(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6517080
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】斜視型内視鏡の先端部構造
(51)【国際特許分類】
G02B 23/26 20060101AFI20190513BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20190513BHJP
A61B 8/12 20060101ALI20190513BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20190513BHJP
【FI】
G02B23/26 C
A61B1/00 731
A61B8/12
G02B23/24 B
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-94350(P2015-94350)
(22)【出願日】2015年5月1日
(65)【公開番号】特開2016-212194(P2016-212194A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083286
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】若曽根 淳
【審査官】
堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−149883(JP,A)
【文献】
特開昭58−190914(JP,A)
【文献】
特開2013−230223(JP,A)
【文献】
特開2006−288824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 23/24−23/26
A61B 1/00−1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部の先端硬質部に該先端硬質部の軸線に対して傾斜するように設けた傾斜面に上記軸線方向に延びる先端光学要素収納孔を形成し、該先端光学要素収納孔に光学要素を収納した斜視型内視鏡の先端部構造において、
上記先端光学要素収納孔に挿入した、両端が開口する後群鏡筒と、
該後群鏡筒の内部に支持した後群レンズと、
上記先端光学要素収納孔に上記後群鏡筒の前方に位置させて挿入した、上記傾斜面と同一平面上に位置しかつカバーレンズ収容孔を有する自身の傾斜前端面、及び、後方に向かって延びる一対のプリズム固定腕、を備える補助枠と、
上記カバーレンズ収容孔に固定した、上記傾斜面と平行なカバーレンズと、
一対の上記プリズム固定腕によって挟持したプリズムと、
を備え、
上記後群鏡筒が、
前面が上記軸線方向に対して直交する平面からなりかつ両端が開口する筒状部と、
該筒状部の前端から前方へ上記軸線方向と平行に延びる支持片と、
を有し、
上記補助枠が、
上記プリズム固定腕及び上記プリズムを上記筒状部内に位置させた状態で、接着剤を介して上記筒状部の上記前面に接触する、上記軸線方向に対して直交する平面からなる後端接触面と、
外周面に形成した、上記支持片に対して接着剤を介して接触する外周側接触面と、
を備えることを特徴とする斜視型内視鏡の先端部構造。
【請求項2】
請求項1記載の斜視型内視鏡の先端部構造において、
共に上記補助枠の外面の上記傾斜前端面とは異なる部位に形成した、上記後端接触面と直交しかつ上記補助枠を挟んで上記支持片と反対側に位置する第一治具当接用平面及び上記後端接触面と平行をなしかつ上記補助枠を挟んで上記後端接触面と反対側に位置する第二治具当接用平面を備える斜視型内視鏡の先端部構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の斜視型内視鏡の先端部構造において、
上記補助枠の上記外周面が四面からなり、
該四面のうち開口部を有する面が上記外周側接触面を構成する斜視型内視鏡の先端部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は斜視型内視鏡の先端部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図17−
図25は本出願人によって提案された斜視型内視鏡を示している(特開2013−230223号公報)。
この斜視型内視鏡010の挿入部011の先端硬質部012に設けた傾斜面013には、先端硬質部012の軸線方向に延びる先端光学要素収納孔014が形成してある。この先端光学要素収納孔014には、後群鏡筒016、後群レンズ017、補助枠018、カバーレンズ019、及び、プリズム020を備える光学要素結合体015が挿入してある。
後群鏡筒016は金属製の筒状部材であり、互いに接合可能な前側部材(中間接続筒)016aと後側部材(レンズ支持筒)016bからなるものである。前側部材016aの断面形状は略方形であり、その前後両端は開口している。さらに前側部材016aの前端面は、傾斜面013と平行な傾斜前端面016cにより構成してある。
金属製の補助枠018は、傾斜面013と平行な傾斜板部018aを有している。傾斜板部018aには、カバーレンズ収納孔018bが形成してある。傾斜板部018aの後半部は前半部より断面形状が小さい嵌合突部018cを構成している。また傾斜板部018aの前半部は当接部018dを構成しており、この当接部018dの断面形状は前側部材016aの傾斜前端面016cとほぼ同じ形状である。また嵌合突部018cの後面の左右両側部には、互いに平行をなしながら後方に延びる一対のプリズム固定腕018eが一体的に形成してある。
【0003】
後群鏡筒016、後群レンズ017、補助枠018、カバーレンズ019、及び、プリズム020から光学要素結合体015を組み立てるには、まず補助枠018の一対のプリズム固定腕018eの間にプリズム020を挿入し、さらにカバーレンズ収納孔018bにカバーレンズ019を嵌合する。そして一対のプリズム固定腕018eとプリズム020を接着剤で固定し、さらにカバーレンズ収納孔018bとカバーレンズ019を接着剤で固定する。また、補助枠018に対するプリズム020及びカバーレンズ019の取付作業と同時に(又は前後させて)、後群鏡筒016の内部に複数のレンズからなる後群レンズ017を固定状態で取り付ける。
続いて、補助枠018の嵌合突部018cに接着剤を塗布した上で、一対のプリズム固定腕018e及びプリズム020を後群鏡筒016の内部に挿入させながら嵌合突部018cを前側部材016aの前端開口から前側部材016aの内部に嵌合し、さらに当接部018dの後端面を前側部材016aの傾斜前端面016cに当接させる。すると嵌合突部018cに塗布した接着剤が、前側部材016aの前端開口の内周面に対して付着しかつ固化するので、補助枠018と後群鏡筒016が互いに固定される。
【0004】
このようにして完成した光学要素結合体015は先端光学要素収納孔014の後端開口(図示略)から先端光学要素収納孔014内に挿入し、カバーレンズ019が傾斜面013において露出する状態で先端光学要素収納孔014に対して固定する。
先端光学要素収納孔014には、後群鏡筒015の直後に位置する撮像素子023が固定してある。
カバーレンズ019に入った入射光(観察像)は、プリズム020の入射平面020aから入射し、全反射平面020b及び入射平面020aの内面で2回反射した後に出射平面020cから出射し、後群レンズ017を透過した後に撮像素子023の撮像面に結像し、撮像素子023によって撮像される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−115486号公報
【特許文献2】特開2013−230223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
当接部018d及び傾斜前端面016cが(先端硬質部の軸線に対する直交面に対して)傾斜しているため、当接部018dの後端面が傾斜前端面016cに当接したときに、傾斜前端面016c及び当接部018dの四隅の間に隙間が形成され易い。
仮に四隅に隙間が形成されると、嵌合突部018cに塗布した固化前の接着剤が当該四隅の隙間から傾斜板部018aの前面側に流れて、カバーレンズ019に付着するおそれがある。
【0007】
さらに近年挿入部が小径化する傾向にあるため、これに伴って光学要素結合体015も小径化している。
そのため光学要素結合体015を小径化させた上で製造公差を考慮しながら前側部材016aと補助枠018を製造すると、補助枠018の嵌合突部018cと前側部材016aの内周面との間に隙間ができ易い。例えば、嵌合突部018cの上部を前側部材016aの内周面の上部に接触させると、嵌合突部018cの下部と前側部材016aの内周面の下部との間に隙間が形成されてしまう(
図25参照)。すると嵌合突部018cに塗布した固化前の接着剤が当該下方隙間から傾斜板部018aの前面側に流れて、カバーレンズ019に付着するおそれがある。
【0008】
さらに、このように補助枠018の嵌合突部018cの上部が前側部材016aの内周面の上部に接触しかつ嵌合突部018cの下部と前側部材016aの内周面の下部との間に隙間が形成された状態で補助枠018と前側部材016aを接続するときに、嵌合突部018cの上部と前側部材016aの内周面の上部との接触部を中心に補助枠018の下端部が正規位置から(僅かに)後方へ回転するおそれがある。仮にこのような回転が発生すると、補助枠018の上端部が正規位置より僅かに前方に位置することになるので、光学要素結合体015を先端光学要素収納孔014に取り付けたときに、カバーレンズ019の上端部が先端硬質部012の傾斜面013から前方に突出してしまう。
【0009】
本発明は、カバーレンズ及びプリズムを支持する補助枠と後群レンズを支持する後群鏡筒とを接続するときに両者の間に隙間が形成され難く、補助枠と後群鏡筒とを正規位置で固定するのが容易な斜視型内視鏡の先端部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の斜視型内視鏡の先端部構造は、挿入部の先端硬質部に該先端硬質部の軸線に対して傾斜するように設けた傾斜面に上記軸線方向に延びる先端光学要素収納孔を形成し、該先端光学要素収納孔に光学要素を収納した斜視型内視鏡の先端部構造において、上記先端光学要素収納孔に挿入した、両端が開口する後群鏡筒と、該後群鏡筒の内部に支持した後群レンズと、上記先端光学要素収納孔に上記後群鏡筒の前方に位置させて挿入した、上記傾斜面と同一平面上に位置しかつカバーレンズ収容孔を有する自身の傾斜前端面、及び、後方に向かって延びる一対のプリズム固定腕、を備える補助枠と、上記カバーレンズ収容孔に固定した、上記傾斜面と平行なカバーレンズと、一対の上記プリズム固定腕によって挟持したプリズムと、を備え、上記後群鏡筒が、前面が上記軸線方向に対して直交する平面からなりかつ両端が開口する筒状部と、該筒状部の前端から前方へ上記軸線方向と平行に延びる支持片と、を有し、上記補助枠が、上記プリズム固定腕及び上記プリズムを上記筒状部内に位置させた状態で、接着剤を介して上記筒状部の上記前面に接触する、上記軸線方向に対して直交する平面からなる後端接触面と、外周面に形成した、上記支持片に対して接着剤を介して接触する外周側接触面と、を備えることを特徴としている。
【0011】
本発明の斜視型内視鏡の先端部構造は、共に上記補助枠の外面の上記傾斜前端面とは異なる部位に形成した、上記後端接触面と直交しかつ上記補助枠を挟んで上記支持片と反対側に位置する第一治具当接用平面及び上記後端接触面と平行をなしかつ上記補助枠を挟んで上記後端接触面と反対側に位置する第二治具当接用平面を備えることができる。
【0012】
本発明の斜視型内視鏡の先端部構造は、上記補助枠の上記外周面が四面からなり、該四面のうち開口部を有する面が上記外周側接触面を構成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、互いに直交する位置関係にある後群鏡筒の前面と支持片に対して、互いに直交する位置関係にある補助枠の後端接触面と外周側接触面をそれぞれ接触させる構造なので(嵌め込み構造ではないので)、後群鏡筒と補助枠の少なくとも一方の製造公差が大きい場合であっても、後群鏡筒の前面と補助枠の後端接触面の間、及び、後群鏡筒の支持片と補助枠の外周側接触面の間に隙間が形成され難い。そのため補助枠と後群鏡筒を接着剤を介して確実に固定できる。さらに補助枠と後群鏡筒の間に隙間が形成され難いので、補助枠と後群鏡筒を固定したときに両者が正規位置から位置ズレする(例えば補助枠が後群鏡筒に対して傾くなど)おそれは低く、補助枠と後群鏡筒を正規位置で固定するのが容易である。
また後群鏡筒の前面が先端硬質部の軸線方向に対して直交する平面によって構成してあり、補助枠の後端面である後端接触面が上記軸線方向に対して直交する平面によって構成してある。そのため、後群鏡筒の前面と補助枠の後端接触面を接着剤を介して固定するときに、後群鏡筒の前面と補助枠の後端接触面との間(例えば両者の角部の間)に隙間が形成されにくい。従って、後群鏡筒の前面と補助枠の後端接触面の間に塗布した接着剤が(隙間を通して)カバーレンズ側に流れてカバーレンズに付着するおそれは殆どない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明を適用した超音波内視鏡の一実施形態を示す外観図である。
【
図9】(a)はレンズプリズムユニットの分離状態の側面図であり、(b)は後群鏡筒の分離状態の側面図である。
【
図10】レンズプリズムユニット、中間接続筒、及び後群ユニットを互いに分離して示す側面図である。
【
図11】光学要素結合体の完成状態の側面図である。
【
図14】補助枠と筒状部の前面との接触位置で切断して示す補助枠及び中間接続筒の後方から見た断面図である。
【
図15】補助枠が
図14のものより小さめに製造された場合(マイナス公差の場合)の
図14と同様の断面図である。
【
図16】固定状態にあるレンズプリズムユニットと中間接続筒の拡大縦断側面図である。
【
図17】従来の内視鏡の
図2と同様の拡大縦断側面図である。
【
図18】
図17の内視鏡の補助枠を前方から見た斜視図である。
【
図19】
図17の内視鏡の補助枠を後方から見た斜視図である。
【
図20】
図17の内視鏡の補助枠を側方から見た斜視図である。
【
図21】
図17の内視鏡の前側部材を前方から見た斜視図である。
【
図22】
図17の内視鏡の後側部材を前方から見た斜視図である。
【
図23】
図17の内視鏡の補助枠、前側部材、及び後側部材を互いに分離して示す側面図である。
【
図24】
図17の内視鏡の光学要素結合体の完成状態の側面図である。
【
図25】
図17の内視鏡の固定状態にある補助枠と前側部材の拡大縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1から
図16を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。以下の説明中の前後方向、上下方向、及び、左右方向は図中の矢印方向を基準としている。
図1に示す超音波内視鏡10は、操作部11と、操作部11から前方に延びる挿入部12と、共に操作部11から挿入部12と異なる方向に延びるユニバーサルチューブ13及び超音波画像伝送用チューブ14と、を備える斜視型内視鏡である。超音波画像伝送用チューブ14は超音波診断装置(図示略)に接続するものであり、ユニバーサルチューブ13はプロセッサ(画像処理装置兼光源装置。図示略)に接続するものであり、超音波診断装置及びプロセッサは共にCRTモニタ(図示略)に接続している。
挿入部12には、操作部11に設けた湾曲操作レバー15の回転操作に応じて上下及び左右方向に湾曲する湾曲部17が形成してあり、湾曲部17より基端側の部分は自重や術者の直接的な操作によって湾曲する可撓管部18となっている。
図1に示すように、挿入部12における湾曲部17より先端側の部分は硬質樹脂製の先端硬質部19となっている。先端硬質部19の後半部には傾斜面20が形成してあり、この傾斜面20には照明レンズ等が設けてある。先端硬質部19の前半部には傾斜面20の直前に位置する超音波プローブ19aが形成してある。
【0016】
先端硬質部19の傾斜面20には、先端硬質部19をその軸線方向に貫通する先端光学要素収納孔21が穿設してある。
図2に示すように先端光学要素収納孔21の先端部には抜止位置決め縁22が内方に向けて突出するように形成してある。
先端光学要素収納孔21には、補助枠27、プリズム34、カバーレンズ40、後群鏡筒42(中間接続筒44、レンズ支持筒47)、環状スペーサ51、及び、後群レンズ52の結合体である光学要素結合体25が、先端光学要素収納孔21の後端開口(図示略)から挿入してある。
金属製の補助枠27は、正面形状が略方形をなす部材である。即ち、補助枠27の外周面は四面により構成してある。補助枠27は傾斜面20と同じ方向に傾斜する略方形の傾斜板部28を有している。傾斜板部28の前面をなしかつ傾斜面20と平行(略平行も含む)をなす傾斜前端面28eには、カバーレンズ収納孔29(座ぐり孔)と光路孔30が形成してあり、傾斜板部28の背面には光路孔30の上部に位置する空気層形成用凹部31が凹設してある。傾斜板部28の左右両側部には側面視略三角形をなす側壁28aがそれぞれ設けてある。傾斜板部28及び側壁28aの後端面は前後方向(先端硬質部19の軸線方向)に対して直交する平面からなる後端接触面32(
図13の網線部分を参照)により構成してある。傾斜板部28の上端面は後端接触面32に対して直交する平面からなる第一治具当接用平面28bとなっている。また傾斜板部28の前面下端部は、後端接触面32と平行な平面からなる第二治具当接用平面28cとなっている。さらに傾斜板部28の下端面及び左右の側壁28aの下端面は、全体として略コ字形をなしかつ第一治具当接用平面28bと平行な平面からなる下端接触面28d(
図12の網線部分を参照)となっている。また後端接触面32の後面の左右両側近傍部には、カバーレンズ収納孔29及び光路孔30の中心に対して対称をなしかつ互いに平行をなしながら後方に延びる一対のプリズム固定腕33が一体的に形成してある。
プリズム34は、傾斜板部28の背面に接触する入射平面35(
内面が全反射面)、一対の側部平面36、
反射平面(鏡面反射面)37、及び、出射平面38を有している。このプリズム34は、超音波内視鏡10(先端光学要素収納孔21)の外側において補助枠27と一体化される。即ち、入射平面35を傾斜板部28の背面に当接させた状態で左右の側部平面36を一対のプリズム固定腕33の内面間で挟持した上で、入射平面35と傾斜板部28の背面を接着固定し、さらに左右の側部平面36と左右のプリズム固定腕33を接着固定する。
カバーレンズ収納孔29と同じ断面形状かつ傾斜面20と平行(略平行も含む)なカバーレンズ40は、その背面をカバーレンズ収納孔29の底面に当接させた状態でカバーレンズ収納孔29の内面に接着固定してある。カバーレンズ40とカバーレンズ収納孔29の接着固定作業は、超音波内視鏡10(先端光学要素収納孔21)の外側において補助枠27とプリズム34の接着固定作業の後に行う。補助枠27に対してプリズム34とカバーレンズ40を固定することにより、
図10に図示したレンズプリズムユニット39が完成する。
【0017】
後群鏡筒42は、金属製の中間接続筒44と樹脂製のレンズ支持筒47を具備している。
中間接続筒44は断面略方形の両端が開口する筒状部材からなる筒状部45を有している。筒状部45の軸線は先端光学要素収納孔21と平行である。筒状部45の前面45aと後面は前後方向(先端硬質部19の軸線方向)に対して直交する平面によって構成してある。さらに筒状部45の前面下端部には、前方に向かって延びる(前面45aに対して直交する)水平板からなる支持片46が突設してある。
レンズ支持筒47は筒状部45と同じく断面略方形の筒状部材であり、その軸線は筒状部45と平行である。レンズ支持筒47の前部には、後部に比べて断面形状が小さい嵌合接続部48が形成してある。嵌合接続部48は4つの平面、即ち、上部平面48a、下部平面48b、左側平面48c、及び、右側平面48dを有している。さらにレンズ支持筒47の内部には、レンズ支持筒47をその軸線方向に貫通する断面円形の光学要素固定孔49が形成してある。
光学要素固定孔49には、2枚の環状スペーサ51と2枚の後群レンズ52が交互に並べた同軸状態で収納してあり、環状スペーサ51及び後群レンズ52は光学要素固定孔49の内面に対して接着固定してある。この環状スペーサ51及び後群レンズ52のレンズ支持筒47(光学要素固定孔49)に対する接着固定作業は、超音波内視鏡10(先端光学要素収納孔21)の外側において補助枠27に対するプリズム34又はカバーレンズ40の接着固定作業と同時に行う。レンズ支持筒47に対して環状スペーサ51及び後群レンズ52を固定することにより、
図8及び
図10に図示した後群ユニット53が完成する。
【0018】
レンズプリズムユニット39、中間接続筒44、及び、後群ユニット53は超音波内視鏡10(先端光学要素収納孔21)の外側において一体化される。具体的には、レンズプリズムユニット39の補助枠27の下端接触面28d(外周側接触面)に接着剤を塗布し(
図12に示した網線部分が接着剤の塗布領域)かつ後端接触面32に接着剤を塗布(
図13に示した網線部分が接着剤の塗布領域)した上で、左右のプリズム固定腕33及びプリズム34を筒状部45の前端開口から筒状部45の内部に挿入し、下端接触面28dを支持片46の上面(前面45aに対して直交する平面)に載せかつ後端接触面32を筒状部45の前面45aに接触させる(
図16参照)。このとき
図16に示すように補助枠27の第一治具当接用平面28bと第二治具当接用平面28cに治具Tの互いに直交する平面からなる押さえ面T1と押さえ面T2をそれぞれ面接触させながら行うことが可能である。補助枠27の第一治具当接用平面28bと第二治具当接用平面28cは傾斜板部28の傾斜前端面28e(カバーレンズ収納孔29を形成した面)とは別の面なので、治具T(押さえ面T1、T2)を第一治具当接用平面28bと第二治具当接用平面28cに接触させたときに治具Tによって傾斜前端面28e(カバーレンズ収納孔29)に設けたカバーレンズ40を傷つけるおそれがない。このようにしてレンズプリズムユニット39と中間接続筒44を固定すると、プリズム34の出射平面38が前側の環状スペーサ51の前面(中央に形成した貫通孔の周辺部)に接触する。さらに後群ユニット53のレンズ支持筒47の嵌合接続部48の外周面(上部平面48a、下部平面48b、左側平面48c、及び、右側平面48d)に接着剤を塗布した上で嵌合接続部48を筒状部45の内周面に嵌合して(筒状部45の後端内周面を構成する四つの面とそれぞれ対向させて)、上部平面48a、下部平面48b、左側平面48c、及び、右側平面48dの各面に塗布した接着剤を、筒状部45の後端内周面を構成する四つの面に付着させる。このレンズプリズムユニット39と中間接続筒44の接着固定作業、及び、後群ユニット53と中間接続筒44の接着固定作業は同時に行う。
そしてレンズプリズムユニット39と中間接続筒44を固定するための上記接着剤、及び、後群ユニット53と中間接続筒44を固定するための上記接着剤が固化することにより完成した光学要素結合体25を、先端光学要素収納孔21の後端開口から先端光学要素収納孔21の内部に挿入し、傾斜板部28の先端部を抜止位置決め縁22の後面に当接させた上で、光学要素結合体25を先端光学要素収納孔21の内面に対して接着固定する。すると
図2に示すように傾斜板部28の傾斜前端面28eが傾斜面20の前面と同一平面上(略同一平面上も含む)に位置し、カバーレンズ40が傾斜面20の前面において露出する。
光学要素結合体25を先端光学要素収納孔21に固定したら、画像信号用ケーブル56を備える撮像素子55を先端光学要素収納孔21の後端開口から先端光学要素収納孔21に挿入し、撮像素子55をレンズ支持筒47の直後に位置する状態で先端光学要素収納孔21に固定する。
【0019】
超音波内視鏡10のカバーレンズ40に入った入射光(観察像)は、光路孔30を通り抜けて入射平面35
の外面からプリズム34の内部に入射し、
反射平面(鏡面反射面)37及び入射平面35の内面
(全反射面)で2回反射した後に出射平面38から後方に出射し、環状スペーサ51及び後群レンズ52を透過した後に撮像素子55の撮像面に結像する。撮像素子55によって撮像された画像データは画像信号用ケーブル56を介して上記プロセッサに送られ、プロセッサで画像処理された後に上記CRTモニタに表示される。
【0020】
以上構成の超音波内視鏡10は、互いに直交する位置関係にある筒状部45の前面45aと支持片46に対して、互いに直交する位置関係にある補助枠27の後端接触面32と下端接触面28dをそれぞれ接触させる構造なので(嵌め込み構造ではないので)、中間接続筒44及び補助枠27の製造公差が大きい場合であっても、筒状部45の前面45aと補助枠27の後端接触面32の間、及び、中間接続筒44の支持片46と補助枠27の下端接触面28dの間に隙間が形成され難い。即ち、
図14は補助枠27及び中間接続筒44(筒状部45)の実寸法が設計寸法に極めて近い場合の傾斜板部28の後端接触面32と筒状部45の前面45aの接着領域(ハッチング部分。仮想線が前面45aの内周側縁部)を示しており、
図15は補助枠27の上下方向の実寸法が設計寸法からマイナス方向に(比較的)大きくずれている場合の傾斜板部28の後端接触面32と筒状部45の前面45aの接着領域(ハッチング部分。仮想線が前面45aの内周側縁部)である。
図14及び
図15から明らかなように、どちらの場合も傾斜板部28の後端接触面32と筒状部45の前面45aの接着領域が十分確保される。そのため補助枠27と中間接続筒44を確実に固定できる。
しかも筒状部45の前面45aと補助枠27の後端接触面32の間、及び、中間接続筒44の支持片46と補助枠27の下端接触面28dの間に隙間が形成され難いので、補助枠27と中間接続筒44を固定したときに両者が正規位置から位置ズレする(例えば補助枠27が中間接続筒44に対して傾くなど)おそれは低く、補助枠27と中間接続筒44を正規位置で固定するのが容易である。
さらに補助枠27の外周面を構成する四面のうち開口部を有する下面(下端接触面28d)を支持片46で塞いでいる。そのため光学要素結合体25を先端光学要素収納孔21の内面に対して固定するための接着材が、補助枠27の下面(下端接触面28d)側から補助枠27の内部に流れてプリズム34等に付着するおそれがない。
また筒状部45の前面45aが前後方向(先端硬質部19の軸線方向)に対して直交する平面によって構成してあり、補助枠27の後端接触面32が上記軸線方向に対して直交する平面によって構成してある。そのため筒状部45の前面45aと補助枠27の後端接触面32を接着剤を介して固定するときに、筒状部45の前面45aと補助枠27の後端接触面32との間(例えば両者の四隅の間)に隙間が形成されにくい。従って、筒状部45の前面45aと補助枠27の後端接触面32の間に塗布した接着剤が(隙間を通して)傾斜板部28の前面側に流れてカバーレンズ40に付着するおそれは殆どない。
【0021】
さらに光学要素結合体25を、〈1〉レンズプリズムユニット39の組立作業と後群ユニット53の組立作業を同時に行なう工程、〈2〉レンズプリズムユニット39と中間接続筒44の接着固定作業、及び、後群ユニット53と中間接続筒44の接着固定作業を同時に行う工程、の2工程により組み立てることが可能なので、光学要素結合体25を短時間で組み立てることが可能である。
【0022】
以上、上記実施形態を利用して本発明を説明したが、本発明は様々な変形を施しながら実施可能である。
例えば、中間接続筒44とレンズ支持筒47を別体とせず、両者を金属又は樹脂からなる一体成形品として構成してもよい。
また、補助枠27の傾斜板部28、レンズ支持筒47の嵌合接続部48、及び、筒状部45の内部孔の断面形状は上記のものでなくてもよく、方形とは異なる非円形形状(例えば五角形など)としてもよい。
中間接続筒44の支持片46を筒状部45の側部や上部に突設し、かつ、補助枠27の外周面の支持片46と対応する部位に外周側接触面(下端接触面28dに対応する面)を形成し、この支持片46と外周側接触面とを接着により固定してもよい。
さらに先端硬質部19から抜止位置決め縁22を省略して、光学要素結合体25を先端光学要素収納孔21の前端開口から先端光学要素収納孔21に挿入してもよい。
さらに本発明を超音波プローブ19aを具備しない斜視型内視鏡に適用してもよい。
【符号の説明】
【0023】
10 超音波内視鏡(斜視型内視鏡)
11 操作部
12 挿入部
13 ユニバーサルチューブ
14 超音波画像伝送用チューブ
15 湾曲操作レバー
17 湾曲部
18 可撓管部
19 先端硬質部
19a 超音波プローブ
20 傾斜面
21 先端光学要素収納孔
22 抜止位置決め縁
25 光学要素結合体
27 補助枠
28 傾斜板部
28a 側壁
28b 第一治具当接用平面
28c 第二治具当接用平面
28d 下端接触面(外周側接触面)
28e 傾斜前端面
29 カバーレンズ収納孔
30 光路孔
31 空気層形成用凹部
32 後端接触面
33 プリズム固定腕
34 プリズム
35 入射平面
36 側部平面
37
反射平面(鏡面反射面)
38 出射平面
39 レンズプリズムユニット
40 カバーレンズ
42 後群鏡筒
44 中間接続筒
45 筒状部
45a 前面
46 支持片
47 レンズ支持筒
48 嵌合接続部
48a 上部平面
48b 下部平面
48c 左側平面
48d 右側平面
49 光学要素固定孔
51 環状スペーサ
52 後群レンズ
53 後群ユニット
55 撮像素子
56 画像信号用ケーブル
T 治具
T1 T2 押さえ面