(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トレイを保持するトレイ保持装置と、前記トレイ保持装置を水平方向に離れた始点位置及び終点位置の間で移動させ、かつ始点位置において昇降させる移動装置からなるトレイ移送装置において、前記トレイ保持装置は、前記移動装置に取り付けられたフレームと、前記フレームの左右に配置され前記フレームに対して各々上下移動自在に連結された左右一対又は複数対の可動部材と、各可動部材の前記フレームに対する下端位置を規制する係止部材と、各可動部材に対し左右方向に移動可能に設置され、下端にトレイの側壁に外側から当接する当接部を有する位置決めアームと、各位置決めアームを内向きに付勢するばね部材と、各位置決めアームを外向きに所定位置に移動させるアーム移動機構と、各位置決めアームの下端部に左右方向に平行な鉛直面内で回転可能に軸支された保時アームと、各保持アームの先端部に設置され、各保持アームの回転に伴って揺動し前記トレイを内側から保持するトレイ保持爪と、一端が各位置決めアームに連結され、他端が各保持アームに連結され、各保持アームを正逆回転させて各トレイ保持爪を前記当接部の内側で上方の待機位置と下方の保持位置の間で揺動させる保持爪開閉機構と、各可動部材の下端に設置され、トレイの上端に当接して前記フレームの下降に伴う可動部材の下降を停止させ、トレイに対し前記トレイ保持爪の上下方向の位置決めを行うストッパ部材を備えることを特徴とするトレイ移送装置。
可動部材は、前記フレームに左右方向に平行な鉛直面内で揺動自在に軸支され、これにより上下移動自在であり、位置決めアームは、可動部材に左右方向に平行な鉛直面内で揺動可能に軸支され、これにより可動部材に対し左右方向に移動可能であることを特徴とする請求項1に記載されたトレイ移送装置。
アーム移動機構が、可動部材に設置されたエアシリンダと、エアシリンダのロッド先端に設けた押し部材からなり、前記エアシリンダが3ポジションタイプであって、押し部材はゼロストローク位置、フルストローク位置、及び中間ストローク位置の各位置に停止し、トレイ保持爪が前記保持位置にきてトレイを保持した状態で、押し部材が前記ゼロストローク位置から中間ストローク位置に前進したとき、トレイ保持爪の位置決めが行われることを特徴とする請求項1又は2に記載されたトレイ移送装置。
移動装置は、トレイ保持装置を水平方向に離れた始点位置及び終点位置で昇降させ、かつ該始点位置と終点位置の間を移動させるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載されたトレイ移送装置。
【背景技術】
【0002】
レトルトパウチの包装設備では、充填済みの複数のレトルトパウチをトレイに載置し、これを段積みしてレトルト釜に搬入し、レトルト処理を行っている。この種の包装設備では多数のトレイが使用されるが、そのなかには、加工上の問題あるいは使用上における不具合等により変形(主に反り)が生じているものが混在している。このような変形したトレイを含む多数のトレイが段積みされると、上部のトレイはそれ自体が有する変形に加え、段積みされた下方のトレイが有する変形の累積により、傾いたり(高さ方向の位置ずれ)、水平方向にずれたりする。
【0003】
トレイをある始点位置から終点位置まで移送する場合、一般的には、トレイの左右所定部位を保持爪で挟持、あるいは係止してトレイを保持し、移送している。しかし、トレイに前記のように変形が生じていると、保持爪で所定部位を正確に保持することが困難となり、特にトレイが段積みされ、その最上位のものから順次1枚ずつ取り出そうとした場合、最上位では位置ずれが増幅されていることが多く、保持が一層困難となる。
【0004】
一方、特許文献1には、段積みした複数枚のトレイから最上位のトレイを順次1枚ずつ取出し、これを水平方向に離れた位置に移送して所定位置に置くトレイ移送装置が記載されている。このトレイ移送装置は、トレイを保持するトレイ保持装置と、これを水平方向に離れた始点位置及び終点位置の間で移動させ、かつ始点位置において昇降させる移動装置からなる。
前記トレイ保持装置は、前記移動装置に取り付けられたフレーム(3)と、基部が前記フレームの左右に揺動自在に連結された左右2対の可動部材(5a〜5d)と、各可動部材を下方に付勢する第1ばね部材(12a〜12d)と、各可動部材の下端位置を規制する係止手段(11a〜11d,13a〜13d)と、各可動部材に揺動自在に軸支された保持アーム(7a〜7d)と、各保持アームの下端に設置された係止爪(9a〜9d)と、各保持アームを揺動させ、各係止爪を内向きに移動(旋回)させるエアシリンダ(17a〜17d)と、各係止爪を外向き(トレイを係止する方向)に付勢する第2ばね部材(16a〜16d)と、トレイを保持した係止爪の位置決めを行うエアシリンダ(18a〜18d)と、フレーム(及び可動部材)が下降するときトレイの上端に当接して可動部材の下降を停止させ、係止爪の上下方向の位置決めを行うストッパ部材(8a〜8d)を備える(カッコ内の符号は特許文献1に記載された図面における各部位の符号)。
【0005】
特許文献1に記載された上記トレイ移送装置によれば、段積みした複数枚のトレイから最上位のトレイを順次1枚ずつ取出し、これを水平方向に離れた位置に移送して所定位置に置く場合に、最上位のトレイが位置ずれ(高さ方向の位置ずれ及び/又は水平方向の位置ずれ)を起こしていても当該トレイを確実に保持し、トレイの2枚取りを防止し、さらに移送の終点の決められた位置にトレイを解放して置くことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記トレイ移送装置によれば、トレイの上に製品袋(充填及びシール済みの袋)が載っていない空のトレイの移送を行う場合は、何ら問題は生じない。
しかし、トレイに製品袋が載っている場合、トレイを係止するため旋回する係止爪が製品袋を引っ掛けたり、製品袋の上に乗り上げたりして、製品袋が傷ついたり、折れ曲がったりする場合がある。また、係止爪が製品袋を引っ掛けないようにするため、ストッパ部材の位置(高さ)を下げる(ストッパ部材に対する係止爪の位置(高さ)を相対的に上げる)と、今度は旋回する係止爪がトレイの上を素通りして、トレイを係止できない(空振り)ということが生じ得る。
【0008】
本発明は、このような特許文献1のトレイ移送装置の問題点に鑑みてなされたもので、段積みされたトレイがそれぞれ製品袋を載せたトレイであっても、製品袋を傷つけることなく、かつ係止爪の空振りを生じさせることなく、最上位のトレイを順次1枚ずつ取出し、これを水平方向に離れた位置に移送して所定位置に置くことができるトレイ移送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るトレイ移送装置は、トレイを保持するトレイ保持装置と、前記トレイ保持装置を水平方向に離れた始点位置及び終点位置の間で移動させ、かつ始点位置において昇降させる移動装置からなり、前記トレイ保持装置は、前記移動装置に取り付けられたフレームと、前記フレームの左右に配置され前記フレームに対して各々上下移動自在に連結された左右一対又は複数対の可動部材と、各可動部材の前記フレームに対する下端位置を規制する係止部材と、各可動部材に対し左右方向に移動可能に設置され、下端にトレイの側壁に外側から当接する当接部を有する位置決めアームと、各位置決めアームを内向きに付勢するばね部材と、各位置決めアームを外向きに所定位置に移動させるアーム移動機構と、各位置決めアームの下端部に左右方向に平行な鉛直面内で回転可能に軸支された保時アームと、各保持アームの先端部に設置され、保持アームの回転に伴って揺動し前記トレイを内側から保持するトレイ保持爪と、一端が各位置決めアームに連結され、他端が各保持アームに連結され、各保持アームを正逆回転させてトレイ保持爪を前記当接部の内側で上方の退避位置と下方の保持位置の間で揺動させる保持爪開閉機構と、各可動部材の下端に設置され、トレイの上端に当接して前記フレームの下降に伴う可動部材の下降を停止させ、トレイに対し前記トレイ保持爪の上下方向の位置決めを行うストッパ部材を備えることを特徴とする。なお、本発明において、左右方向とは前記鉛直面と水平面の交差線に沿った方向を意味する。
【0010】
前記トレイ移送装置の具体的な実施形態として、次の点を挙げることができる。
(1)前記可動部材は、前記フレームに左右方向に平行な鉛直面内で揺動自在に軸支され、これにより上下移動自在であり、前記位置決めアームは、前記可動部材に左右方向に平行な鉛直面内で揺動可能に軸支され、これにより可動部材に対し左右方向に移動可能である。
(2)アーム移動機構が、可動部材に設置されたエアシリンダと、エアシリンダのロッド先端に設けた押し部材からなり、前記エアシリンダが3ポジションタイプであって、押し部材はゼロストローク位置、フルストローク位置、及び中間ストローク位置の各位置に停止し、トレイ保持爪が前記保持位置にきてトレイを保持した状態で、押し部材が前記ゼロストローク位置から中間ストローク位置に前進したとき、トレイ保持爪の位置決め(トレイ保持爪によるトレイの左右方向の位置決め)が行われる。
(3)前記移動装置は、前記トレイ保持装置を水平方向に離れた始点位置及び終点位置で昇降させ、かつ該始点位置と終点位置の間を移動させる。
【発明の効果】
【0011】
特許文献1のトレイ移送装置では、保持アーム(7a〜7d)の支軸が上方の高い位置にあり、係止爪(9a〜9d)がその下端に設置されているため、トレイ(T)の保持に際して保持アームが揺動したとき、係止爪が大きい半径で外向きに移動(旋回)する(カッコ内の符号は特許文献1に記載された図面における各部位の符号)。その結果、前記係止爪の旋回軌跡が緩い円弧状軌跡となり、トレイ内での移動距離も大きくなって、先に述べたように、前記係止爪がトレイ内に並べた製品袋を引っ掛けたり、それを避けようとすれば前記係止爪がトレイの上を素通りするということが生じる。
【0012】
一方、本発明に係るトレイ移送装置では、保持アームが位置決めアームの下端部に軸支され、前記保持アームの先端部にトレイ保持爪が設置されている。このため、トレイを保持するときのトレイ保持爪の旋回軌跡が小さい半径の円弧状軌跡となり、トレイ内での移動距離も小さくでき、トレイ保持爪がトレイ内に並べた製品袋を避けてトレイを保持できるようになり、同時にトレイ保持爪がトレイの上を素通りするようなことも防止できる。
併せて、本発明に係るトレイ移送装置では、特許文献1のトレイ移送装置と同様に、最上位のトレイが位置ずれ(高さ方向の位置ずれ及び/又は左右方向の位置ずれ)を起こしていても当該トレイを確実に保持し、トレイの2枚取りを防止し、さらにトレイのセンタリングを行った上で、移送の終点の決められた位置にトレイを解放して置くことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、
図1〜
図8を参照して、本発明に係るトレイ移送装置について説明する。
図1に示すトレイ移送装置は、トレイを保持するトレイ保持装置1と、移動装置(移動装置の一部である昇降軸2のみ示す)からなる。トレイ保持装置1は、昇降軸2に固定されたフレーム3、及びフレーム3の左右端に支点軸4,4を介して左右方向に平行な鉛直面内で上下移動(揺動)自在に連結された左右一対の可動部材5,5を備える。可動部材5は、横行部5a、横行部5aの外端から上向きに延びる上突出部5b、横行部5aの中間位置から下向きに延びる縦行部5c、及び縦行部5cから外向きに延びる下突出部5dからなり、横行部5aの基部が前記支点軸4に軸支されている。なお、特許文献1の可動部材と同じく、左右一対の可動部材が
図1の紙面に垂直方向奥側にも対称的に配置され、可動部材は計2対(4個)存在する。
図2の平面図に示すように、各可動部材は、平面上で直交する2つの軸A1,A2に対し線対称の位置に配置されている。
【0015】
各可動部材5の上突出部5bの上端部に、前記支点軸4に平行な支点軸6を介して、位置決めアーム7が左右移動(揺動)自在に連結されている。位置決めアーム7は、縦行部7a、縦行部7aの下端から斜め下方に延びる斜行部7b、及び縦行部7aの上端から外向きに突出する取付部7cからなり、縦行部7aの上端近傍が前記支点軸6に軸支されている。位置決めアーム7の下端に、トレイT(
図3参照)の側面に外側から当接する当接部8が固定されている。
【0016】
位置決めアーム7の下端部に、くの字形の保持アーム9(
図1(b)参照)が、前記支点軸4に平行な支点軸11を介して揺動自在に連結されている。保持アーム9の先端にはトレイTを内側から保持する屈曲したトレイ保持爪12が固定されている。トレイ保持爪12は前記当接部8の内側に位置している。
可動部材5の下突出部5dの下に、トレイTの上端に当接するストッパ部材13が設置されている。ストッパ部材13がトレイTの上端に当接し、位置決めアーム7が内向きに揺動したとき、前記当接部8がトレイTの側面に外側から当接するように、また、ストッパ部材13がトレイTの上端に当接し、位置決めアーム7が内向きに揺動し、トレイ保持爪12が下方に揺動したとき、前記トレイ保持爪12がストッパ部材13の下面より所定距離だけ下方位置にくるように、ストッパ部材13、当接部8及びトレイ保持爪12のそれぞれの高さが設定されている。
【0017】
フレーム3にストッパ14が固定され、可動部材5の横行部5aにストッパ当接部材15が固定されている。ストッパ14とストッパ当接部材15は、本発明でいう係止部材であり、可動部材5のフレーム3に対する下端位置を規制する。また、フレーム3には、各可動部材5に対応して、近接センサ16が設置されている。近接センサ16は、フレーム3に対する可動部材5の上下方向の相対位置を検出するもので、具体的にはストッパ当接部材15の接近及び離脱を検知して信号を発信する。
【0018】
可動部材5と位置決めアーム7の間にばね部材(引張ばね)17が張架され、ばね部材17は、位置決めアーム7を常時内向きに付勢している。また、可動部材5に、ブラケット18が固定され、このブラケット18にエアシリンダ19が固定され、そのロッド先端に押し部材21が設置されている。エアシリンダ19と押し部材21は、本発明でいうアーム移動機構を構成する。エアシリンダ19が作動すると、押し部材21が前進(外向きに移動)し、位置決めアーム7に固定された受け部材22に当接し、位置決めアーム7を外向きに移動(揺動)させる。エアシリンダ19は3ポジションタイプ(中間停止位置を有するタイプ)であり、エアシリンダ19の作動により、押し部材21はゼロストローク位置(
図5参照)、フルストローク位置(
図3参照)、及び中間ストローク位置(
図8参照)の各位置で停止する。押し部材21が前記フルストローク位置に前進したとき、位置決めアーム7は押し部材21に押されて最も外側の退避位置に揺動し、ゼロストローク位置に後退したとき、位置決めアーム7はばね部材17の張力により内向きに揺動する。また、押し部材21が前記中間ストローク位置に前進したとき、位置決めアーム7は後述するトレイ保持位置に揺動する。
【0019】
位置決めアーム7の取付部7cにエアシリンダ23の後端部が連結され、ロッドの先端が保持アーム9の尾端に連結されている。エアシリンダ23は本発明でいう保持爪開閉機構である。エアシリンダ23の作動により保持アーム9が正逆回転し、それに伴い、トレイ保持爪12が上方の退避位置と下方の保持位置の間で揺動し、保持位置においてトレイTの内側に当接し、該トレイTを保持する。
なお、以上説明した可動部材5乃至エアシリンダ23の各部材を1つの保持ユニットとすると、トレイ保持装置1は前後に各一対、計4つの保持ユニットを有し、各保持ユニットは、
図2に示すように、平面視で直交する2本の軸A1,A2に対し線対称の位置に配置されている。トレイ保持装置1は左右対称構造を有し、トレイ保持爪12により左右を保持されたトレイTは、最終的にその中心がトレイ保持装置1の中心線Cにくるように左右が位置決め(センタリング)される。
【0020】
次に、このトレイ移送装置の作動について、
図3〜
図8を参照して説明する。
(1)トレイ保持装置1は、図示しない移動装置(昇降軸2のみ示す)により、水平方向に離れた始点位置及び終点位置で昇降し、かつ始点位置と終点位置の間を水平移動する。なお、移動装置は、公知のロボットアームや特許第2853339号公報に記載された移動機構などが適宜利用できる。
図3に示すトレイTは、平面視矩形で、側壁T1、側壁の上端全周において内向きに形成されたフランジT2及び底壁T3からなる。
【0021】
図3に示すトレイTは、始点位置における段積みトレイの最上位のトレイである。このようなトレイTは、段積みトレイの水平な第1載置箇所(段積みトレイの最下位のトレイが当接する箇所)を基準にしたとき、通常、水平面内で左右及び前後方向に位置ずれを生じており、高さ方向にも位置ずれ(左右で高さが異なる)を生じている。終点位置には解放したトレイTを置く水平な第2載置箇所(トレイ保持装置1に保持されたトレイTが当接する箇所)が設定されている。
始点位置では、トレイ保持装置1の中心線C(トレイTの左右センタリングの基準位置でもある)が前記第1載置箇所の中心に一致し、終点位置では、前記中心線Cが第2載置箇所の中心に一致するように、水平移動の始点位置及び終点位置が設定されている。
【0022】
(2)
図3は、トレイ保持装置1が始点位置に停止したときの状態を示す。トレイ保持装置1の中心線Cは、段積みトレイを載置した第1載置箇所の中心線Dと一致する。一方、トレイTは、この例では高さ方向の位置ずれはほとんどない(左右の高さがほぼ同じである)が、水平面内で左右に位置ずれが生じている(トレイTの中心T
Cが中心線C(中心線D)よりやや右方にずれている)。
可動部材5は、ストッパ当接部材15がストッパ14に当接して、下端位置で停止し、エアシリンダ19が作動して押し部材21がフルストローク位置に前進して、位置決めアーム7(当接部8)が外側の退避位置に揺動し、エアシリンダ23が作動して保持アーム9が回転し、トレイ保持爪12が上方の待機位置に揺動している。
【0023】
(3)この状態でトレイ保持装置1が下降すると、
図4に示すように、可動部材5の下端に設置されたストッパ部材13がトレイTの上面(フランジT2)に当接し、さらにトレイ保持装置1が下降を続けると、ストッパ当接部材15と近接センサ16との間隔がしだいに開き、その距離が一定以上になると近接センサ16が信号を発信する。なお、トレイTの高さが前後左右で同一で、前後左右の保持ユニットの4つのストッパ部材13が同時にトレイTの上面に当接する場合、4つの近接センサ16が同時に信号を発振する。一方、トレイTの高さが前後左右で異なり、前後左右の保持ユニットの4つのストッパ部材13がトレイTの上面に当接するタイミングに時間差ができる場合、当該4つの近接センサ16が順番に信号を発振する。
4つ全部の近接センサ16から信号が発信された時点で、トレイ保持装置1の下降が停止する。
【0024】
(4)続いて、
図5に示すように、エアシリンダ19が逆に作動して押し部材21がゼロストローク位置に後退し、位置決めアーム7がばね部材17の付勢力により内側に揺動し、位置決めアーム7の当接部8がトレイTの側壁T1に外側から当接する。位置決めアーム7の当接部8が側壁T1に当接することにより、位置決めアーム7の下端部に設置された保持アーム9(及びトレイ保持爪12)がトレイT(側壁T1の位置)に対して位置決めされる。位置決め後のトレイT(側壁T1)とトレイ保持爪12及び当接部7aの左右方向の位置関係は、トレイTの左右方向の位置ずれの有無及びその大きさに関わらず、ほぼ一定である。これにより、続いて行われるトレイ保持爪12によるトレイTの保持が毎回安定する。
【0025】
なお、位置決めアーム7が内側に揺動することで、位置決めアーム7の下端に設置された当接部8がトレイTの側壁T1に当接し、同時にトレイ保持爪12が内側に揺動し、トレイTの側壁T1より内側に入る。このように、位置決めアーム7の揺動に伴って当接部8がトレイTの側壁T1に当接し、かつトレイ保持爪12が側壁T1と干渉せずに該側壁T1の内側に入るように、ストッパ部材13と当接部8及びトレイ保持爪12の高さ関係を設定する必要がある。ストッパ部材13と当接部8及びトレイ保持爪12の高さ関係を一度設定しておけば、トレイTが高さ方向に位置ずれしていても、またその位置ずれの程度が移送工程のたびに変動しても、トレイTに対する当接部8とトレイ保持爪12の相対的な高さの関係は変動しない。
【0026】
この例では、トレイTの中心T
Cが中心線C(中心線D)よりやや右方にずれているため、この位置決めが行われたとき、右側の保持ユニットの位置決めアーム7の内側への揺動距離が小さく、右側の保持ユニットのばね部材17からトレイTへ掛かる負荷の方が、左側の保持ユニットのばね部材17からトレイTへ掛かる負荷より大きい(どのばね部材にも同じ仕様のばねが用いられている)。その負荷の差だけ、トレイTの中心T
Cを中心線C(中心線D)の方向へずらそうとする負荷がトレイTに掛かるが、その負荷自体小さいものであるので、トレイTの直下の2段目のトレイに掛かる負荷も小さく、特許文献1のトレイ移送装置と同様に、2枚取り等の問題は生じない。
【0027】
(5)続いて、
図6に示すように、エアシリンダ23が逆に作動して保持アーム9が逆に回転し、トレイ保持爪12が上方の待機位置から下方の保持位置に向けて揺動(旋回)し、その先端がトレイTの側壁T1の内面に当接する。このとき、トレイ保持爪12の旋回軌跡は比較的小さい半径の円弧状軌跡であり、トレイT内での左右方向の移動距離も相応に小さいため、トレイ保持爪12はトレイT内に並べた製品袋(図示せず)を容易に避けて旋回できる。また、特許文献1のトレイ移送装置のように、製品袋を避けるためにトレイ保持爪12の旋回軌跡を無理に上方に位置させる必要がないので、トレイ保持爪12がトレイTの上を素通りするようなことも防止できる。
【0028】
(6)次に、
図7に示すように、移動装置(昇降軸2)によりトレイ保持装置1を上昇させると、まずフレーム3が上昇してストッパ14がストッパ当接部材15に当接し、続いて可動部材5が上昇し、位置決めアーム7、保持アーム9及びトレイ保持爪12も上方して、トレイ保持爪12の先端部がトレイTのフランジT2に当接する。
なお、仮にトレイTの高さが前後左右で異なる場合、ストッパ14がストッパ当接部材15に当接して可動部材5が上昇するタイミングに各保持ユニット間で時間差ができる。
トレイ保持装置1がさらに上昇すると、トレイTはトレイ保持爪12に保持(係止)されて上昇し、段積みトレイの2段目以下のトレイから分離される。仮に分離前のトレイTの高さが前後左右で異なっていた場合でも、この時点でトレイTの高さは前後左右が実質的に同じとなる。
【0029】
また、位置決めアーム7の位置を規制するものはばね部材17の付勢力のみであり、位置決めアーム7は、両矢印に示すように、支点軸6を中心として左右に揺動し、トレイ保持爪12に係止されたトレイTは中心線Cを中心として左右に揺動するが、いずれその揺動は収束して、各保持ユニットのばね部材17(4個)の付勢力がバランスする位置に停止する。ばね部材17の付勢力は、トレイTの左右の中心T
Cが中心線Cに一致するように(中心線Cの位置が左右センタリングの基準位置となるように)、言い換えれば左右のトレイ保持爪12が中心線Cに対し左右対称位置にくるように設定されている。
【0030】
(7)続いて、
図8に示すように、各保持ユニットのエアシリンダ19が作動して押し部材21が中間ストローク位置に前進し、左右の位置決めアーム7がトレイ保持位置に位置決めされる(このとき押し部材21の先端が受け部材22に当接する)。なお、このときのエアシリンダ19の作動は、トレイTの揺動が止まり切る前に行ってもよい。
各保持ユニットの位置決めアーム7がトレイ保持位置に位置決めされたとき、左右のトレイ保持爪12は、中心線Cの両側の等距離に位置するように位置決めされ、これによりトレイ保持爪12に保持されたトレイTの左右センタリングが完了する(トレイTの左右の中心T
Cが中心線Cに一致する)。なお、このときのトレイTの位置は、ばね部材13の付勢力がバランスしたときの位置でもある。
【0031】
続いてトレイ保持装置1を所定距離移動させて終点位置にもたらし、下降させてトレイTを所定の載置箇所に置く。ここでエアシリンダ23が作動してトレイ保持爪12が上方の待機位置に揺動し、トレイTがトレイ保持爪12から解放される。続いてエアシリンダ19が作動して押し部材21がフルストローク位置に前進し、位置決めアーム7が退避位置に揺動する。それと前後して、移動装置(昇降軸2)によりトレイ保持装置1を上昇させ、始点位置に戻す(
図3参照)。
【0032】
なお、以上述べたトレイ移送装置において、エアシリンダ19は3ポジションタイプであったが、これを普通の2ポジションタイプとすることができる。この場合、押し部材21が中間ストローク位置に停止しないため、トレイTを保持したトレイ保持爪12の最後の位置決め(トレイTの最終的なセンタリング)ができず、始点位置から終点位置までの水平移動の際に位置決めアーム7(トレイ係止爪12)がトレイTとともに揺動し、また、終点位置において揺動が停止するのを待つ必要がある。