特許第6517029号(P6517029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6517029機械式駐車装置の制御装置、機械式駐車装置、制御方法及び制御プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6517029
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】機械式駐車装置の制御装置、機械式駐車装置、制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/18 20060101AFI20190513BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20190513BHJP
   G08G 1/14 20060101ALI20190513BHJP
【FI】
   E04H6/18 601A
   G06Q50/10
   G08G1/14 AZEC
【請求項の数】17
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-19737(P2015-19737)
(22)【出願日】2015年2月3日
(65)【公開番号】特開2016-142070(P2016-142070A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】天野 信雄
(72)【発明者】
【氏名】井川 芳克
(72)【発明者】
【氏名】嶋谷 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】福島 大輔
(72)【発明者】
【氏名】藤川 博康
(72)【発明者】
【氏名】柴田 則夫
【審査官】 佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−278215(JP,A)
【文献】 特開2001−158511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/18
G08G 1/14
G06Q 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の入庫及び出庫を行う入出庫部と、車両を載置して搬送するためのパレットが配置された複数の格納棚及び前記パレットが配置されない空き領域となる1箇所以上の格納棚が格子状に配置された格納庫と、前記入出庫部と前記格納庫の間を昇降して前記パレットを搬送する昇降装置と、を備え、前記パレットが前記格納棚間を水平面内で縦方向及び横方向に移動することで、前記格納庫内で車両の搬送を行う機械式駐車装置の制御装置であって、
利用者の過去の入庫及び出庫の日時に関する第1情報と前記機械式駐車装置の特性に関する第2情報とに基づいて、前記利用者のそれぞれについて入庫確率及び出庫確率を含む入出庫確率を時刻毎に算出する算出部と、
前記算出部で算出された前記入出庫確率に基づいて前記パレットの配置を設定する設定部と
を備え
前記利用者は、予め登録されている第1利用者と、前記第1利用者以外の第2利用者とを、含み、
前記算出部は、前記第1利用者についての前記第1情報に対応する第3情報を用いて前記第2利用者の前記入出庫確率を算出する
機械式駐車装置の制御装置。
【請求項2】
前記入出庫確率が閾値を超えるか否かを判断する判断部を更に備え、
前記設定部は、前記入出庫確率が前記閾値を超えると判断された場合、前記入出庫確率に対応する前記パレットが前記昇降装置の周囲の前記格納棚に配置されるように前記パレットの配置を設定する
請求項1に記載の機械式駐車装置の制御装置。
【請求項3】
前記設定部は、前記出庫確率が前記閾値を超えると判断された場合、前記出庫確率に対応する利用者の前記車両を載置する前記パレットが前記昇降装置の周囲の前記格納棚に配置されるように前記パレットの配置を設定する
請求項2に記載の機械式駐車装置の制御装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記出庫確率が前記閾値を超えると判断された利用者の前記車両を移動対象とし、前記出庫確率の高い利用者の前記車両ほど前記昇降装置に近い前記格納棚に配置されるように前記パレットの配置を設定する
請求項3に記載の機械式駐車装置の制御装置。
【請求項5】
前記設定部は、前記入庫確率が前記閾値を超えると判断された場合、前記車両が載置されていない状態の前記パレットが1つ以上前記昇降装置の周囲の格納棚に配置されるように前記パレットの配置を設定する
請求項2から請求項4のうちいずれか一項に記載の機械式駐車装置の制御装置。
【請求項6】
前記第3情報は、前記第1利用者についての前記第1情報に基づいて求められる情報又は前記第1利用者についての前記第1情報に対応するように予め設定される情報である
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の機械式駐車装置の制御装置。
【請求項7】
前記算出部は、利用者の時刻毎の積算入庫回数及び積算出庫回数に基づいて入庫又は出庫が発生する第1入出庫確率を算出し、利用者の1回の駐車当たりの平均駐車時間に基づいて入庫又は出庫が発生する第2入出庫確率を算出し、前記第1入出庫確率及び前記第2入出庫確率を用いて前記入出庫確率を算出する
請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の機械式駐車装置の制御装置。
【請求項8】
前記算出部は、前記第2情報に基づいて、前記第1入出庫確率及び前記第2入出庫確率を算出する
請求項7に記載の機械式駐車装置の制御装置。
【請求項9】
前記算出部は、出庫の際の利用者の待ち時間に基づいて、前記第1入出庫確率及び前記第2入出庫確率を補正する
請求項7又は請求項8に記載の機械式駐車装置の制御装置。
【請求項10】
前記第1情報は、年月日、曜日及び時刻に関する情報を含む
請求項1から請求項9のうちいずれか一項に記載の機械式駐車装置の制御装置。
【請求項11】
前記第2情報は、前記機械式駐車装置の利用形態に関する情報、前記機械式駐車装置が設けられる施設に関する情報、及び前記機械式駐車装置が設けられる地域の天候に関する情報のうち少なくとも1つを含む
請求項1から請求項10のうちいずれか一項に記載の機械式駐車装置の制御装置。
【請求項12】
前記設定部は、設定した配置となるように前記パレットの配置換えの移動を行わせると共に、前記配置換えを行わせているときに入庫又は出庫の指示を検出した場合、入庫又は出庫が完了するまで前記配置換えの移動を中断させる
請求項1から請求項11のうちいずれか一項に記載の機械式駐車装置の制御装置。
【請求項13】
前記設定部は、複数の前記パレットのうち前記車両が配置されていない前記パレットの数及び配置に基づいて、前記パレットの配置を設定する
請求項1から請求項12のうちいずれか一項に記載の機械式駐車装置の制御装置。
【請求項14】
前記入出庫部は、1つの前記昇降装置で入庫と出庫を行い、
前記設定部は、前記昇降装置の周囲に配置する前記パレットのうち前記車両が載置されていない前記パレットの数と前記車両が載置されている前記パレットの数を、前記入庫確率と前記出庫確率とに基づいて設定し、当該設定に基づいて前記パレットを配置する
請求項1から請求項10のうちいずれか一項に記載の機械式駐車装置の制御装置。
【請求項15】
請求項1から請求項14のうちいずれか一項に記載の機械式駐車装置の制御装置を備える機械式駐車装置。
【請求項16】
車両の入庫及び出庫のうち少なくとも一方を行う入出庫部と、車両を載置して搬送するためのパレットが配置された複数の格納棚及び前記パレットが配置されない空き領域となる1箇所以上の格納棚が格子状に配置された格納庫と、前記入出庫部と前記格納庫の間を昇降して前記パレットを搬送する昇降装置と、を備え、前記パレットが前記格納棚間を水平面内で縦方向及び横方向に移動することで、前記格納庫内で車両の搬送を行う機械式駐車装置の制御方法であって、
利用者の過去の入庫及び出庫の日時に関する第1情報と前記機械式駐車装置の特性に関する第2情報とに基づいて、前記利用者のそれぞれについて入庫確率及び出庫確率を含む入出庫確率を時刻毎に算出する算出ステップと、
算出した前記入出庫確率に基づいて前記パレットの配置を設定する設定ステップと
を含み、
前記利用者は、予め登録されている第1利用者と、前記第1利用者以外の第2利用者とを、含み、
前記算出ステップは、前記第1利用者についての前記第1情報に対応する第3情報を用いて前記第2利用者の前記入出庫確率を算出する
機械式駐車装置の制御方法。
【請求項17】
車両の入庫及び出庫のうち少なくとも一方を行う入出庫部と、車両を載置して搬送するためのパレットが配置された複数の格納棚及び前記パレットが配置されない空き領域となる1箇所以上の格納棚が格子状に配置された格納庫と、前記入出庫部と前記格納庫の間を昇降して前記パレットを搬送する昇降装置と、を備え、前記パレットが前記格納棚間を水平面内で縦方向及び横方向に移動することで、前記格納庫内で車両の搬送を行う機械式駐車装置の制御プログラムであって、
利用者の過去の入庫及び出庫の日時に関する第1情報と前記機械式駐車装置の特性に関する第2情報とに基づいて、前記利用者のそれぞれについて入庫確率及び出庫確率を含む入出庫確率を時刻毎に算出する算出処理と、
算出した前記入出庫確率に基づいて前記パレットの配置を設定する設定処理と
をコンピュータに実行させ
前記利用者は、予め登録されている第1利用者と、前記第1利用者以外の第2利用者とを、含み、
前記算出処理は、前記第1利用者についての前記第1情報に対応する第3情報を用いて前記第2利用者の前記入出庫確率を算出する
機械式駐車装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式駐車装置の制御装置、機械式駐車装置、制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両を載せたパレットを入出庫部と格納庫との間で移動させることにより車両の入庫及び出庫を行う各種の機械式駐車装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、いわゆるエレベータ式の機械式駐車装置が記載されている。エレベータ式の機械式駐車装置では、格納庫が複数階に形成され、乗入階と各階を接続する昇降装置(リフト)が設けられる。格納庫の各階には、リフトの左右に格納棚が配置される。各格納棚には、それぞれパレットが配置される。この構成では、各階において、格納棚とリフトとの間で直線方向にパレットが往復移動する。
【0003】
また、機械式駐車装置の一例として、いわゆるパズル式の機械式駐車装置等が知られている。パズル式の機械式駐車装置では、格納庫には、水平面に沿ってN行×M列の格子状に配置された複数の格納棚が設けられる。複数の格納棚には、パレットが配置された格納棚と、パレットが配置されず空き領域となる格納棚とがある。この構成では、パレットが配置された格納棚から空き領域の格納棚へパレットを水平方向に送ることで、パレットの移動が行われる。このパレットの移動を繰り返し行うことで、目的のパレットが指定した位置の格納棚に移動する。
【0004】
前記の機械式駐車装置では、車両の入庫時には、機械式駐車装置の乗入階にある入出庫部にパレットを配置させておく。入庫対象となる車両がパレットに載置され、利用者によって所定の入庫操作が行われた場合、機械式駐車装置は、当該車両を載置したパレットをリフトによって格納庫まで鉛直方向に移動させる。その後、格納庫内で当該パレットを水平方向に移動させることで、車両が格納棚に格納される。
【0005】
また、利用者によって所定の出庫操作が行われた場合、機械式駐車装置は車両の出庫を行う。車両の出庫時、機械式駐車装置は、格納庫内のパレットを順次移動させ、出庫対象となる車両が載置されるパレットをリフトまで移動させる。その後、当該パレットをリフトによって乗入階の入出庫部まで鉛直方向に搬送させることで、車両が出庫される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−158511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような機械式駐車装置では、出庫の際、車両を載置したパレットが格納棚から乗入階まで搬送される時間に応じて、利用者の待ち時間が決まる。例えば、エレベータ式の機械式駐車装置では、出庫車両を載置したパレットを出庫車両の格納階から乗入階までリフトで昇降させる時間が実質的に利用者の待ち時間に影響する。また、パズル式の機械式駐車装置では、出庫車両を載置したパレットを格納棚からリフトまで同一階内で水平方向に搬送する時間が実質的に利用者の待ち時間に影響する。利用者が所定の出庫指示を行った時点で、当該利用者の車両が乗入階から離れた格納棚に格納されていると、車両の搬送時間が長くなるため、利用者の待ち時間が長くなる。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、利用者の待ち時間を短縮させることが可能な機械式駐車装置の制御装置、機械式駐車装置、制御方法及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る機械式駐車装置の制御装置は、車両の入庫及び出庫を行う入出庫部と、車両を載置して搬送するためのパレットが配置された複数の格納棚及び前記パレットが配置されない空き領域となる1箇所以上の格納棚が格子状に配置された格納庫と、前記入出庫部と前記格納庫の間を昇降して前記パレットを搬送する昇降装置と、を備え、前記パレットが前記格納棚間を水平面内で縦方向及び横方向に移動することで、前記格納庫内で車両の搬送を行う機械式駐車装置の制御装置であって、利用者の過去の入庫及び出庫の日時に関する第1情報と前記機械式駐車装置の特性に関する第2情報とに基づいて、前記利用者のそれぞれについて入庫確率及び出庫確率を含む入出庫確率を時刻毎に算出する算出部と、前記算出部で算出された前記入出庫確率に基づいて前記パレットの配置を設定する設定部とを備える。
【0010】
本発明によれば、利用者の過去の入庫及び出庫の日時に関する第1情報と機械式駐車装置の特性に関する第2情報とに基づいて、利用者のそれぞれについて入庫確率及び出庫確率を含む入出庫確率を時刻毎に算出し、この入出庫確率に基づいてパレットの配置を設定するため、利用者に入力操作などの負担をかけることなく、入出庫の際の待ち時間を短縮させることが可能となる。ここで、入出庫部は、入庫部と出庫部とを兼ねた構成や、入庫部と出庫部とが別個に設けられる構成、また、これらの構成を組み合わせた構成を含んでいる。
【0011】
また、機械式駐車装置の利用者は必ずしも同じパターンで車両を使用するとは限らず、例えば曜日(平日と休日)や天候(晴天時と雨天時)等によって車両の使用の有無が異なったり、車両を使用する時間帯が異なったりする場合がある。また、オフィスビルなどのようにランダムに車が出入りする場合もある。これに対して、本発明で算出される入出庫確率は、利用者の過去の傾向のみならず機械式駐車装置の特性についても反映されたものとなるため、より高精度に算出される。これにより、パレットの無駄な配置換えを抑制することができ、無駄な電力の消費を抑制することができる。また、機械式駐車装置の種類によっては、パレットの配置換え運転を中断できないものもあり、配置換え運転中に入出庫の指示があった場合には配置換え運転が完了するまで利用者を待たせることになる。したがって、無駄な配置換えが抑制されることで、無駄な待ち時間の発生が抑制されることになる。
【0012】
上記の機械式駐車装置の制御装置において、前記入出庫確率が閾値を超えるか否かを判断する判断部を更に備え、前記設定部は、前記入出庫確率が前記閾値を超えると判断された場合、前記入出庫確率に対応する前記パレットが前記昇降装置の周囲の前記格納棚に配置されるように前記パレットの配置を設定する。
【0013】
本発明によれば、入出庫確率が閾値を超えると判断された場合に入出庫確率に対応するパレットが昇降装置の周囲の格納棚に配置されるように設定されるため、入出庫確率が閾値を下回る場合にパレットが無駄に配置換えされることが抑制される。
【0014】
上記の機械式駐車装置の制御装置において、前記設定部は、前記出庫確率が前記閾値を超えると判断された場合、前記出庫確率に対応する利用者の前記車両を載置する前記パレットが前記昇降装置の周囲の前記格納棚に配置されるように前記パレットの配置を設定する。
【0015】
本発明によれば、出庫確率が閾値を超えると判断された場合、当該出庫確率に対応する利用者の車両を載置するパレットが昇降装置の周囲の格納棚に配置されるため、出庫確率が閾値を下回る場合にパレットが無駄に配置換えされることが抑制される。
【0016】
上記の機械式駐車装置の制御装置において、前記設定部は、前記出庫確率が前記閾値を超えると判断された利用者の前記車両を移動対象とし、前記出庫確率の高い利用者の前記車両ほど前記昇降装置に近い前記格納棚に配置されるように前記パレットの配置を設定する。
【0017】
本発明によれば、出庫確率が閾値を超える利用者の車両が、出庫確率が高いほど昇降装置に近い格納棚に配置されるため、パレットの無駄な配置換えを抑制することができ、効率的に出庫を行うことができる。
【0018】
上記の機械式駐車装置の制御装置において、前記設定部は、前記入庫確率が前記閾値を超えると判断された場合、前記車両が載置されていない状態の前記パレットが1つ以上前記昇降装置の周囲の格納棚に配置されるように前記パレットの配置を設定する。
【0019】
本発明によれば、入庫確率が閾値を超える場合に、車両が載置されていない状態のパレットが1つ以上昇降装置の周囲の格納棚に配置されるため、入庫の指示があった場合でも無駄な待ち時間の発生が抑制される。
【0020】
上記の機械式駐車装置の制御装置において、前記利用者は、予め登録されている第1利用者と、前記第1利用者以外の第2利用者とを、含み、前記算出部は、前記第2利用者に対して、同一の前記第1情報を用いて前記入出庫確率を算出する。
【0021】
本発明によれば、予め登録されていない第2利用者についても、第1利用者と同様に第1情報及び第2情報を用いて入出庫確率が算出され、当該入出庫確率に基づいてパレットの位置が設定される。これにより、パレットの無駄な配置換えを抑制することができるとともに、第2利用者に対しても入力操作などの負担をかけることなく、入出庫の際の待ち時間を短縮させることが可能となる。
【0022】
上記の機械式駐車装置の制御装置において、前記算出部は、利用者の時刻毎の積算入庫回数及び積算出庫回数に基づいて第1確率を算出し、利用者の1回の駐車当たりの平均駐車時間に基づいて第2確率を算出し、前記第1確率及び前記第2確率を用いて前記入出庫確率を算出する。
【0023】
本発明によれば、利用者の時刻毎の積算入庫回数及び積算出庫回数に基づいて算出された第1確率は、利用者の入出庫の時刻のパターンを反映するものとなる。また、利用者の1回の駐車当たりの平均駐車時間に基づいて算出された第2確率は、利用者が特定のパターンで利用しない傾向や駐車時間が一定になるように機械式駐車装置を利用する傾向を反映するものとなる。この第1確率と第2確率とに基づいて入出庫確率を算出することにより、利用者の傾向がより反映された高精度の入出庫確率が得られる。
【0024】
上記の機械式駐車装置の制御装置において、前記算出部は、前記第2情報に基づいて、前記第1確率及び前記第2確率を算出する。
【0025】
本発明によれば、第1確率及び第2確率に対して、機械式駐車装置の特性が反映されることになるため、より高精度の入出庫確率が得られる。
【0026】
上記の機械式駐車装置の制御装置において、前記算出部は、出庫の際の利用者の待ち時間に基づいて、前記第1確率及び前記第2確率を補正する。
【0027】
本発明によれば、求めた入出庫確率に基づいてパレットの配置を設定し、パレットの移動を行った際、例えば想定よりも待ち時間が長い場合には、第1確率及び第2確率を補正することにより、当該待ち時間を短くできる。
【0028】
上記の機械式駐車装置の制御装置において、前記第1情報は、年月日、曜日及び時刻に関する情報を含む。
【0029】
本発明によれば、利用者の年月日、曜日及び時刻における傾向を入出庫確率に反映させることができる。これにより、高精度の入出庫確率が得られる。
【0030】
上記の機械式駐車装置の制御装置において、前記第2情報は、前記機械式駐車装置の利用形態に関する情報、前記機械式駐車装置が設けられる施設に関する情報、及び前記機械式駐車装置が設けられる地域の天候に関する情報のうち少なくとも1つを含む。
【0031】
本発明によれば、機械式駐車装置の利用形態、機械式駐車装置が設けられる施設、及び機械式駐車装置が設けられる地域の天候を入出庫確率に反映させることができる。これにより、高精度の入出庫確率が得られる。
【0032】
上記の機械式駐車装置の制御装置において、前記設定部は、設定した配置となるように前記パレットの配置換えの移動を行わせると共に、前記配置換えを行わせているときに入庫又は出庫の指示を検出した場合、入庫又は出庫が完了するまで前記配置換えの移動を中断させる。
【0033】
本発明によれば、パレットの配置換えの移動よりも入庫又は出庫を優先させることにより、入庫時及び出庫時における利用者の待ち時間を短縮させることができる。
【0034】
上記の機械式駐車装置の制御装置において、前記設定部は、複数の前記パレットのうち前記車両が配置されていない前記パレットの数及び配置に基づいて、前記パレットの配置を設定する。
【0035】
本発明によれば、車両が配置されていないパレットが昇降装置の周囲に適宜配置されることになるため、出庫のみならず入庫についてもスムーズに行うことが可能となる。これにより、利用者の待ち時間を短縮させることができる。
【0036】
上記の機械式駐車装置の制御装置において、前記入出庫部は、1つの前記昇降装置で入庫と出庫を行い、前記設定部は、前記昇降装置の周囲に配置する前記パレットのうち前記車両が載置されていない前記パレットの数と前記車両が載置されている前記パレットの数を、前記入庫確率と前記出庫確率とに基づいて設定し、当該設定に基づいて前記パレットを配置する。
【0037】
本発明によれば、車両が載置されないパレットと車両が載置されたパレットとをバランスよく配置することができるため、スムーズな入庫及び出庫が可能となる。これにより、入庫時及び出庫時における利用者の待ち時間を短縮させることができる。
【0038】
本発明に係る機械式駐車装置は、上記の機械式駐車装置の制御装置を備える。
【0039】
本発明によれば、利用者に入力操作などの負担をかけることなく、入出庫の際の待ち時間を短縮させることが可能となり、無駄なパレットの移動を抑制することができるため、便利でランニングコストの低い機械式駐車装置を得ることができる。
【0040】
本発明に係る機械式駐車装置の制御方法は、車両の入庫及び出庫のうち少なくとも一方を行う入出庫部と、車両を載置して搬送するためのパレットが配置された複数の格納棚及び前記パレットが配置されない空き領域となる1箇所以上の格納棚が格子状に配置された格納庫と、前記入出庫部と前記格納庫の間を昇降して前記パレットを搬送する昇降装置と、を備え、前記パレットが前記格納棚間を水平面内で縦方向及び横方向に移動することで、前記格納庫内で車両の搬送を行う機械式駐車装置の制御方法であって、利用者の過去の入庫及び出庫の日時に関する第1情報と前記機械式駐車装置の特性に関する第2情報とに基づいて、前記利用者のそれぞれについて入庫確率及び出庫確率を含む入出庫確率を時刻毎に算出するステップと、算出した前記入出庫確率に基づいて前記パレットの配置を設定するステップとを含む。
【0041】
本発明によれば、利用者に入力操作などの負担をかけることなく、入出庫の際の待ち時間を短縮させることが可能となり、無駄なパレットの移動を抑制することができる。
【0042】
本発明に係る機械式駐車装置の制御プログラムは、車両の入庫及び出庫のうち少なくとも一方を行う入出庫部と、車両を載置して搬送するためのパレットが配置された複数の格納棚及び前記パレットが配置されない空き領域となる1箇所以上の格納棚が格子状に配置された格納庫と、前記入出庫部と前記格納庫の間を昇降して前記パレットを搬送する昇降装置と、を備え、前記パレットが前記格納棚間を水平面内で縦方向及び横方向に移動することで、前記格納庫内で車両の搬送を行う機械式駐車装置の制御プログラムであって、利用者の過去の入庫及び出庫の日時に関する第1情報と前記機械式駐車装置の特性に関する第2情報とに基づいて、前記利用者のそれぞれについて入庫確率及び出庫確率を含む入出庫確率を時刻毎に算出する処理と、算出した前記入出庫確率に基づいて前記パレットの配置を設定する処理とをコンピュータに実行させる。
【0043】
本発明によれば、利用者に入力操作などの負担をかけることなく、入出庫の際の待ち時間を短縮させることが可能となり、無駄なパレットの移動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明に係る機械式駐車装置の制御装置、機械式駐車装置、制御方法及び制御プログラムによれば、利用者の待ち時間を短縮させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1図1は、本実施形態に係る機械式駐車装置の一例を示す概略構成図である。
図2図2は、械式駐車装置の制御装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は、制御装置の一部の構成を示すブロック図である。
図4図4は、パレットの配置を設定する手順を示すフローチャートである。
図5A図5Aは、入庫確率を求める過程を模式的に示す図である。
図5B図5Bは、第1出庫確率を求める過程を模式的に示す図である。
図6A図6Aは、パレットの配置を設定する過程を模式的に示す図である。
図6B図6Bは、パレットの配置を設定する過程を模式的に示す図である。
図7A図7Aは、パレットの配置を設定する過程を模式的に示す図である。
図7B図7Bは、パレットの配置を設定する過程を模式的に示す図である。
図8図8は、算出した入出庫確率の一例を示すグラフである。
図9A図9Aは、算出した入出庫確率の一例を示すグラフである。
図9B図9Bは、算出した入出庫確率の一例を示すグラフである。
図10A図10Aは、算出した入出庫確率の一例を示すグラフである。
図10B図10Bは、算出した入出庫確率の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明に係る機械式駐車装置の制御装置及び機械式駐車装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。本実施形態では、車両を載置するパレットを水平循環させるパズル式の機械式駐車装置を例に挙げて説明するが、例えばエレベータ式など、他の方式の機械式駐車場においても、リフト近傍への搬送を乗入部近傍への搬送と読み替えることで、本発明の適用は可能である。
【0047】
図1は、本実施形態に係る機械式駐車装置10の概略構成図である。機械式駐車装置10は、車両12を入出庫させる入出庫部14と、車両12を格納する格納庫20と、入出庫部14と格納庫20との間で昇降して車両12を搬送するリフト(昇降装置)22とを備えている。また、機械式駐車装置10は、これら入出庫部14、格納庫20及びリフト22の動作を統括的に制御する制御装置24を備えている。
【0048】
入出庫部14は、扉26及び操作盤28を有している。扉26は、車両12が入出庫部14に入庫又は出庫する際に開かれる。操作盤28は、機械式駐車装置10の利用者が入庫や出庫などの各種操作を行うためのものである。操作盤28は、入出庫部14の外側に配置される。
【0049】
操作盤28は、例えば、スイッチ、タッチパネル、ICカード、リモコン装置等の入力装置を有している。操作盤28の入力装置は、機械式駐車装置10の利用者による入庫操作や出庫操作等の各種操作を受け付ける。
【0050】
また、操作盤28は、文字や画像、音声などの情報を出力する出力装置を有している。このような出力装置としては、例えば液晶ディスプレイ装置、表示ランプ等の表示装置や、スピーカ等の音声出力装置などが挙げられる。また、出力装置として音声合成装置が設けられてもよい。操作盤28は、出力装置を介して、利用者に種々の情報を提供する。
【0051】
格納庫20は、水平面上に格子状(例えば、N行×M列)に配置された複数の格納棚18を有している。複数の格納棚18は、パレット16が配置される格納棚18と、パレット16が配置されずに空き領域となる格納棚18とを含んでいる。空き領域となる格納棚18は、1箇所以上設けられる。格納棚18は、例えば1台の車両12を収容可能な寸法に形成される。
【0052】
パレット16は、板状に形成され、車両12を載置する。パレット16は、1台分の車両12を載置可能であり、かつ1つの格納棚18に収まる寸法に形成される。パレット16は、複数の格納棚18間を行方向及び列方向に移動する。格納庫20では、車両12を載置した在車パレット16が移動することで、車両12の搬送が行われる。パレット16には、各々異なる識別番号が予め付加されている。パレット16の識別番号は、制御装置24によって識別可能である。
【0053】
図1において、格納庫20の格納棚18は、3段(階)として示されているが、これは一例であって段数は特に限定されず、1段、2段、又は4段以上であってもよい。なお、1つ以上の格納棚18によって構成される1平面の格納庫を格納段(階)と呼ぶ。また、格納庫20は、入出庫部14よりも下段に配置されているが、これに限らず、格納庫20は、入出庫部14よりも上段に配置されていてもよいし、入出庫部14よりも上段及び下段の両方に配置されてもよい。さらに、各段の格納棚18は、リフト22によって接続されており、各段のレイアウト(格納棚の数及び縦横比、配置形状(方形、L字型、ロ字型など)、またパレット16の枚数及び位置等)は、各々同じでも異なっていてもよい。
【0054】
図1において、リフト(昇降装置)22は1基設けることとして示されているが、複数あってもよい。また、リフト22に接続する入出庫部14は1つ示されているが、入出庫階でリフトの左右に接続されるタイプ、複数の入出庫階を持つタイプなどであってもよい。
【0055】
図2は、機械式駐車装置10の制御装置24の電気的構成を示すブロック図である。制御装置24は、CPU(Central Processing Unit)40、各種プログラムや各種パラメータ等が予め記憶されたROM(Read Only Memory)44、CPU40による各種プログラムの実行時のワークエリア等として用いられるRAM(Random Access Memory)45、各種プログラム及び各種情報を記憶する記憶手段としてのHDD(Hard Disk Drive)46を備えている。
【0056】
また、制御装置24は、パレット16やリフト22等を駆動させるためのモータ(不図示)を制御するモータ制御部51、及びパレット16やリフト22等の動作状態を検知するセンサ(不図示)からの信号を受信するセンサ信号受信部52を備えている。
【0057】
CPU40、ROM44、RAM45、HDD46、モータ制御部51、センサ信号受信部52、及び操作盤28は、システムバス53を介して相互に電気的に接続されている。従って、CPU40は、ROM44、RAM45、及びHDD46へのアクセス、操作盤28に対する操作状態の把握及び画像の表示、モータ制御部51を介したモータの駆動、並びにセンサ信号受信部52を介したパレット16やリフト22等の動作状態の把握を行なうことができる。
【0058】
なお、HDD46の代わりに、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)、フラッシュメモリ、バッテリバックアップ付きのSRAM(Static Random Access Memory)等の記憶素子を用いてもよく、プログラム、利用者情報、及び設定値等のデータの種類に応じて記憶素子を使い分けて記憶させてもよい。
【0059】
図3は、CPU40及びHDD46の構成を概略的に示すブロック図である。図3に示すように、HDD46は、入出庫情報記憶部47を有している。入出庫情報記憶部47は、機械式駐車装置10の利用者の過去の入出庫の日時に関する入出庫情報(第1情報)を記憶する。
【0060】
入出庫情報は、利用者の過去の入庫及び出庫の年月日、曜日、時刻についての情報を含む。利用者には、例えば入庫の実績や契約などにより予め登録された利用者(第1利用者)と、それ以外の登録されていない利用者(第2利用者)とが含まれる。入出庫情報は、この予め登録された第1利用者の情報と、登録されていない第2利用者の情報とを含んでいる。
【0061】
予め登録された利用者の情報は、当該利用者の識別情報と対応付けて記憶されている。この利用者の識別情報としては、例えば利用者に配布されるICカードに記憶された情報や、利用者が入庫時に入力する暗証番号などが用いられる。また、例えば利用者の車両のナンバーを検出する不図示の検出部が入出庫部14に配置される場合、当該検出部から得られる情報(車両のナンバー)を利用者の識別情報として用いてもよい。これにより、車両12の入庫時に利用者の識別情報が入力又は検出された場合、当該識別情報に対応する利用者の入出庫情報を読み出すことが可能となっている。また、車両に設置されたETC車載器やその他通信機器のID、利用者が所有する携帯情報端末機器のIDを、識別情報として利用してもよい。
【0062】
また、登録のない利用者(第2利用者)は、過去の入庫や出庫の年月日、曜日、時刻についての実績が存在しない。このため、第2利用者については、例えば過去の実績に相当する情報(入庫や出庫の年月日、曜日、時刻など)を設定し、この設定された情報を入出庫情報とする。したがって、登録のない利用者は、この設定された情報により、1人の同じ利用者として統一して管理される。なお、過去の実績に相当する情報としては、例えば第1利用者についての情報の平均値などを用いてもよい。
【0063】
また、HDD46は、特性情報記憶部48を有している。特性情報記憶部48は、機械式駐車装置10の特性に関する特性情報(第2情報)を記憶する。特性情報としては、例えば機械式駐車装置10の利用形態に関する利用形態情報、機械式駐車装置10が設けられる施設に関する施設情報、及び機械式駐車装置10が設けられる地域の天候に関する天候情報のうち少なくとも1つが含まれる。
【0064】
上記利用形態情報については、例えば機械式駐車装置10の利用契約が時間貸契約及び月極契約のいずれであるか、という情報が含まれる。また、時間貸の場合、例えば単位時間当たりの金額はいくらか、昼間と夜間とで単位時間当たりの駐車料金に区別はあるか、という情報が含まれる。また、月極の場合、例えば契約期間に土曜日、日曜日及び祝日は含まれるか、という情報が含まれる。
【0065】
上記施設情報については、例えば商業施設やマンション、オフィスビルなど、機械式駐車装置10が具体的にどのような種類の施設に設けられるかという情報を含む。例えば、機械式駐車装置10が商業施設に設けられる場合、商品の割引サービスを受けられる日時に関する情報や、催事又はイベントが行われる日時に関する情報なども施設情報に含まれる。なお、利用者の年齢、男女等によって関心となる割引サービス、催事、イベントが異なるため、これらの情報は利用者毎に設定してもよい。また、機械式駐車装置10がマンションに設けられる場合、利用者の通勤時間や日常の買い物等に出かける時間など、利用者の生活パターンに応じた情報なども施設情報に含まれる。また、機械式駐車装置10がオフィスビルに設けられる場合、日勤の事務所、深夜営業の飲食店、ビルの警備会社といった、会社毎に機械式駐車装置10を利用し、しかも利用会社によって利用パターンが異なることが想定される。このため、利用会社毎に管理した方が効率的である。そこで、この場合、利用会社の職種、勤務時間といった利用会社毎の情報を施設情報に含めるようにしてもよい。なお、利用会社に所属する個人の勤務時間など、利用者個人に関する情報を施設情報に含めてもよい。また、駐車車両が社有車である場合、利用会社の情報に加え、社有車の車種やナンバーといった社有車毎の情報を施設情報に含めてもよい。
【0066】
上記天候情報については、例えば機械式駐車装置10が設けられる地域の現状の天気情報を含んでもよいし、当該地域の天気予報の情報(天気情報や降水確率情報など)を含めてもよい。
【0067】
なお、特性情報については、上記のような利用形態情報、施設情報及び天候情報に限定するものではなく、機械式駐車装置10についての情報であって利用者(個人及び会社を含む)が入庫及び出庫の行動を起こすための動機となりうる事項に関する情報であれば、他の種類の情報であってもよい。
【0068】
また、HDD46は、閾値情報記憶部49を有している。閾値情報記憶部49は、後述する入出庫確率の閾値を記憶する。
【0069】
また、HDD46は、制御プログラム記憶部50を有している。制御プログラム記憶部50は、パレット16の配置を設定する制御プログラムを記憶する。この制御プログラムは、上記入出庫情報と上記特性情報とに基づいて、利用者のそれぞれについて入庫確率及び出庫確率を含む入出庫確率を時刻毎に算出する処理と、算出した入出庫確率に基づいてパレット16の配置を設定する処理とをコンピュータに実行させる。
【0070】
CPU40は、ROM44、RAM45、HDD46に記憶された情報やプログラムなどに従って各種演算を行う。CPU40は、算出部41と、判断部42と、設定部43とを有している。算出部41は、HDD46の制御プログラム記憶部50に記憶された制御プログラムに従って、上記の入出庫情報と特性情報とに基づいて、利用者のそれぞれについて入出庫確率を時刻毎に算出する。この入出庫確率は、入庫確率及び出庫確率を含む。入庫確率は、ある時刻において利用者が車両を入庫する確率である。出庫確率は、ある時刻において利用者が車両を出庫する確率である。
【0071】
判断部42は、算出部41で算出された入出庫確率が閾値情報記憶部49に記憶された閾値を超えるか否かを判断する。この閾値は、予め設定されたものであってもよいし、機械式駐車装置10の管理者が適宜変更したものであってもよい。設定部43は、HDD46の制御プログラム記憶部50に記憶された制御プログラムに従って、算出部41で算出された入出庫確率に基づいてパレット16の配置を設定する。また、設定部43は、設定に基づいてパレット16の配置換えの移動を実行する。
【0072】
続いて、上記のように構成された機械式駐車装置10の動作を説明する。まず、利用者により操作盤28に入庫の指示が入力された場合、制御装置24は、入庫処理を行わせる。入庫処理では、制御装置24は、まず車両12が載置されていない空きパレット16を1つ選択し、リフト22まで水平方向に移動させる。その後、制御装置24は、リフト22によって当該パレット16を上昇させ、入出庫部14に移動させる。パレット16が入出庫部14に配置された後、制御装置24は、扉26を開状態とし、操作盤28の出力装置を介して利用者に車両12を入出庫部14のパレット16に載せるように指示する。車両12がパレット16に載置され、利用者が入出庫部14から外に出た後、制御装置24は、扉26を閉状態とし、車両12が載せられたパレット16をリフト22によって下降させる。その後、制御装置24は、パレット16を水平方向に移動させて格納棚18に格納させる。これにより、入庫処理が完了する。
【0073】
また、利用者により操作盤28に出庫の指示が入力された場合、制御装置24は、出庫処理を行わせる。出庫処理では、制御装置24は、出庫の指示を行った利用者の車両12が載せられたパレット16を選択し、リフト22まで水平方向に移動させる。その後、制御装置24は、リフト22によって当該パレット16を上昇させ、入出庫部14に移動させる。パレット16が入出庫部14に配置された後、制御装置24は、扉26を開状態とし、操作盤28の出力装置を介して利用者に車両12を入出庫部14から外に出すように指示する。車両12が入出庫部14から外に出された後、制御装置24は、扉26を閉状態とし、パレット16をリフト22によって下降させる。その後、制御装置24は、パレット16を水平方向に移動させて格納棚18に戻す。これにより、出庫処理が完了する。
【0074】
このようなパズル式の機械式駐車装置10は、車両12が格納棚18からリフト22まで搬送される時間に応じて、利用者の待ち時間が決まる。利用者が出庫の指示を入力した時点で、当該利用者の車両12がリフト22から離れた格納棚18に格納されていると、車両12の搬送時間が長くなるため、利用者の待ち時間が長くなる。
【0075】
本実施形態において、制御装置24は、出庫の可能性が高い利用者の車両がリフト22の周囲に配置されるようにパレット16の配置を設定する。これにより、車両12の搬送時間を短縮し、ひいては利用者の待ち時間を短縮させるようにする。また、利用者の入庫の可能性が高い場合に、リフト22の周囲に空きパレット16が配置されるようにパレット16の配置を設定する。これにより、入庫時の空きパレット16の搬送を短時間で行い、利用者の入庫待ちの時間を短縮させるようにする。以下、パレット16の配置の制御について説明する。
【0076】
図4は、パレット16の配置を設定する手順を示すフローチャートである。図4に示すように、制御装置24は、まず利用者毎の入出庫確率を算出する(ステップS01)。
【0077】
ステップS01において入出庫確率を算出する手順の一例を説明する。算出部41は、入出庫情報記憶部47に記憶される入出庫情報に基づいて、過去に機械式駐車装置10に駐車した際の利用者の時刻毎の積算入庫回数及び積算出庫回数を求める。どの程度の期間の情報を用いるかについては、特に限定するものではなく、例えばすべての利用者で一律の期間の情報を用いるように設定してもよいし、利用者毎に異なる期間の情報を用いるように設定してもよい。図5Aは、ある1人の利用者について、1週間分の積算入庫回数及び入庫確率を示すグラフである。図5Bは、当該利用者について、1週間分の積算出庫回数及び第1出庫確率を示すグラフである。なお、図5A及び図5Bでは、月曜日のデータのみが例示されている。また、図5A及び図5Bの横軸は時刻(単位:時)を示しており、右側の縦軸は積算回数(単位:回)を示している。図5Aの棒グラフに示すように、例えば積算入庫回数は、10時から12時にかけて徐々に増加し、12時から16時にかけて僅かに減少し、その後急激に減少している。また、図5Bの棒グラフに示すように、積算出庫回数は、11時から15時にかけて増加し、15時から17時にかけて横ばいに推移し、その後減少している。
【0078】
次に、算出部41は、求めた積算入庫回数及び積算出庫回数に基づいて、時刻毎に入庫及び出庫が発生する確率をそれぞれ算出する。以下、このように積算回数に基づいて算出された入庫についての確率を入庫確率と表記し、出庫についての確率を第1出庫確率(第1確率)と表記する。図5の左側の縦軸は確率(%)を示している。図5Aの曲線グラフに示すように、入庫確率は、時刻毎の積算入庫回数に対応した値になっている。また、図5Bの曲線グラフに示すように、第1出庫確率は、時刻毎の積算出庫回数に対応した値になっている。
【0079】
算出部41は、利用者毎、曜日毎に入庫確率及び第1出庫確率を求める。この入庫確率及び第1出庫確率は、曜日毎、時刻毎の利用者の傾向が反映される。したがって、例えば曜日毎に一定のパターンで機械式駐車装置10を利用する利用者の入庫確率及び第1出庫確率を求める場合に有効に用いることができる。
【0080】
一方、算出部41は、入出庫情報記憶部47に記憶される入出庫情報に基づいて、利用者の1回の駐車当たりの平均駐車時間を求める。算出部41は、出庫した時刻から入庫した時刻を引いた駐車時間を過去の駐車毎にそれぞれ求め、すべての値を平均することにより、平均駐車時間を求める。
【0081】
次に、算出部41は、利用者が今回入庫した時刻に平均駐車時間を加えた時刻を求める。そして、算出部41は、例えばこの求めた時刻において出庫の発生確率が最大となるように、時刻毎の出庫の発生確率(第2確率)を算出する。以下、この確率を第2出庫確率と表記する。
【0082】
算出部41は、利用者毎、曜日毎に第2出庫確率を求める。この第2出庫確率は、入庫からの経過時間に関して利用者の傾向が反映される。したがって、特定の利用パターンが存在しない利用者や、毎回ほぼ一定の駐車時間で駐車する利用者等の出庫確率を算出する場合に有効に用いることができる。
【0083】
続いて、算出部41は、上記のように算出した第1出庫確率をP1outとし、第2出庫確率をP2outとすると、出庫確率Poutを、
out=α・P1out+β・P2out …(式1)
として算出する。なお、α及びβは係数である。
【0084】
第1出庫確率P1out及び第2出庫確率P2outは、例えば利用者毎、曜日毎、時刻毎に求めることができる。したがって、利用者をid、曜日をd、時刻をtとすると、上記(式1)は、
out(id,d,t
=α・P1out(id,d,t)+β・P2out(id,d,t)…(式2)
と表記することができる。
【0085】
ただし、lは利用者毎に異なる数を示すインデックスであり、mは曜日毎に異なる数を示すインデックスであり、nは時刻毎に異なる数を示すインデックスである。このように、出庫確率Pout(id,d,t)は、利用者毎、曜日毎、時刻毎に求められる。なお、上記の第1出庫確率、第2出庫確率及び出庫確率は、利用者毎、曜日毎、時刻毎に求める場合に限定するものではない。例えば、複数の利用者(例、商業施設の来客、マンションの住人、等)、複数の曜日(平日、休日、1週間毎、等)、複数の時刻(午前と午後、昼間と夜間、等)についての値を総計した値であってもよい。
【0086】
次に、算出部41は、機械式駐車装置10の特性情報に基づいて、利用者毎に(式1)又は(式2)における係数α及びβを設定する。例えば、利用者が曜日毎に一定のパターンで機械式駐車装置10を利用する傾向にある場合、算出部41は、α>βとなるように係数α、βを設定する。これにより、出庫確率Poutの値は、第1出庫確率P1outの値が第2出庫確率P2outの値よりも反映される。
【0087】
例えば機械式駐車装置10の利用形態が月極の駐車場の場合、利用者は駐車時間に関係なく入出庫を行い、しかも同一曜日において出庫の時刻が同一のパターンになりやすいと想定できる。
【0088】
また、例えば機械式駐車装置10が商業施設に設けられる場合、利用者は割引サービスや催事、イベントの時間帯に合わせて機械式駐車装置10を利用することが想定できる。この場合、上記時間帯においてパターンが生じるものと想定できる。また、例えば機械式駐車装置10がマンションに設けられる場合、利用者の通勤時間や日常の買い物等に出かける時間など、利用者の生活パターンに合わせて機械式駐車装置10を利用することが想定できる。さらに、例えば機械式駐車装置10がオフィスビルに設けられる場合、利用会社がそれぞれの勤務形態に応じたパターンで機械式駐車装置10を利用することが想定できる。
【0089】
また、例えば機械式駐車装置10が設けられる地域の天候に応じて利用者が車を入庫又は出庫させることが想定できる。
【0090】
このように出庫の時刻が特定のパターンに従って行われる傾向にある場合、α>βとなるように係数α、βを設定することにより、利用者の出庫時刻のパターンが反映された出庫確率を求めることができる。これにより、利用者の出庫確率を高精度に求めることができる。
【0091】
一方、算出部41は、例えば利用者が特定のパターンで利用しない場合や、駐車時間が一定になるように機械式駐車装置10を利用する傾向にある場合、算出部41は、α<βとなるように係数α、βを設定する。これにより、出庫確率Poutの値は、第2出庫確率P2outの値が第1出庫確率P1outの値よりも反映される。
【0092】
例えば時間貸の駐車場の場合、利用者は、入庫してからの駐車時間に応じて出庫のタイミングを決定する傾向にあると想定できる。したがって、算出部41は、このような場合には、α<βとなるように係数α、βを設定する。また、この場合、単位時間当たりの金額が高いほど、利用者は駐車時間に応じて出庫を行う傾向が強くなると想定できる。したがって、算出部41は、例えば単位時間当たりの金額が高い場合ほど係数αの値が小さく、係数βの値が大きくなるように調整することができる。例えば昼間と夜間とで駐車料金に区別がある場合について、算出部41は、昼間及び夜間のうち単位時間当たりの金額が高い時刻に入庫した場合には、単位時間当たりの金額が低い時刻に入庫した場合に比べて、係数βの値を大きくするように調整できる。
【0093】
また、例えば機械式駐車装置10が商業施設に設けられる場合、割引サービスや催事、イベント等がなければ、利用者は日常品の買い物を終えると帰宅する。この場合、買い物に要する時間は利用者毎に概ね一定となると想定できる。したがって、算出部41は、このような場合には、α<βとなるように係数α、βを設定する。
【0094】
このように、利用者が特定のパターンで利用しない場合や駐車時間が一定になるように機械式駐車装置10を利用する傾向にある場合、α<βとなるように係数α、βを設定することにより、利用者の過去の平均駐車時間が反映された出庫確率を求めることができる。これにより、利用者の出庫確率を高精度に求めることができる。以上のように、ステップS01において入出庫確率が算出される。
【0095】
次に、制御装置24は、算出された入出庫確率の値が閾値を超えているか否かの判断を行う(ステップS02)。ステップS02において、判断部42は、機械式駐車装置10の各稼働日における時刻毎の入出庫確率について、利用者毎に閾値を超えているか否かを判断する。
【0096】
閾値を超える入出庫確率が存在した場合(ステップS02のYES)、制御装置24は、当該閾値を超えた入出庫確率に対応するパレット16がリフト22の周囲の格納棚18に配置されるようにパレット16の配置を設定する(ステップS03)。なお、閾値を超える出庫確率が存在しなかった場合(ステップS02のNO)、制御装置24は、ステップS01に戻って処理を行う。
【0097】
以下、ステップS03においてパレット16の配置を設定する手順の一例を説明する。まず、出庫確率が閾値を超えると判断された場合についての手順を説明する。この場合、設定部43は、出庫確率に対応する利用者の車両12を載置するパレット16がリフト22の周囲の格納棚18に配置されるようにパレット16の配置を設定する。
【0098】
図6は、格納庫20内におけるリフト22(入出庫部14)、格納棚18、パレット16及び車両12の位置関係を模式的に示す図である。図6では、5行7列の格納棚18が配置される場合を例に挙げているが、これに限定するものではない。図6では、列番号をA〜Eと表示し、行番号をa〜gと表示している。1つの格納棚18の位置を表記する場合、「位置(列番号、行番号)」と表記する。例えば図中最も左上の格納棚18の位置を表記する場合には位置(A、a)と表記する。なお、リフト22は、位置(C、c)に配置される。
【0099】
図6Aにおいて、例えば位置(B、f)の格納棚18に格納された車両12Aの利用者の出庫確率のみが閾値を超えているとする。この場合、設定部43は、車両12Aがリフト22の周囲に配置されるようにパレット16の配置を設定する。
【0100】
リフト22の周囲の位置としては、一例として、リフト22に対して2つ以内の距離にある格納棚18、つまり、位置(A、c)、位置(B、b)、位置(B、c)、位置(B、d)、位置(C、a)、位置(C、b)、位置(C、d)、位置(C、e)、位置(D、b)、位置(D、c)、位置(D、d)、位置(E、c)の合計12個の格納棚18とすることができる。勿論、リフト22の周囲としては、これに限定するものではない。
【0101】
以下では、設定部43が、図6Aに示すように、車両12Aを載置したパレット16の移動先を、一例としてリフト22の図中右隣の位置(C、d)に設定する場合を例に挙げて説明する。この場合、設定部43は、位置(B、f)のパレット16を位置(C、d)に移動させるための移動手順を設定する。例えば、まず空き領域である位置(B、d)に、位置(B、e)のパレット16を移動させる。次に、新たに空き領域となった位置(B、e)に、位置(B、f)のパレット16(車両12Aを載置したパレット16)を移動させる。次に、空き領域となった位置(B、f)に、位置(C、f)のパレット16を移動させる。次に、空き領域となった位置(C、f)に、位置(C、e)のパレット16を移動させる。そして、空き領域となった位置(C、e)に、位置(C、d)のパレット16を移動させる。その後、上記5つのパレットを反時計回りに1つずつ順に移動させることで、図6Aにおいて位置(B、f)に配置されるパレット16は、位置(B、f)→位置(B、e)→位置(B、d)→位置(C、d)と順に移動する。この移動後のパレット16の配置は、図6Bに示すようになる。以上により、パレット16の配置の設定が完了する。
【0102】
なお、複数の利用者の出庫確率が閾値を超える場合、設定部43は、出庫確率の高い利用者の車両ほどリフト22に近い格納棚18に配置されるようにパレット16の配置を設定する。図7は、格納庫20内におけるリフト22(入出庫部14)、格納棚18、パレット16及び車両12の位置関係を模式的に示す図である。図7では、図6と同様に、5行7列の格納棚18が配置される場合を例に挙げているが、これに限定するものではない。また、図7においても、列番号をA〜Eと表示し、行番号をa〜gと表示している。
【0103】
図7Aにおいて、例えば位置(B、e)の格納棚18に格納された車両12Bの利用者、及び位置(B、f)の格納棚18に格納された車両12Cの利用者の2人の利用者の出庫確率が閾値を超えているとする。この場合、設定部43は、車両12B、車両12Cがリフト22の周囲に配置されるように、かつ、出庫確率の高い利用者の車両ほどリフト22に近い位置の格納棚18に配置されるようにパレット16の配置を設定する。
【0104】
以下では、設定部43が、図7Aに示すように、一例として位置(B、e)のパレット16の移動先を位置(C、d)に設定し、位置(B、f)のパレット16の移動先を位置(B、d)に設定する場合を例に挙げて説明する。この場合、設定部43は、それぞれのパレット16の移動手順を設定する。例えば、位置(B、e)、位置(B、f)、位置(C、d)、位置(C、e)、位置(C、f)の5つのパレット16を反時計回りに1つずつ順に移動させることで、図7Aにおいて位置(B、e)に配置されるパレット16は、位置(B、e)→位置(B、d)→位置(C、d)と順に移動する。図7Aにおいて位置(B、f)に配置されるパレット16は、位置(B、f)→位置(B、e)→位置(B、d)と順に移動する。この移動後のパレット16の配置は、図7Bに示すようになる。
【0105】
また、入庫確率が閾値を超えると判断された場合、設定部43は、車両12が載置されていない状態のパレット16が1つ以上リフト22の周囲の格納棚18に配置されるようにパレットの配置を設定する。なお、図6及び図7に示す例では、リフト22の周囲の位置(D、c)に空きパレット16が配置されている。この場合、設定部43は、パレット16の位置を変更しないようにする。また、複数の利用者の入庫確率が閾値を超えると判断された場合、設定部43は、閾値を超えた利用者数以上の数の空きパレット16がリフト22の周囲に配置されるようにパレット16の位置を設定する。この場合においても、閾値を超えた利用者数以上の空きパレット16がリフト22の周囲に配置されている場合、パレット16の位置を変更しないようにする。これにより、パレット16の無駄な配置換えが抑制される。以上により、パレット16の配置の設定が完了する。
【0106】
パレット16の配置の設定が完了した後、設定部43は、パレット16の移動開始のフラグの有無を検出する(ステップS04)。パレット16の移動開始のフラグがある場合として、例えば、機械式駐車装置10の利用を開始してから所定時間が経過した場合や、前回パレット16の移動を行ってから所定時間が経過した場合、所定数以上の利用者の入出庫確率が閾値を超えた場合などが挙げられる。これらのフラグは、機械式駐車装置10の管理者等が適宜設定することができる。また、機械式駐車装置10の管理者が手動によりパレット16の移動開始のフラグを立ててもよい。なお、設定部43は、入庫及び出庫の動作が行われている場合には、パレット16の移動開始のフラグがある場合であっても、フラグを取り消すようにする。これにより、入庫動作及び出庫動作の間、当該パレット16の移動が行われないようにできる。
【0107】
パレット16の移動開始のフラグが立っている場合(ステップS04のYES)、設定部43は、パレット16の移動を開始させる(ステップS05)。ステップS05において、設定部43は、ステップS03で設定した配置となるようにパレット16を移動させる。パレット16の移動開始のフラグが立っていない場合又はフラグが取り消された場合(ステップS04のNO)、制御装置24は、ステップS01に戻って処理を行う。
【0108】
パレット16の移動が開始された後、設定部43は、パレット16の移動中に入庫又は出庫の指示があるか否かを検出する(ステップS06)。パレット16の移動中に入庫又は出庫の指示が検出された場合(ステップS06のYES)、設定部43は、パレット16の移動を中断させる(ステップS08)。その後、設定部43は、入庫処理又は出庫処理が完了したか否かを検出する(ステップS09)。入庫処理又は出庫処理の完了が検出されない場合(ステップS09のNO)、設定部43は、パレット16の移動を中断させた状態を維持する。
【0109】
ここで、入庫処理及び出庫処理により、複数のパレット16の配置が中断前に対して変化したり、リフト22の周囲に配置しようとしていた利用者の車両12が出庫されたりする場合がある。このような場合、パレット16の配置を再度設定する必要がある。したがって、入庫処理又は出庫処理の完了が検出された場合(ステップS09のYES)、設定部43は、パレット16の配置を再設定する必要があるか否かを判断する(ステップS10)。再設定が必要と判断した場合(ステップS10のYES)、制御装置24は、ステップS01に戻って処理を行う。再設定が不要と判断した場合(ステップS10のNO)、設定部43は、パレット16の移動を再開させる(ステップS11)。
【0110】
その後、パレット16の移動が完了した場合(ステップS07)、制御装置24は、処理を終了するか否かの判断を行う(ステップS12)。制御装置24は、処理を続行する場合には(ステップS12のNO)ステップS01に戻って処理を行い、それ以外の場合には、処理を終了する(ステップS12のYES)。
【0111】
パレット16の移動が完了した後、利用者によって操作盤28から出庫の指示が入力された場合、制御装置24は、出庫処理を行わせる。リフト22が1基しか設けられないパズル式の機械式駐車装置10では、車両が続けて入庫されるとリフト22の周囲で車両が滞留する場合がある。その結果、例えば先に入庫した車両がリフト22から離れた格納棚18へ順に移動させられてしまう場合がある。これに対して、本実施形態では、制御装置24が出庫確率を算出し、これに基づいてパレット16を移動させる。このため、例えば一旦リフト22から離れた格納棚18に移動させられた利用者の車両12A、12B、12C等であっても、リフト22の周囲の格納棚18に配置されることになる。よって、出庫時にはリフト22までの移動時間が短くて済むため、利用者の待ち時間が短くて済む。
【0112】
また、例えば利用者によって操作盤28から入庫の指示が入力された場合、制御装置24は、入庫処理を行わせる。本実施形態では、制御装置24が入庫確率を算出し、これに基づいてパレット16を移動させる。このため、例えばリフト22の周囲に車両が滞留することがあっても、リフト22の周囲の格納棚18に空きパレット16が配置されることになる。よって、入庫時の空きパレット16の移動時間が短くて済むため、利用者の待ち時間が短くて済む。
【0113】
以下、パレット16の移動の制御についての具体的な例を説明する。図8は、マンションに設置された機械式駐車装置10において、車で通勤する利用者の入出庫確率の一例を示すグラフである。図6では、曜日毎の入出庫確率をまとめて1週間当たりの値となっている。当該利用者は、平日の7時頃に通勤するため7時台の出庫確率が90%程度と高いピーク値を示している。また、休日(土日等)には昼間にも車を使用するため、昼の時間帯(10時頃から16時頃まで)でも出庫確率が20%〜30%程度の値を示している。また、出庫確率については、19時から20時頃に80%とピーク値を示している。利用者の帰宅時間が日によってばらつくため、入庫確率のピークについては、ピーク幅が出庫確率よりも広く、ピーク値が出庫確率よりも低くなっている。
【0114】
図8に示すような入出庫確率の場合、例えば出庫確率のピーク値が高い値を示しているため、制御装置24は、ピークが開始される前の時刻(例、5時〜6時の間頃)に利用者の車両12を載せたパレット16をリフト22の周囲に配置させておく。また、入庫確率のピーク値が高い値を示しているため、制御装置24は、ピークが開始される前の時刻(18時頃)に空きパレット16をリフト22の周囲に配置させておく。これにより、利用者の入出庫の待ち時間を短く済ませることができる。この場合、利用者の入出庫確率が高いため、パレット16の無駄な配置換えとはならない。
【0115】
図9は、マンションに設置された機械式駐車装置10において、一家で車を所有し徒歩で通勤する利用者の入出庫確率の一例を示すグラフである。図9Aは晴天日の入出庫確率、図9Bは雨天日の入出庫確率をそれぞれ示している。
【0116】
図9Aに示すように、晴天日には利用者は徒歩で通勤するため6時から8時の時間帯は車を使用することが少なく、出庫確率が低くなっている。また、利用者の家族(例、配偶者等)が買い物や他の家族(例、子等)の送迎で昼間の時間帯に車を使用するが、定期的ではないため、出庫確率のピーク値は低い値を示している。また、車で外出した後、夕食前の時間帯までに戻るため、入庫確率については16時〜17時がピークとなっているが、ピーク値は低い値を示している。
【0117】
一方、図9Bに示すように、雨天日には、利用者の家族が利用者を車に乗せて送迎するため、出庫確率が出勤の時間帯である6時〜8時頃には70%程度と高いピーク値を示している。また、帰宅の時間帯である17時〜19時頃には、50%程度と高いピーク値を示している。入庫確率については、利用者を送迎した後にすぐに帰宅して入庫するため、それぞれ出庫の1時間程度後の入庫確率が高いピーク値を示している。
【0118】
図9A及び図9Bに示すような入出庫確率の場合、晴天日の入出庫確率は全体的に低いため、制御装置24は、当該利用者についてはパレット16の配置換えを行わないようにする。また、雨天日の通勤(出勤及び帰宅)時間帯に出庫の可能性が高くなるというパターンが読み取れる。よって、制御装置24は、雨天日には通勤時間帯の前に利用者の車両12を載せたパレット16をリフト22の周囲に配置させておく。また、出庫から入庫までの時間が短いため、車両12を載せたパレット16の移動とともに、入庫用の空きパレット16についてもリフト22の周囲に配置させておく。これにより、パレット16の無駄な配置換えを抑制しつつ、利用者の入出庫の待ち時間を短く済ませることができる。
【0119】
図10は、商業施設に設置された機械式駐車装置10において、当該機械式駐車装置10を利用する全ての利用客を1グループとした場合の入出庫確率の一例を示すグラフである。図10Aは商業施設でイベントが行われない場合の入出庫確率を示し、図10Bは商業施設で18時から20時の間、例えば割引セールなどのイベントが行われる場合の入出庫確率を示す。
【0120】
図10A及び図10Bを比較すると、イベントが行われる日には、入庫確率は15時頃にピークとなり、その後減少している。出庫確率は、17時から18時頃にピークとなり、その後減少している。一方、イベントが行われる日には、入庫確率は15時にピークを示した後、1時間程度の間でわずかに減少する。そして、イベントが開始される18時頃にかけて再度ピークを示す。出庫確率については、17時頃に一旦ピークを示し、その後19時頃に再度ピークを示す。
【0121】
このように、イベントが行われない場合には、夕方、例えば17時以降において入庫確率が減少し、入庫確率よりも出庫確率の方が高くなる。この場合、制御装置24は、パレット16の配置を設定する際に、出庫する利用者を優先させるようにする。つまり、制御装置24は、リフト22の周囲に配置される空きパレット16の数が少なくなり、閾値を超える出庫確率の利用者の車両ができるだけリフト22の周囲に配置されるように設定する。
【0122】
また、イベントが行われる場合には、夕方、17時以降の出庫確率が減少し、一時的に出庫確率よりも入庫確率の方が高くなる。この場合、制御装置24は、パレット16の配置を設定する際に、入庫する利用者を優先させるようにする。つまり、リフト22の周囲にできるだけ多くの空きパレット16が配置されるように設定する。これにより、入庫時間及び出庫時間を極力短くすることができ、利用者の待ち時間を減少することができる。
【0123】
以上のように、本実施形態によれば、利用者の過去の入庫及び出庫の日時に関する入出庫情報と機械式駐車装置10の特性に関する特性情報とに基づいて、利用者のそれぞれについて入庫確率及び出庫確率を含む入出庫確率を時刻毎に算出し、この入出庫確率に基づいてパレット16の配置を設定するため、利用者に入力操作などの負担をかけることなく、入出庫の際の待ち時間を短縮させることが可能となる。
【0124】
また、機械式駐車装置10の利用者は必ずしも同じパターンで車両を使用するとは限らず、例えば曜日(平日と休日)や天候(晴天時と雨天時)等によって車両の使用の有無が異なったり、車両を使用する時間帯が異なったりする場合がある。また、オフィスビルなどのようにランダムに車が出入りする場合もある。これに対して、本実施形態で算出される入出庫確率は、利用者の過去の傾向のみならず機械式駐車装置10の特性についても反映されたものとなるため、より高精度に算出される。これにより、パレット16の無駄な配置換えを抑制することができ、無駄な電力の消費を抑制することができる。また、機械式駐車装置の種類によっては、パレット16の配置換え運転を中断できないものもあり、配置換え運転中に入出庫の指示があった場合には配置換え運転が完了するまで利用者を待たせることになる。したがって、無駄な配置換えが抑制されることで、無駄な待ち時間の発生が抑制されることになる。
【0125】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、入出庫部14において車両12の入庫及び出庫を1つのリフト22で行う構成を例に挙げて説明したが、これに限定するものではない。例えば、入庫部と出庫部とが別個に設けられ、入庫部及び出庫部のそれぞれにリフトが設けられた構成であっても、本発明の適用は可能である。この場合、入庫部のリフトの周囲では入庫確率を優先させたパレットの配置とし、出庫部のリフトの周囲では出庫確率を優先させたパレットの配置とすることができる。
【0126】
また、上記実施形態において、出庫確率Poutの係数α、βの設定方法を説明したが、制御装置24は、一旦設定されたα、βの値を補正又は変更してもよい。一例として、制御装置24は、α、βを設定して入出庫確率を算出し、当該入出庫確率に基づいた配置となるようにパレット16を移動させる場合、利用者の入庫待ち時間又は出庫待ち時間を測定しておく。そして、制御装置24は、測定した待ち時間が想定していた時間(閾値)よりも長い場合には、当該待ち時間が短縮されるようにα、βの値を補正する。例えば、制御装置24は、第1出庫確率P1out及び第2出庫確率P2outの標準偏差をそれぞれ求め、標準偏差の大きい方(特性にバラつきがある方)の係数を減少させ、標準偏差の小さい方(特性がある値に集まっている方)の係数を増加させる。この補正により、利用者が同一のパターンで機械式駐車装置10を利用する傾向にある場合には、αの値が大きくなる。また、利用者が不規則に又は駐車時間に応じて機械式駐車装置10を利用する傾向にある場合には、βの値が大きくなる。このように、係数α、βの値を適宜補正することにより、出庫確率をより高精度に算出することができる。
【0127】
また、上記実施形態においてパレット16の配置を設定する際、制御装置24は、車両12の載置されていない空きパレット16がリフト22の周囲に何個配置されているかを検出し、検出結果に応じてパレット16の配置を設定してもよい。一例として、リフト22の周囲に空きパレット16が所定数を超えて配置されている場合、制御装置24は、リフト22の周囲の空きパレット16の数が所定数以下となるように、車両12を載置した在車パレット16をリフト22の周囲に配置させる。このとき、制御装置24は、その時点で出庫確率の高い順に車両12を選択し、選択した在車パレット16をリフト22の周囲に配置させる。これにより、リフト22の周囲には空きパレット16と在車パレット16とがバランスよく配置されることになる。よって、入庫の利用者及び出庫の利用者のそれぞれについて、待ち時間を短縮させることができる。
【0128】
また、上記実施形態においてパレット16の配置を設定する際、制御装置24は、機械式駐車装置10の利用者全体又は複数利用者の入庫確率と出庫確率との比率に応じて、リフト22の周囲の空きパレット16の数と在車パレット16の数とを設定してもよい。つまり、入庫確率が出庫確率よりも高い場合、制御装置24は、空きパレット16の数が在車パレット16の数よりも多くなるようにパレット16の配置を設定する。また、出庫確率が入庫確率よりも高い場合、制御装置24は、在車パレット16の数が空きパレット16の数よりも多くなるようにパレット16の配置を設定する。このとき、制御装置24は、リフト22の周囲に配置させる車両12を、出庫確率の高い順に選択する。したがって、利用者全体で入庫確率の高い時間帯にはリフト22の周囲に空きパレット16が多く準備される。また、利用者全体で出庫確率の高い時間帯にはリフト22の周囲に在車パレット16が配置され、しかも出庫確率の高い順に車両12が配置される。これにより、入庫時及び出庫時の待ち時間を短縮させることができる。
【0129】
また、上記実施形態においてパレット16を移動させる前に、制御装置24は、通信機器等を介して、利用者に車両12の搬送を行う旨を通知してもよい。この場合、利用者に搬送の可否を確認する内容の通知であってもよい。利用者から車両12の搬送を行わない旨の指示があった場合には、制御装置24は、パレット16の移動を中止する。これにより、無駄なパレット16の配置換えを行わずに済む。
【0130】
また、上記実施形態においてパレット16の配置を設定する際、制御装置24は、ステップS01からステップS03を行った後に、パレット16の移動開始のフラグの有無を検出するようにしたが、これに限定するものではない。例えば、処理の最初に(ステップS01を行う前に)パレット16の移動開始のフラグの有無を検出し、パレット16の移動開始のフラグがある場合毎にステップS01から順に処理を行うようにしてもよい。
【0131】
また、上記実施形態では、利用者が機械式駐車装置10の操作を行う場合を例に挙げて説明したが、これに限定するものではない。例えば、機械式駐車装置10の管理者(例、係員等)が操作を行ってもよい。
【0132】
また、上記実施形態において時刻毎の入出庫確率を算出する場合には、例えば1時間毎、30分毎、10分毎など、所定の時刻毎に算出すればよい。また、入出庫の多い時間帯は短い時間間隔で算出するなど、異なる間隔で算出してもよい。
【符号の説明】
【0133】
10…機械式駐車装置
12…車両
14…入出庫部
16…パレット
18…格納棚
20…格納庫
24…制御装置
41…算出部
42…判断部
43…設定部
46…HDD
47…入出庫情報記憶部
48…特性情報記憶部
49…閾値情報記憶部
50…制御プログラム記憶部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10A
図10B