特許第6517814号(P6517814)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6517814
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】高表面積光触媒材料
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/24 20060101AFI20190513BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20190513BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20190513BHJP
【FI】
   B01J27/24 M
   B01J35/02 J
   B01J35/02 311Z
   B01J37/08
【請求項の数】21
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-540393(P2016-540393)
(86)(22)【出願日】2014年9月4日
(65)【公表番号】特表2016-532555(P2016-532555A)
(43)【公表日】2016年10月20日
(86)【国際出願番号】US2014054137
(87)【国際公開番号】WO2015035078
(87)【国際公開日】20150312
【審査請求日】2017年6月23日
(31)【優先権主張番号】14/020,683
(32)【優先日】2013年9月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サンバンダン,エカンバラン
(72)【発明者】
【氏名】ムケルジー,ラジェシュ
(72)【発明者】
【氏名】福村 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】望月 周
【審査官】 佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−506627(JP,A)
【文献】 特開2009−167097(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0266136(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0196845(US,A1)
【文献】 特開2007−284277(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0311169(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102527420(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第103157477(CN,A)
【文献】 英国特許出願公開第02416778(GB,A)
【文献】 特開平10−259023(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103272639(CN,A)
【文献】 国際公開第2013/109507(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103041794(CN,A)
【文献】 特開2008−297147(JP,A)
【文献】 GONZALEZ-CORTES,S.L. and IMBERT,F.E.,Fundamentals, properties and applications of solid catalysts prepared by solution combustion synthesis (SCS),Applied Catalysis A: General,NL,Elsevier,2012年12月 8日,Vol.452,pp.117-131
【文献】 MAPA,M. and GOPINATH,C.S.,Combustion Synthesis of Triangular and Multifunctional ZnO1-xNx (x≦0.15) Materials,Chemistry of Materials,米国,ACS Publications,2008年12月19日,Vol.21,pp.351-359
【文献】 WEN,C.Z. et al.,Synthesis of micro-sized titanium dioxide nanosheets wholly exposed with high-energy {001} and {100} facets,Chemical Communications,英国,The Royal Society of Chemistry,2011年 5月11日,Vol.47,pp.4400-4402
【文献】 PEREGO, C. et al.,Nanocrystalline Brookite with Enhanced Stability and Photocatalytic Activity: Influence of Lanthanum(III) Doping,Applied Materials & Interfaces,米国,ACS Publicatiosn,2011年12月27日,Vol.4,pp.752-760
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
C09D 1/00 − 10/00
C09D 101/00 − 202/10
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタンを含む光触媒組成物の薄肉構造を含むナノ構造を含み、前記光触媒組成物の薄肉構造は、第1の表面と、反対側の第2の表面とによって定義されており、
前記光触媒組成物の薄肉構造が、前記第1の表面の面積の平方根より実質的に小さい厚みを有し、
前記光触媒組成物の薄肉構造の厚みが、10nm〜200nmであり、
前記光触媒組成物の薄肉構造が自立している、
少なくとも150m/gのブルナウアー(Brunauer)−エメット(Emmett)−テラー(Teller)(BET)比表面積を有する、
光触媒材料。
【請求項2】
前記ブルナウアー(Brunauer)−エメット(Emmett)−テラー(Teller)(BET)比表面積が500m/g以下である、請求項1に記載の光触媒材料。
【請求項3】
前記ナノ構造が、ナノシート形状、ナノフレーク形状、擬平面形状またはリボン形状である、請求項1又は2に記載の光触媒材料。
【請求項4】
前記ナノ構造の少なくとも一部が波状である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光触媒材料。
【請求項5】
前記ナノ構造が、前記光触媒組成物の薄肉構造を通って前記第1の表面から前記第2の表面に伸びる孔を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光触媒材料。
【請求項6】
前記ナノ構造が、前記光触媒組成物の薄肉構造を通って前記第1の表面から前記第2の表面に伸びる孔を含まない、請求項1〜のいずれか一項に記載の光触媒材料。
【請求項7】
前記光触媒組成物の薄肉構造の厚みが、10nm〜25nmである、請求項1〜のいずれか一項に記載の光触媒材料。
【請求項8】
前記第1の表面の面積の平方根が、前記光触媒組成物の薄肉構造の厚みの少なくとも10倍である、請求項1〜のいずれか一項に記載の光触媒材料。
【請求項9】
前記光触媒組成物に、炭素、窒素または銀がドープまたは担持されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の光触媒材料。
【請求項10】
前記光触媒組成物が、チタンおよびスズの酸化物を含み、炭素、窒素および銀がドープまたは担持されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の光触媒材料。
【請求項11】
前記光触媒組成物が、組成物中の金属原子の総数に基づいて、40%〜99%のチタンを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の光触媒材料。
【請求項12】
前記光触媒組成物が、組成物中の金属原子の総数に基づいて、0%〜20%のスズを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の光触媒材料。
【請求項13】
前記光触媒組成物が、組成物の総質量に基づいて、0%〜20%の銀を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の光触媒材料。
【請求項14】
前記光触媒組成物が、組成物の総質量に基づいて、0.3%〜1%の炭素を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の光触媒材料。
【請求項15】
前記光触媒組成物が、組成物の総質量に基づいて、0.1%〜0.4%の窒素を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の光触媒材料。
【請求項16】
前記光触媒組成物が、組成物の総質量に基づいて、0.3%〜1%の炭素、及び0.1%〜0.4%の窒素を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の光触媒材料。
【請求項17】
自立している前記光触媒組成物の薄肉構造が、前記光触媒材料の少なくとも5%である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の光触媒材料。
【請求項18】
自立している前記光触媒組成物の薄肉構造が、前記光触媒材料の少なくとも20%である、請求項17に記載の光触媒材料。
【請求項19】
自立している前記光触媒組成物の薄肉構造が、前記光触媒材料の少なくとも50%である、請求項17に記載の光触媒材料。
【請求項20】
自立している前記光触媒組成物の薄肉構造が、前記光触媒材料の少なくとも90%である、請求項17に記載の光触媒材料。
【請求項21】
前記光触媒材料が粉末を含む、請求項1〜20のいずれか一項に記載の光触媒材料。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
可視光によって活性化される光触媒は、自浄化、空気及び水の精製のため並びに通常、配置後再生不能エネルギーコストを全く伴わない多数のその他の適用のために配置できる。これは、光触媒が、太陽放射又は室内及び屋外照明のような周囲で利用可能な光を使用して汚染物質(染料、揮発性有機化合物及びNOxのような)を分解可能であることによる。UVを含まない室内照明(LED及びOLEDのような)の予想される迅速な採用に伴って、室内適用において、例えば、家庭内の、公共の及び商業的空間の室内空気の、特に、航空機、公共建築物などのような密閉された空間中の室内空気の清浄において、可視光によって活性化される光触媒を配置する方法を見出すことは重要である。さらに、抗菌表面及び自浄化材料のさらなる適用は、飲食物の提供サービス、輸送、健康管理及びホスピタリティー部門において広い適用性を有し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
光触媒の活性レベルを増強することが継続的に求められている。高表面積光触媒は、高活性材料についても、改善された光触媒活性を有する可能性があり得る。したがって、適宜ドープされるか、担持した高表面積光触媒は、増強された活性の可能性を有する。また、これら高活性な、最適にドープされるか、担持した高表面積光触媒を安価に迅速に製造する製造法も求められている。
【課題を解決するための手段】
【0003】
薄いナノ構造を含む光触媒材料が本明細書に記載されている。例えば、触媒材料は、光触媒組成物の薄肉構造を有するナノ構造を含み得、ここで、光触媒組成物の薄肉構造は、第1の表面と、反対側の第2の表面とによって定義される。光触媒組成物は、無機化合物を含み得る。第1の表面および第2の表面は、薄肉構造の厚みまたはナノ構造の厚みと比較して比較的大きいものであり得る。
【0004】
いくつかの実施形態は、無機化合物を含む光触媒組成物の薄肉構造を含むナノ構造を含み、光触媒組成物の薄肉構造は、第1の表面と、反対側の第2の表面とによって定義されており、光触媒組成物の薄肉構造は、第1の表面の面積の平方根より実質的に小さい厚みを有する、光触媒材料を包含する。
【0005】
いくつかの実施形態は、光触媒前駆体、還元剤および酸化剤を含む液体分散物を、燃焼を開始するのに十分な温度で加熱する工程を含み、加熱する工程が、固体生成物を形成するのに十分な時間継続する、本明細書に記載される光触媒などの高表面積光触媒を製造する方法を包含する。
【0006】
これらの光触媒材料のいずれに関しても、いくつかの実施形態において、光触媒組成物の薄肉構造は、自立している。
【0007】
これらおよびその他の実施形態が本明細書により詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、ナノ構造のx寸法、y寸法およびz寸法の決定において支援を提供する図である。
図2図2は、xz面で見ると実質的に長方形の、擬平面形状の材料として、および/または湾曲したもしくは波状のナノフレーク形状の材料として記載され得る形状の理想的な例を表す図である。
図3図3は、実質的に擬平面の形状の材料として、および/または湾曲したもしくは波状のナノフレーク形状の材料として記載され得る形状の理想的な例を表す図である。
図4図4は、面上で実質的にすべて直角を有する形状の理想的な例を表す図である。
図5図5は、実質的に直角ではない可能性もある角度を有する擬平行四辺形の形状の理想的な例を示す図である。
図6図6は、実質的にカプセル形状の孔の理想的な例を表す図である。
図7図7は、実施例10の光触媒材料の走査電子顕微鏡(SEM)像を表す図である。
図8図8は、実施例11から得られた光触媒材料(材料A)のSEM像を表す図である。
図9図9は、実施例11から得られたHR(高解像度)SEM像材料Aを表す図である。
図10図10は、実施例10の光触媒材料のX線回折(XRD)パターンを表す図である。
図11図11は、実施例1、10および比較例1のDRS比較を表す図である。
図12図12は、多孔質光触媒ナノシート形状のおよび/またはナノフレーク形状の材料(実施例11から得られた材料B)のSEM像を表す図である。
図13図13は、多孔質光触媒ナノシート形状のおよび/またはナノフレーク形状の材料(実施例11から得られた材料B)のSEM像を表す図である。
図14図14は、多孔質光触媒材料(実施例11から得られた材料C)のSEM像を表す図である。
図15図15は、多孔質光触媒材料(実施例11から得られた材料C)のSEM像を表す図である。
図16図16は、多孔質光触媒材料(実施例11から得られた材料C)のSEM像を表す図である。
図17図17は、多孔質光触媒材料(実施例11から得られた材料C)のSEM像を表す図である。
図18図18は、実施例11の実験の模式図である。
図19図19は、実施例11から得られた材料A、BおよびCのXRDである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
光触媒組成物の自立した薄肉構造は、単独でまたはその自身の基盤の上に、または支持体もしくは取り付け具を含まずに立つ構造を含む。例えば、実質的に基板に付着されない、粉末の部分である、または光触媒組成物の存在下で液体もしくはガスを撹拌することによって液体もしくはガス中に分散され得る(その結果、構造は、何ものにも付着されない)任意の薄肉構造を含み得る。
【0010】
任意の量の光触媒組成物または光触媒材料が、自立した薄肉構造であり得る。いくつかの実施形態では、自立している光触媒組成物の薄肉構造は、光触媒材料の少なくとも約1%、少なくとも約5%、光触媒材料の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%である。
【0011】
いくつかの実施形態では、自立している光触媒組成物の薄肉構造は、光触媒組成物の少なくとも約1%、少なくとも約5%、光触媒組成物の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%である。
【0012】
いくつかの実施形態では、光触媒材料は、粉末を含む。例えば、光触媒組成物の少なくとも約1%、少なくとも約5%、光触媒組成物の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%は、粉末であり得る。いくつかの実施形態では、光触媒材料の少なくとも約1%、少なくとも約5%、光触媒材料の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%は、粉末である。
【0013】
本明細書に記載される光触媒材料(本明細書において以下「光触媒材料」と呼ばれる)は、一般に、1種以上のナノ構造、通常、複数のナノ構造を含む。ナノ構造は、ナノメートルからミクロンの範囲の寸法を有する構造を含む。ナノ構造は、光触媒組成物の相当な部分であり得る、例えば、ナノ構造は、光触媒材料の質量の少なくとも10%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%または実質的にすべてであり得る。
【0014】
本明細書に記載されるナノ構造(本明細書において以下「ナノ構造」と呼ばれる)は、光触媒組成物を含み、および/または光触媒組成物から構成される。ナノ構造は、通常、光触媒組成物の薄肉構造の形態である。光触媒組成物の薄肉構造は、第1の表面と、光触媒組成物の薄肉構造の反対側の第2の表面とによって定義される。光触媒組成物の薄肉構造は、第1の表面の面積の平方根より実質的に小さい厚みを有する。通常、薄肉構造の厚みは、ナノ構造の厚みと同一である。
【0015】
いくつかの実施形態では、第1の表面は、第2の表面の同一平面上の面積と実質的に同一である同一平面上の面積を有する。いくつかの実施形態では、第1の表面は、第2の表面の同一平面上の面積より実質的に大きい同一平面上の面積を有する。「同一平面上の面積」は、広義の用語であるが、表面の同一平面上の面積を決定する1つの方法は、考慮中の表面を滑らかで平坦な表面上に置き、滑らかで平坦な表面と接触する表面の面積を測定することであり得る。言い換えれば、表面の「同一平面上の面積」は、その正射影の面積と同等である。
【0016】
いくつかの実施形態では、第1の表面は、第2の表面の面積と実質的に同一である面積を有する。いくつかの実施形態では、第1の表面は、第2の表面の面積よりも実質的に大きい面積を有する。
【0017】
第1の表面および/または第2の表面は、平坦であり得るが、平坦である必要はない。例えば、ナノ構造は、平面的またはそれに近いものであり得る。ナノ構造はまた、湾曲していてもよい。例えば、ナノ構造は、第1の表面が、中空球または円柱の一部またはすべての外表面であり得、第2の表面が、中空球または円柱の一部またはすべての内表面であり得るよう、中空球または中空の円柱の部分または一部と類似し得る。あるいは、第1の表面が、内表面であり得、第2の表面が、外表面であり得る。ナノ構造はまた、平面の形状および湾曲した形状の組合せである構造であり得る。ナノ構造は、薄肉構造にわたって実質的に均一な厚みを有し得るか、または薄肉構造内で変わる厚みを有し得る。
【0018】
通常、ナノ構造または薄肉構造の厚みは、ナノメートルの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、厚みは、約10nm〜約200nm、約10nm〜約100nm、約10nm〜約50nm、約20nm〜約30nmまたは約20nm〜約25nmである。
【0019】
いくつかの実施形態では、光触媒材料中のナノ構造の少なくとも10%、少なくとも30%、少なくとも50%または少なくとも80%は、約10nm〜約300nm、約10nm〜約200nm、約10nm〜約100nm、約10nm〜約50nm、約20nm〜約30nmまたは約20nm〜約25nmの厚みを有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、光触媒材料中のナノ構造の少なくとも10%、少なくとも30%、少なくとも50%または少なくとも80%は、約10nm〜約300nm、約10nm〜約200nm、約10nm〜約100nm、約10nm〜約50nm、約20nm〜約30nmまたは約20nm〜約25nmの厚みを有する。
【0021】
いくつかの実施形態では、光触媒材料中のナノ構造の平均厚みは、約10nm〜約300nm、約10nm〜約200nm、約10nm〜約100nm、約10nm〜約50nm、約20nm〜約30nmまたは約20nm〜約25nmである。
【0022】
第1の表面または第2の表面などのナノ構造の表面は、ナノ構造の厚みより大幅に大きい面積を有する。例えば、表面における2寸法の平均または表面積の平方根は、例えば、ナノ構造の厚みよりも1桁以上大幅に大きいものであり得る。いくつかの実施形態では、第1の表面の面積の平方根は、光触媒組成物の薄肉構造の少なくとも3倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも100倍、約10倍〜約100,000倍、約10倍〜約1000倍、約3倍、約5倍、約10倍、約20倍、約100倍、約1000倍、約10,000倍もしくは約100,000倍の厚みまたはこれらの割合のいずれかによって境界された範囲中の、もしくはそれらの間の任意の値である。
【0023】
ナノ構造は、不規則な形状であり得るが、3寸法、x、yおよびzは、図1に表されるように定量化され得る。箱120長方形角柱の形状がナノ構造110の周りに形成される場合には、x寸法は、箱の最長寸法であり、y寸法は、箱の2番目に長い寸法であり、z寸法は、箱の3番目に長い寸法である。言い換えれば、寸法x、yおよびzは、材料またはその断片の最長寸法、2番目に長い寸法および3番目に長い寸法の正射影と同等である。これらの寸法は、粉砕、ボールミル粉砕、ビーズミル粉砕または衝撃破砕を含めた方法による材料のさらなる断片化によって変更され得る。当技術分野で博識の技術者にとって、断片化は、ナノフレーク形状の、ナノシート形状の、リボン形状のまたは擬平面の形状の材料を含めた高表面積構造の種々の実施形態の基本的な説明を変更しないことは明らかであるはずである。
【0024】
ナノ構造の3寸法形状は、特定の面で見られた場合のナノ構造の形状を説明することを特徴とし得る。例えば、ナノ構造は、xy、xzまたはyz面の2寸法で見られた場合に、実質的に長方形、実質的に正方形、実質的に楕円形、実質的に菱形、実質的に円形、実質的に三角形、実質的に平行四辺形、実質的に多角形などであり得る。特定の形状は、幾何学的に完全である必要はないが、既知形状と合理的に同様であると認識可能である必要だけはある。ナノ構造の3寸法形状はまた、その他の用語を使用して特性決定されてもよく、説明されてもよい。
【0025】
図2は、xz面で見られる場合に実質的に長方形220であるナノ構造210の理想的な例を表す。この図で表されるように、ナノ構造は、完全に長方形と思われるが、形状は、xz面または任意のその他の面で見られた場合に実質的に長方形であるよう長方形と同様であると認識可能であることだけが必要である。
【0026】
ナノ構造210はまた、ナノフレーク形状として記載され得る。用語「ナノフレーク」は、形状がフレーク様であるナノ構造を含む広義の用語である。これは、1寸法(例えば、z)で相対的に薄く、別の2寸法(例えば、xy)で相対的に大きい面積を有するナノ構造を含み得る。
【0027】
大きな面積の表面は、同定可能であることのみを必要とするが、平面であることは必要としない。例えば、ナノ構造210などの大きな面積の表面は、実質的にxy面にあり得るが、湾曲したまたは波状でもあり得、その結果、表面の少なくとも一部分または相当な部分は、面にない。
【0028】
ナノ構造210はまた、擬平面として記載され得る。用語「擬平面」は、本質的に平面であるナノ構造を含む広義の用語である。例えば、擬平面ナノ構造は、実質的にxy面にあるナノ構造のxy面積と比較して相対的にわずかなz寸法を有し得る。
【0029】
いくつかのナノ構造の少なくとも一部分は、波状であり得る。用語「波状」とは、湾曲の実質的に正および負の半径の領域を有する形態を指す。波状のナノ構造の異なる領域の湾曲の正および負の半径の大きさは、互いに等しくても、等しくなくてもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、湾曲の半径の大きさは、約1nmから約10μmの間、約1nmから約1μmの間、約1nmから約100nmの間および/または約1nmから約50nmの間である。
【0031】
図3では、ナノ構造250は、湾曲したまたは波状のナノフレーク形状のナノ構造の一例である。表面の相当な部分が面にない場合には、ナノフレーク形状のナノ構造は、大きな湾曲したまたは波状の表面260および表面上の所与の点280に対して垂直である小さい厚み270を有するナノ構造を含み得る。
【0032】
図4は、xy面において実質的にすべての実質的に直角を有するナノ構造310の理想的な例を表す。この図には表されていないが、いくつかのナノ構造は、実質的にすべての実質的に直角を有さないこともあるが、少なくとも1つの実質的に直角を有し得る。この図のナノ構造310はまた、擬似平行四辺形または多角形として記載されてもよい。多角形は、凸面または凹面であり得る。凸面多角形のすべての内角は、180°未満である。1つ以上の180°より大きい内角を有する多角形は、凹面多角形と定義される。擬似平行四辺形ナノ構造は、xy、xzまたはyz面の2寸法で見られる、実質的に平行であるナノ構造の外縁の2つの実質的に直線の部分を含み得る。この開示の目的上、擬似平行四辺形または多角形の境界線は、完全に直線でなくともよいが、実質的にのみ直線である。
【0033】
ナノ構造の外縁は、本質的に、複数の線形縁部分からなり得る。
【0034】
図4に表されるものなどの擬似平行四辺形の形状のナノ構造は、実質的に直角を有していてもよく、または実質的に直角でない角度を有していてもよい。
【0035】
図5は、実質的に直角でない角度を有する擬似平行四辺形の形状のナノ構造410の理想的な例である。
【0036】
ナノ構造は、リボンの形状と類似していると合理的に認識可能である形状を有する場合には、リボン形状として記載され得る。これは、ある寸法で伸長されており、別の寸法で薄い平坦な長方形表面を有するナノ構造を含み得る。リボン形状はまた、湾曲して、ねじれて、束になっている場合もあり(縦方向におよび/または横方向に圧縮されて)またはそれらの組合せである場合もあり、その結果、ナノ構造は、リボンの形状であるために実質的に同一平面上にある必要はない。
【0037】
ナノ構造は、シートの形状と類似していると合理的に認識可能である形状を有する場合には、ナノシート形状として記載され得る。これは、ある寸法で伸長されており、別の寸法で薄い平坦な長方形表面を有するナノ構造を含み得る。ナノシート形状はまた、束になって(縦方向におよび/または横方向に圧縮されて)、湾曲して、またはねじれている場合もあり、またはそれらの組合せである場合もあり、その結果、ナノ構造は、ナノシート形状であるために実質的に同一平面上にある必要はない。
【0038】
いくつかの実施形態では、光触媒材料の少なくともいくつかの部分は、ナノシートの形態の1つ以上のナノ構造を含み得る。ナノシート形状のナノ構造は、2つの最大寸法よりも実質的に小さいある寸法を有する材料の断片であり得、ここで、最小寸法がナノメートルである、例えば、約1000nm未満である。いくつかの実施形態では、ナノシート形状のナノ構造の最小寸法は、最大寸法の約10%未満であり得る。いくつかの実施形態では、ナノシート形状のナノ構造の最小寸法は、最大寸法の約1%未満である。いくつかの実施形態では、ナノシート形状のナノ構造の最小寸法は、最大寸法の約0.1%未満である。
【0039】
いくつかの実施形態では、ナノシート形状のナノ構造の境界表面のいずれかまたは両方は、少なくとも1つの凹面または凸面特徴またはそれらの組合せを有する。いくつかの実施形態では、ナノシート形状のナノ構造は、少なくとも第1の表面または第2の表面上のすべての点で湾曲の実質的に同一半径を有する。いくつかの実施形態では、第1の表面および第2の表面(ナノシート形状のナノ構造の)のうち大きい方は、湾曲の変動する半径を有する。いくつかの実施形態では、ナノシート形状のナノ構造の第1の表面および第2の表面は、湾曲の付随して変動する半径を有する。いくつかの実施形態では、凸型および凹型部分は、凸型部分間のピッチ、凹型部分間のピッチ、凸型部分の高さおよび凹型部分の深さのうち2以上によって定義され得る。
【0040】
図6は、実質的にカプセル剤の形状の孔1010の理想的な例を表す。xyまたはxz面で見られる場合に、孔1010はまた、実質的に卵形として記載され得る。yz面で見られる場合に、孔1010はまた、実質的に円形として記載され得る。
【0041】
孔は、円柱の形状と同様であると合理的に認識可能である形状を有する場合に、円柱の形状として記載され得る。これは、ある寸法で伸長されている孔を含み得る。円柱の形状の孔は、実質的に直線であり得るか、またはいくつかの湾曲もしくは屈曲を有し得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、ナノ構造は、ナノシート形状、ナノフレーク形状、擬平面形状またはリボン形状である。
【0043】
ナノ構造の形状は、光触媒材料が大きな表面積を有するのに役立ち得る。例えば、光触媒材料は、少なくとも30m/g、少なくとも約50m/g、少なくとも約70m/g、少なくとも約100m/g、少なくとも約150m/g、少なくとも約200m/g、約70m/g〜約500m/g、約100m/g〜約300m/g、約150m/g〜約250m/g、約170m/g〜約220m/g、約180m/g〜約200m/g、約190m/gまたは191m/gのブルナウアー(Brunauer)−エメット(Emmett)−テラー(Teller)(BET)比表面積を有し得る。大きな表面積は、光触媒活性を改善するのに役立ち得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、ナノ構造は、実質的に透明または半透明である。いくつかの実施形態では、光触媒材料は、入射放射線、例えば、uvおよび/または可視光に対して、少なくとも55%透明、65%透明、75%透明、80%透明、85%透明、90%透明および/または少なくとも95%透明である。
【0045】
いくつかの実施形態では、光触媒材料は、有機バインダー、無機バインダーまたはそれらの混合物などの材料を含有し得るマトリックス中に分散され得る。適した有機バインダーとして、シリコン、エポキシ、PMMAなどが挙げられる。適した無機バインダーとして、シリカ、セリア、アルミナ、アルミノケイ酸、アルミン酸カルシウムなどが挙げられる。
【0046】
図8〜9は、実際の光触媒材料のSEM像を表す。すべてのSEM像を、FEI Inspect F SEM; 2007モデル、バージョン3.3.2を使用して記録した。これらの図では、「mag」は、像の倍率レベルを示す。「mode」は、像を作製するために使用された検出器の種類を示し、ここで、「SE」は、二次電子モードを表し、「HV」は、kVでの、像を作製するために使用された電子ビームの加速電圧を示し、「WD」は、mmでの、検出器と撮像される実際の表面間の作動距離を示し、「spot」は、像獲得の時点での電子ビーム径の単位なし指標を示す。
【0047】
図8〜9は、光触媒材料の一実施形態のSEM像を表す。徹底的なものではないが、以下の説明は、xy面で見られた場合のこれらの図におけるナノ構造のうち少なくとも1つに当てはまり得る:擬似平行四辺形、少なくとも1つの実質的に直角および実質的にすべての実質的に直角。徹底的なものではないが、以下の説明は、yz面で見られた場合のこれらの図におけるナノ構造のうち少なくとも1つに当てはまり得る:実質的に長方形、実質的に直線および実質的にすべての実質的に直角。徹底的なものではないが、以下のその他の説明もこれらの図におけるナノ構造のうち少なくとも1つに当てはまり得る:ナノフレーク形状、ナノシート形状、リボン形状および擬平面形状。
【0048】
図8のSEMには4μmのスケールバーが示されており、これは、ナノ構造の大きさの指標を提供し得る。ナノシートまたはナノフレークの厚みのいくつかの指標を提供する図9は、300nmのスケールバーを有する。
【0049】
ナノ構造は、完全に固体であり得るか、またはナノ構造内にまたはナノ構造中に伸びる、割れ目、空隙または孔があり得る。例えば、いくつかのナノ構造は、光触媒組成物の薄肉構造を通って第1の表面から第2の表面に伸びる孔を含み得る。あるいは、ナノ構造は、光触媒組成物の薄肉構造を通って第1の表面から第2の表面に伸びる孔を含まない場合もある。
【0050】
いくつかの実施形態では、いくつかの孔は、1つのみの開放部を有し、材料本体の内側で末端切断型である、すなわち、それらは出口のない孔または閉じた孔である。いくつかの実施形態では、出口のない孔の出口のない末端は、光触媒材料の境界表面上の泡のように見える(例えば、図13を参照のこと)。
【0051】
いくつかの実施形態では、光触媒材料の少なくとも一部は、波状であり多孔質である。
【0052】
いくつかの実施形態では、光触媒材料の少なくとも一部は、複数の孔を含む。いくつかの実施形態では、複数の孔は、ナノ構造のクラスターまたは集合体中の相互接続した多孔質ネットワークであり得る。いくつかの実施形態では、多孔質ネットワークは、非周期的である。いくつかの実施形態では、その中で定義される孔は、全般的に、球形である。いくつかの実施形態では、全般的に球形の孔の少なくとも一部は、相互接続している。いくつかの実施形態では、全般的に球形の孔は、約5nm〜約5μmの間の直径である。いくつかの実施形態では、孔の少なくとも一部は、全般的に円柱形である。いくつかの実施形態では、全般的に円柱形の孔の少なくとも一部は、互いに実質的に平行である。いくつかの実施形態では、全般的に円柱形の孔の少なくとも一部は、相互接続している。いくつかの実施形態では、孔は、約5nm〜約5μmの間の直径を有する。いくつかの実施形態では、全般的に円柱形の孔の少なくとも一部は、境界表面の一方に対して直角に向いている。いくつかの実施形態では、多孔質ネットワークは、非周期的である。多孔質ナノ構造の例は、図14から16に見られる。
【0053】
光触媒組成物は、遷移金属;第III、IVまたはV族金属、アルカリ土類金属または希土金属を有する無機化合物などの無機化合物を含む。無機化合物は、遷移金属;第III、IVまたはV族金属、アルカリ土類金属または希土金属の酸化物などの金属酸化物であり得る。いくつかの実施形態では、光触媒組成物は、チタンまたはスズの酸化物を含む。
【0054】
光触媒組成物は、実質的にドープされていない、または実質的に純粋な、あるいはドープされたもしくは担持された金属酸化物を含み得る。ドープされた組成物は、普通は、純粋な、ドープされていない化合物の原子によって占められているマトリックス位置を占めるドーピング原子を含む。担持した組成物は、別の材料と組み合わされる材料を含み、ここで、組成物中に担持される材料は、必ずしもドーパントではなく、普通は、純粋な、ドープされていない化合物の原子によって占められているマトリックス位置を必ずしも占有しない。
【0055】
いくつかの実施形態では、金属酸化物には、炭素原子、窒素原子、銀原子またはその化合物もしくはイオンなどの炭素、窒素または銀がドープまたは担持されている。
【0056】
いくつかの実施形態では、光触媒組成物は、チタンおよびスズの酸化物を含み、炭素、窒素および銀がドープまたは担持されている。
【0057】
いくつかの実施形態では、光触媒組成物は、組成物中の金属原子の総数に基づいて、約40%〜約99%、約60%〜約90%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%または約95%のチタンを含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、光触媒組成物は、組成物中の金属原子の総数に基づいて、約0%〜約20%、約10%〜約20%、約0%、約5%、約10%、約15%、約20%または約25%のスズを含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、光触媒組成物は、組成物の総質量に基づいて、約0%〜約20%、約0%〜約10%の銀を含むか、または銀を実質的に含まない。
【0060】
いくつかの実施形態では、光触媒組成物は、組成物の総質量に基づいて、約0.01%〜約5%の炭素、約0.1%〜約2%の炭素、約0.3%〜約1%の炭素、約0.4%〜約1%の炭素、約0.4%〜約0.6%の炭素、約0.5%の炭素または0.51%の炭素を含む。いくつかの実施形態では、光触媒中の炭素原子の数は、組成物中の原子の総数の約2%〜約10%、約3%〜約8%、約4%〜約5%、約4.7%または4.65%である。いくつかの実施形態では、光触媒組成物は、組成物の総質量に基づいて、約0.001%〜約5%の窒素、約0.05%〜約0.5%の窒素、約0.1%〜約0.4%の窒素、約0.1%〜約0.3%の窒素、約0.2%の窒素または0.235%の窒素を含む。いくつかの実施形態では、光触媒中の窒素原子の数は、組成物中の原子の総数の約2%〜約5%、約3%〜約4%、約3%または3.29%である。
【0061】
いくつかの実施形態では、光触媒組成物は、遷移金属;第III、IVまたはV族の金属;アルカリ土類金属または希土金属を有する光触媒無機化合物を含む。いくつかの実施形態では、遷移金属は、Ti、W、Fe、Ni、Cu、Nb、V、ZnまたはZrであり得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、光触媒無機化合物は、チタンを含む。いくつかの実施形態では、光触媒無機化合物は、タングステンを含む。いくつかの実施形態では、第III金属は、BまたはInであり得る。いくつかの実施形態では、第IV族金属は、Snであり得る。いくつかの実施形態では、第V族元素は、Biであり得る。いくつかの実施形態では、アルカリ土類金属は、Srであり得る。いくつかの実施形態では、希土金属は、Ceであり得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、光触媒無機化合物は、Ti1−a(O1−x−y[式中、Mは、少なくとも1種の天然に存在する元素であり、0≦a<1、x<1.0、y<1および0≦x+y<1である]を含む。いくつかの実施形態では、光触媒無機化合物は、Ti1−aSn(O1−x−y[式中、0≦a<1、x<1.0、y<1および0≦x+y<1である]を含む。いくつかの実施形態では、光触媒無機化合物は、Ti0.85Sn0.15(O1−x−y[式中、x<1.0、y<1および0≦x+y<1である]を含む。特定の半導体のその他の適宜設計されたドーピングは、例えば、UV光が利用可能ではない可能性がある室内適用のための、可視光によって活性化される(波長380〜800nmの光によって活性化される)光触媒をもたらし得る。このような適した光触媒組成物は、参照によりその全文が組み込まれる、2013年1月14日に出願された、係属中特許出願第13/742,191号に記載されている。
【0064】
ナノ構造を含む光触媒材料を調製する多数の方法があり得るが、これらの材料は、光触媒前駆体、還元剤および酸化剤を含む液体分散物(本明細書において「液体分散物」と呼ばれる)を加熱し、その結果、分散物が燃焼を受けて、固体生成物を形成する工程によって調製され得る。例えば、分散物は、燃焼を開始するのに十分な温度で加熱され得、加熱する工程は、固体生成物が形成されるまで継続し得る。
【0065】
分散物との用語は、溶液、懸濁液、ゾル、エマルジョンおよび/またはスラリーを含むが、それだけには限定されない。液体分散物は、少なくとも1種のドーパント前駆体を添加する工程をさらに含み得る。
【0066】
光触媒前駆体は、燃焼を含むプロセスによって無機光触媒に変換され得る任意の無機または有機金属化合物を含有し得る。いくつかの光触媒前駆体は、遷移金属;第III、IVまたはV族金属;アルカリ土類金属または希土金属を含有する化合物を含む。いくつかの実施形態では、遷移金属は、Ti、W、Fe、Ni、Cu、Nb、V、ZnまたはZrであり得る。一般に、光触媒中に組み込まれるべき金属の有機酸塩は、光触媒前駆体として使用され得る。例えば、上記の金属の1種の酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩またはオクトエート塩が、光触媒前駆体として使用され得る。一般に、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物、ケイ酸塩、アルミン酸塩、ホウ酸塩またはアンモニウム塩を含めた無機塩が、光触媒前駆体として使用され得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、光触媒前駆体は、チタン化合物を含む。光触媒前駆体として使用されるチタン化合物の種類は、特に制限されない。例えば、有機チタン化合物が使用され得る。さらに、プロセスにおいて使用される有機チタン化合物の種類は、特に制限されない。いくつかの実施形態では、有機チタン化合物は、水溶性であり得る。チタン化合物は、例えば、金属硝酸塩、金属アンモニウム塩または有機金属含有化合物であり得る。いくつかの実施形態では、有機チタン化合物は、エステルまたはキレートである。いくつかの実施形態では、有機チタン化合物は、有機チタン酸塩である。使用され得る有機チタン化合物の限定されない例として、式(I)の構造
【0068】
【化1】
【0069】
を有するTYZOR(Dorf Ketal)、チタン(IV)ビス(アンモニウム乳酸塩)ジヒドロキシド、アンモニウムオキソ−オキサラトチタナート(IV)、ヒドロキシカルボキシラト−ペルオキソチタニウム、チタン乳酸塩、チタンマレイン酸塩複合体、チタンシュウ酸塩およびチタンクエン酸塩のような有機チタン酸塩が挙げられる。これらの有機チタン化合物は、単独でまたは組み合わせて使用され得る。いくつかの実施形態では、有機チタン化合物は、式I:
【0070】
【化2】
によって表される。
【0071】
いくつかの実施形態では、光触媒前駆体は、第一スズオクトアートなどのスズ化合物を含む。
【0072】
液体分散物はまた、ドーパント前駆体を含有し得る。ドーパント化合物の種類もまた、光触媒前駆体の金属以外の金属元素を含む限り、特に制限されない。いくつかの実施形態では、化合物は、有機金属化合物である。いくつかの実施形態では、有機金属化合物は、水溶性である。有機金属化合物は、例えば、Sn、Ni、Sr、Ba、Fe、Bi、V、Mo、W、Zn、Cuまたはそれらの組合せなどの金属元素を含み得る。いくつかの実施形態では、ドーパント前駆体は、Snを含有する。ドーパント前駆体として使用され得る金属化合物の限定されない例として、ドーパントとして使用されるべき金属の硝酸塩、塩化物、硫酸塩、メタバナジン酸アンモニウムのような金属アンモニウム複合体、クエン酸塩、酢酸塩、アセチルアセトナート、オクトアートおよびヘキサノアートが挙げられる。有機金属化合物の限定されない例として、第一スズオクトアート、スズ(IV)−オキシン複合体、ジブチルスズ、テトラブチルスズ、フェロセンおよびニッケロセンを含めたメタロセン、フェラート、バナジン酸塩、モリブデン酸塩、ジンカートおよびクプラートが挙げられる。特定の化合物の選択は、通常、化合物自体の性質よりも、化合物中に含有される金属によって影響を受ける。これらの化合物は、単独または組み合わせて使用され得る。いくつかの実施形態では、チタンおよび1種以上のドーパントが、同一前駆体中に含有される。CおよびNドーパントの場合には、還元剤および酸化剤は、ドーパント前駆体であり得る。
【0073】
任意の適した溶媒は、液体分散物の媒体として使用されてもよい。例として、水、メタノール、エタノール、プロパノールなどを挙げ得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、光触媒および/またはドーパント前駆体は、Tyzor LA、メタタングステン酸アンモニウム、スズオクトアート、アンモニウムオキソ−オキサラトチタナート(IV)、ヒドロキシカルボキシラト−ペルオキソチタニウム、チタン乳酸塩、チタンマレイン酸塩複合体、チタンクエン酸塩またはそれらの組合せであり得る。いくつかの実施形態では、光触媒および/またはドーパント前駆体は、TyzorLAおよび/またはメタタングステン酸アンモニウムを含み得る。いくつかの実施形態では、TyzorA/メタタングステン酸アンモニウムは、3:1モル比のTyzorA:メタタングステン酸アンモニウムであり得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、光触媒および/またはドーパント前駆体は、極性溶媒、例えば、水中に溶解した、4モルの少なくとも1種の前駆体であり得る。いくつかの実施形態では、前駆体は、3:1モル比のTyzor:ドーパント金属前駆体であり得る。いくつかの実施形態では、金属ドーパント化合物は、メタタングステン酸アンモニウムであり得る。いくつかの実施形態では、金属ドーパント化合物は、第一スズオクトアートであり得る。
【0076】
酸化剤は、燃焼反応において還元剤を酸化し得る任意の材料を含み得る。例えば、金属硝酸塩、硝酸アンモニウムまたは硝酸グアニジンなどの硝酸塩化合物。いくつかの実施形態では、酸化剤は、過酸化水素である。いくつかの実施形態では、酸化剤は、硝酸アンモニウムである。いくつかの実施形態では、酸化剤は、銀硝酸塩である。
【0077】
還元剤として、燃焼反応において酸化剤を還元可能である任意の材料を挙げ得る。いくつかの通常の還元剤として、アミノ酸、尿素、クエン酸およびヒドラジンベースの化合物が挙げられる。いくつかの有用なアミノ酸として、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、セリンなどが挙げられる。いくつかの有用なヒドラジンベースの化合物として、カルボヒドラジド、トリオキサン、3−メチルピロゾール−5−オン、ジホルミルヒドラジンおよびヘキサメチレンテトラミンが挙げられる。いくつかの実施形態では、還元剤は、グリシンである。
【0078】
燃焼反応は、酸化剤対還元剤の当量比が約1:1である場合により完全であり得る。いくつかの実施形態では、還元剤/酸化剤は、3:1モル比の還元剤:酸化剤であり得る。いくつかの実施形態では、還元剤:酸化剤は、3:1モル比のグリシン:硝酸アンモニウムであり得る。
【0079】
光触媒前駆体に対する酸化剤/還元剤の相対量は、ナノ構造の多孔性に影響を及ぼし得る。例えば、低い酸化剤/還元剤含量は、低い孔含量のナノ構造または孔を実質的に含まないナノ構造をもたらし得る。いくつかの実施形態では、酸化剤/還元剤:光触媒前駆体のモル比は、約5:1〜約1:5、約3:1〜約1:3、約2:1〜約1:2、約5:3〜約3:5、約5:4〜約4:5、約1:1約1:3または約1:9である。
【0080】
いくつかの実施形態では、前駆体対還元剤−酸化剤の比は、約1:1(等量の前駆体対還元剤−酸化剤)から約1部の前駆体対約2.5部の還元剤−酸化剤の間である。いくつかの実施形態では、このような前駆体比から作製された材料は、ナノフレーク形状、ナノシート形状、擬平面形状またはリボン形状のうち少なくとも1種の形態を特徴とする材料の一部をもたらす(図8および9)。
【0081】
いくつかの実施形態では、前駆体対還元剤−酸化剤の比は、約1部の前駆体対約2.5部の還元剤−酸化剤〜約1部の前駆体対約7.5部の還元剤−酸化剤の間である。いくつかの実施形態では、このような前駆体比から作製された材料は、ナノフレーク形状、ナノシート形状、擬平面形状またはリボン形状のうち少なくとも1種の形態を特徴とする材料の一部をもたらし、その中の複数の孔を規定する(図12〜13)。
【0082】
還元剤−酸化剤および前駆体の3:1混合物(図18からの材料B)を使用して製造された材料は、図12および13において観察されるような、ガスの泡およびフレークの発生の組合せを有し得ると考えられる。フレークは、反応ガス(CO、NおよびHOなど)が、固体材料を外側に押し出し、したがって、層を「剥ぐ」ので発生し得るということも示唆され得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、前駆体対還元剤−酸化剤の比は、1部の前駆体対約7.5部の還元剤−酸化剤よりも大きい。いくつかの実施形態では、このような前駆体比から作製された材料は、高い孔含量を有する材料をもたらす(図14〜17)。ガスの発生が層の固化より早い場合には、気泡、いくつかの場合には、孔が生じると考えられる。還元剤−酸化剤対前駆体の9:1混合物(図17からのサンプルC)を使用して製造された材料は、図14〜17に見られるように、ガスの発生の方向に平行に走るチャネルを有し(スイスチーズ形態)、ナノフレークなどの形状の材料をほとんど含まない微小孔性形態を示した。これは、迅速な膨大なガスの発生の結果であると考えられる。
【0084】
液体分散物は、導電性、対流性、放射性または自己発生性の加熱機序によって加熱され得る。いくつかの実施形態では、液体分散物は、加熱板、加熱プラットフォーム、誘導加熱器、マイクロ波発振器、抵抗加熱器、光コンセントレーター、超音波加熱器、加熱浴、箱型炉、マッフル炉、チューブ炉、フレームガンまたはトーチを使用して、噴霧熱分解によって、火炎熱分解、レーザー熱分解および/または熱プラズマによって加熱される。いくつかの実施形態では、熱プラズマは、直流プラズマまたは無線周波数誘導結合プラズマである。いくつかの実施形態では、液体分散物は、発熱反応によって生じたエネルギーから加熱される。
【0085】
液体分散物は、燃焼が生じるために十分に高い任意の温度で加熱され得る。いくつかの実施形態では、液体分散物は、約50℃〜約1000℃、約200℃〜約800℃、約100℃〜約500℃、約300℃〜約500℃、約300℃〜約400℃、約330℃〜約380℃または約350℃に加熱され得る。
【0086】
液体分散物は、燃焼温度で、固体生成物が形成されることを可能にする任意の時間量の間、加熱され得る。いくつかの場合には、液体分散物は、混合物がもはやガスを発生しなくなるまで、または粉末化された材料が形成されるまで加熱され得る。例えば、加熱ステップは、少なくとも約1分、少なくとも約5分、少なくとも約10分、約1秒〜約60分、約10秒〜約30分、約1分〜約120分、約5分〜約60分、約5分〜約20分、約10分〜約30分または約20分間生じ得る。
【0087】
液体分散物の加熱の生成物として得られた固体(「固体生成物」と呼ばれる)をアニールして、固体の色を低減させ、さらに固体から揮発性要素または化合物を除去するか、組成物中のドーピングまたは担持のレベルを調整してもよい。アニーリングは、燃焼が行われる温度よりも低い、高いまたは同じ温度で起こり得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、アニーリングは、材料内のドーパントレベルを実質的に下げることなく炭素質残渣を除去するのに十分な温度で行われる。用語炭素質材料とは、光触媒結晶の外部、例えば、光触媒の結晶格子の外側の外部材料を指す。例えば、使用されるドーパントがNおよびCである場合には、このような目的のためには400℃が十分であり得るが、550℃でドーパントレベルは低下し得、その結果、それらは、高い光触媒活性にとって、特に、可視光によって活性化される光触媒活性にとって不十分である。いくつかの実施形態では、固体生成物がアニールされる温度は、所望のレベルのドーパントを達成するよう選択できる。
【0089】
いくつかの方法では、固体生成物は、液体分散物の加熱が起こる温度よりも高い第1のアニーリング温度でアニールされる。いくつかの実施形態では、第1のアニーリング温度は、液体分散物の加熱が起こる温度よりも少なくとも約20℃、約20℃〜約400℃または約40℃〜約200℃高い。いくつかの実施形態では、第1のアニーリング温度は、約250℃〜約800℃、約300℃〜約500℃、約350℃〜約500℃、約350℃または約475℃である。
【0090】
アニーリングは、所望の色またはその他の特性を得るのに必要な程度に長い期間継続し得る。例えば、アニーリングは、固体生成物を約1分〜約24時間、約30分〜約5時間、約1時間〜約2時間または約1時間加熱するステップを含み得る。
【0091】
アニーリングは、固体生成物が、液体分散物の加熱が起こる温度よりも高い第1のアニーリング温度でまずアニールされ、次いで、第1のアニーリング温度よりも高い第2のアニーリング温度でアニールされる、2工程のプロセスであり得る。この2工程のプロセスは、アニーリング温度を低下させるのに役立ち得、順に、第1の生成物として得られた光触媒の炭素および窒素含量を増大するのに役立ち得る。
【0092】
2工程のアニーリングプロセスが使用されるいくつかの実施形態では、第1のアニーリング温度は、液体分散物の加熱が起こる温度よりも少なくとも約20℃、約20℃〜約200℃、約20℃〜約70℃または約50℃高い。
【0093】
2工程のアニーリングプロセスを有するいくつかの実施形態では、第1のアニーリング温度は、約250℃〜約600℃、約300℃〜約400℃、約320℃〜約370℃または約350℃である。
【0094】
アニーリングはまた、異なる温度および時間の2を超える工程を含み得る。
【0095】
第2のアニーリング温度は、第1のアニーリング温度よりも約20℃高い、約20℃〜約500℃、約20℃〜約400℃、約20℃〜約300℃、約20℃〜約100℃、約20℃〜約80℃、約40℃〜約60℃、約50℃、約250℃、約300℃または約350℃高いなど、第1のアニーリング温度よりも高い任意の適した温度であり得る。いくつかの実施形態では、第2のアニーリング温度は、約400℃〜約800℃、約400℃〜約700℃、約400℃〜約650℃、約400℃、約500℃、約550℃、約600℃または約650℃である。
【0096】
第2のアニーリング工程は、第1のアニーリング工程よりも短い場合がある。例えば、第2のアニーリング温度での加熱工程は、約1分〜約12時間、約10分〜約2時間、約20分〜約1時間または約30分間起こり得る。
【0097】
光触媒材料は、殺菌剤、消臭剤、汚染物質除去剤、自己清浄剤、抗菌剤などとして使用され得る。材料、組成物および分散物は、空気、液体、微生物および/または固体物質と相互作用するよう使用され得る。一実施形態では、それらは、航空機胴体中などの密閉環境中などの、または自動車修理工場などの、より汚染された環境中の空気を清浄するために使用され得る。その他の実施形態では、それらは、飲食物の提供サービスまたは製造施設または病院または診療所などの消毒の必要な表面をコーティングするためなど、抗菌特性のために使用され得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、汚染された空気が光および光触媒材料に曝露され、それによって、空気から汚染物質を除去する方法が利用される。
【0099】
いくつかの実施形態では、光および光触媒材料は、空気中の汚染物質の約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%またはそれ以上を除去し得る。
【0100】
別の実施形態では、汚染された水が、光および光触媒材料に曝露され、それによって、水中の混入物質の量を低減する方法が利用される。
【0101】
いくつかの実施形態では、光および光触媒材料は、水から汚染物質の約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%またはそれ以上を除去し得る。
【0102】
その他の実施形態では、生物学的汚染物質が、光および光触媒材料に曝露され、それによって、生物学的材料を消毒する方法が利用される。いくつかの実施形態では、生物学的材料は、食品を含み得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、光および光触媒材料は、空気中の生物学的材料から汚染物質の約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%またはそれ以上を除去し得る。
【0104】
以下の実施形態は、具体的に考慮される。
【0105】
実施形態1:無機化合物を含む光触媒組成物の薄肉構造を含むナノ構造を含み、光触媒組成物の薄肉構造は、第1の表面と、反対側の第2の表面とによって定義されており、光触媒組成物の薄肉構造が、第1の表面の面積の平方根より実質的に小さい厚みを有する、光触媒材料。
【0106】
実施形態2:ナノ構造がナノシート形状、ナノフレーク形状、擬平面形状またはリボン形状である、実施形態1の光触媒材料。
【0107】
実施形態3:ナノ構造の少なくとも一部が、波状である、任意の先行する実施形態の光触媒材料。
【0108】
実施形態4:ナノ構造が、光触媒組成物の薄肉構造を通って第1の表面から第2の表面に伸びる孔を含む、任意の先行する実施形態の光触媒材料。
【0109】
実施形態5:ナノ構造が、光触媒組成物の薄肉構造を通って第1の表面から第2の表面に伸びる孔を含まない、実施形態1〜3のいずれかの光触媒材料。
【0110】
実施形態6:少なくとも30m/gのブルナウアー(Brunauer)−エメット(Emmett)−テラー(Teller)(BET)比表面積を有する、任意の先行する実施形態の光触媒材料。
【0111】
実施形態7:光触媒組成物の薄肉構造の厚みが、約10nm〜約200nmである、任意の先行する実施形態の光触媒材料。
【0112】
実施形態8:光触媒組成物の薄肉構造の厚みが、約20nm〜約25nmである、任意の先行する実施形態の光触媒材料。
【0113】
実施形態9:第1の表面の面積の平方根が、光触媒組成物の薄肉構造の少なくとも10倍の厚みである、任意の先行する実施形態の光触媒材料。
【0114】
実施形態10:無機化合物が、金属酸化物である、任意の先行する実施形態の光触媒材料。
【0115】
実施形態11:光触媒組成物に、炭素、窒素または銀がドープまたは担持されている、任意の先行する実施形態の光触媒材料。
【0116】
実施形態12:光触媒組成物が、チタンおよびスズの酸化物を含み、炭素、窒素および銀がドープまたは担持されている、任意の先行する実施形態の光触媒材料。
【0117】
実施形態13:光触媒組成物が、組成物のモル比に基づいて、約40%〜約99%のチタンを含む、任意の先行する実施形態の光触媒。
【0118】
実施形態14:光触媒組成物が、組成物のモル比に基づいて、約0%〜約20%のスズを含む、任意の先行する実施形態の光触媒。
【0119】
実施形態15:光触媒組成物が、組成物のモル比に基づいて、約0%〜約20%の銀を含む、任意の先行する実施形態の光触媒。
【0120】
実施形態16:光触媒組成物が、組成物のモル比に基づいて、約2%〜約10%の炭素を含む、任意の先行する実施形態の光触媒。
【0121】
実施形態17:光触媒組成物が、組成物のモル比に基づいて、約2%〜約5%の窒素を含む、任意の先行する実施形態の光触媒。
【0122】
実施形態18:光触媒前駆体、還元剤および酸化剤を含む液体分散物を、燃焼を開始するのに十分な温度で加熱する工程を含み、加熱する工程が、固体生成物を形成するのに十分な時間継続する、高表面積光触媒を製造する方法。
【0123】
実施形態19:光触媒前駆体、還元剤および酸化剤を含む液体分散物を、燃焼を開始するのに十分な温度で加熱する工程を含み、加熱する工程が、固体生成物を形成するのに十分な時間継続する、実施形態1による光触媒を製造する方法。
【0124】
実施形態20:酸化剤と還元剤とのモル比が、約5:1〜約1:5である、実施形態18または19の方法。
【0125】
実施形態21:固体生成物が、液体分散物の加熱が起こる温度よりも高い第1のアニーリング温度でアニールされる、実施形態18〜20のいずれかの方法。
【0126】
実施形態22:固体生成物が、液体分散物の加熱が起こる温度よりも高い第1のアニーリング温度でまずアニールされ、次いで、第1のアニーリング温度よりも高い第2のアニーリング温度でアニールされる、実施形態18〜21のいずれかの方法。
【0127】
実施形態23:第1のアニーリング温度が、液体分散物の加熱が起こる温度よりも少なくとも約20℃高い、実施形態18〜22のいずれかの方法。
【0128】
実施形態24:第2のアニーリング温度が、第1のアニーリング温度よりも少なくとも20℃高い、実施形態23の方法。
【実施例】
【0129】
(実施例1)
チタン(IV)ビス(乳酸アンモニウム)ジヒドロキシド、Ti前駆体溶液(Sigma Aldrich、水中の50重量%の20mL)に、第一スズオクトアート(Spectrum Chemicals、2.52g)を添加することによって、溶液Aを調製した。得られた溶液を、約100℃で約20分間加熱した。この得られた溶液に、硝酸アンモニウム、酸化剤(Sigma Aldrich、10g)およびグリシン、還元剤(Sigma Aldrich、4g)を添加した。溶液Bを、最小量の水にAgNO、酸化剤(Alfa Aesar、0.207g)を溶解することによって調製し、次いで、溶液Aに溶液Bを添加した。この得られた溶液を、約350℃で、さらなるガスが生じなくなるまで、例えば、約20分間加熱して(Barnstead Thermolyne 47900、箱型炉)、暗灰色から黒色の多量の泡状粉末を形成した。次いで、得られた粉末を、粉砕せずに大きなガラスペトリディッシュ(100×50)に移し、約475℃で約1時間アニールし、次いで、室温に冷却して、明るい色の粉末を得た。
【0130】
(実施例2〜9)
実施例2〜9は、以下の表1に示されるように、異なる還元剤およびチタン前駆体の量を使用した点を除いて、上記の実施例1と同様の方法で作製した。比較例1は、20mLのTi前駆体を使用し、溶液Bに還元剤を添加しなかった点を除いて、上記の実施例1と同様の方法で作製した。
【0131】
【表1】
【0132】
(実施例10)
実施例10は、溶液AおよびB混合物を約300℃で約2時間加熱し、次いで、約350℃で約1時間、続いて、約400℃で約30分間アニールして、明るい色の粉末を製造した点を除いて、上記の実施例1と同様の方法で作製した。得られた材料のSEMが、図7に示されている。前駆体粒子のBET表面積をBET表面積解析器(Gemini V、Micromeritics Instrument Corporation、Norcross GA)によって、約198m/gであると測定した。
【0133】
(実施例11〜16)
実施例11〜16は、(a)溶液A中に第一スズオクトアート(stannous octate)を組み込まなかった点、(b)20mlの代わりに10mlのTi前駆体を使用した点、(c)還元剤として4.0または7.5gのグリシンを使用した点、(d)酸化剤として10gの代わりに5gのNHNOを使用した点、(e)くすぶり燃焼温度を300℃で約30分とした点および(f)それに続いて、表2に示されるように、異なる第2のアニーリング温度で30分とした点を除いて、上記の実施例10と同様の方法で製造した。
【0134】
【表2】
【0135】
得られた材料はすべて、0.1〜3.3m/gまたは約3m/gの間のBET値を有しており、図7に示されるものと実質的に同様の形態を示した。
【0136】
(比較例2)
比較例2は、溶液B中に還元剤を組み込まなかった点を除いて上記の実施例10と同様の方法で作製した。
【0137】
解析
上記のように調製された材料の炭素および窒素含量を、それぞれ、Leco Corp、(St. Joseph、MI、USA)、CS600およびTC600を使用し、Lecoによって提供される標準操作手順を使用して調べた。Cu K−α照射(Rigaku Miniflex II、Rigaku Americas、Woodland、TX、USA)を使用して粉末XRDパターンを得た。拡散反射スペクトル(DRS)は、Multi Channel Photo Detector 7000(Otsuka Electronics)を使用して得、SEM形態は、FEI Inspect F SEMを使用して得た。
【0138】
メチレンブルー分解についての光触媒特性
メチレンブルーの分解を測定することによって、光触媒の光触媒特性を比較した。各サンプル(150mg)を、暗所で35mlのメチレンブルーの水溶液(0.7〜1.0吸収)に約2時間入れ、次いで、青色発光ダイオードアレイ(455nm、3.5mW/cm)に約5時間曝露した。メチレンブルーの分解は、UV−Vis吸収分光法(Cary−50、分光光度計 Agilent Technologies、Santa Clara、CA、USA)を使用してその濃度をモニタリングすることによって1時間毎に測定した。濃度は、400から800nmの間のUV−Vis吸収スペクトル下の面積として算出した。表3は、MB分解のパーセンテージをBET値、CおよびNの重量%ならびにSEM形態とともにまとめている。
【0139】
【表3】
【0140】
上記の表2ならびに実施例1、比較例1および実施例10のDRS(図11)は、アニーリング温度の選択が、高表面積材料を製造しながらCおよびNドーパントレベルを保持するのに役立ち得ることを示す。図11から、実施例10(実施例1とは異なるアニーリング温度および時間を用いる)は、可視領域(380nmより大きい)において大きな光吸収を示すが、実施例1は、可視吸収は少ない。実施例10は、実施例1より多くのCおよびNドーパントを含有し、上記で言及される青色発光デバイスからの可視光に曝露された場合に、実施例1より高いメチレンブルー分解を実証する。
【0141】
(実施例11)
実施例11の単純化された模式図が、図18に表されている。
【0142】
保存溶液X
保存溶液X(水中、3MのTyzor LA)は、チタン(IV)ビス(乳酸アンモニウム)ジヒドロキシド、Ti前駆体(Sigma Aldrich)を水と混合することによって調製した。
【0143】
保存溶液Y
保存溶液Y(1Mグリシンおよび3M硝酸アンモニウム(NHNO))は、酸化剤硝酸アンモニウム(Sigma Aldrich)およびグリシン(Sigma Aldrich)を水に溶解するステップおよび完全に溶解するまで室温(RT)で撹拌するステップによって調製した。
【0144】
材料A
保存溶液X(5mL)を、5mLの保存溶液Yに添加し、得られた溶液を400℃で約20分間加熱して(Barnstead Thermolyne 47900、箱型炉)、実質的に多量の材料を形成した。さらなるガスの発生が見られなくなった後、得られた材料を、粉砕せずに大きなガラスペトリディッシュに移し、約475℃で約1時間アニールし、次いで、室温に冷却して、明るい色の粉末を得た。
【0145】
材料BおよびC
材料BおよびCは、材料Bについては、7.5mLの保存溶液Yに2.5mLの保存溶液Xを添加し、材料Cについては、9.0mLの保存溶液Yに1.0mLの保存溶液Xを添加した点を除いて、材料Aと同様の方法で作製した。
【0146】
解析
材料A、BおよびCを、XRD解析およびSEM試験に付した。これらの材料のBET値は、111〜116m/gの範囲にあった。それぞれのSEM像は、図8〜9(材料A)、図12〜13(材料B)および図14〜17(材料C)に表されている。1:1(材料A)容量比のオキシ/還元剤対前駆体から製造された材料は、薄いフレーク形状、ナノフレーク形状および/またはナノシート形状の材料形態を示した(図8および9)。ナノフレーク(nanflakes)は、約23〜25nmの厚みであった(図9)。3:1(材料B)モル比のオキシ/還元剤対前駆体を使用して製造された材料は、図12および13において観察されるように、泡およびフレークの発生の組合せを示した。泡の発生は、通ることおよび/または出口のない孔をもたらし得る。9:1(材料C)モル比のオキシ/還元剤対前駆体を使用して製造された材料は、図14〜17に見られるように、ガスの発生の方向に平行に走るチャネルを有し(スイスチーズ形態)、フレークのほとんどない微小孔性形態を示した。X線回折(XRD)解析が、図18に示されている。XRD、図19は、このスキームを使用して製造された3種の材料サンプルのすべてが、小さい結晶を有するアナターゼ相材料(広いXRDピーク)をもたらすことを示す。
【0147】
(実施例12)
旅客機で臭いを低減すること
光触媒材料を含む分散物が、薄い接着膜上のコーティングとして提供される。この接着膜は、Boeing 737の天井をコーティングするために使用される。光触媒組成物は、荷物入れの上の発光ダイオード照明設備からの周囲光と反応して、空気中の臭いを低減可能な反応性空中種を生成し得る。
【0148】
(実施例13)
食品調理面の消毒
スプレーとして適用され得る光触媒材料が、食品調理工場に、その作業面をコーティングするために提供される。樹脂は、作業表面と適切に結合するよう加熱状態または非加熱状態で適用され得る。工場において食品と接触するようになるすべての表面に、樹脂が噴霧される。
【0149】
工場は、全般照明用の有機発光ダイオード照明設備を備えている。この周囲光は、樹脂表面と反応し、それによって、表面に酸素ラジカルを生成し得る。これらのラジカルは、食品混入物質と反応し、それによって、食品を安全にし得る。樹脂を作業面に適用した結果として、食品供給に蔓延する細菌の例は50%低減される。
【0150】
特に断りのない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される成分、分子量、反応条件などの特性などの量を表すすべての数は、用語「約」によってすべての例において修飾されていると理解されなくてはならない。したがって、反対に示されない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に示される数値パラメータは、得ようとする所望の特性に応じて変わり得る近似値である。少なくとも、特許請求の範囲の範囲の等価物の原理の適用を制限しようとせずに、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効桁の数を考慮して、通常の四捨五入技術を適用することによって解釈されなくてはならない。
【0151】
本発明を説明する関連で(特に、以下の特許請求の範囲の関連で)使用される、用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」および類似の指示対象は、本明細書において特に断りのない限り、または文脈によって明確に矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を対象とすると解釈されなくてはならない。本明細書において記載されるすべての方法は、本明細書において特に断りのない限り、または文脈によって明確に矛盾しない限り、任意の適した順序で実施され得る。本明細書において提供されるありとあらゆる実施例または例示的言葉(例えば、「など」)の使用は、単に、本発明をより良好に明らかにするものであって、任意の特許請求の範囲に制限を課すものではない。本明細書中の言葉は、本発明の実施に必須である何らかの特許請求されない要素を示すと解釈されてはならない。
【0152】
本明細書に開示される代替要素または実施形態のグループ化は制限と解釈されてはならない。各群のメンバーは、個別にか、または群のその他のメンバーもしくは本明細書において見られるその他の要素との任意の組み合わせで言及され、特許請求され得る。群の1以上のメンバーが、利便性および/または特許性の理由で、群に含まれ得る、または群から削除され得ると見込まれる。任意のこのような包含または削除が起こる場合には、本明細書は、添付の特許請求の範囲において使用されるすべてのマーカッシュ群の書面での記載を満たしてこのように修飾される群を含有すると考えられる。
【0153】
本発明を実施するための本発明者らに公知の最良の様式を含む特定の実施形態が、本明細書に記載される。もちろん、これらの記載された実施形態での変動は、前記の説明を読めば当業者に明らかとなろう。本発明者は、当業者がこのような変動を適宜使用すると期待し、本発明者らは、本発明が本明細書において具体的に記載されるもの以外で実施されることを意図する。したがって、特許請求の範囲は、適用法によって許可されるように、特許請求の範囲において列挙される主題のすべての修飾および等価物を含む。さらに、そのすべての可能性ある変法において、上記の要素の任意の組合せが、本明細書において特に断りのない限り、または文脈によって明確に矛盾しない限り、考慮される。
【0154】
締めくくりに、本明細書において開示される実施形態は、特許請求の範囲の原理の例示であると理解されなければならない。使用され得るその他の修飾は、特許請求の範囲の範囲内にある。したがって、例として、制限するものではないが、代替実施形態は、本明細書における教示と一致して利用され得る。したがって、特許請求の範囲は、示されるような実施形態に正確に制限されない。
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