(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スキャン波形作成部は、前記測定ビーム電流強度分布が前記目標不均一ドーズ量分布に適合しない場合には、前記所与のスキャン波形を修正し、修正されたスキャン波形のもとで新たに測定される測定ビーム電流強度分布が前記目標不均一ドーズ量分布に適合するか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載のイオン注入装置。
前記スキャン波形作成部は、所定の手順でスキャン波形を作成し、作成されたスキャン波形のもとで前記ビーム電流測定部により測定される測定ビーム電流強度分布が前記目標不均一ドーズ量分布に適合するか否かを判定することを、適合する測定ビーム電流強度分布が見出されるまで繰り返すことを特徴とする請求項1または2に記載のイオン注入装置。
前記スキャン波形作成部は、前記基板表面へのイオン注入のための前記ビームスキャナによるスキャン範囲にわたり、前記測定ビーム電流強度分布が前記目標不均一ドーズ量分布に適合するか否かを判定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のイオン注入装置。
前記目標不均一ドーズ量分布は、第1目標ドーズ量に設定される第1精密注入領域と、第2目標ドーズ量に設定され前記第1精密注入領域とビームスキャン方向に隣接する第2精密注入領域と、を有し、
前記制御装置は、前記第1精密注入領域と前記第2精密注入領域との間に前記遷移領域を設定する遷移領域設定部を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のイオン注入装置。
前記複数の目標ドーズ量分布は、各々が遷移領域を有しメカニカルスキャン方向に並ぶ一群の目標不均一ドーズ量分布を含み、前記一群の目標不均一ドーズ量分布にわたり遷移領域が連なっていることを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載のイオン注入装置。
前記スキャン波形作成部は、前記目標不均一ドーズ量分布に関連する目標ビーム電流強度分布と前記測定ビーム電流強度分布を比較することによって、前記測定ビーム電流強度分布が前記目標不均一ドーズ量分布に適合するか否かを判定することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のイオン注入装置。
前記スキャン波形作成部は、前記目標不均一ドーズ量分布に関連する目標ビーム電流強度分布で前記測定ビーム電流強度分布を規格化し、規格化された測定ビーム電流強度分布の均一性を評価することによって、前記測定ビーム電流強度分布が前記目標不均一ドーズ量分布に適合するか否かを判定することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のイオン注入装置。
前記スキャン波形作成部は、前記測定ビーム電流強度分布と前記目標ビーム電流強度分布との差であるビーム電流強度分布差の均一性を評価することを特徴とする請求項10に記載のイオン注入装置。
前記スキャン波形作成部は、前記測定ビーム電流強度分布と前記目標ビーム電流強度分布との比であるビーム電流強度分布比の均一性を評価することを特徴とする請求項10に記載のイオン注入装置。
前記スキャン波形作成部は、前記基板表面へのイオン注入のための前記ビームスキャナによるスキャン範囲にわたり、前記測定ビーム電流強度分布を前記目標ビーム電流強度分布で規格化し、規格化された測定ビーム電流強度分布の均一性を評価することを特徴とする請求項10から12のいずれかに記載のイオン注入装置。
前記ビーム電流測定部は、基板表面と同じ位置でビームスキャン方向のビーム電流強度分布を測定することを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載のイオン注入装置。
前記ビーム電流測定部は、基板表面に対し上流または下流の位置でビームスキャン方向のビーム電流強度分布を測定することを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載のイオン注入装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
はじめに、本願発明者らが本願発明に想到した経緯について説明する。
【0012】
イオン注入装置では、通常ウェハ面内に対して均一なドーズ量分布が求められる。その場合、ビームスキャンパターンに対してビーム電流実測を元にした補正を加えることが一般である。この補正については、単位時間あたりのビーム電流が一定となるよう、何らかの手法でウェハ直径に対応する場所の単位時間あたりのビーム電流が実測され、その実測に基づきビームスキャンパターンが変更される。その後さらに、単位時間あたりのビーム電流の空間分布が或る閾値内に収まるまで、ビーム電流の実測とビームスキャンパターン変更が繰り返される。こうした繰り返し手法を用いる理由は、有限のビーム幅条件において数学的に空間分布を一定にすることが原理的に困難であることに依る。
【0013】
ここで、面内ドーズ量不均一注入を行う場合には、均一注入のビームスキャンパターンを利用し、そのスキャンパターンにある摂動を加える計算を行い、求める不均一注入のビームスキャンパターンを得る方法がある。しかしこの場合、ビーム幅によって目的の面内ドーズ量不均一注入形状と実際の注入形状の差異が生じ、正確なドーズ量パターン制御が行えない。
【0014】
本発明のある実施の形態では、面内2次元不均一ドーズ量注入において、当該ドーズ量パターンに適合するビームスキャンパターンを得るために、仮スキャンパターン設定、ウェハ位置でのビーム電流確認、及び合否判定が、合格するまで繰り返される。
【0015】
具体的には、ウェハ位置でのビーム電流の目的パターンとして、狙いの不均一注入を実現できるようなビーム電流の空間分布を選び、ウェハ位置でのビーム電流の空間分布とその目的パターンを直接的に比較し、それらの差異があらかじめ定められた閾値を下回るまで繰り返し手法が用いられる。
【0016】
こうして、面内2次元不均一ドーズ量注入において、面内ドーズ量不均一注入形状に対するビーム幅依存性を除去し、予測された面内ドーズ量不均一注入形状と実際の形状との差異を小さくすることができ、その結果として正確なドーズ量パターン制御を行うことができる。
【0017】
ここでなぜこのような繰り返し手法が必要かについて付言する。一般に枚葉型ハイブリッド式イオン注入装置におけるイオンスキャン方向のビーム幅については、(i)各地点で有限のビーム幅を持つ、(ii)当該ビーム幅がイオンスキャン方向の位置依存性を持つ、という特徴がある。特に(ii)については、ウェハ中央部とウェハ端部ではイオン源からの軌道長が原理的に異なり、位相空間内エミッタンス楕円の回転を通して原理的にビーム幅も異なってしまう。むろん、現実にはダイナミックアパチャーのイオンスキャン方向の位置依存性も、ビーム幅に位置依存性がある一因である。このような状況下では、狙いのビーム電流の空間分布に対してのビーム幅の効果は、数学的にコンボリュートしてしまい、それをデコンボリュートすることはできない。このことが、均一注入において、ビームスキャナに対して、一般にビーム電流の繰り返し実測に基づく補正を行う理由である。
【0018】
この状況は意図的な不均一注入を行う場合についても同様である。すなわち、通常用いられる均一注入と同等の面内ドーズ量予測性を持って不均一注入を実施したい場合には、通常の均一注入で行っているような、ビーム電流の繰り返し実測に基づく補正を行う必要がある。
【0019】
この不均一注入において繰り返し実測を用いるためには、ビーム電流測定器の測定位置精度が重要になる。すなわち、通常の均一注入においては、ウェハ面内で数点のビーム電流確認を行うことでその均一性が担保される場合が一般だが、不均一注入ではその不均一注入パターンの位置精度に応じた、ビーム電流測定の位置精度が必要となる。一般に不均一注入の注入パターンの位置精度は30mm以下であることが求められるところ、ビーム電流測定の位置精度も少なくとも30mm以下であることが求められる。無論、この位置精度は小さい方がさらに良い。
【0020】
また、均一注入と不均一注入との差異として、均一注入ではウェハ全面に対する注入精度が必ず求められるのに対して、不均一注入では、(1)ウェハ全面に対する注入精度が求められることもあれば、(2)ウェハ内で限定された領域の注入精度のみが求められることがある点である。(2)について例を挙げてさらに詳しく付言すると、例えばウェハ中心から100mm以内を基準ドーズ量で、ウェハ中心から120mmより外側を基準ドーズ量より10%増しで注入するなどの要請が考えられる。この場合、ウェハ中心から100mm〜120mmの領域のドーズ量は遷移領域として考えられ、そのドーズ量に特に正確さが求められず、基準ドーズ量から基準ドーズ量の110%の間であればよい。従って、不均一注入での合否判定は、(1)の場合は通常注入と同様の手法を用いる必要があるが、(2)の場合は予め定められた遷移領域を除いて行えば良いことになる。ここで遷移領域長としては典型的には5mm〜30mmと思われる。この遷移領域長は上記ビーム電流測定の位置精度(30mm以下)ともマッチしている。
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0022】
図1は、実施の形態に係るイオン注入装置10を概略的に示す図である。
図1(a)は、イオン注入装置10の概略構成を示す上面図であり、
図1(b)は、イオン注入装置10の概略構成を示す側面図である。
【0023】
イオン注入装置10は、被処理物の表面にイオン注入処理をするよう構成されている。被処理物は、例えば基板であり、例えば半導体ウェハである。よって以下では説明の便宜のため被処理物をウェハWと呼ぶことがあるが、これは注入処理の対象を特定の物体に限定することを意図していない。
【0024】
イオン注入装置10は、ビームの往復走査及びウェハWの往復運動の少なくとも一方によりウェハWの全体にわたってイオンビームBを照射するよう構成されている。本書では説明の便宜上、設計上のイオンビームBの進行方向をZ方向とし、Z方向に垂直な面をXY面と定義する。イオンビームBを被処理物Wに対し走査する場合において、ビームスキャン方向をX方向とし、Z方向及びX方向に垂直な方向をY方向(以下、メカニカルスキャン方向ともいう)とする。
【0025】
イオン注入装置10は、イオン源12と、ビームライン装置14と、注入処理室16と、を備える。イオン源12は、イオンビームBをビームライン装置14に与えるよう構成されている。ビームライン装置14は、イオン源12から注入処理室16へとイオンを輸送するよう構成されている。また、イオン注入装置10は、イオン源12、ビームライン装置14、及び注入処理室16に所望の真空環境を提供するための真空排気系(図示せず)を備える。
【0026】
図示されるように、ビームライン装置14は例えば、上流から順に、質量分析部18、可変アパチャ20、ビーム整形部22、第1ビーム計測部24、ビームスキャナ26、パラレルレンズ30又はビーム平行化装置、及び、角度エネルギーフィルター(AEF;Angular Energy Filter)34を備える。なお、ビームライン装置14の上流とは、イオン源12に近い側を指し、下流とは注入処理室16(またはビームストッパ38)に近い側を指す。
【0027】
質量分析部18は、イオン源12の下流に設けられており、イオン源12から引き出されたイオンビームBから必要なイオン種を質量分析により選択するよう構成されている。
【0028】
可変アパチャ20は、開口幅が調整可能なアパチャであり、開口幅を変えることでアパチャを通過するイオンビームBのビーム電流量を調整する。可変アパチャ20は、例えば、ビームラインを挟んで上下に配置されるアパチャプレートを有し、アパチャプレートの間隔を変化させることによりビーム電流量を調整してもよい。
【0029】
ビーム整形部22は、四重極収束装置(Qレンズ)などの収束レンズを備えており、可変アパチャ20を通過したイオンビームBを所望の断面形状に整形するよう構成されている。
【0030】
第1ビーム計測部24は、ビームライン上に出し入れ可能に配置され、イオンビームの電流を測定するインジェクタフラグファラデーカップである。第1ビーム計測部24は、ビーム電流を計測するファラデーカップ24bと、ファラデーカップ24bを上下に移動させる駆動部24aを有する。
図1(b)の破線で示すように、ビームライン上にファラデーカップ24bを配置した場合、イオンビームBはファラデーカップ24bにより遮断される。一方、
図1(b)の実線で示すように、ファラデーカップ24bをビームライン上から外した場合、イオンビームBの遮断が解除される。
【0031】
ビームスキャナ26は、スキャン波形に従ってビームスキャン方向に往復ビームスキャンを提供するよう構成されている。ビームスキャナ26は、整形されたイオンビームBをX方向に走査する偏向手段である。ビームスキャナ26は、X方向に離れて設けられるスキャナ電極28を有する。スキャナ電極28は可変電圧電源(図示せず)に接続されており、スキャナ電極28に印加される電圧を変化させることにより、電極間に生じる電場を変化させてイオンビームBを偏向させる。こうして、イオンビームBは、X方向に往復走査される。なお、
図1(a)において矢印Xにより往復ビームスキャンを例示し、イオンビームBの複数の軌跡を一点鎖線で示している。
【0032】
ビームスキャナ26は電場式であるが、磁場式のビームスキャナが用いられてもよい。あるいは、電場と磁場の両方を利用するビームスキャナが用いられてもよい。
【0033】
パラレルレンズ30は、走査されたイオンビームBの進行方向を平行にするよう構成されている。パラレルレンズ30は、中央部にイオンビームの通過スリットが設けられた円弧形状のPレンズ電極32を有する。Pレンズ電極32は、高圧電源(図示せず)に接続されており、電圧印加により生じる電場をイオンビームBに作用させて、イオンビームBの進行方向を平行に整える。
【0034】
角度エネルギーフィルタ34は、イオンビームBのエネルギーを分析し必要なエネルギーのイオンを下方に偏向して注入処理室16に導くよう構成されている。角度エネルギーフィルタ34は、磁場偏向用の磁石装置(図示せず)、または、電場偏向用のAEF電極36、または、その両方を有する。AEF電極36には、高圧電源(図示せず)に接続される。
図1(b)において、上側のAEF電極36に正電圧、下側のAEF電極36に負電圧を印加させることにより、イオンビームBを下方に偏向させる。
【0035】
このようにして、ビームライン装置14は、ビームスキャナ26の上流または下流に配設され、ウェハ表面でのビームスキャン方向のビーム幅を調整可能であるビームライン構成要素を備える。
【0036】
ビームライン装置14は、ウェハWに照射されるべきイオンビームBを注入処理室16に供給する。
【0037】
注入処理室16は、1枚又は複数枚のウェハWを保持し、イオンビームBに対する相対移動(例えば、Y方向)を必要に応じてウェハWに提供するよう構成されるメカニカルスキャナ44(
図2参照)を備える。
図1において、矢印YによりウェハWの往復運動を例示する。また、注入処理室16は、ビームストッパ38を備える。ビーム軌道上にウェハWが存在しない場合には、イオンビームBはビームストッパ38に入射する。
【0038】
注入処理室16には、ビーム電流測定部としての第2ビーム計測部50が設けられる。第2ビーム計測部50は、ビームスキャナ26の下流でビームスキャン方向のビーム電流強度分布を測定するよう構成されている。第2ビーム計測部50は、サイドカップ40R、40Lと、センターカップ42を有する。
【0039】
サイドカップ40R、40Lは、ウェハWに対してX方向にずれて配置されており、イオン注入時にウェハWに向かうイオンビームを遮らない位置に配置される。イオンビームBは、ウェハWが位置する範囲を超えてオーバースキャンされるため、イオン注入時においても走査されるビームの一部がサイドカップ40R、40Lに入射する。これにより、イオン注入処理中のビーム電流強度が計測される。サイドカップ40R、40Lの計測値は、第2ビーム計測部50に送られる。
【0040】
センターカップ42は、ウェハWの表面におけるビーム電流強度分布を計測するためのものである。センターカップ42は、可動式となっており、イオン注入時にはウェハ位置から待避され、ウェハWが照射位置にないときにウェハ位置に挿入される。センターカップ42は、X方向に移動されながらビーム電流強度を計測して、ビーム走査方向のビーム電流強度分布を計測する。センターカップ42の計測値は、第2ビーム計測部50に送られる。なお、センターカップ42は、ビーム走査方向の複数の位置におけるビーム電流強度を同時に計測可能となるように、複数のファラデーカップがX方向に並んだアレイ状に形成されていてもよい。
【0041】
このようにして、第2ビーム計測部50は、ウェハ表面とZ方向に同じ位置でビームスキャン方向のビーム電流強度分布を測定することができる。また、第2ビーム計測部50は、ウェハ表面に対し上流の位置でビームスキャン方向のビーム電流強度分布を測定するよう構成されていてもよい。あるいは、後述のように、第2ビーム計測部50は、ウェハ表面に対し下流の位置でビームスキャン方向のビーム電流強度分布を測定するよう構成されていてもよい。
【0042】
注入処理室16には、防護板46R、46Lが設けられる。防護板46R、46Lは、ウェハWに対してX方向にずれて配置され、イオン注入時にウェハWに向かうイオンビームや、サイドカップ40R、40Lに向かうイオンビームを遮らない位置に配置される。防護板46R、46Lは、ウェハWが位置する範囲を超えてオーバースキャンされたイオンビームが、注入処理室16の内壁や、注入処理室16の内部に設けられる機器等に照射されてしまうことを防ぐ。防護板46R、46Lは、グラファイト等で構成される。なお、防護板46R、46Lは、ビームスキャナ26の下流に設けられていればよく、ビームライン装置14に設けられてもよい。
【0043】
制御装置60は、イオン注入装置10を構成する各機器の動作を制御する。例えば、制御装置60は、所望の目標2次元ドーズ量分布がウェハ表面に与えられるようビームスキャナ26及びメカニカルスキャナ44を制御する。
【0044】
制御装置60は、スキャン波形(例えば、
図7(a)及び
図7(b)に示されるスキャン波形)に従ってビームスキャナ26にスキャン電場(または、磁場式の場合にはスキャン磁場)が印加されるようビームスキャナ26を制御するためのビームスキャナ制御信号を生成し、これをビームスキャナ26へ出力する。ビームスキャナ制御信号は、スキャン波形を実現する限り、どのような態様であってもよい。同様に、制御装置60は、ビームスキャナ26による往復ビームスキャンと適正に同期してウェハWが往復運動するようメカニカルスキャナ44を制御するためのメカニカルスキャナ制御信号を生成し、これをメカニカルスキャナ44へ出力する。メカニカルスキャナ制御信号も、適正なメカニカルスキャンを実現する限り、どのような態様であってもよい。
【0045】
図2は、往復運動されるウェハWと往復走査されるイオンビームBとの関係を示す正面図である。
図2において、イオンビームBは横方向(X方向)に往復走査され、ウェハWはメカニカルスキャナ44に保持されて縦方向(Y方向)に往復運動される。こうしたビームスキャンとメカニカルスキャンとの組合せはハイブリッドスキャンとも呼ばれる。
図2では、最上位置のウェハW1と最下位置のウェハW2を図示することで、メカニカルスキャナ44の動作範囲を示している。
【0046】
また、ビームスキャナによって走査されるイオンビームBについて、走査端位置のイオンビームB4を図示することでイオンビームBの走査可能範囲を示している。イオンビームBは、メカニカルスキャナ44の左右に配置されるサイドカップ40R、40Lや、X方向に移動可能なセンターカップ42が配置される位置を超えてオーバースキャンが可能となるように構成される。なお、
図2では、横長のイオンビームBが走査される様子を示しているが、イオンビームBの形状は、縦長であってもよく、円形に近い形状であってもよい。
【0047】
図3は、イオンビームBの走査可能範囲Cを示す図であり、
図2の上面図に対応する。走査可能範囲Cは、大きく注入領域C1と非注入領域C2の2領域に区分けすることができる。注入領域C1は、ウェハWが位置する範囲であり、サイドカップ40R、40Lが設けられる位置よりも内側の範囲ということもできる。したがって、注入領域C1に向かうイオンビームB1は、メカニカルスキャナ44により往復運動されるウェハWに入射し、イオン注入に寄与する。本書では注入領域C1をスキャン範囲と呼ぶことがある。
【0048】
一方、非注入領域C2は、注入領域C1の外に位置する領域であり、ウェハWが位置する範囲の外に対応する領域である。したがって、非注入領域C2に向かうイオンビームB3、B4は、メカニカルスキャナ44により往復運動されるウェハWに入射せず、イオン注入に寄与しない。
【0049】
また、非注入領域C2には、サイド測定位置C3と走査端位置C4が含まれる。サイド測定位置C3は、サイドカップ40R、40Lが設けられる位置に対応する。サイド測定位置C3に向かうイオンビームB3は、サイドカップ40R、40Lへ入射するため、サイド測定位置C3までイオンビームを走査させることで、イオン注入処理中であってもビーム電流強度を計測できる。走査端位置C4は、防護板46R、46Lが設けられる位置に対応する。したがって、走査端位置C4に向かうイオンビームB4は、防護板46R、46Lに入射する。そのため、走査端位置C4までイオンビームを走査させた場合であっても、注入処理室16内の意図しない箇所にイオンビームが照射されることを防ぐことができる。
【0050】
図3に示されるように、センターカップ42は、可動式のビーム電流検出器であるから、注入領域C1及び非注入領域C2の一部範囲(例えば、走査端位置C4を除く範囲)において、ウェハ表面に対応する位置Aにおけるビーム電流強度分布を測定可能である。位置Aは、イオンビームBの進行方向であるZ方向について、ウェハ表面と同じZ方向の位置に相当する。注入領域C1を1000程度の微小区間に分割し、センターカップ42をX方向に移動させながら各微小区間ごとにビーム電流強度を計測することにより、ウェハ表面におけるビーム走査方向(X方向)のビーム電流強度分布を得ることができる。
【0051】
あるいは、第2ビーム計測部50は、複数のビーム電流検出器41をウェハWの下流に備えてもよい。ビーム電流検出器41は、サイドカップ40R、40Lと同様に固定式である。ビーム電流検出器41は、X方向に配列されており、それぞれのX位置でビーム電流強度分布を測定可能である。ビーム電流検出器41は、上述の遷移領域にあたるX位置で密に配列され、他の領域では疎に配列されていてもよい。ビーム電流検出器41は、X方向に30mm以下の測定位置精度を有することが望ましい。
【0052】
図4、
図5、及び
図6は、ウェハW上の目標2次元ドーズ量分布を例示する。
図4には、目標2次元均一ドーズ量分布80を示す。
図5には、目標2次元不均一ドーズ量分布82を示し、
図6には、他の目標2次元不均一ドーズ量分布84を示す。上述のように、X方向はビームスキャン方向を表し、Y方向はメカニカルスキャン方向を表す。
【0053】
また、
図4、
図5、及び
図6にはそれぞれ、3つのY位置Y1、Y2、Y3におけるX方向の目標1次元ドーズ量分布を併せて示す。加えて、
図6には、Y位置Y4、Y5におけるX方向の目標1次元ドーズ量分布を示す。Y位置Y1、Y2、Y3、Y4、Y5のそれぞれにおけるウェハ両端のX位置を(X1a,X1b)、(X2a,X2b)、(X3a,X3b)、(X4a,X4b)、(X5a,X5b)と表記している。Y位置Y1、Y2、Y3、Y4、Y5のそれぞれにおけるスキャン範囲CY1、CY2、CY3、CY4、CY5がウェハ両端のX位置により規定されている。
【0054】
言うまでもないが、これらの目標ドーズ量分布は理解のための単なる例示であり、示される特定の分布に限定することを意図したものではない。
【0055】
図4に示されるように、目標2次元均一ドーズ量分布80はウェハ表面の全域にわたり均一目標ドーズ量Dtを有する。このように、目標2次元均一ドーズ量分布80は、異なるY位置に形成される複数の目標1次元均一ドーズ量分布81から成る。各目標1次元均一ドーズ量分布81は、X方向のドーズ量分布である。一般に、均一注入における目標ドーズ量Dtは正確に実現されるべきである。その意味で、目標1次元均一ドーズ量分布81はその全体が精密注入領域であり、遷移領域を有しない。
【0056】
図5に示される目標2次元不均一ドーズ量分布82は、第1目標ドーズ量Dt1を中央領域82aに有し、第1目標ドーズ量Dt1と異なる第2目標ドーズ量Dt2を外側領域82bに有する。第1目標ドーズ量Dt1が第2目標ドーズ量Dt2より大きい。目標2次元不均一ドーズ量分布82は、異なるY位置に形成される複数の目標1次元不均一ドーズ量分布83から成る。各目標1次元不均一ドーズ量分布83は、X方向のドーズ量分布である。
【0057】
ここで留意すべきは、目標1次元不均一ドーズ量分布83は、第1精密注入領域83a、第2精密注入領域83b、及び遷移領域83cを有することである。第1精密注入領域83aは第1目標ドーズ量Dt1に設定され、第2精密注入領域83bは第2目標ドーズ量Dt2に設定されている。第1精密注入領域83aと第2精密注入領域83bは、両者の間に遷移領域83cを挟んでX方向に隣接する。
【0058】
目標2次元不均一ドーズ量分布82は、各々が遷移領域83cを有しY方向に並ぶ一群の目標1次元不均一ドーズ量分布83を含む。中央領域82aはY方向に並ぶ3つの矩形部分で形成されている。よって、これら一群の目標1次元不均一ドーズ量分布83にわたり遷移領域83cが折れ線状に連なっている。
【0059】
図6に示される別の目標2次元不均一ドーズ量分布84は、第3目標ドーズ量Dt3を中心領域84aに有し、第3目標ドーズ量Dt3と異なる第4目標ドーズ量Dt4を外周領域84bに有する。第3目標ドーズ量Dt3が第4目標ドーズ量Dt4より大きい。目標2次元不均一ドーズ量分布84は、異なるY位置に形成される複数の目標1次元不均一ドーズ量分布85を含む。
【0060】
目標1次元不均一ドーズ量分布85は、第3精密注入領域85a、第4精密注入領域85b、及び遷移領域85cを有する。第3精密注入領域85aは第3目標ドーズ量Dt3に設定され、第4精密注入領域85bは第4目標ドーズ量Dt4に設定されている。第3精密注入領域85aと第4精密注入領域85bは、両者の間に遷移領域85cを挟んでX方向に隣接する。
【0061】
目標2次元不均一ドーズ量分布84は、各々が遷移領域85cを有しY方向に並ぶ一群の目標1次元不均一ドーズ量分布85を含む。中心領域84aは円形である。よって、これら一群の目標1次元不均一ドーズ量分布85にわたり遷移領域85cが円弧状に連なっている。
【0062】
遷移領域83c、85cは2つの精密注入領域の境界にあたるので、精密注入領域に比べて低い注入精度が許容されうる。遷移領域83c、85cのX方向の長さは、例えば、5mm以上30mm以下である。
【0063】
また、目標2次元不均一ドーズ量分布84は、異なるY位置に形成される複数の目標1次元均一ドーズ量分布86を含む。目標1次元均一ドーズ量分布86は第4目標ドーズ量Dt4を有する。このように、目標2次元不均一ドーズ量分布84は、不均一の1次元ドーズ量分布と均一の1次元ドーズ量分布の両方を含んでもよい。目標2次元不均一ドーズ量分布の形状によっては、少なくとも1つの目標1次元不均一ドーズ量分布と、少なくとも1つの目標1次元均一ドーズ量分布とを含んでもよい。
【0064】
なお本書では、目標1次元(均一または不均一)ドーズ量分布を簡単のため、目標ドーズ量分布と呼ぶことがある。同様に、後述する1次元ビーム電流強度分布についても単にビーム電流強度分布と呼ぶことがある。
【0065】
図7(a)及び
図7(b)は、ビームスキャナ26を制御するためのスキャン波形を例示する。スキャン波形は、往復ビームスキャンのスキャン速度分布及びスキャン周期を定義する。ビームスキャナ26は電場式であるから、スキャン波形は、ビームスキャナ26に印加されるスキャン電圧波形、すなわち、スキャナ電極28の両電極間の電位差の時間変化を示す波形に相当する。
【0066】
図7(a)に示されるスキャン波形は、時間に対し直線的に変化する三角波である。こうしたスキャン波形は、しばしば初期値として使用されうる。スキャン電圧が時間に対し直線的に変化するので、スキャン速度はスキャン範囲にわたり一定となる。
【0067】
一見すると、直線的な三角波のスキャン波形を用いれば、目標2次元均一ドーズ量分布80を直ちに得られると考えられる。しかしながら、実際には種々の要因により、それほど簡単ではない。そこで、たいていの場合、目標2次元均一ドーズ量分布80を得るようスキャン波形が修正される。
【0068】
ウェハW上でのビーム電流強度分布を時間的に積分することでそのウェハW上でのドーズ量分布が得られる。このようにビーム電流強度分布はドーズ量分布と関連をもつ。また、ある場所でのスキャン速度が速ければその場所のビーム電流強度は小さくなり、逆にスキャン速度が遅ければビーム電流強度は大きくなる。
【0069】
よって、スキャン波形を修正することによって、測定ビーム電流強度分布を目標ドーズ量分布に関連する目標ビーム電流強度分布に近づけることができる。測定ビーム電流強度が目標ビーム電流強度より大きい領域ではスキャン速度を速くするようにスキャン波形が修正される。逆に、測定ビーム電流強度が目標ビーム電流強度より小さい領域ではスキャン速度を遅くするようにスキャン波形が修正される。スキャン波形の修正とビーム電流強度分布の測定とを繰り返すことによって、測定ビーム電流強度分布を目標ビーム電流強度分布に十分に近づけ(理想的には一致させ)ることができる。このようにして、測定ビーム電流強度分布を目標ドーズ量分布に適合させることができる。
【0070】
図7(b)には、修正されたスキャン波形を例示する。
図7(a)の初期スキャン波形とは異なり、
図7(b)のスキャン波形では、一周期のある部分と他の部分とでスキャン電圧の傾き(すなわちスキャン速度)が異なることが理解される。
【0071】
図8は、実施の形態に係る制御装置60を概略的に示す図である。
図8には、制御装置60の機能構成をブロック図で示す。
【0072】
本明細書のブロック図において示される各ブロックは、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路、機械装置で実現でき、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者に理解されるところである。
【0073】
制御装置60は、目標設定部62、遷移領域設定部64、ビーム幅調整部66、スキャン波形作成部68、注入用スキャン波形データベース70、及びビームスキャナ駆動部72を備える。
【0074】
目標設定部62は、目標2次元不均一ドーズ量分布を、各々がビームスキャン方向のドーズ量分布でありメカニカルスキャン方向に異なる位置に形成される複数の目標ドーズ量分布へと変換するよう構成されている。遷移領域設定部64は、目標ドーズ量分布に遷移領域を設定するよう構成されている。ビーム幅調整部66は、ビーム幅が遷移領域のビームスキャン方向の長さより短くなるように少なくとも1つのビームライン構成要素を制御するよう構成されている。
【0075】
スキャン波形作成部68は、目標ドーズ量分布に適合する注入用のスキャン波形を第2ビーム計測部50の測定結果に基づいて作成するよう構成されている。スキャン波形作成部68は、所定の手順でスキャン波形を作成または修正し、そのスキャン波形のもとで第2ビーム計測部50により測定される測定ビーム電流強度分布が目標不均一ドーズ量分布に適合するか否かを判定することを、適合する測定ビーム電流強度分布が見出されるまで繰り返す。
【0076】
注入用スキャン波形データベース70は、スキャン波形作成部68によって作成された注入用のスキャン波形を格納するよう構成されている。
【0077】
ビームスキャナ駆動部72は、複数の目標ドーズ量分布それぞれに対応するスキャン波形を注入用スキャン波形データベース70から取得するよう構成されている。ビームスキャナ駆動部72は、取得されたスキャン波形からいずれかをメカニカルスキャン方向の基板位置に応じて選択し、選択されたスキャン波形を用いてビームスキャナ26を駆動するよう構成されている。こうして、
図2に例示されるハイブリッドスキャンが実現される。
【0078】
図9は、実施の形態に係るスキャン波形作成方法を示すフローチャートである。この方法は、イオン注入処理の準備段階において実行される。
図10は、
図9の方法における繰り返し手法によりスキャン波形が修正される様子を例示する。
【0079】
まず、目標2次元不均一ドーズ量分布が制御装置60に入力され、目標設定部62は、その目標2次元不均一ドーズ量分布を複数の目標ドーズ量分布へと変換する(S10)。目標2次元不均一ドーズ量分布は例えば図
5に示す目標2次元不均一ドーズ量分布82であり、目標設定部62は、目標2次元不均一ドーズ量分布82を複数の目標1次元不均一ドーズ量分布83に変換する。上述のように、目標2次元不均一ドーズ量分布は、目標1次元均一ドーズ量分布を含んでもよい。
【0080】
遷移領域設定部64は、複数の目標ドーズ量分布それぞれについて、遷移領域を設定する(S12)。例えば、目標1次元不均一ドーズ量分布83については、遷移領域設定部64は、第1精密注入領域83aと第2精密注入領域83bとの間に遷移領域83cを設定する。目標1次元均一ドーズ量分布は遷移領域を有しないから、遷移領域設定部64は、目標1次元均一ドーズ量分布については遷移領域を設定しない。
【0081】
必要に応じて、ビーム幅調整部66は、ビーム幅が遷移領域のビームスキャン方向の長さより短くなるように少なくとも1つのビームライン構成要素を制御してもよい(S13)。
【0082】
スキャン波形作成部68は、スキャン波形を設定する(S14)。初回の場合には、スキャン波形作成部68は、スキャン波形の初期値90aをビームスキャナ駆動部72に与える。スキャン波形の初期値90aは例えば、
図7(a)に示す直線的な三角波のスキャン波形であってもよいし、
図7(b)に示す均一注入用に修正されたスキャン波形であってもよい。こうしたスキャン波形が注入用スキャン波形データベース70に予め格納され、スキャン波形作成部68は、それを注入用スキャン波形データベース70から読み出してもよい。
【0083】
ビームスキャナ駆動部72は、スキャン波形作成部68により設定されたスキャン波形を用いてビームスキャナ26を駆動する。ビームスキャナ26は、設定されたスキャン波形に従ってビームスキャン方向に往復ビームスキャンを提供する。第2ビーム計測部50は、ビームスキャナ26の下流でビームスキャン方向のビーム電流強度分布を測定する(S16)。
【0084】
スキャン波形作成部68は、目標不均一ドーズ量分布に関連する目標ビーム電流強度分布と測定ビーム電流強度分布94aを比較する(S18)。スキャン波形作成部68は、比較結果に基づいて測定ビーム電流強度分布94aが目標不均一ドーズ量分布92に適合するか否かを判定する(S20)。
【0085】
遷移領域が設定されている場合には、スキャン波形作成部68は、遷移領域を除外して、目標ビーム電流強度分布と測定ビーム電流強度分布を比較する。つまり、遷移領域では目標ビーム電流強度分布と測定ビーム電流強度分布を比較しない。スキャン波形作成部68は、精密注入領域のみで目標ビーム電流強度分布と測定ビーム電流強度分布を比較する。こうして、スキャン波形作成部68は、遷移領域を除外して、測定ビーム電流強度分布が目標不均一ドーズ量分布に適合するか否かを判定する。
【0086】
遷移領域が設定されていない場合には、スキャン波形作成部68は、基板表面へのイオン注入のためのビームスキャナによるスキャン範囲にわたり、目標ビーム電流強度分布と測定ビーム電流強度分布を比較する。こうして、スキャン波形作成部68は、スキャン範囲の全域で、測定ビーム電流強度分布が目標不均一ドーズ量分布に適合するか否かを判定する。
【0087】
スキャン波形作成部68は、測定ビーム電流強度分布94aが目標不均一ドーズ量分布92に適合しない場合には(S20のNG)、スキャン波形90aをスキャン波形90bへと再設定する(S14)。再設定されたスキャン波形90bのもとで、第2ビーム計測部50によりビーム電流強度分布94bが再測定される(S16)。このようにして、スキャン波形作成部68は、スキャン波形90aをスキャン波形90bへと修正し、修正されたスキャン波形90bのもとで新たに測定される測定ビーム電流強度分布94bが目標不均一ドーズ量分布92に適合するか否かを再び判定する(S20)。適合する測定ビーム電流強度分布94cが見出されるまで、スキャン波形の設定、ビーム電流強度分布の測定、適合判定が繰り返される。
【0088】
スキャン波形作成部68は、測定ビーム電流強度分布94cが目標不均一ドーズ量分布92に適合する場合には(S20のOK)、適合した時に設定されているスキャン波形90cを目標不均一ドーズ量分布92の注入用のスキャン波形として採用する。すなわち、スキャン波形作成部68は、スキャン波形90cを目標不均一ドーズ量分布92に対応づける。必要であれば、スキャン波形作成部68は、目標不均一ドーズ量分布92に対応付けられたスキャン波形90cを注入用スキャン波形データベース70に格納する(S22)。
【0089】
こうして、ある1つの目標不均一ドーズ量分布のためのスキャン波形が決定される。他の目標不均一ドーズ量分布についても同様にしてスキャン波形が決定される。すなわち、スキャン波形作成部68は、複数の目標不均一ドーズ量分布の各々について、所与のスキャン波形のもとで第2ビーム計測部50により測定される測定ビーム電流強度分布が目標不均一ドーズ量分布に適合するか否かを判定し、適合する場合には、所与のスキャン波形を目標不均一ドーズ量分布に対応づけて注入用スキャン波形データベース70に格納する。
【0090】
実施の形態によると、実際にビーム電流強度分布を測定しそれに基づきスキャン波形を修正するという繰り返し手法が用いられるので、ビーム電流強度分布からビーム幅依存性を除去することができる。それにより、目標2次元不均一ドーズ量分布と実際に注入されるドーズ量分布との差異を小さくすることができ、正確なウェハ面内2次元不均一注入を提供することができる。
【0091】
図11は、他の実施の形態に係るスキャン波形作成方法を示すフローチャートである。
図11の方法は、
図9の比較(S18)に代えて、規格化(S24)及び均一性評価(S26)を含む。その余については、
図11の方法は、
図9の方法と同様である。
【0092】
スキャン波形作成部68は、目標不均一ドーズ量分布に関連する目標ビーム電流強度分布で測定ビーム電流強度分布を規格化し、規格化された測定ビーム電流強度分布の均一性を評価することによって、測定ビーム電流強度分布が目標不均一ドーズ量分布に適合するか否かを判定する。
【0093】
スキャン波形作成部68は、規格化として、測定ビーム電流強度分布と目標ビーム電流強度分布との差であるビーム電流強度分布差を演算してもよい。スキャン波形作成部68は、ビーム電流強度分布差の均一性を評価してもよい。スキャン波形作成部68は、ビーム電流強度分布差が所定の閾値に収まる場合、ビーム電流強度分布差が均一であると評価し、測定ビーム電流強度分布が目標不均一ドーズ量分布に適合すると判定する。スキャン波形作成部68は、ビーム電流強度分布差が当該閾値に収まらない場合、ビーム電流強度分布差が不均一であると評価し、不適合と判定する。
【0094】
スキャン波形作成部68は、規格化として、測定ビーム電流強度分布と目標ビーム電流強度分布との比であるビーム電流強度分布比を演算してもよい。スキャン波形作成部68は、ビーム電流強度分布比の均一性を評価してもよい。スキャン波形作成部68は、ビーム電流強度分布比が所定の閾値に収まる場合、ビーム電流強度分布比が均一であると評価し、測定ビーム電流強度分布が目標不均一ドーズ量分布に適合すると判定する。スキャン波形作成部68は、ビーム電流強度分布比が当該閾値に収まらない場合、ビーム電流強度分布比が不均一であると評価し、不適合と判定する。
【0095】
また、スキャン波形作成部68は、基板表面へのイオン注入のためのビームスキャナによるスキャン範囲にわたり、測定ビーム電流強度分布を目標ビーム電流強度分布で規格化し、規格化された測定ビーム電流強度分布の均一性を評価してもよい。スキャン波形作成部68は、予め定められた遷移領域を除外して、測定ビーム電流強度分布を目標ビーム電流強度分布で規格化し、規格化された測定ビーム電流強度分布の均一性を評価してもよい。
【0096】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。