【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために、この装置は、多孔質媒体を通る交流電界を発生させることができるデバイスを備えてなり、当該デバイスは、当該多孔質媒体の両側面に、つまり、当該多孔質媒体の方向に配置された少なくとも第一の電極と第二の電極を含んでいる。
【0010】
この発明は、
・第一の電極は、その電極に接触する遮蔽体で覆われており、当該遮蔽体は、6kV/mmより高い、好ましくは9kV/mmより高い絶縁耐力を有し、
・第二の電極は、直接的にまたは間接的に保護層で覆われており、当該保護層は、この第二の電極に固定されていて、相対湿度のレベルに拘わらす、とりわけ、70%を超えるレベルで1×10
12Ω/□より高い表面抵抗率を有する
ことを特徴とする。
【0011】
したがって、この発明は、補足的特性を有する少なくとも一つの層で各電極を覆うことで成り立っている。この組合せは、とりわけ、電界の振幅が高いとき、および/または両電極間の相対湿度が高いときに、両電極間に均質な電界の形成を許容する。
【0012】
両電極間に高い振幅でもって電界を形成することを可能にするために、第一の電極は、高い絶縁耐力、すなわち、6kV/mmより高い、さらには9kV/mmよりもさえ高い絶縁耐力を備えた遮蔽体で覆われている。
【0013】
第一の電極に接触している遮蔽体は、ガラス、石英、アルミナ、ムライト、ステアタイト、雲母、その他の誘電体材料で作ることができる。
【0014】
両電極間の電界の均質性を改善するために、保護層が第二の電極を覆っている。表面抵抗率は、電極間距離に等しい長さを有する二つの電極の間で測定した表面抵抗に相当することを想起されたい。表面抵抗率は、抵抗に該当するので、抵抗と同じ単位で表される。しかしながら、混乱を避ける意味で、使われる単位は、Ω・cm/cm、あるいは、正方形の二つの向かい合う辺の間で測定した抵抗に関わることを想起して、この出願で以後使うように、正方形当たりのオーム、つまり、Ω/□である。その電気的表面抵抗率が1×10
12Ω/□を超える高い値であるために、両電極の間における電圧の差は、忠実に再現される。というのは、保護層の表面の上を電荷がより移動しにくいからである。したがって、電荷は、第二の電極の幾何学的形状に従って分布する。よって、特に電界が高い振幅を有する場合に、第一と第二の電極の間に均質な電界をより容易に発生させることが可能である。
【0015】
保護層の表面抵抗率が1×10
12Ω/□より大きい場合に、保護層の表面上で電荷の移動が制限されることが観測されている。電界を均質化する能力が保護層の表面抵抗率に依存すると仮定すると、保護層の厚さは殆ど影響せず、100分の数mmから数mmまで変えることができる。
【0016】
保護層に関するもう一つの利点は、保護層の表面上における電荷の移動を制限することにより装置の完全な状態をより長く保持できることにある。したがって、電荷が集まって両電極間での放電の形成を助長する蓋然性が低い。「電気放電」とは、両電極の間で起こりより強烈な光る線条の形で視認できる偶発的な電気放電をいう。これらの電気放電は、電極を覆う層に電気的および熱的にストレスを加え、その表面に複数のホットスポットを形成して当該層の老化を速めるという欠点を有する。
【0017】
このように、保護層は、装置の中に均質な電界を作り上げることを可能とし、電界の振幅が第一および第二の電極の間の空気をイオン化するのに十分であるときに、均質なプラズマの形成を促進する。このプラズマの存在は、例えば、気体のタイプ、その圧力、両電極間の電界の周波数および振幅など、複数の異なるパラメータによっても影響を受ける。
【0018】
出願人は、また、処理される材料中に特異点が存在することによって引き起こされる電荷の集中により、電極の表面層が偶発的な温度上昇を受け得ることも確認している。これは、例えば、厚さの変化、または電界中に置かれる繊維性材料中の不純物の存在に関わるかも知れない。これらの温度上昇は、とりわけ保護層として、良好な温度安定性を有する材料、つまり典型的には約250℃の温度閾値を超えて構造的な、したがって電気的な特性を保つような材料を使用することにより抑えることができる。もちろん、当該特徴的な層の電気的特性、とりわけ絶縁耐力は、予め定められた6kV/mmの閾値より上でなければならない。
【0019】
従来技術の装置に対比して、両電極間の電界の均質性がこのように改善されることにより、より高い振幅の電圧の使用が可能になり、電極を覆う層、とりわけ第一の電極を覆う遮蔽体の早期老化を起こすことなく、より速く、より深く含浸させることが可能となるという利点が得られる。確かに、従来知られている装置では、電極がガラスまたはセラミックなどの材料で覆われているので、相対湿度のレベルが70%または80%を超えた場合、表面抵抗率が10
10Ω/□未満に、または10
9 Ω/□未満にさえも低下することが知られている。
【0020】
保護層は、ポリイミド、ポリエーテルケトン、シリコーンまたはフッ素重合体の族に属する材料などのポリマー材料で形成することができる。これらの材料は、単独で使用してもよいし、混合してまたは強化して使用してもよく、先在するフィルムの形を取ってもよいし、または第二の電極の上に堆積させた上層の形を取ってもよい。
【0021】
第一および第二の電極の間の電界の値は、0.1〜50kV/mmの間とすることができ、好ましくは0.5〜30kV/mmとするのがよい。この電圧値の範囲では、電界の周波数は、1〜1000Hzとすることができ、好ましくは10〜300Hzとするのがよい。
【0022】
採用随意であるが、第一および第二の電極の間の電界の均質性を補強するために、第一の電極と接する遮蔽体を上述したような保護層で覆うことを考慮することができる。言い換えれば、遮蔽体を保護層で覆って、遮蔽体の一面が電極と接し、他面が保護層と接するようにしてもよい。したがって、第一の電極は、遮蔽体と保護層の多層で覆われてもよい。
【0023】
別の実施態様によれば、電気的絶縁をより良好にすることにより第二の電極の絶縁耐力を高め、もって両電極間の電界の振幅の増大を可能にするために、第二の電極と保護層の間に上述したような遮蔽体を挿入することを考慮することができる。言い換えれば、第二の電極を遮蔽体と保護層の多層で覆うことができ、それにより内部にエアナイフのない、プラズマに匹敵する高度にイオン化した環境が残留湿度により形成され、コンパクトなアセンブリを形成することができる。
【0024】
同様に、両電極間の電界の均質性を改善するために、上述したような保護層が第一および第二の電極に接して遮蔽隊を覆ってもよい。言い換えれば、第一および第二の電極は、上述したのと同じ多重層で覆われて、互いに機械的に固定された二つの積層体を形成し、そして積層体自体の内部で気体のイオン化現象の出現の可能性なしに、エアナイフのない連続した周囲環境を形成するために、エアナイフを有しない構造としてもよい。
【0025】
採用随意であるが、上述の含浸装置は、第一および第二の電極の間の湿度レベルを減じることを可能にする特定のデバイスを備えていてもよい。有利なことには、装置内で湿度レベルが減じられると、電界の均質性に改善が見られる。この改善は、60%未満の相対湿度でそれに気付く程度であり、50%未満の相対湿度で際立ってくる。例えば、従来技術による装置において45%の相対湿度レベルで得られる均質なプラズマが、この発明による装置において60%の相対湿度レベルで得られることが、観察された。保護層は、有利なことに、この装置において、相対湿度のレベルが60%以上のときにさえ、第一および第二の電極間に均質で安定した電界の形成を可能としている。しかしながら、この装置は、地理的な位置および気候条件に応じて、より高い湿度の下でも正しく作動し得るのでなければならないことに気付かれるであろう。
【0026】
実際面では、相対湿度レベルの測定は、電極が安定した温度に到達するように、そして両電極の間に存在する環境状態が温度パラメータおよび気圧パラメータについて安定状態になるように、一定の時間を置いてから行われるのが好ましい。
【0027】
この発明の装置は、多孔質媒体を駆動して装置の両電極の間を当該媒体を通過させるデバイスを備えていてもよい。この装置の電極の上に保護層があると、電界の振幅が大きくなったときに両電極の間により均質な電界を発生させることができる。結果として、含浸の均質性を損なうことなく、電界の値を大きくすることにより、多孔質媒体が装置内に存在する時間を減らすことができる。このように、例えば、衛生用の紙または不織布の含浸の場合、多孔質媒体の処理時間が現状では数秒であるところ、それを10分の数秒に減じることができる。結果として、多孔質媒体の移動速度は、多孔質媒体の同一のまたは類似の含浸について、この発明による装置においては、従来技術による装置においてよりも高速であり得る。
【0028】
採用随意であるが、この発明の装置は、多孔質媒体を第一および第二の電極の間に通す前に多孔質媒体を前処理して、多孔質媒体の電気抵抗率を増加させるようにもよい。そのために、前処理デバイスに、乾燥デバイスおよび/または加熱デバイスを組み込んで、当該媒体内に存在する残留湿気の放出および/または蒸発を促進することにより、多孔質媒体がこの装置に挿入される前に多孔質媒体を処理することができるようにしてもよい。例えば、綿などの親水性繊維にポリプロピレン粉末を含浸させる場合に、その親水性繊維を乾燥させると、その電気抵抗率を増加さて、したがって、両電極間に放電が形成される恐れを制限することができる。同様に、ポリエステル繊維で出来たマットを相対湿度レベル40%未満に空調された囲いの中を通すと、その電気抵抗率を増加させることができ、それにより、マットに例えばエポキシドを含浸させる場合に、含浸品質および速度を改善することができる。
【0029】
通常、この発明の装置は、粉末堆積デバイスを備えていて、多孔質媒体がこの装置の第一および第二の電極の間を通過する前に多孔質媒体と接触する当該粉末を堆積させることができるようになっている。その堆積デバイスは、前述した前処理デバイスと両電極との間に配置されるのが好ましい。しかしながら、この発明の配置構成は、前処理デバイスより前に粉末が当該媒体の表面に予め堆積される場合にも使うことができる。
【0030】
この出願は、上述したような装置を使用して多孔質媒体に含浸する方法にも関し、その方法は、多孔質媒体を通して交流電界を印加する前に、空気乾燥または加熱乾燥により当該媒体を乾燥する前段ステップを含んでいてもよい。そのステップは、好ましくは、
・媒体が天然繊維またはセルロース繊維などの親水性繊維を含む場合に、加熱するステップ、
・媒体が湿度に敏感な静電防止スプレー膜で被覆された合成繊維などの疎水性繊維を含む場合に、空気乾燥するステップ、
である。
【0031】
この発明は、限定する意図でなく単なる例として記載する以下の説明を読み、添付の図面を参照すると、よりよく理解されるであろう。図面では、同じ符号は、同一のまたは同様の要素を示す。