(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電解質層と、該電解質層を間に挟むように配置された空気極及び燃料極とを有し、酸化剤ガス及び燃料ガスを用いて発電する平板状の単セルが、該単セルの厚み方向に沿って複数個積層された燃料電池スタックにおいて、
前記燃料電池スタックの積層方向における少なくとも一方の端部に、前記燃料電池スタックの内部で熱交換された前記酸化剤ガス及び前記燃料ガスのうち少なくとも一方のガスを溜めるガス溜め室を備え、
前記ガス溜め室は、一部に開口部を有する周囲が閉ざされた空間であるとともに、前記開口部は、前記酸化剤ガス及び前記燃料ガスのうち少なくとも一方のガスが供給されるガス供給路にのみ開口するように形成されていることを特徴とする燃料電池スタック。
前記燃料電池スタックの積層方向における両方の端部に、前記酸化剤ガス及び前記燃料ガスのうち少なくとも一方のガスを溜める前記ガス溜め室を備えたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池スタック。
前記燃料電池スタックの積層方向における両方の端部の前記ガス溜め室のうち、一方のガス溜め室に前記酸化剤ガスを溜め、他方のガス溜め室に前記燃料ガスを溜める構成を有することを特徴とする請求項2に記載の燃料電池スタック。
前記ガス溜め室は、一部に開口部を有する周囲が閉ざされた空間であるとともに、前記開口部は、前記ガスが供給されるガス供給路に1箇所開口するように形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池スタック。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明が適用された燃料電池スタックとして、固体酸化物形燃料電池スタックを例に挙げて説明する。
【実施例1】
【0033】
a)まず、本実施例の燃料電池スタックの概略構成について説明する。
なお、以下の各図面においては、酸化剤ガスは「O」で示し、燃料ガスは「F」で示す。また、「IN」はガスが導入されることを示し、「OUT」はガスが排出されることを示す。また、以下の記載で方向を示す「上」及び「下」とは、
図1及び
図2における「上方」及び「下方」と同じである。
【0034】
図1及び
図2に示す様に、本実施例の固体酸化物形燃料電池スタック(以下単に燃料電池スタックと記す)1は、燃料ガス(例えば水素)と酸化剤ガス(例えば空気、詳しくは空気中の酸素)との供給を受けて発電を行う装置である。
【0035】
この燃料電池スタック1は、
図1及び
図2の上下方向の両端に配置されたエンドプレート3、5の間に、後に詳述するように、層状の複数(例えば24段:各図では段数を簡略化してある)の燃料電池の発電単位7、層状の熱交換部10、層状の第1ガス溜め室20及び第2ガス溜め室30が積層された構成を有している。なお、発電単位7は、燃料ガスと空気との供給を受けて発電する最小の構成単位である。
【0036】
つまり、燃料電池スタック1は、熱交換部10の上方及び下方にそれぞれ複数の発電単位7が積層されるとともに、上端の発電単位7の上部に第1ガス溜め室20を備え、下端の発電単位7の下部に第2ガス溜め室30を備えている。
【0037】
ここで、熱交換部10の上方に配置された複数(例えば12段)の発電単位7からなる部分を上スタック本体2aと称し、熱交換部10の下方に配置された複数(例えば12段)の発電単位7からなる部分を下スタック本体2bと称する。
【0038】
図1に示すように、エンドプレート3、5、各発電単位7、熱交換部10、第1ガス溜め室20、第2ガス溜め室30を構成する部材には、それらを積層方向(
図1の上下方向)に貫く複数(例えば8個)の貫通孔9が設けられ、その貫通孔9に配置された各ボルト11(11a、11b、11c、11d、11e、11f、11g、11h)とボルト11に螺合する各ナット13とによって、エンドプレート3、5と各発電単位7と熱交換部10と第1、第2ガス溜め室20、30とが一体に固定されている。
【0039】
また、ボルト11のうちの特定(5本)のボルト11a、11b、11d、11f、11hには、
図3に示すように、軸方向(即ち積層方向)に沿って、空気又は燃料ガスが流れる内部流路14が形成されており、この内部流路14と、各ボルト11a、11b、11d、11f、11hが挿通される各貫通孔9とは、各ガスの通過が可能な連通孔15により連通している。
【0040】
更に、各発電単位7には、その厚み方向の中央部分に、板状の単セル17が配置されている。単セル17の一方の側(
図3上方)に、空気が流れる空気流路19(
図3では矢印で空気の流れを示している)が設けられているとともに、単セル17の他方の側(
図3下方)に、燃料ガスが流れる燃料流路21が設けられている。なお、燃料流路21は、紙面と垂直方向の流路である。
【0041】
このうち、単セル17は、いわゆる燃料極支持膜形タイプの構造を有しており、薄膜の固体電解質層23と、その一方の側(
図3上方)に形成された薄膜の空気極層(カソード)25と、他方の側(
図3下方)に形成された燃料極層(アノード)27とを備えている。
【0042】
b)次に、発電単位7と熱交換部10と第1、第2ガス溜め室20、30との構成について、詳しく説明する。
図4及び
図5に示すように、発電単位7は、金属製のインターコネクタ31と、空気極絶縁フレーム33と、(単セル17が接合された)金属製のセパレータ35と、金属製の燃料極フレーム37と、燃料極絶縁フレーム39と、金属製のインターコネクタ41等が積層されものである。
【0043】
また、空気極絶縁フレーム33の枠内の空気流路19には、空気極側集電体43が配置され、燃料極絶縁フレーム39の枠内の燃料流路21には、燃料極側集電体45が配置されている。
【0044】
特に、本実施例1では、
図4に示すように、上スタック本体2aの上端の発電単位7には、その上端(
図4上方の外側の端面)に、第1ガス溜め室20を構成するために、金属製のガス溜め室フレーム53とガス溜め室フレーム53の上方を覆う前記エンドプレート3とが配置されている。
【0045】
同様に、
図5に示すように、下スタック本体2bの下端の発電単位7には、その下端(
図5下方の外側の端面)に、第2ガス溜め室30を構成するために、同様に、金属製のガス溜め室フレーム63とガス溜め室フレーム63の下方を覆う前記エンドプレート5とが配置されている。
【0046】
ここで、エンドプレート3、5は、積層される発電単位7を押圧して保持するとともに、第1、第2ガス溜め室20、30の蓋となる板材であり、発電単位7からの電流の出力端子でもある。なお、エンドプレート3、5は、導電性を有する板材(例えばステンレス鋼等の金属板)からなる。
【0047】
以下、各構成について、更に詳しく説明する。
まず、上述した単セル17を構成する空気極層25、固体電解質層23、燃料極層27について説明する。
【0048】
空気極層25としては、La、Pr、Sm、Sr、Ba、Co、Fe、Mnを含有する複合酸化物(La
1−xSr
xCoO
3系複合酸化物、La
1−xSr
xFeO
3系複合酸化物、La
1−xSr
xCo
1−yFe
yO
3系複合酸化物、La
1−xSr
xMnO
3系複合酸化物、Pr
1−xBa
xCoO
3系複合酸化物、Sm
1−xSr
xCoO
3系複合酸化物)などを使用できる。
【0049】
固体電解質層23としては、ジルコニア系、セリア系、ペロブスカイト系の電解質材料が挙げられる。ジルコニア系材料では、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)、及びカルシア安定化ジルコニア(CaSZ)を挙げることができ、一般的には、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)が使用される例が多い。セリア系材料では、いわゆる希土類元素添加セリアが、ペロブスカイト系材料では、ランタン元素を含有するペロブスカイト型複酸化物が使われる。
【0050】
燃料極層27としては、金属が好ましく、Ni及びNiとセラミックとのサーメットやNi基合金を使用できる。
また、前記
図4及び
図5に示すように、インターコネクタ31、41は、導電性を有する板材(例えばステンレス鋼等の金属板)からなる。このインターコネクタ31、41は、単セル17間の導通を確保し、且つ、単セル17間(従って発電単位7間)でのガスの混合を防止するものである。
【0051】
空気極絶縁フレーム33は、四角枠状の部材であり、軟質マイカ、バーミキュライト、MgO、Al
2O
3などからなる絶縁板である。この空気極絶縁フレーム33には、(平面視で)その中央部に厚み方向に貫通する空間部33aが形成されている。また、空気極絶縁フレーム33の対向する一対の貫通孔9(9d、9h)には、それぞれ長尺の連通孔33bが連通するように設けられ、更に、各連通孔33bと空間部33aとを連通するように、ガスが通過する部分(連通部)として、複数の溝33cが設けられている。
【0052】
空気極側集電体43は、柱状の部材が平行に配置された例えばステンレスからなる部材であり、前記空気極絶縁フレーム33の空間部33a内にて、一対の貫通孔9(9h、9d)の配置方向に沿って配置されている。
【0053】
セパレータ35は、四角枠状の導電性を有する板材(例えばステンレス鋼等の金属板)からなり、自身の内周が、単セル17の固体電解質層23の外周縁部にろう付け接合されている。この単セル17が接合されたセパレータ35により、発電単位7の内部において、空気と燃料ガスとが混合しないように、空気流路19と燃料流路21とが分離されている。
【0054】
燃料極フレーム37は、耐熱性を有するステンレス等からなる四角枠状の部材である。
燃料極絶縁フレーム39は、空気極絶縁フレーム33と同様に、四角枠状の部材であり、軟質マイカ、バーミキュライト、MgO、Al
2O
3などからなる絶縁板である。この燃料極絶縁フレーム39には、空気極絶縁フレーム33と同様に、中央部の空間部39aと、(各貫通孔9b、9fと連通する長尺の)各連通孔39bと、各連通孔39bと空間部39aとを連通する各溝39cが設けられている。
【0055】
燃料極側集電体45は、公知の格子状の部材(例えば特開2013−56042号公報に記載の集電部材19参照)であり、芯材である格子状のスペーサ(軟質マイカ、バーミキュライト、MgO、Al
2O
3などからなる絶縁性のスペーサ)52と、スペーサ52に取り付けられた金属板の導電部材54(
図3参照)とから構成されている。
【0056】
また、
図4に示すガス溜め室フレーム53は、四角枠状の部材であり、導電性を有する例えばステンレスから構成されている。
このガス溜め室フレーム53には、(平面視で)中央部に正方形の空間部53aが設けられているとともに、熱交換部10にて加熱された空気が排出される貫通孔9dと空間部53aとが連通するように、開口部53bが設けられている。
【0057】
また、前記エンドプレート3は、このガス溜め室フレーム53の空間部53aを、同図上側から塞ぐように配置されている。
これにより、ガス溜め室フレーム53と、その積層方向の両側に配置されたエンドプレート3及びインターコネクタ31とによって、貫通孔9dのみに1箇所開口する密閉された第1ガス溜め室20が形成される。
【0058】
同様に、
図5に示すガス溜め室フレーム63は、四角枠状の部材であり、導電性を有する例えばステンレスから構成されている。
このガス溜め室フレーム63には、(平面視で)中央部に正方形の空間部63aが設けられているとともに、熱交換部10にて加熱された空気が排出される貫通孔9dと空間部63aとが連通するように、開口部63bが設けられている。
【0059】
また、前記エンドプレート5は、このガス溜め室フレーム63の空間部63aを、同図下側から塞ぐように配置されている。
これにより、ガス溜め室フレーム63と、その積層方向の両側に配置されたエンドプレート5及びインターコネクタ41とによって、貫通孔9dのみに1箇所開口する密閉された第2ガス溜め室30が形成される。
【0060】
更に、
図6に示すように、上スタック本体2aと下スタック本体2bとの間に配置される熱交換部10は、前記第1、第2ガス溜め室20、30と同様に、四角枠状の熱交換部フレーム12を備えており、熱交換部フレーム12の厚み方向の両側には、熱交換部フレーム12の中央の空間部12aを覆うように、隣接する発電単位7のインターコネクタ41、31が配置されている。なお、熱交換部フレーム12は、導電性を有する例えばステンレスからなる。
【0061】
この熱交換部フレーム12には、インターコネクタ41、31等と同様に、ボルト11が貫挿される8個の貫通孔9が形成されている。また、貫通孔9のうち、ボルト11aが貫挿される貫通孔9aには、空間部12aと連通して空気を空間部12a内に導入する開口部12bが設けられ、ボルト11dが貫挿される貫通孔9dには、空間部12aと連通して空気を空間部12aから排出する開口部12cが設けられている。
【0062】
c)次に、燃料電池スタック1の製造方法について、簡単に説明する。
まず、例えばSUS430からなる板材を打ち抜いて、インターコネクタ31、41、燃料極フレーム37、セパレータ35、ガス溜め室フレーム53、63、熱交換部フレーム12、エンドプレート3、5を製造した。
【0063】
また、単セル17を、定法に従って製造した。具体的には、燃料極層27及び固体電解質層23のグリーンシート積層体を焼成し、その上に空気極層25の材料を印刷した。なお、単セル17は、セパレータ35にろう付けして固定した。
【0064】
更に、周知の絶縁性の材料からなる絶縁板に対して、パンチング加工や溝加工などによって、前記
図4、
図5に示す枠形状の空気極絶縁フレーム33と燃料極絶縁フレーム39を作製した。
【0065】
そして、上述したインターコネクタ31、41、空気極絶縁フレーム33、単セル17をろう付けしたセパレータ35、燃料極フレーム37、燃料極絶縁フレーム39等を積層して、各発電単位7を組み付けるとともに、その積層方向の中央に(即ち上スタック本体2a及び下スタック本体2bの間に)、熱交換部フレーム12を配置し、且つ、積層方向の両方の端部に、ガス溜め室フレーム53、63、エンドプレート3、5を積層して、積層体を構成した。
【0066】
そして、この積層体の貫通孔9にボルト11を嵌め込むとともに、各ボルト11にナット13を螺合させて締め付けて、積層体を押圧して一体化して固定し、燃料電池スタック1を完成した。
【0067】
d)次に、本実施例1におけるガスの流路について、前記
図2、
図7、
図8等に基づいて説明する。
<空気の流路>
図7に示す様に、空気は、燃料電池スタック1の外部から、ボルト11aの内部流路14を介して貫通孔9aに導入される。そして、前記
図2に示すように、貫通孔9aから開口部12b(
図6参照)を介して熱交換部10内に導入される。なお、
図2では、ここまでの空気の流れを破線で示す。
【0068】
次に、熱交換部10に導入された空気は(以後の空気の流れを実線で示す)、周囲の単セル17等(具体的には発電単位7)からの熱を受けて熱交換部10で加熱され、開口部12c(
図6参照)を介して貫通孔9dに供給される。
【0069】
この貫通孔9dに供給された熱交換後の空気は、
図2の上下方向に分岐し、各発電単位7の空気流路19と第1ガス溜め室20と第2ガス溜め室30とに分配して供給される。
つまり、
図2の上方に導かれた熱交換後の空気の一部は、開口部53bを介して、燃料電池スタック1の上部の第1ガス溜め室20内に供給される。一方、下方に導かれた熱交換後の空気は、開口部63bを介して、燃料電池スタック1の下部の第2ガス溜め室30内に供給される。
【0070】
また、
図2の上方及び下方に導かれて各空気流路19に導入された熱交換後の空気は、各空気流路19内にて発電に使用される。そして発電後の残余の空気は、同図の矢印方向に流れて、各空気流路19から貫通孔9hを介して外部に排出される。
【0071】
これらの空気の流れを、
図8(a)にて模式的に示すが、外部から導入された空気は、熱交換部10にて加熱された後に、各発電単位7及び第1、第2ガス溜め室20、30に導入され、発電後の空気は外部に排出される。
【0072】
なお、
図2及び
図8(a)では、燃料電池スタック1の外部から導入される空気の流路と外部に排出される空気の流路とを重ねて表示しているが、上述したように、それらは別の流路(貫通孔9aと貫通孔9h)として分離されている。
【0073】
<燃料ガスの流路>
燃料ガスの流路は、従来と同様であり、前記
図7及び
図8(b)に示すように、燃料電池スタック1の外部から、ボルト11fの内部流路14を介しての貫通孔9fに導入された燃料ガスは、各発電単位7の燃料流路21(
図8(b)では図示せず)に分配して供給される。
【0074】
そして、各燃料流路21内にて発電に使用された残余の燃料ガスは、各燃料流路21から貫通孔9fと反対側の貫通孔9bに導入される。
この貫通孔9bに導入された発電後の燃料ガスは、ボルト11bの内部流路14を介して、燃料電池スタック1外に排出される。
【0075】
e)本実施例1の効果について説明する。
本実施例1では、燃料電池スタック1の発電単位7の積層方向の中央に熱交換部10が配置されており、その積層方向における両方の端部に、熱交換部10から排出された空気を溜める第1、第2ガス溜め室20、30を備えている。
【0076】
これにより、第1、第2ガス溜め室20、30には、熱交換部10から排出された空気、即ち熱交換部10にて周囲の単セル17(従って発電単位7)によって適度に加熱された空気を溜めることができる。その結果、この両ガス溜め室20、30により、燃料電池スタック1の積層方向における端部の温度を高めることができ、しかも、両ガス溜め室20、30は、燃料電池スタック1内とその積層方向の外側との間の断熱層として機能する。
【0077】
そのため、燃料電池スタック1の積層方向における温度を、従来より均一化できるとともに、単セル17の破損等が生じないような適度な温度に維持することができる。例えば、燃料電池スタック1内を、単セル17自身がジュール熱にて発熱するような適度な温度に維持して保温することができる。
【0078】
このように、本実施例1では、燃料電池スタック1内の温度を適度な温度に保持することができるので、高い発電効率を実現できるとともに、単セル17の熱歪みによる破損(セル割れ)を抑制できるという顕著な効果を奏する。
【0079】
また、本実施例1では、両ガス溜め室20、30は、熱交換部10から空気が供給される貫通孔9dに1箇所のみ開口しているので、空気が外に流出ににくく、好適に空気を溜めることができるとともに、貫通孔9dから空気を効率的に導入することができる。
【0080】
更に、本実施例1では、エンドプレート3、5と(最外側の)発電単位7との間に各ガス溜め室20、30が配置されているので、エンドプレート3、5から熱が放出されにくく、燃料電池スタック1内の温度をより均一に保つことができる。
【0081】
f)その他
・例えば、第1、第2ガス溜め室20、30の内部は、空洞であってもよいが、燃料電池スタック1の積層方向における導電性を高めるために、集電体を配置してよい。
【0082】
例えば
図9(a)に示すように、第1ガス溜め室20内に、前記燃料極側集電体45と同様な構造の集電体91を配置してもよい。なお、第2ガス溜め室30内に、同様な集電体91を配置してもよい。
【0083】
或いは、
図9(b)に示すように、燃料電池スタック1の下端のインターコネクタ41の表面(第2ガス溜め室20側の表面)から、内側(同図下方)に向かって突出して、相手側のエンドプレート5に接触する凸部93を設けてもよい。なお、逆に、エンドプレート5に、インターコネクタ41側に突出する同様な凸部を設けてもよい。
【0084】
また、前記第1ガス溜め室20側に、前記第2ガス溜め室30側に形成したような凸部を設けてもよい。
・また、燃料電池スタック1に対して空気や燃料ガスを供給する側、或いは、燃料電池スタック1から空気や燃料ガスを排出する側は、燃料電池スタック1の積層方向におけるどちら側に(例えば
図1、
図2における上方又は下方に)設定してもよい。
【実施例2】
【0085】
次に、実施例2について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
なお、実施例1と同様な構成には、同様な番号を付して説明する。
図10に示すように、本実施例2の燃料電池スタック101は、上下の各発電単位7の間に空気ではなく燃料ガスの熱交換を行う熱交換部103を備えており、この熱交換部103にて加熱した燃料ガスを、燃料電池スタック101の積層方向の両端に配置された第1、第2ガス溜め室105、107に溜めるものである。以下、詳細に説明する。
【0086】
本実施例2の燃料電池スタック101では、燃料ガスは、
図10及び
図11に示すように(
図10では破線で示す)、燃料電池スタック101の外部から、ボルト11cの内部流路14を介して貫通孔9cに導入され、その後、発電単位7の間に配置された熱交換部103内に導入される。
【0087】
次に、
図10にて実線で示すように、熱交換部103で加熱された燃料ガスは、貫通孔9fに導入されてから、各発電単位7の燃料流路21に供給されるとともに、各開口部109、110を介してそれぞれ第1、第2ガス溜め室105、107に供給される。
【0088】
そして、各燃料流路21内にて発電に使用された残余の燃料ガスは、各燃料流路21から貫通孔9bに導入され、その後、燃料電池スタック101外に排出される。
なお、空気については、
図11に示すように、ボルト11dの内部流路14及び貫通孔9dを介して、燃料電池スタック101に導入され、各発電単位7の空気流路19から、貫通孔9h及びボルト11hの内部流路14を介して、燃料電池スタック101外に排出される。
【0089】
本実施例2においても、前記実施例1と同様な効果を奏する。
なお、
図10では、前記
図2と同様に、燃料電池スタック1の外部から導入される空気の流路(破線部分)と外部に排出される空気の流路(実線部分)とを重ねて表示している。
【実施例3】
【0090】
次に、実施例3について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
なお、実施例1と同様な構成には、同様な番号を付して説明する。
図12に示すように、本実施例3の燃料電池スタック111は、上述した積層方向の一方(同図上方)に第1ガス溜め室20を備えるとともに、他方に排ガス燃焼器113を備えたものである。以下、詳細に説明する。
【0091】
a)まず、本実施例3の燃料電池スタック111の構成について説明する。
図12に示すように、本実施例3の燃料電池スタック111では、上スタック本体2aと下スタック本体2bとの間に空気を加熱する熱交換部10が配置されている。
【0092】
また、上スタック本体2aの上端には、前記実施例1と同様な第1ガス溜め室20が積層され、下スタック本体2bの下端には、板状の排ガス燃焼器113が積層されている。
この排ガス燃焼器113内には、例えばNi等の燃焼用の触媒115が充填されており、排ガス燃焼器113に発電後の空気と燃料ガスとが導入されるように各流路117(燃料ガスの流路は図示せず)が設けられている。
【0093】
また、空気排出用のボルト11hが挿通される貫通孔9hは、前記実施例1とは異なり、下方に開口することなくボルト11hの頭部によって閉ざされている。
更に、本実施例3では、空気や燃料ガスの流路として用いられるボルト11a、11b、11d、11f、11hとは異なる別のボルト11及びその貫通孔9(図示しないが例えばボルト11g及び貫通孔9g)が、排ガス燃焼器113から排出される燃焼後の排ガスの流路(図示せず)として用いられ、排ガスが排出されるように構成されている。
【0094】
なお、
図12では、前記
図2と同様に、燃料電池スタック1の外部から導入される空気の流路(破線部分)と外部に排出される空気の流路(実線部分)とを重ねて表示している。
【0095】
b)次に、本実施例3における空気の流路について説明する。
前記
図12に示すように、本実施例3の燃料電池スタック111では、空気は、燃料電池スタック111の外部から、ボルト11aの内部流路14を介して貫通孔9aに導入され、その後、熱交換部10に導入される。
【0096】
そして、熱交換部10にて加熱された空気は、貫通孔9dに導入された後に、各発電単位7の空気流路19に分配して供給されるとともに、第1ガス溜め室20に供給される。
そして、各空気流路19内にて発電に使用された残余の空気は、各空気流路19から貫通孔9hに導入された後に、排ガス燃焼器113に導入される。
【0097】
一方、燃料ガスについては、図示しないが、燃料電池スタック111の外部から、ボルト11fの内部流路14を介して、燃料電池スタック111の貫通孔9fに導入され、その後、各発電単位7の燃料流路21に分配して供給される。
【0098】
次に、各燃料流路21内にて発電に使用された残余の燃料ガスは、各燃料流路21から貫通孔9bに導入され、その後、排ガス燃焼器113に導入される。
そして、排ガス燃焼器113内に導入された空気と燃料ガスとが燃焼することにより、燃料電池スタック111が加熱される。そして、燃焼後の排ガスは燃料電池スタック111外に排出される。
【0099】
本実施例3においても、第1ガス溜め室20が配置された側では、前記実施例1と同様な効果を奏する。また、燃料電池スタック111の下端側が冷えやすい構造の場合には、排ガス燃焼器113によって、下端側を好適に加熱することができる。
【0100】
なお、本実施例3において、前記実施例2と同様に、空気を第1ガス溜め室20に溜めるのではなく、燃料ガスを溜めるような構成としてもよい。
【実施例4】
【0101】
次に、実施例4について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
なお、実施例1と同様な構成には、同様な番号を付して説明する。
図13に示すように、本実施例4の燃料電池スタック121は、前記積層方向の一方(
図13の上方)にのみ、空気を溜める第1ガス溜め室20を備えたものである。以下、詳細に説明する。
【0102】
本実施例4の燃料電池スタック121では、空気は、燃料電池スタック121の外部から、ボルト11hの内部流路14を介して貫通孔9hに導入され、その後、発電単位7の間に配置された熱交換部10に導入される。
【0103】
次に、熱交換部10にて加熱された空気は、貫通孔9dに導入された後に、各発電単位7の空気流路19と第1ガス溜め室20に分配して供給される。
そして、各空気流路19内にて発電に使用された残余の空気は、各空気流路19から貫通孔9hに導入された後に、燃料電池スタック131外に排出される。
【0104】
また、燃料ガスについては、前記実施例1と同様であるので、その説明は省略する。
なお、
図13では、前記
図2と同様に、燃料電池スタック1の外部から導入される空気の流路(破線部分)と外部に排出される空気の流路(実線部分)とを重ねて表示している。
【0105】
本実施例4においても、第1ガス溜め室20が配置された側では、前記実施例1と同様な効果を奏する。
なお、本実施例4において、前記実施例2と同様に、燃料ガスを第1ガス溜め室20に溜めるような構成としてもよい。
【実施例5】
【0106】
次に、実施例5について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
なお、実施例1と同様な構成には、同様な番号を付して説明する。
図14に示すように、本実施例5の燃料電池スタック131は、前記積層方向の一方の第1ガス溜め室133に空気を溜めるとともに、他方の第2ガス溜め室135に燃料ガスを溜めるものである。以下、詳細に説明する。
【0107】
a)まず、燃料電池スタック131の構成について説明する。
本実施例5の燃料電池スタック131では、前記実施例1における空気の流路の構成と前記実施例2における燃料ガスの流路の構成とが組み合わせられている。
【0108】
具体的には、
図14に示すように、燃料電池スタック131の複数の発電単位7に挟まれるように、空気の熱交換を行う第1熱交換部137と燃料ガスの熱交換を行う第2熱交換部139とが配置されている。
【0109】
つまり、
図14の上部の複数の発電単位7と中央の複数の発電単位7との間に第1熱交換部137が配置され、下部の複数の発電単位7と中央の複数の発電単位7との間に第2熱交換部139が配置されている。
【0110】
そして、上端の発電単位7の上部に、空気を溜める第1ガス溜め室133が設けられ、下端の発電単位7の下部に、燃料ガスを溜める第2ガス溜め室135が設けられている。
b)次に、燃料電池スタック131における空気及び燃料ガスの流路について説明する。
【0111】
<空気の流路>
図14(a)及び
図15(a)に示すように、本実施例5の燃料電池スタック131では、空気は、燃料電池スタック131の外部から、ボルト11aの内部流路14を介して貫通孔9aに導入され、その後、第1熱交換部137に導入される。
【0112】
次に、第1熱交換部137にて加熱された空気は、貫通孔9dに導入された後に、各発電単位7の空気流路19(
図3参照)と第1ガス溜め室133に分配して供給される。
そして、各空気流路19内にて発電に使用された残余の空気は、各空気流路19から貫通孔9hを介して、外部に排出される。
【0113】
<燃料ガスの流路>
図14(b)及び
図15(b)に示すように、本実施例5の燃料電池スタック131では、燃料ガスは、燃料電池スタック131の外部から、ボルト11cの内部流路14を介して貫通孔9cに導入され、その後、第2熱交換部139に導入される。
【0114】
次に、第2熱交換部139にて加熱された燃料ガスは、貫通孔9fに導入された後に、各発電単位7の燃料流路21(
図3参照)と第2ガス溜め室135に分配して供給される。
【0115】
そして、各燃料流路21内にて発電に使用された残余の燃料ガスは、各燃料流路21から貫通孔9bを介して、外部に排出される。
本実施例5においても、前記実施例1と同様な効果を奏するとともに、設計の自由度が高いという利点がある。
【実施例6】
【0116】
次に、実施例6について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
なお、実施例1と同様な構成には、同様な番号を付して説明する。
図16に示すように、本実施例6の燃料電池スタック141は、空気の流路についてシリアルフロー構造を有しており、最初の発電後の空気を第1ガス溜め室20及び第2ガス溜め室30に導入するものである。
【0117】
a)まず、本実施例6の燃料電池スタック141の構造について説明する。
図16(a)に示すように、本実施例6の燃料電池スタック141では、複数(例えば4段)の発電単位7からなる上スタック本体2aと、複数(例えば4段)の発電単位7からなる下スタック本体2bとの間に、実施例1と同様に、熱交換部10を備えている。
【0118】
ここでは、上スタック本体2aが、空気のシリアルフローの上流側であり、下スタック本体2bが、空気のシリアルフローの下流側である。
また、実施例1と同様に、上スタック本体2aの上部に第1ガス溜め室20を備えるとともに、下スタック本体2bの下部に第2ガス溜め室30を備えている。
【0119】
b)次に、燃料電池スタック141における空気の流路について説明する。
図16に示すように、燃料電池スタック141の外部から、ボルト11aの内部流路14を介して貫通孔9aに導入された空気は、熱交換部10に供給される。
【0120】
そして、熱交換部10で加熱された空気は、貫通孔9dを介して、上スタック本体2aの各発電単位7の各空気流路19(
図3参照)と第1ガス溜め室20と第2ガス溜め室30とに供給される。
【0121】
次に、各空気流路19内にて最初の発電に使用された残余の空気は、貫通孔9hに導入され、貫通孔9hから、下スタック本体2bの各発電単位7に供給される。
そして、各空気流路19内にて2回目の発電に使用された残余の空気は、貫通孔9eを介して外部に排出される。
【0122】
なお、
図16では、空気の流れの順番を、O1→O2→O3で示している。
なお、燃料ガスの流路は、実施例1と同様であるので、その説明は省略する。
本実施例6は、空気の流路がシリアルフローであり、燃料電池スタック141の積層方向の両側に、熱交換部10で熱交換により加熱された後に空気を溜める両ガス溜め室20、30を備えているので、前記実施例1と同様な効果を奏する。
【0123】
なお、本実施例6では、両ガス溜め室20、30に発電後の空気を溜めるようにしたが、前記実施例2のように、燃料ガスをためるようにしてもよい。また、第1ガス溜め室20に空気を溜め、第2ガス溜め室30に燃料ガスを溜めるようにしてもよい(或いは、溜めるガスの種類を上下逆にしてもよい)。
【0124】
また、空気の流路のみをシリアルフローとする以外に、空気及び燃料ガスの流路をシリアルフローにしたり、燃料ガスの流路のみをシリアルフローとしてもよい。
【実施例7】
【0125】
次に、実施例7について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
なお、実施例1と同様な構成には、同様な番号を付して説明する。
図17に示すように、本実施例7の燃料電池スタック161では、複数の発電単位7は、前記実施例1と同様に、空気極層25と固体電解質層23と燃料極層27とからなる単セル17と、単セル17に接合された四角枠状の金属製のセパレータ35とを備えている。
【0126】
また、空気極層25の(同図の)上方には、板状の金属製のインターコネクタ163が配置されており、その下方より突出する凸部165と空気極層25とが接触している。
このインターコネクタ163は、その周囲が金属製の四角枠状の(インターコネクタ163より板厚が小さな)集電セパレータ167に接合されており、集電セパレータ167及びインターコネクタ163によって、インターコネクタ163の上下の流路(従って発電単位7間)が分離されている。
【0127】
更に、燃料極層27の(同図の)下方には、前記実施例1の燃料極側集電体45と同様な構造の(絶縁板と金属板からなる)燃料極側集電体169が配置されている。
また、(空気流路19に対応する)集電セパレータ167とセパレータ35との間には、四角枠状の絶縁板からなるフレーム171が配置され、(燃料流路21に対応する)セパレータ35と集電セパレータ167との間には、四角枠状の金属からなるフレーム173が配置されている。
【0128】
本実施例7では、実施例1と同様に、同図の上下に配置された発電単位7の間に熱交換部10が配置されている。この熱交換部10は、同図の上下に配置された一対の金属板からなるプレート181、183と、両プレート181、183の間に配置された四角枠状の金属製のスペーサ185とから構成されている。なお、図示しないが、このスペーサ185には、実施例1と同様に、空気の導入又は排出を行う開口部が設けられている。
【0129】
また、同図の最上段の発電単位7とエンドプレート3との間に、(フレーム173と同様な)四角枠状の金属製のスペーサ191を配置することにより、熱交換部10で加熱された空気を溜める第1ガス溜め室193が設けられている。なお、図示しないが、スペーサ174には、第1ガス溜め室193と熱交換後の空気排出用の貫通孔9とを連通する開口部が設けられている。
【0130】
この第1ガス溜め室193内には、エンドプレート3と(集電セパレータ167が接合された)インターコネクタ163とが接触して導通するように、前記燃料極側集電体169が配置されている。
【0131】
同様に、同図の最下段の発電単位7とエンドプレート5との間に、(フレーム171と同様な)四角枠状の絶縁板からなるスペーサ195を配置することにより、熱交換部10によって加熱された空気を溜める第2ガス溜め室197が設けられている。なお、図示しないが、スペーサ195には、第2ガス溜め室177と熱交換後の空気排出用の貫通孔9とを連通する開口部が設けられている。
【0132】
この第2ガス溜め室197内には、エンドプレート5と燃料極側集電体169とが接触して導通するように、前記(集電セパレータ167が接合された)インターコネクタ163が配置されている。
【0133】
本実施例7においても、前記実施例1と同様に、第1、第2ガス溜め室193、197に、熱交換部10で加熱された空気が導入されるので、前記実施例1と同様な効果を奏する。
【0134】
さらに、本実施例8では、インターコネクタ163は、板厚が小さな(薄い)集電セパレータ167に接合されているため、発電単位7の側面方向への放熱が低減される。すなわち、積層方向だけでなく、側面方向に熱が放出されにくくなるため、発電単位7内の温度を、より均一に保つことができる。
【0135】
なお、前記実施例2と同様に、第1、第2ガス溜め室193、197に、熱交換部10で加熱された燃料ガスを導入してもよい。
また、前記実施例5と同様に、第1ガス溜め室193に空気を導入するとともに、第2ガス溜め室197に燃料ガスを導入してもよい。或いは、その逆に、第1ガス溜め室193に燃料ガスを導入するとともに、第2ガス溜め室197に空気を導入してもよい。
【0136】
なお、
図17では、各ガスの供給経路である貫通孔から各空気流路19や各燃料流路21にガスを供給する連通路である連通部、各空気流路19や各燃料流路21から各ガスの排出経路である貫通孔にガスを排出する連通部、各ガスの排出経路から第1、第2ガス溜め室193、197にガスを供給する開口部は省略してあるが、前記実施例1〜3等と同様に、各ガスの流通が可能なように、適宜(各ガスの供給側の貫通孔に開口する)開口部を設ければよい。
【0137】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
(1)例えば、本発明は、例えば、ZrO
2系セラミックなどを電解質とする固体酸化物形燃料電池(SOFC)、Li−Na/K系炭酸塩を電解質とする溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)、リン酸を電解質とするリン酸形燃料電池(PAFC)などの燃料電池の燃料電池スタックに適用できる。
【0138】
(2)また、単セルで発電された電気は、例えば集電体及びインターコネクタを介して外部に取り出すことができるが、この場合、インターコネクタと集電体とは、別部材で構成しても、一体の部材として構成してもよい。
【0139】
(3)更に、ガス溜め室の(ガス供給側に開口する)開口部は、ガスを溜めるためには1個が望ましいが、複数個設けてもよい。