特許第6518054号(P6518054)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6518054
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/14 20060101AFI20190513BHJP
   A61B 3/15 20060101ALI20190513BHJP
   A61B 3/11 20060101ALI20190513BHJP
【FI】
   A61B3/14 E
   A61B3/14 F
   A61B3/10 A
【請求項の数】3
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-220662(P2014-220662)
(22)【出願日】2014年10月29日
(65)【公開番号】特開2016-86838(P2016-86838A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼田 寛一
(72)【発明者】
【氏名】大塚 浩之
【審査官】 冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−278914(JP,A)
【文献】 特開2012−034925(JP,A)
【文献】 特開2006−149981(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0114412(US,A1)
【文献】 特開2009−172154(JP,A)
【文献】 特開2014−113175(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0128226(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 − 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼底に一対の合焦指標を投影するための光束を被検眼に照射する合焦指標投影部と、
前記眼底を撮影する眼底撮影部と、
前記合焦指標投影部と前記眼底撮影部と合焦レンズとを含む光学系を移動するための駆動部と、
記眼底撮影部により取得された眼底像から前記合焦指標の投影像を検出し、検出された前記投影像に基づいて前記合焦レンズを移動する合焦制御部と
を備え
前記一対の合焦指標の一方の投影像が検出された場合、前記合焦制御部は、前記一方の投影像の位置から前記光学系の移動量及び移動方向を求め、前記移動量及び前記移動方向に基づき前記駆動部が前記光学系を移動した後に前記合焦レンズの移動先を求めて前記合焦レンズを移動し、
前記一対の合焦指標のいずれの投影像も検出されなかった場合、前記合焦制御部は、前記駆動部が前記光学系を既定の方向に既定の距離だけ移動した後に前記眼底撮影部により取得された眼底像から前記合焦指標の投影像を検出して前記合焦レンズを移動する
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
眼底に一対の合焦指標を投影するための光束を被検眼に照射する合焦指標投影部と、
前記眼底を動画撮影して観察画像を取得する眼底撮影部と、
前記合焦指標投影部と前記眼底撮影部と合焦レンズとを含む光学系を移動するための駆動部と、
前記眼底撮影部により取得された眼底像から前記合焦指標の投影像を検出し、検出された前記投影像に基づいて前記合焦レンズを移動する合焦制御部と
を備え、
前記一対の合焦指標の一方の投影像が検出された場合、前記合焦制御部は、前記一方の投影像の位置から前記光学系の移動量及び移動方向を求め、前記移動量及び前記移動方向に基づき前記駆動部が前記光学系を移動した後に前記合焦レンズの移動先を求めて前記合焦レンズを移動し、
前記一対の合焦指標のいずれの投影像も検出されなかった場合、前記合焦制御部は、前記駆動部による前記光学系の移動と並行して前記眼底撮影部により取得された観察画像を解析して前記合焦指標の投影像を検出して前記合焦レンズを移動する
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項3】
前記一対の合焦指標の双方の投影像が検出された場合、前記合焦制御部は、前記双方の投影像に基づいて前記合焦レンズを移動する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科装置は、眼科分野において使用される装置の総称である。眼科装置には、被検眼を撮影するための眼科撮影装置や、被検眼を光学的に検査するための眼科検査装置や、被検眼を治療するための眼科治療装置などがある。眼科撮影装置の典型的な例として、眼底カメラ、光干渉断層計(OCT)、走査型レーザ検眼鏡(SLO)、スリットランプ顕微鏡、手術用顕微鏡などがある。また、眼科検査装置の典型的な例として、レフラクトメーター、ケラトメータ、角膜トポグラファ、視野検査装置、ウェーブフロントアナライザ、スペキュラーマイクロスコープ、自覚検眼装置、眼圧計などがある。眼科治療装置の典型的な例として、レーザ治療装置、白内障手術装置、硝子体手術装置などがある。
【0003】
いくつかの眼科装置では、被検眼に対して光学系のフォーカシングが行われる。たとえば、眼底を撮影する際には、眼底に対するフォーカシングが行われる。フォーカシングは手動または自動で実施される。いずれの場合においても、現在のフォーカス状態を把握するための指標(合焦指標)が用いられる。合焦指標の典型的な例としてスプリット指標がある。スプリット指標は、眼底に投影される一対の光束からなる指標であり、それらの投影像の位置関係が現在のフォーカス状態を表す。ユーザまたは眼科装置は、2つの投影像が所定の位置関係になるよう合焦レンズを移動させることで、光学系のピントを眼底に合わせる。
【0004】
このような指標を用いたフォーカシングでは、双方の投影像を認識可能なことが前提となる。しかし、被検眼が小瞳孔眼である場合、眼底に向かう光束や眼底からの反射光束が虹彩により遮られ、この前提が成立しないことがある。たとえば、特許文献1には、一方の投影像を検出できない場合におけるオートフォーカスの手法が開示されている。具体的には、眼底像に対するスプリット指標(投影像)の位置を事前に記憶し、認識可能な一方のスプリット指標が当該位置に配置されるようにフォーカシングを実行するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−278914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のオートフォーカス技術は、少なくとも一方の指標を認識できる場合にのみ適用可能である。なお、いずれの指標も認識できない場合には手動でフォーカシングを行う必要がある。特に、瞳孔径が非常に小さい場合(たとえば3.5mm以下の場合)、いずれの指標も認識できない可能性が高い。
【0007】
この発明の目的は、小瞳孔眼に対するオートフォーカスの改善を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る眼科装置は、眼底に一対の合焦指標を投影するための光束を被検眼に照射する合焦指標投影部と、前記眼底を撮影する眼底撮影部と、前記合焦指標投影部と前記眼底撮影部と合焦レンズとを含む光学系を移動するための駆動部と、記眼底撮影部により取得された眼底像から前記合焦指標の投影像を検出し、検出された前記投影像に基づいて前記合焦レンズを移動する合焦制御部とを備える。前記一対の合焦指標の一方の投影像が検出された場合、前記合焦制御部は、前記一方の投影像の位置から前記光学系の移動量及び移動方向を求め、前記移動量及び前記移動方向に基づき前記駆動部が前記光学系を移動した後に前記合焦レンズの移動先を求めて前記合焦レンズを移動する。前記一対の合焦指標のいずれの投影像も検出されなかった場合、前記合焦制御部は、前記駆動部が前記光学系を既定の方向に既定の距離だけ移動した後に前記眼底撮影部により取得された眼底像から前記合焦指標の投影像を検出して前記合焦レンズを移動する。
【発明の効果】
【0009】
実施形態に係る眼科装置によれば、小瞳孔眼に対するオートフォーカスの改善を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る眼科装置の構成の一例を表す概略図である。
図2】実施形態に係る眼科装置の構成の一例を表す概略図である。
図3A】実施形態に係る眼科装置の動作の一例を表す概略図である。
図3B】実施形態に係る眼科装置の動作の一例を表す概略図である。
図4A】実施形態に係る眼科装置の動作の一例を表す概略図である。
図4B】実施形態に係る眼科装置の動作の一例を表す概略図である。
図5】実施形態に係る眼科装置の動作の一例を表すフローチャートである。
図6】実施形態に係る眼科装置の動作の一例を表すフローチャートである。
図7】実施形態に係る眼科装置の動作の一例を表すフローチャートである。
図8】実施形態に係る眼科装置の構成の一例を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明に係る眼科装置のいくつかの典型的な実施形態を説明する。以下、眼底カメラに関する実施形態について特に詳しく説明するが、この発明を適用可能な眼科装置は眼底カメラに限定されない。
【0012】
この発明は、少なくとも、フォーカシング用の指標を眼底に投影するための構成を有する任意の眼科装置に適用可能である。たとえば、OCTやSLOやスリットランプ顕微鏡のような、眼底の撮影に用いられる任意の眼科装置にこの発明を適用することができる。また、たとえば、網膜に光刺激を与える視野検査装置のような眼科検査装置や、網膜の光凝固に用いられるレーザ治療装置のような眼科治療装置に、この発明を適用することも可能である。
【0013】
また、以下に説明する実施形態や変形例を任意に組み合わせることが可能である。
【0014】
〈第1の実施形態〉
[構成]
実施形態に係る眼科装置の構成を図1および図2に示す。図1は眼科装置1の光学系の構成例を示す。図2は眼科装置の制御系の構成例を示す。
【0015】
眼科装置1には、被検眼Eの眼底Efの表面形態を表す2次元画像(眼底像)を形成するための光学系が設けられている。眼底像には、観察画像や撮影画像などが含まれる。観察画像は、近赤外光を用いて取得される眼底Efの動画像である。撮影画像は、フラッシュ光を用いて取得される眼底Efの静止画像である。撮影画像としては、カラー画像、フルオレセイン蛍光画像、インドシアニングリーン蛍光画像、自発蛍光画像などがある。また、眼科装置1は、被検眼Eの前眼部Eaを撮影することも可能である。
【0016】
眼科装置1には、従来の眼底カメラと同様に、被検者の顔を支持するための顎受けや額当てが設けられている。さらに、眼科装置1には、従来の眼底カメラと同様に、照明光学系10と撮影光学系30が設けられている。照明光学系10は眼底Efに照明光を照射する。撮影光学系30は、照明光の眼底反射光を撮像装置(イメージセンサ37、43)に導く。
【0017】
(光学系)
照明光学系10の観察光源11は、定常光(連続光)を出力可能な定常光源である。この定常光源は、フラッシュ光の出力も可能であってよい。観察光源11は、たとえばハロゲンランプやLED(Light Emitting Diode)により構成される。観察光源11から出力された光(観察照明光)は、曲面状の反射面を有する反射ミラー12により反射され、集光レンズ13を経由し、可視カットフィルタ14を透過して近赤外光となる。さらに、観察照明光は、撮影光源15の近傍にて一旦集束し、ミラー16により反射され、リレーレンズ17および18と、絞り19と、リレーレンズ20とを経由する。そして、観察照明光は、孔開きミラー21の周辺部(孔部の周囲の領域)にて反射され、対物レンズ22を経由して眼底Efを照明する。なお、光学フィルタ部23については後述する。
【0018】
観察照明光の眼底反射光は、対物レンズ22により屈折され、孔開きミラー21の中心領域に形成された孔部を通過し、ダイクロイックミラー55を透過し、合焦レンズ31を経由し、ダイクロイックミラー32に到達する。さらに、この眼底反射光は、ダイクロイックミラー32を透過し、ミラー40により反射され、集光レンズ42によりイメージセンサ43の受光面に結像される。イメージセンサ43は、所定の時間間隔で眼底反射光を検出し、電気信号(画像信号、映像信号)を生成して出力する。なお、光学フィルタ部41については後述する。また、イメージセンサ43は、たとえば、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサにより構成される。
【0019】
撮影光源15は、フラッシュ光(ストロボ光、瞬間光などとも呼ばれる)を出力する。撮影光源15は、定常光の出力も可能であってよい。撮影光源15は、たとえばキセノンランプやLEDにより構成される。撮影光源15から出力された光(撮影照明光)は、観察照明光と同様の経路を通って眼底Efに照射される。この撮影照明光の眼底反射光は、観察照明光と同様の経路を通ってダイクロイックミラー32に導かれる。
【0020】
眼底反射光が赤外光の場合、眼底反射光はダイクロイックミラー32を透過し、観察照明光と同様の経路を通ってイメージセンサ43により検出される。他方、眼底反射光が可視光の場合、眼底反射光はダイクロイックミラー32により反射され、ダイクロイックミラー33を透過し、ミラー35により反射され、集光レンズ36によりイメージセンサ37により検出される。なお、光学フィルタ部34については後述する。また、イメージセンサ37は、たとえば、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサにより構成される。
【0021】
光学フィルタ部23、34および41について説明する。各光学フィルタ部23、34、41には、各種用途の光学フィルタが設けられている。光学フィルタとしては、蛍光撮影用フィルタ、レッドフリー撮影用フィルタなどがある。蛍光撮影用フィルタとしては、自発蛍光撮影(FAF)用フィルタ、フルオレセイン蛍光撮影(FA)用フィルタ、インドシアニングリーン撮影(ICG)用フィルタなどがある。なお、光学フィルタはこれらに限定されるものではなく、眼科分野での各種撮影手法に適用される任意の光学フィルタであってよい。光学フィルタ部23(34、41)に複数の光学フィルタが設けられている場合、ユーザまたは眼科装置1により選択された光学フィルタが光路に配置される。
【0022】
LCD38は、固視標や視力測定用指標などの各種指標を表示する。固視標は被検眼Eを固視させるための指標であり、眼底Efの観察時や撮影時に使用される。LCD38から出力された可視光は、ダイクロイックミラー33により反射され、ダイクロイックミラー32により反射され、合焦レンズ31、ダイクロイックミラー55、孔開きミラー21の孔部、および対物レンズ22を経由して被検眼Eに入射し、眼底Efに投影される。なお、LCD38に代えて、LED等を含んで構成される内部固視標を設けてもよい。
【0023】
さらに、眼科装置1には、従来の眼底カメラと同様にアライメント光学系50とフォーカス光学系60が設けられている。アライメント光学系50は、被検眼Eに対する装置光学系の位置合わせ(アライメント)を行うための指標(アライメント指標)を生成する。フォーカス光学系60は、眼底Efに対するフォーカシング(ピント合わせ)を行うための指標(合焦指標)を生成する。この実施形態では、合焦指標としてスプリット指標が用いられる。
【0024】
アライメント光学系50のLED51から出力された光(アライメント光)は、絞り52および53と、リレーレンズ54とを経由し、ダイクロイックミラー55により反射され、孔開きミラー21の孔部を通過し、対物レンズ22により被検眼Eの前眼部Ea(角膜)に投影される。
【0025】
アライメント光の角膜反射光は、観察照明光の眼底反射光と同様の光路を経由してイメージセンサ43の受光面に投影される。イメージセンサ43による受光像(アライメント指標像)は、観察画像とともに表示される。ユーザは、従来の眼底カメラと同様の操作を行ってアライメントを実施することができる。また、アライメント指標像の位置を解析して光学系を移動させることにより自動的にアライメントを行うようにしてもよい。
【0026】
フォーカシングを行う際には、照明光学系10の光路に反射棒67の反射面が斜設される。フォーカス光学系60のLED61から出力された光(フォーカス光)は、コリメートレンズ62を通過し、スプリット指標板63により二つの光束に分離され、二孔絞り64を通過し、ミラー65により反射され、集光レンズ66により反射棒67の反射面に一旦結像されて反射される。さらに、フォーカス光は、リレーレンズ20を経由し、孔開きミラー21により反射され、対物レンズ22により眼底Efに結像される。
【0027】
フォーカス光の眼底反射光は、アライメント光の角膜反射光と同様の経路を通ってイメージセンサ43により検出される。イメージセンサ43による受光像(スプリット指標像)は、観察画像(およびアライメント指標像)とともに表示される。眼科装置1は、従来と同様に、スプリット指標像の位置を解析して合焦レンズ31等を移動させることによりピント合わせを行う。また、スプリット指標像を視認しつつ手動でピント合わせを行うようにしてもよい。
【0028】
実施形態に係る眼科装置1は2つのイメージセンサを搭載しているが、この発明に係る眼科装置は少なくとも1つのイメージセンサを有するものであればよい。また、実施形態に係る眼科装置(眼底カメラ)は、散瞳タイプおよび無散瞳タイプのいずれであってもよい。
【0029】
(制御系)
眼科装置1の制御系について図2を参照しつつ説明する。
【0030】
眼科装置1の制御系は、制御部100と、データ処理部200と、表示部300と、操作部400とを含んで構成される。また、図1に示す光学系は光学ユニット70に格納されている。さらに、眼科装置1は、ユニット駆動部80と、合焦駆動部90とを備える。ユニット駆動部80は、光学ユニット70を3次元的に移動するよう構成される。なお、光学ユニット70の移動は、少なくとも平行移動を含んでいてよく、回転移動(回動)を含んでいてよい。合焦駆動部90は、撮影光学系30の光軸方向に合焦レンズ31を移動させる。なお、図示は省略するが、眼科装置1は、他の駆動機構(たとえば光学フィルタ部23、34、41を駆動するための機構)を備えている。
【0031】
(制御部100)
制御部100は、各種の制御処理や演算処理を実行する。制御部100は、主制御部110と、記憶部120と、ユニット制御部130と、合焦制御部140とを含んで構成される。なお、ユニット制御部130や合焦制御部140は主制御部110の内部に設けられていてもよい。また、ユニット制御部130や合焦制御部140の機能の一部をデータ処理部200が担うように構成してもよい。
【0032】
(制御部110、記憶部120)
主制御部100は、眼科装置1の各部を制御する。特に、主制御部100は、観察光源11、撮影光源15、光学フィルタ部23、34および41、イメージセンサ37および43、アライメント光学系50のLED51、フォーカス光学系60のLED61、反射棒67などの制御を行う。また、主制御部110は、表示部300に情報を表示させる。
【0033】
記憶部120には各種の情報が記憶される。たとえば記憶部120には、主制御部110やデータ処理部200に所定の処理を実行させるためのコンピュータプログラムが記憶されている。また、記憶部120には、被検眼Eの検査において取得された情報(画像データ等)や、患者に関する情報(電子カルテ情報等)などが記憶される。
【0034】
記憶部120には、フォーカシングの制御において参照される対応情報があらかじめ記憶されている。対応情報には、スプリット指標の投影位置(ディオプタのずれ量、フォーカスのずれ量)と合焦レンズ31の位置との対応関係が含まれている。すなわち、スプリット指標像の描出位置と、ディオプタのずれ量(フォーカスのずれ量)と、合焦レンズ31の位置との間の対応関係は既知である。
【0035】
ここで、オートアライメントとオートフォーカスについて説明する。この実施形態において、オートアライメントは従来と同様にして実行される。一方、フォーカシングについては、従来と同様の態様だけでなく、この実施形態に特有の態様も実行可能である。
【0036】
アライメントが行われるときには、アライメント指標が投影されている状態の前眼部Eaの正面画像が取得される。この正面画像は、典型的には赤外動画像である。この正面画像におけるアライメント指標の描出態様の例を図3Aおよび図3Bに示す。なお、図3Aおよび図3Bにおいて、前眼部Eaの像は省略されている。図3Aに示す正面画像G1には、アライメント指標の2つの像(アライメント指標像)A1およびA2が輝点として描出されている。また、制御部100は、アライメントの目標位置を示す括弧形状のターゲット像Tを、正面画像G1の中心位置に表示させる。
【0037】
被検眼Eに対するxy方向のアライメントがずれている場合、2つのアライメント指標像A1およびA2は、ターゲット像Tから離れた位置に描出される(図3Aを参照)。また、z方向のアライメントがずれている場合、2つのアライメント指標像A1およびA2は、互いに異なる位置に描出される(図3Aを参照)。xyz方向全てのアライメントが適正である場合、2つのアライメント指標像A1およびA2は、互いに重なった状態でターゲット像Tの内部に描出される(図3Bを参照)。ターゲット像Tに対する2つのアライメント指標像A1およびA2の変位(変位量、変位方向)は、xy方向におけるアライメントのずれ(ずれ量、ずれ方向)を示す。2つのアライメント指標像A1およびA2の変位(変位量、変位方向)は、z方向におけるアライメントのずれ(ずれ量、ずれ方向)を示す。
【0038】
制御部100(またはデータ処理部200)は、正面画像G1の画素情報(輝度値等)に基づいて、アライメント指標像A1およびA2に相当する画像領域を特定し、特定された各画像領域の特徴位置(中心、重心等)を特定し、ターゲット像Tの中心位置に対する各特徴位置の変位と、2つの特徴位置の間の変位とを求める。さらに、制御部100(またはデータ処理部200)は、求められた変位に基づいてアライメントのずれを求め、このアライメントのずれを打ち消すような光学系の移動量を取得する。そして、制御部100は、取得された移動量だけ光学ユニット70を移動させるようにユニット駆動部80を制御する。正面画像G1(赤外動画像)のフレームごとに(または数フレームごとに)、このような一連の処理が繰り返し実行される。オートアライメントは、求められる変位が既定の閾値以下となったことに対応して完了となる。なお、オートアライメントの完了後にトラッキングを開始することができる。トラッキングは、被検眼Eの特徴部位がフレーム内の一定位置に描出されるように光学ユニット70の位置を調整する機能である。
【0039】
オートフォーカスが行われるときには、スプリット指標が投影されている状態の眼底Efの正面画像が取得される。この正面画像は、典型的には赤外動画像である。この正面画像におけるスプリット指標の描出態様の例を図4Aおよび図4Bに示す。なお、図4Aおよび図4Bにおいて、眼底Efの像は省略されている。図4Aに示す眼底Efの正面画像G2には反射棒67の影Uが映り込んでおり、スプリット指標の2つの像(スプリット指標像)B1およびB2が影Uの上に輝線として描出される。
【0040】
フォーカス位置が(z方向に)ずれている場合(つまり、フォーカス位置が被検眼Eのディオプタと合っていない場合)、2つのスプリット指標像B1およびB2は、互いに横方向に変位して描出される。その変位方向はフォーカス位置のずれ方向(+z方向または−z方向。つまり、ディオプタの増加(+D)またはディオプタの減少(−D))を示し、その変位量はフォーカス位置のずれの大きさを示す。フォーカス位置が適正である場合、図4Bに示すように、2つのスプリット指標像B1およびB2は縦方向に揃った位置に描出される。
【0041】
制御部100(またはデータ処理部200)は、正面画像G2の画素情報(輝度値等)に基づいて、スプリット指標像B1およびB2に相当する画像領域を特定し、特定された各画像領域の特徴位置(中心、重心、軸線等)を特定し、特定された2つの特徴位置の間の変位を求める。さらに、制御部100(またはデータ処理部200)は、求められた変位に基づいてフォーカス位置のずれを求め、このフォーカス位置のずれを打ち消すような合焦レンズ31の移動量を取得する。対応情報は、この処理において参照される。すなわち、対応情報には、従来と同様に、一対のスプリット指標像の間の変位(相対位置)と合焦レンズ31の位置とがあらかじめ対応付けられている。
【0042】
このように双方のスプリット指標像が得られる場合には、従来のオートフォーカスを実行することができる。しかし、被検眼Eが小瞳孔眼である場合や、被検眼Eに混濁が存在する場合のように、眼底Efに到達する光学的な経路に大きな制限がある場合、一方または双方のスプリット指標像を検出できないことがある。一方のスプリット指標像を検出できない場合には、特許文献1に開示されている技術を適用することが可能である。この場合、特許文献1と同様の情報が対応情報に含まれる。いずれのスプリット指標像も検出できない場合、眼科装置1は、光学ユニット70を移動させることによって1つまたは2つのスプリット指標像を(順次に)検出する。このようにして検出されたスプリット指標像についても、対応情報を参照することによって、ディオプタのずれ量や、合焦レンズ31の位置(移動先)を求めることが可能である。
【0043】
なお、この実施形態の眼科装置1は眼底カメラであり、その撮影光学系の合焦レンズのみが設けられているが、2以上の合焦レンズが設けられている場合がある。たとえば、特開2014−113175号公報に記載された装置には、眼底カメラ機能に含まれる合焦レンズと、OCT機能に含まれる合焦レンズとが設けられている。このような場合、この実施形態と同様に眼底カメラ機能を用いて前者の合焦レンズの位置を求め、さらに、双方の合焦レンズの位置の間の既定の対応関係(対応情報)を参照して後者の合焦レンズの位置を求めることが可能である。
【0044】
(ユニット制御部130)
ユニット制御部130は、ユニット駆動部80の制御を行う。それにより、被検眼Eに対する光学ユニット70(光学系)の位置が3次元的に移動される。
【0045】
(合焦制御部140)
合焦制御部140は、合焦駆動部90の制御を行う。それにより、撮影光学系30のフォーカス位置が変更される。また、合焦制御部140は、たとえば上記のオートフォーカスに関する処理など、フォーカシングに関する各種の処理を実行する。
【0046】
(データ処理部200)
データ処理部200は各種のデータ処理を実行する。データ処理部200が実行する処理の具体例については後述する。なお、データ処理部200は、ユニット制御部130の一部として機能してもよいし、合焦制御部140の一部として機能してもよい。
【0047】
(表示部300、操作部400)
表示部300と操作部400は、眼科装置1のユーザインターフェイスを構成する。表示部300は、主制御部110による制御の下に各種情報を表示する。操作部400は、操作指示や情報入力に用いられる。操作部400は、撮影トリガボタンや各種スイッチ等のハードウェアを含んで構成される。主制御部110は、操作部400から入力される信号に基づいて眼科装置1を制御する。表示部300はタッチパネルディスプレイを含んでいてよい。この場合、表示部300に表示されたグラフィックユーザインターフェイス(GUI)を用いて操作や情報入力を行うように構成できる。
【0048】
[動作]
実施形態に係る眼科装置の動作について説明する。一般に、眼科装置は、本来の目的である撮影や検査や治療の前に、準備動作を実行する。準備動作には、顎受けや額当ての調整、アライメント、フォーカシング、トラッキング、装置のセッティング、動作モードの選択などが含まれる。以下、実施形態により実行可能なオートフォーカスについて説明する。他の準備動作や、撮影・検査・治療は、従来と同様にして実行される。実施形態に係る準備動作では、アライメントの後にオートフォーカスを実行する。以下、実施形態に係るオートフォーカスのいくつかの典型例を説明する。
【0049】
(第1の動作例)
第1の動作例では、アライメントによって決定された光学ユニット70の位置(基準位置)から既定方向に既定距離だけ光学ユニット70を移動することによりオートフォーカスを実行する。以下、図5を参照する。
【0050】
(S1:オートフォーカスを開始する)
オートフォーカスの前段の準備動作の終了を受けて、主制御部110は、オートフォーカスを開始する。なお、固視標は既に被検眼Eに提示されているものとする。また、たとえばこの段階で、眼底Efの赤外動画像(観察画像)の取得が開始される。
【0051】
(S2:合焦指標のための光束の照射を開始する)
主制御部110は、フォーカス光学系60のLED61を点灯するとともに、照明光学系10の光路に反射棒67を挿入する。ここで、被検眼Eは小瞳孔眼であり、いずれのスプリット指標像も検出されないとする。すなわち、眼底Efの観察画像(および反射棒67の影U)は得られるが、図4A等に示すスプリット指標像B1およびB2のいずれも観察画像に描出されないとする。なお、この段階で取得される情報を表示部300に表示させるか否かは任意である。また、この段階において、光学ユニット70は基準位置に配置されている。
【0052】
(S3:基準位置から−x方向に距離dだけ離れた位置に光学系を移動する)
次に、ユニット制御部130は、ユニット駆動部80を制御して、光学ユニット70を−x方向に距離dだけ移動する。このときの移動方向は、一対のスプリット指標像の配列方向により事前に設定される。たとえば、この実施形態と異なり一対のスプリット指標像が横方向に配列される場合、光学ユニット70の移動方向は(±)y方向に設定される。
【0053】
また、移動距離dは、固定値でもよいし、被検眼ごとの固有値でもよいし、被検眼の属性(年齢、性別、傷病、眼球サイズ等)に応じた選択値でもよい。固定値は、たとえば、臨床的にまたは理論的に決定される。固定値の一例として0.5mmを適用できる。被検眼ごとの固有値は、たとえば、過去に適用された値や、当該被検眼の属性から算出された値である。被検眼の属性に応じた選択値は、事前に複数準備される。
【0054】
(S4:第1のスプリット指標像を検出する)
続いて、合焦制御部140(またはデータ処理部200)は、眼底Efの観察画像とともに得られる第1のスプリット指標像を検出する。本例では、ステップS3において−x方向に光学ユニット70を移動したことに対応し、上側のスプリット指標像B1が検出される。
【0055】
(S5:基準位置から+x方向に距離dだけ離れた位置に光学系を移動する)
次に、ユニット制御部130は、ユニット駆動部80を制御して、光学ユニット70を+x方向に距離2dだけ移動する。それにより、光学ユニット70は、基準位置から+x方向に距離dだけ離れた位置に配置される。
【0056】
(S6:第2のスプリット指標像を検出する)
続いて、合焦制御部140(またはデータ処理部200)は、眼底Efの観察画像とともに得られる第2のスプリット指標像(下側のスプリット指標像B2)を検出する。
【0057】
(S7:2つのスプリット指標像の位置から合焦レンズの移動先を求める)
合焦制御部140は、対応情報を参照することにより、第1および第2のスプリット指標像の位置に基づいて、合焦レンズ31の移動先(移動量)を求める。
【0058】
(S8:ディオプタのずれ量≦閾値?)
合焦制御部140は、ステップS7で求められた合焦レンズ31の移動先に対応するディオプタのずれ量(フォーカスのずれ量)が既定の閾値以下であるか判定する。この閾値は、たとえば0.3ディオプタに設定される。ディオプタのずれ量が閾値以下である場合(S8:YES)、ステップS11に移行する。一方、ディオプタのずれ量が閾値を超える場合(S8:NO)、ステップS9に移行する。
【0059】
(S9:合焦レンズを移動する)
ステップS8において「NO」と判定された場合、合焦制御部140は、合焦駆動部90を制御して、ステップS7で求められた移動先に合焦レンズ31を移動する。
【0060】
(S10:光学系を基準位置に移動する)
ステップS9の処理が完了した後、ユニット制御部130は、ユニット駆動部80を制御して、光学ユニット70を基準位置に移動する。そして、処理はステップS3に戻り、一連の処理(ステップS3〜ステップS8)が再度実行される。すなわち、ステップS8において「YES」と判定されるまで、ステップS3〜ステップS10の処理が繰り返し実行される。なお、この反復が所定回数に達した場合に所定の制御を行うように構成できる。たとえば、主制御部110は、オートフォーカスに失敗した旨を示すメッセージや、マニュアルフォーカスモードへの移行を示すメッセージを表示部300に表示させることが可能である。
【0061】
(S11:光学系を基準位置に移動する)
ステップS8において「YES」と判定された場合、ユニット制御部130は、ユニット駆動部80を制御して、光学ユニット70を基準位置に移動する。そして、処理は次の準備動作に移行する。なお、この段階において各種の設定を行うことが可能である。たとえば、主制御部110は、照明光学系10および/または撮影光学系30の絞りの設定を撮影時に小瞳孔用の設定に変更するためのフラグを立てる。
【0062】
(第2の動作例)
第2の動作例では、光学ユニット70を移動しつつスプリット指標像を検出する。以下、図6を参照する。
【0063】
(S21:オートフォーカスを開始する)
第1の動作例のステップS1と同様である。
【0064】
(S22:合焦指標のための光束の照射を開始する)
第1の動作例のステップS2と同様である。
【0065】
(S23:−x方向への光学系の移動を開始する)
次に、ユニット制御部130は、ユニット駆動部80を制御して、光学ユニット70の−x方向への移動を開始する。このときの移動方向は、第1の動作例のステップS3と同様にして設定されてよい。また、−x方向への最大移動距離が設定されていてもよい。この最大移動距離は、固定値でもよいし、被検眼ごとの固有値でもよいし、被検眼の属性に応じた選択値でもよい。
【0066】
(S24:第1のスプリット指標像を検出する)
光学ユニット70の移動と並行し、合焦制御部140(またはデータ処理部200)は、眼底Efの観察画像を解析することにより第1のスプリット指標像(上側のスプリット指標像B1)を検出する。
【0067】
(S25:+x方向への光学系の移動を開始する)
第1のスプリット指標像が検出されたことに対応し、ユニット制御部130は、ユニット駆動部80を制御して、光学ユニット70の+x方向への移動を開始する。
【0068】
(S26:第2のスプリット指標像を検出する)
光学ユニット70の移動と並行し、合焦制御部140(またはデータ処理部200)は、眼底Efの観察画像を解析する。光学ユニット70が基準位置に到達した後、合焦制御部140(またはデータ処理部200)は、第2のスプリット指標像(下側のスプリット指標像B2)を検出する。
【0069】
(S27:2つのスプリット指標像の位置から合焦レンズの移動先を求める)
第1の動作例のステップS7と同様である。
【0070】
(S28:ディオプタのずれ量≦閾値?)
第1の動作例のステップS8と同様である。
【0071】
(S29:合焦レンズを移動する)
第1の動作例のステップS9と同様である。
【0072】
(S30:光学系を基準位置に移動する)
第1の動作例のステップS10と同様である。
【0073】
(S31:光学系を基準位置に移動する)
第1の動作例のステップS11と同様である。
【0074】
(第3の動作例)
第3の動作例では、眼底Efの観察画像に描出されるスプリット指標像の個数に応じてフォーカシングモードを切り替える態様について説明する。第3の動作例においては、第1の動作例のいくつかのステップが適用される。なお、第1の動作例のいくつかのステップ(ステップS3〜ステップS10)の代わりに、対応する第2の動作例のいくつかのステップ(ステップS23〜ステップS30)を適用することが可能である。また、他の実施形態または変形例における対応するいくつかのステップを適用することも可能である。
【0075】
(S41:オートフォーカスを開始する)
第1の動作例のステップS1と同様である。
【0076】
(S42:合焦指標のための光束の照射を開始する)
第1の動作例のステップS2と同様である。
【0077】
(S43:スプリット指標像を検出する)
合焦制御部140(またはデータ処理部200)は、眼底Efの観察画像とともに得られるスプリット指標像を検出する。
【0078】
(S44:2つ検出?)
ステップS43においてスプリット指標像が2つ検出された場合(S44:YES)、合焦制御部140は、対応情報を参照することにより、2つのスプリット指標像の位置に基づいて合焦レンズ31の移動先(移動量)を求める(S7)。そして、処理はステップS8に移行する。
【0079】
(S45:1つ検出?)
ステップS43においてスプリット指標像が1つ検出された場合(S45:YES)、ステップS46に移行する。
【0080】
(S46:合焦レンズの移動先を求める)
スプリット指標像が1つ検出された場合(S45:YES)、合焦制御部140は、このスプリット指標像の位置から合焦レンズ31の移動先を求める。この処理は、たとえば次のようにして実行される。まず、合焦制御部140は、検出された一方のスプリット指標像の位置を記憶する。次に、合焦制御部140は、ユニット制御部130に指示を送る。ユニット制御部130は、この指示を受けてユニット駆動部80を制御することにより、光学ユニット70を移動させる。このときの移動量や移動方向は、デフォルトとして設定されてもよいし、検出された一方のスプリット指標像の位置から導かれてもよい。或いは、眼底像をリアルタイムで解析してスプリット指標像の描出状態を監視しつつ光学ユニット70を移動させるようにしてもよい。合焦制御部140は、このようにして眼底像に描出された他方のスプリット指標像の位置を取得する。そして、合焦制御部140は、双方のスプリット指標像の位置(および、他方のスプリット指標像の位置が取得されたときの光学ユニット70の移動量・移動方向)に基づいて、合焦レンズの移動先(ディオプタの値)を求める。ここで、レンズに起因するフォーカス位置のずれを2次式を用いて補正することにより上記の移動先を補正する公知の処理を実行することができる。
【0081】
(S47:合焦レンズを移動する)
合焦制御部140は、合焦駆動部90を制御して、ステップS46において求められた移動先に合焦レンズ31を移動する。合焦レンズ31が移動された後、第1の動作例のステップS3〜ステップS8が実行される。
【0082】
(S48:n≦5?)
ステップS45においてスプリット指標像が1つも検出されなかった場合(S45:NO)、ステップS48に移行する。ステップS48において、合焦制御部140は、スプリット指標像が1つも検出されなかった回数nをカウントする。この回数nが既定回数(たとえば5回)以下である場合(S48:YES)、ステップS43に戻る。
【0083】
一方、回数nが既定回数を超える場合(S48:NO)、第1の動作例のステップS3〜ステップS8が実行される。
【0084】
(S8:ディオプタのずれ量≦閾値?)
合焦制御部140は、ステップS7で求められた合焦レンズ31の移動先に対応するディオプタのずれ量(フォーカスのずれ量)が既定の閾値以下であるか判定する。ディオプタのずれ量が閾値以下である場合(S8:YES)、光学系を基準位置に移動する(S11)。そして、処理は次の準備動作に移行する。
【0085】
(S49:スプリット指標像を検出する)
一方、ステップS8においてディオプタのずれ量が閾値を超える場合(S8:NO)、第1の動作例のステップS9およびステップS10が実行される。続いて、合焦制御部140(またはデータ処理部200)は、眼底Efの観察画像とともに得られるスプリット指標像を検出する。
【0086】
(S50:2つ検出?)
ステップS49においてスプリット指標像が2つ検出された場合(S50:YES)、第1の動作例のステップS7が実行され、ステップS8に移行する。
【0087】
一方、ステップS49においてスプリット指標像が2つ検出されなかった場合(S50:NO)、第1の動作例のステップS3〜ステップS8が再度実行される。この反復処理は、ステップS8において「YES」と判定されるまで、或いは既定回数だけ繰り返される。
【0088】
(第4の動作例)
第1〜第3の動作例では、光学系の移動によりスプリット指標像を検出して合焦レンズを移動した後に、光学系を既定の位置(基準位置)に移動している(なお、光学系の移動量が小さい場合などにおいてはこの処理を行わなくてよい場合がある)。これは、撮影画像にフレアが混入することを防止するためである。しかし、被検眼Eは小瞳孔眼であることを考慮すると、眼底Efを照明するための光束(リング照明光)が好適に眼底Efに照射されない可能性がある。第4の動作例では、このようなケースを回避するための処理を説明する。なお、この目的を達成するための他の例が第2の実施形態で説明される。
【0089】
第4の動作例では、スプリット指標の投影状態を監視することにより、光学系を既定の位置に移動する。記憶部212には、光学系を既定の位置に移動するための条件があらかじめ記憶されている。この条件は、たとえば、1つまたは2つのスプリット指標像が検出されること、スプリット指標像が既定の領域内に描出されること、或いは、検出されるスプリット指標像の領域(面積)が最大であること、などである。
【0090】
合焦制御部140(またはデータ処理部200)は、眼底Efの観察画像を解析することによりスプリット指標像の検出を行う。この処理は、光学系を静止させた状態で実行されるか、或いは、光学系を移動させつつ実行される。なお、時間の経過とともに被検眼Eの瞳孔が次第に拡大することがある。
【0091】
光学系を静止させた状態でスプリット指標像の検出を行う場合、合焦制御部140は、瞳孔の拡大に伴って、検出されるスプリット指標像が既定の条件を満足したことに対応し、光学系を既定の位置に移動する。
【0092】
一方、光学系を移動させつつスプリット指標像の検出を行う場合、合焦制御部140は、瞳孔の拡大および/または光学系の移動に伴って、検出されるスプリット指標像が既定の条件を満足したことに対応し、光学系を既定の位置に移動する。この場合における既定の位置は、前段のアライメントにより決定された基準位置でもよいし、スプリット指標像が既定の条件を満足したときの光学系の位置でもよい。
【0093】
[作用・効果]
実施形態に係る眼科装置の作用および効果について説明する。
【0094】
実施形態に係る眼科装置は、合焦指標投影部(フォーカス光学系60)と、眼底撮影部(照明光学系10および撮影光学系30)と、駆動部(ユニット駆動部80)と、合焦制御部(140(およびデータ処理部200))とを備える。合焦指標投影部は、眼底に一対の合焦指標を投影するための光束を被検眼に照射する。眼底撮影部は、眼底を撮影する。駆動部は、合焦指標投影部と眼底撮影部と合焦レンズ(31)とを含む光学系を移動する。合焦制御部は、駆動部が光学系を移動することによって眼底撮影部により取得された合焦指標の投影像(スプリット指標像)に基づいて合焦レンズを移動する。
【0095】
このような眼科装置によれば、合焦指標の投影像が検出されない場合であっても、光学系を移動して投影像を検出し、検出された投影像に基づいてオートフォーカスを実行することが可能である。したがって、小瞳孔眼に対するオートフォーカスの改善を図ることが可能である。
【0096】
実施形態において、被検眼にアライメント指標を投影するためのアライメント指標投影部(アライメント光学系50)が設けられていてよい。この場合、駆動部は、アライメント指標を用いて決定された光学系の基準位置から既定の方向に既定の距離だけ光学系を移動することができる。さらに、合焦制御部は、駆動部により光学系が移動された後に眼底撮影部によって取得された合焦指標の投影像に基づいて合焦レンズを移動することができる。
【0097】
この構成によれば、アライメントにより決定された好適な位置を基準として光学系を移動することができるので、合焦指標の投影像を好適に(円滑に、迅速に、容易に)検出することが可能である。
【0098】
実施形態において、駆動部は、基準位置から第1方向に第1距離だけ離れた第1位置に光学系を移動した後、基準位置から第2方向に第2距離だけ離れた第2位置に光学系を移動することができる。さらに、合焦制御部は、光学系が第1位置に配置されているときに眼底撮影部により取得された合焦指標の投影像(第1の投影像)と、光学系が第2位置に配置されているときに眼底撮影部により取得された合焦指標の投影像(第2の投影像)とに基づいて、合焦レンズを移動することができる。
【0099】
特に、第2方向は基準位置に対して第1方向の反対方向であり、かつ、第2距離は第1距離と等しくてよい。すなわち、基準位置に対して対称な2つの位置に光学系が配置されているときに合焦指標の投影像をそれぞれ検出するように構成されていてよい。
【0100】
このような構成によれば、光学系が異なる位置に配置されているときに取得された2つの投影像に基づいてオートフォーカスを実行することが可能である。すなわち、オートフォーカスのために検出されるべき2つの投影像を順次に取得し、それらに基づいてオートフォーカスを実行することが可能である。したがって、オートフォーカスの精度や確度を向上させることができる。
【0101】
実施形態において、眼底撮影部は、駆動部による光学系の移動と並行して、合焦指標投影部からの光束が照射されている状態の被検眼の眼底の動画撮影を行うことができる。さらに、合焦制御部は、眼底撮影部により取得される動画像に描出された合焦指標の投影像に基づいて合焦レンズを移動することが可能である。
【0102】
この構成によれば、光学系が既定の位置に配置された状態で合焦指標の投影像を検出する上記の構成と異なり、光学系の移動に応じて検出された投影像を利用してオートフォーカスを実行することが可能である。換言すると、この構成によれば、光学系を移動しつつ合焦指標の投影像を探索することが可能である。したがって、投影像を検出できる可能性、つまりオートフォーカスの成功可能性の向上を図ることができる。
【0103】
実施形態において、合焦制御部は、動画像に描出された合焦指標の第1投影像と第2投影像とに基づいて合焦レンズを移動することが可能である。ここで、光学系が初期位置から第1方向に位置しているときに第1投影像を取得し、かつ、光学系が初期位置から第2方向に位置しているときに第2投影像を取得することができる。この初期位置は、アライメント指標を用いて決定された光学系の基準位置であってよい。また、第2方向は、初期位置に対して第1方向の反対方向であってよい。
【0104】
このような構成によれば、オートフォーカスのために検出されるべき2つの投影像を順次に取得し、それらに基づいてオートフォーカスを実行することが可能である。したがって、オートフォーカスの精度や確度を向上させることができる。
【0105】
実施形態において、合焦制御部は、眼底撮影部により取得された眼底像に一対の合焦指標のいずれの投影像も描出されない場合に、合焦指標の投影像を取得するための光学系の移動を開始させるように構成されていてよい。
【0106】
また、実施形態において、眼底撮影部により取得された眼底像に一対の合焦指標の一方の投影像が描出されている場合、合焦制御部は、当該一方の投影像に基づいて合焦レンズを移動させた後に、合焦指標の投影像を取得するための光学系の移動を開始させるように構成されていてよい。
【0107】
また、実施形態において、眼底撮影部により取得された眼底像に一対の合焦指標の双方の投影像が描出されている場合、合焦制御部は、当該双方の投影像の位置関係に基づいて合焦レンズを移動するように構成されていてよい。
【0108】
このような構成によれば、合焦指標の投影像の検出結果(検出された投影像の個数)に応じてオートフォーカスの態様を適宜に切り替えることが可能である。
【0109】
実施形態において、合焦制御部により合焦レンズが移動された後、駆動部は、光学系を既定の位置に移動することができる。この既定の位置は、アライメントによって決定された基準位置であってよい。
【0110】
この構成によれば、オートフォーカスのための光学系の移動が完了した後に、光学系を既定の位置に自動で移動することができる。それにより、撮影や測定や治療を行う前の準備動作を円滑にかつ容易に実行することができる。また、撮影画像にフレアが混入することや、測定用または治療用の光束が虹彩にケラれることを防止することが可能である。
【0111】
実施形態において、眼底撮影部により取得される合焦指標の投影像が既定の条件を満足した後に、駆動部は、既定の位置への光学系の移動を実行することができる。
【0112】
この構成によれば、投影像が好適に検出されるようになったことに対応して光学系を既定の位置に移動することが可能である。それにより、撮影用、測定用または治療用の光束を眼底に好適に導くことが可能となる。
【0113】
〈第2の実施形態〉
第2の実施形態に係る眼科装置は、眼底の撮影と並行して前眼部の撮影が可能であり、取得された前眼部像に基づいて各種の処理を実行するように構成される。
【0114】
第2の実施形態に係る眼科装置の構成の一例を図8に示す。なお、特に言及しない限り、光学的な構成は第1の実施形態と同様であってよい。
【0115】
眼科装置は、前眼撮影部500を備える。前眼撮影部500は、被検眼Eの前眼部Eaを撮影する。特に、前眼撮影部500は、前眼部Eaの動画撮影が可能である。前眼撮影部500は、たとえば、光学ユニット70の筐体の前面(被検眼E側の面)に設けられた、少なくとも1つのカメラ(ビデオカメラ)を含む。2つ以上のカメラが設けられている場合、前眼部Eaのステレオ撮影が可能である。すなわち、2以上のカメラで実質的に同時に取得された2以上の画像に基づいて、被検眼Eに対する光学系の3次元的な位置を求めることができ、さらに、アライメントを実行することが可能である。このような構成は、たとえば、本出願人による特開2013−248376号公報に開示されている。
【0116】
データ処理部200にはタイミング信号出力部210が設けられている。タイミング信号出力部210は、眼底Efにおける合焦指標の投影像を取得するためのタイミング信号を出力する。より具体的には、タイミング信号出力部210は、まず、前眼撮影部500を用いて前眼部Eaを動画撮影することにより取得された動画像(前眼部投影像)を解析することにより、フォーカス光学系60からの光束の投影像の描出状態を判定する。フォーカス光学系60からの光束の全てが瞳孔を通過して眼底Efに投影される場合、前眼部投影像に投影像は描出されない。これに対し、フォーカス光学系60からの光束の少なくとも一部が瞳孔を通過しない場合、前眼部投影像に投影像が描出される。なお、オートフォーカスの前にアライメントを行うのが一般的であるので、光束の少なくとも一部が瞳孔を通過しないにもかかわらず投影像が検出されないケースは除外されてよい。
【0117】
タイミング信号出力部210が実行する判定処理は、たとえば、投影像が描出されているか否か判定する処理、一方または双方の投影像が描出されているか否か判定する処理、投影像の描出領域の大きさを判定する処理、投影像の描出領域を既定の閾値と比較する処理などを含む。
【0118】
さらに、タイミング信号出力部210は、前眼部動画像における投影像の描出状態の判定結果に基づいて、眼底Efにおける合焦指標の投影像を取得するためのタイミング信号を出力する。たとえば、タイミング信号出力部210は、投影像が描出されない場合や、一方の投影像のみが描出されている場合や、投影像の描出領域が既定の閾値よりも小さい場合などに、タイミング信号を出力する。すなわち、タイミング信号出力部210は、フォーカス光学系60からの光束が虹彩によって不適当に遮られることなく、眼底Efに合焦指標が好適に投影されていることを検出して、タイミング信号を出力する。
【0119】
タイミング信号出力部210から出力されたタイミング信号は、制御部100に入力される。合焦制御部140(またはデータ処理部200)は、タイミング信号の入力を受けて、照明光学系10および撮影光学系30により取得された眼底Efの画像に描出されている合焦指標の投影像を検出する。さらに、合焦制御部140は、検出された投影像に基づき合焦駆動部90を制御することにより合焦レンズ31を移動させる。ここで合焦制御部140(およびデータ処理部200)が実行する処理は、その処理タイミングを除き、第1の実施形態と同様である。
【0120】
このような第2の実施形態によれば、眼底Efに合焦指標が好適に投影されているタイミングで合焦指標の投影像を検出し、それに基づくオートフォーカスを実行することが可能である。したがって、オートフォーカスの成功率の向上を図ることが可能である。
【0121】
第2の実施形態の動作例を説明する。眼科装置は、被検眼Eの瞳孔のサイズを監視する機能(監視部)を有する。瞳孔サイズは、たとえば、瞳孔の最大径、瞳孔の平均径、既定方向における瞳孔の径、瞳孔の周囲長、瞳孔に相当する画像領域の面積などであってよい。
【0122】
瞳孔サイズ監視機能は、たとえば、前眼撮影部500とデータ処理部200により実現される。前眼撮影部500は、被検眼Eの前眼部動画像を取得する。データ処理部200は、前眼部動画像を解析して瞳孔領域を特定し、そのサイズを表す値を算出する。さらに、データ処理部200は、算出された値を既定の閾値と比較し、算出された値が既定の閾値以上になったときに、制御部100に信号を送る。
【0123】
ユニット制御部130は、データ処理部200からの信号の入力を受けて、光学ユニット70を既定の位置に移動するようにユニット駆動部80を制御する。この既定の位置は、前段のアライメントにより決定された基準位置であってよい。なお、この動作例に係る処理は、第1の実施形態のステップS9やステップS29において実行される。
【0124】
このような構成によれば、オートフォーカスのための光学系の移動が完了した後に、光学系を既定の位置に自動で移動することができる。それにより、撮影や測定や治療を行う前の準備動作を円滑にかつ容易に実行することができる。また、撮影画像にフレアが混入することや、測定用または治療用の光束が虹彩にケラれることを防止することが可能である。さらに、被検眼Eの瞳孔が拡大したことに対応して、すなわち、眼底Efに投影像が好適に検出されるようになったことに対応して、光学系を既定の位置に移動することが可能である。それにより、撮影用、測定用または治療用の光束を眼底Efに好適に導くことが可能となる。
【0125】
第2の実施形態の他の動作例を説明する。眼科装置は、被検眼の瞳孔のサイズを測定する機能(測定部)を有する。瞳孔サイズは、たとえば、瞳孔の最大径、瞳孔の平均径、既定方向における瞳孔の径、瞳孔の周囲長、瞳孔に相当する画像領域の面積などであってよい。
【0126】
瞳孔サイズ測定機能は、たとえば、上記の瞳孔サイズ監視機能と同様に、前眼撮影部500とデータ処理部200により実現される。データ処理部200は、取得された瞳孔サイズの値が既定の閾値以下であるか判定し、瞳孔サイズの値が閾値以下であると判定されたことに対応して制御部100に信号を送る。
【0127】
合焦制御部140は、データ処理部200からの信号の入力を受けて、眼底Efにおける合焦指標の投影像を取得するための光学ユニット70の移動(ステップS3、ステップS23)を開始させる。
【0128】
このような構成によれば、被検眼Eの瞳孔が拡大したことに対応して、すなわち、眼底Efに合焦指標が好適に投影されるようになったことに対応して、合焦指標の投影像を取得するための光学ユニット70の移動を開始することができる。それにより、合焦指標の検出の成功率の向上、ひいては、オートフォーカスの成功率の向上を図ることが可能である。
【0129】
この発明に係る眼科装置は、以上に説明したものには限定されない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内において任意の変形(省略、変更、置換等)を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0130】
1 眼科装置
10 照明光学系
30 撮影光学系
50 アライメント光学系
60 フォーカス光学系
70 光学ユニット
80 ユニット駆動部
90 合焦駆動部
100 制御部
110 主制御部
120 記憶部
130 ユニット制御部
140 合焦制御部
200 データ処理部
210 タイミング信号出力部
300 表示部
400 操作部
500 前眼撮影部
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8