特許第6517985号(P6517985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6517985塵芥収集支援装置、塵芥収集支援システム、および、塵芥収集支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6517985
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】塵芥収集支援装置、塵芥収集支援システム、および、塵芥収集支援方法
(51)【国際特許分類】
   B65F 3/00 20060101AFI20190513BHJP
【FI】
   B65F3/00 L
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-136637(P2018-136637)
(22)【出願日】2018年7月20日
【審査請求日】2018年7月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000233044
【氏名又は名称】株式会社日立パワーソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮越 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 実樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 亮
【審査官】 片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−204276(JP,A)
【文献】 特開2005−067746(JP,A)
【文献】 特開2006−316862(JP,A)
【文献】 特開2005−314059(JP,A)
【文献】 特開2015−040102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塵芥収集車の塵芥圧縮・回収機構の近傍位置の第一のエリアを形成するための信号を第一のアンテナに送信させるとともに、前記第一のエリアよりも前記塵芥収集車から乖離した位置の第二のエリアを形成するための信号を第二のアンテナに送信させる送信部と、
前記第一のエリアでのタグの検知結果を前記第一のアンテナから受信するとともに、前記第二のエリアでの前記タグの検知結果を前記第二のアンテナから受信する受信部と、
前記受信部による前記タグの検知結果として、前記第一のエリアで前記タグが検知されているとき、または、前記第二のエリアで前記タグが検知されていないときには、前記塵芥圧縮・回収機構の動作を不許可とするための信号と、前記第二のエリアで前記タグが検知されているときには、前記塵芥圧縮・回収機構の動作を許可するための信号と、前記第一のエリア及び前記第二のエリアで、同時に前記タグが検知されたときに、前記塵芥圧縮・回収機構を停止させる停止信号と、を生成する処理部と、
前記処理部により生成された信号を塵芥圧縮・回収機構の制御機構に出力する出力部とを有し、
前記送信部は、
前記第一のエリア内の前記タグを検知するための第一の検知信号を前記第一のアンテナに送信させる第一送信処理と、前記第二のエリア内の前記タグを検知するための第二の検知信号を前記第二のアンテナに送信させる第二送信処理とを交互に実行し、
前記第一送信処理の期間において、前記第一の検知信号による検知処理を無効化するための検知無効化信号を前記第二のアンテナに送信させ、
前記第二送信処理の期間において、前記第二の検知信号による検知処理を無効化するための検知無効化信号を前記第一のアンテナに送信させることを特徴とする
塵芥収集支援装置。
【請求項2】
前記処理部は、
前記タグが前記第二のエリアから出域したときに、前記動作を不許可とするための信号を生成し、
前記タグが前記第二のエリアに入域したときに、前記動作を許可するための信号を生成し、
前記タグが前記第一のエリアに入域したときに、前記動作を不許可とするための信号を生成し、
前記出力部は、前記処理部によりそれぞれ生成された各信号を前記塵芥圧縮・回収機構の制御機構に出力することを特徴とする
請求項1に記載の塵芥収集支援装置。
【請求項3】
前記処理部は、
前記動作を不許可とするための信号として、前記タグが前記第二のエリアから出域したときに、前記塵芥圧縮・回収機構を停止させるためのインターロック用信号を生成するとともに、前記タグが前記第一のエリアに入域したときに、インターロックよりも優先して前記塵芥圧縮・回収機構を停止させる停止信号を生成し、
前記動作を許可するための信号として、前記タグが前記第二のエリアに入域したときに、前記インターロック用信号によるインターロックを解除するための許可信号を生成することを特徴とする
請求項2に記載の塵芥収集支援装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の塵芥収集支援装置と、前記第一のエリアを形成するための前記第一のアンテナと、前記第二のエリアを形成するための前記第二のアンテナと、前記第一のエリアおよび前記第二のエリアそれぞれで検知対象となる前記タグとを含めて構成され、
前記第一のアンテナは、前記塵芥圧縮・回収機構を収容する塵芥投入箱の上部側に固定され、その上部側から前記塵芥投入箱の下部側に向かって信号を出力し、
前記第二のアンテナは、前記塵芥投入箱の塵芥投入口の下部側に固定され、その下部側から前記塵芥収集車外側の上部側に向かって信号を出力することを特徴とする
塵芥収集支援システム。
【請求項5】
前記第一のエリアの内部には、前記タグとは別に、前記第一のエリアの正常動作を前記処理部に確認させるためのテストタグが配置され、
前記処理部は、前記第一のエリアで前記テストタグを検知している間は、前記第一のエリアが正常に形成されていると確認することを特徴とする
請求項4に記載の塵芥収集支援システム。
【請求項6】
前記タグは、自身に備えられている電源で動作し、前記第一のエリアおよび前記第二のエリアそれぞれに自身を検知させるための信号を出力することを特徴とする
請求項4に記載の塵芥収集支援システム。
【請求項7】
塵芥収集支援装置は、送信部と、受信部と、処理部と、出力部とを有しており、
前記送信部は、
塵芥収集車の塵芥圧縮・回収機構の近傍位置の第一のエリアを形成するための信号を第一のアンテナに送信させるとともに、前記第一のエリアよりも前記塵芥収集車から乖離した位置の第二のエリアを形成するための信号を第二のアンテナに送信させる工程において
前記第一のエリア内のタグを検知するための第一の検知信号を前記第一のアンテナに送信させる第一送信処理と、前記第二のエリア内の前記タグを検知するための第二の検知信号を前記第二のアンテナに送信させる第二送信処理とを交互に実行し、
前記第一送信処理の期間において、前記第一の検知信号による検知処理を無効化するための検知無効化信号を前記第二のアンテナに送信させ、
前記第二送信処理の期間において、前記第二の検知信号による検知処理を無効化するための検知無効化信号を前記第一のアンテナに送信させ、
前記受信部は、前記第一のエリアでの前記タグの検知結果を前記第一のアンテナから受信するとともに、前記第二のエリアでの前記タグの検知結果を前記第二のアンテナから受信し、
前記処理部は、前記受信部による前記タグの検知結果として、前記第一のエリアで前記タグが検知されているとき、または、前記第二のエリアで前記タグが検知されていないときには、前記塵芥圧縮・回収機構の動作を不許可とするための信号と、前記第二のエリアで前記タグが検知されているときには、前記塵芥圧縮・回収機構の動作を許可するための信号と、前記第一のエリア及び前記第二のエリアで、同時に前記タグが検知されたときに、前記塵芥圧縮・回収機構を停止させる停止信号と、を生成し、
前記出力部は、前記処理部により生成された信号を塵芥圧縮・回収機構の制御機構に出力することを特徴とする
塵芥収集支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵芥収集支援装置、塵芥収集支援システム、および、塵芥収集支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塵芥(じんかい)の収集作業において、パッカー車(塵芥収集車)への塵芥投入作業中に塵芥圧縮・回収機構に作業者が巻き込まれる事故が問題となっている。この巻き込まれる原因は、塵芥圧縮・回収機構が動作しているときに、その近傍で塵芥収集作業を行うことに起因する。例えば、塵芥圧縮・回収機構の途中で引っかかった塵芥を、作業者が手や足でパッカー車の奥へと押し込もうとするときに、巻き込まれるリスクが高まる。
【0003】
以下、塵芥圧縮・回収機構による巻き込み事故の発生要因を、その作業フローから検討する。
(工程1)パッカー車が所定の塵芥収集場所に到着する。
(工程2)作業者がパッカー車から降車する。
(工程3)作業者がパッカー車に配された塵芥圧縮・回収機構の動作ボタンを押下する。これにより塵芥圧縮・回収機構が動作を開始し、回転板が回転する。
(工程4)作業者が塵芥を塵芥圧縮・回収機構の塵芥投入口に投入する。
(工程5)全ての塵芥を投入した後に、作業者が停止ボタンを押下して塵芥圧縮・回収機構を停止する。これにより、現在の塵芥収集場所での作業は、終了となる。
【0004】
これらの工程1〜工程5のうち、塵芥圧縮・回収機構による巻き込み事故が発生するのは、(工程3)および(工程4)である。(工程3)においては、作業者が塵芥圧縮・回収機構を動作させるために、動作ボタンを押下する操作が発生する。この操作は、作業者の存在位置に関係なく行うことができる。
従って、作業者が塵芥圧縮・回収機構に極めて近い位置であっても、動作ボタンを押下すると塵芥圧縮・回収機構が動作を開始するので、巻き込まれるリスクが発生する。このリスクを回避するには、作業者が塵芥圧縮・回収機構と所定の間隙をおいて存在し、動作ボタンを押下する必要がある。
【0005】
また、(工程4)においては、塵芥圧縮・回収機構の動作中に、塵芥投入口から塵芥を投入することになる。ここでも当然に、塵芥圧縮・回収機構に近い位置で作業者が投入作業を行うことにより、巻き込み事故のリスクが発生する。このリスクを回避するには、(工程3)と同様に、作業者が塵芥圧縮・回収機構と所定の間隙をおいた位置から塵芥を塵芥投入口に投入すればよい。
【0006】
このように、塵芥圧縮・回収機構と、作業者との位置関係を近づきすぎないように適切に保つことが、巻き込み事故対策では重要となる。そこで、特許文献1には、作業者が塵芥圧縮・回収機構に近づきすぎたときに、警告するシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−67746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
塵芥収集作業は、主に公道で行われるので、収集業者ではない一般住民もパッカー車の付近を通行している。ここで、適切な塵芥収集作業を実現するためには、作業者とパッカー車との関係だけに着目するだけでは不充分である。
例えば、昨日が不燃ゴミの収集日で、本日が可燃ゴミの収集日であるとする。そして、ある一般住民が昨日に不燃ゴミを出し忘れてしまって、本日に不燃ゴミを捨てに来てしまった場合を考える。
【0009】
パッカー車へのゴミ投入行為は安全上作業者が行うべきであり、パッカー車が収集する可燃ゴミに、この出し忘れの不燃ゴミが混ざってしまうことは、ゴミ分別のルール上問題となる。そこで、パッカー車に不燃ゴミを直接投げ込もうとした一般住民に対して、近傍にいる作業者が口頭で注意することで、不安全なゴミ投入行為による巻き込まれ事故を防止すると共に不適切なゴミ投入行為を予防できる。
しかし、作業者は、ゴミ置き場の可燃ゴミをパッカー車に運び出す本来の作業に忙しく、パッカー車の近傍に作業者がいないことも起こりうる。こうした不在期間を狙った一般住民による不適切なゴミ投入行為は、塵芥収集業者にとっては危険行為ならびに迷惑行為となっている。特許文献1などの従来の技術は、作業者とパッカー車との関係だけに着目したものであり、一般住民による迷惑行為は対象外であった。
【0010】
そこで本発明が解決しようとする課題は、塵芥収集作業における作業者以外の危険行為ならびに迷惑行為を予防することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明の塵芥収集支援装置は、以下の特徴を有する。
本発明は、塵芥収集車の塵芥圧縮・回収機構の近傍位置の第一のエリアを形成するための信号を第一のアンテナに送信させるとともに、前記第一のエリアよりも前記塵芥収集車から乖離した位置の第二のエリアを形成するための信号を第二のアンテナに送信させる送信部と、
前記第一のエリアでのタグの検知結果を前記第一のアンテナから受信するとともに、前記第二のエリアでの前記タグの検知結果を前記第二のアンテナから受信する受信部と、
前記受信部による前記タグの検知結果として、前記第一のエリアで前記タグが検知されているとき、または、前記第二のエリアで前記タグが検知されていないときには、前記塵芥圧縮・回収機構の動作を不許可とするための信号と、前記第二のエリアで前記タグが検知されているときには、前記塵芥圧縮・回収機構の動作を許可するための信号と、前記第一のエリア及び前記第二のエリアで、同時に前記タグが検知されたときに、前記塵芥圧縮・回収機構を停止させる停止信号と、を生成する処理部と、
前記処理部により生成された信号を塵芥圧縮・回収機構の制御機構に出力する出力部とを有し、
前記送信部は、
前記第一のエリア内の前記タグを検知するための第一の検知信号を前記第一のアンテナに送信させる第一送信処理と、前記第二のエリア内の前記タグを検知するための第二の検知信号を前記第二のアンテナに送信させる第二送信処理とを交互に実行し、
前記第一送信処理の期間において、前記第一の検知信号による検知処理を無効化するための検知無効化信号を前記第二のアンテナに送信させ、
前記第二送信処理の期間において、前記第二の検知信号による検知処理を無効化するための検知無効化信号を前記第一のアンテナに送信させることを特徴とする。
その他の手段は、後記する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、塵芥収集作業における作業者以外の危険行為ならびに迷惑行為を予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に関するパッカー車の構成図である。
図2】本発明の一実施形態に関する塵芥圧縮・回収機構の近傍を示す詳細な構成図である。
図3】本発明の一実施形態に関する塵芥収集支援システムの構成図である。
図4】本発明の一実施形態に関する管理装置の構成図である。
図5】本発明の一実施形態に関する管理装置による信号制御処理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、パッカー車9の構成図である。
パッカー車9に搭載される管理装置1は、図2の危険エリア3aを形成するアンテナ3(第一のアンテナ)および図2の安全エリア4aを形成するアンテナ4(第二のアンテナ)に接続されており、各アンテナに対して子機2を検知するための指令信号を出力する。エリア(区域)とは、各アンテナが通信可能な微弱電波の到達範囲を示す。
管理装置1は、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、ハードディスクなどの記憶手段(記憶部)と、ネットワークインタフェースとを有するコンピュータとして構成される。
このコンピュータは、CPUが、メモリ上に読み込んだプログラム(アプリケーションや、その略のアプリとも呼ばれる)を実行することにより、各処理部により構成される制御部(制御手段)を動作させる。
【0016】
子機2は、作業者に装着されたIDタグである。ここで、子機2のIDタグはアクティブ型としてもよいし、セミアクティブ型でもよいし、パッシブ型でもよい。
なお、アクティブ型およびセミアクティブ型は、子機2に内蔵された電池で動作し、自身のIDを各アンテナに向けて送信する。セミアクティブ型は、自身のIDを各アンテナ(危険エリア3aを形成するアンテナ3、安全エリア4aを形成するアンテナ4)に向けて送信する契機として、IDタグ本体への振動を検知したときや、IDタグ本体のボタンが押下されたときなど、一時的に動作する。
一方、パッシブ型は各アンテナからの電波を電源として動作するため、周囲の電波環境などにより動作が不安定となることもある。また、パッシブ型は、危険エリア3aや安全エリア4aから外れた位置にあると作動しない。
【0017】
図2は、塵芥圧縮・回収機構92の近傍を示す詳細な構成図である。
まず、危険エリア3a(第一のエリア)と、安全エリア4a(第二のエリア)との位置関係について説明する。
なお、危険エリア3aは、作業者の塵芥投入作業において、塵芥圧縮・回収機構92への巻き込まれを防止するためのエリアである。一方、安全エリア4aは、作業者が塵芥圧縮・回収機構92の周囲に存在し、一般住民による迷惑行為を監視可能であることを確認するためのエリアである。また、危険エリア3aには、危険エリア3aを形成するアンテナ3の動作が正常に行われているか否かを確認するためのテストタグ2tが配置されている(詳細は図3の説明)。
【0018】
危険エリア3aを形成するアンテナ3および安全エリア4aを形成するアンテナ4は、それぞれ塵芥投入口93の近傍に配設される。塵芥投入口93は、パッカー車9の外部から内部の塵芥投入箱に向かって塵芥を投入するための投入口である。塵芥投入箱には、塵芥圧縮・回収機構92が配備されており、その先端部の回転板が回転することにより、投入された塵芥がパッカー車9の奥側へと送り出される。
【0019】
なお、塵芥圧縮・回収機構92を動作状態にする(つまり、回転板を回転させる)ための動作ボタンと、停止状態にするための停止ボタンとが塵芥押込装置91に接続されており(ボタンの図示省略)、これらのボタンの押下を検知した塵芥押込装置91からの塵芥圧縮・回収機構92の制御信号により、作業者は塵芥圧縮・回収機構92の状態を切り替えることができる。つまり、塵芥押込装置91は、塵芥圧縮・回収機構92の制御機構である。
【0020】
ここで、危険エリア3aを形成するアンテナ3は、塵芥投入口93および塵芥投入箱をカバーするように危険エリア3aを形成する。そのため、危険エリア3aを形成するアンテナ3は、例えば、塵芥投入箱の上部側に固定され、その上部側から塵芥投入箱の下部側に向かって信号を出力することが望ましい。
また、安全エリア4aを形成するアンテナ4は、危険エリア3aに対してパッカー車9の外側(つまり、パッカー車9から危険エリア3aよりも乖離していく方向)に安全エリア4aを形成する。そのため、安全エリア4aを形成するアンテナ4は、例えば、塵芥投入口93の下部側に固定され、その下部側からパッカー車9外側の上部側に向かって信号を出力することが望ましい。
【0021】
図3は、塵芥収集支援システムの構成図である。
まず、子機2aを携帯する作業者が、ゴミ置き場などのパッカー車9から離れている場合を考える。この場合、子機2aが危険エリア3aの外で、安全エリア4aの外であるため、危険エリア3aを形成するアンテナ3も安全エリア4aを形成するアンテナ4も子機2aを検知しない。このとき、管理装置1は、一般住民などによる迷惑行為を防止するため、塵芥押込装置91にインターロック用信号を送信することで、塵芥圧縮・回収機構92を停止させる。さらに、管理装置1は、子機2aが安全エリア4aの外であるときに、塵芥圧縮・回収機構92を停止させるだけでなく、塵芥投入口93を閉じるなどして、一般住民が不適切にモノを塵芥圧縮・回収機構92に投げ込む行為を明示的に禁止させてもよい。
【0022】
次に、ゴミ置き場から塵芥を運んできた作業者の子機2bがパッカー車9に近づく場合を考える。この場合、子機2bが危険エリア3aの外で、安全エリア4aの中であるため、安全エリア4aを形成するアンテナ4だけが子機2bを検知する。このとき、管理装置1は、塵芥押込装置91にインターロック用信号を解除する許可信号を送信することで、塵芥圧縮・回収機構92を動作可能にする。
さらに、この動作可能状態において、子機2bの作業者が操作スイッチで塵芥押込装置91を起動することで、塵芥圧縮・回収機構92を動作させる。これにより、子機2bの作業者が運んできた塵芥をパッカー車9に回収させることができる。
【0023】
さらに、塵芥圧縮・回収機構92の途中で引っかかった塵芥を、子機2cの作業者が手や足でパッカー車9の奥へと押し込もうとする場合を考える。つまり、子機2cの作業者が塵芥圧縮・回収機構92に近づきすぎた場合である。この場合、子機2cが危険エリア3aの中で、安全エリア4aの外であるため、危険エリア3aを形成するアンテナ3だけが子機2cを検知する。このとき、管理装置1は、子機2cの作業者に巻き込み事故が発生しないように、塵芥押込装置91に停止信号を送信することで、塵芥圧縮・回収機構92を停止する。
なお、安全エリア4aと危険エリア3aとの重複エリア3xに子機2が位置することもある。このときの管理装置1の処理内容については、図5の説明で後記する。
【0024】
以上説明したように、作業者は、ゴミ置き場とパッカー車9とを移動することで、以下の順にエリアの検知処理が行われる。
(1)子機2aが安全エリア4aから出域したときに、管理装置1は塵芥押込装置91にインターロック用信号を送信する。
(2)子機2bが安全エリア4aに入域したときに、管理装置1は塵芥押込装置91に許可信号を送信する。この許可状態で、動作ボタンが押下されることで塵芥圧縮・回収機構92の動作が開始する。
(3)子機2cが危険エリア3aに入域したときに、管理装置1は塵芥押込装置91に停止信号を送信する。
処理部13は、塵芥圧縮・回収機構92の動作を不許可とするための信号として、例えば、(1)のインターロック用信号や、(3)の停止信号を生成する。
処理部13は、塵芥圧縮・回収機構92の動作を許可するための信号として、例えば、(2)の許可信号を生成する。
なお、(1)のインターロック用信号も(3)の停止信号も、塵芥圧縮・回収機構92をすぐに停止させる点では、共通する。一方、(1)のインターロック用信号は(2)の許可信号により解除することができるが、(3)の停止信号は(2)の許可信号よりも優先して、塵芥圧縮・回収機構92を緊急停止させるという違いがある。
つまり、安全エリア4aは、塵芥圧縮・回収機構92の動作を許可する制御と、動作を不許可とする制御(停止制御)の双方に関与する。一方、危険エリア3aは、塵芥圧縮・回収機構92の動作を不許可とする制御(停止制御)だけに関与する。
【0025】
このように、危険エリア3aが安全エリア4aよりも優先されるため、危険エリア3aを形成するアンテナ3が危険エリア3aを正しく形成できているか否かは、とくに注意深く監視する必要がある。そこで、危険エリア3a内に常時配されたテストタグ2tを用いて、管理装置1が危険エリア3aの形成状況を確認することが望ましい。つまり、危険エリア3aを形成するアンテナ3が常時テストタグ2tを検知できているときに、危険エリア3aが正しく形成されている。
【0026】
図4は、管理装置1の構成図である。管理装置1は、送信部11と、受信部12と、処理部13と、記憶部14と、出力部15とを有する。
送信部11は、接続される送信アンテナ11a,11bを介して信号を送信する。
受信部12は、接続される受信アンテナ12a,12bを介して信号を取得する。
なお、危険エリア3aを形成するアンテナ3は、例えば、送信アンテナ11aと受信アンテナ12aとの組み合わせで構成される。また、安全エリア4aを形成するアンテナ4は、例えば、送信アンテナ11bと受信アンテナ12bとの組み合わせで構成される。
【0027】
処理部13は、送信部11に送信開始/停止の指令信号を付与するとともに、受信部12に受信開始/停止の指令信号を付与する。さらに、処理部13は、受信部12から取得した危険エリア3aでの子機2の検知結果、および、安全エリア4aでの子機2の検知結果の組み合わせに基づいて、前記の各種信号(インターロック用信号、許可信号、停止信号)を生成する。
記憶部14には、処理部13の処理に用いられる各種データが記憶される。各種データとは、例えば、送信部11に信号を送信させるときの所定の時間間隔(詳細は図5参照)である。
【0028】
出力部15は、処理部13が生成した各種信号を塵芥押込装置91に出力する。つまり、図3で説明した各種信号(インターロック用信号、許可信号、停止信号)で例示されるように、処理部13は、危険エリア3aで子機2が検知されているとき、または、安全エリア4aで子機2が検知されていないときには、塵芥圧縮・回収機構92の動作を不許可とする信号を生成して、出力部15に出力させる。
一方、処理部13は、安全エリア4aで子機2が検知されているときには、塵芥圧縮・回収機構92の動作を許可するための信号を生成して、出力部15に出力させる。
【0029】
図5は、管理装置1による信号制御処理の説明図である。
安全エリア4aと危険エリア3aとの位置関係について、図3の重複エリア3xで示したように、両エリアの一部が重なるように安全エリア4aを形成するアンテナ4および危険エリア3aを形成するアンテナ3を配してもよい。ここで、重複エリア3xに子機2が存在することで、塵芥圧縮・回収機構92が動作→停止→動作→停止→…を繰り返し、不安定な動きとなるおそれがある。
このような不安定な動きによる誤動作を防ぐため、実際には重複エリア3x内に子機2が存在していても、管理装置1における検知結果では安全エリア4aも危険エリア3aも子機2が不検知となるように、図5に示す信号制御処理を行ってもよい。
【0030】
図5では、処理部13が、危険エリア検知信号31と、安全エリア検知信号41とを交互に送信させる。ここで、処理部13は、送信部11に送信させる信号について、子機2が各エリア内に存在することを検知させるための検知信号(危険エリア検知信号31、安全エリア検知信号41)に加え、その検知信号を一時的に無効化するための検知無効化信号32,42も送信時刻をずらして送信させる。
危険エリア3a内の子機2を検知させる危険エリア検知信号31が、記憶部14にあらかじめ登録されている所定の時間間隔(例えば50ミリ秒)で、危険エリア3aを形成するアンテナ3から定期的に送信されているとする。この危険エリア検知信号31の送信タイミングと同時刻に、処理部13は、危険エリア検知信号31を無効化するための検知無効化信号42を、安全エリア4aを形成するアンテナ4から送信させる。
同様にして、安全エリア4a内の子機2を検知させる安全エリア検知信号41が安全エリア4aを形成するアンテナ4から定期的に送信されている。この安全エリア検知信号41の送信タイミングと同時刻に、処理部13は、安全エリア検知信号41を無効化するための検知無効化信号32を、危険エリア3aを形成するアンテナ3から送信させる。
【0031】
なお、危険エリア検知信号31と、検知無効化信号42との具体的なデータ内容は、例えば、検知信号として意味のあるデータ列(例えばエリアのID=0100010)を、検知無効化信号42の無意味なデータ列(例えば1111111)で上書きするようにすれば、子機2によるエリアの検知処理が無効化される。換言すると、検知信号の検知機能を検知無効化信号が相殺しているとも言える。
そのため、検知無効化信号42は危険エリア検知信号31の信号全体を相殺する必要はなく、一部を無効化するだけでよいので、検知無効化信号42の信号期間および信号強度は、危険エリア検知信号31の信号期間および信号強度よりも小さくて済む。同様に、検知無効化信号32の信号期間および信号強度は、安全エリア検知信号41の信号期間および信号強度よりも小さくて済む。
【0032】
以上説明した本実施形態では、子機2が危険エリア3aの内部に位置するときには、管理装置1が塵芥押込装置91に停止信号を送信することで、作業者の巻き込み事故を予防できる。さらに、子機2が安全エリア4aの外部に位置するときには、管理装置1が塵芥押込装置91にインターロック信号を送信することで、一般住民による危険行為ならびに迷惑行為を予防することができる。
【0033】
なお、図1では、子機2として、作業者に装着されたIDタグを例示し、そのIDが各作業者の識別情報であるとして説明した。一方、子機2のIDタグがユニークな識別情報を持たずに、エリア内で検知される機能を有するだけでもよい。
つまり、第一のエリアを圧縮・回収機構を停止させるエリアとし、第二のエリアを圧縮・回収機構を動作させるエリアとした場合を考える。このとき、以下の各動作が、処理部13によって制御される。
・管理された識別情報を有するIDタグが第二のエリアで検知されたら、圧縮・回収機構を動作させる。
・前記IDタグが第一のエリアで検知されたら、圧縮・回収機構を停止させる。
・前記IDタグが第一及び第二のエリアで同時に検知されたら、圧縮・回収機構を停止させる。
【0034】
また、IDタグが複数ある場合、以下の各動作が、処理部13によって制御される。
・少なくとも1つのIDタグが第一のエリアで検知されたら、圧縮・回収機構を停止させる。
・少なくとも1つのIDタグが第二のエリアで検知されたら、圧縮・回収機構を動作させる。
・少なくとも1つのIDタグが第一及び第二のエリアで同時に検知されたら、圧縮・回収機構を停止させる。
このような動作をする場合において、第一のエリアで検知されるIDタグのIDと、同時に、第二のエリアで検知されるIDタグのIDとは、異なっていても同じであってもよい。
【0035】
なお、本発明は前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。
また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計するなどによりハードウェアで実現してもよい。
また、前記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【0036】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、IC(Integrated Circuit)カード、SDカード(登録商標)、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 管理装置(塵芥収集支援装置)
2 子機
2t テストタグ
3 危険エリアを形成するアンテナ(第一のアンテナ)
3a 危険エリア(第一のエリア)
4 安全エリアを形成するアンテナ(第二のアンテナ)
4a 安全エリア(第二のエリア)
9 パッカー車(塵芥収集車)
11 送信部
11a,11b 送信アンテナ
12 受信部
12a,12b 受信アンテナ
13 処理部
14 記憶部
15 出力部
31 危険エリア検知信号(第一の検知信号)
32 検知無効化信号
41 安全エリア検知信号(第二の検知信号)
42 検知無効化信号
91 塵芥押込装置
92 塵芥圧縮・回収機構
93 塵芥投入口
【要約】
【課題】塵芥収集作業における作業者以外の危険行為ならびに迷惑行為を予防すること。
【解決手段】管理装置1は、受信部12による子機2の検知結果として、危険エリア3aで子機2が検知されているとき、または、安全エリア4aで子機2が検知されていないときには、塵芥圧縮・回収機構92の動作を不許可とするための信号と、安全エリア4aで子機2が検知されているときには、塵芥圧縮・回収機構92の動作を許可するための信号とを生成する処理部13と、処理部13により生成された信号を塵芥圧縮・回収機構92の制御機構に出力する出力部15とを有する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5