(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
日本光学硝子工業会(JOGIS)の「光学ガラスの化学的耐久性の測定方法(粉末法)06−1975」に準拠した方法によって測定した、前記ガラス組成物の質量減少率ΔWが0.001〜0.20質量%である、
請求項1〜6のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0019】
[ガラス組成物]
本実施形態のガラス組成物は、二酸化珪素(SiO
2)、酸化ナトリウム(Na
2O)および酸化ジルコニウム(ZrO
2)を必須成分として含有する。さらに、本実施形態のガラス組成物は、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化リチウム(Li
2O)、酸化カリウム(K
2O)、三酸化ホウ素(B
2O
3)および酸化アルミニウム(Al
2O
3)を任意成分として含んでもよい。
【0020】
本実施形態のガラス組成物の成分は、質量%で表して、
60≦SiO
2≦75、
0.1≦(MgO+CaO)≦20、
6≦Na
2O≦15、
9≦(Li
2O+Na
2O+K
2O)≦15、
5.1≦ZrO
2≦9.9、
を満たす。
【0021】
本実施形態のガラス組成物は、上記組成を満たすことにより、高い耐酸性と高い耐水性とを兼ね備え、かつガラス繊維の成形にも適したガラス組成物となる。より詳しくは、本実施形態のガラス組成物では、酸化ジルコニウムの含有率が、質量%で表して5.1≦ZrO
2≦9.9を満たす。酸化ジルコニウムの含有率が5.1%以上であることから、本実施形態のガラス組成物は、固体高分子型燃料電池の固体電解質膜内部の酸性環境に耐え得る高い耐酸性と、補強材としての強度を維持し得る高い耐水性とを実現できる。また、酸化ジルコニウムの含有率が9.9%以下であることから、本実施形態のガラス組成物は、ガラスの粘性をガラス繊維の成形に適した範囲内に調整することできる。
【0022】
さらに、本実施形態のガラス組成物では、アルカリ金属酸化物(Li
2O、Na
2O、K
2O)の含有率の合計が、質量%で表して9≦Li
2O+Na
2O+K
2O≦15を満たす。アルカリ金属酸化物の含有率の合計が9%以上であることから、ガラスの粘性をガラス繊維の成形に適した範囲内に調整することできる。また、アルカリ金属酸化物の含有率の合計が15%以下であることから、本実施形態のガラス組成物は、固体高分子型燃料電池の固体電解質膜内部の酸性環境に耐え得る高い耐酸性と、補強材としての強度を維持し得る高い耐水性とを実現できる。
【0023】
本実施形態のガラス組成物では、例えば、B
2O
3+Al
2O
3の含有率が、質量%で表して、0.1≦(B
2O
3+Al
2O
3)≦5を満たしていてもよい。B
2O
3+Al
2O
3の含有率がこのような範囲を満たすことにより、ガラス組成物の耐酸性および耐水性のさらなる向上が可能となる。
【0024】
本実施形態のガラス組成物では、例えば、Na
2Oおよび(Li
2O+Na
2O+K
2O)の含有率が、質量%で表して、6≦Na
2O≦12.9、かつ9≦(Li
2O+Na
2O+K
2O)≦12.9を満たすことが好ましく、7≦ZrO
2≦9.9、かつ9≦(Li
2O+Na
2O+K
2O)≦11.9を満たすことがより好ましい。Na
2Oおよび(Li
2O+Na
2O+K
2O)の含有率がこのような範囲を満たすことにより、ガラス組成物の化学的耐久性(耐酸性、耐水性および耐アルカリ性など)のさらなる向上が可能となる。
【0025】
本実施形態のガラス組成物では、例えば、Li
2Oの含有率が、質量%で表して、0.1≦Li
2O≦5を満たしていてもよい。Li
2Oの含有率がこのような範囲を満たすことにより、ガラス組成物の化学的耐久性のさらなる向上が可能となる。
【0026】
以下、本実施形態のガラス組成物を構成する各成分について、より詳細に説明する。なお、以下において成分の含有率を示す%表示は、全て質量%である。
【0027】
(SiO
2)
二酸化珪素(SiO
2)は、ガラスの骨格を形成する主成分である。本明細書において、「主成分」とは含有量が最も多い成分であることを意味する。SiO
2は、ガラス組成物の失透温度および粘度を調整する成分である。SiO
2は、ガラス組成物の耐酸性および耐水性を向上させる成分でもある。SiO
2の含有率が60%以上であれば、失透温度の上昇を抑制し、失透のないガラス組成物を容易に製造することができる。SiO
2の含有率が60%以上であれば、ガラス組成物の耐水性および耐酸性を向上させることができる。SiO
2の含有率が75%以下であれば、ガラス組成物の融点が低くなり、ガラス組成物を均一に溶融し易くなる。
【0028】
したがって、SiO
2の下限は、60%以上であり、63%以上が好ましく、65.1%以上がより好ましく、66.1%以上が最も好ましい。SiO
2の上限は、75%以下であり、74%以下が好ましく、73%以下が最も好ましい。
【0029】
(MgO+CaO)
酸化マグネシウム(MgO)および酸化カルシウム(CaO)は、ガラス形成時の失透温度および粘度を調整する成分である。また、酸化マグネシウム(MgO)および酸化カルシウム(CaO)は、ガラス組成物の耐酸性および耐水性を調整する成分でもある。ガラス組成物の形成し易さや化学的耐久性を重視する場合、MgOおよびCaOの含有率の和(MgO+CaO)が重要である。(MgO+CaO)が0.1%以上であれば、失透のないガラス組成物を容易に製造することができる。(MgO+CaO)が20%以下であれば、失透温度の上昇を抑制し、ガラス組成物の化学的耐久性を向上させることができる。
【0030】
したがって、(MgO+CaO)の下限は、0.1%以上であり、2%以上が好ましく、4%以上がより好ましく、6%以上がさらに好ましく、9%以上が最も好ましい。(MgO+CaO)の上限は、20%以下であり、18%以下が好ましく、16%以下がより好ましく、13.9%以下がさらに好ましく、13%以下が最も好ましい。
【0031】
(Na
2O)
酸化ナトリウム(Na
2O)は、ガラス形成時の失透温度および粘度を調整する成分である。また、Na
2Oは、ガラス組成物の耐酸性および耐水性を調整する成分でもある。Na
2Oの含有率が6%以上であれば、失透温度および粘度の調整が容易になる。Na
2Oの含有率が15%以下であれば、ガラス組成物の耐酸性および耐水性も向上する。
【0032】
したがって、Na
2Oの含有率の下限は、6%以上であり、7%以上が好ましく、7.5%以上がより好ましく、8%以上が最も好ましい。Na
2Oの含有率の上限は、15%以下であり、14%以下が好ましく、12.9%以下がより好ましく、11.9%以下が最も好ましい。
【0033】
(Li
2O+Na
2O+K
2O)
アルカリ金属酸化物(酸化リチウム(Li
2O)、酸化ナトリウム(Na
2O)、酸化カリウム(K
2O))は、ガラス形成時の失透温度および粘度を調整する成分である。また、アルカリ金属酸化物(Li
2O、Na
2O、K
2O)は、ガラス組成物の化学的耐久性を調整する成分でもある。ガラス組成物の形成し易さや化学的耐久性を重視する場合、アルカリ金属酸化物(Li
2O、Na
2O、K
2O)の含有率の和(Li
2O+Na
2O+K
2O)が重要である。Li
2O、Na
2OおよびK
2Oの合計含有率(Li
2O+Na
2O+K
2O)が9%以上であれば、失透温度および粘度の調整が容易になる。酸化リチウム、酸化ナトリウムおよび酸化カリウムの合計含有率(Li
2O+Na
2O+K
2O)が15%以下であれば、ガラス組成物の化学的耐久性も向上する。
【0034】
したがって、(Li
2O+Na
2O+K
2O)の下限は、9%以上であり、9.5%以上が好ましく、10%以上が最も好ましい。(Li
2O+Na
2O+K
2O)の上限は、15%以下であり、14%以下が好ましく、12.9%以下がより好ましく、11.9%以下が最も好ましい。
【0035】
(ZrO
2)
酸化ジルコニウム(ZrO
2)は、ガラス組成物の失透温度および粘度を調整する成分である。また、ZrO
2は、ガラス組成物の耐酸性および耐水性を向上させる成分でもある。ZrO
2の含有率が5%より大きければ、ガラス組成物の耐水性および耐酸性を向上させることができる。ZrO
2の含有率が10%未満であれば、ガラス組成物の融点が低くなり、ガラス組成物を均一に溶融し易くなる。ZrO
2の含有率が10%未満であれば、失透温度の上昇を抑制し、失透のないガラス組成物を容易に製造することができる。
【0036】
したがって、ZrO
2の含有率の下限は、5.1%以上であり、5.5%以上が好ましく、6%以上がより好ましく、6.5%以上がさらに好ましく、7%以上が最も好ましい。ZrO
2の含有率の上限は、9.9%以下であり、9.5%以下が好ましく、9%以下がより好ましく、8.5%以下がさらに好ましく、8%以下が最も好ましい。
【0037】
(B
2O
3)
三酸化二ホウ素(B
2O
3)は、ガラスの骨格を形成する成分であり、ガラス形成時の失透温度および粘度を調整する成分でもある。また、B
2O
3は、ガラス組成物の耐水性を向上させる成分である一方で、耐酸性を悪化させる成分でもある。例えばB
2O
3の含有率が5%以下であれば、ガラス組成物の耐酸性も向上する。
【0038】
したがって、B
2O
3の上限は、5%以下が好ましく、2.9%以下がより好ましく、1.9%以下がさらに好ましく、0.9%以下が最も好ましい。
【0039】
(Al
2O
3)
酸化アルミニウム(Al
2O
3)は、ガラスの骨格を形成する成分であり、耐熱性を保ちながらガラス形成時の失透温度および粘度を調整する成分でもある。また、Al
2O
3は、耐水性を向上させる成分である一方で、耐酸性を悪化させる成分でもある。従って、Al
2O
3は必須成分ではないが、ガラス組成物の溶融性および耐水性を調整するための成分として含むことが好ましい。例えばAl
2O
3の含有率が5%以下であれば、ガラス組成物の融点が低くなり、ガラス組成物を均一に溶融し易くなるとともに、耐酸性も向上する。
【0040】
したがって、Al
2O
3の下限は、0%以上が好ましく、0.1%以上がより好ましく、0.5%以上が最も好ましい。Al
2O
3の上限は、5%以下が好ましく、4%以下がより好ましく、2.9%以下がさらに好ましく、1.9%以下が最も好ましい。
【0041】
(B
2O
3+Al
2O
3)
三酸化二ホウ素(B
2O
3)および酸化アルミニウム(Al
2O
3)は、ガラスの骨格を形成する成分であり、ガラス形成時の失透温度および粘度を調整する成分でもある。また、B
2O
3およびAl
2O
3は、ガラス組成物の耐水性を向上させる成分である一方で、耐酸性を悪化させる成分でもある。ガラス組成物の形成し易さや化学的耐久性を重視する場合、B
2O
3およびAl
2O
3の含有率の和(B
2O
3+Al
2O
3)が重要である。例えば(B
2O
3+Al
2O
3)が5%以下であれば、ガラス組成物の耐酸性が、固体高分子型燃料電池の固体電解質膜内部の酸性環境に十分に耐え得る程度に高くなる。
【0042】
したがって、(B
2O
3+Al
2O
3)の下限は、0%以上が好ましく、0.1%以上がより好ましく、0.5%以上が最も好ましい。(B
2O
3+Al
2O
3)の上限は、5%以下が好ましく、4%以下がより好ましく、2.9%以下がさらに好ましく、1.9%以下が最も好ましい。
【0043】
(MgO)
酸化マグネシウム(MgO)は、ガラス形成時の失透温度および粘度を調整する成分である。また、MgOは、ガラス組成物の耐酸性および耐水性を調整する成分でもある。MgOは必須ではないが、ガラス組成物の溶融性および化学的耐久性を調整するための成分として使用してもよい。MgOの含有率が15%以下であれば、失透温度の上昇を抑制し、失透のないガラス組成物を容易に製造することができる。
【0044】
したがって、MgOの下限は、0質量%以上が好ましく、0.1%以上がより好ましく、1%以上がさらに好ましく、2.1%以上が最も好ましい。MgOの上限は、15%以下が好ましく、12%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、8%以下が最も好ましい。
【0045】
(CaO)
酸化カルシウム(CaO)は、ガラス形成時の失透温度および粘度を調整する成分である。また、CaOは、ガラス組成物の耐酸性および耐水性を調整する成分でもある。CaOは必須ではないが、ガラス組成物の溶融性および化学的耐久性を調整するための成分として使用してもよい。CaOの含有率が15%以下であれば、失透温度の上昇を抑制し、失透のないガラス組成物を容易に製造することができる。
【0046】
したがって、CaOの下限は、0%以上が好ましく、0.1%以上がより好ましく、1%以上がさらに好ましく、2%以上が特に好ましく、3.1%以上が最も好ましい。MgOの上限は、15%以下が好ましく、12%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、8%以下が最も好ましい。
【0047】
(SrO)
酸化ストロンチウム(SrO)は、ガラス形成時の失透温度および粘度を調整する成分である。一方で、SrOはガラス組成物の耐酸性を悪化させる成分でもある。SrOは必須ではないが、ガラス形成時の失透温度および粘度を調整するための成分として使用してもよい。SrOの含有率が10%以下であれば、失透温度の上昇を抑制し、失透のないガラス組成物を容易に製造することができる。
【0048】
したがって、SrOの上限は10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、1.9%以下がさらに好ましく、0.1%未満が最も好ましい。
【0049】
(BaO)
酸化バリウム(BaO)は、ガラス形成時の失透温度および粘度を調整する成分である。その一方で、BaOはガラス組成物の耐酸性を悪化させる成分でもある。BaOは、必須ではないが、ガラス形成時の失透温度および粘度を調整するための成分として使用してもよい。BaOの含有率が10%以下であれば、失透温度の上昇を抑制し、失透のないガラス組成物を容易に製造することができる。
【0050】
したがって、BaOの上限は、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、1.9%以下がさらに好ましく、0.1%未満が最も好ましい。
【0051】
(ZnO)
酸化亜鉛(ZnO)は、ガラス形成時の失透温度および粘度を調整する成分である。その一方で、ZnOは揮発し易いため、溶融時に飛散する可能性がある。ZnOの含有率が10%以下であれば、失透温度の上昇を抑制し、失透のないガラス組成物を容易に製造することができる。また、ZnOの含有率が10%以下であれば、揮発による成分比の変動を抑えることができ、ガラス組成物中の含有量を管理し易くなる。
【0052】
したがって、ZnOの上限は、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、2.9%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましく、0.1%未満が最も好ましい。
【0053】
(Li
2O)
酸化リチウム(Li
2O)は、ガラス形成時の失透温度および粘度を調整する成分である。また、Li
2Oは、ガラス組成物の耐酸性および耐水性を調整する成分でもある。Li
2Oは必須ではないが、ガラス組成物の溶融性および化学的耐久性を調整するための成分として使用してもよい。Li
2Oの含有率が5%以下であれば、失透温度の上昇を抑制し、失透のないガラス組成物を容易に製造することができる。
【0054】
したがって、Li
2Oの下限は、0%以上が好ましく、0.1%以上がより好ましく、0.5%以上がより一層好ましく、1%以上がさらに好ましく、1.5%以上が特に好ましく、2%以上が最も好ましい。Li
2Oの上限は、5%以下が好ましく、4%以下がより好ましく、3.5%以下がさらに好ましく、3%以下が最も好ましい。
【0055】
(K
2O)
酸化カリウム(K
2O)は、ガラス形成時の失透温度および粘度を調整する成分である。また、K
2Oは、ガラス組成物の耐酸性および耐水性を調整する成分でもある。K
2Oは必須ではないが、ガラス組成物の溶融性および化学的耐久性を調整するための成分として使用してもよい。K
2Oの含有率が5%以下であれば、失透温度の上昇を抑制し、失透のないガラス組成物を容易に製造することができる。
【0056】
したがって、K
2Oの下限は、0%以上が好ましく、0.1%以上がより好ましく、0.5%より大きいことがさらに好ましい。K
2Oの上限は、5%以下が好ましく、4%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましく、1.9%以下が最も好ましい。
【0057】
(TiO
2)
二酸化チタン(TiO
2)は、ガラス形成時の失透温度および粘度を調整する成分である。TiO
2は必須ではないが、ガラス形成時の失透温度および粘度を調整するための成分として使用してもよい。TiO
2の含有率が5%以下であれば、失透温度の上昇を抑制し、失透のないガラス組成物を容易に製造することができる。
【0058】
したがって、TiO
2の上限は、5%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、0.9%以下がさらに好ましく、0.5%以下が特に好ましく、0.09%以下が最も好ましい。なお、原料の均一な熔融およびガラス組成物の形成し易さを特に重視する場合には、0.1%<TiO
2≦5%としてもよい。
【0059】
(Fe)
ガラス組成物中に含まれる鉄(Fe)は、通常、Fe
2+またはFe
3+の状態で存在する。Fe
3+はガラス組成物の紫外線吸収特性を高める成分であり、Fe
2+はガラス組成物の熱線吸収特性を高める成分である。鉄は、意図的に含ませなくとも、工業用原料により不可避的に混入する場合がある。鉄の含有量が少なければ、ガラス組成物の着色を防止することができる。
【0060】
したがって、鉄(Fe)の上限は、Fe
2O
3換算にて5%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましく、0.3%以下が特に好ましく、0.1%未満が最も好ましい。
【0061】
(SO
3)
三酸化硫黄(SO
3)は必須成分ではないが、清澄剤として含まれていてもよい。硫酸塩の原料を使用すると、0.5%以下の含有率で含まれることがある。
【0062】
(F、Cl、Br、I)
フッ素(F)は、揮発し易いため、溶融時に飛散する可能性があるとともに、ガラス組成物中の含有量を管理し難いという問題もある。したがって、フッ素は実質的に含有しないことが好ましい。
【0063】
塩素(Cl)は、揮発し易いため、溶融時に飛散する可能性があるとともに、ガラス組成物中の含有量を管理し難いという問題もある。したがって、塩素は実質的に含有しないことが好ましい。
【0064】
臭素(Br)は、揮発し易いため、溶融時に飛散する可能性があるとともに、ガラス組成物中の含有量を管理し難いという問題もある。したがって、臭素は実質的に含有しないことが好ましい。
【0065】
ヨウ素(I)は、揮発し易いため、溶融時に飛散する可能性があるとともに、ガラス組成物中の含有量を管理し難いという問題もある。したがって、ヨウ素は実質的に含有しないことが好ましい。
【0066】
フッ素、塩素、臭素およびヨウ素の含有率の合計(F+Cl+Br+I)は、0.01%未満であることが好ましい。
【0067】
(PbO)
酸化鉛(PbO)は、その原料の取扱いに配慮を要するため、実質的に含有しないことが好ましい。
【0068】
(Sn)
ガラス組成物中に含まれる錫(Sn)は、通常、Sn
2+またはSn
4+の状態で存在する。錫は、その原料の取扱いに配慮を要するため、実質的に含有しないことが好ましい。錫(Sn)の含有率は、二酸化錫(SnO
2)に換算して0.01%未満であることが好ましい。
【0069】
(As、Sb)
ガラス組成物中に含まれるヒ素(As)は、通常、As
3+またはAs
5+の状態で存在する。ヒ素は、その原料の取扱いに配慮を要するため、実質的に含有しないことが好ましい。ヒ素の含有率は、三酸化二ヒ素(As
2O
3)に換算して0.01%未満であることが好ましい。
【0070】
ガラス組成物中に含まれるアンチモン(Sb)は、通常、Sb
3+またはSb
5+の状態で存在する。アンチモンは、その原料の取扱いに配慮を要するため、実質的に含有しないことが好ましい。アンチモンの含有率は、三酸化二アンチモン(Sb
2O
3)に換算して0.01%未満であることが好ましい。
【0071】
ヒ素を三酸化二ヒ素に換算したときの含有率と、アンチモンを三酸化二アンチモンに換算したときの含有率との合計(As
2O
3+Sb
2O
3)は、0.01%未満であることが好ましい。
【0072】
なお、本明細書において、ある成分を「実質的に含有しない」とは、例えば工業用原料から不可避的に混入する場合を除き、その成分を意図的に含ませないことを意味する。実質的に含有しないとは、具体的には、その成分の含有率が0.1%未満、好ましくは0.05%未満、より好ましくは0.03%未満、最も好ましくは0.01%未満であることを意味する。
【0073】
[ガラス組成物の物性]
本実施形態のガラス組成物の各物性について、以下詳細に説明する。
(溶融特性)
溶融ガラスの粘度が1000dPa・sec(1000poise)となるときの温度は、当該ガラス組成物の作業温度と呼ばれ、ガラスの成形に最も適する温度である。ガラス繊維または鱗片状ガラスを製造する場合、作業温度が1100℃以上であれば、鱗片状ガラスの厚みまたはガラス繊維径のばらつきを小さくできる。作業温度が1300℃以下であれば、ガラス組成物を溶融する際の燃料費を低減でき、ガラス製造装置が熱による腐食を受け難くなり、装置寿命が延びる。
【0074】
作業温度から失透温度を差し引いた温度差ΔTが大きいほど、ガラス成形時に失透が生じ難く、温度差ΔTが0℃以上であれば、均質なガラス組成物を高い歩留りで製造できる。したがって、温度差ΔTは130℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましく、150℃以上がさらに好ましく、160℃以上が最も好ましい。温度差ΔTが500℃以下であれば、ガラス組成物の組成の調整が容易になる。したがって、温度差ΔTは500℃以下が好ましく、450℃以下がより好ましく、400℃以下がさらに好ましい。
【0075】
なお、失透とは、溶融ガラス素地中に生成して成長した結晶により、白濁を生じることをいう。このような溶融ガラス素地から製造されたガラス組成物の中には、結晶化した塊が存在することがあるので、ガラス組成物として好ましくない。
【0076】
(化学的耐久性)
ガラス組成物が含有する各成分の含有率が上述で規定した組成範囲内にあれば、ガラス組成物は耐水性、耐アルカリ性、耐酸性などの化学的耐久性に優れる。
【0077】
耐酸性の指標としては、後述する質量減少率ΔWが採用される。この質量減少率ΔWが小さいほど、ガラス組成物の耐酸性が高いことを示す。
【0078】
ガラス組成物を固体高分子型燃料電池の固体電解質膜の補強材に用いる場合、ガラス組成物の質量減少率ΔWが0.20質量%以下であれば、補強材の強度低下が引き起こされることがない。したがって、ガラス組成物の質量減少率ΔWは、0.20質量%以下が好ましく、0.15質量%以下がより好ましく、0.12質量%以下がさらに好ましく、0.10質量%以下が最も好ましい。本実施形態により実現できる質量減少率ΔWは、例えば、0.001〜0.20質量%である。
【0079】
耐水性の指標としては、後述するアルカリ溶出量が採用される。このアルカリ溶出量が小さいほど、ガラス組成物の耐水性が高いことを示す。
【0080】
ガラス組成物を固体電解質膜の補強材として用いる場合、ガラス組成物のアルカリ溶出量が0.20mg未満であれば、補強材の強度低下が引き起こされることがない。したがって、ガラス組成物のアルカリ溶出量は、0.19mg以下が好ましく、0.15mg以下がより好ましく、0.12mg以下がさらに好ましく、0.10mg以下が最も好ましい。本実施形態により実現できるアルカリ溶出量は、例えば、0.001〜0.19mgである。
【0081】
[ガラス組成物の用途]
本実施形態のガラス組成物は、ガラス繊維および鱗片状ガラスとして利用できる。上述のとおり、本実施形態のガラス組成物は、高い耐酸性および高い耐水性を備えている。したがって、本実施形態のガラス組成物からなるガラス繊維は、例えば、固体高分子型燃料電池の固体電解質膜の補強材として好適に使用できる。固体高分子型燃料電池の固体電解質膜の補強材として使用される場合、ガラス繊維は、例えば、0.2〜2μmの繊維径を有することが好ましく、0.1〜10mmの繊維長さを有することが好ましい。ガラス繊維の製造方法は、特には限定されず、公知の製造方法を適宜用いることができる。
【0082】
また、本実施形態のガラス組成物からなる鱗片状ガラスは、ライニング材に使用することができ、または、樹脂成形体、塗料、化粧料およびインキなどのフィラーとして使用することができる。また、鱗片状ガラスの表面を金属または金属酸化物を主成分とする被膜で被覆して被覆鱗片状ガラスとし、これを光輝性顔料として用いることも可能である。鱗片状ガラスの厚さや径の大きさなどは、用途に応じて適宜選択すればよく、特には限定されない。また、被覆鱗片状ガラスの被膜の厚さも、用途に応じて適宜選択すればよく、特には限定されない。鱗片状ガラスの製造方法は、特には限定されず、公知の製造方法を適宜用いることができる。
【0083】
本実施形態のガラス組成物は、上記の他に、高い耐酸性および高い耐水性が要求されるガラスの用途への適用も可能である。
【実施例】
【0084】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明の実施形態をさらに具体的に説明する。
【0085】
[ガラス組成物]
(実施例1〜34および比較例1〜7)
表1〜表5に示した組成となるように、珪砂等の通常のガラス原料を調合し、実施例および比較例毎にガラス原料のバッチを作製した。電気炉を用いて、各バッチを1400〜1600℃まで加熱して溶融させ、組成が均一になるまで約4時間そのまま維持した。その後、溶融したガラス(ガラス溶融物)を鉄板上に流し出し、電気炉中で室温まで徐冷し、バルクとしてのガラス組成物(板状物、ガラス試料)を得た。
【0086】
得られたガラス組成物について、通常の白金球引き上げ法により粘度と温度との関係を調べ、その結果から作業温度を求めた。ここで、白金球引き上げ法とは、溶融ガラス中に白金球を浸し、その白金球を等速運動で引き上げる際の負荷荷重(抵抗)と、白金球に働く重力および浮力などとの関係を、微小の粒子が流体中を沈降する際の粘度と落下速度との関係を示したストークス(Stokes)の法則にあてはめることにより、粘度を測定する方法である。
【0087】
粒子径1.0〜2.8mmの大きさに粉砕したガラス組成物を白金ボートに入れ、温度勾配(800〜1400℃)を設けた電気炉中で2時間保持し、結晶の出現した位置に対応する電気炉の最高温度から失透温度を求めた。ここで、粒子径は、ふるい分け法により測定された値である。なお、電気炉内の場所に応じて異なる温度(電気炉内の温度分布)は、予め測定されており、電気炉内の所定の場所に置かれたガラス組成物は、予め測定された、当該所定の場所の温度で加熱される。温度差ΔTは、作業温度から失透温度を差し引いた温度差である。
【0088】
ガラス組成物の質量減少率ΔWの測定は、日本光学硝子工業会規格(JOGIS)の「光学ガラスの化学的耐久性の測定方法(粉末法)06−1975」に準拠した方法により行った。ガラス試料を粉砕して得たガラス粉末をふるい分け法によりふるい分けた。詳しくは、JIS Z 8801に規定される補助網ふるい710μmおよび標準網ふるい590μmを通過し、標準網ふるい420μmを通過しない大きさのガラス粉末を、ガラスの比重と同じグラム数量り取った。このガラス粉末を、80℃、10質量%の硫酸水溶液100mLに72時間浸漬した場合の質量減少率を求め、この質量減少率をΔWとした。ここでは、JOGISの測定方法で用いられる0.01N(mol/L)硝酸水溶液の代わりに、10質量%の硫酸水溶液を用いた。また、硫酸水溶液の温度は80℃とし、液量は、JOGISの測定方法における80mLの代わりに、100mLとした。さらに、処理時間は、JOGISの測定方法における60分間の代わりに、72時間とした。
【0089】
アルカリ溶出量の測定は、日本工業規格(JIS)の「化学分析用ガラス器具の試験方法 R 3502‐1995」に準拠した方法により行った。ガラス試料を粉砕して得たガラス粉末をJIS Z 8801に規定の標準網ふるいにかけ、目開き420μmの標準網ふるいを通過し、目開き250μmの標準網ふるいにとどまったガラス粉末を、ガラスの比重と同じグラム数量秤り取った。このガラス粉末を100℃の蒸留水50mLに1時間浸漬した後、この水溶液中のアルカリ成分を0.01Nの硫酸で滴定した。滴定に要した0.01Nの硫酸のミリリットル数に0.31を乗じることにより、Na
2Oに換算したアルカリ成分のミリグラム数を求め、このミリグラム数をアルカリ溶出量とした。このアルカリ溶出量が小さいほど耐水性が高いことを示す。
【0090】
これらの測定結果を表1〜表5に示した。なお、表中の各成分の数値は、すべて質量%で表示した値である。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【0095】
【表5】
【0096】
実施例1〜34で得られたガラス組成物の作業温度は、1197℃〜1297℃であった。実施例1〜34で得られたガラス組成物の温度差ΔT(作業温度−失透温度)は、144℃〜271℃であった。実施例1〜34で得られたガラス組成物の質量減少率ΔWは、0.05質量%〜0.10質量%であった。実施例1〜34で得られたガラス組成物のアルカリ溶出量は、0.05mg〜0.17mgであった。
【0097】
他方、比較例1で得られたガラス組成物は、従来の板ガラスの組成を有し、ZrO
2の含有率が本発明において規定される組成範囲より外にあった。そのため、比較例1で得られたガラス組成物の質量減少率ΔWは0.40質量%であり、実施例1〜34で得られたガラス組成物の質量減少率ΔWに比べて大きかった。また、比較例1で得られたガラス組成物のアルカリ溶出量は0.43mgであり、実施例1〜34で得られたガラス組成物のアルカリ溶出量に比べて大きかった。すなわち、比較例1で得られたガラス組成物は、実施例1〜34で得られたガラス組成物と比較して、耐酸性および耐水性が劣っていた。
【0098】
比較例2で得られたガラス組成物は、従来のCガラスの組成を有し、ZrO
2の含有率が本発明において規定される組成範囲より外にあった。そのため、比較例2で得られたガラス組成物の質量減少率ΔWは0.50質量%であり、実施例1〜34で得られたガラス組成物の質量減少率ΔWに比べて大きかった。すなわち、比較例2で得られたガラス組成物は、実施例1〜34で得られたガラス組成物と比較して、耐酸性が劣っていた。
【0099】
比較例3で得られたガラス組成物は、従来のEガラスの組成を有し、SiO
2、(MgO+CaO)、Na
2O、(Li
2O+Na
2O+K
2O)およびZrO
2の含有率が本発明において規定される組成範囲より外にあった。そのため、比較例3で得られたガラス組成物の温度差ΔTは115℃であり、実施例1〜34で得られたガラス組成物の温度差ΔTに比べて小さかった。また、比較例3で得られたガラス組成物の質量減少率ΔWは7.40質量%であり、実施例1〜34で得られたガラス組成物の質量減少率ΔWに比べて大きかった。すなわち、比較例3で得られたガラス組成物は、実施例1〜34で得られたガラス組成物と比較して、耐酸性が劣っていた。
【0100】
比較例4で得られたガラス組成物は、特開2007−145699号公報(特許文献7)の比較例2に記載されており、(Li
2O+Na
2O+K
2O)の含有率が本発明において規定される組成範囲より外にあった。そのため、比較例4で得られたガラス組成物のアルカリ溶出量は0.22mgであり、実施例1〜34で得られたガラス組成物のアルカリ溶出量に比べて大きかった。すなわち、比較例4で得られたガラス組成物は、実施例1〜34で得られたガラス組成物と比較して、耐水性が劣っていた。
【0101】
比較例5で得られたガラス組成物は、国際公開第2010/024283号(特許文献8)の実施例36に記載されており、ZrO
2の含有率が本発明において規定される組成範囲より外にあった。そのため、比較例5で得られたガラス組成物のアルカリ溶出量は0.20mgであり、実施例1〜34で得られたガラス組成物のアルカリ溶出量に比べて大きかった。すなわち、比較例5で得られたガラス組成物は、実施例1〜34で得られたガラス組成物と比較して、耐水性が劣っていた。
【0102】
比較例6で得られたガラス組成物は、ZrO
2の含有率が本発明において規定される組成範囲より外にあった。そのため、比較例6で得られたガラス組成物の作業温度は1328℃であり、実施例1〜34で得られたガラス組成物の作業温度に比べて高かった。すなわち、比較例6で得られたガラス組成物は、作業温度が高すぎて、ガラス組成物を溶融する際の燃料費の問題やガラス製造装置の熱による腐食の問題などを有するものであった。
【0103】
比較例7で得られたガラス組成物は、ZrO
2の含有率が本発明において規定される組成範囲より外にあった。そのため、比較例7で得られたガラス組成物のアルカリ溶出量は0.37mgであり、実施例1〜34で得られたガラス組成物のアルカリ溶出量に比べて大きかった。すなわち、比較例7で得られたガラス組成物は、実施例1〜34で得られたガラス組成物と比較して、耐水性が劣っていた。
【0104】
以上の結果から、実施例1〜34に示す本発明のガラス組成物は、ガラス繊維などの成形に適した溶融特性を有しており、さらに、燃料電池の固体電解質膜の補強材やライニング材などに適した耐酸性および耐水性を有していることが分かる。
【0105】
実施例1〜34で得られたガラス組成物を用いて、公知の方法に従って、ガラス繊維、鱗片状ガラス、ミルドファイバー、ガラス粉末およびガラスビーズを作製することができた。また、実施例1〜34で得られたガラス組成物からなるガラス繊維を用いて不織布を作製し、これらの不織布で種々のプロトン伝導性膜(燃料電池の固体電解質膜)を補強することができた。また、実施例1〜34で得られたガラス組成物からなる鱗片状ガラスを作製し、これらの鱗片状ガラスを各々塗料に配合することにより、種々のライニング材が得られた。さらに、実施例1〜34で得られたガラス組成物からなる鱗片状ガラスを作製し、これらの鱗片状ガラスの表面に公知の方法に従って金属または金属酸化物の被膜を作製することによって、被覆鱗片状ガラスも得られた。以下に、不織布の作製、不織布で補強された固体電解質膜の作製、鱗片状ガラスの作製およびライニング材の作製について、具体的に説明する。
【0106】
[不織布]
実施例1〜34で得られたガラス組成物を用いてガラス繊維を作製し、プロトン伝導性膜(燃料電池の固体電解質膜)の補強材として用いることのできるガラス繊維を含む不織布を作製した。
【0107】
(不織布1)
まず、ガラス組成物を電気炉で再溶融した後、冷却しながらペレットに成形した。このペレットを熔融炉に投入し、平均繊維径が0.5〜1μm、平均長さが3mmであるガラス繊維を作製した。このガラス繊維95質量%と、叩解セルロース繊維5質量%とを、繊維を解きほぐすためのパルパーに同時に投入し、硫酸でpH2.5に調整した水溶液中で充分に解離、分散させて、抄紙用のスラリーを作製した。次に、湿式抄紙装置を用いて、上記スラリーから、厚さが50μmで目付量が8g/m
2のガラス繊維不織布を作製した。得られた不織布は、上述した2種類の繊維を上述の配合比で含有していた。この不織布の空隙率は、約95体積%であった。
【0108】
(不織布2)
実施例1〜34で得られたガラス組成物を用いて作製されたガラス繊維のみを用いて、不織布1と同様の抄紙工程によって、ガラス繊維のみからなる不織布2を形成した。
【0109】
[固体電解質膜]
(固体電解質膜1)
不織布1にフッ素系ポリマー電解質の分散液を含浸させ、12時間以上自然乾燥した後、120℃で1時間熱処理した。このようにして、不織布1を補強材とする固体電解質膜1を作製した。電解質分散液は、ナフィオンDE2020(デュポン社製)をイソプロピルアルコールで希釈して作製した。なお、電解質分散液の濃度および含浸量は、熱処理後の固体電解質膜1の厚さが50μmになるように調整した。
【0110】
(固体電解質膜2)
不織布1にシランカップリング剤を含浸させた後、オーブンで120℃、1時間熱処理した。このようにして、ガラス繊維と繊維状バインダ(叩解セルロース繊維)とを含み、かつ表面がシランカップリング剤で処理された補強材を得た。シランカップリング剤には、イオン交換水にアミノシランを溶解して得られる水溶液を用いた。このとき、アミノシラン水溶液の濃度および含浸量を調整して、ガラス繊維の表面積1m
2当たりの固形分付着量が10mgとなるようにした。この補強材に、固体電解質膜1と同じ手順で電解質分散液を含浸させ、固体電解質膜2を得た。
【0111】
(固体電解質膜3)
不織布1に液状バインダを含浸させた後、オーブンで100℃、30分間乾燥した。このようにして、無機バインダ(シリカ)と繊維状バインダ(叩解セルロース繊維)とを含む補強材を得た。液状バインダは、コロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名:スノーテックスO)を純水で希釈することによって調製した。このとき、コロイダルシリカ希釈液の濃度および含浸量を調整して、ガラス繊維に対するシリカの付着量が5質量%となるようにした。この補強材に、固体電解質膜1と同じ手順で電解質分散液を含浸させ、固体電解質膜3を得た。
【0112】
(固体電解質膜4)
不織布2に、固体電解質膜3と同様の方法でコロイダルシリカ処理を施した。このようにして、シリカを含む補強材を得た。この補強材に、固体電解質膜1と同じ手順で電解質分散液を含浸させ、固体電解質膜4を得た。
【0113】
[鱗片状ガラス]
実施例1〜34で得られたガラス組成物を用いて鱗片状ガラスを作製した。すなわち、ガラス組成物を電気炉で再溶融した後、冷却しながらペレットに成形した。このペレットを熔融炉に投入し、平均厚さが0.5〜1μmおよび平均粒子径が100〜500μmである鱗片状ガラスを作製した。鱗片状ガラスの平均厚さは、電子顕微鏡((株)キーエンス、リアルサーフェスビュー顕微鏡、VE−7800)を用い、100枚の鱗片状ガラスの断面から鱗片状ガラスの厚さを測定し、それらの厚さを平均することにより求めた値である。鱗片状ガラスの平均粒子径は、レーザ回折粒度分布測定装置(日機装(株)、粒度分析計、マイクロトラックHRA)によって測定した。
【0114】
[ライニング材]
上記鱗片状ガラスを各々塗料に配合することにより、種々のライニング材が得られた。