特許第6517993号(P6517993)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6517993
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】電気化学装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1213 20160101AFI20190513BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20190513BHJP
   H01M 8/0202 20160101ALI20190513BHJP
   H01M 8/0662 20160101ALI20190513BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20190513BHJP
【FI】
   H01M8/1213
   H01M8/12 101
   H01M8/0202
   H01M8/0662
   H01M8/04 Z
   H01M8/04 N
   H01M8/12 102C
   H01M8/12 102A
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-196731(P2018-196731)
(22)【出願日】2018年10月18日
【審査請求日】2018年10月19日
(31)【優先権主張番号】特願2017-249522(P2017-249522)
(32)【優先日】2017年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 梨沙子
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
【審査官】 橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−090788(JP,A)
【文献】 特開2013−054970(JP,A)
【文献】 特開2001−155742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M8/00−8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料極と、空気極と、前記燃料極と前記空気極の間に配置される固体電解質層とを有する電気化学セルと、
前記空気極に酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス供給口を有する酸化剤ガス供給部と、
前記空気極と前記酸化剤ガス供給口との間に配置され、前記酸化剤ガスに含まれる汚染物質を吸着する第1汚染物質トラップ部と、
前記空気極に供給された酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス排出口を有する酸化剤ガス排出部と、
前記空気極と前記酸化剤ガス排出口との間に配置され、前記酸化剤ガスに含まれる汚染物質を吸着する第2汚染物質トラップ部と、
を備える、
固体酸化物形の電気化学装置。
【請求項2】
前記第1汚染物質トラップ部は、前記固体電解質層に接触している、
請求項1に記載された固体酸化物形の電気化学装置。
【請求項3】
前記固体電解質層に接合されるセパレータを備え、
前記第1汚染物質トラップ部は、前記セパレータに接触している、
請求項1に記載された固体酸化物形の電気化学装置。
【請求項4】
前記空気極と電気的に接合されるインターコネクタを備え、
前記第1汚染物質トラップ部は、前記インターコネクタに接触している、
請求項1に記載された固体酸化物形の電気化学装置。
【請求項5】
前記第1汚染物質トラップ部は、前記空気極から離れている、
請求項2乃至4のいずれかに記載された固体酸化物形の電気化学装置。
【請求項6】
前記空気極に接続される空気極側集電部をさらに備え、
前記第1汚染物質トラップ部は、前記空気極側集電部に接触している、
請求項1に記載された固体酸化物形の電気化学装置。
【請求項7】
前記第1汚染物質トラップ部は、酸素イオン伝導性と電子伝導性とを有する、
請求項3に記載された固体酸化物形の電気化学装置。
【請求項8】
前記ガス供給方向における前記酸化剤ガス供給口と前記第1汚染物質トラップ部との最短距離は、前記ガス供給方向における前記酸化剤ガス供給口と前記空気極との最短距離の1/2以下である、
請求項1乃至7のいずれかに記載された固体酸化物形の電気化学装置。
【請求項9】
前記第1汚染物質トラップ部は、金属酸化物によって構成される、
請求項1乃至8のいずれかに記載された固体酸化物形の電気化学装置。
【請求項10】
前記第1汚染物質トラップ部は、S、Cr、Si、B、及びClの少なくとも1種の元素を含有する物質を含む、
請求項9に記載された固体酸化物形の電気化学装置。
【請求項11】
前記第1汚染物質トラップ部の少なくとも一部は、前記酸化剤ガス供給口から供給される前記酸化剤ガスのガス供給方向において、前記酸化剤ガス供給口から20mm以内に配置されている、
請求項1乃至10のいずれかに記載された固体酸化物形の電気化学装置。
【請求項12】
前記第2汚染物質トラップ部の少なくとも一部は、前記酸化剤ガス排出口から排出される前記酸化剤ガスのガス排出方向において、前記酸化剤ガス排出口から20mm以内に配置されている、
請求項1乃至11のいずれかに記載された固体酸化物形の電気化学装置。
【請求項13】
燃料極と、空気極と、前記燃料極と前記空気極の間に配置される固体電解質層とを有する電気化学セルと、
前記空気極に供給された酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス排出口を有する酸化剤ガス排出部と、
前記空気極と前記酸化剤ガス排出口との間に配置され、前記酸化剤ガスに含まれる汚染物質を吸着する汚染物質トラップ部と、
を備える、
固体酸化物形の電気化学装置。
【請求項14】
前記汚染物質トラップ部の少なくとも一部は、前記酸化剤ガス排出口から排出される前記酸化剤ガスのガス排出方向において、前記酸化剤ガス排出口から20mm以内に配置されている、
請求項13に記載された固体酸化物形の電気化学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体酸化物形燃料電池は、燃料極と空気極との間に配置された固体電解質層を備える。固体酸化物形燃料電池の作動中、燃料極には燃料ガス(例えば、水素ガス)が供給され、空気極には酸化剤ガス(例えば、空気)が供給される。
【0003】
特許文献1では、酸化剤ガス中の汚染物質による空気極の触媒活性低下を抑制するために、酸化剤ガス供給口と空気極との間に汚染物質トラップ部を設ける手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−090788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、本発明者等が特許文献1の手法について検討した結果、汚染物質トラップ部を通過する酸化剤ガスの温度が低いほど汚染物質トラップ部の分子運動がおだやかになるため、汚染物質を効率的にトラップできるという知見を得た。
【0006】
本発明は、上述の状況に鑑みてなされたものであり、酸化剤ガス中の汚染物質を効率的にトラップ可能な電気化学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
電気化学装置は、電気化学セルと、酸化剤ガス供給部と、第1汚染物質トラップ部とを備える。電気化学セルは、燃料極と、空気極と、燃料極と空気極の間に配置される固体電解質層とを有する。酸化剤ガス供給部は、空気極に酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス供給口を有する。第1汚染物質トラップ部は、空気極と酸化剤ガス供給口との間に配置され、酸化剤ガスに含まれる汚染物質を吸着する。第1汚染物質トラップ部の少なくとも一部は、酸化剤ガス供給口から供給される酸化剤ガスのガス供給方向において、酸化剤ガス供給口から20mm以内に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、酸化剤ガス中の汚染物質を効率的にトラップ可能な電気化学装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る燃料電池装置の構成を示す断面図
図2】第2実施形態に係る燃料電池装置の構成を示す断面図
図3】第3実施形態に係る燃料電池装置の構成を示す断面図
図4】第4実施形態に係る燃料電池装置の構成を示す断面図
図5】第5実施形態に係る燃料電池装置の構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.第1実施形態
(燃料電池装置1の構成)
第1実施形態に係る燃料電池装置1の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、燃料電池装置1の構成を示す断面図である。
【0011】
燃料電池装置1は、燃料電池セル10、インターコネクタ20、セパレータ30、酸化剤ガス供給部40、酸化剤ガス排出部50、及び汚染物質トラップ部60を備える。燃料電池装置1を複数積層することによって、燃料電池セルスタックを構成しうる。
【0012】
(燃料電池セル10)
燃料電池セル10は、固体電解質層11、燃料極12、空気極13、燃料極側集電部14、及び空気極側集電部15を有する。
【0013】
本実施形態に係る燃料電池セル10は、空気極13及び固体電解質層11に比べて燃料極12が顕著に厚い燃料極支持型セルであるが、これに限定されない。燃料電池セル10は、固体電解質層11及び燃料極12に比べて空気極13が顕著に厚い空気極支持型セルであってもよく、燃料極12及び空気極13に比べて固体電解質層11が顕著に厚い電解質支持型セルであってもよい。
【0014】
固体電解質層11は、薄板状に形成される。固体電解質層11の厚みは、3μm以上20μm以下とすることができる。固体電解質層11は、空気極13において発生する酸素イオンを燃料極12に移動させる酸素イオン伝導性を有する電解質材料によって構成される。このような電解質材料としては、例えば、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)、サマリウム添加セリア(CeSmO)、ガドリウム添加セリア(CeGdO)、及びカルシア安定化ジルコニア(CaSZ)の1種、或いは2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0015】
固体電解質層11は、緻密質である。固体電解質層11は、酸化剤ガスの燃料極12側への透過、及び、燃料ガスの空気極13側への透過を防止する。アルキメデス法によって求められる固体電解質層11の相対密度は、95%以上が好ましい。
【0016】
燃料極12は、固体電解質層11の第1主面11S上に配置される。燃料極12は、燃料電池セル10のアノードとして機能する。燃料極12は、多孔質体である。
【0017】
燃料極12は、燃料ガス室S1内に配置される。燃料ガス室S1には、図示しない燃料ガス供給部から燃料ガスが供給される。燃料ガスとしては、水素、炭化水素、及び、水素と炭化水素との混合ガスが挙げられる。炭化水素としては、例えば、天然ガス、ナフサ、及び石炭ガス化ガスなどが挙げられるが、これに限られない。燃料ガスは、1種類の炭化水素であってもよく、2種類以上の炭化水素の混合物であってもよい。燃料ガスは、窒素及びアルゴンなどの不活性ガスを含有していてもよい。
【0018】
燃料極12は、周知の燃料極材料によって構成される。燃料極12は、例えば、Ni及び/又はFe等の金属と上述した電解質材料との混合物によって構成することができる。
【0019】
空気極13は、固体電解質層11の第2主面11T上に配置される。空気極13は、燃料電池セル10のカソードとして機能する。空気極13は、多孔質体である。空気極13の気孔率は特に制限されないが、10%以上とすることができる。空気極13の厚みは特に制限されないが、例えば30μm以上200μm以下とすることができる。
【0020】
空気極13は、酸化剤ガス室S2内に配置される。酸化剤ガス室S2には、酸化剤ガス供給部40から酸化剤ガスが供給される。空気極13を通過した後の酸化剤ガスは、酸化剤ガス排出部50によって酸化剤ガス室S2から排出される。酸化剤ガス室S2は、後述する酸化剤ガス供給口42から空気極13に到るまでの上流空間と、空気極13内の空孔と、空気極13から後述する酸化剤ガス排出口52に到るまでの下流空間とを含む。酸化剤ガスとしては、例えば、酸素と他の気体との混合ガスを用いることができる。酸化剤ガスとしては、安全かつ安価である空気が特に好ましい。酸化剤ガスには、窒素及びアルゴンなどの不活性ガスが含有されていてもよい。
【0021】
空気極13は、酸素イオン伝導性及び電子伝導性を有する材料によって構成することができる。このような材料としては、La、Sr、Co、及びFeの少なくとも1種の元素を含む複合酸化物が好適である。このような複合酸化物としては、La1−xSrCoO系複合酸化物、La1−xSrFeO系複合酸化物、La1−xSrCo1−yFe系複合酸化物、La1−xSrMnO系複合酸化物、Pr1−xBaCoO系複合酸化物、及びSm1−xSrCoO系複合酸化物などが挙げられる。
【0022】
燃料極側集電部14は、燃料極12と電気的かつ機械的に接合される。燃料極側集電部14の構成材料としては、例えば、通気性を有するNiフェルト等が挙げられる。燃料極側集電部14は、燃料電池装置1が複数積層された場合、燃料極12とインターコネクタ20との間に挟まれる。なお、燃料極側集電部14は、インターコネクタ20と一体的に形成されていてもよい。
【0023】
空気極側集電部15は、空気極13と電気的かつ機械的に接合される。空気極側集電部15の構成材料としては、例えば、Ag−Pd等の金属材料が挙げられる。空気極側集電部15は、空気極13とインターコネクタ20との間に挟まれる。なお、空気極側集電部15は、インターコネクタ20と一体的に形成されていてもよい。
【0024】
(インターコネクタ20)
インターコネクタ20は、空気極13と電気的に接合される。本実施形態において、インターコネクタ20は、空気極側集電部15を介して空気極13と電気的に接合されている。インターコネクタ20は、空気極側集電部15と電気的かつ機械的に接合される。インターコネクタ20は、燃料電池装置1が複数積層された場合、隣接する2つの燃料電池セル10の間に挟まれる。この場合、インターコネクタ20は、燃料極側集電部14及び空気極側集電部15それぞれと電気的かつ機械的に接合される。
【0025】
インターコネクタ20は、金属によって構成することができ、ステンレスによって構成されるのが好ましい。
【0026】
(セパレータ30)
セパレータ30は、燃料電池セル10の周囲を取り囲むように配置される。本実施形態に係るセパレータ30は、固体電解質層11の第2主面11Tに接合され、空気極13を取り囲むように配置されている。
【0027】
セパレータ30は、燃料ガス室S1と酸化剤ガス室S2とを隔てる。すなわち、セパレータ30は、固体電解質層11と同様、酸化剤ガスの燃料極12側への透過、及び、燃料ガスの空気極13側への透過を防止する。
【0028】
セパレータ30は、金属によって構成することができ、ステンレスによって構成されるのが好ましい。
【0029】
(酸化剤ガス供給部40)
酸化剤ガス供給部40は、燃料電池セル10の側方に配置される。酸化剤ガス供給部40は、酸化剤ガス供給路41と酸化剤ガス供給口42とを有する。
【0030】
酸化剤ガス供給路41は、燃料電池セル10の積層方向に沿って延びる。燃料電池装置1が複数積層された場合、酸化剤ガス供給路41どうしが連なることによって、1本の酸化剤ガス供給経路が形成される。
【0031】
酸化剤ガス供給口42は、酸化剤ガス供給路41に連なる。酸化剤ガス供給口42は、酸化剤ガス室S2に開口する。酸化剤ガス供給口42は、燃料電池セル10に向かって開口する。
【0032】
酸化剤ガスは、酸化剤ガス供給路41と酸化剤ガス供給口42とを順次通過して、酸化剤ガス室S2に供給される。酸化剤ガス供給部40から酸化剤ガス室S2に供給される酸化剤ガスは、図1に示すように、ガス供給方向D1に沿って酸化剤ガス供給口42から流入する。すなわち、酸化剤ガスは、酸化剤ガス室S2への流入時、ガス供給方向D1に沿って流れる。ガス供給方向D1は、図1に示すように、空気極13にダイレクトに向かう方向であってもよく、空気極13にダイレクトには向かわない方向であってもよい。
【0033】
(酸化剤ガス排出部50)
酸化剤ガス排出部50は、燃料電池セル10の側方に配置される。酸化剤ガス排出部50は、酸化剤ガス排出路51と酸化剤ガス排出口52とを有する。
【0034】
酸化剤ガス排出路51は、燃料電池セル10の積層方向に沿って延びる。燃料電池装置1が複数積層された場合、酸化剤ガス排出路51どうしが連なることによって、1本の酸化剤ガス排出経路が形成される。
【0035】
酸化剤ガス排出口52は、酸化剤ガス排出路51に連なる。酸化剤ガス排出口52は、酸化剤ガス室S2に開口する。酸化剤ガス排出口52は、燃料電池セル10に向かって開口する。
【0036】
酸化剤ガスは、酸化剤ガス排出口52と酸化剤ガス排出路51とを順次通過して、酸化剤ガス室S2から排出される。酸化剤ガス排出部50によって酸化剤ガス室S2から排出される酸化剤ガスは、図1に示すように、ガス排出方向D2に沿って酸化剤ガス排出口52から排出される。すなわち、酸化剤ガスは、酸化剤ガス室S2からの排出時、ガス排出方向D2に沿って流れる。ガス排出方向D2は、図1に示すように、供給時のガス供給方向D1と平行であってもよいが、ガス供給方向D1と平行でなくてもよい。
【0037】
(汚染物質トラップ部60)
汚染物質トラップ部60は、本発明に係る「第1汚染物質トラップ部」の一例である。本実施形態において、汚染物質トラップ部60は、固体電解質層11の第2主面11T上に配置されている。汚染物質トラップ部60は、その表面及び/又は内部を流通する酸化剤ガスに含まれる汚染物質を吸着する物質によって構成される。
【0038】
汚染物質とは、酸化剤ガスに含有される物質のうち、空気極13に吸着して触媒活性を低下させる物質である。例えば、汚染物質が空気極13の複合酸化物と反応して反応生成物が生成されると、空気極13内の空孔が塞がれて、酸化剤ガスが空気極13内に充分に供給されなくなって、空気極13の触媒活性が不充分となる。また、汚染物質が空気極13の複合酸化物と反応して、触媒活性を有しない他の物質に変性してしまうおそれがある。空気極13の触媒活性が低下すると、燃料電池セル10の発電性能が低下してしまう。
【0039】
汚染物質としては、例えば、S、Cr、Si、B、及びClの少なくとも1種の元素を含有する物質(例えば、SOxなど)が挙げられる。汚染物質には、HOが含まれていてもよい。
【0040】
汚染物質トラップ部60は、上述の汚染物質をトラップできる材料によって構成される。このような材料としては、例えば、MgO、SrO、ガラスなどが挙げられるが、これに限られない。
【0041】
汚染物質トラップ部60は、金属酸化物を有することが好ましい。金属酸化物は、La、Sr、Sm、Gd、Pr、Nd、Co、及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物であることが好ましい。金属酸化物は、複合酸化物であることが好ましく、空気極13を構成する材料(例えば、La1−xSrCo1−yFe系複合酸化物など)が特に好ましい。
【0042】
汚染物質トラップ部60は、上述した汚染物質を含有することが更に好ましい。これにより、汚染物質トラップ部60における反応活性が高まるため、汚染物質を効率的にトラップすることができる。汚染物質トラップ部60に汚染物質を含有させるには、上述した金属酸化物に汚染物質をドーピングした後に熱処理(600℃〜1200℃、1時間〜20時間)すればよい。
【0043】
汚染物質トラップ部60は、酸化剤ガスを透過可能である。アルキメデス法によって測定される汚染物質トラップ部60の開気孔率は特に制限されないが、10%以上50%以下とすることができる。汚染物質トラップ部60の形状は特に制限されず、例えば、膜状、層状、或いは板状のほか、直方体状、球体状などであってもよく、複数に分割して配置されていてもよい。
【0044】
汚染物質トラップ部60は、酸化剤ガス室S2において、空気極13の酸化剤ガス供給口42側に配置される。すなわち、汚染物質トラップ部60は、酸化剤ガス室S2のうち、酸化剤ガス供給口42から空気極13までの上流空間に配置される。汚染物質トラップ部60は、ガス供給方向D1において、空気極13よりも上流に位置する。
【0045】
そのため、酸化剤ガス供給口42から空気極13に向かって供給される酸化剤ガスは、汚染物質トラップ部60を通過した後に空気極13に流れる。従って、空気極13の触媒活性を低下させるおそれのある汚染物質を酸化剤ガス中からトラップ(吸着、除去)することができる。
【0046】
ここで、汚染物質トラップ部60の少なくとも一部は、酸化剤ガス供給口42から供給される酸化剤ガスのガス供給方向D1において、酸化剤ガス供給口42から20mm以内に配置されている。すなわち、ガス供給方向D1における汚染物質トラップ部60と酸化剤ガス供給口42との最短距離40Lは、20mm以下である。そのため、酸化剤ガス室S2内の雰囲気温度で酸化剤ガスが昇温する前に、酸化剤ガスを汚染物質トラップ部60に供給できる。従って、比較的低温の酸化剤ガスを汚染物質トラップ部60に供給できるため、汚染物質トラップ部60の分子運動がおだやかになる。その結果、汚染物質トラップ部60によって効率的に汚染物質をトラップすることができる。
【0047】
ガス供給方向D1における汚染物質トラップ部60と酸化剤ガス供給口42との最短距離40Lは、ガス供給方向D1における空気極13と酸化剤ガス供給口42との最短距離40Mの2/3以下であることが好ましく、1/2以下であることが特に好ましい。これにより、汚染物質を効率的にトラップできるとともに、燃料電池セル10を小型化することができる。
【0048】
本実施形態において、汚染物質トラップ部60は、空気極13から離れている。従って、汚染物質トラップ部60に吸着された汚染物質が空気極13に拡散することを抑制できる。また、汚染物質トラップ部60は、空気極13だけでなく、空気極側集電部15及びインターコネクタ20からも離れていることが好ましい。
【0049】
本実施形態において、汚染物質トラップ部60は、発電に寄与しない。すなわち、汚染物質トラップ部60は、燃料電池セル10内における化学反応に伴う電流経路として機能しない。このように汚染物質トラップ部60が発電に寄与しないので、汚染物質トラップ部60が汚染物質をトラップしても発電性能が低下しにくい。
【0050】
(燃料電池装置1の製造方法)
燃料電池装置1の製造方法の一例について説明する。
【0051】
まず、燃料極12用グリーンシート上に重ねた固体電解質層11用グリーンシートの第2主面11T上に空気極13用スラリーと汚染物質トラップ部60用スラリーとを別々に塗布・乾燥させた後に焼成することによって、固体電解質層11と燃料極12と空気極13とを有する燃料電池セル10が形成される。
【0052】
次に、固体電解質層11の第2主面11Tにセパレータ30をロウ付けする。
【0053】
次に、燃料極12に燃料極側集電部14を接合するとともに、空気極13に空気極側集電部15とインターコネクタ20とを順次接合する。燃料電池装置1を複数積層する場合には、インターコネクタ20とセパレータ30が接合された燃料電池セル10を複数積層すればよい。
【0054】
次に、インターコネクタ20とセパレータ30が接合された燃料電池セル10の側方に酸化剤ガス供給部40と酸化剤ガス排出部50とを配置する。
【0055】
2.第2実施形態
第2実施形態に係る燃料電池装置2では、汚染物質トラップ部60がセパレータ30上に配置されている点において、第1実施形態に係る燃料電池装置1と異なっている。以下、当該相違点について説明する。図2は、第2実施形態に係る燃料電池装置2の構成を示す断面図である。
【0056】
汚染物質トラップ部60は、セパレータ30上に配置されている。汚染物質トラップ部60は、ガス供給方向D1において、酸化剤ガス供給口42と対向している。従って、酸化剤ガス供給口42から酸化剤ガス室S2に流入する酸化剤ガスを、汚染物質トラップ部60の側面に打ち当てることができる。その結果、酸化剤ガスを汚染物質トラップ部60の内部に行き渡らせやすいため、汚染物質を効率的にトラップ(吸着、除去)することができる。
【0057】
汚染物質トラップ部60の開気孔率及び形状は特に限定されない。汚染物質トラップ部60は、酸化剤ガス室S2において、空気極13の酸化剤ガス供給口42側に配置される。
【0058】
汚染物質トラップ部60の少なくとも一部は、酸化剤ガス供給口42から供給される酸化剤ガスのガス供給方向D1において、酸化剤ガス供給口42から20mm以内に配置されている。すなわち、ガス供給方向D1における汚染物質トラップ部60と酸化剤ガス供給口42との最短距離40Lは、20mm以下である。従って、比較的低温の酸化剤ガスを汚染物質トラップ部60に供給できるため、効率的に汚染物質をトラップすることができる。
【0059】
ガス供給方向D1における汚染物質トラップ部60と酸化剤ガス供給口42との最短距離40Lは、ガス供給方向D1における空気極13と酸化剤ガス供給口42との最短距離40Mの2/3以下であることが好ましく、1/2以下であることが特に好ましい。これにより、汚染物質を効率的にトラップできるとともに、燃料電池セル10を小型化することができる。
【0060】
本実施形態においても、汚染物質トラップ部60は、空気極13から離れており、発電に寄与しない。
【0061】
3.第3実施形態
第3実施形態に係る燃料電池装置3では、汚染物質トラップ部60が空気極側集電体15と直接的に接触している点において、第1実施形態に係る燃料電池装置1と異なっている。以下、当該相違点について説明する。図3は、第3実施形態に係る燃料電池装置3の構成を示す断面図である。
【0062】
本実施形態において、汚染物質トラップ部60は、空気極側集電体15と直接的に接触している。汚染物質トラップ部60は、空気極側集電体15と電気的かつ機械的に接合されている。従って、本実施形態において、汚染物質トラップ部60は、発電に寄与している。
【0063】
汚染物質トラップ部60の少なくとも一部は、酸化剤ガス供給口42から供給される酸化剤ガスのガス供給方向D1において、酸化剤ガス供給口42から20mm以内に配置されている。すなわち、ガス供給方向D1における汚染物質トラップ部60と酸化剤ガス供給口42との最短距離40Lは、20mm以下である。従って、比較的低温の酸化剤ガスを汚染物質トラップ部60に供給できるため、効率的に汚染物質をトラップすることができる。
【0064】
ガス供給方向D1における汚染物質トラップ部60と酸化剤ガス供給口42との最短距離40Lは、ガス供給方向D1における空気極13と酸化剤ガス供給口42との最短距離40Mの2/3以下であることが好ましく、1/2以下であることが特に好ましい。これにより、汚染物質を効率的にトラップできるとともに、燃料電池セル10を小型化することができる。
【0065】
本実施形態において、汚染物質トラップ部60は、酸素イオン伝導性と電子伝導性とを有することが好ましい。これによって、空気極13と同様、汚染物質トラップ部60自体が活性な状態になるため、より効率的に汚染物質をトラップすることができる。汚染物質トラップ部60は、例えば、空気極13の材料によって構成することができる。
【0066】
本実施形態においても、汚染物質トラップ部60は、空気極13から離れていることが好ましいが、空気極13と直接的に接触していてもよい。
【0067】
4.第4実施形態
第4実施形態に係る燃料電池装置4では、汚染物質トラップ部60がインターコネクタ20と直接的に接触している点において、第1実施形態に係る燃料電池装置1と異なっている。以下、当該相違点について説明する。図4は、第4実施形態に係る燃料電池装置4の構成を示す断面図である。
【0068】
本実施形態において、汚染物質トラップ部60は、インターコネクタ20と直接的に接触している。汚染物質トラップ部60は、インターコネクタ20と電気的かつ機械的に接合されている。従って、本実施形態において、汚染物質トラップ部60は、発電に寄与しない。すなわち、汚染物質トラップ部60は、燃料電池セル10内における化学反応に伴う電流経路として機能しない。よって、汚染物質トラップ部60が汚染物質をトラップしても発電性能が低下しにくい。
【0069】
汚染物質トラップ部60の少なくとも一部は、酸化剤ガス供給口42から供給される酸化剤ガスのガス供給方向D1において、酸化剤ガス供給口42から20mm以内に配置されている。すなわち、ガス供給方向D1における汚染物質トラップ部60と酸化剤ガス供給口42との最短距離40Lは、20mm以下である。従って、比較的低温の酸化剤ガスを汚染物質トラップ部60に供給できるため、効率的に汚染物質をトラップすることができる。
【0070】
ガス供給方向D1における汚染物質トラップ部60と酸化剤ガス供給口42との最短距離40Lは、ガス供給方向D1における空気極13と酸化剤ガス供給口42との最短距離40Mの2/3以下であることが好ましく、1/2以下であることが特に好ましい。これにより、汚染物質を効率的にトラップできるとともに、燃料電池セル10を小型化することができる。
【0071】
本実施形態においても、汚染物質トラップ部60は、空気極13から離れていることが好ましいが、空気極13と直接的に接触していてもよい。
【0072】
5.第5実施形態
第5実施形態に係る燃料電池装置5は、汚染物質トラップ部70が空気極13の酸化剤ガス排出口52側に配置される点において、第1実施形態に係る燃料電池装置1と異なる。以下、当該相違点について説明する。図5は、第5実施形態に係る燃料電池装置5の構成を示す断面図である。
【0073】
汚染物質トラップ部70は、本発明に係る「第2汚染物質トラップ部」の一例である。汚染物質トラップ部70は、固体電解質層11の第2主面11T上に配置される。汚染物質トラップ部70は、汚染物質(例えば、S、Cr、Si、B、及びClの少なくとも1種の元素)をトラップできる材料によって構成される。このような材料としては、例えば、MgO、SrO、ガラスなどが挙げられるが、これに限られない。
【0074】
汚染物質トラップ部70は、金属酸化物を有することが好ましい。金属酸化物は、La、Sr、Sm、Gd、Pr、Nd、Co、及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物であることが好ましい。金属酸化物は、複合酸化物であることが好ましく、空気極13を構成する材料(例えば、La1−xSrCo1−yFe系複合酸化物など)が特に好ましい。
【0075】
汚染物質トラップ部70は、上述した汚染物質を含有することが更に好ましい。これにより、汚染物質トラップ部70における反応活性が高まるため、汚染物質を効率的にトラップすることができる。汚染物質トラップ部70に汚染物質を含有させるには、上述した金属酸化物に汚染物質をドーピングした後に熱処理(600℃〜1200℃、1時間〜20時間)すればよい。
【0076】
汚染物質トラップ部70は、酸化剤ガスを透過可能である。アルキメデス法によって測定される汚染物質トラップ部70の開気孔率は特に制限されないが、10%以上50%以下とすることができる。汚染物質トラップ部70の形状は特に制限されず、例えば、膜状、層状、或いは板状のほか、直方体状、球体状などであってもよく、複数に分割して配置されていてもよい。
【0077】
汚染物質トラップ部70は、酸化剤ガス室S2において、空気極13の酸化剤ガス排出部口52側に配置される。すなわち、汚染物質トラップ部70は、酸化剤ガス室S2のうち、酸化剤ガス排出口52から空気極13までの下流空間に配置される。汚染物質トラップ部70は、ガス排出方向D2において、空気極13よりも下流に位置する。
【0078】
そのため、燃料電池装置101が停止した場合に、温度低下に伴って負圧になる酸化剤ガス室S2内に酸化剤ガス排出口152から逆流する酸化剤ガス中の汚染物質を、汚染物質トラップ部70によってトラップすることができる。従って、空気極13の触媒活性を低下させるおそれのある汚染物質を酸化剤ガス中からトラップ(吸着、除去)することができる。
【0079】
具体的には、汚染物質トラップ部70の少なくとも一部は、酸化剤ガス排出口52から排出される酸化剤ガスのガス排出方向D2において、酸化剤ガス排出口52から20mm以内に配置されている。すなわち、ガス排出方向D2における汚染物質トラップ部70と酸化剤ガス排出口52との最短距離50Lは、20mm以下である。そのため、燃料電池装置101の停止時に酸化剤ガス室S2内に逆流する酸化剤ガスが空気極13に接触する前に、酸化剤ガスを汚染物質トラップ部70に供給できる。従って、汚染物質トラップ部70によって効率的に汚染物質をトラップすることができる。
【0080】
ガス排出方向D2における汚染物質トラップ部70と酸化剤ガス排出口52との最短距離50Lは、ガス排出方向D2における空気極13と酸化剤ガス排出口52との最短距離50Mの2/3以下であることが好ましく、1/2以下であることが特に好ましい。これにより、汚染物質を効率的にトラップできるとともに、燃料電池セル10を小型化することができる。
【0081】
本実施形態において、汚染物質トラップ部70は、空気極13から離れている。従って、汚染物質トラップ部70に吸着された汚染物質が空気極13に拡散することを抑制できる。また、汚染物質トラップ部70は、空気極13だけでなく、空気極側集電部15及びインターコネクタ20からも離れていることが好ましい。
【0082】
本実施形態において、汚染物質トラップ部70は、発電に寄与しない。すなわち、汚染物質トラップ部70は、燃料電池セル10内における化学反応に伴う電流経路として機能しない。このように汚染物質トラップ部70が発電に寄与しないので、汚染物質トラップ部70が汚染物質をトラップしても発電性能が低下しにくい。
【0083】
(他の実施形態)
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変形又は変更が可能である。
【0084】
上記第1乃至第5実施形態では、電気化学セルを備える電気化学装置の一例として、燃料電池セル10を備える燃料電池装置1について説明したがこれに限られない。電気化学装置には、電気化学セルとして、水蒸気から水素と酸素を生成する電解セルを備えるものが含まれる。
【0085】
上記第1乃至第5実施形態では、燃料電池装置1が平板型の燃料電池セル10を有することとしたが、これに限られるものではない。本発明に係る汚染物質トラップ部60は、いわゆる縦縞型或いは横縞型の燃料電池セルを1つ以上有する燃料電池装置にも適用可能である。縦縞型燃料電池セルでは、燃料ガス流路が形成された導電性の基板の一主面上にインターコネクタが形成され、基板の他主面上に発電部(燃料極、固体電解質層、空気極)が形成されている。横縞型燃料電池セルでは、燃料ガス流路が形成された絶縁性の基板の少なくとも一主面上に複数の発電部(燃料極、固体電解質層、空気極)が直列接続で形成されている。燃料電池装置1が、2つ以上の縦縞型或いは横縞型の燃料電池セルを有する場合、各燃料電池セルは燃料ガスを燃料ガス流路に供給するための燃料マニホールド上に立設されていてもよい。
【0086】
上記第5実施形態において、汚染物質トラップ部70は、固体電解質層11上に配置されることとしたが、これに限られない。汚染物質トラップ部70は、空気極13と酸化剤ガス排出口52との間に配置されていればよい。従って、汚染物質トラップ部70は、第2乃至第4実施形態で説明したように、セパレータ30上に配置されていてもよいし、空気極側集電体15上に配置されていてもよいし、インターコネクタ20上に配置されていてもよい。
【実施例】
【0087】
本実施例では、汚染物質トラップ部の酸化剤ガス供給口からの距離を短くすることによる効果について調べた。
【0088】
(サンプルNo.1〜16)
サンプルNo.1〜16の燃料電池装置は、図1に示した燃料電池装置1である。具体的には、酸化剤ガス供給口42の高さが5mm、酸化剤ガス供給口42の奥行きが130mm、ガス供給方向D1における固体電解質層11の幅が120mm、固体電解質層11の奥行きが120mm、ガス供給方向D1における空気極13の幅が80mm、空気極13の奥行きが80mm、ガス供給方向D1における空気極13と酸化剤ガス供給口42との最短距離40Mが30mmであった。また、汚染物質トラップ部60は、ガス供給方向D1における幅が5mm、奥行きが100mmの直方体形状とした。そして、表1に示すように、ガス供給方向D1における汚染物質トラップ部60と酸化剤ガス供給口42との最短距離40Lをサンプルごとに変更した。汚染物質トラップ部60は、汚染物質(例えば、S、BやSi等)をトラップできるMgO、SrO、ガラス等によって構成した。
【0089】
[連続発電試験]
サンプルNo.1〜16について、以下の条件で1000時間の連続発電試験を実施した。
・試験温度:750℃
・電流密度:0.3A/cm(空気極13のうち空気極側集電部15が配置される主面の面積に対する値)
・空気極に空気を供給(酸素ガス利用率40%)
・燃料極に水素ガスを供給(燃料ガス利用率80%以下)
【0090】
そして、サンプルNo.1〜10について、定電流負荷時の電圧を計測することによって、初期電圧に対する1000時間連続発電後における電圧変化率(電圧低下率)を測定した。測定結果を表1に示す。表1では、電圧変化率が0.50%未満であったサンプルを「○」と評価し、電圧変化率が0.50%以上であったサンプルを「×」と評価してある。
【0091】
【表1】
【0092】
表1に示すように、ガス供給方向D1における汚染物質トラップ部60と酸化剤ガス供給口42との最短距離40Lを20mm以下としたサンプルNo.1〜11では、最短距離40Lが21mm以上であるサンプルNo.12〜16に比べて、電圧変化率を顕著に抑えることができた。このような結果が得られたのは、比較的低温の酸化剤ガスを汚染物質トラップ部60に供給することで、汚染物質トラップ部60の分子運動をおだやかにすることができたためである。
【0093】
また、表1に示すように、汚染物質トラップ部60と酸化剤ガス供給口42との最短距離40Lを空気極13と酸化剤ガス供給口42との最短距離40Mの1/2以下としたサンプルNo.1〜6では、サンプルNo.7〜11に比べて、電圧変化率を更に抑えることができた。
【符号の説明】
【0094】
1〜4 燃料電池装置
10 燃料電池セル
11 固体電解質層
12 燃料極
13 空気極
20 インターコネクタ
30 セパレータ
40 酸化剤ガス供給部
41 酸化剤ガス供給路
42 酸化剤ガス供給口
50 酸化剤ガス排出部
60 汚染物質トラップ部
【要約】
【課題】酸化剤ガス中の汚染物質を効率的にトラップ可能な電気化学装置を提供する。
【解決手段】燃料電池装置1は、燃料電池セル10と、酸化剤ガス供給部40と、汚染物質トラップ部60とを備える。燃料電池セル10は、燃料極12と空気極13と固体電解質層11とを有する。酸化剤ガス供給部40は、空気極13に酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス供給口42を有する。汚染物質トラップ部60は、空気極13と酸化剤ガス供給口42との間に配置される。汚染物質トラップ部60の少なくとも一部は、酸化剤ガス供給口42から供給される酸化剤ガスのガス供給方向D1において、酸化剤ガス供給口42から20mm以内に配置されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5