(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
立姿勢で使用される管体と、この管体の下端面に設けられ前記管体と共に回転することで、地盤に杭孔を形成する先端掘削刃と、前記管体の下部の外周面から突出し前記管体と共に回転することで前記杭孔内に螺旋状溝を形成する螺旋状溝形成用刃体とを備え、前記管体の引き上げ時に前記管体の下端からコンクリート系材料を吐出可能であって、前記螺旋状溝形成用刃体は前記管体に対して着脱可能に取付けられ、
前記螺旋状溝形成用刃体が、前記管体の周壁に設けられた刃体挿入孔に挿入される柄部と、前記管体の外周面に突出する刃部とを有する
節付き現場打ちコンクリート系杭の杭築造用管。
請求項2に記載の節付き現場打ちコンクリート系杭の杭築造用管において、前記螺旋状溝形成用刃体の前記管体の外周面から突出量を可変とした節付き現場打ちコンクリート系杭の杭築造用管。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
節付きコンクリート系杭を築造するには、ケーシングと呼ばれる管体の側面に、節形成用の溝を地盤の杭孔に形成するための掘削刃である螺旋状溝形成用刃体を付ける必要がある。
現状の管体に溶接で固定した螺旋状溝形成用刃体では、硬い地盤に当たった場合に、掘削刃が摩耗する。摩耗した螺旋状溝形成用刃体はケーシングとなる管体毎取り替える必要があり、コストと手間がかかる。
【0006】
この発明の目的は、節付きコンクリート系杭の節を形成する溝を掘削するための螺旋状溝形成用刃体が摩耗しても、取り替える部分を少なくできて、刃体交換の手間を軽減でき、交換に必要なコストを低下させることができる節付き現場打ちコンクリート系杭の杭築造用管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の節付き現場打ちコンクリート系杭の杭築造用管は、立姿勢で使用される管体と、この管体の下端面に設けられ前記管体と共に回転することで、地盤に杭孔を形成する先端掘削刃と、前記管体の下部の外周面から突出し前記管体と共に回転することで前記杭孔内に螺旋状溝を形成する螺旋状溝形成用刃体とを備え、前記管体の引き上げ時に前記管体の下端からコンクリート系材料を吐出可能であって、前記螺旋状溝形成用刃体
が前記管体に対して着脱可能に取付け
られていることを基本構成とする。
【0008】
この構成の節付き現場打ちコンクリート系杭の杭築造用管を使用した現場打ちコンクリート系杭の築造は、以下のように行う。杭築造用管の管体を先端が下向きとなるように支持した状態で、所定の回転貫入方向に回転させつつ押し下げる。これにより、杭築造用管が地盤に貫入して杭孔を形成する。杭築造用管が地盤に貫入したら、杭築造用管の管体内にモルタル、生コンクリート、セメントミルク等のコンクリート系材料を充填する。そして、管体の下端面を開いた状態にして、杭築造用管を回転させながら地盤から引き抜くことによって、螺旋状溝形成用刃体により杭孔の周面に螺旋状溝が形成され、杭孔および螺旋状溝にコンクリート系材料を流し込む。コンクリート系材料が硬化することで、節付きコンクリート系杭となる。
【0009】
この杭築造用管を使用して節付き現場打ちコンクリート系杭を築造すると、節によって支持力を向上させ、杭径を小さくすることができる。杭径を小さくできれば、材料を少なくすることができるため、コストを下げることができ、環境にも優しい。
特に、螺旋状溝形成用刃体が、管体に対して着脱可能であるため、螺旋状溝形成用刃体が摩耗しても、管体全体を取り替える場合に比べて、取り替える部分を少なくでき、刃体交換の手間を軽減でき、交換に必要なコストを低下させることができる。なお、螺旋状溝形成用刃体は着脱可能に取付けるが、堅固に固定することで、硬い地盤の抵抗によっても破損しないようにできる。
【0010】
前記基本構成において、前記螺旋状溝形成用刃体が、前記管体の周壁に設けられた刃体挿入孔に挿入される柄部と、前記管体の外周面に突出する刃部とを有し
ていても良い。さらに、前記管体内の前記刃体挿入孔の周囲、および前記刃体挿入孔に対して前記管体の直径方向に対向する前記管体内の部分に、前記螺旋状溝形成用刃体の前記柄部が嵌合するガイド体を設けても良い。
刃体挿入孔の周囲とこれに対向する前記管体内の部分に螺旋状溝形成用刃体の柄部が嵌合するガイド体が設けられることで、螺旋状溝形成用刃体を管体に対して大きく離れた2箇所で支持できて、堅固に支持することができる。そのため、硬い地盤であってもその抵抗に耐えて螺旋状溝を形成することができる。また、螺旋状溝形成用刃体をその柄部の延びる方向に抜き差しすることで着脱でき、交換作業がより容易になる。
なお、前記両側のガイド体は、互いに一体化されていても良い。
【0011】
この発明において、前記螺旋状溝形成用刃体が、前記管体の周壁に設けられた刃体突出孔の周囲で前記管体の内面に沿って位置する座板部と、この座板部に接合されて前記刃体突出孔から前記管体の外方に突出する刃部とを有し、前記管体の内面における前記刃体突出孔を挟む周方向両側に、前記螺旋状溝形成用刃体の前記座板部の両側縁を前記管体の軸方向に挿脱可能に嵌合させるガイド溝形成体を設けても良い。
このようにガイド溝形成体を設け、螺旋状溝形成用刃体に設けられた座板部を挿脱可能に嵌合させる構成とした場合も、螺旋状溝形成用刃体を堅固に支持でき、かつ交換作業を容易に行うことができる。
【0012】
この発明において、前記螺旋状溝形成用刃体の前記管体の外周面から突出量を可変としても良い。この構成の場合、螺旋状溝形成用刃体が摩耗したときに、螺旋状溝形成用刃体の管体からの引出し量を大きくすることで、突出高さを回復でき、螺旋状溝形成用刃体を交換せずに使用できる期間を長く得ることができる。
【0013】
この発明において、前記管体の軸方向の一部が、他の部分である管体本体とは別体でかつ前記管体本体と同じ外径の刃固定金物で構成され、前記刃固定金物に前記螺旋状溝形成用刃体が設けられ、この螺旋状溝形成用刃体が、前記管体本体に対して前記刃固定金物と一緒に着脱可能とされていても良い。
この構成の場合、螺旋状溝形成用刃体を管体本体と同じ外径の刃固定金物に固定し、この刃固定金物と一緒に管体に対して着脱可能とするため、螺旋状溝形成用刃体をより一層堅固に管体に固定することができる。そのため、硬い地盤の抵抗によっても破損しないように螺旋状溝形成用刃体を固定できる。
【0014】
この発明において、前記刃固定金物が、前記管体本体の下面に取付けられる螺旋状溝用刃固定金物と、この螺旋状溝用刃固定金物の下面に取付けられる先端掘削刃用刃固定金物とからなり、前記螺旋状溝用刃固定金物に前記螺旋状溝形成用刃体が設けられ、前記先端掘削刃用刃固定金物に前記先端掘削刃が設けられていても良い。
この構成の場合も、管体本体と同じ外径の刃固定金物に螺旋状溝形成用刃体を設けるため、螺旋状溝形成用刃体の堅固な固定が可能であり、また螺旋状溝形成用刃体と先端掘削刃とは互いに別の金物に設けるため、螺旋状溝形成用刃体と先端掘削刃と摩耗状況等に応じた別個に交換することができる。
【0015】
参考提案例として示すと、前記基本構成において、前記刃固定金物の外周面に前記螺旋状溝形成用刃体が設けられ、前記刃固定金物の下端面に前記先端掘削刃が設けられていても良い。
この構成の場合、螺旋状溝形成用刃体の堅固な固定が可能であり、また螺旋状溝形成用刃体と先端掘削刃とを一緒に交換できて、交換作業の手間が軽減できる。
【0016】
この発明において、前記螺旋状溝形成用刃体に、この螺旋状溝形成用刃体の摩耗が一定以上進んだ場合に、この一定以上摩耗が進んだことが視覚的に識別可能となる摩耗識別手段が設けられていると良い。
従来、使用中の螺旋状溝形成用刃体の長さを実測して、予め定めた長さ以下になった場合に新しい螺旋状溝形成用刃体と交換していた。この従来の方法であると、定期的に螺旋状溝形成用刃体の長さを測定しなければならず、しかも測定に定規やゲージが必要である。この構成のように摩耗識別手段を設けることで、螺旋状溝形成用刃体が交換時期であるか否かが視覚的に簡単に分かる。このため、螺旋状溝形成用刃体の摩耗が一定以上進んだ時点で、遅れることなく螺旋状溝形成用刃体の交換を行える。
【0017】
前記摩耗識別手段は、次の何れであっても良い。
すなわち、前記摩耗識別手段が、前記螺旋状溝形成用刃体の内部に設けられこの螺旋状溝形成用刃体の先端面から根元側へ所定の距離を離間した位置から前記根元側に延びる空洞であっても良い。この場合、螺旋状溝形成用刃体の使用を始めた当初は空洞が外部から見えないが、摩耗が一定以上進むと摩耗した先端面に空洞が露出する。
前記摩耗識別手段が、前記螺旋状溝形成用刃体の先端面に設けられた所定の深さの凹みであっても良い。この場合、螺旋状溝形成用刃体の使用を始めた当初は凹みが見えているが、摩耗が一定以上進むと凹みが消滅する。
前記摩耗識別手段が、前記螺旋状溝形成用刃体の側面に設けられこの螺旋状溝形成用刃体の先端面から所定の距離を離間した位置から前記根元側に延びる切欠きであっても良い。この場合、螺旋状溝形成用刃体の使用を始めた当初は切欠きが先端面に現れていないが、螺旋状溝形成用刃体の摩耗が一定以上進むと摩耗した先端面に切欠きが現れる。
前記摩耗識別手段が、前記螺旋状溝形成用刃体の側面に設けられこの螺旋状溝形成用刃体の先端面から根元側へ延びる所定の長さの切欠きであっても良い。この場合、螺旋状溝形成用刃体の使用を始めた当初は切欠きが先端面に現れているが、螺旋状溝形成用刃体の摩耗が一定以上進むと摩耗した先端面から切欠きが消える。
【0018】
また、前記摩耗識別手段は、この螺旋状溝形成用刃体の摩耗が一定以上進んだ場合に露出し周囲と色が異なる色違い部であっても良い。
この場合、螺旋状溝形成用刃体が空洞や凹みや切欠きを有しない構成とすることができ、螺旋状溝形成用刃体の強度低下を避けることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明の節付き現場打ちコンクリート系杭の杭築造用管は、立姿勢で使用される管体と、この管体の下端面に設けられ前記管体と共に回転することで、地盤に杭孔を形成する先端掘削刃と、前記管体の下部の外周面から突出し前記管体と共に回転することで前記杭孔内に螺旋状溝を形成する螺旋状溝形成用刃体とを備え、前記管体の引き上げ時に前記管体の下端からコンクリート系材料を吐出可能であって、前記螺旋状溝形成用刃体は前記管体に対して着脱可能に取付けたため、節付きコンクリート系杭の節を形成する溝を掘削するための螺旋状溝形成用刃体が摩耗しても、取り替える部分を少なくできて、刃体交換の手間を軽減でき、交換に必要なコストを低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】(A)はこの発明の第1の実施形態にかかる節付き現場打ちコンクリート系杭の杭築造用管の正面図、(B)はその側面図である。
【
図2】(A)は管体の下部の螺旋状溝形成用刃体取付け前の状態を示す水平断面図、(B)は同管体の下部の螺旋状溝形成用刃体取付け後の状態を示す縦断面図である。
【
図3】
図2における螺旋状溝形成用刃体とこの刃体をガイドするガイド体の分解斜視図である。
【
図4】(A)は
図2における螺旋状溝形成用刃体とこの刃体をガイドするガイド体との他の構成例を示す縦断面図、(B)は同水平断面図である。
【
図5】
図2における螺旋状溝形成用刃体とこの刃体をガイドするガイド体とのさらに他の構成例を示す水平断面図である。
【
図6】(A)は先端掘削刃の平面図、(B)はその正面図、(C)はその底面図である。
【
図7】(A)は杭築造用管の管体と先端掘削刃の取付部の一状態を示す水平断面図、(B)は(A)のVII −VII 矢視断面図である。
【
図8】(A)は同杭築造用管の管体と先端掘削刃の取付部の異なる状態を示す水平断面図、(B)は(A)のVIII−VIII矢視断面図である。
【
図9】
図1ないし
図6に示す杭築造用管を用いて行う節付き現場打ちコンクリート系杭の築造方法の各過程の説明図である。
【
図10】(A)はこの発明の節付き現場打ちコンクリート系杭の杭築造用管の他の実施形態を示す縦断面図、(B)は同杭築造用管の分解水平断面図、(C)は同分解縦断面図、(D)は同側面図である。
【
図11】この発明の節付き現場打ちコンクリート系杭の杭築造用管のさらに他の実施形態を示す水平断面図である。
【
図12】
図11の実施形態の他の構成例を示す水平断面図である。
【
図13】
図11の実施形態のさらに他の構成例を示す部分縦断面図である。
【
図14】この発明の節付き現場打ちコンクリート系杭の杭築造用管のさらに他の実施形態を示す縦断面図である。
【
図15】この発明の節付き現場打ちコンクリート系杭の杭築造用管のさらに他の実施形態を示す分解正面図である。
【
図17】この発明の節付き現場打ちコンクリート系杭の杭築造用管のさらに他の実施形態を示す分解水平断面図である。
【
図18】
図14の節付き現場打ちコンクリート系杭の杭築造用管に摩耗識別手段付きの螺旋状溝形成用刃体を取り付けた形態を示す縦断面図である。
【
図19】(A)は同螺旋状溝形成用刃体の使用前の状態を示す正面図、(B)はその側面図、(C)はその平面図である。
【
図20】(A)は同螺旋状溝形成用刃体の摩耗後の状態を示す正面図、(B)はその側面図、(C)はその平面図である。
【
図21】(A)は異なる摩耗識別手段付きの螺旋状溝形成用刃体の使用前の状態を示す正面図、(B)はその側面図、(C)はその平面図である。
【
図22】(A)は同螺旋状溝形成用刃体の摩耗後の状態を示す正面図、(B)はその側面図、(C)はその平面図である。
【
図23】(A)はさらに異なる摩耗識別手段付きの螺旋状溝形成用刃体の使用前の状態を示す正面図、(B)はその側面図、(C)はその平面図である。
【
図24】(A)は同螺旋状溝形成用刃体の摩耗後の状態を示す正面図、(B)はその側面図、(C)はその平面図である。
【
図25】(A)はさらに異なる摩耗識別手段付きの螺旋状溝形成用刃体の使用前の状態を示す正面図、(B)はその側面図、(C)はその平面図である。
【
図26】(A)は同螺旋状溝形成用刃体の摩耗後の状態を示す正面図、(B)はその側面図、(C)はその平面図である。
【
図27】(A)はさらに異なる摩耗識別手段付きの螺旋状溝形成用刃体の使用前の状態を示す正面図、(B)はその側面図、(C)はその平面図である。
【
図28】(A)は同螺旋状溝形成用刃体の摩耗後の状態を示す正面図、(B)はその側面図、(C)はその平面図である。
【
図29】さらに異なる摩耗識別手段付きの螺旋状溝形成用刃体を分解して表した破断平面図である。
【
図30】さらに異なる摩耗識別手段付きの螺旋状溝形成用刃体を分解して表した破断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の第1の実施形態にかかる節付き現場打ちコンクリート系杭の杭築造用管について図面と共に説明する。
図1に示すように、この杭築造用管1は、立姿勢で使用される例えば鋼管からなる管体10と、この管体10の下端面に着脱可能に設けられた先端掘削刃20と、前記管体10の下部の外周面から突出した螺旋状溝形成用刃体11とでなる。先端掘削刃20は、管体10と共に回転することで地盤に杭孔を形成する掘削刃であり、螺旋状溝形成用刃体11は管体10と共に回転することで前記杭孔内に螺旋状溝を形成する掘削刃である。
【0022】
図2および
図3に示すように、前記螺旋状溝形成用刃体11は、前記管体10の周壁に設けられた刃体挿入孔10aに挿入される柄部11aと、管体10の外周面に突出する刃部11bとを有する。柄部11aは断面が矩形の棒状であり、刃部11bは柄部11aから次第に細くなる先細り形状とされている。管体10内の前記刃体挿入孔10aの周囲、および刃体挿入孔10aに対して管体10の直径方向に対向する管体10内の部分に、螺旋状溝形成用刃体11の柄部11aが嵌合する一対のぶれ止め用のガイド体12,12が設けられる。各ガイド体12,12は、片面が管体10の内面に沿う円弧状の断面形状とされ、管体10の内面に溶接等で固定される。各ガイド体12は、螺旋状溝形成用刃体11の柄部11aが嵌合する刃体嵌合孔12aをそれぞれ有する。刃体嵌合孔12aは、この例では矩形の断面形状とされている。
【0023】
ガイド体12,12をこのように構成することにより、螺旋状溝形成用刃体11を、前記管体10に対して着脱可能に取り付けることができる。また、管体10に対して安定良く固定できるため、硬い地盤の抵抗にも耐えることができる。
この例では、管体10の刃体挿入孔10aに対して管体10の直径方向に対向する部分に操作棒差し込み孔10bを設けている。これにより、螺旋状溝形成用刃体11の交換時には、前記操作棒差し込み孔10bより鋼材等からなる操作棒(図示せず)を差し込むことで、螺旋状溝形成用刃体11を管体10から容易に取り外すことができる。
【0024】
図4は、ガイド体の変形例を示す。
図2および
図3では、一対のガイド体12,12で螺旋状溝形成用刃体11の柄部11aを挿脱可能に支持する構成例を示したが、
図4のように前記管体10内の前記刃体挿入孔10aの周囲から、刃体挿入孔10aに対して管体10の直径方向に対向する管体10内の部分まで延びる一体のガイド体12Aを用いても良い。このガイド体12Aは、厚肉の筒状とされ、前記刃体挿入孔10aに対向して長手方向に延びるねじ孔12Aaを有する。また、螺旋状溝形成用刃体11の柄部11aは、前記ねじ孔12Aaに螺合する雄ねじ部とされ、管体10の刃体挿入孔10aに挿入した柄部11aをガイド体12Aのねじ孔12Aaに螺合させることにより、螺旋状溝形成用刃体11の刃部11bの管体10の外周面からの突出量を調整可能である。螺旋状溝形成用刃体11の断面の中心には、長手方法に貫通した断面非円形、例えば六角形、八角形、または四角形等の断面形状多角形の工具係合孔11fが設けられている。この工具係合孔
11fに六角レンチなどの工具(図示せず)を挿入して回転させることにより、螺旋状溝
形成用刃体11を回転させ、前記ねじ孔12Aaを利用した突出量の調整が行える。工具係合孔11fは螺旋状溝形成用刃体11の全長に渡って貫通しているため、螺旋状溝形成
用刃体11が摩耗しても前記工具の係合が可能である。
この場合、管体10内に配管するコンクリート系材料の注入用管14の下端を、前記ガイド体12Aの少し上側で開口させ、注入用管14から吐出されたセメントミルク等のコンクリート系材料が、管体10内のガイド体12Aの両側の隙間部分を流れるようにしている。
【0025】
また、
図5に示すように、前記ガイド体12Aの孔12Aa′における管体10の刃体挿入孔10aから離れた端部側に、突出量調整用のシム15等のスペーサを配置しても良い。孔12Aa′と、螺旋状溝形成用刃体11の柄部11aは、ねじを設ず、角形断面等とする。
このように構成した場合、螺旋状溝形成用刃体11の刃部11bが摩耗したとき、螺旋状溝形成用刃体11をガイド体12Aから一旦は引出し、前記シム15の枚数を増やした後に螺旋状溝形成用刃体11を再度挿入する。これにより、螺旋状溝形成用刃体11を摩耗分だけ管体10の外方に突出させることができる。また、シム15が介在することで、螺旋状溝の掘削時に螺旋状溝形成用刃体11の反力を管体10で受けることができる。
【0026】
図1において、先端掘削刃20は、この例では杭築造用管1を最も深く貫入させた後に引き抜くときに、地中に残すようにしてあり、引き抜き時に杭築造用管1の回転方向の逆転で管体10から外れるように、次のように工夫がされている。この先端掘削刃20の形状と地中に残すための構成部分について説明する。
【0027】
図6に示すように、先端掘削刃20は、全体が鋳造または鍛造による鋼製の一体成形品からなる。先端掘削刃20は、管体10の下端部に嵌まり込み可能な円筒状の芯出し部21aが形成された掘削刃本体21を有する。管体10の下端部に芯出し部21aが嵌まり込んだ状態では、管体10の下端面が掘削刃本体21の芯出し部21aに隣接する段面21b(
図6(B))に当接する。
【0028】
図6(B),(C)において、掘削刃本体21の先端面は円すい状面21cとされ、この円すい状面21cに2条の掘削用刃体22が設けられている。2条の掘削用刃体22は、それぞれ先端掘削刃20の軸心O2を通る直径線Lを挟む両側に隣接して同直径線Lと平行に設けられている。
【0029】
各掘削用刃体22の直径線方向外周側端は、先端側に突出した外刃部22aとされ、他端は外刃部22aよりも先端側に突出した内刃部22bとされている。各掘削用刃体22は、直径線Lと直交する方向に一定の幅を有し、直径線Lと直交する方向のどの箇所でも掘削刃本体21に対する高さは同じである。
【0030】
また、
図6(A),(B)に示すように、掘削刃本体21には、前記芯出し部21aよりも反先端側に突出した複数(例えば2つ)のフック状体23が設けられている。フック状体23は、掘削刃本体21の芯出し部21aよりも内周側の位置から芯出し部21aよりも反先端側へ延びる回転受け部23aと、この回転受け部23aの反先端側端から円周方向に屈曲した分離規制部23bとからなる。分離規制部23bの屈曲方向は、後で説明する管体10の掘削回転方向(A方向)の逆方向である。
【0031】
前記回転受け部23aの円周方向両側面F3,F4は、管体10に先端掘削刃20を取り付けた状態において、管体10の内面に設けられた突起13の円周方向両側面F1,F2にそれぞれ対向する面であって、先端掘削刃20の軸心O2と平行である。分離規制部23bの先端側の面は係止面F5であって、この係止面F5は、管体10に先端掘削刃20を取り付けた状態において管体20の前記突起13の反先端側の面に対向する。
【0032】
図7、
図8は、管体10と先端掘削刃20の取付部のそれぞれ異なる状態を示す断面図である。管体10への先端掘削刃20の取付けは、次のように行う。すなわち、管体10の先端側に先端掘削刃20を配置し、かつ管体10と先端掘削刃20の各軸心O1,O2を揃えた状態で、管体10内に先端掘削刃20のフック状体23を進入させることで行う。管体10と先端掘削刃20の円周方向位置を合わせる必要はない。このため、従来のように、ケーシングと先端ヘッドの軸心を揃え、かつ切欠部と凸部の円周方向位相を揃えた状態で、ケーシングに対して先端ヘッドを軸方向に相対移動させるのに比べて、取付けが容易である。なお、管体10内にフック状体23を進入させた後、位置固定状態の管体10に対して先端掘削刃20を軸心O2回りに回転させ、
図8(A)のように管体10の突起13に分離規制部23bを係止させておくと、後で杭築造用管1を先端掘削刃20が下側となる立姿勢に支持したときに、管体10から先端掘削刃20が自重で落下することを防げる。
【0033】
この構成の節付き現場打ちコンクリート系杭の杭築造用管1を使用したコンクリート系杭の築造方法を、
図9と共に説明する。
【0034】
まず、
図9(A)のように、自走可能な作業車両2等に搭載された回転機構付きの杭打ち装置3に、杭築造用管1を先端掘削刃20が下側となる立姿勢で支持させる。杭築造用管1の管体10は、上端を杭打ち装置3の昇降ヘッド4に固定して取り付けておいても良い。その場合、節付き現場打ちコンクリート系杭を築造するごとに、杭打ち装置3により吊り上げた状態の管体10の下端に、前記取付け作業により先端掘削刃20を取り付ける。
【0035】
次いで、
図9(B)のように、管体10を定められた掘削回転方向(A方向)に回転させつつ押し下げることによって、先端掘削刃20により下方に掘削しながら地盤30に貫入させて杭孔31を形成する。このとき、
図7のように、管体10の突起13の側面F1が先端掘削刃20の回転受け部23aの側面F3に当接することで、管体10の回転が先端掘削刃20に伝達される。突起13の側面F1および回転受け部23aの側面F3はそれぞれが管体10および先端掘削刃20の回転軸心O1,O2と平行であるため、管体10の回転が先端掘削刃20に円滑に伝達される。先端掘削刃20の分離規制部23bは管体10の突起13と係止していないが、先端掘削刃20は地盤30に押し付けられているため、管体10から先端掘削刃20が軸方向に分離することはない。また、先端掘削刃20に芯出し部21aが設けられているため、管体10に対して先端掘削刃20を芯出しすることができると共に、芯出し部21aが管体10の内周面に当接することで先端掘削刃20のガタツキを防止できる。芯出し部21aは円筒状であるため、管体10と先端掘削刃20との隙間が塞がれ、管体10内に土が入り込まない。
【0036】
次いで、
図9(C)のように、地盤30に貫入された杭築造用管1の管体10内に、セメントミルクSを充填する。セメントミルクSの代わりに、モルタルまたは生コンクリートを充填しても良い。
【0037】
セメントミルクSの充填が完了したら、貫入時と同じ掘削回転方向(A方向)に管体10を回転させつつ引き抜く。管体10の突起13に先端掘削刃20の分離規制部23bが係止していないため、先端掘削刃20は管体10から分離してそのまま杭孔31の底に残され、管体10だけが引き抜かれる。管体10の貫入から引き抜きに至るまで、一貫して突起13と分離規制部23bとが互いに係止しない状態に保たれているため、管体10から先端掘削刃20が確実に分離される。
【0038】
管体10のみを引き抜くときに、管体10の外周に設けられている螺旋状溝形成用刃体11により、杭孔31の外周に螺旋状の溝32が形成される。杭築造用管1を地盤30に貫入する際にも、螺旋状溝形成用刃体11により上記螺旋状の溝32とは逆向きの螺旋状の溝が形成されるが、この逆向きの螺旋状の溝は管体10を引き抜くときに壊され、代わりに前記螺旋状の溝32が形成される。杭築造用管1の貫入時に、杭築造用管1の体積分の土が周囲に押しやられて地盤30が締め固められているため、管体10の引き抜き時に螺旋状溝32を形成すると、形成された螺旋状溝32が崩れ難い。
【0039】
図9(D)のように、管体10のみを地盤30から引き抜くことによって、管体10内のセメントミルクSが、管体10の抜き跡である杭孔31および螺旋状の溝32に流れ込む。杭孔31内のセメントミルクSを、バイブレーター等を用いて締め固めても良い。管体10を完全に引き抜いたなら、センメントミルクSの杭頭部Saを平滑に均す。これにより施工が完了する。セメントミルクSが硬化することで、節付き現場打ちコンクリート系杭33となる。
【0040】
この節付き現場打ちコンクリート系杭33は、円柱状の杭本体の外周に螺旋状の節を有し、この螺旋状の節が地盤30に食い込んでいる。また、杭築造用管1の貫入時に地盤30が締め固められるため、杭周面のせん断抵抗が大きい。
節付き現場打ちコンクリート系杭33の杭周面抵抗力が大きいと、以下の利点がある。
・杭径を小さくすることが可能となり、材料費の削減を図ることができる。
・現場打ちコンクリート系杭33の材料が少なくて済み、環境負荷を低減することができる。
・杭先端をN値が比較的小さな地盤に支持させることができるため、杭長を短くすることができる。
【0041】
この杭築造用管1では、螺旋状溝形成用刃体11を管体10に対して着脱可能に取り付けたため、螺旋状溝形成用刃体11の刃部11bが摩耗した場合でも、杭築造用管1の全体を交換することなく、螺旋状溝形成用刃体11だけを取り替えるだけで対応でき、コストと手間を低減できる。これにより、節付き現場打ちコンクリート系杭33の外周に所定の節を形成することができ、節付き現場打ちコンクリート系杭33の支持力を確保することができる。また、所定の杭径を逸脱することなく、節付き現場打ちコンクリート系杭33を築造することができる。その結果、現場の土の状態に影響されることなく品質が安定しかつ大きい杭周面抵抗力の得られる地盤補強用の節付きコンクリート系杭を築造することができ、かつコストも低減できる。
【0042】
図10は、この発明の他の実施形態を示す。この実施形態では、杭築造用管1の管体10の軸方向の一部つまり下端部が、他の部分である管体本体10Aとは別体で、かつ管体本体10Aと同じ外径の管体である刃固定金物10Bで構成され、この刃固定金物10Bに螺旋状溝形成用刃体11が設けられている。管体本体10Aと刃固定金物10Bとは、
図10(A)のように、管体本体10Aの下端フランジ部10Aaと刃固定金物10Bの上端フランジ部10Baとをボルト16およびナット17で結合することにより一体に固定される。刃固定金物10Bは下端が開口しており、この下端開口部に先の実施形態における先端掘削刃20が着脱可能に取り付けられる。先端掘削刃20の構成は先の実施形態と同じであり、この先端掘削刃20のフック状体23が係脱する突起13が前記刃固定金物10Bの内面に設けられている。
【0043】
螺旋状溝形成用刃体11は、前記刃固定金物10Bの周壁に設けられたスリット状の刃体突出孔10Bbの周囲で刃固定金物10Bの内面に沿って位置する座板部11cと、この座板部11cに接合されて前記刃体突出孔10Bbから刃固定金物10Bの外方に突出する刃部11bとを有する。刃固定金物10Bの内面における前記刃体突出孔10Bbを挟む周方向両側には、螺旋状溝形成用刃体11の座板部11cの両側縁を刃固定金物10Bの軸方向に挿脱可能に嵌合させるガイド溝形成体18が設けられている。螺旋状溝形成用刃体11の座板部11cの下端は、刃固定金物10Bの内面に設けられたストッパ10Bcで支持され、前記座板部11cの上端は、管体本体10Aの下端フランジ部10Aaで押さえられる。これにより、螺旋状溝形成用刃体11が、その刃部11bを刃固定金物10Bの前記刃体突出孔10Bbから外方に突出させた状態で刃固定金物10Bに取り付けられる。
【0044】
この実施形態の場合、螺旋状溝形成用刃体11の交換時には、管体本体10Aから刃固定金物10Bを取り外し、ガイド溝形成体18から使用済みの螺旋状溝形成用刃体11を抜き出し、新たな螺旋状溝形成用刃体11を
図10(C)のようにガイド溝形成体18に差し込んだ後、刃固定金物10Bの上端を管体本体10Aの下端に結合させることで、螺旋状溝形成用刃体11の交換が可能となる。
【0045】
図11は、この発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態では、螺旋状溝形成用刃体11が、刃部11bとこの刃部11bの後端から後方に延びて設けられた雄ねじ部材11dとでなる。杭築造用杭1の管体10の周壁には、螺旋状溝形成用刃体11の前記雄ねじ部材11dを挿通させるねじ挿通孔10cが設けられ、管体10の内面には前記ねじ挿通孔10cと同心にナット19が溶接により固定されている。螺旋状溝形成用刃体11は、その雄ねじ部材11dを管体10のねじ挿通孔10cに挿通させ、さらに前記ナット19に螺合させることで管体10に着脱可能に取り付けられる。このように構成した場合、螺旋状溝形成用刃体11のみの交換を容易に行うことができる。
【0046】
図12は、この発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態では、螺旋状溝形成用刃体11が刃部11bのみからなり、この刃部11bの後端にはねじ孔11baが設けられている。この場合も、杭築造用杭1の管体10の周壁にはねじ挿通孔10cが設けられる。この場合、螺旋状溝形成用刃体11となる刃部11bのねじ孔11baに、管体10内からそのねじ挿通孔10cに挿通させたボルト25を螺合させることで、螺旋状溝形成用刃体11が管体10に着脱可能に取り付けられる。このように構成した場合も、螺旋状溝形成用刃体11のみの交換を容易に行うことができる。
【0047】
図13は、この発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態では、螺旋状溝形成用刃体11が刃部11bのみからなり、この刃部11bにはねじ挿通孔11bbが設けられ、ねじ挿通孔11bbは刃部先端側が、ボルト頭を収める座繰部11bcとされている。杭築造用杭1の管体10の周壁にはねじ挿通孔10cが設けられ、管体10の内面には前記ねじ挿通孔10cと同心にナット19が溶接により固定される。この場合、螺旋状溝形成用刃体11となる刃部11bの先端側から、そのねじ挿通孔11bbに挿通したボルト26を、さらに管体10のねじ挿通孔10cに挿通させ、管体10内のナット19に螺合させることで、螺旋状溝形成用刃体11が管体10に着脱可能に取り付けられる。ボルト26の頭部26aは、刃部11bのねじ挿通孔11bbの大径部11bc内に収まることで、刃部11bの先端面から突出しない。このように構成した場合も、螺旋状溝形成用刃体11のみの交換を容易に行うことができる。
【0048】
図14は、この発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態では、
図10の実施形態の場合と同様に、杭築造用杭1の管体10の軸方向の下端部が、他の部分である管体本体10Aとは別体で、かつ管体本体10Aと同じ外径の管体である刃固定金物10Bで構成され、この刃固定金物10Bの外周面に螺旋状溝形成用刃体11が固定されている。管体本体10Aと刃固定金物10Bとは、管体本体10Aの下端フランジ部10Aaと刃固定金物10Bの上端フランジ部10Baとをボルト16およびナット17で結合することにより一体に固定される。刃固定金物10Bは下端が開口しており、この下端開口部に
図1〜
図9に示した実施形態における先端掘削刃20が着脱可能に取り付けられる。先端掘削刃20の構成は先の実施形態と同じであり、この先端掘削刃20のフック状体23が係脱する突起13は前記刃固定金物10Bの内面に設けられている。
【0049】
この実施形態の場合、螺旋状溝形成用刃体11の交換時には、管体本体10Aから刃固定金物10Bを取り外すことで、管体本体10Aに対して刃固定金物10Bと一緒に螺旋状溝形成用刃体11を取り外し、新たな螺旋状溝形成用刃体11を固定した刃固定金物10Bをボルト16およびナット17で管体本体10Aに結合させることで、螺旋状溝形成用刃体11の交換が可能となる。
【0050】
図15および
図16は、この発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態では、
図14の実施形態において、前記刃固定金物10Bが、管体本体10Aの下面に取り付けられる螺旋状溝用刃固定金物10BAと、この螺旋状溝用刃固定金物10BAの下面に取り付けられる先端掘削刃用刃固定金物10BBとに分離されている。螺旋状溝用刃固定金物10BAには螺旋状形成用刃体11が設けられ、先端掘削刃用刃固定金物10BBには先端掘削刃20(
図15,
図16には図示せず)が設けられる。管体本体10Aの下端部の構造は、
図14の実施形態における管体本体10Aの場合と同様である。先端掘削刃用刃固定金物10BBの構造は、
図14の実施形態の場合の刃固定金物10Bにおいて、螺旋状溝形成用刃体11が固定されないことを除いて同じである。
【0051】
螺旋状溝形成用刃体11は、柄部11aと管体10の外周面側に突出する刃部11bとでなる。前記螺旋状溝用刃固定金物10BAは、
図16に平面図で示すように、管体本体10Aとほぼ同径の円板状で、その周縁の一部に螺旋状溝形成用刃体11の柄部11aが着脱可能に嵌合する嵌合凹部27が設けられ、中央部にはセンメトミルクを通すための通口28が設けられ、その周囲には複数のボルト挿通孔29が設けられる。
【0052】
螺旋状溝用刃固定金物10BAと、この螺旋状溝用刃固定金物10BAの下面に取り付けられる先端掘削刃用刃固定金物10BBとは、
図15のように、先端掘削刃用刃固定金物10BB側から挿入したボルト16を螺旋状溝用刃固定金物10BAのボルト挿通孔29に挿通させ、さらに管体本体10Aの下面のナット17に螺合させることで、管体本体10Aの下面側に一体に取り付けることができる。
【0053】
螺旋状溝形成用刃体11の交換時には、前記ボルト16による管体本体10Aの下面への螺旋状溝用刃固定金物10BAおよび先端掘削刃用刃固定金物10BBの結合を解くことにより、螺旋状溝用刃固定金物10BAから螺旋状溝形成用刃体11を取り外すことができる。そして、新たな螺旋状溝形成用刃体11を螺旋状溝用刃固定金物10BAの嵌合凹部27に嵌合させ、先端掘削刃用刃固定金物10BBと共に、螺旋状溝用刃固定金物10BAをボルト16で管体本体10Aの下面に結合させることで、螺旋状溝形成用刃体11の交換を行うことができる。螺旋状溝用刃固定金物10BAでは、
図16のように、螺旋状溝形成用刃体11が嵌合する嵌合凹部27がセンメトミルクの通口28と繋がっていないので、嵌合凹部27に土が混入することはない。
【0054】
図17は、この発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態は、
図2に示した実施形態において、螺旋状溝形成用刃体11が、管体10の外周面に突出する刃部11bと、この刃部11bよりも小さい断面の軸部11eとでなる。管体10の周壁に前記軸部11eが挿通される刃体挿入孔10aが設けられること、管体10内の前記刃体挿入孔10aの周囲、および刃体挿入孔10aに対して管体10の直径方向に対向する管体10内の部分に、螺旋状溝形成用刃体11の軸部11dが嵌合する一対のぶれ止め用のガイド体12,12が設けられることは、
図2の実施形態の場合と略同様である。また、各ガイド体12に、螺旋状溝形成用刃体11の軸部11eが嵌合する刃体嵌合孔12aがそれぞれ設けられていること、および管体10の刃体挿入孔10aに対して管体10の直径方向に対向する部分に操作棒差し込み孔10bが設けられていることも、
図2の実施形態の場合と略同様である。
【0055】
この実施形態の場合も、
図2の実施形態の場合と同様に、螺旋状溝形成用刃体11を、管体10に対して着脱可能に取り付けることができる。また、管体10に対して安定良く固定できるため、硬い地盤の抵抗にも耐えることができる。なお、この場合、螺旋状溝形成用刃体11の軸部11eを、先端掘削刃20の回り止め用である突起13の代わりに使用して、突起13を省略することも可能である。
【0056】
以下、螺旋状溝形成用刃体の摩耗が一定以上進んだ場合にそのことが視覚的に識別可能となる摩耗識別手段を設けた螺旋状溝形成用刃体について説明する。
従来、使用中の螺旋状溝形成用刃体の長さを実測して、予め定めた長さ以下になった場合に新しい螺旋状溝形成用刃体と交換していた。この従来の方法であると、定期的に螺旋状溝形成用刃体の長さを測定しなければならず、しかも測定に定規やゲージが必要である。以下に説明する摩耗識別手段付きの螺旋状溝形成用刃体は、上記従来の課題を解決することを目的として案出されたものである。
【0057】
図18は、
図14の節付き現場打ちコンクリート系杭の杭築造用管に摩耗識別手段付きの螺旋状溝形成用刃体を取り付けた形態を示す縦断面図である。摩耗識別手段付きの螺旋状溝形成用刃体11Aは、刃固定金物10Bの外周面に溶接で固定されている。螺旋状溝形成用刃体11A以外は、
図14の節付き現場打ちコンクリート系杭の杭築造用管と同じ構成である。
【0058】
図19に示すように、螺旋状溝形成用刃体11Aは、
図14の螺旋状溝形成用刃体11と同様に円錐台状であり、内部に摩耗識別手段として空洞40が設けられている。この例では、空洞40は、中心軸Cに沿う細長い円形孔である。この円形孔からなる空洞40は、円錐台の底面側から開けられて、先端面11gから所定の距離hの位置まで延びている。距離hは、螺旋状溝形成用刃体11Aの摩耗許容長さを示し、初期高さH1から許容高さH2を引いた値である。螺旋状溝形成用刃体11Aの使用を始めた当初は、空洞40が外部から見えていない。なお、螺旋状溝形成用刃体11Aは、円錐台状に限らず、角錐台状やその他、任意の形状であっても良い。
【0059】
使用により、螺旋状溝形成用刃体11Aが摩耗する。一般的に、下面側の摩耗が早く進む。そして、摩耗が一定以上進むと、
図20のように、摩耗した先端面11g´に空洞40が露出する。空洞40が露出したら、螺旋状溝形成用刃体11Aを交換する。この摩耗識別手段による交換時期の判断方法は、定規やゲージを用いて螺旋状溝形成用刃体の長さを実測して交換時期を判断する従来の方法と比べて、交換時期であるか否かが視覚的に簡単に分かる。このため、螺旋状溝形成用刃体の摩耗が一定以上進んだ時点で、遅れずに螺旋状溝形成用刃体11Aの交換を行える。
図の螺旋状溝形成用刃体11Aは円錐台状であるため、中心軸C回りに任意の位相で刃固定金物10Bに取り付け可能であるが、摩耗識別手段である空洞40が中心軸C上に位置しているため、刃固定金物10Bへの螺旋状溝形成用刃体11Aの取付時に螺旋状溝形成用刃体11Aの位相を揃える必要がない。
【0060】
図21は、摩耗識別手段付きの螺旋状溝形成用刃体の異なる実施形態を示す。この螺旋状溝形成用刃体11Bは、摩耗識別手段として先端面11gに所定の深さの凹み41が設けられている。この例では、凹み41は、円形の凹みであり、中心軸C上に位置する。この螺旋状溝形成用刃体11Bの場合、使用を始めた当初は凹み41が見えているが、
図22のように摩耗が一定以上進むと、凹み41が消滅するため、摩耗した先端面11g´に凹み41が見えなくなる。凹み41が見えなくなったら、螺旋状溝形成用刃体11Bを交換する。
【0061】
図23は、摩耗識別手段付きの螺旋状溝形成用刃体のさらに異なる実施形態を示す。この螺旋状溝形成用刃体11Cは、摩耗識別手段として側面11hに切欠き42が設けられている。この例では、切欠き42は側面11hの上端部に設けられた溝状である。溝状の切欠き42は、螺旋状溝形成用刃体11Cの根元から、先端面11gから所定の距離の位置まで延びている。この螺旋状溝形成用刃体11Cの場合、使用を始めた当初は切欠き42が先端面11gに現れていないが、
図24のように摩耗が一定以上進むと、摩耗した先端面11g´に切欠き42が現れる。切欠き42が現れたら、螺旋状溝形成用刃体11Cを交換する。この実施形態の場合、切欠き42が側面11hの上端部に来るように、刃固定金物10Bへの螺旋状溝形成用刃体11Cの取付時に螺旋状溝形成用刃体11Cの位相を揃える必要がある。
【0062】
図25は、摩耗識別手段付きの螺旋状溝形成用刃体のさらに異なる実施形態を示す。この螺旋状溝形成用刃体11Dも、摩耗識別手段として側面11hに切欠き43が設けられている。図の例では、切欠き43は側面11hの上端部に設けられ、先端面11gから根元側へ所定の長さ延びた溝状である。この螺旋状溝形成用刃体11Dの場合、使用を始めた当初は切欠き43が先端面11gに現れているが、
図26のように摩耗が一定以上進むと、摩耗した先端面11g´から切欠き43が消える。切欠き43が消えたら、螺旋状溝形成用刃体11Dを交換する。この実施形態も、切欠き43が側面11hの上端部にくるように、刃固定金物10Bへの螺旋状溝形成用刃体11Dの取付時に螺旋状溝形成用刃体11Dの位相を揃える必要がある。
【0063】
図27は、摩耗識別手段付きの螺旋状溝形成用刃体の異なる実施形態を示す。この螺旋状溝形成用刃体11Eは、摩耗識別手段として、他の部分と色彩が異なる色違い部44が設けられている。この例では、
図19の螺旋状溝形成用刃体11Aにおける空洞40に相当する部分が色違い部44となっている。なお、
図19と
図27とを比較して、空洞40の内径よりも色違い部44の直径の方が少し大きい。色違い部44は、螺旋状溝形成用刃体11Eの他の部分と同じ材料から成っていても良く、異なる材料から成っていても良い。この螺旋状溝形成用刃体11Eの場合、使用を始めた当初は色違い部44が見えていないが、
図28のように摩耗が一定以上進むと、摩耗した先端面11g´に色違い部44が露出する。色違い部44が露出したら、螺旋状溝形成用刃体11Eを交換する。この螺旋状溝形成用刃体11Eは、空洞40(
図19)を有しない構成となり、強度低下を避けることができる。
【0064】
図27の例では、
図19の螺旋状溝形成用刃体11Aにおける空洞40に相当する部分を色違い部44としているが、
図21の螺旋状溝形成用刃体11Bにおける凹み41に相当する部分を色違い部44としても良く(図示せず)、
図23の螺旋状溝形成用刃体11Cにおける切欠き42に相当する部分を色違い部44としても良く(図示せず)、
図25の螺旋状溝形成用刃体11Dにおける切欠き43に相当する部分を色違い部44としても良い(図示せず)。いずれの螺旋状溝形成用刃体も、凹み41(
図21)や切欠き42,43(
図23、
図25)を有しない構成とすることができ、強度低下を避けることができる。
【0065】
図29、
図30は、杭築造用杭1の管体10に直接取り付けられる摩耗識別手段付きの螺旋状溝形成用刃体を示す。
図29の摩耗識別手段付きの螺旋状溝形成用刃体11Fは、
図11の実施形態と同様に、刃部11bとこの刃部11bの後端から後方に延びて設けられた雄ねじ部材11dとでなり、雄ねじ部材11dを管体10のねじ挿通孔10cに挿通させ、さらに管体10の内面に固定されたナット19に螺合させることで、管体10に着脱可能に取り付けられる。この構成の場合、例えば、
図21の摩耗識別手段付きの螺旋状溝形成用刃体11Bのように、摩耗識別手段を刃部11bの先端面11gに設けられた凹み41とすると良い。
【0066】
図30の摩耗識別手段付きの螺旋状溝形成用刃体11Gは、
図12の実施形態と同様に、後端にねじ孔11baが設けられた刃部11bのみからなり、管体10内からねじ挿通孔10cに挿通させたボルト25を刃部11bのねじ孔11baに螺合させることで、管体10に着脱可能に取り付けられる。この構成の場合、例えば、
図19の摩耗識別手段付きの螺旋状溝形成用刃体11Aのように、摩耗識別手段を刃部11bの内部に設けられた空洞40とすると良い。空洞40は、ねじ孔11baの底面から先端側へ延びている。
【0067】
なお、上記した各実施形態では、杭築造用管1を地盤から引き抜くときに杭孔の外周に螺旋状の溝を形成する場合の構成例について説明したが、これに限らず、地盤に貫入するときに杭孔を形成すると同時に、杭孔の外周に螺旋状の溝も形成する方式の杭築造用管にこの発明を適用すれば、同様の効果を上げることができる。