【実施例】
【0018】
図1は、本発明の実施例の制御装置Cを備えた工作機械100の概略を示す図である。
工作機械100は、回転手段としての主軸110と、刃物台としての切削工具台130Aとを備えている。
主軸110の先端にはワーク保持手段としてのチャック120が設けられている。
チャック120を介して主軸110にワークWが保持される。
主軸110は、図示しない主軸モータの動力によって回転駆動されるように主軸台110Aに支持されている。
【0019】
主軸台110Aは、工作機械100のベッド側に、Z軸方向送り機構160によって主軸110の軸線方向となるZ軸方向に移動自在に搭載されている。
主軸110は、主軸台110Aを介してZ軸方向送り機構160によって、前記Z軸方向に移動する。
Z軸方向送り機構160は、主軸110をZ軸方向に移動させる主軸移動機構を構成している。
【0020】
Z軸方向送り機構160は、前記ベッド等のZ軸方向送り機構160の固定側と一体的なベース161と、ベース161に設けられたZ軸方向に延びるZ軸方向ガイドレール162とを備えている。
Z軸方向ガイドレール162に、Z軸方向ガイド164を介してZ軸方向送りテーブル163がスライド自在に支持されている。
Z軸方向送りテーブル163側にリニアサーボモータ165の可動子165aが設けられ、ベース161側にリニアサーボモータ165の固定子165bが設けられている。
【0021】
Z軸方向送りテーブル163に主軸台110Aが搭載され、リニアサーボモータ165の駆動によってZ軸方向送りテーブル163が、Z軸方向に移動駆動される。
Z軸方向送りテーブル163の移動によって主軸台110AがZ軸方向に移動し、主軸110のZ軸方向への移動が行われる。
【0022】
切削工具台130Aには、ワークWを旋削加工するバイト等の切削工具130が装着されている。
切削工具台130Aは、工作機械100のベッド側に、X軸方向送り機構150及び図示しないY軸方向送り機構によって、前記Z軸方向に直交するX軸方向と、前記Z軸方向及びX軸方向に直交するY軸方向とに移動自在に設けられている。
X軸方向送り機構150とY軸方向送り機構とによって、切削工具台130Aを主軸110に対して前記X軸方向及びY軸方向に移動させる刃物台移動機構が構成されている。
【0023】
X軸方向送り機構150は、X軸方向送り機構150の固定側と一体的なベース151と、ベース151に設けられたX軸方向に延びるX軸方向ガイドレール152とを備えている。
X軸方向ガイドレール152に、X軸方向ガイド154を介してX軸方向送りテーブル153がスライド自在に支持されている。
【0024】
X軸方向送りテーブル153側にリニアサーボモータ155の可動子155aが設けられ、ベース151側にリニアサーボモータ155の固定子155bが設けられている。
リニアサーボモータ155の駆動によってX軸方向送りテーブル153が、X軸方向に移動駆動される。
なお、Y軸方向送り機構は、X軸方向送り機構150をY軸方向に配置したものであり、X軸方向送り機構150と同様の構造であるため、構造についての詳細な説明は割愛する。
【0025】
図1においては、図示しないY軸方向送り機構を介してX軸方向送り機構150を前記ベッド側に搭載し、X軸方向送りテーブル153に切削工具台130Aが搭載されている。
切削工具台130Aは、X軸方向送りテーブル153の移動駆動によってX軸方向に移動し、Y軸方向送り機構が、Y軸方向に対して、X軸方向送り機構150と同様の動作をすることによって、Y軸方向に移動する。
【0026】
なお、図示しないY軸方向送り機構を、X軸方向送り機構150を介して前記ベッド側に搭載し、Y軸方向送り機構側に切削工具台130Aを搭載してもよく、Y軸方向送り機構とX軸方向送り機構150とによって切削工具台130AをX軸方向及びY軸方向に移動させる構造は従来公知であるため、詳細な説明及び図示は割愛する。
【0027】
前記刃物台移動機構(X軸方向送り機構150とY軸方向送り機構)と前記主軸移動機構(Z軸方向送り機構160)とが協動し、X軸方向送り機構150とY軸方向送り機構によるX軸方向とY軸方向への切削工具台130Aの移動と、Z軸方向送り機構160による主軸台110A(主軸110)のZ軸方向への移動によって、切削工具台130Aに装着されている切削工具130は、ワークWに対して相対的に任意の加工送り方向に送られる。
【0028】
前記主軸移動機構と前記刃物台移動機構とから構成される送り手段により、切削工具130を、ワークWに対して相対的に任意の加工送り方向に送ることによって、
図2に示すように、ワークWは、切削工具130により任意の形状に切削加工される。
【0029】
なお、本実施形態においては、主軸台110Aと切削工具台130Aの両方を移動するように構成しているが、主軸台110Aを工作機械100のベッド側に移動しないように固定し、刃物台移動機構を、切削工具台130AをX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動させるように構成してもよい。
この場合、前記送り手段が、切削工具台130AをX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動させる刃物台移動機構から構成され、固定的に位置決めされて回転駆動される主軸110に対して、切削工具台130Aを移動させることによって、切削工具130をワークWに対して加工送り動作させることができる。
【0030】
また、切削工具台130Aを工作機械100のベッド側に移動しないように固定し、主軸移動機構を、主軸台110AをX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動させるように構成してもよい。
この場合、前記送り手段が、主軸台110AをX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動させる主軸台移動機構から構成され、固定的に位置決めされる切削工具台130Aに対して、主軸台110Aを移動させることによって、切削工具130をワークWに対して加工送り動作させることができる。
また、本実施例では、切削工具130に対してワークWを回転させる構成としたが、ワークWに対して切削工具130を回転させる構成としてもよい。
【0031】
主軸110の回転、Z軸方向送り機構160、X軸方向送り機構150、Y軸方向送り機構は、制御装置Cが有する制御部C1によって駆動制御される。
制御部C1は、各送り機構を振動手段として、各々対応する移動方向に沿って往復振動させながら、主軸台110A又は切削工具台130Aを各々の方向に移動させるように制御する振動制御手段を備えている。
【0032】
各送り機構は、制御部C1の制御により、主軸110又は切削工具台130Aを、1回の往復振動において、所定の前進量だけ前進(往動)移動してから所定の後退量だけ後退(復動)移動し、その差の進行量だけ各移動方向に移動させ、協動してワークWに対して切削工具130を加工送り方向に送る。
工作機械100は、Z軸方向送り機構160、X軸方向送り機構150、Y軸方向送り機構により、切削工具130が加工送り方向に沿った往復振動しながら、主軸1回転分、すなわち、主軸位相0°から360°まで変化したときの前記進行量の合計を送り量として、加工送り方向に送られることによって、ワークWの加工を行う。
【0033】
ワークWが回転した状態で、主軸台110A(主軸110)又は切削工具台130A(切削工具130)が、例えばZ軸方向およびY軸方向(ワーク外周の接線方向)の2軸方向に往復振動しながら移動し、切削工具130によって、ワークWを所定の形状に外形切削加工する場合、ワークWの周面は、
図3に示すように切削される。
図3に示されるように、ワークWの1回転当たりの主軸台110A(主軸110)又は切削工具台130Aの振動数Nが、3.0回(振動数N=3.0)を例に、Z軸方向を加工送り方向として説明する。
なお切削工具130の先端軌跡の下端を通過する仮想線(1点鎖線)において、主軸位相0°から360°まで変化したときの位置の変化量(傾き)が、前記送り量を示す。
【0034】
主軸110の回転によってワークWを回転させつつ、Z軸方向送り機構160によって切削工具130を加工送り方向に振動し、加工送り方向の復動から往動に切り替わる際に、Y軸方向送り機構によって、加工送り方向と直交する方向に振動させることにより、切削工具130の先端軌跡が往動時に切り替わる前の復動時の切削工具の先端軌跡を横切るループを描くように振動を繰り返す。
すなわち、切削工具130の振動一往復の往動時の移動経路P1と復動時の移動経路P2との間に、切削工具130の往動状態と復動状態とを反転させるループ状の反転経路P3を設け、両移動経路P1、P2が反転経路P3を介して互いに位置P4で交差するように、制御部C1が、切削工具130を振動させる。
なお、加工送り方向の復動から往動に切り替わる際には、主軸110の回転によるワーク外周の周速度より一瞬速くなるように制御される。
【0035】
これにより、復動から往動に切り替わる際に、切削工具130の先端軌跡がループを描き、復動時の切削部分に直前の往動時の切削済みの部分が含まれ、振動切削中に切削工具130が反転経路P3における符号P3aの位置から符号P3bの位置までの移動するときに切削工具130がワークWを切削しない所謂、空振り動作が生じるため、切屑が分断される。
すなわち、n回転目(nは1以上の整数)の切削工具130の先端軌跡の位相と、n+1回転目(nは1以上の整数)の切削工具130の先端軌跡との位相をずらさなくても空振り動作が生じるため、切屑が分断される。
さらに、本実施例では、制御部C1が、切削工具130の加工送り方向に沿った前回の反転経路P3と次回の反転経路P3とを重ねるように振動制御している。
これにより、未加工部分の発生が回避されるとともに、切削部分の幅を均一化することができる。
【0036】
また、振動数N=3.0の場合、n+1回転目(nは1以上の整数)の切削工具130により旋削されるワーク周面形状の位相の谷の最低点(切削工具130によって送り方向に最も切削された点となる点線軌跡の山の頂点)の位置が、n回転目の切削工具130により旋削された形状の位相の谷の最低点(実線軌跡の山の頂点)の位置と、主軸位相方向(グラフの横軸方向)で同じになる。
これにより、点線で囲んだ箇所(網掛け箇所)で示す1回の切削部分(1振動で切削される部分)の送り方向の幅が均一になるため、ワーク加工面上に僅かに見える筋状の模様である外観不良を低減することができる。
さらに、本実施例では、制御部C1が、切削工具130の加工送り方向に沿った反転経路P3を主軸110の回転位相に同期した所定の位置に設けるように振動制御している。
これにより、切削部分の幅がさらに均一になる。
【0037】
また、本実施例では、制御部C1が、ワークWに対する切削工具130の送り量に比例して加工送り方向の往復振動の振幅を設定する振幅設定手段を備えている。
振幅設定手段は、主軸110のn回転目のときの切削工具130の先端軌跡と主軸110のn+1回転目の切削工具130の先端軌跡とが交差する、すなわち、n回転目の反転経路P3とn+1回転目の反転経路P3とが重なるように、振動制御手段と連係している。
これにより、必ずn回転目の切削加工部分とn+1回転目の切削加工部分とが重なる。
さらに、主軸110のn回転目の切削工具130の先端軌跡の位相と、主軸110のn+1回転目の切削工具130の先端軌跡の位相とが同位相である場合は、必ず1回の切削部分(1振動で切削される部分)の幅が均一になる。
なお、本実施例では、加工送り方向をZ軸方向としてZ軸方向およびY軸方向に振動させたが、加工送り方向をX軸方向(ワーク径方向)としてX軸方向およびY軸方向に振動させてもよい。