(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6517078
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 43/14 20180101AFI20190513BHJP
F21S 43/241 20180101ALI20190513BHJP
F21S 43/245 20180101ALI20190513BHJP
F21S 43/249 20180101ALI20190513BHJP
F21W 103/10 20180101ALN20190513BHJP
F21W 103/20 20180101ALN20190513BHJP
F21W 103/55 20180101ALN20190513BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20190513BHJP
【FI】
F21S43/14
F21S43/241
F21S43/245
F21S43/249
F21W103:10
F21W103:20
F21W103:55
F21Y115:10
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-92165(P2015-92165)
(22)【出願日】2015年4月28日
(65)【公開番号】特開2016-212949(P2016-212949A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】花見 梢太
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 智之
【審査官】
松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−075331(JP,A)
【文献】
特開昭57−055002(JP,A)
【文献】
実開平06−031003(JP,U)
【文献】
特開昭59−008201(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0046242(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 43/14
F21S 43/241
F21S 43/245
F21S 43/249
F21W 103/10
F21W 103/20
F21W 103/55
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
所定の延出方向に延出し、前記発光素子からの光を後面から入射し、上面および下面の少なくとも一方で全反射して、前面から出射する導光体と、を備える車両用灯具であって、
前記導光体の延出方向は、前記発光素子の発光面の法線に対して傾斜しており、
前記導光体の前記後面における、前記後面と前記発光面の法線の交わる位置よりも前記発光面の法線と前記延出方向のなす角が鋭角側の一部に、複数の全反射プリズムステップが形成され、
前記導光体の前記後面における、前記後面と前記発光面の法線の交わる位置の近傍に、複数のフレネルステップが形成され、
前記導光体において、前記フレネルステップが設けられている部分の前後方向の厚みは、前記全反射プリズムステップが設けられている部分の前後方向の厚みよりも厚いことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記導光体の前記後面における、前記後面と前記発光面の法線の交わる位置の近傍に、入射光を前記前面に向けて屈折させる第1入射面が形成されており、
前記導光体の前記後面における、前記第1入射面よりも前記発光面の法線と前記延出方向のなす角が鈍角側に、入射光を側方に屈折させる第2入射面と、前記第2入射面から入射した光を前記前面に向けて全反射する反射面とが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記全反射プリズムステップから入射した光の一部は、前記導光体の前記上面および前記下面の少なくとも一方で全反射して、前記導光体の前記前面から出射することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関し、特に発光素子と板状の導光体を用いた車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、LED等の発光素子と、前記発光素子からの光を後面から入射し、上面および下面の少なくとも一方で全反射して、前面から出射する導光体とを組み合わせた車両用灯具が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−49977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような導光体を用いた車両用灯具では、車両用灯具の形状によっては導光体の端部近傍に発光素子を配置することがスペース的に難しく、その結果、導光体の端部の明るさが低下する可能性がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、導光体を用いた車両用灯具において、導光体端部の明るさの低下を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用灯具は、発光素子と、所定の延出方向に延出し、発光素子からの光を後面から入射し、上面および下面の少なくとも一方で全反射して、前面から出射する導光体とを備える。導光体の延出方向は、発光素子の発光面の法線に対して傾斜しており、導光体の後面における、後面と発光面の法線の交わる位置よりも発光面の法線と延出方向のなす角が鋭角側の一部に、複数の全反射プリズムステップが形成されている。
【0007】
導光体の後面における、後面と発光面の法線の交わる位置の近傍に、複数のフレネルステップが形成されていてもよい。
【0008】
導光体において、フレネルステップが設けられている部分の前後方向の厚みは、全反射プリズムが設けられている部分の前後方向の厚みよりも厚くてもよい。
【0009】
導光体の後面における、後面と発光面の法線の交わる位置の近傍に、入射光を前面に向けて屈折させる第1入射面が形成されていてもよい。導光体の後面における、第1入射面よりも発光面の法線と延出方向のなす角が鈍角側に、入射光を側方に屈折させる第2入射面と、第2入射面から入射した光を前面に向けて全反射する反射面とが形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、導光体を用いた車両用灯具において、導光体端部の明るさの低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用灯具の一部の概略水平断面図である。
【
図3】
図2に示す灯具ユニットのA−A断面図である。
【
図4】フレネルステップ部を説明するための図である。
【
図5】全反射プリズムステップ部を説明するための図である。
【
図6】本発明の別の実施形態に係る車両用灯具の一部の概略水平断面図である。
【
図7】車両用灯具の灯室内に配置される灯具ユニットの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る発光装置および該発光装置を用いた車両用灯具について詳細に説明する。なお、本明細書において「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「内」、「外」等の方向を表す用語が用いられる場合、それらは車両用灯具が車両に装着されたときの姿勢における方向を意味する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用灯具10の一部の概略水平断面図である。車両用灯具10は、例えば車両前部に搭載されるターンシグナルランプ、クリアランスランプ、デイタイムランニングランプとして用いることができる。
【0014】
図1に示すように、車両用灯具10は、ランプボディ12と、ランプボディ12の前面開口部を覆う透明なカバー14とを備える。ランプボディ12およびカバー14は、灯室16を形成している。カバー14は、車両の形状に倣って、車両左側から車両右側にかけて後方にスラントしている。灯室16内には、灯具ユニット18が配置されている。
【0015】
図2は、灯具ユニット18の平面図である。
図3は、
図2に示す灯具ユニット18のA−A断面図である。
【0016】
図1乃至
図3に示すように、車両用灯具10の灯具ユニット18は、複数のLED20と、LED20を搭載する基板21と、LED20の前方に位置する板状の導光体22とを備える。
【0017】
図1および
図3には、3つのLED20(第1LED20a〜第3LED20c)が図示されている。このうち第1LED20aが最も灯室16内の端部側に配置されており、第1LED20aよりも内側に第2LED20bおよび第3LED20cが配置されている。各LED20は、その発光面23が灯具前方を向くように、すなわち発光面23の法線Nが灯具の前後方向と平行になるように基板21上に配置されている。基板21は、LED20に対して電流を供給する。
【0018】
導光体22は、LED20からの光を制御する。導光体22は、アクリルなどの透明樹脂を押出成形することにより形成される。本実施形態において、導光体22の延出方向Eは、導光体22の発光面23の法線Nに対して傾斜している。
【0019】
図2に示すように、導光体22は、LED20からの光を後面22aから入射し、その入射した光の一部を上面22bおよび下面22cの少なくとも一方で全反射(内面反射)して、前面22dから出射する。
【0020】
導光体22の後面22aには、最も端部側の第1LED20aからの光を入射する第1入光部24と、第1LED20aの内側に位置する第2LED20bからの光を入射する第2入光部25と、第2LED20bの内側に位置する第3LED20cからの光を入射する第3入光部26とが形成されている。
【0021】
まず、第2入光部25および第3入光部26について説明する。第2入光部25および第3入光部26は、同様の形状を有するため、ここでは第2入光部25について説明する。第2入光部25は、第1入射面30と、第2入射面31と、反射面32とを備える。
【0022】
第1入射面30は、LED20bの発光面23の法線N上に位置する。第1入射面30には、LED20bから出射する光のうち比較的出射角の小さい光が入射する。第1入射面30は、その水平断面形状が凸曲線状に形成されており、その曲率はLED20bからの光を前面22dに向けて屈折させる大きさに設定されている。
【0023】
第2入射面31は、第1入射面230の両側方に位置している。第2入射面31には、LED20bから出射する光のうち比較的出射角の大きな光が入射する。反射面32は、第2入射面31の側方に形成されている。反射面32は、第2入射面31から導光体22内に入射した光を前面22dに向かって全反射する。
【0024】
第1入射面30から入射した光と、第2入射面31から入射後に反射面32で全反射した光は、導光体22内を前面22dに向かって進行する。この前面22dに向かって進行する光の一部は、導光体22の上面22bおよび下面22cの少なくとも一方で全反射して、導光体22の前面22dから出射する。導光体22の前面22dには、出射光を拡散するために複数のステップ35が形成されている。
【0025】
次に、第1入光部24について説明する。第1入光部24は、導光体22の後面22aの端部側に形成され、第1LED20aからの光を導光体22内に入射する。第1入光部24は、フレネルステップ部27と、全反射プリズムステップ部28とを備える。
【0026】
図4は、フレネルステップ部27を説明するための図である。フレネルステップ部27は、導光体22の後面22aにおける、後面22aと発光面23の法線Nの交わる位置の近傍に配置される。フレネルステップ部27には、発光面23の法線Nに直交する面に複数のフレネルステップ27aが形成されている。フレネルステップ27aは、フレネルレンズにおけるレンズ素子を表し、光を屈折させることにより第1LED20aからの広がる光を集光させる機能を有する。
図4に示すように、第1LED20aからの比較的出射角の小さい光は、フレネルステップ27aで屈折して導光体22内に入射する。フレネルステップ部27から入射した光は、導光体22内を前面22dに向かって進行する。前面22dに向かって進行する光の一部は、導光体22の上面22bおよび下面22cの少なくとも一方で全反射して、導光体22の前面22dから出射する。
【0027】
図5は、全反射プリズムステップ部28を説明するための図である。全反射プリズムステップ部28は、導光体22の後面22aにおける、後面22aと発光面23の法線Nの交わる位置よりも発光面23の法線Nと導光体22の延出方向Eのなす角が鋭角θ1側の一部に配置される。全反射プリズムステップ部28の位置は、フレネルステップ部27よりも端部側である。全反射プリズムステップ部28には、導光体22の延出方向に延びる面に複数の全反射プリズムステップ28aが形成されている。全反射プリズムステップ28aは、プリズム形状のステップであり、第1LED20aからの比較的出射角の大きい光を屈折および全反射する。全反射プリズムステップ部28から入射した光は、導光体22内を前面22dに向かって進行する。前面22dに向かって進行する光の一部は、導光体22の上面22bおよび下面22cの少なくとも一方で全反射して、導光体22の前面22dから出射する。
【0028】
導光体22において、フレネルステップ27aが設けられているフレネルステップ部27の前後方向の厚みは、全反射プリズムステップ28aが設けられている全反射プリズムステップ部28の前後方向の厚みよりも厚くなっている。一般的に、導光体22の前後方向の厚さが薄い方が成形時間が短く、且つ寸法精度が高くなるため有利である。フレネルステップ27aは、光の向きを大きく変えられないので、出射面から均一発光させたい場合、入射面と出射面の距離を長くする必要がある。全反射プリズムステップ28aは、光の向きを大きく変えられるので、入射面と出射面の距離を小さくしても均一発光を得ることができる。
【0029】
上述したように、本実施形態に係る車両用灯具10では、導光体22の延出方向Eは、導光体22の発光面23の法線Nに対して傾斜している。このように導光体22の延出方向Eが傾斜していると、導光体22の端部付近にLEDを配置するスペースを確保できず、導光体22の端部の明るさが低下する場合がある。そこで、本実施形態では、導光体22の端部側に、フレネルステップ部27および全反射プリズムステップ部28から成る第1入光部24を形成した。フレネルステップ部27により、第1LED20aからの出射角の小さい光を屈折して灯具前方に向かわせることができるとともに、全反射プリズムステップ部28により、第1LED20aからの出射角の大きい光を屈折および全反射して灯具前方に向かわせることができる。その結果、導光体22の端部の明るさの低下を抑制できる。また、第1入光部24は、導光体22における他の入光部(第2入光部25等)よりもコンパクトに形成できるため、スペースの小さい導光体22の端部付近であっても配置可能である。
【0030】
図6は、本発明の別の実施形態に係る車両用灯具60の一部の概略水平断面図である。
図7は、車両用灯具60の灯室16内に配置される灯具ユニット64の平面図である。本実施形態に係る車両用灯具60において、
図1乃至
図5で説明した車両用灯具10と同一または対応する構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0031】
本実施形態に係る車両用灯具60では、第1入光部63の構成が上述の車両用灯具10の第1入光部24と異なる。第1入光部63は、導光体22の後面22aの端部側に形成され、第1LED20aからの光を導光体22内に入射する。第1入光部24は、片側反射面入光部61と、全反射プリズムステップ部62とを備える。
【0032】
図5および
図6に示すように、片側反射面入光部61は、上述した第2入光部25における右側の第2入射面31および反射面32を除去した構成を有する。片側反射面入光部61は、導光体22の後面22aにおける、後面22aと発光面23の法線Nの交わる位置の近傍に形成された、入射光を前面22dに向けて屈折させる第1入射面30を備える。また、片側反射面入光部61は、導光体22の後面22aにおける、第1入射面30よりも発光面23の法線Nと導光体22の延出方向Eのなす角が鈍角θ2側に形成された、入射光を側方に屈折させる第2入射面31を備える。また、片側反射面入光部61は、導光体22の後面22aにおける鈍角θ2側に形成された、第2入射面31から入射した光を前面22dに向けて全反射する反射面32を備える。第1入射面30から入射した光と、第2入射面31から入射後に反射面32で全反射した光は、導光体22内を前面22dに向かって進行する。この前面22dに向かって進行する光の一部は、導光体22の上面および下面の少なくとも一方で全反射して、導光体22の前面22dから出射する。導光体22の前面22dには、出射光を拡散するために複数のステップ35が形成されている。
【0033】
全反射プリズムステップ部62は、導光体22の後面22aにおける、後面22aと発光面23の法線Nの交わる位置よりも発光面23の法線Nと導光体22の延出方向Eのなす角が鋭角θ1側の一部に配置される。全反射プリズムステップ部62の位置は、片側反射面入光部61よりも端部側である。全反射プリズムステップ部62には、導光体22の延出方向に延びる面に複数の全反射プリズムステップ62aが形成されている。全反射プリズムステップ62aは、プリズム形状のステップであり、第1LED20aからの比較的出射角の大きい光を屈折および全反射する。全反射プリズムステップ部62から入射した光は、導光体22内を前面22dに向かって進行する。前面22dに向かって進行する光の一部は、導光体22の上面および下面の少なくとも一方で全反射して、導光体22の前面22dから出射する。
【0034】
以上説明したように、本実施形態では、導光体22の端部側に、片側反射面入光部61および全反射プリズムステップ部62から成る第1入光部63を形成した。片側反射面入光部61により、第1LED20aからの出射角の小さい光を屈折して灯具前方に向かわせることができるとともに、全反射プリズムステップ部62により、第1LED20aからの出射角の大きい光を屈折および全反射して灯具前方に向かわせることができる。その結果、導光体22の端部の明るさの低下を抑制できる。また、第1入光部63は、導光体22における他の入光部(第2入光部25等)のよりもコンパクトに形成できるため、スペースの小さい導光体22の端部付近であっても配置可能である。
【0035】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。これらの実施形態は例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0036】
例えば、上述の実施形態では、発光素子としてLEDを例示したが、発光素子はLEDに限定されず、例えばLD(レーザダイオード)や有機ELであってもよい。
【0037】
上述の車両用灯具は、車両後部の標識灯、例えば、ターンシグナルランプ、テールランプ、ストップランプにも適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
10、60 車両用灯具、 12 ランプボディ、 14 カバー、 16 灯室、 18、64 灯具ユニット、 20 LED、 22 導光体、 23 発光面、 24、63 第1入光部、 25 第2入光部、 26 第3入光部、 27 フレネルステップ部、 28、62 全反射プリズムステップ部、 30 第1入射面、 31 第2入射面、 32 反射面、 61 片側反射面入光部。