(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6517081
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】血液浄化装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/14 20060101AFI20190513BHJP
【FI】
A61M1/14 100
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-98763(P2015-98763)
(22)【出願日】2015年5月14日
(65)【公開番号】特開2016-214274(P2016-214274A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】豊田 将弘
(72)【発明者】
【氏名】淺井 利憲
【審査官】
安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−004194(JP,A)
【文献】
特開2001−346872(JP,A)
【文献】
特開2006−006433(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0287854(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/14− 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に穿刺針が取り付けられるとともに、患者の血液を体外循環可能な血液回路と、
該血液回路に接続され、当該血液回路で体外循環する血液を浄化する血液浄化手段と、
を具備した血液浄化装置において、
個々の患者に応じた緊急避難時の前記血液回路からの離脱方法を予め記憶した記憶手段と、
緊急避難時、前記記憶手段で記憶された患者の離脱方法を報知する報知手段と、
を備えたことを特徴とする血液浄化装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、個々の患者に応じた緊急避難時の介助の優先度を前記離脱方法と併せて予め記憶するとともに、前記報知手段にて当該優先度を報知可能とされたことを特徴とする請求項1記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記報知手段は、表示手段又は表示灯から成り、介助の優先度に応じた色を当該表示手段又は表示灯にて表示させることを特徴とする請求項2記載の血液浄化装置。
【請求項4】
血液浄化治療中の患者の状態に基づいて、その患者の前記離脱方法を適宜変更可能とされたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【請求項5】
前記離脱方法は、個々の患者に応じた返血方法を含み、緊急避難時、当該患者に応じた返血方法を自動的に実行することを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【請求項6】
前記血液回路には、送液のための血液ポンプが配設されるとともに、緊急避難時、当該血液ポンプが停止してからの経過時間を前記報知手段にて報知することを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【請求項7】
緊急避難時、前記血液ポンプが停止してからの経過時間に応じて前記報知手段にて報知する離脱方法を適宜変更可能とされたことを特徴とする請求項6記載の血液浄化装置。
【請求項8】
前記記憶手段は、緊急避難時の前記血液回路からの離脱方法を予め複数記憶したことを特徴とする請求項1〜7の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析治療等の血液浄化治療を行うための血液浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば血液透析装置(血液浄化装置)は、先端に穿刺針が取り付けられるとともに、患者の血液を体外循環可能な血液回路と、血液回路に接続され、当該血液回路で体外循環する血液を浄化するダイアライザ(血液浄化手段)とを有して構成されており、穿刺針を患者に穿刺して患者の血液を体外循環させつつダイアライザにて血液浄化及び除水等を行っている。
【0003】
従来の血液浄化装置として、例えば特許文献1にて開示されているように、地震等の災害や送電の不具合等で停電し、電源からの電力供給が遮断した際、血液浄化治療を継続して行わせるべく電力供給可能なバッテリを内蔵したものが提案されている。かかるバッテリは、通常時、商用電源からの電力供給で蓄電されるとともに、停電等で当該電源からの電力供給が遮断されると、血液浄化装置が具備する血液ポンプ等に対して電力供給可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−283996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術においては、以下の如き問題がある。
地震や火災等の災害で緊急避難が必要とされる場合、即座に行動する必要があるが、患者の年齢や体調は様々であり、個々の患者に応じた対応が必要とされる。特に、血液浄化治療中においては、穿刺針が患者に穿刺されて血液回路で拘束された状態となっているため、緊急避難のためには、先ず血液回路からの離脱が必要とされる。しかしながら、患者の年齢や体調に応じて、返血を全く必要とせず離脱を自力で行うのが適切な場合、返血をある程度行って離脱を自力で行うのが適切な場合、或いは十分な返血を行った後、医療従事者による離脱が必要とされる場合等、対処の仕方は様々であり、緊急避難時の対応を円滑に行わせるのが困難となっていた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、緊急避難時の血液回路からの離脱を個々の患者に応じて適切且つ円滑に行わせることができる血液浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、先端に穿刺針が取り付けられるとともに、患者の血液を体外循環可能な血液回路と、該血液回路に接続され、当該血液回路で体外循環する血液を浄化する血液浄化手段とを具備した血液浄化装置において、個々の患者に応じた緊急避難時の前記血液回路からの離脱方法を予め記憶した記憶手段と、緊急避難時、前記記憶手段で記憶された患者の離脱方法を報知する報知手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の血液浄化装置において、前記記憶手段は、個々の患者に応じた緊急避難時の介助の優先度を前記離脱方法と併せて予め記憶するとともに、前記報知手段にて当該優先度を報知可能とされたことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の血液浄化装置において、前記報知手段は、表示手段又は表示灯から成り、介助の優先度に応じた色を当該表示手段又は表示灯にて表示させることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化装置において、血液浄化治療中の患者の状態に基づいて、その患者の前記離脱方法を適宜変更可能とされたことを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記離脱方法は、個々の患者に応じた返血方法を含み、緊急避難時、当該患者に応じた返血方法を自動的に実行することを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記血液回路には、送液のための血液ポンプが配設されるとともに、緊急避難時、当該血液ポンプが停止してからの経過時間を前記報知手段にて報知することを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の血液浄化装置において、緊急避難時、前記血液ポンプが停止してからの経過時間に応じて前記報知手段にて報知する離脱方法を適宜変更可能とされたことを特徴とする。
請求項8記載の発明は、請求項1〜7の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記記憶手段は、緊急避難時の前記血液回路からの離脱方法を予め複数記憶したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、個々の患者に応じた緊急避難時の血液回路からの離脱方法を予め記憶した記憶手段と、緊急避難時、記憶手段で記憶された患者の離脱方法を報知する報知手段とを備えたので、緊急避難時の血液回路からの離脱を個々の患者に応じて適切且つ円滑に行わせることができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、記憶手段は、個々の患者に応じた緊急避難時の介助の優先度を離脱方法と併せて予め記憶するとともに、報知手段にて当該優先度を報知可能とされたので、緊急避難時の血液回路からの離脱に加え、緊急避難時の介助も個々の患者に応じて適切且つ円滑に行わせることができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、報知手段は、表示手段又は表示灯から成り、介助の優先度に応じた色を当該表示手段又は表示灯にて表示させるので、緊急避難時、介助の優先度を視覚的に把握させることができ、より適切且つ円滑な介助を行わせることができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、血液浄化治療中の患者の状態に基づいて、その患者の離脱方法を適宜変更可能とされたので、治療中の健康状態に応じた離脱方法を報知させることができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、離脱方法は、個々の患者に応じた返血方法を含み、緊急避難時、当該患者に応じた返血方法を自動的に実行するので、血液回路からの離脱前に返血が必要な患者に対する処置を円滑に行わせることができる。
【0019】
請求項6の発明によれば、血液回路には、送液のための血液ポンプが配設されるとともに、緊急避難時、当該血液ポンプが停止してからの経過時間を報知手段にて報知するので、血液ポンプが停止して血液の体外循環が行われず血液回路内で血液が凝固する可能性を医療従事者等に把握させることができる。
【0020】
請求項7の発明によれば、緊急避難時、血液ポンプが停止してからの経過時間に応じて報知手段にて報知する離脱方法を適宜変更可能とされたので、血液ポンプが停止してから所定時間経過した場合は離脱方法として返血を行わないこととすることができ、血液回路内で血液が凝固した状態で返血が行われてしまうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る血液浄化装置の配置状態を示す模式図
【
図4】同血液浄化装置における記憶手段で記憶される個々の患者に応じた介助の優先度を示す表
【
図5】同血液浄化装置における記憶手段で記憶される介助の優先度の定義を示す表
【
図6】同血液浄化装置における表示手段で患者の離脱方法及び介助の優先度(優先度低)が表示された状態を示す模式図
【
図7】同血液浄化装置における表示手段で血液回路からの離脱方法及び介助の優先度(優先度高)が表示された状態を示す模式図
【
図8】同血液浄化装置における血液回路からの離脱方法及び介助の優先度を表示するための制御内容を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る血液浄化装置は、複数の患者に透析治療を施し得る所謂「透析治療用セントラルシステム」と称される血液浄化システムに適用されたものである。かかる血液浄化システムは、
図1に示すように、複数の血液浄化装置(A〜U)と、これら血液浄化装置(A〜U)と電気的に接続された中央管理装置11とから主に構成されている。なお、各血液浄化装置(A〜U)の近傍には、患者が横臥し得るベッド(a〜u)がそれぞれ設置されており、当該ベッド(a〜u)に横臥又は着座した患者に対して血液浄化装置(A〜U)にて透析治療が行われるようになっている。
【0023】
血液浄化装置(A〜U)は、透析室に複数設置されたもので、
図2に示すように、インターフェイス部Xと、治療部Yと、記憶手段7と、制御手段8と、表示手段9と、表示灯10(警告灯)とを有して構成されている。治療部Yは、ベッド(a〜u)に横臥又は着座した患者に透析治療(血液浄化治療)を施すためのもので、
図3に示すように、先端に穿刺針(動脈側穿刺針1aa及び静脈側穿刺針1ba)が取り付けられるとともに、患者の血液を体外循環可能な血液回路1と、該血液回路1に接続され、当該血液回路1で体外循環する血液を浄化するダイアライザ2(血液浄化手段)とを有している。
【0024】
血液回路1は、先端に動脈側穿刺針1aaが取り付けられた動脈側血液回路1aと、先端に静脈側穿刺針1baが取り付けられた静脈側血液回路1bとを有して構成されている。動脈側血液回路1aには、その途中にしごき型の血液ポンプ3及び除泡用の動脈側エアトラップチャンバ4aが接続されるとともに、静脈側血液回路1bには、その途中に除泡用の静脈側エアトラップチャンバ4bが接続されている。
【0025】
そして、動脈側穿刺針1aa及び静脈側穿刺針1baを患者に穿刺した状態で、血液ポンプ3を駆動させると、患者の血液は、動脈側エアトラップチャンバ4aで除泡がなされつつ動脈側血液回路1aを通ってダイアライザ2に至り、該ダイアライザ2によって血液浄化が施された後、静脈側エアトラップチャンバ4bで除泡がなされつつ静脈側血液回路1bを通って患者の体内に戻る。すなわち、患者の血液を血液回路1にて体外循環させつつダイアライザ2にて浄化するのである。
【0026】
ダイアライザ2は、その筐体部に、血液導入ポート2a、血液導出ポート2b、透析液導入ポート2c及び透析液導出ポート2dが形成されており、このうち血液導入ポート2aには動脈側血液回路1aの基端が、血液導出ポート2bには静脈側血液回路1bの基端がそれぞれ接続されている。また、透析液導入ポート2c及び透析液導出ポート2dは、ダイアライザ2に透析液を導入するための透析液導入ラインL1及びダイアライザ2から排液を排出するための透析液排出ラインL2とそれぞれ接続されている。
【0027】
ダイアライザ2内には、複数の中空糸が収容されており、該中空糸内部が血液の流路とされるとともに、中空糸外周面と筐体部の内周面との間が透析液の流路とされている。中空糸には、その外周面と内周面とを貫通した微少な孔(ポア)が多数形成されて中空糸膜を形成しており、該膜を介して血液中の老廃物等が透析液内に透過し得るよう構成されている。
【0028】
複式ポンプ5は、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2に跨って配設されたもので、駆動によって、透析液導入ラインL1からダイアライザ2(血液浄化手段)に対して透析液を導入させるとともに、当該ダイアライザ2からの排液を透析液排出ラインL2から排出させ得るよう構成されている。また、透析液排出ラインL2には、複式ポンプ5を迂回するバイパスラインL3が接続されており、このバイパスラインL3には、除水ポンプ6が配設されている。
【0029】
除水ポンプ6は、ダイアライザ2中を流れる患者の血液から水分を除去するためのものである。すなわち、かかる除水ポンプ6を駆動させると、透析液導入ラインL1から導入される透析液量よりも透析液排出ラインL2から排出される排液の容量が多くなり、その多い容量分だけ血液中から水分が除去されるのである。なお、かかる除水ポンプ6以外の手段(例えば所謂バランシングチャンバ等を利用するもの)にて患者の血液から水分を除去するようにしてもよい。
【0030】
表示手段9は、所定の表示機能(表示手段としての表示機能)と入力機能(入力手段としての入力機能)とを兼ね備えたタッチパネルから成るもので、例えば治療過程の患者又は機器の状態を表示するとともに、血液透析治療に関わるパラメータ(例えば図示しない血液ポンプや除水ポンプの駆動速度等)を入力し得るようになっている。かかる表示手段9は、装置本体の上部において正面を向いて取り付けられており、医療従事者が表示を目視し、所定の入力操作(画面への操作)を可能としている。なお、表示手段9が左右方向に回転可能なものとしてもよい。
【0031】
各血液浄化装置(A〜U)は、例えば双方向通信可能なLAN(ローカルエリアネットワーク:構内通信網)を構成する配線αにて中央管理装置11と電気的に接続されており、インターフェイス部Xを介して中央管理装置11との間で所定の信号を送受信可能とされている。制御手段8は、マイコン等から成るもので、中央管理装置11からインターフェイス部Xを介して受信した情報(緊急地震速報等の外部情報を含む)や表示手段9から入力された設定等に基づいて治療部Yの種々機器を制御して血液浄化治療を行わせるとともに、表示手段9又は表示灯10の表示を制御し得るものである。
【0032】
記憶手段7は、個々の患者に応じた緊急避難時の血液回路1からの離脱方法、及び個々の患者に応じた緊急避難時の介助の優先度を予め記憶したもので、
図4に示すように、患者(患者ID)と介助の優先度(高・中・低)が紐づけされるとともに、
図5に示すように、介助の優先度(高・中・低)と血液回路1からの離脱方法(自力離脱の可否及び返血の要否)及び自力移動の可否とが関連付けされて記憶されている。
【0033】
例えば、自分で血液回路1からの離脱ができず、十分な返血が必要とされ(血液不足で体外循環血液を廃棄できない)、車椅子やストレッチャーで移動する患者については介助の優先度を「高」、自分で血液回路1からの離脱ができず、十分な返血が必要とされ(血液不足で体外循環血液を廃棄できない)、自分で歩いて移動する患者については介助の優先度を「中」、自分で血液回路1からの離脱ができ、返血が必要とされず(体外循環血液を廃棄できる)、自分で歩いて移動する患者については介助の優先度を「低」として記憶手段7に記憶させるのである。
【0034】
しかして、中央管理装置11が緊急地震速報や火災情報等の警報を外部から受信すると、その情報がLANを介して各血液浄化装置(A〜U)に一斉に送信される。そして、血液浄化装置(A〜U)にて緊急避難が必要と判断されると、記憶手段7で記憶された血液回路1からの患者の離脱方法及び介助の優先度を報知手段にて報知するよう構成されている。なお、血液回路1からの離脱方法とは、血液回路1による身体の拘束を解く方法(例えば穿刺針を抜く、血液回路1の先端部を切断する等)の他、返血の要否や返血方法等を含むものである。
【0035】
ここで、本実施形態に係る報知手段は、表示手段9から成るもので、緊急避難時、
図6、7に示すように、表示手段9の表示画面において、その血液浄化装置(A〜U)にて透析治療中の患者に応じた血液回路1からの離脱方法及び介助の優先度が表示部位9aに表示される。すなわち、通常時においては、表示手段9にて治療に関わる表示を行わせるとともに、緊急避難時においては、表示手段9にて患者に応じた血液回路1からの離脱方法及び介助の優先度が表示されるよう構成されているのである。
【0036】
さらに、本実施形態においては、
図5に示すように、介助の優先度に対応した色(赤・黄・緑)が予め記憶されており、緊急避難時、介助の優先度に応じた色を表示手段9の背景色として表示させている。これにより、緊急避難が生じた際、医療従事者がどの患者の介助に優先して向かうべきか容易且つ早急に判断することができる。なお、本実施形態においては、記憶手段7で記憶された患者の離脱方法及び介助の優先度を報知する報知手段が表示手段9から成るものとされているが、それに代えて或いはそれと共に、表示灯10にて介助の優先度に応じた色を点灯又は点滅して表示させてもよい。
【0037】
またさらに、本実施形態においては、血液浄化治療中の患者の状態に基づいて、その患者の離脱方法及び介助の優先度を適宜変更可能とされている。例えば、
図4に示すように、個々の患者において血液回路1からの離脱方法や介助の優先度を変更するための条件を予め設定しておき、その設定された条件に該当する場合、その患者に対する血液回路1からの離脱方法や介助の優先度を変更するのである。このように、血液浄化治療中の患者の状態に基づいて、その患者の離脱方法を適宜変更可能とされたので、治療中の健康状態に応じた離脱方法を報知させることができる。
【0038】
また、本実施形態においては、予め設定された血液回路1からの離脱方法として、上述のように、個々の患者に応じた返血方法を含むものとされており、緊急避難時、当該患者に応じた返血方法を自動的に実行するよう構成してもよい。この場合、血液回路1からの離脱前に返血が必要な患者に対する処置を円滑に行わせることができる。なお、血液回路1からの離脱方法として、返血の要否の他、例えば静脈側血液回路1bのみ返血させる方法を予め記憶し、緊急避難時に自動的に実行させるようにしてもよい。
【0039】
さらに、本実施形態においては、緊急避難時、血液ポンプ3が停止してからの経過時間を報知手段にて報知(本実施形態においては、
図6、7に示すように、表示手段9の表示画面の経過時間表示部位9bにて表示)するよう構成されている。これにより、血液ポンプ3が停止して血液の体外循環が行われず血液回路1内で血液が凝固する可能性を医療従事者等に把握させることができる。このような報知に加え、緊急避難時、血液ポンプ3が停止してからの経過時間に応じて報知手段にて報知する離脱方法を適宜変更可能としてもよい。この場合、血液ポンプ3が停止してから所定時間経過した場合は離脱方法として返血を行わないこととすることができ、血液回路1内で血液が凝固した状態で返血が行われてしまうのを防止することができる。
【0040】
次に、本実施形態に係る血液回路1からの離脱方法及び介助の優先度を表示するための制御内容について、
図8のフローチャートに基づいて説明する。
各血液浄化装置(A〜U)のベッド(a〜u)にそれぞれ患者が横臥又は着座すると、患者が選択され(S1、S14)、その患者に紐づけして記憶手段7にて記憶された設定(血液回路1からの離脱方法及び介助の優先度等)が読み込まれる(S2、S15)。その後、血液浄化装置(A〜U)にて治療が開始(S3)されると、S4にて変更条件(
図4参照)が発生したか否かが判断され、変更条件が発生した場合、S5にて設定(血液回路1からの離脱方法及び介助の優先度等)が変更されるとともに、変更条件が発生しない場合、S6に進む。なお、S5で行われる設定の変更は、その日の患者の体調、透析治療中の患者の容態や愁訴等により手動で変更するもの、透析治療装置が監視している各種モニタ値(血圧や脈拍等)が所定値に達した(例えば、自力で立ち上がれない程度に血圧が低値になったとき)ことを条件として自動的に変更するもの等であってもよい。
【0041】
S6は、S16にて地震や火災等の警報が中央監視装置11又は外部から各血液浄化装置(A〜U)に発信されたことを条件として行われる工程である。S6にて警報を受信すると、その警報が緊急避難を必要とするか否かが判断され(S7)、緊急避難を必要とする場合は、S8に進み、警報が所定時間継続したか否かが判断される。そして、S8にて警報が所定時間継続したと判断されると、記憶手段7で記憶された情報であって、その患者に対応した血液回路1からの離脱方法及び介助の優先度が表示手段9にて表示される(S9)(
図6、7参照)。
【0042】
その後、S10にて、その患者について返血が必要か否か判断され、返血が必要な場合は、S12にて返血を行わせるとともに、返血が不要な場合は、S13にて治療を終了する。一方、S7にて緊急避難を必要としないと判断された場合、及びS8にて警報が所定時間継続しない場合は、S11に進み、治療が継続されることとなる。以上で一連の制御が終了することとなる。
【0043】
上記実施形態によれば、個々の患者に応じた緊急避難時の血液回路1からの離脱方法を予め記憶した記憶手段7と、緊急避難時、記憶手段7で記憶された患者の離脱方法を報知する報知手段(本実施形態においては表示手段9又は表示灯10)とを備えたので、緊急避難時の血液回路1からの離脱を個々の患者に応じて適切且つ円滑に行わせることができる。また、本実施形態に係る記憶手段7は、個々の患者に応じた緊急避難時の介助の優先度を離脱方法と併せて予め記憶するとともに、報知手段(表示手段9又は表示灯10)にて当該優先度を報知可能とされたので、緊急避難時の血液回路1からの離脱に加え、緊急避難時の介助も個々の患者に応じて適切且つ円滑に行わせることができる。
【0044】
さらに、本実施形態に係る報知手段は、表示手段9又は表示灯10から成り、介助の優先度に応じた色を当該表示手段9又は表示灯10にて表示させるので、緊急避難時、介助の優先度を視覚的に把握させることができ、より適切且つ円滑な介助を行わせることができる。なお、報知手段は、表示手段9や表示灯10に限定されず、例えばスピーカから出力される音声や効果音による報知を行うもの等としてもよい。
【0045】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば記憶手段7が中央監視装置11や他の別個装置に配設されたもの、介助の優先度を色によって表示しないもの、血液回路1からの離脱方法に返血の要否等が含まれないもの等としてもよい。また、本実施形態においては、記憶手段7による記憶及び報知手段による報知の対象として、個々の患者に応じた血液回路1からの離脱方法及び介助の優先度とされているが、個々の患者に応じた血液回路1からの離脱方法のみとしてもよい。なお、適用される血液浄化装置は、本実施形態の如き透析装置の他、患者の血液を体外循環させつつ浄化し得る他の血液浄化装置に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
個々の患者に応じた緊急避難時の前記血液回路からの離脱方法を予め記憶した記憶手段と、緊急避難時、記憶手段で記憶された患者の離脱方法を報知する報知手段とを備えた血液浄化装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 血液回路
2 ダイアライザ(血液浄化手段)
3 血液ポンプ
4a 動脈側エアトラップチャンバ
4b 静脈側エアトラップチャンバ
5 複式ポンプ
6 除水ポンプ
7 記憶手段
8 制御手段
9 表示手段(報知手段)
10 表示灯(報知手段)
11 中央監視装置
A〜U 血液浄化装置