【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従う防火ガラスは、
大気側とスズ浴側とを有する少なくとも1つのフロートガラス板と、
フロートガラス板の大気側および/またはスズ浴側の上に平坦状に配置された少なくとも1つの保護層と、
保護層の上に平坦状に配置された少なくとも1つの防火層とを備え、
保護層は、多層構造であり、金属がドープされた窒化ケイ素からなる第1のサブ保護層と酸化スズ/亜鉛またはドープされた酸化スズ/亜鉛からなる第2のサブ保護層とを備えるまたはこれらのサブ保護層で構成される。
【0008】
本発明に従う防火ガラスのある好都合な設計において、保護層は2層構造となるように設計される。
【0009】
本明細書において、保護層が平坦状に配置されるとは、実質的にフロートガラス板の大気側またはスズ浴側全体に配置されることを意味する。本明細書において、実質的とは、各側の70%以上、好ましくは85%以上、特に95%以上が保護層で覆われることを意味する。このことは、防火層が保護層の上に平坦状に配置される場合にも適用される。特に、保護層は、防火層がフロートガラス板に直に接触せず、防火層とフロートガラス板の間に必ず保護層が介在するように、フロートガラスの各側に平坦状に配置される。
【0010】
本発明は、下記の発明者の認識、言換えると発見に基づいている。すなわち、ガラスの品質によっては、そのスズ浴側が防火層に接しているフロートガラス板の中には、老化試験においてフロートガラス板と防火層からなる構造体の透明性に著しい曇りが生じたものがあった。これに対し、その大気側が防火層に接しているフロートガラス板の場合、老化試験において透明性の曇りは全くなかったまたはわずかしかなかった。このように、老化試験における透明性の曇りは、本発明に従う保護層をフロートガラス板のスズ浴側と防火層の間に組込むことによって回避できるまたは大幅に減じることができる。
【0011】
本発明は以下のモデルによって理解することができる。製造時、熱いフロートガラス板のスズ浴側はスズ浴に接触する。その結果として形成される表面は、典型的にはアルカリ性の防火層に接触すると、スズ層の組織によっては、不均質なストリップ状の曇りが生じ経年劣化後に曇った外観を呈する可能性がある。フロートガラス板の大気側は、アルカリ性の防火層に接触しても、均質な曇りを示すのみであり、この曇りはごくわずかでほとんど認識できない。結果としてストリップ状の曇りは全くないかまたは小さなものでしかない。アルカリ性の防火層と接触するスズ浴側のストリップ状の曇りは、本発明に従う保護層を導入することによって減じられ均質化されるので、大気側と同様、目に見える曇りは全くないかまたはほとんど認識できない均質な曇りしかない。
【0012】
本発明に従う防火ガラスのある好都合な設計において、保護層は、フロートガラス板のスズ浴側にのみ平坦状に配置され、大気側には配置されない。
【0013】
本発明に従う防火ガラスのある好都合な設計において、防火層はアルカリ性である。
好都合には、本発明に従う防火層は、アルカリケイ酸塩またはアルカリポリケイ酸、好ましくはアルカリケイ酸塩水ガラスを含む。このような防火層は、たとえばEP0620781B1またはEP1192249A2から知られている。これに代わる防火層は、アルカリリン酸塩、アルカリタングステン酸塩、および/またはアルカリモリブデン酸塩を含む。これはDE3530968C2から知られている。
【0014】
これに代わる他の防火層は、固相のポリマーの、好ましくはDE2713849C2から知られているようにポリアクリルアミドもしくはN−メチルアクリルアミドの、または、DE4001677C1から知られているように重合された2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドの、ヒドロゲルを含む。
【0015】
防火層は非常に多様な厚みにすることができ、用途の目的の要求に合わせればよい。ケイ酸塩を有する好都合な防火層の厚みhは、0.5mm〜7mm、好ましくは1mm〜6mmである。この厚みは、ヒドロゲルの場合、8mmと70mmの間にある。
【0016】
本発明に従う第2のサブ保護層は、少なくとも酸化スズ/亜鉛またはドープされた酸化スズ/亜鉛を含む。酸化スズ/亜鉛またはドープされた酸化スズ/亜鉛は、好都合には非結晶質である。これは、好ましくは非晶質または部分的に非晶質(したがって部分的に結晶質)であってもよいが、完全な結晶質ではない。このような非結晶質の第2のサブ保護層が有する具体的な利点は、粗さが小さくしたがって第2のサブ保護層の上に設けられる層に対して好都合に平滑な表面を形成することであり、傷および点欠陥は埋められる。
【0017】
本発明に従う防火ガラスのある好都合な設計において、第2のサブ保護層は、たとえばアンチモン、フッ素、ホウ素、銀、ルテニウム、パラジウム、アルミニウム、およびタンタルがドープされている。保護層における金属ドープの含有量は、重力百分率(重量%)にして、好ましくは0.01重量%〜10重量%、特に好ましくは0.1重量%〜5重量%、特に0.5重量%〜2.5重量%である。このようなドーピングが施された第2のサブ保護層を有する防火ガラスは、経年劣化に伴う曇りが特に少ない。結果として、アンチモンがドープされた酸化スズ/亜鉛層が特に好適であることがわかった。
【0018】
本発明に従う防火ガラスのある好都合な設計において、第2のサブ保護層の亜鉛:スズ比率は、5重量%:95重量%〜95重量%:5重量%、好ましくは15重量%:85重量%〜70重量%:30重量%である。このような混合比の酸化スズ/亜鉛またはドープされた酸化スズ/亜鉛からなる保護層は、特に耐久性が高く、特に経年劣化に伴う曇りが少ない。
【0019】
本発明に従う防火ガラスのある好都合な設計において、第2のサブ保護層は、Sn
xZn
yO
zまたはドープされたSn
xZn
yO
z(0<z≦(y+2x)、特に好ましくは0.7*(y+2x)≦z≦(y+2x)、特に好ましくは0.9*(y+2x)≦z≦(y+2x))を含む。このような混合比の第2のサブ保護層を有する防火ガラスは、特に耐久性が高く、経年劣化に伴う曇りが少ない。本発明に従う防火ガラスの特に好都合な設計において、第2のサブ保護層は、ZnSnO
3、ドープされたZnSnO
3、Zn
2SnO
4、もしくはドープされたZn
2SnO
4、またはこれらの混合物を含む。このような混合比の第2のサブ保護層は、特に耐久性が高く、経年劣化に伴う曇りが特に少ない。
【0020】
本発明に従う防火ガラスのある好都合な設計において、第2のサブ保護層は、酸化スズ/亜鉛と、場合によっては、ドーパント金属および製造に固有の混合物とからなる。このような混合比の第2のサブ保護層は、特に耐久性が高く、経年劣化に伴う曇りが特に少ない。
【0021】
スズ/亜鉛混合酸化物の成膜は、たとえばカソードスパッタリング中に反応ガスとして酸素を加えることによって行なわれる。
【0022】
本発明に従う第2のサブ保護層のある好都合な設計において、第2のサブ保護層の厚みd
bは、2nm〜200nm、好ましくは10nm〜50nm、特に好ましくは13nm〜21nmである。これらの層厚さを有する第2のサブ保護層を備えた防火ガラスは、経年劣化に伴う曇りが特に少ない。
【0023】
本発明に従う第1のサブ保護層は、少なくとも1つの金属がドープされた窒化ケイ素を含む。ドープ金属は、好ましくはアンチモン、銀、ルテニウム、パラジウム、アルミニウム、および/またはタンタルである。アルミニウムがドープされた窒化ケイ素の層の場合、腐食試験およびスクラッチ試験において、製造中の曇りが特に少なく、最高の結果が得られる。
【0024】
本発明に従う防火ガラスのある好都合な設計において、第1のサブ保護層のドープ金属、特にアルミニウムの含有量は、1重量%〜20重量%、好ましくは3重量%〜7重量%である。このような第1のサブ保護層を備えた防火層は、腐食試験およびスクラッチ試験において最良の耐性または耐久性を示した。
【0025】
本発明に従う防火ガラスの他の好都合な設計において、第1のサブ保護層の厚みd
aは、2nm〜200nm、好ましくは5nm〜50nm、特に好ましくは5nm〜26nm、特に8nm〜13nmである。このような第1のサブ保護層を備えた防火ガラスは、腐食試験およびスクラッチ試験において最高の耐久性と最少の曇りを示した。
【0026】
本発明に従う防火ガラスのある好都合な設計において、第1のサブ保護層は、金属がドープされた、特にアルミニウムがドープされた窒化ケイ素と、製造に固有の混合物とからなる。
【0027】
発明者による実験により、金属がドープされた窒化ケイ素からなるサブ保護層を有する2層保護層には、酸化スズ/亜鉛またはドープされた酸化スズ/亜鉛からなる第2のサブ保護層を、酸化スズ/亜鉛またはドープされた酸化スズ/亜鉛からなる単層の保護層と比較して、より薄く設計できるという利点があることがわかった。それでもなお、このような2層で構成された保護層は、アルカリ性の防火層に対する耐性があり、経年劣化に伴う曇りが少なく、かつ、腐食試験およびスクラッチ試験において非常に優れた耐久性を示す。
【0028】
金属がドープされた窒化ケイ素の層と酸化スズ/亜鉛の層またはドープされた酸化スズ/亜鉛の層との相乗作用によって、酸化スズ/亜鉛またはドープされた酸化スズ/亜鉛からなる第2のサブ保護層を薄くして、2層からなる保護層の全体の厚みとして、酸化スズ/亜鉛またはドープされた酸化スズ/亜鉛からなる単一層の保護層よりも小さい厚みを選択しつつ、防火層に対する耐性は同等に良好なものが得られる。保護層の全体の厚みを小さくすることにより、結果として、防火ガラスの光学特性を改善することができるとともに、透明度を高め色収差を減じることができる。金属がドープされた窒化ケイ素からなる層は、プロセス技術という点では非常に簡単であり製造コストが低く、光透過性が高い。特に、金属がドープされた窒化ケイ素層は、酸化スズ/亜鉛層よりも製造コストが低い。
【0029】
ある好都合な実施形態において、金属がドープされた窒化ケイ素からなる第1のサブ保護層は、フロートガラス板のスズ浴側に直接配置され、酸化スズ/亜鉛またはドープされた酸化スズ/亜鉛からなる第2のサブ保護層は、第1の保護層の上にある。このような層の並びによって最良の結果を得ることができる。しかしながら、これらの材料の並びを入れ替えて、第2のサブ保護層をフロートガラス板のスズ浴側に直接配置し金属がドープされた窒化ケイ素からなる第1のサブ保護層を第2のサブ保護層の上に配置することも可能であることが、理解されるはずである。
【0030】
本発明に従うフロートガラス板は、フロート法によって製造される。このような方法は、たとえばFR1378839Aから知られている。フロートガラスの製造では、連続プロセスにおいて、ペースト状の溶かしたガラスの塊を、連続的に一方側から細長い液体スズ浴上に供給する。溶融ガラスはスズ浴に浮かび、均一的なガラス膜が広がる。スズと液体ガラスの表面張力によって非常に滑らかなガラス面が形成される。スズ浴の終端において溶融ガラスを冷却して固める。製造時にスズ浴に浮かぶフロートガラス板の側を、本願の枠組みではスズ浴側と呼ぶ。スズ浴と反対側にあるフロートガラス板の側を大気側と呼ぶ。
【0031】
フロートガラス板は、好ましくはホウケイ酸ガラス、アルモシリケートガラスまたはアルカリ土類ケイ酸塩ガラス、特に好ましくはソーダ石灰ガラス、特に規格EN572−1:2004に準拠するソーダ石灰ガラスを含むまたはこのガラスからなる。
【0032】
好都合には、フロートガラス板は、熱プレストレス処理または部分プレストレス処理される。熱部分プレストレス処理またはプレストレス処理されたフロートガラス板は、好ましくはプレストレスが30MPa〜200MPa、特に好ましくは70MPa〜200MPaである。このようなプレストレスまたは部分プレストレス処理されたフロートガラス板は、たとえばDE19710289C1から知られている。熱プレストレス処理または部分プレストレス処理されたフロートガラス板は、特にその高い安定性のために防火ガラスに適しており、保護層の発明の効果は特に好都合である。
【0033】
フロートガラス板は非常に多様な厚みにすることができるので、個々の要求への対応に優れている。1mm〜25mm、好ましくは2mm〜12mmという標準的な厚みのガラスを用いるのが好ましい。このガラスは非常に多様なサイズにすることができ、本発明に従う用途のサイズに合うようにする。
【0034】
フロートガラス板の立体形状はどのようなものであってもよい。好ましくは、この立体形状にはシャドーゾーン(shadow zone)がなく、よって、たとえばカソードスパッタリングによってコーティングすることができる。このガラスは、好ましくは平坦である、または、空間の1方向または複数方向に、より大きくまたは小さく曲げられている。フロートガラス板は無色であっても着色されていてもよい。
【0035】
本発明に従うフロートガラス板は、個別の2つ以上のフロートガラス板からなる複合体で構成されていてもよい。これらのフロートガラス板は、その都度少なくとも1つの中間層を介して接続される。中間層は、好ましくはポリビニルブチラール(PVD)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の熱可塑性プラスチック、またはこれらのうちのいくつかで構成され、好ましくは厚みが0.3〜0.9mmである。
【0036】
本発明に従う防火ガラスのある好都合な設計において、少なくとも1つの結合(接着)強化層または結合低減層が、保護層と防火層の間に配置される。結合強化層は、典型的には、シラン、チタン酸塩またはジルコン酸塩をベースとする有機親水性物質を含み、たとえば、EP0001531B1およびEP0590978A1から知られている。結合低減層は、たとえば、フルオロアルキルシラン、パーフルオロアルキルシラン、フルオロアルキルトリクロロシラン、フルオロアルキルアルコキシシラン、パーフルオロアルキルアルコキシシラン、フルオロ脂肪族シリルエーテル、アルキルシラン、およびフェニルシランならびにシリコーン等の疎水性有機官能性シランを含む。このような疎水性有機官能性シランは、たとえば、DE19731416C1から知られている。これに代わる結合低減層は、好ましくはポリエチレンをベースとするポリマーワックスを含む。
【0037】
本発明に従う防火ガラスのある好都合な設計において、たとえば防火ガラスの光学特性に影響を及ぼす少なくとも1つの他の層が、フロートガラス板のスズ浴側と保護層の間に配置される。このような他の層は、たとえば防火ガラスの透過性を高め、反射を減じる、または透過した光に色を与える。
【0038】
保護層は、電磁放射線、好ましくは波長300nm〜1300nmの電磁放射線、特に可視光に対して透過性であることが好都合である。「透過性」は、保護層で覆われたフロートガラス板の総透過率が、50%を超える、好ましくは70%を超える、特に好ましくは90%を超えることを意味する。
【0039】
本発明はさらに、防火ガラス構造体を含み、この防火ガラス構造体は、少なくとも、
本発明に従う防火ガラスと、
大気側とスズ浴側とを有する第2のフロートガラス板とを備え、
第2のフロートガラス板はその大気側を介して防火ガラスの防火層に平坦状に接続されている。
【0040】
本発明に従う防火ガラス構造体の代替設計は、少なくとも、
本発明に従う防火ガラスと、
大気側とスズ浴側とを有する第2のフロートガラス板とを備え、
第2のフロートガラス板はスズ浴側に本発明に従う第2の保護層を含み、第2のフロートガラス板は第2の保護層を介して防火ガラスの防火層に平坦状に接続されている。
【0041】
本発明に従う防火ガラス構造体の好都合な他の発展形において、防火ガラスのフロートガラス板の大気側は、第2の防火層に平坦状に接続され、第2の防火層は、第3のフロートガラス板の大気側に平坦状に接続されている。
【0042】
本発明に従う防火ガラス構造体の代替の他の発展形において、防火ガラスのフロートガラス板の大気側は、第2の防火層に平坦状に接続され、第2の防火層は、第3のフロートガラス板のスズ浴側に、他の保護層を介して接続されている。
【0043】
このような3重の構造体は、特に安定性と防火効果が高い。また、4つ以上のフロートガラス層を有する防火ガラスは同様の原理に従って製造でき、本発明によって経年劣化に伴う透視性の曇りを回避するために、本発明に従う保護層は、各防火層と、直に隣接して配置されたフロートガラス板のスズ浴側との間に配置されることが、理解されるはずである。本明細書において「直に隣接して配置された」は、スズ浴側と防火層との間にガラス板が存在しないことを意味する。
【0044】
本発明はさらに、第1のフロートガラス板と、第1の防火層と、第2のフロートガラス板と、第2の防火層と、末端フロートガラス板とからなる連続積層体で構成された防火ガラス構造体を含み、本発明に従う保護層は、各スズ浴側と、直に隣接して配置された防火層との間に配置されている。
【0045】
本発明に従うこの防火ガラス構造体の他の発展形においては、少なくとも1つの他のフロートガラス板と他の防火層が連続積層体の中に配置されている。本発明に従う他の保護層は、他のフロートガラス板の各スズ浴側と、直に隣接して配置された防火層との間に配置されることが理解されるはずである。
【0046】
防火ガラス構造体、特に外側にあるフロートガラス板は、防火ガラス構造体、特に防火層を熱と紫外線から保護するための紫外線反射および/または赤外線反射効果を有するその他の機能性コーティングを有していてもよい。また、いくつかの防火ガラス構造体が、真空のまたはガスが充填された中間スペースによって、断熱ガラス構造体を形成することができる。
【0047】
本発明は、防火ガラス構造体の製造方法を含み、この方法は、少なくとも、
a.保護層を第1のフロートガラス板のスズ浴側に配置し、
b.第1のフロートガラス板および第2のフロートガラス板をこれらの間に固定距離を置いて保持して、第1のフロートガラス板のスズ浴側と第2のフロートガラス板との間に金型キャビティを形成し、
c.液状の防火層を金型キャビティに投入し硬化させる。
【0048】
本発明に従う方法のある好都合な実施形態において、上記方法のステップは、第3のフロートガラス板が第1または第2のフロートガラス板から固定距離を置いて保持されそれによって形成された金型キャビティが第2の防火層で充填されるように、繰り返される。この方法のステップは、並行して行なわれてもよい、すなわち、3枚以上のフロートガラス板が固定距離を置いて同時に保持され、ケイ酸塩の水溶液またはヒドロゲルが同時に投入されて防火層が形成される。したがってこの方法は4枚以上のフロートガラス板を有する多層防火ガラス構造体を形成するために繰り返し実行し得ることが、理解されるはずである。
【0049】
方法のステップ(a)における保護層の成膜は、それ自体が周知である方法によって、好ましくは磁場強化カソードスパッタリングによって行なうことができる。これは、フロートガラス板が簡単に素早く低コストで均一的にコーティングされるという点において、特に好都合である。
【0050】
反応性カソードスパッタリングによってスズ/亜鉛混合酸化物の層を製造する方法は、たとえばDE19848751C1から知られている。スズ/亜鉛混合酸化物は、好ましくは、5重量%〜95重量%の亜鉛と、5重量%〜95重量%のスズと、0重量%〜10重量%のアンチモンと、製造に固有の混合物とを含むターゲットを用いて成膜される。このターゲットは特に、15重量%〜70重量%の亜鉛と、30重量%〜85重量%のスズと、0重量%〜5重量%のアンチモンと、製造に固有の他の金属の混合物とを含む。酸化スズ/亜鉛によるまたはドープされた酸化スズ/亜鉛による成膜は、たとえばカソードスパッタリング中に反応ガスとして酸素を加えながら行なわれる。
【0051】
金属がドープされた窒化ケイ素の層も同様に、たとえば反応性カソードスパッタリングによって、特に金属がドープされたケイ素ターゲットを用いることによって製造される。次に、金属がドープされた窒化ケイ素からなる第1のサブ保護層が、たとえばカソードスパッタリング中に反応ガスとして窒素を加えながら成膜される。
【0052】
これに代えて、第1および/または第2のサブ保護層は、気相成長、化学気相成長(CVD)、プラズマ強化化学気相成長(PECVD)、ゾル−ゲル法、または湿式化学法によって成膜してもよい。
【0053】
上記方法のステップ(b)において、第1のフロートガラス板と第2のフロートガラス板は、金型キャビティが形成されるよう、固定距離を置いて保持される。これは、たとえばフロートガラス板の端部領域に配置されたスペーサを用いて行なうことができる。よって、スペーサは、防火ガラス構造体の中に固定要素として残してもよく、再び取出してもよい。これに代えて、フロートガラス板を外部ホルダを用いて適所で固定してもよい。
【0054】
方法のステップ(c)において、まだ硬化しておらず注入可能な防火層を金型キャビティに投入し、続いて硬化させる。水溶性アルカリケイ酸塩からなる防火層の場合、たとえばアルカリケイ酸塩を、二酸化ケイ素を含有または放出する硬化剤と合わせる。それによって形成された注入可能な塊を、金型キャビティに投入する。そうすると、この塊が硬化して水分を含有する固体アルカリケイ酸塩層となる。ヒドロゲルからなる防火層の製造方法は、たとえばWO94/04355またはDE4001677C1から知られている。
【0055】
本発明に従う方法の好都合な他の発展形において、第1のフロートガラス板および/または第1のフロートガラス板と第2のフロートガラス板は、方法ステップ(a)の前にまたは方法ステップ(a)と(b)の間に、熱プレストレス処理または部分プレストレス処理される。
【0056】
本発明はさらに、フロートガラス板のスズ浴側と防火層、特にアルカリ性の防火層との間にあり、経年劣化に伴うフロートガラス板の曇りを低減するための、本発明に従う保護層の使用を含む。
【0057】
加えて、本発明は、建築要素として、間仕切りとして、建築物のもしくは陸上車両もしくは海上船舶もしくは航空機の正面の一部もしくは窓の一部として、または、家具および装置の設置部としての、防火ガラスの使用を含む。
【0058】
以下、本発明を図面と実施例を用いてより詳細に説明する。図面の縮尺は完全に一律の縮尺ではない。本発明は決して図面によって限定されない。