精製工程と、脱硝工程と、製品貯蔵工程とから構成されている。
【0032】
受入れ・貯蔵工程は、トラック201により搬送されたキャスク202を燃料プール203に投入し、冷却水内で使用済核燃料204を取り出して一時的に貯留するものである。せん断・溶解工程は、使用済核燃料204を燃料プール203から取り出し、せん断装置205によりせん断した後、溶解装置206に投入して溶解するものである。このせん断工程では、廃ガスが発生することから、図示しないが、発生した廃ガスは廃ガス処理装置へ送り出して処理している。そして、溶解工程では、溶解装置206に、硝酸207を貯留しており、この硝酸207により使用済核燃料204を溶解させることで、ウラン208、プルトニウム209、核分裂生成物(高レベル放射性廃棄物)210などの燃料溶解液を生成する。また、溶解工程では、遠心分離機などにより、硝酸207に溶解しないで燃料溶解液に含まれる被覆管などの不溶解物(異物)211を取り除き、この不溶解物211を含む高レベル放射性廃液をガラス固化して所定の貯蔵容器に収容して保管する。
【0033】
分離工程は、燃料溶解液から溶液として、ウラン溶液(ウラン208)やプルトニウム溶液(プルトニウム209)を分離するものである。具体的に、分離工程では、まず、ウラン溶液及びプルトニウム溶液から核分裂生成物(高レベル放射性廃棄物)210を取り除き、貯槽で冷却してからガラス材料により固化して保管する。そして、分離工程では、次に、ウラン溶液とプルトニウム溶液とを分離する。
【0034】
精製工程は、ウラン溶液とプルトニウム溶液をそれぞれ硝酸ウラン溶液と硝酸プルトニウム溶液に精製すると共に、硝酸ウラン溶液の一部を硝酸プルトニウム溶液に混合して硝酸ウラン/プルトニウム溶液を精製するものである。この場合、精製した硝酸ウラン/プルトニウム溶液に対してPu富化度を調整している。脱硝工程は、硝酸ウラン溶液と硝酸ウラン/プルトニウム溶液を脱硝し、ウラン酸化物とウラン/プルトニウム混合酸化物を精製するものである。
【0035】
製品貯蔵工程は、ウラン酸化物とウラン/プルトニウム混合酸化物をそれぞれ製品212,213として貯蔵する。その後、貯蔵したウラン酸化物とウラン/プルトニウム混合酸化物を適宜混合することで、装荷用燃料を製造することができる。
【0036】
本実施形態の廃液中における金属酸化物の検出装置及び方法は、上述した使用済核燃料を再処理する過程にて、せん断・溶解工程で発生した不溶解物211を含む高レベル放射性廃液に対して使用するものである。高レベル放射性廃液の処理は、高レベル放射性廃液に対して所定量のガラスビーズを添加し、溶融して固化することでガラス固化体を形成する。このとき、高レベル放射性廃液は、溶液中に溶媒としての金属酸化物が混入したものであり、この金属酸化物の総量に対してガラスビーズの添加量が決まる。即ち、金属酸化物とガラスビーズとの混合比が最適となるように、金属酸化物の総量を求める必要がある。金属酸化物の検出装置及び方法は、この高レベル放射性廃液における金属酸化物の総量を求めるものである。
【0037】
図1は、本実施形態の廃液中における金属酸化物の検出装置を表す概略図、
図2及び
図3は、本実施形態の廃液中における金属酸化物の検出方法を表す概略図である。
【0038】
本実施形態において、
図1に示すように、金属酸化物の検出装置10は、第1遮へいボックス11と、第2遮へいボックス12と、マニピュレータ13と、密閉容器14と、エックス線照射器(放射線検出器)15と、半導体検出器(例えば、シリコン半導体検出器/Si検出器、Li検出器)16と、測定装置17とを有している。
【0039】
第1遮へいボックス11と第2遮へいボックス12は、所定の大きさの箱型形状をなし、放射線を遮へい可能な部材により構成されている。大型の第1遮へいボックス11は、下部に小型の第2遮へいボックス12が配置されており、第1遮へいボックス11と第2遮へいボックス12との間に開口部21(
図3参照)が形成されている。なお、この開口部21は、X線が透過可能な透明板などにより閉止してもよい。
【0040】
マニピュレータ13は、第1遮へいボックス11内に配置され、基端部が壁部に支持され、外部の操作部22により操作可能となっている。このマニピュレータ13は、多関節アームの先端部にハンドが設けられて構成されている。
【0041】
密閉容器14は、高レベル放射性廃液を充填する容器であって、上部に開口部23(
図2参照)が形成されている。この密閉容器14は、高レベル放射性廃液が充填された後、この開口部23にポリエチレンシート24(
図2参照)を装着することで、この開口部23を閉塞することができる。そして、開口部23にポリエチレンシート24を装着することで、このポリエチレンシート24によりX線が透過可能な検出窓25が形成される。作業者は、マニピュレータ13を操作することで、第1遮へいボックス11内でこの作業を実施することができる。
【0042】
エックス線照射器15と半導体検出器16は、第2遮へいボックス12内に配置されている。エックス線照射器15は、密閉容器14の検出窓25を通して高レベル放射性廃液にX線(エックス線)を照射することができる。半導体検出器16は、X線の照射によって高レベル放射性廃液から発生する蛍光X線を検出することができる。このとき、密閉容器14は、検出窓25が鉛直方向の下部に位置し、開口部21と一致するように配置され、エックス線照射器15は、密閉容器14の下方から検出窓25に向けてエックス線を照射する。なお、エックス線照射器15と半導体検出器16を密閉容器14とは別の第2遮へいボックス12内に配置することで、エックス線照射器15と半導体検出器16のメンテナンスを安全で容易に行うことができる。
【0043】
測定装置17は、半導体検出器16の検出結果に基づいて高レベル放射性廃液に含有する金属酸化物の濃度を計測するものである。この測定装置17は、検出した蛍光エックス線と複数種類の元素における蛍光エックス線の強度比とに基づいて高レベル放射性廃液に含有する金属酸化物の濃度を算出する。具体的に、測定装置17は、検出した蛍光エックス線と内標準物質を含む複数種類の元素における蛍光エックス線の強度比とに基づいて高レベル放射性廃液に含有する元素の濃度を算出し、この高レベル放射性廃液に含有する元素の濃度と金属酸化物の分子量に基づいて金属酸化物の濃度を算出する。
【0044】
ここで、金属酸化物の検出装置10を用いた本実施形態の廃液中における金属酸化物の検出方法について説明する。
図4は、廃液中における金属酸化物の検出方法を表すフローチャート、
図5は、X線エネルギに対する蛍光X線強度を表すグラフ、
図6は、検出元素に対する酸化物形態を表す表である。
【0045】
本実施形態の廃液中における金属酸化物の検出方法は、高レベル放射性廃液に対して所定濃度の内標準物質を添加する工程と、密閉容器14内に充填された高レベル放射性廃液における沈殿した金属酸化物に対してX線を照射する工程と、X線の照射によって高レベル放射性廃液から発生する蛍光X線を検出する工程と、検出結果に基づいて内標準物質と複数種類の元素における蛍光X線の強度比とに基づいて高レベル放射性廃液に含有する金属酸化物の濃度を算出する工程とを有している。
【0046】
本実施形態の廃液中における金属酸化物の検出方法において、
図4に示すように、ステップS11にて、試料の分取を行う。即ち、使用済核燃料を再処理する過程のせん断・溶解工程にて、高レベル放射性廃液を所定量だけ採取し、
図2に示すように、開口部23から密閉容器14内にこの高レベル放射性廃液を充填する。ステップS12にて、この高レベル放射性廃液の重量(質量)を測定する。
【0047】
ステップS13にて、高レベル放射性廃液に対して所定濃度の内標準物質を添加する。ここで、内標準物質として、イットリウム(Y)を適用する。但し、内標準物質は、イットリウム(Y)に限定されるものではなく、高レベル放射性廃液に添加して分析対象元素の蛍光X線スペクトルに干渉せず、比較的容易に検出することができるものであればよい。例えば、セレン(Se)、ルビジウム(Rb)、すず(Sn)、アンチモン(Sb)、エルビウム(Er)などを適用してもよい。
【0048】
ステップS14にて、試料を混合する。即ち、密閉容器14内で、高レベル放射性廃液とイットリウム(Y)とを混合し、均一化させる。そして、ステップS15にて、密閉容器14の開口部23にポリエチレンシート24を装着することで、この開口部23を閉塞する。ステップS16にて、
図3に示すように、この密閉容器14を反転することで、上下逆に配置し、検出窓25(ポリエチレンシート24)を開口部21に一致させる。すると、密閉容器14内の高レベル放射性廃液は、溶液A中の金属酸化物Bが沈降して検出窓25(ポリエチレンシート24)に沈殿する。
【0049】
ステップS17では、
図1に示すように、エックス線照射器15により密閉容器14の下方からポリエチレンシート24により形成された検出窓25に向けてX線を照射する。すると、X線は、検出窓25を通して高レベル放射性廃液の金属酸化物Bに照射され、蛍光X線が出力される。ステップS18にて、半導体検出器16は、金属酸化物Bから出力された蛍光X線スペクトルを検出し、測定装置17に出力する。
【0050】
そして、測定装置17は、ステップS19にて、検出した蛍光X線とイットリウム(Y)及び各元素における蛍光X線の強度比とに基づいて高レベル放射性廃液に含有する元素の濃度を算出し、ステップS20にて、高レベル放射性廃液に含有する元素の濃度と金属酸化物の分子量に基づいて金属酸化物の濃度を算出する。
【0051】
即ち、X線エネルギに対する蛍光X線強度は、一般的に、
図5に表すグラフのように規定される。ここで、各元素におけるX線エネルギが決まっていることから、各元素に対する蛍光X線強度がわかる。この場合、各元素におけるピーク値の比率が一定であることから、一つの元素の量(濃度)がわかれば、他の元素の量(濃度)もわかる。ここでは、高レベル放射性廃液に内標準物質としてイットリウム(Y)を添加していることから、イットリウム(Y)と他の元素との蛍光X線の強度比に基づいて高レベル放射性廃液に含有する元素の量(濃度)を算出することができる。
【0052】
例えば、高レベル放射性廃液に含有する鉄(Fe)の濃度を下記数式により算出する。ここでは、事前に所定量の鉄(Fe)とイットリウム(Y)が添加された標準物質を作成しておき、この標準物質にX線を照射し、出力された蛍光X線強度を計測する。そして、鉄(Fe)における蛍光X線強度(ピーク値)とイットリウム(Y)における蛍光X線強度(ピーク値)の比率を求め、Feの感度係数を算出しておく。
Feの感度係数=(標準物質のFe濃度)/
(標準物質のFe蛍光X線強度/標準物質のY蛍光X線強度)
【0053】
標準物質を用いてFeの感度係数が算出されると、今度は、所定量のイットリウム(Y)が添加された高レベル放射性廃液にX線を照射し、出力された蛍光X線強度を計測する。そして、出力された蛍光X線強度とFeの感度係数を用いてFe濃度(Fe測定値)を算出する。
Fe測定値=(Fe蛍光強度/添加Y蛍光強度)×(Fe感度係数)
【0054】
また、高レベル放射性廃液にて、
図6に示すように、検出元素に対する金属酸化物の形態がわかっていることから、高レベル放射性廃液に含有する元素の濃度と金属酸化物の分子量に基づいて金属酸化物の濃度を算出する。ここで、検出された金属酸化物の総和が100%となるように濃度換算する。
例えば、Fe
2O
3の濃度を下記数式により算出する。
Fe
2O
3測定値=(Fe測定値×Fe
2O
3分子量)/(Fe原子量×2)
Fe
2O
3濃度=Fe
2O
3測定値/Σ(金属酸化物測定値)
【0055】
ここでは、高レベル放射性廃液におけるFe濃度を求め、このFe濃度から金属酸化物であるFe
2O
3濃度を求めたが、同様の検出方法により、高レベル放射性廃液における全ての金属酸化物の濃度を求める。
【0056】
このように本実施形態の廃液中における金属酸化物の検出装置にあっては、高レベル放射性廃液を充填すると共にX線が透過可能な検出窓25を有する密閉容器14と、密閉容器14の検出窓25を通して高レベル放射性廃液にX線を照射するエックス線照射器15と、X線の照射によって高レベル放射性廃液から発生する蛍光X線を検出する半導体検出器16と、半導体検出器16の検出結果に基づいて高レベル放射性廃液に含有する金属酸化物の濃度を計測する測定装置17とを設けている。
【0057】
従って、エックス線照射器15が密閉容器14の検出窓25を通して高レベル放射性廃液にX線を照射すると、半導体検出器16がX線の照射によって高レベル放射性廃液から発生する蛍光X線を検出し、測定装置17に出力するため、この測定装置17は、半導体検出器16の検出結果に基づいて高レベル放射性廃液に含有する金属酸化物の濃度を計測する。その結果、高レベル放射性廃液中の金属酸化物の総量を精度良く検出することができる。
【0058】
本実施形態の廃液中における金属酸化物の検出装置では、密閉容器14は、検出窓25が鉛直方向の下部に位置するように配置され、エックス線照射器15は、密閉容器14の下方から検出窓25に向けてX線を照射する。従って、密閉容器14内の金属酸化物が溶液中で沈殿することから、下部に位置する検出窓25側に集められることとなり、エックス線照射器15が下方からこの検出窓25に向けてX線を照射することで、適正にX線を金属酸化物に照射することができる。
【0059】
本実施形態の廃液中における金属酸化物の検出装置では、密閉容器14に高レベル放射性廃液を充填する開口部23を設け、開口部23にポリエチレンシート24を装着して閉塞されることで、ポリエチレンシート24により検出窓25を形成している。従って、密閉容器14に開口部23を設けることで、容易に密閉容器14内に廃液を充填することができ、また、この開口部23にポリエチレンシート24を装着することで、容易に開口部23を閉塞して検出窓25を形成することができ、構造の簡素化を可能とすることができる。
【0060】
本実施形態の廃液中における金属酸化物の検出装置では、測定装置17は、検出した蛍光X線と複数種類の元素における蛍光X線の強度比とに基づいて高レベル放射性廃液に含有する金属酸化物の濃度を算出する。従って、例えば、高レベル放射性廃液に所定濃度の内標準物質を添加しておき、検出した蛍光X線における内標準物質と各元素における蛍光X線の強度比を比較することで、複数の金属酸化物の濃度を高精度に算出することができる。
【0061】
本実施形態の廃液中における金属酸化物の検出装置では、測定装置17は、検出した蛍光X線と複数種類の元素における蛍光X線の強度比とに基づいて廃液に含有する元素の濃度を算出し、高レベル放射性廃液に含有する元素の濃度と金属酸化物の分子量に基づいて金属酸化物の濃度を算出する。従って、各元素における蛍光X線の強度比から各元素の濃度を算出し、この各元素の濃度と金属酸化物の分子量に基づいて金属酸化物の濃度を算出することで、金属酸化物の濃度を高精度に算出することができる。
【0062】
また、本実施形態の廃液中における金属酸化物の検出方法にあっては、高レベル放射性廃液に対して所定濃度の内標準物質を添加する工程と、密閉容器14内に充填された高レベル放射性廃液における沈殿物に対してX線を照射する工程と、X線の照射によって高レベル放射性廃液から発生する蛍光X線を検出する工程と、検出結果に基づいて内標準物質と複数種類の元素における蛍光X線の強度比とに基づいて廃液に含有する金属酸化物の濃度を算出する工程とを有する。
【0063】
従って、検出した蛍光X線における内標準物質と各元素における蛍光X線の強度比を比較することで、複数の金属酸化物の濃度を高精度に算出することができる。その結果、高レベル放射性廃液中の金属酸化物の総量を精度良く検出することができる。
【0064】
本実施形態の廃液中における金属酸化物の検出方法では、上部に形成された開口部23から密閉容器14内に高レベル放射性廃液を充填する工程と、開口部23にポリエチレンシート24を装着して開口部23を閉塞する工程と、密閉容器14を上下逆に配置する工程とを設け、密閉容器14の下方からポリエチレンシート24により形成された検出窓25に向けてX線を照射する。従って、高レベル放射性廃液が充填された密閉容器14を上下逆に配置することで、密閉容器14内の金属酸化物が溶液中で沈殿して下部に位置する検出窓25側に集められることとなり、エックス線照射器15が下方からこの検出窓25に向けてX線を照射することで、適正にX線を金属酸化物に照射することができる。
【0065】
なお、上述した実施形態では、密閉容器14の開口部23をポリエチレンシート24により閉塞することで検出窓25を形成したが、この構成に限定されるものではない。ポリエチレンシート24に代えて密閉性の高い蓋を装着してもよい。また、密閉容器の下面に予め検出窓を設けておいてもよい。
【0066】
また、上述した実施形態では、本発明の廃液中における金属酸化物の検出装置及び方法を、使用済核燃料を再処理する過程にて、せん断・溶解工程で発生した高レベル放射性廃液に対して使用するものとしたが、これに限定されるものではなく、いずれの廃液にも使用することができる。
【0067】
また、上述した実施形態では、本発明の廃液中における金属酸化物の検出装置及び方法にて、放射線としてエックス線を用いて説明したが、エックス線に代えて中性子やガンマ線を用いた放射化分析法を適用してもよい。