特許 6517085 副トンネル坑の構築方法及びその構築方法で用いる分岐シールド

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】6517085

(24)【登録日】2019年4月26日

(45)【発行日】2019年5月22日

(54)【発明の名称】副トンネル坑の構築方法及びその構築方法で用いる分岐シールド

(51)【国際特許分類】

   E21D 9/06 20060101AFI20190513BHJP

   E21D 3/00 20060101ALI20190513BHJP

【ＦＩ】

   E21D9/06 301E

   E21D3/00 A

   E21D9/06 301D

【請求項の数】7

【全頁数】12

(21)【出願番号】特願2015-114112(P2015-114112)

(22)【出願日】2015年6月4日

(65)【公開番号】特開2017-2473(P2017-2473A)

(43)【公開日】2017年1月5日

【審査請求日】2018年2月15日

(73)【特許権者】

【識別番号】516308364

【氏名又は名称】ＪＩＭテクノロジー株式会社

(73)【特許権者】

【識別番号】000206211

【氏名又は名称】大成建設株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100068021

【弁理士】

【氏名又は名称】絹谷 信雄

(72)【発明者】

【氏名】中島 芳人

(72)【発明者】

【氏名】大久保 俊明

(72)【発明者】

【氏名】坂本 英俊

(72)【発明者】

【氏名】島田 哲治

(72)【発明者】

【氏名】川口 雄大

【審査官】 荒井 良子

(56)【参考文献】

【文献】 特開２００６−２４９７４９（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００４−０７６５８１（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００３−１０６０８６（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００２−１２９８７５（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００７−００９６９１（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１４−１２５７７０（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００４−０１１１９０（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開平０９−１４４４７９（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００８−２４８５１５（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１２−２２５１２７（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００３−２４７３９１（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ｅ２１Ｄ １／００−９／１４

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

主トンネル坑内より分岐シールドを発進させて主トンネル坑よりつながった副トンネル坑を構築した後、前記分岐シールドを再使用すべく回収するための副トンネル坑の構築方法において、
前記分岐シールドを、カッタ及びその駆動部を一体に設けた内殻と、その内殻を収容すると共に周方向に分割可能に形成された外殻とを備えて構成し、
前記主トンネル坑内より前記分岐シールドを上向きに発進させて既設地下構造物まで立坑となる前記副トンネル坑を構築し、しかる後、前記内殻を前記地下構造物内でクレーンで吊り上げて支持すると共に前記外殻から取り外し、前記内殻をクレーンを使用して前記外殻及び前記立坑を通して降下させて前記主トンネル坑内に回収し、
前記内殻を前記主トンネル坑内に回収する際に、前記副トンネル坑直下の前記主トンネル坑内に別途外殻を配置しておき、回収する内殻を前記副トンネル坑内を通して前記主トンネル坑内に回収するときに、前記内殻を主トンネル坑内に配置した前記外殻内に挿入して分岐シールドを構成し、その後、前記地下構造物内で前記外殻を周方向に分割すると共にクレーンを用いて分割した前記外殻を前記立坑を通して前記主トンネル坑内に回収することを特徴とする副トンネル坑の構築方法。

【請求項2】

前記カッタは、外径が前記内殻の外径と同じかそれ以下に形成されたカッタ中央部と、前記カッタ中央部に脱着可能に設けられ外径が前記外殻の外径と同じかそれ以上に形成されたカッタ外延部とを備え、前記分岐シールドで掘進するときは前記カッタ中央部と前記カッタ外延部とで地山を掘削し、前記副トンネル坑を構築後は、前記カッタ中央部から前記カッタ外延部を取り外し、そのカッタ外延部と前記内殻とを、前記外殻及び構築した副トンネル坑を通して主トンネル坑内に回収する請求項１に記載の副トンネル坑の構築方法。

【請求項3】

前記外殻の下端には、テールフレームが取り外し可能に設けられ、前記外殻には、分岐シールドを推進させるシールドジャッキが前記テールフレーム内に延出して設けられた請求項１又は２に記載の副トンネル坑の構築方法。

【請求項4】

回収する内殻が挿入される外殻は、前記主トンネル坑内を走行する台車上に載せておき、その外殻に回収した内殻を挿入して分岐シールドを構成したのち、その分岐シールドを、次の立坑構築位置まで台車と共に移動させる請求項１から３のいずれか一項に記載の副トンネル坑の構築方法。

【請求項5】

前記外殻には、前記シールドジャッキが取り外し可能に設けられると共に取り外した前記シールドジャッキを径方向内方にガイドするガイド装置が設けられ、前記内殻には、前記ガイド装置にガイドされて径方向内方に移動された前記シールドジャッキを受けて保持するジャッキホルダが設けられた請求項３に記載の副トンネル坑の構築方法。

【請求項6】

前記外殻と前記内殻には、これら外殻及び内殻を結合するためのピンが脱着可能に設けられ、前記外殻から前記内殻を取り外すとき、前記外殻及び前記内殻から前記ピンを抜いて前記外殻と前記内殻との結合を解除する請求項１から５のいずれかに記載の副トンネル坑の構築方法。

【請求項7】

前記外殻と前記内殻との間には、止水用のシールが設けられる請求項１から６のいずれかに記載の副トンネル坑の構築方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、主トンネル坑内より分岐シールドを発進させて主トンネル坑よりつながった副トンネル坑を構築する副トンネル坑の構築方法及びその構築方法で用いる分岐シールドに関するものである。

【背景技術】

【0002】

主トンネル坑内から分岐シールドを発進させて副トンネル坑を構築する方法としては、上向きシールド工法がある。

【0003】

本工法は、主トンネル坑内から上向きに発進する分岐シールドにて掘削・覆工を行い、副トンネル（立坑）を構築する。

【0004】

この工法で複数の立坑を構築する場合、分岐シールドを地上に向けて掘進させて立坑を構築した後、地上に到達した分岐シールドをクレーン等の重機により回収し、再度主トンネル坑内へ搬入し、次の立坑構築に用いる。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0005】

【特許文献1】特許第５０１５８４４号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0006】

ところで、分岐シールドの到達位置が、例えば十分な回収スペースが確保できない道路下であるときや、分岐シールドの前方に回収作業の邪魔となる既設構造物があるとき、分岐シールドが回収不能になるという課題があった。

【0007】

そこで、本発明の目的は、到達位置に十分な回収スペースが確保できないときや分岐シールドの前方に回収作業の邪魔となる既設構造物があるときであっても分岐シールドを回収できる副トンネル坑の構築方法及びその構築方法で用いる分岐シールドを提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0008】

上述の目的を達成するため、本発明は、主トンネル坑内より分岐シールドを発進させて主トンネル坑よりつながった副トンネル坑を構築した後、前記分岐シールドを再使用すべく回収するための副トンネル坑の構築方法において、前記分岐シールドを、カッタ及びその駆動部を一体に設けた内殻と、その内殻を収容すると共に周方向に分割可能に形成された外殻とを備えて構成し、分岐シールドが目的の到達部へ到達した後、内殻を外殻から取り外すと共に外殻及び構築した副トンネル坑を通して主トンネル坑内に回収し、しかるのち、外殻を周方向に分割すると共に分割した外殻を構築した副トンネル坑を通して主トンネル坑に回収するものである。

【発明の効果】

【0009】

本発明によれば、到達位置に十分な回収スペースが確保できないときや回収位置の上方に回収作業の邪魔となる既設構造物があるときであっても分岐シールドを回収できる。

【図面の簡単な説明】

【0010】

【図1】（ａ）は本発明の一実施の形態に係る分岐シールドの側断面図であり、（ｂ）は（ａ）のＡ−Ａ線矢視図であり、（ｃ）は（ａ）のＢ−Ｂ線矢視断面図である。

【図2】（ａ）は分岐シールドを内殻、外殻、テールフレームに分割した状態の側断面図であり、（ｂ）は（ａ）のＣ−Ｃ線矢視図であり、（ｃ）は（ａ）のＤ−Ｄ線矢視図である。

【図3】分岐シールドの要部側断面図である。

【図4】（ａ）は図３のＥ線矢視断面図であり、（ｂ）は図３のＦ−Ｆ線矢視断面図である。

【図5】主トンネル坑内から発進する分岐シールドの側面説明図である。

【図6】地下構造物に到達した分岐シールドの側面説明図である。

【図7】外殻から内殻を取り外す準備作業の側面説明図である。

【図8】内殻を外殻内を通して降下させる作業の側面説明図である。

【図9】（ａ）は主トンネル坑内に内殻を回収する作業の側面説明図であり、（ｂ）は主トンネル坑内に別途外殻を配置しておく状態の側面説明図である。

【図10】主トンネル坑内で分岐シールドを構成する作業の側面説明図である。

【図11】地下構造物から外殻を回収する作業の側面説明図である。

【図12】主トンネル坑内に外殻を回収する作業の側面説明図である。

【発明を実施するための形態】

【0011】

以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。

【0012】

まず、本発明に係る副トンネル坑の構築方法で用いる分岐シールドについて説明する。

【0013】

図１（ａ）、図５及び図６に示すように、分岐シールド１は、主トンネル坑２内より上向きに発進されて地下構造物３まで立坑４となる副トンネル坑を構築する上向きシールドからなる。分岐シールド１は、上端に位置され地山を掘削するためのカッタ５と、カッタ５を駆動する駆動部６と、カッタ５及び駆動部６を一体に設けた内殻７と、内殻７を収容すると共に周方向に分割可能（例えば、２つ割りに分割可能）に形成された外殻８とを備える。

【0014】

図１（ａ）及び図１（ｂ）に示すように、カッタ５は、後述する内殻７前方の地山を掘削すべく外径が内殻７の外径と同じに形成されたカッタ中央部９と、カッタ中央部９に脱着可能に設けられ後述する外殻８前方の地山を掘削すべく外径が外殻８の外径と同じに形成されたカッタ外延部１０とを備える。カッタ中央部９は、回転軸となるセンターシャフト１１と、センターシャフト１１に径方向外方に延びて設けられた複数のカッタスポーク１２とを備える。カッタスポーク１２は、径方向の長さが後述する内殻７を超えないように形成されている。センターシャフト１１及びカッタスポーク１２にはそれぞれ地山を掘削するためのカッタビット１３が複数設けられている。また、カッタスポーク１２の先端には、凹部１４が形成されており、後述するカッタ外延部１０と嵌合するようになっている。カッタ外延部１０は、カッタスポーク１２の先端にカッタスポーク１２を径方向外方に延長するように取り付けられる。具体的には、カッタ外延部１０には、カッタスポーク１２の凹部１４と嵌合する凸部１５が形成されている。また、カッタスポーク１２の先端部とカッタ外延部１０の凸部１５とには、ピン孔１６が形成されており、これらピン孔１６にピン１７が挿入されることでカッタスポーク１２とカッタ外延部１０とが一体に結合されるようになっている。なお、カッタ中央部９は、外径が内殻７の外径以下に形成されていてもよく、カッタ外延部１０は、外径が外殻８の外径以上に形成されていてもよい。

【0015】

図１（ａ）及び図１（ｃ）に示すように、駆動部６は、センターシャフト１１に同軸に設けられたギア１８と、ギア１８を回転駆動する複数台（具体的には５台）の油圧モータ１９とを備える。油圧モータ１９は、駆動部６の重心がセンターシャフト１１近傍になるように周方向に分散して配置されている。また、センターシャフト１１には、ロータリジョイント２０が設けられており、ロータリジョイント２０を介して加泥材や油圧等が供給されるようになっている。

【0016】

図１（ａ）及び図２（ａ）に示すように、内殻７は、バルクヘッド７ａを有する筒体状に形成されると共に、分岐シールド１で構築する立坑４より小径に形成されている。内殻７のバルクヘッド７ａは、カッタ５後方に形成されるカッタ室２１とシールド機内１ａとを隔てる隔壁の一部として機能し、内殻７の上端を水密に塞ぐ。内殻７のバルクヘッド７ａには、カッタ５のセンターシャフト１１が回転自在に設けられると共に、駆動部６が支持フレーム６ａを介して設けられる。また、内殻７のバルクヘッド７ａには、排土装置２２の排土管２３がカッタ室２１側に開口して設けられる。排土管２３は、複数の短管２３ａを取り外し可能に継ぎ足して形成されている。また、排土管２３には、ピンチバルブ２４が設けられると共に、一対の排土ゲート２５がピンチバルブ２４の入口と出口とに位置して設けられている。またさらに、内殻７には、作業用吊りフレーム２６と作業用足場２７とが設けられる。作業用吊りフレーム２６は、内殻７から下方に延びて形成されており、下端には、ホイストクレーン２８を走行可能に支持するレール２９が環状に設けられている。レール２９に支持されたホイストクレーン２８は主トンネル坑２からセグメント３０等の覆工材料を吊り上げるとき使用される。作業用足場２７は、内殻７から下方に延びる複数の柱部３１と、柱部３１に設けられた複数段（具体的には２段）のデッキ部３２とを備える。デッキ部３２には、ホイストクレーン２８で吊り上げるセグメント３０等を通過させるべく開閉する開閉扉３３が設けられている。上段のデッキ部３２は、セグメント３０を組み立てるときに用いられ、下段のデッキ部３２は、組み立てたセグメント３０と地山との間に裏込め材（図示せず）を注入するときに用いられる。また、柱部３１は、主トンネル坑２の内径より短い長さで分割可能に形成されており、主トンネル坑２内に回収されるとき、長手方向に分割されながら回収されるようになっている。

【0017】

図１（ａ）及び図２（ａ）、（ｂ）に示すように、外殻８は、筒状に形成され内殻７の外周を覆う内壁部３４と、内壁部３４より外周側に配置され立坑４のサイズに応じた径の筒状に形成された外壁部３５と、内壁部３４及び外壁部３５の上端間を塞ぐ環状バルクヘッド部３６とを備える。内壁部３４は、内殻７と同じ長さに形成されている。外壁部３５は、内壁部３４より長く形成されている。内壁部３４より下方に延びる外壁部３５には、分岐シールド１を推進させるシールドジャッキ３７が取り外し可能に、かつ、外壁部３５の周方向に沿って複数設けられ、外壁部３５の下端には、セグメント３０の組み立て空間を形成するテールフレーム３８が取り外し可能に設けられている。シールドジャッキ３７は、シリンダロッド３７ａが下側、シリンダ部３７ｂが上側となる姿勢で外殻８に取り付けられている。シールドジャッキ３７は下部がテールフレーム３８内に延出されており、テールフレーム３８内で組み立てられたセグメント３０から反力を取ることで推進力を得るようになっている。

【0018】

また、図３及び図４（ａ）、（ｂ）に示すように、外殻８には、取り外したシールドジャッキ３７を径方向内方にガイドするガイド装置３９が設けられており、内殻７に設けられたジャッキホルダ４０にシールドジャッキ３７を容易に移動できるようになっている。ガイド装置３９は、シールドジャッキ３７の上部をガイドする上部ガイド４１と、シールドジャッキ３７の下部をガイドする下部ガイド４２とを備える。下部ガイド４２は、シールドジャッキ３７を支持すべく内殻７から径方向内方に延びて形成されシールドジャッキ３７を径方向内方にガイドするガイド溝４３を有する支持ブラケット４４と、シールドジャッキ３７のシリンダ３４ｂ下部に設けられ支持ブラケット４４上に載置されると共に支持ブラケット４４にボルト・ナットで着脱可能に締結される締結プレート４５とを備える。上部ガイド４１は、外殻８から径方向内方に平行に延びる一対のガイド板４１ａからなり、ガイド板４１ａ間にシールドジャッキ３７の上部を位置させることでシールドジャッキ３７の上部を外殻８の径方向内方にガイドするようになっている。

【0019】

図１（ａ）及び図２（ａ）、（ｃ）に示すように、テールフレーム３８は、外殻８の外壁部３５と同径の筒状に形成されている。テールフレーム３８の上端には、径方向内方に延びると共にシールドジャッキ３７との干渉を回避するための回避溝４６が形成されたテール側取付フランジ４７が設けられている。テール側取付フランジ４７は、外殻８に径方向内方に延びて設けられた外殻側取付フランジ４８とボルト・ナットで取り外し可能に締結される。また、テールフレーム３８は周方向に分割可能に形成されており、主トンネル坑２から発進中の分岐シールド１に取り付けられるようになっている。

【0020】

図１（ａ）及び図２（ａ）に示すように、内殻７と外殻８は、ピン４９を介して一体に結合されるようになっている。具体的には、内殻７と外殻８には、径方向にピン４９を挿入するためのピン受け部材５０、５１が設けられており、これらピン受け部材５０、５１のピン孔５０ａ、５１ａに同一のピン４９を挿入するようになっている。ピン４９及びピン孔５０ａ、５１ａは、内殻７側が外殻８側より小径に形成されており、外殻８の外周側からピン孔５０ａ、５１ａ内にピン４９を挿抜できるようになっている。すなわち、ピン４９の取り付け方向が外殻８及び内殻７の径方向外側から内側となっている。なお、ピン４９及びピン孔５０ａ、５１ａは、外殻８側が内殻７側より小径に形成され、内殻７の内周側からピン孔５０ａ、５１ａ内にピン４９を挿抜するもの、すなわち、ピン４９の取り付け方向が外殻８及び内殻７の径方向内側から外側であってもよい。

【0021】

また、外殻８と内殻７との間には、止水用のシール５２が設けられている。

【0022】

次に、分岐シールド１を用いた立坑４の構築方法について述べる。

【0023】

図５に示すように、主トンネル坑２から鉛直上方の既設地下構造物（図示せず）に向けて分岐シールド１を発進させ、立坑４となる副トンネルを構築する場合、予め主トンネル坑２の上壁のうち分岐シールド１を発進させる位置の上壁をモルタル等から成る掘削可能壁（図示せず）で形成しておく。また、予め掘削可能壁の鉛直下方に、分岐シールド１を発進させるための反力架台５３を設置しておき、反力架台５３上から分岐シールド１を発進させる。このとき、カッタ５は、カッタ中央部９にカッタ外延部１０が取り付けられた状態としておき、テールフレーム３８は分岐シールド１から取り外され、かつ、周方向に分割された状態にしておく。反力架台５３上の分岐シールド１は、反力架台５３から反力を取りながら掘削可能壁を掘削して上方に掘進する。シールドジャッキ３７が１セグメント分伸長したら周方向に複数配置されたシールドジャッキ３７のうちの一部を一時的に縮退させつつそのシールドジャッキ３７の位置の反力架台５３上にセグメント３０を組み立て、順次セグメント３０を組み立てながら分岐シールド１を鉛直上方に掘進させる。そして、分岐シールド１が予め取り外しておいたテールフレーム３８よりも長い距離掘進したら、分岐シールド１の外殻８にテールフレーム３８を取り付け、分岐シールド１をさらに掘進させる。

【0024】

図６に示すように、分岐シールド１が既設の地下構造物３内に到達したら、分岐シールド１の回収を開始する。このとき、地下構造物３内には、分岐シールド１の進行を遮る既設構造物５４があり、分岐シールド１の到達位置は、テールフレーム３８が地下構造物３外にはみ出す位置に設定されている。

【0025】

図３及び図４（ａ）、（ｂ）に示すように、分岐シールド１の回収作業は、まず、シールドジャッキ３７を外殻８から内殻７のジャッキホルダ４０に移設することから行う。

【0026】

シールドジャッキ３７は、下部ガイド４２の締結プレート４５が支持ブラケット４４上をスライドすることで上下方向の位置をガイドされると共に、水平方向の位置をガイド溝４３及びガイド板４１ａでガイドされる。このため、人手でも容易にシールドジャッキ３７の移設作業を行うことができる。

【0027】

この後、図１（ａ）及び図７に示すように、排土管２３を順次分解しながら主トンネル坑２内に回収すると共に、カッタ中央部９からカッタ外延部１０を取り外す。カッタ５は、カッタ外延部１０が取り外されることで立坑４内を通過可能なサイズとなる。

【0028】

この後、図８に示すように、地下構造物３内にクレーン５５を設置し、クレーン５５のワイヤ５５ａで内殻７を吊り上げて支持すると共に、外殻８及び内殻７からピン４９を抜き取って外殻８から内殻７を取り外す。このとき、クレーン５５のワイヤ５５ａは、適宜シーブ（図示せず）を用いて案内するとよい。例えば既設構造物５４にシーブを設けてワイヤ５５ａを既設構造物５４から迂回させるとよい。なお、取り外したピン４９やカッタ外延部１０等の部品は、内殻７よりも先に主トンネル坑２内に回収してもよく、内殻７やカッタ５等に仮止めするなどして内殻７と一緒に主トンネル坑２内に回収してもよい。この後、クレーン５５からワイヤ５５ａを繰り出し、内殻７を外殻８及び立坑４を通して主トンネル坑２に移送・回収する。なお、本実施の形態でいうクレーン５５とは広義のクレーンであり、水平方向に移動しないホイストクレーンや、電動ウィンチ等、吊り上げ装置全般をいう。

【0029】

図９（ａ）に示すように、主トンネル坑２内には、回収した内殻７、外殻８等を次の立坑構築位置まで移送するための移送台車５６、５７、５８を予め配置しておくと共に、主トンネル坑２内で分岐シールド１を構成するための外殻８を移送台車５７上に別途配置しておく。例えば、主トンネル坑２内に設置された線路５９が単線である場合、立坑位置を境とする片側に分岐シールド１掘進用の後続台車６０を配置しておくと共に立坑位置に移送台車５６を配置しておく。

【0030】

内殻７が主トンネル坑２近傍まで降りてくると、内殻７からは作業用足場２７が下方に延びているため、主トンネル坑２にはまず作業用足場２７が到達する。作業用足場２７が上下に長く、内殻７が主トンネル坑２内に到達できない場合、作業用足場２７を順次解体しながら内殻７を降ろす。このとき、作業用足場２７を移送台車５６上で解体することとなるため、作業用足場２７を別途移動する必要はなく、解体した作業用足場２７は移送台車５６上に放置又は固定しておけばよい。また、移送台車５６上が解体した作業用足場２７でいっぱいになったら、移送台車５６を順次後続台車６０とは反対側に移動させ、立坑４の直下に空の移送台車５６を位置させる。

【0031】

図９（ｂ）に示すように、作業用足場２７の解体・回収が終わったら、立坑４の直下に別途用意した外殻８が位置されるように移送台車５７を移動させて外殻８を待機させ、内殻７をさらに下降させる。このとき、内殻７には主トンネル坑２内の後続台車６０から分岐シールド１に油圧や電力を供給するための油圧ホース及び電力ケーブル６１（図５参照）が接続されたままの状態となっているため、主トンネル坑２内で外殻８内に油圧ホース及び電力ケーブル６１を挿通させておく。なお、油圧ホース及び電力ケーブル６１は予め内殻７から取り外し、主トンネル坑２内に回収しておいてもよい。

【0032】

図１０に示すように、内殻７は、降下されることで立坑４直下で待機中の外殻８内に挿入される。その後、内殻７と外殻８に回収したピン４９を挿入して内殻７と外殻８を一体にすると共に、内殻７のジャッキホルダ４０に保持されたシールドジャッキ３７を外殻８に移設し、内殻７と一体として回収したカッタ５のカッタ中央部９に取り外したカッタ外延部１０を取り付けて分岐シールド１を構成する。このようにして分岐シールド１が移送台車５７上で構成されたら分岐シールド１が載置された移送台車５７と作業用足場２７が載置された移送台車５６を次の立坑構築位置まで走行させ、その立坑構築位置で上述と同様の手順で分岐シールド１を発進させる。

【0033】

また、これと並行して、地下構造物３内に残る外殻８の回収作業を行う。

【0034】

図１１に示すように、外殻８の回収作業は、まず外殻８を周方向に分割し、その分割した外殻８を立坑４を通して主トンネル坑２内に順次回収することで行う。このとき、分割した外殻８の回収には内殻７回収時に用いたクレーン５５を用いる。また、主トンネル坑２内の立坑４直下の位置には、回収した外殻８を載置するための移送台車５８を予め配置しておき、回収した外殻８を移送台車５８上で筒状に組み立てる。このとき、筒状の外殻８の周方向の一カ所には、締結されない部分を残しておき、外殻８の外周側から内周側に油圧ホース及び電力ケーブル６１を挿入しやすいようにしておくとよい。

【0035】

外殻８が筒状に組み立てられたら外殻８を載置した移送台車５８を次の立坑構築位置まで走行させ、その立坑直下で待機する。その立坑から内殻７が再び主トンネル坑２内に回収されたとき、待機中の外殻８内に内殻７を挿入させることができ、主トンネル坑２内で分岐シールド１を容易に構成することができる。

【0036】

このように、分岐シールド１が目的の到達部たる地下構造物３へ到達した後、内殻７を外殻８から取り外すと共に、内殻７を、外殻８及び構築した立坑４を通して主トンネル坑２内に回収し、しかるのち、外殻８を周方向に分割すると共に分割した外殻８を構築した立坑４を通して主トンネル坑２内に回収するものとしたため、到達位置に十分な回収スペースが確保できないときや分岐シールド１の前方に回収作業の邪魔となる既設構造物５４があるときであっても、分岐シールド１を容易に回収することができる。

【0037】

また、カッタ５は、外径が内殻７の外径と同じかそれ以下に形成されたカッタ中央部９と、カッタ中央部９に脱着可能に設けられ外径が外殻８の外径と同じかそれ以上に形成されたカッタ外延部１０とを備え、分岐シールド１で掘進するときはカッタ中央部９とカッタ外延部１０とで地山を掘削し、立坑４を構築後は、カッタ中央部９からカッタ外延部１０を取り外し、カッタ外延部１０と内殻７とを、外殻８及び構築した立坑４を通して主トンネル坑２内に回収するものとしたため、カッタ５を簡易な構造で容易に小さくでき、立坑４を挿通可能なサイズにできる。

【0038】

外殻８の下端には、テールフレーム３８が取り外し可能に設けられ、外殻８には、分岐シールド１を推進させるシールドジャッキ３７がテールフレーム３８内に延出して設けられるものとしたため、主トンネル坑２から分岐シールド１を発進させるべく主トンネル坑２内でセグメント３０を組み立てるとき、セグメント３０を露出させた状態で効率よく作業を行うことができる。

【0039】

内殻７を主トンネル坑２内に回収する際、立坑４直下の主トンネル坑２内に別途外殻８を配置しておき、回収する内殻７を立坑４内を通して主トンネル坑２内に回収するときに、回収する内殻７を主トンネル坑２内に配置した外殻８内に挿入して分岐シールド１を構成し、その後、外殻８を周方向に分割すると共にその分割した外殻８を立坑４を通して主トンネル坑２内に回収するものとしたため、内殻７の回収と、分岐シールド１の再構成とを効率よく行うことができる。

【0040】

回収する内殻７が挿入される外殻８は、主トンネル坑２内を走行する移動台車５７上に載せておき、外殻８に回収した内殻７を挿入して分岐シールド１を構成したのち、分岐シールド１を、次の立坑構築位置まで移動台車５７と共に移動させるものとしたため、内殻７の回収、分岐シールド１の組み立て及び分岐シールド１の移送を連続的に効率よく行うことができ、主トンネル坑２に沿って複数の立坑４を構築する工事の工期を短縮することができる。

【0041】

外殻８には、シールドジャッキ３７が取り外し可能に設けられると共に取り外したシールドジャッキ３７を径方向内方にガイドするガイド装置３９が設けられ、内殻７には、ガイド装置３９にガイドされて径方向内方に移動されたシールドジャッキ３７を受けて保持するジャッキホルダ４０が設けられるものとしたため、シールドジャッキ３７を内殻７と一緒に一括して効率よく回収でき、分岐シールド１を再度組み立てる際には、回収したシールドジャッキ３７を効率よく外殻８に移設できる。

【0042】

外殻８と内殻７には、外殻８及び内殻７を結合するためのピン４９が脱着可能に設けられ、外殻８から内殻７を取り外すとき、ピン４９を抜いて外殻８と内殻７との結合を解除するものとしたため、簡易な構造で確実に外殻８と内殻７を脱着できる。なお、ピン４９の取り付け方向は、外殻８及び内殻７の径方向外側から内側であってもよく、その逆（径方向内側から外側）であってもよい。

【0043】

また、外殻８と内殻７との間には、止水用のシール５２が設けられるものとしたため、内殻７、外殻８間からの浸水を簡易な構造で防止できる。

【0044】

なお、主トンネル坑２から分岐シールド１を鉛直上方に掘進させる場合について説明したが、これに限るものではない。分岐シールド１は斜め上方に掘進させてもよい。また、分岐シールド１は上向きシールドでなくともよい。分岐シールド１は下向きに発進するものであってもよく、横向きに発進するものであってもよい。

【0045】

また、カッタ５は、回収時にカッタ中央部９からカッタ外延部１０を取り外すものとしたが、これに限るものではない。例えば、カッタ中央部９に対してカッタ外延部１０を掘進方向前方等に折り畳み可能に形成しておき、回収時にカッタ外延部１０を折り畳むものとしてもよく、カッタスポーク１２をテレスコピック状に伸縮可能に形成しておき、回収時に径方向に縮めるものとしてもよい。またさらに、カッタ５は、センターシャフト方式のものについて説明したが、これに限るものではない。カッタ５は、中間支持方式など他のタイプであってもよい。カッタ５が中間支持方式の場合、カッタ中央部９は、バルクヘッド７ａの室内側に内殻７と同軸上に設けられた旋回環（二重筒状のベアリング）と、旋回環の可動側にシール機構を介して設けられ掘進方向前方に延びる複数の中間支持ビームと、それぞれの中間支持ビームの先端に設けられ径方向に延びるカッタスポークとを備えるとよい。

【符号の説明】

【0046】

１ 分岐シールド
２ 主トンネル坑
３ 地下構造物
４ 立坑（副トンネル坑）
５ カッタ
６ 駆動部
７ 内殻
８ 外殻

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】