特許第6517504号(P6517504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6517504
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/38 20060101AFI20190513BHJP
   H04B 1/16 20060101ALI20190513BHJP
【FI】
   H04L27/38
   H04B1/16 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-245181(P2014-245181)
(22)【出願日】2014年12月3日
(65)【公開番号】特開2016-111434(P2016-111434A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久慈 義則
(72)【発明者】
【氏名】青木 善郎
(72)【発明者】
【氏名】武田 孝文
【審査官】 谷岡 佳彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−045081(JP,A)
【文献】 特開平07−321862(JP,A)
【文献】 特開2001−177590(JP,A)
【文献】 特開平06−216706(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0273872(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/38
H04B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前段間引きを用いた直交復調器を並列化する手段として、
受信信号を所定周期でサンプリングしてサンプリング値を逐次取得するサンプリング値取得部と、
前記サンプリング値取得部により取得される前記サンプリング値を、第1サンプリング値系列と第2サンプリング値系列とに交互に振り分けて逐次出力する第1振分部と、
前記第1振分部から出力される前記第1サンプリング値系列を、第3サンプリング値系列と第4サンプリング値系列とに交互に振り分けて逐次出力する第2振分部と、
前記第1振分部から出力される前記第2サンプリング値系列を、第5サンプリング値系列と第6サンプリング値系列とに交互に振り分けて逐次出力する第3振分部と、
前記第2振分部から出力される前記第3サンプリング値系列に、サンプリング周波数に基づく基準角度と、指定された位相角との和の余弦を求めた結果である1または−1を乗算する第1乗算部と、
前記第2振分部から出力される前記第4サンプリング値系列に、1または−1のうち前記余弦を求めた結果である値以外の値を乗算する第2乗算部と、
前記第3振分部から出力される前記第5サンプリング値系列に、前記基準角度と、前記位相角との和の正弦を求めた結果である1または−1を乗算する第3乗算部と、
前記第3振分部から出力される前記第6サンプリング値系列に、1または−1のうち記正弦を求めた結果である値以外の値を乗算する第4乗算部と、
FIR型で係数として偶数を用いるとともに、前記第1乗算部および前記第2乗算部から出力される前記第3サンプリング値系列および前記第4サンプリング値系列の一連のサンプリング値を用いる信号処理により得られる信号処理結果を逐次出力する第1信号処理部と、
FIR型で係数として偶数を用いるとともに、前記第1乗算部および前記第2乗算部から出力される前記第3サンプリング値系列および前記第4サンプリング値系列の一連のサンプリング値のうち前記第1信号処理部が用いる一連のサンプリング値に対して所定信号分だけずれる一連のサンプリング値を用いて、前記第1信号処理部が実行する前記信号処理に並列的な信号処理により得られる信号処理結果を逐次出力する第2信号処理部と、
FIR型で係数として偶数を用いるとともに、前記第3乗算部および前記第4乗算部から出力される前記第5サンプリング値系列および前記第6サンプリング値系列の一連のサンプリング値を用いる信号処理により得られる信号処理結果を逐次出力する第3信号処理部と、
FIR型で係数として偶数を用いるとともに、前記第3乗算部および前記第4乗算部から出力される前記第5サンプリング値系列および前記第6サンプリング値系列の一連のサンプリング値のうち前記第3信号処理部が用いる一連のサンプリング値に対して所定信号分だけずれる一連のサンプリング値を用いて、前記第3信号処理部が実行する前記信号処理に並列的な信号処理により得られる信号処理結果を逐次出力する第4信号処理部と、
を備える、受信装置。
【請求項2】
前記第2振分部、前記第1乗算部、前記第2乗算部、前記第1信号処理部、および前記第2信号処理部と、前記第3振分部、前記第3乗算部、前記第4乗算部、前記第3信号処理部、および前記第4信号処理部とは、相互に並列的に動作する、請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記第1信号処理部は、前記第2信号処理部が用いる一連のサンプリング値に対して1信号分だけずれる一連のサンプリング値を用いて、前記第2信号処理部が実行する前記信号処理に並列的な信号処理を実行し、
前記第3信号処理部は、前記第4信号処理部が用いる一連のサンプリング値に対して1信号分だけずれる一連のサンプリング値を用いて、前記第4信号処理部が実行する前記信号処理に並列的な信号処理を実行する、
請求項1または請求項2に記載の受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、受信したアナログ信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号に対してフィルタ処理などの信号処理を行なうデジタル受信装置がある。このデジタル受信装置においては、サンプリング周波数を増大させることによって、受信対象の帯域を広帯域化することが望まれている。しかしながら信号処理のリアルタイム性が要求される場合に、サンプリング周波数の増大に伴って信号処理の動作周波数を増大させることが困難になる可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−208790号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】鬼追一雅、柏原陣、波多野雅俊、「ディジタル直交検波器の一構成法」、広島工業大学紀要研究編第45巻、2011年、pp.213−217
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、サンプリング周波数の増大に対して信号処理のリアルタイム性を適正に確保することができる受信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の受信装置は、前段間引きを用いた直交復調器を並列化する手段として、サンプリング値取得部と、第1振分部と、第2振分部と、第3振分部と、第1乗算部と、第2乗算部と、第3乗算部と、第4乗算部と、第1信号処理部と、第2信号処理部と、第3信号処理部と、第4信号処理部とを持つ。サンプリング値取得部は、受信信号を所定周期でサンプリングしてサンプリング値を逐次取得する。第1振分部は、サンプリング値取得部により取得されるサンプリング値を、第1サンプリング値系列と第2サンプリング値系列とに交互に振り分けて逐次出力する。第2振分部は、第1振分部から出力される第1サンプリング値系列を、第3サンプリング値系列と第4サンプリング値系列とに交互に振り分けて逐次出力する。第3振分部は、第1振分部から出力される前記第2サンプリング値系列を、第5サンプリング値系列と第6サンプリング値系列とに交互に振り分けて逐次出力する。第1乗算部は、前記第2振分部から出力される前記第3サンプリング値系列に、サンプリング周波数に基づく基準角度と、指定された位相角との和の余弦を求めた結果である1または−1を乗算する。第2乗算部は、前記第2振分部から出力される前記第4サンプリング値系列に、1または−1のうち前記余弦を求めた結果である値以外の値を乗算する。第3乗算部は、前記第3振分部から出力される前記第5サンプリング値系列に、前記基準角度と、前記位相角との和の正弦を求めた結果である1または−1を乗算する。第4乗算部は、前記第3振分部から出力される前記第6サンプリング値系列に、1または−1のうち記正弦を求めた結果である値以外の値を乗算する。第1信号処理部は、FIR型で係数として偶数を用いるとともに、前記第1乗算部および前記第2乗算部から出力される前記第3サンプリング値系列および前記第4サンプリング値系列の一連のサンプリング値を用いる信号処理により得られる信号処理結果を逐次出力する。第2信号処理部は、FIR型で係数として偶数を用いるとともに、前記第1乗算部および前記第2乗算部から出力される前記第3サンプリング値系列および前記第4サンプリング値系列の一連のサンプリング値のうち前記第1信号処理部が用いる一連のサンプリング値に対して所定信号分だけずれる一連のサンプリング値を用いて、前記第1信号処理部が実行する前記信号処理に並列的な信号処理により得られる信号処理結果を逐次出力する。第3信号処理部は、FIR型で係数として偶数を用いるとともに、前記第3乗算部および前記第4乗算部から出力される前記第5サンプリング値系列および前記第6サンプリング値系列の一連のサンプリング値を用いる信号処理により得られる信号処理結果を逐次出力する。第4信号処理部は、FIR型で係数として偶数を用いるとともに、前記第3乗算部および前記第4乗算部から出力される前記第5サンプリング値系列および前記第6サンプリング値系列の一連のサンプリング値のうち前記第3信号処理部が用いる一連のサンプリング値に対して所定信号分だけずれる一連のサンプリング値を用いて、前記第3信号処理部が実行する前記信号処理に並列的な信号処理により得られる信号処理結果を逐次出力する。

【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の受信装置の構成例を示すブロック図。
図2】実施形態の受信装置の一部におけるデジタル信号の例を示す図。
図3】実施形態の受信装置の第1信号処理回路、第2信号処理回路、第3信号処理回路、および第4信号処理回路の構成例を示すブロック図。
図4】実施形態の変形例における受信装置の一部の構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の受信装置を、図面を参照して説明する。
【0009】
実施形態の受信装置1は、図1に示すように、アンテナ10、低ノイズ増幅器11、フィルタ回路12、アナログデジタル変換器13、第1デジタル信号処理部14、および第2デジタル信号処理部15を備えている。
【0010】
アンテナ10は、電波を受信する。アンテナ10は、受信した電波に応じた受信信号を低ノイズ増幅器11に出力する。
低ノイズ増幅器11は、アンテナ10から出力される受信信号を増幅する。低ノイズ増幅器11は、増幅した受信信号をフィルタ回路12に出力する。
フィルタ回路12は、低ノイズ増幅器11から出力される受信信号における所望の周波数帯域以外の信号成分を減衰させる。フィルタ回路12には、例えばローパスフィルタまたはバンドパスフィルタなどである。フィルタ回路12は、受信信号における所望の周波数帯域以外の信号成分を減衰させた信号を、アナログデジタル変換器13に出力する。
【0011】
アナログデジタル変換器13は、サンプリング部131、および分配回路(第1振分部)132を備えている。
サンプリング部131は、フィルタ回路12から出力される信号に対して所定のサンプリング周波数でサンプリングを行なう。サンプリング部131は、サンプリングしたサンプリング値を有するデジタル信号を分配回路132に逐次出力する。
分配回路132は、サンプリング部131から出力されるデジタル信号を時系列順に交互に第1サンプリング値系列(DEVEN)と第2サンプリング値系列(DODD)とに振り分ける。分配回路132は、第1サンプリング値系列(DEVEN)を第1デジタル信号処理部14に出力する。分配回路132は、第2サンプリング値系列(DODD)を第2デジタル信号処理部15に出力する。これにより分配回路132は、サンプリング部131から出力されるデジタル信号に対する信号処理を並列化する。
【0012】
サンプリング部131は、図2に示すように、nを偶数として、サンプリング値Xn、サンプリング値Xn+1、サンプリング値Xn+2、サンプリング値Xn+3、…の各々のデジタル信号を分配回路132に逐次出力する。
分配回路132は、先ずサンプリング部131から出力されるサンプリング値Xnのデジタル信号を第1デジタル信号処理部14に出力する。分配回路132は、次にサンプリング部131から出力されるサンプリング値Xn+1のデジタル信号を第2デジタル信号処理部15に出力する。分配回路132は、次にサンプリング部131から出力されるサンプリング値Xn+2のデジタル信号を第1デジタル信号処理部14に出力する。分配回路132は、次にサンプリング部131から出力されるサンプリング値Xn+3のデジタル信号を第2デジタル信号処理部15に出力する。分配回路132は、サンプリング部131から逐次出力されるデジタル信号を、第1デジタル信号処理部14と第2デジタル信号処理部15とに交互に出力する。
【0013】
分配回路132は、各サンプリング値を有するデジタル信号と同期するクロック信号(CLK)を第1デジタル信号処理部14および第2デジタル信号処理部15に出力する。分配回路132は、クロック信号の立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジの各々に同期するデジタル信号を第1デジタル信号処理部14および第2デジタル信号処理部15に出力する。
【0014】
第1デジタル信号処理部14および第2デジタル信号処理部15の各々は、アナログデジタル変換器13から出力されるクロック信号に同期して動作する。第1デジタル信号処理部14および第2デジタル信号処理部15の各々は、アナログデジタル変換器13から出力されるデジタル信号に所定の信号処理(例えば、直交復調およびフィルタ処理など)を施す。つまり第1デジタル信号処理部14および第2デジタル信号処理部15の各々は、前段間引きを用いた直交復調器を並列化する機能を有している。第1デジタル信号処理部14および第2デジタル信号処理部15の各々は、所定の信号処理の結果を出力する。
第1デジタル信号処理部14は、例えば、アナログデジタル変換器13から出力されるデジタル信号を同相成分(I成分)として扱う。第2デジタル信号処理部15は、例えば、アナログデジタル変換器13から出力されるデジタル信号を直交成分(Q成分)として扱う。
【0015】
第1デジタル信号処理部14は、第1振分スイッチ(第2振分部)141、第1乗算器142、第2乗算器143、第1信号処理回路144、および第2信号処理回路145を備えている。
第2デジタル信号処理部15は、第2振分スイッチ(第3振分部)151、第3乗算器152、第4乗算器153、第3信号処理回路154、および第4信号処理回路155を備えている。
第1振分スイッチ141および第2振分スイッチ151は、同一の構成を備えている。第1乗算器142および第3乗算器152は、同一の構成を備えている。第2乗算器143および第4乗算器153は、同一の構成を備えている。
【0016】
第1振分スイッチ141は、アナログデジタル変換器13から出力される第1サンプリング値系列(DEVEN)のデジタル信号を、クロック信号に同期して時系列順に交互に第3サンプリング値系列(DODDA)と第4サンプリング値系列(DEVENA)とに振り分ける。
第1振分スイッチ141は、クロック信号の立ち上がりエッジに同期して第3サンプリング値系列(DODDA)を第1乗算器142に出力する。第1振分スイッチ141は、第1乗算器142に出力する各サンプリング値をクロック信号の次の立ち上がりエッジまで維持する。
第1振分スイッチ141は、クロック信号の立ち下がりエッジに同期して第4サンプリング値系列(DEVENA)を第2乗算器143に出力する。第1振分スイッチ141は、第2乗算器143に出力する各サンプリング値をクロック信号の次の立ち下がりエッジまで維持する。
これにより第1振分スイッチ141は、アナログデジタル変換器13から出力される第1サンプリング値系列(DEVEN)に対する信号処理を並列化する。第1乗算器142および第2乗算器143の各々に入力されるデジタル信号の切り替え周期は、アナログデジタル変換器13が出力する第1サンプリング値系列(DEVEN)の周期の2倍(つまりサンプリング周期の4倍)になる。
【0017】
第1乗算器142は、第1振分スイッチ141から出力される第3サンプリング値系列(DODDA)に「1」を乗算して、乗算結果を出力する。
第2乗算器143は、第1振分スイッチ141から出力される第4サンプリング値系列(DEVENA)に「−1」を乗算して、乗算結果を出力する。
第1乗算器142および第2乗算器143は、第1サンプリング値系列(DEVEN)のデジタル信号に対して「1」と「−1」とを交互に乗算する。この第1乗算器142および第2乗算器143の動作は、サンプリング部131から出力されるサンプリング値{Xn,Xn+1,Xn+2,Xn+3,…}に対して、{「1」,「0」,「−1」,「0」,…}を乗じることに相当する。つまり第1乗算器142および第2乗算器143は、サンプリング周波数fsによるサンプリング値{Xn,Xn+1,Xn+2,Xn+3,…}に対して、cos(fs/4+位相角)を乗じる。位相角は、0度、180度のどちらを指定してもよい。
【0018】
第2振分スイッチ151は、アナログデジタル変換器13から出力される第2サンプリング値系列(DODD)のデジタル信号を、クロック信号に同期して時系列順に交互に第5サンプリング値系列(DODDB)と第6サンプリング値系列(DEVENB)とに振り分ける。
第2振分スイッチ151は、クロック信号の立ち上がりエッジに同期して第5サンプリング値系列(DODDB)を第3乗算器152に出力する。第2振分スイッチ151は、第3乗算器152に出力する各サンプリング値をクロック信号の次の立ち上がりエッジまで維持する。
第2振分スイッチ151は、クロック信号の立ち下がりエッジに同期して第6サンプリング値系列(DEVENB)を第4乗算器153に出力する。第2振分スイッチ151は、第4乗算器153に出力する各サンプリング値をクロック信号の次の立ち下がりエッジまで維持する。
これにより第2振分スイッチ151は、アナログデジタル変換器13から出力される第2サンプリング値系列(DODD)に対する信号処理を並列化する。第3乗算器152および第4乗算器153の各々に入力されるデジタル信号の切り替え周期は、アナログデジタル変換器13が出力する第2サンプリング値系列(DODD)の周期の2倍(つまりサンプリング周期の4倍)になる。
【0019】
第3乗算器152は、第2振分スイッチ151から出力される第5サンプリング値系列(DODDB)に「1」を乗算して、乗算結果を出力する。
第4乗算器153は、第2振分スイッチ151から出力される第6サンプリング値系列(DEVENB)に「−1」を乗算して、乗算結果を出力する。
第3乗算器152および第4乗算器153は、第2サンプリング値系列(DODD)のデジタル信号に対して「1」と「−1」とを交互に乗算する。この第3乗算器152および第4乗算器153の動作は、サンプリング部131から出力されるサンプリング値{Xn,Xn+1,Xn+2,Xn+3,…}に対して、{「0」,「1」,「0」,「−1」,…}を乗じることに相当する。つまり第3乗算器152および第4乗算器153は、サンプリング周波数fsによるサンプリング値{Xn,Xn+1,Xn+2,Xn+3,…}に対して、sin(fs/4+位相角)を乗じる。位相角は、0度、180度のどちらを指定してもよい。但し、上記のcos(fs/4+位相角)と位相角を合わせる。
【0020】
第1信号処理回路144および第2信号処理回路145の各々は、第1乗算器142および第2乗算器143から出力される一連のサンプリング値のデジタル信号に対して所定処理(例えば、フィルタ処理)を行なう。第1信号処理回路144および第2信号処理回路145は、FIRフィルタとし、並列化を可能にする為、係数は偶数となるように構成する。第1信号処理回路144および第2信号処理回路145は、第1乗算器142および第2乗算器143から出力される一連のサンプリング値のうち、相互に1信号分だけずれる一連のサンプリング値を用いて、並列的に信号処理を行なう。
これにより第1信号処理回路144および第2信号処理回路145は、アナログデジタル変換器13から出力される第1サンプリング値系列(DEVEN)のデータレートと同一のデータレートで信号処理結果を出力する。第1信号処理回路144および第2信号処理回路145の各々の動作周波数は、サンプリング周波数fsの1/4(=fs/4)である。
【0021】
図3に示す第1信号処理回路144および第2信号処理回路145の各々は、例えば8タップの係数{h0,h2,…,h12,h14}のFIRフィルタである。第1信号処理回路144は、一連のサンプリング値を用いるフィルタ処理により得られる信号処理結果IODDを逐次出力する加算器1441を備えている。第2信号処理回路145は、一連のサンプリング値を用いるフィルタ処理により得られる信号処理結果IEVENを逐次出力する加算器1451を備えている。
第2信号処理回路145は、一連のサンプリング値{Xn,Xn+2,…,Xn+14}を用いるフィルタ処理により得られる信号処理結果IEVEN(=I(n))を逐次出力する。第1信号処理回路144は、第2信号処理回路145が用いる一連のサンプリング値に対して1信号分だけ遅れる一連のサンプリング値{Xn+2,Xn+4,…,Xn+16}を用いて、第2信号処理回路145のフィルタ処理に並列的にフィルタ処理を実行する。第1信号処理回路144は、一連のサンプリング値{Xn+2,Xn+4,…,Xn+16}を用いるフィルタ処理により得られる信号処理結果IODD(=I(n+1))を逐次出力する。
【0022】
第3信号処理回路154および第4信号処理回路155の各々は、第3乗算器152および第4乗算器153から出力される一連のサンプリング値のデジタル信号に対して所定処理(例えば、フィルタ処理)を行なう。第3信号処理回路154および第4信号処理回路155は、例えばFIRフィルタまたはIIRフィルタである。第3信号処理回路154および第4信号処理回路155は、第3乗算器152および第4乗算器153から出力される一連のサンプリング値のうち、相互に1信号分だけずれる一連のサンプリング値を用いて、並列的に信号処理を行なう。
これにより第3信号処理回路154および第4信号処理回路155は、アナログデジタル変換器13から出力される第2サンプリング値系列(DODD)のデータレートと同一のデータレートで信号処理結果を出力する。第3信号処理回路154および第4信号処理回路155の各々の動作周波数は、サンプリング周波数fsの1/4(=fs/4)である。
【0023】
図3に示す第3信号処理回路154および第4信号処理回路155の各々は、例えば8タップの係数{h1,h3,…,h13,h15}のFIRフィルタである。第3信号処理回路154は、一連のサンプリング値を用いるフィルタ処理により得られる信号処理結果QODDを逐次出力する加算器1541を備えている。第4信号処理回路155は、一連のサンプリング値を用いるフィルタ処理により得られる信号処理結果QEVENを逐次出力する加算器1551を備えている。
第4信号処理回路155は、一連のサンプリング値{Xn+1,Xn+3,…,Xn+15}を用いるフィルタ処理により得られる信号処理結果QEVEN(=Q(n))を逐次出力する。第3信号処理回路154は、第4信号処理回路155が用いる一連のサンプリング値に対して1信号分だけ遅れる一連のサンプリング値{Xn+3,Xn+5,…,Xn+17}を用いて、第4信号処理回路155のフィルタ処理に並列的にフィルタ処理を実行する。第4信号処理回路155は、一連のサンプリング値{Xn+3,Xn+5,…,Xn+17}を用いるフィルタ処理により得られる信号処理結果QODD(=I(n+1))を逐次出力する。
【0024】
以上説明した実施形態によれば、サンプリング周波数fsの1/4の動作周波数を有する第1〜第4信号処理回路144,145,154,155を持つことにより、サンプリング周波数fsが増大しても信号処理のリアルタイム性を適正に確保することができる。逐次振り分けられるサンプリング値を用いて並列的に信号処理を行なう第1〜第4信号処理回路144,145,154,155を持つことにより、信号処理のリアルタイム性を確保しながら、受信信号を広帯域化することができる。
第1〜第4信号処理回路144,145,154,155を持つことにより、専用の半導体回路などを用いる必要無しに、FPGAなどのプログラマブルロジックデバイスを用いて、第1および第2デジタル信号処理部14,15を構成することができる。これにより第1および第2デジタル信号処理部14,15の汎用性を増大させることができ、構成に要する費用が嵩むことを抑制することができる。
【0025】
以下、変形例について説明する。
上述した実施形態では、第1信号処理回路144および第2信号処理回路145は、相互に1信号分だけずれる一連のサンプリング値を用いる信号処理を行なうとしたが、これに限定されない。
第1信号処理回路144および第2信号処理回路145は、1信号分のずれに限らず、相互に所定信号分だけずれる一連のサンプリング値を用いる信号処理を実行してもよい。
上述した実施形態では、第3信号処理回路154および第4信号処理回路155は、相互に1信号分だけずれる一連のサンプリング値を用いる信号処理を行なうとしたが、これに限定されない。
第3信号処理回路154および第4信号処理回路155は、1信号分のずれに限らず、相互に所定信号分だけずれる一連のサンプリング値を用いる信号処理を実行してもよい。
【0026】
上述した実施形態では、分配回路132はアナログデジタル変換器13に備えられ、第1振分スイッチ141は第1デジタル信号処理部14に備えられ、第2振分スイッチ151は第2デジタル信号処理部15に備えられるとしたが、これに限定されない。
受信装置1は、図4に示すように、分配回路132、第1振分スイッチ141、および第2振分スイッチ151を有する振分部20を備えてもよい。
上述した実施形態では、第1デジタル信号処理部14は第1乗算器142および第2乗算器143を備え、第2デジタル信号処理部15は第3乗算器152および第4乗算器153を備えるとしたが、これに限定されない。
第1デジタル信号処理部14は、図4に示すように、第3サンプリング値系列(DODDA)および第4サンプリング値系列(DEVENA)の各々にcos(fs/4+位相角)を乗じる乗算器211,212を有する同相成分出力部21を備えてもよい。
第2デジタル信号処理部15は、図4に示すように、第5サンプリング値系列(DODDB)および第6サンプリング値系列(DEVENB)の各々にsin(fs/4+位相角)を乗じる乗算器221,222を有する直交成分出力部22を備えてもよい。
【0027】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、サンプリング周波数fsの1/4の動作周波数を有する第1〜第4信号処理回路144,145,154,155を持つことにより、サンプリング周波数fsが増大しても信号処理のリアルタイム性を適正に確保することができる。逐次振り分けられるサンプリング値を用いて並列的に信号処理を行なう第1〜第4信号処理回路144,145,154,155を持つことにより、信号処理のリアルタイム性を確保しながら、受信信号を広帯域化することができる。
第1〜第4信号処理回路144,145,154,155を持つことにより、専用の半導体回路などを用いる必要無しに、FPGAなどのプログラマブルロジックデバイスを用いて、第1および第2デジタル信号処理部14,15を構成することができる。これにより第1および第2デジタル信号処理部14,15の汎用性を増大させることができ、構成に要する費用が嵩むことを抑制することができる。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0029】
1…受信装置、10…アンテナ、11…低ノイズ増幅器、12…フィルタ回路、13…アナログデジタル変換器、131…サンプリング部、132…分配回路、14…第1デジタル信号処理部、141…第1振分スイッチ、142…第1乗算器、143…第2乗算部、144…第1信号処理回路、145…第2信号処理回路、15…第2デジタル信号処理部、151…第2振分スイッチ、152…第3乗算器、153…第4乗算部、154…第3信号処理回路、155…第4信号処理回路
図1
図2
図3
図4