(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らが本技術分野において研究を重ねる中で、細胞培養にかかる作業を全てロボットにより自動で行う場合、装置の構成が複雑となってしまい、この結果、メンテナンス性やシステムの拡張性に劣るものとなり、効率的な運用ができないという問題に着目した。そして、この問題の解決には、細胞培養技術の特性特徴に柔軟に対処できるよう、全ての作業をロボットに頼るより、むしろ手作業との組み合わせとを一体的に行えるシステムがより合理的に細胞培養技術に資することができるとの知見を得るに至った。
【0009】
したがって、本発明の目的は、ロボットによる作業と手作業との合理的な組み合わせにより効率よい細胞培養物の製造を可能とし、かつ比較的単純な構成を有する細胞処理システム、ならびに効率よく細胞培養物を製造するための細胞処理方法、液体移送方法、および把持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、ロボットによる作業と手作業との合理的な組み合わせにより達成することができる、その目的は、例えば、以下の(1)〜(30)の手段により達成される。
(1) 容器を用いた細胞の処理に用いられるシステムであって、
前記容器を用いて処理を行う複数の処理領域および処理に用いられる物を搬入・搬出可能な搬入・搬出領域を備えた基台と、
前記基台上に設けられ、前記容器の少なくとも一部を把持可能な把持具を有するロボットと、
前記処理領域と前記ロボットと前記搬入・搬出領域の少なくとも一部とを覆い、内部の清浄を維持可能な筐体と、
前記筐体または前記基台に配置され、前記筐体外から手動での前記筐体内の作業が可能に構成された1以上の作業部と、
を有し、
前記ロボットの前記把持具は、前記処理領域に到達可能に構成されており、
前記筐体は、前記搬入・搬出領域に隣接した部位が開閉可能に構成されており、
前記作業部は、その作業可能な領域が、前記処理領域および/または前記搬入・搬出領域と重複しており、かつ、前記作業部を介してそれぞれの前記処理領域および前記搬入・搬出領域の間で処理に用いられる物の移動が可能に構成されている、細胞処理システム。
【0011】
(2) 前記作業部を複数有し、隣り合う当該作業部の作業可能な領域同士が互いに重複している、(1)に記載の細胞処理システム。
(3) 前記作業部により手動での前記処理領域における処理の準備が可能に構成されている、(1)または(2)に記載の細胞処理システム。
(4) 前記処理が、ロボットにより行われるように構成されている、(1)〜(3)のいずれかに記載の細胞処理システム。
【0012】
(5) 前記作業部が、グローブである、(1)〜(4)のいずれかに記載の細胞処理システム。
(6) 前記処理領域の少なくとも1つが、前記容器への液体の分注を行うための領域である、(1)〜(5)のいずれかに記載の細胞処理システム。
(7) 前記処理領域の少なくとも1つが、前記容器中の液体の廃棄のための領域である、(1)〜(6)のいずれかに記載の細胞処理システム。
【0013】
(8) 前記液体が培地である、(6)または(7)に記載の細胞処理システム。
(9) 前記容器が、容器本体と蓋とを有し、
前記処理領域の少なくとも1つが、前記容器本体に対する前記蓋の脱着のための領域である、(1)〜(8)のいずれかに記載の細胞処理システム。
(10) 前記容器中の培地の交換、前記容器への培地の分注、前記容器への細胞の播種および/または前記容器の内壁面に形成された細胞組織の剥離に用いられる、(1)〜(9)のいずれかに記載の細胞処理システム。
【0014】
(11) 容器を用いた細胞の処理に用いられるシステムであって、
前記容器を用いて処理を行う1以上の処理領域および容器の搬入・搬出領域を備えた基台と、
前記基台上に設けられ、前記容器の少なくとも一部を把持可能な把持具を有するロボットと、
少なくとも前記処理領域と前記ロボットとを覆い、内部の清浄を維持可能な筐体と、
を有し、
前記ロボットの前記把持部は、前記処理領域に到達可能に構成されており、
前記把持具は、第1の把持部と、第1の把持部よりも遠位端側に配置され、第1の把持部よりも把持面の離間距離の大きい、第2の把持部と、を有し、
前記第2の把持部は、前記第1の把持部の中心軸付近において、その一部が省略されている、
細胞処理システム。
【0015】
(12) 細胞を処理するための容器の操作に用いられるロボット用の把持具であって、
第1の把持部と、
第1の把持部よりも遠位端側に配置され、第1の把持部よりも把持面の離間距離の大きい、第2の把持部と、を有し、
前記第2の把持部は、前記第1の把持部の中心軸付近において、その一部が省略されている、把持具。
(13) 前記第2の把持部は、前記第1の把持部の把持面の側方端部に対応する位置に配置されている、(12)に記載の把持具。
【0016】
(14) 前記第2の把持部は、前記第1の把持部の把持面の側方両端部に対応する位置に配置されている、(12)または(13)に記載の把持具。
(15) 前記第1の把持部は、軸方向に沿って、前記把持面の中心付近に凹部を有している、(12)〜(14)のいずれかに記載の把持具。
(16) 前記第1の把持部および/または前記第2の把持部は、前記把持面に滑り止め部が配置されている、(12)〜(15)のいずれかに記載の把持具。
【0017】
(17) 蓋と容器本体とを有する複数の容器を用いて細胞を処理するための細胞処理方法であって、
1)処理する順序が決定されたn個(ただし、nは2以上の整数)の前記容器を配置するステップと、
2)ロボットによりi番目(ただし、iは、整数であり、2≦i≦nである。)に処理される容器の蓋を容器本体から取り外し、i−1番目に処理される容器の容器本体に取り付けるステップと、
3)i番目に処理される前記容器を用いて処理を行うステップと、
を有する細胞処理方法。
【0018】
(18) ステップ2)とステップ3)とをiが2からnとなるまで繰り返す、(17)に記載の細胞処理方法。
(19) 前記ロボットが、前記蓋が取り外された前記容器本体の開口上を通過しないように動作する、(17)または(18)に記載の細胞処理方法。
【0019】
(20) さらに、ステップ2)より前に、1番目に処理される容器の蓋を、ロボットにより容器本体より取り外し、蓋置場に蓋を配置するステップを有する、(17)〜(19)のいずれかに記載の細胞処理方法。
(21) n番目に処理される容器についてステップ3)の処理が行われた後に、ロボットにより前記蓋置場に配置された前記蓋を当該容器の容器本体に取り付ける、(17)〜(20)のいずれかに記載の細胞処理方法。
【0020】
(22) ステップ3)における処理が、前記容器からの液体の廃棄および/または前記容器への液体の注入である、(17)〜(21)のいずれかに記載の細胞処理方法。
(23) 前記液体が、培地である、(22)に記載の細胞処理方法。
(24) 前記処理が、前記容器中の培地の交換、前記容器への培地の分注、前記容器への細胞の播種または前記容器内壁面に形成された細胞組織の剥離である、(17)〜(23)のいずれかに記載の細胞処理方法。
【0021】
(25) a)液体を保持する容器をロボットの把持具により把持するステップと、
b)把持した前記容器を回転させることにより、前記容器中の前記液体を回収容器に移送するステップとを有し、
ステップa)およびb)においてロボットが、前記回収容器の開口の鉛直線上を通過しないように動作する、細胞の処理における液体移送方法。
(26) 前記把持具が回転可能に構成されており、
ステップb)において、前記容器を、前記把持具の回転軸と平行な軸を中心軸として同一方向に回転させる、(25)に記載の液体移送方法。
【0022】
(27) ステップb)において、前記容器の開口が下方に向いた際に、当該容器を上下に往復させる、(25)または(26)に記載の液体移送方法。
(28) ステップb)において、前記容器の回転が、並進運動を伴いつつ行われる、(25)〜(27)のいずれかに記載の液体移送方法。
【0023】
(29) ステップa)において、前記把持具が前記容器の開口の鉛直線上に存在しないように前記容器の把持が行われる、(25)〜(28)のいずれかに記載の液体移送方法。
(30) 前記液体が、培地である、(25)〜(29)のいずれかに記載の液体移送方法。
【発明の効果】
【0024】
以上、本発明によれば、効率よい細胞培養物の製造が可能であり、かつ比較的単純な構成を有する細胞処理システム、ならびに効率よく細胞培養物を製造するための細胞処理方法、液体移送方法、および把持具を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施態様について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
〔第1実施態様〕
まず、本発明の第1実施態様について説明する。
図1は本発明の第1実施態様にかかる細胞処理システムの概要図、
図2は
図1に示す細胞処理システムのx−x平面断面図、
図3は
図1に示す細胞処理システムが備えるロボットの斜視図、
図4は
図1に示す細胞処理システムが備えるロボットの把持具の部分拡大図、
図5、
図6は
図4に示す把持具の動作を説明する模式図、
図7は第1実施態様にかかる細胞処理システムにおいて用いられる容器の一例を示す模式図、
図8は第1実施態様にかかる細胞処理システムにおいて用いられる容器のカセットの一例を示す模式図である。なお、本願における各図において、説明を容易とするため、各部材の大きさは、適宜強調されており、図示の各部材は、実際の大きさを示すものではない。
【0028】
図1に示す細胞処理システム1は、容器100を用いた細胞の処理に用いられるものであり、特に、容器100を用いて細胞を培養し、細胞培養物を得る際に、容器100からの液体Lの排出、容器100への液体Lの注液(分注)に用いられるものである。本実施態様においては、液体Lは、培地であり、細胞処理システム1は、容器100中の培地(液体L)の交換に用いられる、培地交換システムである。
【0029】
また、細胞処理システム1において処理に用いられる細胞としては、特に限定されないが、例えば、対象から採取した細胞や凍結保存細胞等が挙げられる。
【0030】
より具体的には、細胞処理システム1において使用可能な細胞としては、特に限定されないが、例えば、接着細胞(付着性細胞)が挙げられる。接着細胞としては、例えば、接着性の体細胞(例えば、心筋細胞、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、肝細胞、膵細胞、腎細胞、副腎細胞、歯根膜細胞、歯肉細胞、骨膜細胞、皮膚細胞、滑膜細胞、軟骨細胞など)および幹細胞(例えば、筋芽細胞、心臓幹細胞などの組織幹細胞、胚性幹細胞、iPS(induced pluripotent stem)細胞などの多能性幹細胞、間葉系幹細胞等)などが挙げられる。体細胞は、幹細胞、特にiPS細胞から分化させたものであってもよい。このような細胞の例としては、例えば、筋芽細胞(例えば、骨格筋芽細胞など)、間葉系幹細胞(例えば、骨髄、脂肪組織、末梢血、皮膚、毛根、筋組織、子宮内膜、胎盤、臍帯血由来のものなど)、心筋細胞、線維芽細胞、心臓幹細胞、胚性幹細胞、iPS細胞、滑膜細胞、軟骨細胞、上皮細胞(例えば、口腔粘膜上皮細胞、網膜色素上皮細胞、鼻粘膜上皮細胞など)、内皮細胞(例えば、血管内皮細胞など)、肝細胞(例えば、肝実質細胞など)、膵細胞(例えば、膵島細胞など)、腎細胞、副腎細胞、歯根膜細胞、歯肉細胞、骨膜細胞、皮膚細胞等が挙げられる。
【0031】
また、細胞処理システム1を利用した処理を含む細胞培養により、例えば、シート状細胞培養物等の細胞が互いに連結した細胞培養物を形成することも可能である。
【0032】
本明細書において、「シート状細胞培養物」は、細胞が互いに連結してシート状になったものをいう。シート状細胞培養物において細胞同士は、直接(接着分子などの細胞要素を介するものを含む)および/または介在物質を介して、互いに連結していてもよい。介在物質としては、細胞同士を少なくとも物理的(機械的)に連結し得る物質であれば特に限定されないが、例えば、細胞外マトリックスなどが挙げられる。介在物質は、好ましくは細胞由来のもの、特に、シート状細胞培養物を構成する細胞に由来するものである。細胞は少なくとも物理的(機械的)に連結されるが、さらに機能的、例えば、化学的、電気的に連結されてもよい。シート状細胞培養物は、1の細胞層から構成されるもの(単層)であっても、2以上の細胞層から構成されるもの(積層(多層)、例えば、2層、3層、4層、5層、6層など)であってもよい。
【0033】
シート状細胞培養物は、好ましくはスキャフォールド(支持体)を含まない。スキャフォールドは、その表面上および/またはその内部に細胞を付着させ、シート状細胞培養物の物理的一体性を維持するために当該技術分野において用いられることがあり、例えば、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)製の膜等が知られている。また、シート状細胞培養物は、好ましくは、シート状細胞培養物を構成する細胞由来の物質のみからなり、それら以外の物質を含まない。
【0034】
上述した細胞は、シート状細胞培養物による治療が可能な任意の生物に由来し得る。かかる生物には、限定されずに、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、げっ歯目動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモットなど)、ウサギなどが含まれる。
【0035】
シート状細胞培養物の形成に用いる細胞は1種類のみであってもよいが、2種類であってもよい。シート状細胞培養物を形成する細胞が2種類以上ある場合、最も多い細胞の比率(純度)は、シート化培養開始時、または、シート状細胞培養物製造終了時において、約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約75%以上である。
【0036】
また、本実施態様において、
図7、
図8に示すように、容器100は、細胞培養フラスコであり、開口111を有する容器本体110と、容器本体110の開口111に螺合可能に構成され、開口111を封することのできる蓋120とを備えている。容器本体110は、その側面として、2つの主面112、113を有し、一方の主面112、113のいずれかを下面とした細胞の培養が可能である。
【0037】
なお、本実施態様においては、細胞処理システム1は、容器100を複数操作するものであるが、複数の容器100の管理、操作において、
図8に示すようなカセット200を用いることができる。カセット200は、その主面上に複数の凹部201を備える板状の台である。各凹部201においては、蓋120が上方に向くようにして容器100を配置することができるように、容器本体110の形状に対応した形状をなしている。また、凹部201は、複数の容器100の主面112が平行となるように容器100が整列するように列をなしている。また、カセット200は、凹部201が形成された主面とは反対側の主面に、後述する固定ピン127の係合可能な固定孔が形成されている(図示せず)。
【0038】
図1、
図2に示す細胞処理システム1は、基台10と、ロボット20と、筐体30と、作業部40とを有している。
【0039】
基台10は、細胞処理システム1において細胞の処理を行うための作業台である。
図2に示すように、基台10は、その平面視にて方形状をなしており、基台10には、その台上の一端付近に搬入・搬出領域11が、搬入・搬出領域11以外の台上において複数の処理領域12A〜12Cが配置されている。また、基台10は、搬入・搬出領域11付近の側面において、操作部13を有している。
【0040】
搬入・搬出領域11は、容器100、カセット200や、細胞の処理に必要な材料、薬品、培地、器具、装置等の処理に用いられる物を搬入・搬出に用いられる領域である。本実施態様においては、搬入・搬出領域11は、その領域全てが後述する筐体30によって形成される空間(清浄空間)15下に配置される。そして、当該外部環境に存在する作業者は、後述する筐体30のシャッター32を介して、処理に用いられる物を搬入・搬出領域11上に配置することができる。また、必要に応じ、作業者は、搬入・搬出領域11上において、適宜作業を行うことが可能である。
【0041】
処理領域12A〜12Cは、後述するロボット20および作業部40と隣接して配置されている。処理領域12A〜12Cは、処理を行うための領域である。処理領域12A〜12Cには、行われる処理の内容に応じて、処理に用いられる物が配置される。
【0042】
具体的には、処理領域12Aは、容器100への液体の分注を行うための分注領域である。したがって、処理領域12Aには、分注ポンプ121と、培地を貯留する培地貯留容器122と、分注ポンプ121により培地貯留容器122から培地を容器100へ供給するチューブ123と、容器100への液体の分注量を測定するための液量センサ124と、が配置される。
【0043】
処理領域12Bは、容器100中の培地を廃棄して、回収するための培地回収領域であり、容器100から移送された培地を回収するための回収容器125と、回収量を測定するためのセンサ126とが配置される。回収容器125は、比較的大きな容量を有するボトルであり、センサ126は、回収容器125の下に配置される重量センサである。なお、センサは、これに限定されず、例えば、液量を光学的に検知する光学センサ等であってもよい。
【0044】
処理領域12Cは、容器100の蓋120の脱着のための蓋脱着領域であり、容器100のカセット200を固定するための固定具としての固定ピン127と、容器100から脱離した蓋120を、担持する蓋置場128とが配置されている。固定ピン127は、カセット200の固定孔に対応する形状を有しており、係合によりカセット200を固定する。蓋置場128は、蓋120に対応する形状を有し、蓋120と螺合可能に構成されている。
【0045】
図1に示す操作部13は、細胞処理システム1におけるロボット20や処理領域12A〜12Cの各機器および後述する空間15の雰囲気(環境)の制御のための操作の少なくとも一部を行うように構成されており、各種の入力部131および表示部132を有している。
【0046】
入力部131は、作業者による細胞処理システム1への指示が入力可能に構成されている。入力部131において、入力された指示は、基台10中の制御部(図示せず)に伝達され、制御部により細胞処理システム1の制御、より具体的にはロボット20や雰囲気等の制御が行われるように構成されている。なお、本実施態様では、入力部131は、複数のボタンとつまみによって構成されているが、これに限定されず、マウス、トラックボール、ペンタブレット等のポインティングデバイスや、キーボード、タッチパネルまたは、入力、出力もしくは入出力端子等の接続端子、ジョイスティックや3次元触覚/力覚インターフェイスデバイス等を適宜単独でまたは組み合わせて構成することができる。
【0047】
表示部132は、細胞処理システム1の状態や、入力された指示内容等の細胞処理システム1に関する情報を表示するディスプレイである。表示部132は、制御部と通信可能に構成され、制御部からの指示により情報を表示することができる。なお、本実施態様においては、表示部132はディスプレイであるが、これに限定されず、表示部132は、ランプ、タッチパネル等であってもよいし、これらが組み合されて構成されていてもよい。
【0048】
また、基台10には、搬入・搬出領域11の後述するシャッター32付近において、吸気口14が設けられている。吸気口14により、後述する清浄空間15内における空気が吸引されて清浄空間15が減圧状態となり、これにより、細胞処理システム1外に不本意な漏洩が発生することが防止されている。また、吸気口14と後述する給気口との間に発生する気流により、シャッター32付近においてエアカーテンが形成され、異物が細胞処理システム1外から清浄空間15内に混入することが防止される。なお、吸気口14において吸引された空気は、細胞処理システム1内に設置されたHEPAフィルター等の滅菌手段(図示せず)により適宜滅菌処理され、細胞処理システム1外に排出される。
【0049】
図3に示すように、ロボット20は、基台10の中央付近に配置された、垂直多関節型ロボットである。ロボット20は、6軸を有する。そして、ロボット20は、基台10に対して旋回可能なベース21と、ベース21に連結され、ベース21の旋回方向の垂直軸に対して傾倒可能な第1アーム22と、第1アーム22の先端側に連結され、第1アームに対して傾倒可能な第2アーム基端部23と、第2アーム基端部23の先端側に連結され、第2アーム基端部23の軸方向に対して回転可能な第2アーム先端部24と、第2アーム先端部24の先端側に連結され、第2アーム先端部24の軸方向に対して傾倒可能なハンド部25と、ハンド部25に連結された把持具(グリッパ)26とを有している。なお、ハンド部25は、その軸方向に沿って回転可能に構成されている。
【0050】
また、ロボット20は、その把持具26が、
図2中一点鎖線で表される領域に到達可能であり、したがって各処理領域12A〜12Cの所望の位置に所望の姿勢にて到達可能に構成されており、これにより、ロボット20による処理領域12A〜12Cにおける作業が可能になっている。
【0051】
また、ロボット20は、
図1に示す細胞処理システム1外に配置されたコントローラ300と制御端末400とに接続され、制御端末400より入力された指示に従って自動的に動作を行うことが可能である。
【0052】
ロボット20は、このような構成により、把持具26の位置・姿勢決めや、把持具26の回転、開閉を行うことができ、これにより、把持具26によって容器100を把持し、操作することができる。より具体的には、把持具26により容器100を把持することにより、容器100の移送、傾斜、回転を行うことができるほか、蓋120を把持して把持具26を回転させることにより蓋120を容器本体110より取り外す、または容器本体110へ取り付けることができる。
【0053】
ここで、把持具26についてより詳細に説明する。
図4に示す把持具26は、平行グリッパであり、その基端側がハンド部25に連結される把持具本体261と、把持具本体261の先端側に配置され、スライド可能な一対のガイド部材262と、ガイド部材262に固定された一対の爪部(フィンガー)263とを有している。
【0054】
把持具本体261は、その内部にアクチュエーターおよびリニアガイド(いずれも図示せず)を備え、外部からの指示および電力等の動力供給により、ガイド部材262を作動させる。ガイド部材262は、リニアガイドによりスライド方向が固定されており、ガイド部材262同士の正確な近接または離間が可能である。
【0055】
一対の爪部263は、そのそれぞれが一対のガイド部材262のそれぞれに対し一つずつ固定されており、ガイド部材262の動作に応じて、互いに近接または離間することが可能である。これにより、爪部263は容器100の少なくとも一部を把持することが可能である。
【0056】
そして、爪部263は、基端側に設けられた第1の把持部264と、第1の把持部264よりも先端側(遠位端側)に設けられた第2の把持部265とを有している。また、第2の把持部265は、第1の把持部264の把持面266同士よりもその把持面267同士の離間距離が大きくなるように構成されている。爪部263は、このように離間距離の異なる、すなわち把持幅の異なる2つの把持部を有することにより、把持具26のストロークを小さくして把持具26の寸法を小さくできるとともに、異なる大きさの物体(ワーク)を把持できる。この結果、
図6(a)〜
図6(c)に示すように、第1の把持部264により容器100の蓋120を把持し、一方で、
図5(a)〜
図5(c)に示すように、第2の把持部265により容器100の容器本体110を把持することができる。また、蓋120を把持した状態で爪部263ごと第1の把持部264を回転させることにより、容器本体110からの蓋120の取り外しや容器本体110への蓋120の取り付けが可能となる。
【0057】
また、第1の把持部264の把持面266には、滑り止め部が配置されている。これにより、第1の把持部264により蓋120をより確実に保持できるとともに、蓋120を第1の把持部264により回転させた場合においても、蓋120に対して第1の把持部264からの回転力をより確実に伝えることができる。また、この結果、例えば第1の把持部264による把持力を比較的弱いものとすることもでき、蓋120等の把持の対象となるワークの損傷が防止される。滑り止め部の構成方法としては、特に限定されないが、例えば、ゴム、エラストマー等の高摩擦係数部材を把持面に配置することにより構成するほか、把持面266にローレット加工を施すことで高摩擦とすることにより形成する方法などが採用可能である。
【0058】
また、
図4に示すように、第2の把持部265は、第1の把持部264の中心軸l付近において、その一部が省略されている。これにより、第1の把持部264によって蓋120を把持し、第1の把持部264ごと蓋120を中心軸lを回転軸として回転させた際に、第2の把持部265が容器100の容器本体110に干渉することが防止される。
なお、本明細書において、中心軸lとは、一対の第1の把持部264の把持面266の主面と平行であり、かつ、第1の把持部264の基端側から先端側に向かう、一対の把持面264からみた中心軸をいう。
【0059】
より具体的には、本実施態様においては、第2の把持部265は、第1の把持部264の把持面266の側方両端部に対応する位置に配置されている。すなわち、第1の把持部264の側方両端部より先端側に突出する4つの爪から構成され、2つの爪でそれぞれ2点を把持するように構成されている。このような構成により、
図6(c)に示すように、第2の把持部265が容器本体110に干渉することがより確実に防止される。また、
図5(c)に示すように、第2の把持部265が、複数の位置で容器本体110を把持および固定することができるため、容器本体110を第2の把持部265により把持した際に、容器本体110が回転して不本意に傾くことが防止されている。また、第2の把持部265の位置が両端にあることにより、第2の把持部265の一方(例えば下方)を基点に発生する回転モーメントに対し、第2の把持部265の他方が十分に支持することができる。
【0060】
第2の把持部265の把持面267は、滑り止め部が配置されている。これにより、第2の把持部265によって、より確実に容器100を把持することができる。また、比較的弱い把持力であっても、十分に容器100等のワークを把持することが可能となり、容器100等のワークの破損が防止される。
【0061】
図1、
図2に示す筐体30は、基台10上の基台10上の搬入・搬出領域11、処理領域12A〜12Cおよびロボット20とを覆い、基台10上の空間15を細胞処理システム1外の雰囲気から遮断するように構成されており、基台10の周縁部付近に立設された側壁31およびシャッター32ならびに側壁31およびシャッター32によって形成される空間15を上部から封する天井部33とで構成されている。
【0062】
天井部33にはHEPAフィルター等のフィルターとファン等を組み合わせたファン・フィルター・ユニット(図示せず)が内蔵されており、細胞処理システム1外から空気を吸引し、滅菌、異物を除去した上で、給気口(図示せず)より清浄な空気を空間15上に供給する。このように、基台10上を細胞処理システム1外の雰囲気から遮断しつつ、清浄な空気を供給することにより、基台10上の空間15は、清浄な雰囲気を維持した、清浄空間15となる。
なお、細胞処理システム1は、清浄空間15内の清浄度が、ISO 14644−1に準拠して、ISOクラス 1〜9、好ましくは、ISOクラス 1〜8、より好ましくは、ISOクラス 1〜7となるように構成されることができる。
【0063】
また、シャッター32は、搬入・搬出領域11に隣接して設けられた部位であり、かつ、開閉可能に構成されたスライドシャッターである。シャッター32閉鎖時においては、清浄空間15が閉鎖系となりその清浄雰囲気がより確実に保たれる。一方で、シャッター32開放時においては、細胞処理システム1と外部環境との間で搬入・搬出領域11を介した処理に用いる物の移動が可能となるほか、外部環境に存在する作業者が搬入・搬出領域11において作業を行うことが可能となる。なお、シャッター32によって形成される開口の大きさは適宜調節可能に構成されている。
【0064】
なお、筐体30を構成する側壁31およびシャッター32のいずれも透明な材料、例えば樹脂を用いて形成されており、これらを介して、筐体30内の観察が可能である。
作業部40A〜40Dは、筐体30の側壁31に沿って配置されている、筐体30外から手動での筐体30内、すなわち清浄空間15における作業が可能に構成された器具・用具である。本実施態様においては、作業部40A〜40Dは、側壁31を貫通するように配置された一対のグローブである。これにより、細胞処理システム1外に存在する作業者は、作業部40A〜40Dを用いて清浄空間15内において、容器100を用いた細胞の処理に必要な物の移送や、処理のための準備を行うことが可能である。
【0065】
また、
図2中点線で示される、この作業部40A〜40Dの作業可能な領域、すなわち作業領域41A〜41Dは、処理領域12A〜12Cのいずれか、および/または搬入・搬出領域11と重複している。具体的には、作業部40Aは、その作業領域41Aが搬入・搬出領域11と処理領域12A、12Bと重複している。作業部40Bは、その作業領域41Bが処理領域12Bと重複している。作業部40Cは、その作業領域41Cが搬入・搬出領域11と処理領域12Cと重複している。作業部40Dは、その作業領域41Dが処理領域12Cと重複している。
【0066】
さらに、作業部40B、40Dの作業領域41B、41Dは、搬入・搬出領域11と重複していないが、一方で、それぞれ隣り合う作業部40A、40Cの作業領域41A、41Cと重複している。これにより、作業領域41B、40Dは、その作業領域41B、41Dが搬入・搬出領域11と重複していないものの、重複する作業部40A、40Cの作業領域41A、41Cを介して、処理に用いられる物の移動が可能に構成されている。
【0067】
以上のような作業部40A〜40Dにより、いずれの処理領域12A〜12Cにおいても手動で処理の準備、すなわち、処理に用いる物の搬入・搬出や当該物の設置等が可能となっている。各処理の準備は、一般に複雑であるが、このような作業を手動で行うことにより、細胞処理システム1の装置構成を比較的単純なものとすることができる。また、例えば、交換に必要な培地の量の確認や、処理に用いる各機器の設置状況の確認等については、センサ等を具備する装置を導入して行うよりも、作業者によって手動で行う方が簡便である。一方で、蓋120の脱着、取り付けや、液体(培地)の廃棄、分注といった反復が必要な比較的単純な処理については、ロボット20により迅速かつ正確に作業を行うことが可能である。
【0068】
細胞処理システム1においては、繰り返す必要のある比較的単純な作業をロボット20を含む細胞処理システム1が自動的に行い、他の作業に関しては、作業者が行うように構成されている。このように行われる作業をその種類に応じて、作業者とロボット20とで分担することにより、細胞処理システム1において行われる処理を含む作業を効率化できるとともに、細胞処理システム1の装置構成を比較的単純なものとすることができる。
【0069】
特に、把持具26が、上述したような離間距離の異なる第1の把持部264と第2の把持部265とを有し、第2の把持部265の一部が第1の把持部264の中心軸l付近において省略されていることにより、容器本体110、蓋120といった大きさの異なるワークを同一の把持具26により、把持できるとともに、第1の把持部264により蓋120を回転させた場合においても第2の把持部265と容器本体110とが干渉することが防止される。この結果、大きさの異なるワークのために複数のロボットを設置したり、把持具のストロークを大きくするために把持具の機構を大きくし、この結果ロボット全体の大きさが大きくなるといったことが防止される。したがって、把持具26のような構成を採用することにより、細胞処理システム1の構成を単純化することができる。
【0070】
次に、上述した細胞処理システム1を用いた、本実施態様の細胞処理方法および液体移送方法について説明する。
図9、10は本発明の第1実施態様にかかる細胞処理方法を説明するフローチャート、
図11は本発明の第1実施態様にかかる細胞処理方法を説明する模式図、
図12は本発明の第1実施態様にかかる液体移送方法を説明する模式図、
図13は従来の液体移送方法を説明する模式図、
図14は本発明の第1実施態様にかかる細胞処理方法を説明する模式図である。
【0071】
なお、細胞処理システム1は、培地の交換に用いられる物であるため、本実施態様においては、交換する液体は培地である。また、用いられる容器100中には、培地Lによって培養されたシート状の細胞培養物(細胞組織)114が、主面113の内壁面において担持されている(付着している)ものとして説明する。
【0072】
また、本実施態様の細胞処理方法は、細胞の処理に関し、
1)処理する順序が決定されたn個(ただし、nは2以上の整数)の容器を配置するステップと、
2)ロボットによりi番目(ただし、iは、整数であり、2≦i≦nである。)に処理される容器の蓋を容器本体から取り外し、i−1番目に処理される容器の容器本体に取り付けるステップと、
3)i番目に処理される容器を用いて処理を行うステップと、
を有する。
【0073】
また、本実施態様の液体移送方法は、
a)液体を保持する容器をロボットの把持具により把持するステップと、
b)把持した容器を回転させることにより、容器中の液体を回収容器に移送するステップとを有し、
ステップa)およびb)においてロボットが、回収容器の開口の鉛直線上を通過しないように動作するものである。
【0074】
以下、詳細に説明する。
まず、細胞処理システム1およびこれに用いる周辺システム(例えば、コントローラ300および制御端末400)について電源を投入し、細胞処理システム1を起動させる(S−1)。
次に、分注領域である処理領域12Aにおいて、分注を行うための機器、材料の設置、準備を行う(S−2)。より具体的には、搬入・搬出領域11上に基材、材料を配置し、その後、搬入・搬出領域11において作業者が直接または作業部40Aにより、分注ポンプ121、培地貯留容器122、チューブ123、液量センサ124を設置する。また、設置後、必要に応じて、プライミングを行う。
【0075】
次に、培地回収領域である処理領域12Bにおいて、培地を回収するための機材の設置、準備を行う(S−3)。具体的には、搬入・搬出領域11に回収容器125とセンサ126とを配置し、その後、作業部40Aによってこれらを処理領域12Bに移送する。その後、作業部40Aまたは作業部40Bによって、回収容器125とセンサ126とを設置する。
【0076】
次に、蓋脱着領域である処理領域12Cにおいて、蓋脱着のための準備を行う(S−4)。具体的には、カセット200に培地を含んだ容器100を複数配置し、カセット200を搬入・搬出領域11に一旦配置する。その後、作業部40Cによってカセット200を処理領域12Cに移送する。その後、作業部40Cまたは作業部40Dによって、カセット200を、固定ピン127に固定することにより処理領域12Cに固定する。
なお、分注領域である処理領域12Aや培地回収領域である処理領域12Bにおける各機器・器具も必要に応じて、固定ピンなどにより、所定の位置決め精度を有する範囲で固定する。
【0077】
また、本実施態様においては、ロボット20は、カセット200の凹部201の位置によって、処理される容器100の優先順位を決定するように構成されている。したがって、容器100をカセット200に配置することにより、容器100の処理される順序が決定される。そして、カセット200を処理領域12Cに固定することにより、本実施態様にかかるステップ1)を行うことができる。
【0078】
次に、制御端末400により指示の入力を行って、コントローラ300を作動させ(S−5)、ロボット20を含む細胞処理システム1による自動作業を実行させる(S−6)。これにより、ロボット20を含む細胞処理システム1は、指示に従い、所定の動作を自動的に行い、各容器100中の培地を交換する。
なお、ロボット20の動作(S−6)は、
図10に示すフローチャートに沿って行われる。
【0079】
まず、i番目(最初はi=1)に処理される容器100の蓋120を容器本体110から取り外す。具体的には、カセット200上の処理される容器100上に把持具26をロボットにより移動させる(A−1)。次に、把持具26の第1の把持部264により蓋120を把持する(A−2)。次に、把持具26を回転させることにより蓋120を所定回数回転させて、蓋120と容器本体110との間の螺合を解除する(A−3)。通常、回転方向は、把持具26から蓋120を見た際に反時計回りとなる。また、回転の回数は、螺合を解除するのに十分な回数に設定されている。次に、螺合が解除された状態の蓋120を把持具26により上方に持ち上げる。これにより、蓋120が容器本体110から取り外される。
【0080】
次に、把持具26により取り外した蓋120を所定の位置に配置する。
i=1の場合、
図11(a)に示すように、蓋120を把持した把持具26を蓋置場128上方へ移動させ(A−4)、蓋置場128と蓋120とを接触させた状態で所定回数回転させ、蓋置場128と蓋120とを螺合させる(A−5)。その後、把持具26による蓋120の把持を解除する。
【0081】
一方で、iが2以上の場合、
図11(b)、(c)に示すように、取り外した蓋120をi−1番目に処理した容器本体110へ取り付ける(ステップ2))。例えば、iが2の場合には、
図11(b)に示すように、2番目に処理する容器100の蓋120を1番目に処理した容器本体110に取り付け、
図11(c)に示すように、3番目に処理する容器100の蓋120を2番目に処理した容器本体110に取り付ける。
【0082】
これにより、処理のために蓋120を取り外す動作と、処理後に蓋120を取り付ける動作とを同時に行うことができる。このため、蓋120を取り外した際に、一旦蓋置場128へ配置し、その後蓋置場128から容器本体110へと取り付けるといった動作をその都度行うことを省略できる。したがって、蓋120の取り外しおよび取り付けに必要な動作経路および作業時間を短縮できるとともに、蓋120の内面が外部環境に暴露される時間が短くなることから汚染が防止される。この結果、細胞処理システム1を用いた細胞処理方法全体としての信頼性が向上する。
【0083】
具体的には、蓋120を把持した把持具26をi−1番目に処理した容器本体110の開口部上方へ移動させ(A−6)、当該開口部と蓋120とを接触させた状態で所定回数回転させ、容器本体110と蓋120とを螺合させる(A−7)。その後、把持具26による蓋120の把持を解除する。
【0084】
次に、蓋120を取り外した容器100に関し、処理を行う(ステップ3))。本実施態様においては、容器本体110中の培地(液体)Lを廃棄し、容器100へ新鮮な培地を注入することにより、容器100中の培地を交換する。
【0085】
処理については、まず、容器本体110を把持する(ステップa))。具体的には、把持具26を容器本体110の側方に移動させ(A−8)、側方より容器本体110を把持具26の第2の把持部262により把持する(A−9)。なお、このように把持具26が容器本体110の側方を把持することにより、把持具26を初めとするロボット20が容器本体110の開口上を通過することが防止される。また、把持具26を容器本体110の側方に移動させる際にも把持具26を初めとするロボット20が容器本体110の開口を通過しないように移動することが好ましい。この結果、ロボット20に付着した粉塵等が容器本体110中に不本意に落下することが防止される。
その後、容器本体110を培地回収領域である処理領域12Bの回収容器125付近に移送する(A−10)。
【0086】
次に、把持した容器本体110を回転させることにより、容器本体110中の培地Lを回収容器125に移送する(ステップb)、A−11)。本実施態様においては、
図12(a)〜(g)に示すように、容器本体110の回転は、容器本体110を把持具26の回転軸と平行な軸を中心軸として同一方向に回転させることにより行う。
【0087】
一般に、手作業によって容器本体110から培地Lを回収容器125に移送する場合には、
図13(a)〜(e)に示すように、容器本体110を一旦傾けて培地Lを排出した際に通常容器本体110を傾けた方向とは逆の方向に返すことにより(
図13(d))、容器本体110の開口111を鉛直方向上方に向ける。この場合において、培地Lが容器本体110の開口111の傾けた下方付近に残りやすく、容器本体110の開口111から開口111外に培地Lが垂れる、いわゆる液だれが起こる場合がある(
図13(e))。このような場合、液だれにより流出した培地Lを起点とした容器110内の汚染が生じやすい傾向にある。
【0088】
これに対し、本実施態様においては、一旦開口111の傾けた下方付近に残存した培地Lは、容器本体110を同一方向に回転させることにより、開口111も上下反転するため開口111上方付近に位置することになる(
図12(e)、(f))。これにより、開口111の外周壁面に培地Lが移行して、液だれが生じることが防止される(
図12(g))。
なお、容器本体110は、ロボット20により把持具26の回転軸と平行な軸を中心軸として回転するように構成されているが、このような軸を中心軸とすることにより、ロボット20による360°の同一方向への容器本体110の回転が可能となっている。
【0089】
また、容器本体110の回転を、並進運動を伴いつつ行ってもよい。これにより、容器本体110の開口111が回収容器125の開口付近に配置させることが可能となり、培地Lの回収容器125への移送がより容易かつ確実となる。
【0090】
さらに、容器本体110の回転を行って、開口111が鉛直方向下方近傍を向いた時点で、容器本体110を上下に往復させることが好ましい。このような動作が行われることにより、培地Lをより確実に容器本体110から回収容器125へ移送することができる。
【0091】
また、回収容器125の下方にあるセンサ126は、回収した培地Lの量を測定することができる。このため、適正に培地Lの移送が行われたか否か、また、容器本体110中の細胞培養物に異常がないか等の問題を培地Lの量より推測することが可能となる。
【0092】
なお、本実施態様においては、上記の培地の廃棄処理において、すなわち、ステップa)およびb)において、ロボット20は、回収容器125の開口の鉛直線上を通過しないように動作するように構成されている。これにより、ロボット20に付着した粉塵や摩耗粉等の異物が回収容器125に混入することが防止される。回収容器125内の培地を分析して容器100中の細胞培養が正常に行われているかを分析する際に、このような異物が存在すると分析を阻害する可能性があるが、本実施態様においては、このような異物の混入が防止されることにより、細胞処理システム1および細胞処理方法は、信頼性が高いものとなる。
【0093】
以上のようにして、培地Lを容器本体110から回収容器125へ移送した後、容器本体110に新鮮な培地Lを分注する。具体的には、まず、容器本体110を把持具26によって把持したまま、分注領域である処理領域12Aに移送する(A−12)。次に、分注ポンプ121を作動させ、チューブ123を介して、容器本体110へ新鮮な培地Lを所定量分注する(A−13)。なお、分注量は、液量センサ124により経時的に測定されており、これにより最終的な分注量が管理される。
【0094】
なお、チューブ123から供給される培地Lが直接的に容器本体110内の細胞培養物114と接触しないように分注を行うことが好ましい。例えば、
図14に示すように、細胞培養物114が容器本体110の一方の主面113において培養され、付着している場合、主面113が上面に、主面112が下面となるように、容器本体110を傾けた状態で、開口111から培地Lを供給することが好ましい。これにより、細胞培養物114の不本意な損傷や剥離が防止される。
【0095】
次に、容器本体110をカセット200の上方に移送し(A−14)、その後カセット200の凹部201の下の位置に配置する(A−15)。
【0096】
以上のA−1〜A−13をiが1から容器100の数であるnとなるまで繰り返すことにより、各容器100の培地Lの交換を自動的に行うことができる。
【0097】
なお、一旦新鮮な培地Lを分注した容器本体110は、凹部201に配置され次第、次に処理される容器100の蓋120が取り付けられる(A−7)。
また、次に処理される容器100が存在しない場合、すなわち、n番目に処理される容器100については、蓋置場128に配置された蓋120が取り付けられる。
【0098】
具体的には、蓋置場128上に把持具26を移動させ(A−16)、把持具26の第2の把持部264において、蓋置場128に配置された蓋120を把持する(A−17)。次に、蓋120を把持具26を回転させることにより回転させ、蓋置場128と蓋120との螺合を解除する(A−18)。次に、蓋120を容器本体110上に配置し、容器本体110の開口111に蓋120を接触させた状態で蓋120ごと把持具26を回転させ、蓋120と容器本体110とを螺合させる(A−19)。
【0099】
なお、上述したロボット20を用いた自動作業は、一定の条件下、例えば、カセット200上の全ての容器100について処理が終了した場合、回収容器125に所定量以上の培地が移送された場合、培地貯留容器122中の培地Lが所定量以下になった場合、その他予期せぬ事象が発生した場合には、停止し、このような条件が発生していない場合には自動作業を継続するように構成されている(S−7)。
【0100】
この場合において、作業者は、例えば、まず、カセット200上の全ての容器100について処理が終了したか否か、また、細胞処理システム1上にない他の処理すべき容器100が存在するか否かを確認する(S−8)。
処理すべき容器100が存在する場合には、次に培地Lが培地貯留容器122中に存在するか否かを確認し(S−9)、存在しない場合には、培地Lを培地貯留容器122に追加するか、培地貯留容器122を新規の培地Lが充填されたものと交換する(S−10)。
【0101】
次に、回収容器125中に培地Lが所定量存在するか否かを確認し(S−11)、存在する場合には、培地Lを他の容器移し替えて廃棄するか、回収容器125を新たな回収容器125と交換する(S−12)。
次に、カセット200を回収し、処理を終えた容器100を回収するとともに、残りの容器100をカセット200に追加して、上記S−4を実行する。
【0102】
また、S−7において処理すべき容器100が存在しない場合には、処理領域12Aにおいて、分注を行うための機器、材料の取り外し、撤去を行い(S−13)、処理領域12Bにおいて、回収した培地Lを廃棄するとともに、機材の撤去を行い(S−14)、処理領域12Cにおいて、カセット200の撤去を行う(S−15)。
その後、細胞処理システム1の電源を切断して、作業を終了する(S−16)。
【0103】
以上、本実施態様に係る方法によれば、効率よく細胞の処理を行うことができる。
特に、培地の廃棄処理において、ロボット20が、回収容器125の開口の鉛直線上を通過しないように動作するように構成されていることにより、回収した培地Lの分析が容易となり、細胞処理の信頼性を向上させることができる。
また、特に、処理のために蓋120を取り外す動作と、処理後に蓋120を取り付ける動作とを同時に行うことにより、蓋120の取り外しおよび取り付けに必要な動作経路および作業時間を短縮できるとともに、蓋120の内面が外部環境に暴露される時間が短くなることから汚染が防止される。この結果、細胞処理システム1を用いた細胞処理方法全体としての信頼性が向上する。
【0104】
〔第2実施態様〕
次に、本発明の第2実施態様について説明する。
図15は、本発明の第2実施態様に係る細胞処理システムの断面図である。なお、図中、細胞処理システム1の構成と同一の構成については、同一の符号を付している。
【0105】
以下、本実施態様の第1実施態様との相違点について詳細に説明し、同様の事項については、説明を省略する。
図15に示す本実施態様に係る細胞処理システム1Aは、主に、容器100中で培養された細胞培養物の剥離のためのシステムである点で、第1実施態様に係る細胞処理システム1と相違する。
【0106】
本実施態様における基台10Aは、培地の分注領域である処理領域12Aに代えて同様の位置に、緩衝液を分注する処理領域12Dが、また、基台10Aの搬入・搬出領域11からみて奥側に細胞解離剤を分注する処理領域12Eが配置されている。
【0107】
処理領域12D、12Eには、それぞれ、分注ポンプ121A、121Bと、貯留容器122A、122Bと、チューブ123A、123Bと、液量センサ124A、124Bと、が配置される。分注ポンプ121A、121B、貯留容器122A、122B、チューブ123A、123B、液量センサ124A、124Bは、それぞれ、用いる液体が異なる以外は、分注ポンプ121、培地貯留容器122、チューブ123、液量センサ124と同様の構成を有している。
【0108】
処理領域12Dにおいて分注される緩衝液としては、特に限定されないが、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酒石酸緩衝液、トリス緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等が挙げられる。
また、処理領域12Eにおいて分注される細胞解離剤としては、特に限定されないが、コラゲナーゼ、トリプシン、ディスパーゼ、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、アクターゼ等が挙げられる。また、細胞解離剤は、これらの成分が溶解または分散した液体組成物であってもよい。
【0109】
また、基台10Aの搬入・搬出領域11とは反対側中央、すなわち、搬入・搬出領域11からみて奥側の中央の側壁に、作業部40Eが設置されている。
作業部40Eは、その作業領域41Eが、作業部40Bの作業領域41B、作業部40Dの作業領域41Dとそれぞれ重複している。これにより、作業部40Eは、作業部40A、作業部40Bとの間でそれぞれ処理に用いられる物の移動が可能に構成されている。このため、搬入・搬出領域11から、作業部40Aおよび40B、または作業部40Cおよび40Dを介して、処理に用いられる物を受け取ることが可能に構成されている。また、作業部40Bまたは40Dからの物を作業部40Dまたは40Bに受け渡すことも可能である。
【0110】
また、作業部40Bおよび40Eは、その作業領域41Bおよび41Eが処理領域12Eと重複しており、処理領域12Eでの作業が可能に構成されている。したがって、このような細胞処理システム1Aにおいて、処理領域12Dにおける作業は、搬入・搬出領域11からまたは作業部40Aを用いて、処理領域12Eにおける作業は、作業部40Bまたは作業部40Eを用いて行うことが可能である。
【0111】
次に、上述した細胞処理システム1Aを用いた、本実施態様の細胞処理方法について説明する。なお、本実施態様の方法は、第1実施態様の方法と比較して、処理領域12Aにおける処理に代えて処理領域12D、12Eにおける処理を行うものである。したがって、この点に関して中心的に説明し、同様の事項については説明を省略する。
【0112】
上述したように、細胞処理システム1Aは、処理領域12Aに代えて、処理領域12D、12Eを有するものであるため、上述した第1実施態様におけるS−2の処理領域12Aにおける作業に代えて、処理領域12D、12Eにおいて、緩衝液および細胞解離剤の分注を行うための機器、材料の設置、準備を行う。また、同様に、上述した第1実施態様におけるS−9、S−10の処理領域12Aにおける作業に代えて、処理領域12D、12Eにおいて、緩衝液および細胞解離剤を必要に応じて追加する。また、上述した第1実施態様におけるS−13の処理領域12Aにおける作業に代えて、処理領域12D、12Eにおいて、緩衝液および細胞解離剤の分注を行うための機器、材料の取り外しおよび撤去を行う。
【0113】
また、細胞処理システム1Aによる自動作業については、以下の順序で行われる。
まず、第1実施態様のA−1〜A−7と同様の動作で、容器100の蓋の取り外しを行う。
【0114】
次に、第1実施態様のA−8〜A−11と同様の動作で、容器本体110中に存在する培地Lを回収容器125に移送する。
次に、処理領域12Dにおいて、容器本体110中に緩衝液を分注する。この動作は、第1実施態様のA−12、A−13と同様にして行うことができる。
【0115】
次に、分注した緩衝液を用いて、容器本体110中に存在する細胞培養物114をゆすぐ(リンスする)。この動作は、例えば、把持具26を用いて、容器本体110の主面113が下面となるように容器本体110を回転させ、その後、容器本体110を水平に振動させる(往復させる)ことにより行うことができる。
【0116】
次に、第1実施態様のA−8〜A−11と同様の動作で、容器本体110中に存在する緩衝液(リンス後のリンス液)を回収容器125に移送する。
次に、処理領域12Eにおいて、容器本体110中に細胞解離剤を分注する。この動作は、第1実施態様のA−12、A−13と同様にして行うことができる。
【0117】
次に、第1実施態様のA−14、A−15と同様の動作で、カセット200に容器100を配置する。
以上の動作を繰り返し、全ての容器100について処理を終えたのちに、A−16〜A−19の動作と同様にして最後に処理した容器本体110に蓋を取り付ける。
【0118】
他の作業については、上述した第1実施態様の方法と同様にして行うことができる。
また、上記の処理を終えた各容器100については、作業者により、細胞の解離反応に供することが可能である。
以上、本実施態様に係る細胞処理システムおよび方法によっても、第1実施態様と同様の効果を得ることができる。
【0119】
〔第3実施態様〕
次に、本発明の第3実施態様について説明する。
図16は、本発明の第3実施態様に係る細胞処理システムの断面図、
図17は、
図16に示す細胞処理システムにおいて用いられる容器のカセットの一例を示す模式図である。なお、図中、細胞処理システム1の構成と同一の構成については、同一の符号を付している。
【0120】
以下、本実施態様の第1実施態様との相違点について詳細に説明し、同様の事項については、説明を省略する。
図16に示す本実施態様に係る細胞処理システム1Bは、主に、容器100に細胞を播種するためのシステムである点で、第1実施態様に係る細胞処理システム1と相違する。
【0121】
本実施態様における基台10Bは、培地の分注領域である処理領域12Aに代えて同様の位置に、細胞を播種するための処理領域12Fが、処理領域12Cと同様の位置に蓋脱着のための処理領域12Gが、搬入・搬出領域11内に容器100の置き場としての処理領域12Hが、それぞれ配置されており、一方で、培地回収領域としての処理領域12Bは省略されている。
【0122】
処理領域12Fには、分注ポンプ121Cと、貯留容器122Cと、チューブ123Cと、液量センサ124Cと、が配置される。分注ポンプ121C、貯留容器122C、チューブ123C、液量センサ124Cは、それぞれ、用いる液体が異なる以外は、分注ポンプ121、培地貯留容器122、チューブ123、液量センサ124と同様の構成を有している。
処理領域12Fにおいて分注される液体は、細胞を含むものであれば特に限定されないが、例えば、上述した細胞が培地、緩衝液等の液体に懸濁した懸濁液である。
【0123】
また、処理領域12Gは、蓋置場128に加え、固定台129を備えている。固定台129は、容器本体110を固定するための台であり、容器本体110の底面に対応した凹部である固定孔1291が設けられている。固定孔1291に容器本体110を配置した場合において、容器本体110の開口111は、鉛直方向上方を向くように構成されており、また、把持具26により蓋120を回転させる際には、固定孔1291が容器本体110を回転しないように固定台129に固定するように構成されている。
【0124】
処理領域12Hには、固定ピン127Aが配置されている。この固定ピン127Aは、回転可能に構成されており、かつ、カセット200Aと係合可能である。そして、基台10B中に配置された駆動機構により、ロボット20の動作に合わせてカセット200Aとともに回転することができる。
【0125】
カセット200Aは、
図17に示すように円盤状をなしており、その中央裏面には、固定ピン127Aと係合可能な孔が設けられている。また、カセット200Aは、放射線状に凹部201Aが複数形成されている。凹部201Aは、容器100の底面に対応する形状を有し、容器本体110が平面視にてその長軸がカセット200Aに対し放射線状に配置されるように構成されている。
【0126】
このような処理領域12Hおよびカセット200Aの構成により、処理に用いられる容器100をロボット20に近い場所に適宜移動させることが可能である。したがって、ロボット20の動作の単純化が可能となり、処理が効率化される。
【0127】
次に、上述した細胞処理システム1Bを用いた、本実施態様の細胞処理方法について説明する。なお、本実施態様の方法と第1実施態様の方法と相違点に関して中心的に説明し、同様の事項については説明を省略する。
【0128】
まず、上述した第1実施態様と同様の操作により、処理領域12F、12Hにおいて細胞の播種のために必要な機器、材料の設置、準備を行う。
【0129】
また、細胞処理システム1Bによる自動作業については、以下の順序で行われる。
まず、容器100の蓋の取り外しを行う。これに関しては、まず、把持具26の第2の把持部262によりカセット200に配置された容器本体110の側方より容器100を把持する。
次に、把持した容器100を処理領域12Gの固定台129の固定孔1291に配置する。
次に、上述したA−1〜A−7と同様に、固定孔129に配置した容器100の蓋120を取り外し、所定の場所に配置する。
【0130】
次にA−8、A−9と同様にして容器本体110を把持し、細胞の播種のための処理領域12Fに容器本体110を移送する。
次に、分注ポンプ121Cを作動させ、チューブ123Cを介して、容器本体110へ細胞を含む液体を所定量分注する。
【0131】
その後、A−14、A−15と同様にして、容器本体110をカセット200Aの凹部201Aに配置する。
以上の動作を繰り返し、全ての容器100について処理を終えたのちに、A−16〜A−19の動作と同様にして最後に処理した容器本体110に蓋を取り付ける。
【0132】
他の作業については、上述した第1実施態様の方法と同様にして行うことができる。
以上、本実施態様に係る細胞処理システムおよび方法によっても、第1実施態様と同様の効果を得ることができる。
【0133】
なお、上述した第1実施態様〜第3実施態様の変形例としては、たとえば、
図18に示すように、蓋置場128Aとして他の容器100の容器本体110と同一の容器本体110を採用し、基台に設置する蓋置場を省略する例が挙げられる。このような場合、容器100の形状が変更された場合であっても、同一種の容器100利用することにより、蓋置場を容易に準備することができる。すなわち、容器100の形状にかかわりなく、細胞処理システムを利用することが可能となる。
【0134】
また、他の変形例としては、把持具について、力覚センサを搭載させたものが挙げられる。このような場合、容器の重量を感知できるため、分注のための機器として重量センサ等のセンサを用いなくても、力覚センサにより分注量を測定することが可能となる。すなわち、分注のための処理領域において、センサを省略することも可能である。また、力覚センサを採用することにより、たとえば、把持具が容器に接触したか否かを判断することができる。この結果、たとえば、把持具が容器に接触したことを確認して、把持に適切な位置に把持具を配置させ、把持をより確実なものとすることも可能である。
【0135】
また、上述した各実施態様においては、把持具が平行グリッパであるものとして説明したが、回転グリッパ、片側可動グリッパ、両側可動グリッパ等各種グリッパを使用することが可能である。
【0136】
また、把持具の形状は、適宜変更可能である。
例えば、
図19に示す把持具26Aにおいて、第1の把持部264Aの把持面266Aの中心付近においては、軸方向に沿って、凹部2661が配置されている。凹部2661は、その断面形状がv字型に形成されており、これにより第1の把持部264Aにより、蓋120を把持した際に、第1の把持部264Aと蓋120との接触面積が増加する。このため、第1の把持部264Aにより蓋120をより確実に保持できるとともに、蓋120を第1の把持部264Aにより回転させた場合においても、蓋120に対して第1の把持部264Aからの回転力をより確実に伝えることができる。
また、例えば、把持具の第2の把持部は、第1の把持部の一方の端部のみに設けられていてもよい。
【0137】
また、各処理領域の作業者による準備および機器、材料の撤去は、その順序を適宜変更することができる。したがって、例えば、第1実施態様にかかる細胞処理方法のS−2〜S−4、S−9〜S−12、S−13〜S−15のそれぞれにおいて、各ステップの順序は変更可能である。
【0138】
以上、本発明を図示の実施態様について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明においては、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成を付加することもできる。