特許第6517668号(P6517668)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6517668ガスの品質に関する特定の量を決定するための方法および測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6517668
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】ガスの品質に関する特定の量を決定するための方法および測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/18 20060101AFI20190513BHJP
   G01F 1/66 20060101ALI20190513BHJP
   G01F 1/692 20060101ALI20190513BHJP
   G01N 25/20 20060101ALI20190513BHJP
【FI】
   G01N25/18 E
   G01F1/66 101
   G01F1/692 Z
   G01N25/18 J
   G01N25/20 Z
【請求項の数】14
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-222123(P2015-222123)
(22)【出願日】2015年11月12日
(65)【公開番号】特開2016-95308(P2016-95308A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2018年10月19日
(31)【優先権主張番号】14003855.5
(32)【優先日】2014年11月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515315462
【氏名又は名称】メムス アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】MEMS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ プレートル
【審査官】 野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02574918(EP,A1)
【文献】 国際公開第2012/066828(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02015056(EP,A1)
【文献】 特表2001−511522(JP,A)
【文献】 特開平10−185885(JP,A)
【文献】 特開2000−039425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/18
G01F 1/66
G01F 1/692
G01N 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの品質に関する特定の量を決定するための方法であって、前記方法は、
− ガスまたはガス混合物が、超音波フロー測定デバイスを貫通して流れ、かつマイクロ熱センサー上を流れ、かつ前記ガスまたはガス混合物の温度(T)および圧力(p)が検出され、
− 前記ガスまたはガス混合物の流速(v)または容積流量と音速(c)とが前記超音波フローセンサーによって決定され、
− 前記ガスまたはガス混合物の密度が前記音速(c)から相関付けられ、
− 密度情報が、前記流速と共に、質量流量を計算するのに用いられ、
− 1つまたはいくつかの温度における前記ガスまたはガス混合物の熱伝導率(λ)が前記マイクロ熱センサーによって決定され、
− 前記質量流量および熱伝導率の情報と共に、前記ガスまたはガス混合物の熱容量(c)または前記熱容量によって変化する量をフローファクター(φ)から決定するために、前記フローファクター(φ)が前記マイクロ熱センサーのフロー信号から計算され、
− および最後に、前記音速と、1つまたはいくつかの温度における前記熱伝導率と、前記熱容量または前記熱容量によって変化する前記量のいずれかとが、前記ガスの品質に関する特定の量、特に発熱量の相関付けに用いられる、
方法。
【請求項2】
前記超音波フローセンサーによって決定される前記音速(c)が、標準温度(Tnorm)における音速に変換される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つまたはいくつかの温度において前記マイクロ熱センサーによって決定される前記熱伝導率(λ)が、前記音速と共に、前記密度のより正確な相関付けに用いられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
相関付けによって決定される前記密度が標準密度であることと、相関付けによって決定される前記密度が前記ガスまたはガス混合物の前記温度(T)および前記圧力(p)によって運転条件における密度(ρ)に変換されることと、のうちの少なくとも一方である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記音速と、1つまたはいくつかの温度における前記熱伝導率と、前記熱容量または前記熱容量によって変化する前記量のいずれかとが、前記発熱量、またはウォッベ指数(W)、またはZ因子、または動粘度の相関付けに用いられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
エネルギー消費量(ΦEN)が、前記容積流量または質量流量と共に前記発熱量から計算される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ガスの品質に関する特定の量およびエネルギー消費量のうちの少なくとも一方を決定するための測定装置であって、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成される評価ユニット(10)を含み、かつ音速および流速測定用の超音波フローセンサー(4)と、圧力測定用の圧力センサー(8)と、温度測定用の温度センサー(9)と、ガスまたはガス混合物の熱伝導率および熱容量または前記熱容量によって変化する量のいずれかの測定用のマイクロ熱センサー(7)とを含む測定装置。
【請求項8】
前記超音波フローセンサー(4)および前記マイクロ熱センサー(7)がガスライン(1)内に配置され、および同じ質量流量を供給され得る、請求項7に記載の測定装置。
【請求項9】
前記超音波フローセンサー(4)が主たるガスライン(1)内に、かつ前記マイクロ熱センサー(7)は前記主たるガスラインに対するバイパスガスライン(6)内に配置され、および前記バイパスガスライン内に質量流量を発生させるために、前記主たるガスライン内に、圧力低下を生じさせる要素(5)が設けられる、請求項7に記載の測定装置。
【請求項10】
前記超音波フローセンサー(4)が、前記ガスラインまたは前記主たるガスライン(1)に非侵入方式で配置される、請求項8または9に記載の測定装置。
【請求項11】
前記超音波フローセンサー(4)および前記マイクロ熱センサー(7)が、主たるガスライン(1)に対するバイパスガスライン(6)内に配置され、および前記バイパスガスライン内に質量流量を発生させるために、前記主たるガスライン内に、圧力低下を生じさせる要素(5)が設けられる、請求項7に記載の測定装置。
【請求項12】
前記バイパスガスライン内および前記主たるガスライン内の前記質量流量の分割比が、例えば既知のガスで校正することによって知られる、請求項9〜11のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項13】
前記測定装置が、付加的に、前記ガスラインまたは前記主たるガスライン(1)の一部分と、バイパスガスライン(6)であって、前記測定装置(11)の前記センサー(4、7、8、9)の少なくとも1つがその中に配置されるバイパスガスライン(6)と、前記主たるガスライン(1)内に圧力低下を生じさせる要素(5)と、のうちの少なくとも1つを含む、請求項7〜12のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項14】
前記評価ユニット(10)が、残りの測定装置と共にモジュラーユニットを形成するか、または前記測定装置が前記評価ユニット(10)なしのモジュラーユニットを形成し、かつ前記評価ユニット(10)が別個のまたはより高レベルの計算ユニットの中に形成される、請求項7〜13のいずれか一項に記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用分野および工業用分野におけるガスの品質に関する特定の量および/またはエネルギー消費量を決定するための方法および測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(天然)ガスの組成、従ってガスの品質は、新しい発生源(バイオガス、世界のあらゆる地域からの液化ガス、代替エネルギー生成からの余剰電流の利用による水素)によって、将来頻繁にかつ大幅に変動し、従って、ガス適用プロセスに、負の影響をも含み得る様々な影響を及ぼすことになるであろう。このプロセスは、最適かつ安全な運転を確保するために、オンサイトでのガスの品質に関する特定の量を直接測定することによって、変動するガスの品質に対して調整することができる。ガスの品質に関する特定の量としては、例えば、バーナ制御ユニット用のウォッベ指数、動力発生システム(工業炉、燃料電池など)における空気対燃料比、ガスエンジン用のメタン価、または購入されたエネルギー量を請求する場合の発熱量が含まれる。しかしながら、発熱量については、若干の例外は別として、ダイアフラムガスメータ(家庭用)による容積流量の測定によって、または大容積のガスの購入(工業用)の場合には回転積算体積計、タービンホイールメータまたは超音波フローメータによって、現在発生している購入ガス量を測定することが必要である。これらのすべての測定手段は、運転容積の決定に対してのみ適している。これらのデータから、購入された請求可能なエネルギーについての結論を引き出すためには、標準容積への変換と、さらに、その都度供給されるガスの発熱量に関する情報とが必要であるが、この両方には不正確さが伴う。すなわち、標準容積は、通常、平均温度および平均圧力によって計算され、発熱量も、請求期間全体にわたって平均された値である。
【0003】
本発明の目的は、ガスの品質に関する特定の量および/または動力消費量をリアルタイムで決定できる方法および測定装置を提供することにある。
ガスの品質に関する特定の量を下流側のマイクロ熱センサーによって測定するために、流れを臨界ノズルによって生成する方法が特許出願(特許文献1)から知られている。この方法は、ノズルに上流側の圧力を供給すること、または、ノズルの背後に真空を生成することのいずれかによって、臨界圧力条件がノズルを介して常に存在することを必要とする。従って、この方法は、最終顧客においてガスの品質に関する特定の量を決定するものとしては直接的には適していない。なぜなら、供給ネットワークは、この点において、必要な上流側圧力を有することが稀であり、ノズル背後における真空ポンプの設置は問題外だからである。
【0004】
熱拡散率を決定し得るという点で、マイクロ熱センサーを容積流量測定装置の高度化のために用いる方法が(特許文献2)から知られる。この方法によって、熱伝導率が既知である場合に、ガスをL(低発熱量)ガスまたはH(高発熱量)ガスに分類することが可能になる。しかしながら、容積流量と、熱拡散率と、熱伝導率とから、発熱量およびエネルギーの流れについて十分な正確さをもって結論を引き出すことは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2806271A1号明細書(欧州特許出願第14001767号)
【特許文献2】欧州特許出願公開第2574918A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記の方法の欠点を改善すること、および、低圧のガスネットワークに適していると共に、ガスのLガスまたはHガスへの分類に加えて、発熱量およびエネルギー消費量を決定することも可能な方法および測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ガスの品質に関する特定の量を決定するための方法であって、同方法は、
− ガスまたはガス混合物が、超音波フロー測定デバイスを貫通して流れ、かつマイクロ熱センサー上を流れ、およびガスまたはガス混合物の温度(T)および圧力(p)が検出され、
− ガスまたはガス混合物の流速(v)または容積流量と音速(c)とが超音波フローセンサーによって決定され、
− ガスまたはガス混合物の密度が音速(c)から相関付けられ、
− 密度情報が、流速と共に、質量流量を計算するのに用いられ、
− 1つまたはいくつかの温度におけるガスまたはガス混合物の熱伝導率(λ)がマイクロ熱センサーによって決定され、
− 質量流量および熱伝導率の情報と共に、ガスまたはガス混合物の熱容量(c)または熱容量によって変化する量をフローファクター(φ)から決定するために、フローファクター(φ)がマイクロ熱センサーのフロー信号から計算され、
− および最後に、音速と、1つまたはいくつかの温度における熱伝導率と、熱容量または熱容量によって変化する量のいずれかとが、ガスの品質に関する特定の量、特に発熱量の相関付けに用いられる、
方法、を提供する。
【0008】
請求項7に記載の発明は、ガスの品質に関する特定の量およびエネルギー消費量のうちの少なくとも一方を決定するための測定装置であって、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成される評価ユニット10を含み、かつ音速および流速測定用の超音波フローセンサー4と、圧力測定用の圧力センサー8と、温度測定用の温度センサー9と、ガスまたはガス混合物の熱伝導率および熱容量または前記熱容量によって変化する量のいずれかの測定用のマイクロ熱センサー7とを含む測定装置、を提供する。
【0009】
この目的は、請求項1に記載の方法、および、請求項7に記載の測定装置によって実現される。
本発明は、ガスの品質に関する特定の量および/またはエネルギー消費量を決定するために、以下のように、超音波フローセンサーをマイクロ熱センサーと組み合わせる考え方に基づいている。
【0010】
超音波フローセンサーによる音速および容積流量の測定
容積流量を決定するため、超音波信号を、通常、ある角度で流れの方向に対して横方向に流れの媒体の中に送入し、超音波信号の走行時間の差異を、流れの方向およびその流れの方向に対向する方向の両方において測定する(図1b)。続いて、2つの超音波信号の走行時間の差異を平均流速用の尺度とし、それから、ラインの既知の断面積を用いて容積流量を計算できる。
【0011】
【数1】
【0012】
但し、
は平均流速を意味し、
は音速を意味し、
Lは測定距離の長さを意味し、
12は流れの方向における走行時間を意味し、および
21は流れに対向する方向における走行時間を意味する。
【0013】
走行時間の総合計は、超音波フローメータにおいてはこれ以上用いることはほとんどない媒体の音速cに関する情報を含んでいる。
特許出願である特許文献1に記載のマイクロ熱センサーとの組合せにおいては、音速に関する情報のための臨界ノズルを省略することが可能である。その理由は、音速に関する情報は第1次の音速をも供給するからであり、それは、臨界圧力条件を必要としない、すなわち、所与の圧力で測定可能であるという利点を有する。その結果、低圧ガスネットワークにおいて、コンプレッサまたは真空ポンプのいずれも必要でない。
【0014】
質量流量の決定
密度は、音速から相関付けによって決定できる。密度は、ほとんどのガスについて、音速とよく相関する。密度の相関付けをさらに改善するため、1つまたはいくつかの温度において熱伝導率を付加的に測定することができ、相関付けに含めることができる。
【0015】
質量流量は、密度ρと流速vとの積ρ・vに比例する。
【0016】
【数2】
【0017】
但し、Aは流路の断面積を意味する。
マイクロ熱センサーによる熱伝導率の測定
集積型CMOS熱線アネモメータによって、マイクロ熱による熱伝導率の測定と質量流量の測定との両方が可能である。この技術に関しては、文献、D.マター(D.Matter)、B.クラマー(B.Kramer)、T.クライナー(T.Kleiner)、B.サバッティーニ(B.Sabbattini)、T.ズター(T.Suter)著、「新技術による家庭用マイクロエレクトロニクスガスメータ(Mikroelektonischer Haushaltsgaszaehler mit neuer Technologie[Microelectronic domestic gas meter with new technology])」、技術見本市(Technisches Messen)、第71巻、第3号(2004年)、p.137〜146が参照される。
【0018】
マイクロ熱測定を記述するためには、マイクロ熱システムを記述する1次元の熱伝導方程式が用いられる(カーソン フアン(Kerson Huang)著、「統計力学(Statistical Mechanics)」、第2版、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley&Sons)、ニューヨーク、1987年、ISBN 0−471−85913−3)。
【0019】
【数3】
【0020】
但し、
はX方向における、すなわちガス流れに沿う平均流速
【0021】
【数4】
【0022】
(速度ベクトル)の成分を意味し、
Tは温度を意味し、
【0023】
【数5】
【0024】
は温度勾配を意味し、
は一定圧力におけるガスの熱容量を意味し、
ρは密度を意味し、
λはガスの熱伝導率を意味し、
Tは温度Tに適用されるラプラス演算子を意味し、ここで、
【0025】
【数6】
【0026】
である。
ガス(ガス流れ)は、X方向にのみ流れるため、平均流速
【0027】
【数7】
【0028】
のY方向およびZ方向の成分vおよびvは0と想定される。ワット/mの単位を有するΘは、加熱要素のソースタームを表す。ソースタームは、マイクロ熱法においては、システムに熱エネルギーを供給する小型の集積型熱線アネモメータの加熱ワイヤから生じる。
【0029】
熱伝導率λは、ソースタームΘのために、方程式(3)の解に対して別個に作用することに注意しなければならない。逆に、マイクロ熱センサーが質量流量の適用なし(v=0および
【0030】
【数8】
【0031】
=0)で使用される場合に、熱伝導率を決定できる。その場合、温度分布に関する関連微分方程式は単純に、
【0032】
【数9】
【0033】
である。
さらに、温度分布は、ソースタームを変えることによって変化させることができる。これによって、異なる温度における熱伝導率の決定が可能になる。
【0034】
マイクロ熱センサーによる熱容量の決定
マイクロ熱システムにおける温度分布を記述する方程式(3)の解によって、その温度分布の測定により、フローファクターφを決定できる。
【0035】
【数10】
【0036】
但し、Aはマイクロ熱センサー上の流路の断面積を表し、
【0037】
【数11】
【0038】
は質量流量である。熱容量は、最終的に、既知の質量流量および既知の熱伝導率によって決定できる。
ガスの品質に関する特定の量の相関付け
音速cと、熱伝導率λと、熱容量cとに関する3つの独立の測定量が利用可能であり、それによって、発熱量などのガスの品質に関する特定の量Qを、相関関数fcorrによって相関付けることができる。
【0039】
Q=fcorr(センサー出力):=fcorr(Sout) (6)
「センサー出力」Soutは、出力量c、λおよびcの関数である。
out=f(c,λ,c) (7)
次の相関関数は、例えば、図2aに示す0℃および1013.25hPa(1013.25mbar)における密度比Q=ρ/ρrefの相関付けに対して得られる。
【0040】
【数12】
【0041】
但し、係数a=36、a=−65およびa=30であり、メタン(G20)が基準である。Soutは単に音速cである。
out=f(c,λ,c)=c (9a)
図2bは、0℃および1013.25hPa(1013.25mbar)における密度比Q=ρ/ρrefの、2つの異なる温度において測定された音速および熱伝導率に基づいて改善された相関付けを示す。
【0042】
図3aにおけるガスの品質に関する特定の量の相関付けの場合には、発熱量の例に対する式(8b)が次のように読まれる。
【0043】
【数13】
【0044】
但し、係数a=8.1、a=−11およびa=4.7であり、この場合もメタン(G20)が基準である。Soutは、この場合すべての3つの出力量の関数である。
【0045】
【数14】
【0046】
密度に関する式(8a)と発熱量に関する式(8b)とを相互に組み合わせることによって、次式、すなわち、
【0047】
【数15】
【0048】
で定義されるバーナの出力に関する尺度としてのウォッベ指数Wを、c、cおよびλを用いて別のガスの品質として相関付け得ることは、図2および図3aの結果から容易に理解できる。
【0049】
さらに別の例として、ガスの品質としてのZ因子または実際のガス因子を、音速cと、熱伝導率λと、熱容量cとの3つの独立の量から相関付けることができる。この因子は、実際のガスの挙動の理想気体の法則からの逸脱を表す。すなわち、
p・V=Z・R・T (11)
である。
【0050】
実際のガスの挙動は、特に高圧において、すなわち、正確には大型のガス輸送ライン内に生じる(従って特に考慮しなければならない)圧力において、理想気体の挙動から強く逸脱する。この適用においては、独立の量の決定を、同じ高圧において行う必要はなく、例えば、それぞれの測定装置の構成を遥かに容易に実施できる大気圧において行うことも可能である点が、関心の対象となる。図3bは、50hPa(50bar)におけるZ因子の次の基本的パラメータとの可能な相関関係を示す。
【0051】
【数16】
【0052】
但し、係数a=1.1、a=0.15、a=−0.29およびa=0.05であり、メタン(G20)が基準である。Soutは、この場合もすべての3つの出力量(大気圧における)の関数である。
【0053】
【数17】
【0054】
述べておくべきさらに別の例は動粘度η/ρ(粘度/密度)の相関付けである。この量は、流体力学において使用されるレイノルズ数Reにおいても見られ、慣性力対粘性力の比として理解できる。
【0055】
【数18】
【0056】
但し、ρは密度を意味し、vは流れの中の物体に対するガスの流速を意味し、dはその物体の特徴長さを意味する。従って、類似の物体の乱流挙動は、レイノルズ数が同じ場合、同一であることになる。このため、動粘度が既知であれば、例えば、配管システム内のガスに乱流が生じた場合、レイノルズ数を推定できる。これは、ガス配給ネットワークの場合には、そのようなネットワークの形態に関する重要な入力である。図3cは、動粘度η/ρとセンサー出力Soutとの間の相関関係を示す。
【0057】
【数19】
【0058】
但し、係数a=0.15およびa=0.85であり、メタン(G20)が基準である。Soutは、この場合もすべての3つの出力量の関数である。
【0059】
【数20】
【0060】
一方ではSoutの選択、および他方ではfcorrの選択も決して予め決定されるのではなく、結果としての相関誤差ができる限り小さくなるように自由に選択されるという点に注意しなければならない。式(8a)〜(8d)において述べた多項式の関数は、通常好結果が得られる典型的な選択であるが、一方、式(9a)〜(9d)は、むしろ物理的な相互関係を記述する試みである。
【0061】
本発明による方法は前記の例に限定されないことを例証するために、この方法によって決定できるガスの品質に関する特定の量のさらに別の例を以下に述べる。
メタン価。これは、気体燃料のノッキングの傾向に関するガスエンジン駆動装置における重要な指標である。ガスエンジン駆動装置は、定置方式(例えば熱電併給プラント)または移動分野(例えばガスエンジン車両、船舶など)のいずれかにおいて使用できる。
【0062】
「空気対燃料比」、すなわち、プロセスに供給されるべき空気の量。「空気対燃料比」の知識は、燃焼プロセスの効率化と排気ガス挙動との両方を最適化するために、例えば、開放火炎または触媒方式の場合(例えば高温燃料電池における改質プロセス)の燃焼プロセスにおいて、化学量論的に(例えば燃焼プラントにおいて)または過剰空気として(例えば希薄燃焼エンジンにおいて)関連している。
【0063】
メタン含有量。この監視は、例えばプロセス工業において重要である。バイオガスプラントにおいては、メタン含有量は、通常、原バイオガスにおいて(例えば発酵槽の効率に関する尺度として)、および/または、天然ガスネットワークに供給されるべきガスにおいて(例えば品質制御用として)、および/または、空気中に放出される残留ガス(メタンは高い温室効果を有するため、主としてメタンをできるだけ含まない二酸化炭素)において監視される。
【0064】
典型的な一実施形態における方法のステップ
1.ガスの圧力pおよび温度Tを測定するステップ。
2.流速vに比例する容積流量と、ほとんどのガスについて標準密度ρnormとよく相関する音速cとを超音波によって決定するステップ。
【0065】
3.標準密度ρnormの相関付けをさらに改善するために、マイクロ熱センサーによって測定される(1つまたはいくつかの温度Tにおける)熱伝導率λTiを含めるステップ。
【0066】
4.運転条件の下での密度を次式によって計算するステップ。
【0067】
【数21】
【0068】
5.ρ・vに比例する質量流量
【0069】
【数22】
【0070】
と、マイクロ熱センサーによって測定される熱伝導率λおよびフローファクターφと共に、熱容量cとを決定するために、この情報(v、ρ)を使用するステップ。
6.ガスの品質に関する所要の特定の量を、特に発熱量CV、音速c、熱伝導率λおよび熱容量cから相関付けるステップ。
【0071】
7.エネルギー消費量ΦEnは、必要であれば、それぞれ質量流量または容積流量と発熱量CVとの積(単位はJ/kgまたはJ/m)から決定できる。
本明細書においては、前記の標準密度ρnormは、指定された温度Tnormおよび指定された圧力pnormにおける密度として理解されるものとする。標準密度は、通常、0℃および1013.25hPa(1013.25mbar)において表現される。密度および音速の間の相関関係が既知である温度Tnormおよび圧力pnormに対して、他の値を決定することも可能である。
【0072】
本発明による方法および測定装置
本発明によるガスの品質に関する特定の量を決定するための方法においては、
− ガスまたはガス混合物が、超音波フローセンサーを貫通して流れ、かつマイクロ熱センサー上を流れ、
− ガスまたはガス混合物の温度および圧力が検出され、
− ガスまたはガス混合物の流速または容積流量と音速とが超音波フローセンサーによって決定され、
− ガスまたはガス混合物の密度が音速から相関付けられ、
− 密度情報が、流速と共に、質量流量を計算するのに用いられ、
− 1つまたはいくつかの温度におけるガスまたはガス混合物の熱伝導率がマイクロ熱センサーによって決定され、
− 質量流量および熱伝導率の情報と共に、ガスまたはガス混合物の熱容量または熱容量によって変化する量をフローファクターから決定するために、そのフローファクターがマイクロ熱センサーのフロー信号から計算され、
− および最後に、音速と、1つまたはいくつかの温度における熱伝導率と、熱容量または熱容量によって変化する量のいずれかとが、ガスの品質に関する特定の量、特に発熱量の相関付けに用いられる。
【0073】
超音波フローセンサーによって決定される音速は、必要であれば、標準温度における音速に変換できる。
有利な一実施形態においては、1つまたはいくつかの温度においてマイクロ熱センサーによって決定される熱伝導率が、音速と共に、密度のより正確な相関付けに用いられる。
【0074】
音速から、または音速および熱伝導率から相関付けられる密度を、例えば、標準密度とすることができる。音速から、または音速および熱伝導率から相関付けられる密度または標準密度は、ガスまたはガス混合物の温度および圧力によって、運転条件における密度に有利に変換される。
【0075】
この方法の有利な一実施形態においては、音速と、1つまたはいくつかの温度における熱伝導率と、熱容量または熱容量によって変化する量のいずれかとが、発熱量、またはウォッベ指数(W)、またはZ因子、または動粘度の相関関付けに用いられる。
【0076】
この方法の別の有利な一実施形態においては、エネルギー消費量が、例えば、容積流量または質量流量と発熱量との積を時間に関して積分することによって、容積流量または質量流量と共に発熱量から計算される。
【0077】
上記の方法と、上記の実施形態および変形形態とは、ガスの品質に関する特定の量および/またはエネルギー消費量の連続的な決定と、さらにまた間欠的な決定との両方に適している。
【0078】
本発明によるガスの品質に関する特定の量および/またはエネルギー消費量を決定するための測定装置は、上記の実施形態および変形形態のいずれかによる方法を実施するように構成される評価ユニットと、音速および流速測定用の超音波フローセンサーと、圧力測定用の圧力センサーと、温度測定用の温度センサーと、ガスまたはガス混合物の熱伝導率および熱容量または前記熱容量によって変化する量のいずれかの測定用のマイクロ熱センサーとを備えている。
【0079】
測定装置の第1実施形態においては、超音波フローセンサーおよびマイクロ熱センサーがガスライン内に配置され、および同じ質量流量を供給され得る。
この測定装置の第2実施形態においては、超音波フローセンサーが主たるガスライン内に、かつマイクロ熱センサーが主たるガスラインに対するバイパスガスライン内に配置され、およびバイパスガスライン内に質量流量を発生させるために、主たるガスライン内に、圧力低下を生じさせる要素が設けられる。
【0080】
上記の第1および第2実施形態においては、超音波フローセンサーが、ガスラインまたは主たるガスラインに非侵入方式で配置されることが有利である。
測定装置の第3実施形態においては、超音波フローセンサーおよびマイクロ熱センサーが、主たるガスラインに対するバイパスガスライン内に配置され、およびバイパスガスライン内に質量流量を発生させるために、主たるガスライン内に、圧力低下を生じさせる要素が設けられる。
【0081】
第2および第3実施形態におけるバイパスガスライン内および主たるガスライン内の質量流量の分割比は、例えば既知のガスで校正することによって有利に知られる。
上記の実施形態および変形形態には関係なく、測定装置は、付加的に、ガスラインまたは主たるガスラインの一部分、および/または、バイパスガスラインであって、測定装置のセンサーの少なくとも1つがその中に配置されるバイパスガスライン、および/または、主たるガスライン内に圧力低下を生じさせる要素を含むことができる。
【0082】
評価ユニットは、残りの測定装置と共にモジュラーユニットを形成する。用途によっては、測定装置は、評価ユニットなしでもモジュラーユニットを形成できる。その場合は、評価ユニットは別個のまたはより高レベルの計算ユニットの中に形成できる。
【0083】
ガスの品質に関する特定の量および/またはエネルギー消費量を決定するための本発明による方法および測定装置は、付加的なコンプレッサまたは真空ポンプを必要とすることなく、低圧のガスネットワークにおいても用いることができる利点を提供する。特許文献1に記載の測定装置においては、このコンプレッサまたは真空ポンプが設けられる。
【0084】
マイクロ熱センサーによって決定できる1つまたはいくつかの温度におけるガスまたはガス混合物の熱伝導率を、音速と共に、密度のより正確な相関付けを得るために用いることができる点がさらに有利である。これによって、より正確な質量流量の値がもたらされる。
【0085】
音速、熱伝導率および熱容量の3つの独立の変数からの、ガスの品質に関する特定の量の相関付けによって、前記の特許文献2による方法の場合よりさらに高い正確度の発熱量およびエネルギー消費量の決定が可能になる。
【発明の効果】
【0086】
本発明によれば、ガスの品質に関する特定の量を決定するための方法および測定装置が提供できた。
【図面の簡単な説明】
【0087】
図1a】マイクロ熱アネモメータの実施形態の概略形態を示す。
図1b】超音波フローセンサーの概略図を示す。
図2a】音速に基づく密度の決定(相関付け)の一例を示す。
図2b】音速および熱伝導率に基づく改良された密度の決定(相関付け)の一例を示す。
図3a】熱容量と熱伝導率と音速とに基づく発熱量の決定(相関付け)の一例を示す。
図3b】熱容量と熱伝導率と音速とに基づくZ因子の決定(相関付け)の一例を示す。
図3c】熱容量と熱伝導率と音速とに基づく動粘度の決定(相関付け)の一例を示す。
図4】主たるガスライン内における本発明による測定装置の概略形態の一実施形態を示す。
図5】主たるガスラインに対するバイパスガスライン内のマイクロ熱センサーを備えた本発明による測定装置の概略形態の第2の実施形態を示す。
図6】バイパスガスライン内の本発明による測定装置の概略形態の第3の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0088】
以下、本発明を、図面を参照してさらに詳細に説明する。
図1aは、本発明による測定装置において使用するマイクロ熱センサー7の一実施形態を示す。図1aに示すように、マイクロ熱センサーは、集積型マイクロ熱CMOS熱線アネモメータであって、運転時には、バイパスガスラインの一部分に配置されると共に、ガスまたはガス混合物の流れ2aを供給し得る熱線アネモメータとすることができる。マイクロ熱CMOS熱線アネモメータは、通常数マイクロメートルの厚さの膜14を含む基板13を含む。CMOS熱線アネモメータは、さらに、2つの熱電対15.1、15.2と、この2つの熱電対の間において流れの方向に配置できる加熱要素16とを備えている。温度は、熱電対15.1、15.2によって検出できるが、この温度は、ガスまたはガス混合物の流れ2aとの熱交換15.1a、15.2aの結果として得られるものである。
【0089】
集積型マイクロ熱CMOS熱線アネモメータの機能についてのさらなる詳細に関しては、前記の文献、D.マター(D.Matter)、B.クラマー(B.Kramer)、T.クライナー(T.Kleiner)、B.サバッティーニ(B.Sabattini)、T.ズター(T.Suter)著、「新技術による家庭用マイクロエレクトロニクスガスメータ(Mikroelektonischer Haushaltsgaszaeler mit neuer Technologie[Microelectronic domestic gas meter with new technology])」、技術見本市(Technisches Messen)、第71巻、第3号(2004年)、p.137〜146が参照される。
【0090】
図1bは、本発明による測定装置に用いる超音波フローセンサー4の実施形態を示す。例えば、いずれも音を発しかつ音を受け取る2つのユニット(例えばピエゾアクチュエータまたはレセプタ)17および18が、測定ライン上の斜めに向かい合う位置に配置される。アクチュエータ17から射出される音のパルスは、アクチュエータ18から同時に射出される音のパルスがレセプタ17に達するよりも速くレセプタ18に達する。音速cおよび流速vの両方は、この構成の形状因子と共に走行時間t12およびt21から計算できる。
【0091】
超音波センサーの機能性に関するさらなる詳細については、本明細書では、L.C.リンワーサ(L.C.Lynnwortha)、イー リウブ(Yi Liub)著、「超音波フローメータ:半世紀の進歩報告、1955−2005(Ultrasonic flowmeters:Half−century progress report、1955−2005)」、超音波(Ultrasonics)、第44巻、補遺(2006年)、p.e1371〜e1378が参照される。
【0092】
図4は、本発明による測定装置の概略形態の一実施形態を示す。この実施形態において、測定装置11は、本発明による方法を実施するように構成される評価ユニット10と、超音波フローセンサー4と、マイクロ熱センサー7と、圧力センサー8および温度センサー9とを含み、これらのうちのセンサーはガスライン1内に配置できる。これらの構成要素のいくつかまたはすべては、モジュラーユニットの中に組み込むことができるが、その場合、評価ユニット10は、そのモジュラーユニットの構成要素とすることができる(変形形態11a)か、あるいは、例えばより高レベルの計算ユニットの中に別個に取り付ける(変形形態11b)ことができる。
【0093】
図4の実施形態は、例えばガス分析の分野で生じるような小さくかつ微小なガス流れにおけるガスの品質に関する特定の量を決定する場合、および主としてガスの品質に関する情報が関係している場合に特に適している。
【0094】
図4の実施形態における測定装置は、例えば、分析ユニットとして、あるいは別個の分析装置として用いることが可能であり、その場合、その分析ユニットまたは分析装置は、ガスライン1であって、測定装置のセンサー4、7、8、9がその中に配置されるガスライン1を有利に含んでいる。この分析ユニットまたは分析装置によって、ガスのサンプルを採取して分析できる。このために必要な接続および弁は、図4には表示されていない。
【0095】
ガスおよびガスの混合物の品質に関する特定の量を決定するための本発明による方法の実施形態を、図4を参照して以下に説明する。この方法においては、ガスまたはガス混合物が、ガスライン1内において、超音波フローセンサー4を貫通して流れ、かつマイクロ熱センサー7上を流れる。ガスまたはガス混合物の圧力および温度、すなわち運転条件は、ガスライン内に追加的に配置される圧力センサー8および温度センサー9によって決定される。超音波センサーは、さらに、音速と、流速または容積流量とを測定する。密度の相関付けが、引き続いて、音速に基づいて行われ、その場合、相関付けによって決定された密度は、所定の温度および所定の圧力(運転条件)における密度に適切に変換される。
【0096】
さらに、1つまたはいくつかの温度におけるガスの熱伝導率が、マイクロ熱センサー7によって、熱線の加熱出力を変化させて測定される。必要であれば、この測定結果を密度の相関付けに含めることも可能である。続いて、質量流量が、密度および容積流量の値から計算される。ガスの熱容量と熱伝導率との間の比が、同様にマイクロ熱センサーによって測定されるフローファクターから計算され、既知の熱伝導率と共に、熱容量の値が計算される。引き続いて、音速と、熱伝導率と、熱容量とを用いて、ガスの品質に関する特定の量、例えば、発熱量またはウォッベ指数(W)またはZ因子または動粘度が相関付けられる。必要であれば、質量流量に発熱量を乗じてエネルギー消費量を決定できる。
【0097】
図5は、主たるガスライン1に対するバイパスガスライン6内にマイクロ熱センサー7を備えた本発明による測定装置11の概略形態の第2の実施形態を示す。この場合、バイパスガスラインを経由する運転中に、バイパスガスライン内にガス流れ2を導く圧力低下が形成されるように、主たるガスライン内に、圧力低下を生じさせる要素5が設けられる。これによって、主たるガスラインおよびバイパスガスラインの間の特徴的な流れの分割比3が得られる。
【0098】
図示の実施形態においては、測定装置は、マイクロ熱センサー7の他に、本発明による方法を実施するように構成される評価ユニット10と、通常主たるガスライン1内に配置される超音波フローセンサー4、圧力センサー8および温度センサー9とを含む。これらの構成要素のいくつかまたはすべては、モジュラーユニットの中に組み込むことができるが、その場合、評価ユニット10は、そのモジュラーユニットの構成要素とすることができる(変形形態11a)か、あるいは、例えばより高レベルの計算ユニットの中に別個に取り付ける(変形形態11b)ことができる。
【0099】
図5の実施形態は、ガスの品質に関する特定の量の決定用として、また、ガスの品質として発熱量を用いる場合は、例えば、家庭分野、工業用または管理輸送において生じる中規模から大規模のガス流れの場合のエネルギー消費量の測定用としても適している。
【0100】
超音波フローセンサー4は、必ずしもガスラインまたは主たるガスライン1内に装着する必要はなく、いわゆる「クランプ締め付け装置」として、ガスラインまたは主たるガスラインに外側から取り付けることも可能である。一方、マイクロ熱センサー7は、微小な流量しか必要としないため、バイパスガスライン6に配置することが好ましい。
【0101】
ガスおよびガスの混合物の品質に関する特定の量を決定するための本発明による方法の第2の実施形態を、図5を参照して以下に説明する。この方法においては、ガスまたはガス混合物が、主たるガスライン1内において、圧力低下を生じさせる要素5の上部を、またはそれを貫通して流れる。バイパスガスライン6は、圧力低下を生じさせる要素5の前で分岐し、その要素の後で、主たるガスラインに再結合する。ガスまたはガス混合物2の一部分は、圧力低下を生じさせる要素5によって、バイパスガスライン6を通り、かつそのライン内に配置されるマイクロ熱センサー7の上部を流れるように強制的に導かれる。超音波フローセンサー4には主たるガス流れが供給される。
【0102】
ガスまたはガス混合物の圧力および温度、すなわち運転条件は、主たるガスライン内に追加的に配置される圧力センサー8および温度センサー9によって決定される。音速と、流速または容積流量とが、超音波センサーによってさらに測定される。これに続いて、密度の相関付けが音速に基づいて行われ、その場合、相関付けによって決定された密度は、所定の温度および所定の圧力(運転条件)における密度に適切に変換される。
【0103】
さらに、1つまたはいくつかの温度におけるガスの熱伝導率が、マイクロ熱センサー7によって、熱線の加熱出力を変化させて測定される。必要であれば、この測定結果を密度の相関付けに含めることも可能である。続いて、主たるガスライン1を通る質量流量が、密度および容積流量の値によって計算される。さらに続いて、主たるガスラインおよびバイパスガスラインの間の質量流量の分割比を適切に用いて、バイパスガスライン内の質量流量を計算する。この分割比は、例えば既知のガスによる校正測定において前もって決定できる。
【0104】
ガスまたはガス混合物の熱容量と熱伝導率との間の比が、同様にマイクロ熱センサーによって測定されるフローファクターから計算され、既知の熱伝導率と共に、熱容量の値が計算される。引き続いて、音速と、熱伝導率と、熱容量とを用いて、ガスの品質に関する特定の量が相関付けられる。ガスの品質として発熱量を用いる場合は、主たるガスライン中の質量流量に発熱量を乗じることによって、エネルギー消費量が追加的に得られる。
【0105】
図6は、主たるガスライン1に対するバイパスガスライン6内の本発明による測定装置11の概略形態の第3の実施形態を示す。この場合、運転中に、バイパスガスラインを経由する圧力低下であって、バイパスガスライン内のガス流れ2を生じさせる圧力低下が形成されるように、主たるガスライン内に、圧力低下を生じさせる要素5が設けられる。これによって、主たるガスラインおよびバイパスガスラインの間の特徴的な流れの分割比3が形成される。
【0106】
図示の実施形態においては、測定装置は、本発明による方法を実施するように構成される評価ユニット10と、バイパスガスライン6内に配置される超音波フローセンサー4およびマイクロ熱センサー7とを含む。この測定装置は、さらに、ほとんどの場合、バイパスガスライン6内に配置される圧力センサー8および温度センサー9を含む。これらの構成要素のいくつかまたはすべては、モジュラーユニットの中に組み込むことができ、その場合、評価ユニット10は、そのモジュラーユニットの構成要素とすることができる(変形形態11a)か、あるいは、例えばより高レベルの計算ユニットの中に別個に取り付ける(変形形態11b)ことができる。
【0107】
図6の実施形態は、超音波センサー4がマイクロテクノロジーにおいて形成され、かつそのセンサーが、マイクロ熱センサー7と同様に、微小な流量しか必要としない場合に、構成することが望ましい。その際、両センサーは、バイパスガスライン6内に配置するのが有利である。
【0108】
ガスおよびガスの混合物の品質に関する特定の量を決定するための本発明による方法の第3の実施形態を、図6を参照して以下に説明する。この方法は、ガスの品質に関する特定の量および/またはエネルギー消費量の連続的および間欠的な決定の両方に適する。場合によって必要になる接続および弁は、図6には表示されていない。
【0109】
この方法の第3の実施形態においては、ガスおよびガスの混合物は、主たるガスライン1内において、圧力低下を生じさせる要素5の上部を、またはそれを貫通して流れる。バイパスガスライン6は、圧力低下を生じさせる要素5の前で分岐し、その要素の後で、主たるガスラインに再結合する。ガスまたはガス混合物の一部分2は、圧力低下を生じさせる要素5によって、バイパスガスライン6を通って、超音波フローセンサー4を貫通し、かつそのバイパスガスライン内に配置されるマイクロ熱センサー7の上部を流れるように強制的に導かれる。超音波フローセンサー4およびマイクロ熱センサー7には、同じガス流れが供給される。
【0110】
ガスまたはガス混合物の圧力および温度、すなわち運転条件は、バイパスガスライン内に追加的に配置される圧力センサー8および温度センサー9によって決定される。音速と、流速または容積流量とが、超音波センサーによってさらに測定される。これに続いて、密度の相関付けが音速に基づいて行われ、その場合、相関付けによって決定された密度は、所定の温度および所定の圧力(運転条件)における密度に適切に変換される。
【0111】
さらに、1つまたはいくつかの温度におけるガスの熱伝導率が、マイクロ熱センサー7によって、熱線の加熱出力を変化させて測定される。必要であれば、この測定結果を密度の相関付けに含めることも可能である。続いて、バイパスガスライン6を通る質量流量が、密度および容積流量の値によって計算される。
【0112】
ガスの熱容量と熱伝導率との間の比と、既知の熱伝導率と共に熱容量の値とが、同様にマイクロ熱センサーによって測定されるフローファクターから計算される。続いて、音速と、熱伝導率と、熱容量とを用いて、ガスの品質に関する特定の量が相関付けられる。
【0113】
上記の測定および計算は、バイパスガスラインに関するものであるため、主たるガスラインにおける質量流量を計算するためには、主たるガスラインおよびバイパスガスラインの間の質量流量の分割比が用いられる。この分割比は、例えば既知のガスによる校正測定において前もって決定できる。ガスの品質に関する特定の量として発熱量が決定された場合は、主たるガスライン中の質量流量に発熱量を乗じることによって、エネルギー消費量が追加的に得られる。
【0114】
本発明による方法および測定装置と、ガスの品質に関する特定の量および/またはエネルギー消費量を決定するための上記の実施形態および変形形態とは、高圧および低圧のガスネットワークにおいて使用可能であると共に、音速、熱伝導率および熱容量の3つの独立の変数からの相関付けのために、上記の量の決定において、相対的に高レベルの正確さを提供する。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図4
図5
図6