(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
中心に設けられる中空の案内管と,上記案内管の中空に連通する軸孔が中央にあけられており,上記案内管の両端部に設けられる一対のフランジと,上記一対のフランジの間に挟まれ,上記案内管の外側周囲に設けられる巻胴とを備え,
上記一対のフランジのうちの一方のフランジは上記案内管の一端部に着脱自在であり,他方のフランジは上記案内管の他端部に固定されており,
上記巻胴が,上記一対のフランジを結ぶ方向にのびる複数のスリットによって分離された複数の分割胴板を含み,上記複数の分割胴板のそれぞれの内面と上記案内管の外面との間に空間が形成されており,
上記複数の分割胴板のそれぞれの内面と上記案内管の外面との間に,上記分割胴板を内向きに付勢する引張りコイルばねを含む付勢機構が設けられており,
上記複数の分割胴板のそれぞれの両端部が,上記一対のフランジのそれぞれの内面に設けられる支持突起によって内側から支持されており,
上記付勢機構が,上記分割胴板と上記案内管とをつなぐ連結プレートを含み,
上記着脱自在のフランジが案内管の一端部から取り外されたときに,上記連結プレートが取り外された着脱自在のフランジの向きに倒れるように,上記引張りコイルばねが設けられている,
ボビン。
半径方向に拡大および縮小が可能な胴部と,上記胴部の一端部に着脱自在に設けられる着脱フランジと,上記胴部の他端部に固定される固定フランジとを備えるボビンを用意し,拡大状態の胴部に線状体を巻回して上記線状体を筒状にまとめ,上記着脱フランジを上記胴部の一端部から取り外し,上記胴部を半径方向に縮小し,上記縮小状態の胴部から上記胴部に巻回された筒状の線状体を,筒状の形態を保ったまま上記胴部から取り外し,取り外した筒状の線状体を輸送する,線状体のボビンレス輸送方法であって,
上記胴部が,中心に設けられる案内管と,上記着脱フランジと上記固定フランジとを結ぶ方向にのびる複数のスリットによって分離された複数の分割胴板を含み,上記複数の分割胴板のそれぞれの内面と上記案内管の外面との間に空間を形成し,
上記複数の分割胴板のそれぞれの内面と上記案内管の外面との間に,上記分割胴板を内向きに付勢する引張りコイルばねを含む付勢機構を設け,
上記付勢機構が,上記分割胴板と上記案内管とをつなぐ連結プレートを含み,
上記着脱フランジを上記胴部の一端部から取り外したときに,上記連結プレートが取り外した着脱フランジの向きに倒れるように,上記引張りコイルばねを設け,
着脱フランジの向きに倒れる連結プレートにしたがって上記複数の分割胴板を斜め内向きに移動させることで上記胴部を半径方向に縮小する,
線状体のボビンレス輸送方法。
【発明の開示】
【0007】
この発明は,線状体をボビンからスムーズに取り外すことができるようにすることを目的とする。
【0008】
この発明はまた,紙製の芯部材などを用いることなく,筒状にまとめられた線状体のみを輸送することができるようにすることを目的とする。もちろん,筒状にまとめられた線状体は,外傷からの保護のためにビニール等によって包装してもよいし,筒状の状態を保持するために結束具によって結束してもよい。線状体のみの輸送は,このようなビニールや結束具等の使用を排除するものではない。
【0009】
この発明によるボビンは,中心に設けられる中空の案内管と,上記案内管の中空に連通する軸孔が中央にあけられており,上記案内管の両端部に設けられる一対のフランジと,上記一対のフランジの間に挟まれ,上記案内管の外側周囲に設けられる巻胴とを備えるもので,上記一対のフランジのうちの一方のフランジは上記案内管の一端部に着脱自在であり,他方のフランジは上記案内管の他端部に固定されており,上記巻胴が,上記一対のフランジを結ぶ方向にのびる複数のスリットによって分離された複数の分割胴板を含み,上記複数の分割胴板のそれぞれの内面と上記案内管の外面との間に空間が形成されており,上記複数の分割胴板のそれぞれの内面と上記案内管の外面との間に,上記分割胴板を内向きに付勢する付勢機構が設けられており,上記複数の分割胴板のそれぞれの両端部が,上記一対のフランジのそれぞれの内面に設けられる支持突起によって内側から支持されていることを特徴とする。
【0010】
この明細書において内向きまたは内方とはボビンの中心に向かう向きを意味し,外向きまたは外方とはボビンの中心から離れる向きを意味する。同様にして,内面または内側の用語はボビンの中心に近い面または側を意味する。外面または外側の用語は,内面,内側と反対側の面または側を意味する。
【0011】
この発明によるボビンは,その中心から外方に向けて,中空の案内管および巻胴がこの順番に並んでいる。中空の案内管の外面と巻胴の内面との間には空間(隙間)が形成されており,この空間に付勢機構が設けられている。巻胴の外面に,長尺の線状体,たとえば,ワイヤロープ,ワイヤ,スチールコードなどが巻き付けられる。案内管および巻胴の両端部に一対のフランジが設けられており,線状体は一対のフランジの間において,巻胴の外面に幾重にもわたって巻回される。線状体が幾重にも巻胴の外面に巻回されることで,線状体は筒状の形態にまとめられていく。巻回しの回数は線状体の直径に依存するが,筒状の形態にまとめられた線状体の外面の位置がフランジの高さ(巻胴の外面からフランジの端部までの距離)を超えることがないのは言うまでもない。
【0012】
巻胴は,一対のフランジを結ぶ方向にのびる複数のスリットによって分離された複数の分割胴板を含む。複数の分割胴板は好ましくは同一の寸法および形状を持つ。たとえば,6つの分割胴板によって巻胴が構成され,この場合には隣り合う分割胴板の間に合計6つのスリットが形成される。付勢機構は複数の分割胴板のそれぞれと案内管の間に設けられる。巻胴が6つの分割胴板によって構成される場合には,6つの付勢機構が設けられる。付勢機構によって分割胴板のそれぞれが内向きに付勢される。
【0013】
一対のフランジは,その一方が案内管の一端部に着脱自在に設けられ,他方は案内管の他端部に固定されている。また一対のフランジのそれぞれの内面には,複数の分割胴板のそれぞれの両端部を内側から支持する支持突起が設けられている。着脱自在のフランジが案内管の一端部に装着されているとき,分割胴板の両端部は一対のフランジのそれぞれの内面に設けられている支持突起によって内側から支持されるので,上記付勢機構によって分割胴板が内向きに付勢されても分割胴板が内向きに移動することはない。
【0014】
着脱自在のフランジが案内管の一端部から取り外されると,分割胴板の一端部の支えが無くなる。分割胴板は付勢機構によって内向きに付勢されているので,支えを無くした分割胴板の一端部は内向きに移動する。複数の分割胴板から構成される巻胴の外径が小さくなるので,巻胴に巻回されて筒状にまとめられている線状体を,巻胴からスムーズに取り外すことができ,巻胴から取り外された線状体のみを輸送することができる。無駄のないボビンレス輸送が実現される。
【0015】
好ましい実施態様では,分割胴板の両端部を内側から支える支持突起の支持面が斜め内向きに傾斜している。分割胴板の全体を,上記支持突起の内面に設けられた支持突起の傾斜した支持面上にほぼ沿わせて,斜め内向きに,すなわちボビンの中心に向かう方向であってかつ取り外された着脱フランジに向かう方向に,移動させることができる。また,一旦取り外した着脱自在のフランジを再び取り付けるときには,一対のフランジの内面に設けられた支持突起の傾斜した支持面を利用して,斜め内向きに移動した分割胴板を,逆方向に,すなわち斜め外向きに移動させて元の位置に戻すことができる。
【0016】
分割胴板が斜め内向きに移動したときに,分割胴板の一端部(固定フランジの支持突起によって支えられている一端部)が,固定フランジの内面に設けられている支持突起の傾斜した支持面上から完全に滑り落ちてしまわないようにするのが好ましい。一旦取り外した着脱自在のフランジを再び取り付けるときに,分割胴板を斜め外向きに移動させて元の位置に戻しやすくすることができる。
【0017】
上記付勢機構は,好ましくは引張りコイルばねを含む。引張りコイルばねの圧縮力によって分割胴板を内向きに付勢することができる。
【0018】
好ましくは,上記付勢機構が,上記分割胴板と上記案内管とに両端部がそれぞれ取り付けられた引張りコイルばねを含み,上記引張りコイルばねの圧縮力によって,上記分割胴板が,内向きかつ上記着脱自在のフランジの向きに,すなわち斜め内向きに移動する。分割胴板の全体を,上記支持突起の傾斜した支持面上にほぼ沿わせて,斜め内向きに移動しやすくすることができる。
【0019】
一実施態様では,上記付勢機構が,上記分割胴板と上記案内管とをつなぐ連結プレートを含み,上記着脱自在のフランジが案内管の一端部から取り外されたときに,上記連結プレートが,取り外された着脱自在のフランジの向きに倒れるように,上記引張りコイルばねが設けられている。分割胴板の全体を,斜め内向きに精度よく移動させることができる。
【0020】
一実施態様では,上記案内管の外面に,上記複数の分割胴板のそれぞれの内向きの移動を途中でとめる複数のストッパ具が設けられている。分割胴板はストッパ具に当接するまで内向きに移動する。分割胴板の内向きの移動距離を,ストッパ具によって制御または抑制することができる。
【0021】
好ましくは,上記案内管の外面に外方に突出する複数の突出具が固定されており,上記ストッパ具は,上記突出具の外面(分割胴板を向いている面)に,その突き出し量を調整可能に固定されている。ストッパ具の突き出し量を調整することで,分割胴板の内向きの移動距離を調整することができる。
【0022】
この発明による線状体のボビンレス輸送方法は,半径方向に拡大および縮小が可能な胴部と,上記胴部の一端部に着脱自在に設けられる着脱フランジと,上記胴部の他端部に固定される固定フランジとを備えるボビンを用意し,拡大状態の胴部に線状体を巻回して上記線状体を筒状にまとめ,上記着脱フランジを上記胴部の一端部から取り外し,上記胴部を半径方向に縮小し,上記縮小状態の胴部から上記胴部に巻回された筒状の線状体を,筒状の形態を保ったまま上記胴部から取り外し,取り外した筒状の線状体を輸送することを特徴とする。胴部が半径方向に縮小することで胴部の外径が縮む(小さくなる)ので,胴部に巻回された筒状の線状体の内面と胴部の外面との間に隙間があく。筒状の線状体をスムーズに胴部から取り外すことができる。線状体のみを輸送することができるので,無駄のないボビンレス輸送を実現することができる。
【実施例】
【0024】
図1はボビンの側面図である。
図2は
図1のII−II線に沿うボビンの断面図である。
図3は
図1のIII−III線に沿うボビンの断面図である。
図4は
図2のIV−IV線に沿うボビンの断面図である。分かりやすくするために,
図2において,後述するリブ14およびボルト80の図示は省略されている。また,
図3において,後述するリブ14,巻胴40,付勢機構50等の図示は省略されている。
【0025】
ボビン1は,その巻胴40に線状体,たとえばワイヤロープ,ワイヤ,スチールコードなどを巻き付け,長尺の線状体を円筒状にまとめるために用いられる。
【0026】
ボビン1は,中空の案内管(内筒)30と,巻胴40と,案内管30および巻胴40の左右両側に設けられるフランジ10,20と,付勢機構50とを備える。案内管30,巻胴40,およびフランジ10,20は炭素綱などの硬い鉄鋼材料によって作られている。
図2および
図4を参照して,案内管30がボビン1の中心に位置しており,その外側周囲に巻胴40が設けられている。
図4を参照して,巻胴40は6つの分割胴板41から構成される。6つの分割胴板41はいずれも同一の形状および寸法を有するもので,弧状の外面および内面を持つ。6つの分割胴板41の外面は同心円上に位置している。6つの分割胴板41の内面も同心円上に位置している。隣り合う分割胴板41の間には,巻胴40の長手方向(2つのフランジ10,20を結ぶ方向)にスリット(隙間)45が形成されている。巻胴40が6つの分割胴板41から構成されている場合には,巻胴40には6つのスリット45が形成されることになる。巻胴40を構成する分割胴板41の数は6つに限られず,これよりも少なくても多くてもよいが,4つから8つ程度とするのが現実的である。巻胴40(6つの分割胴板41)の外面に,長尺の線状体が幾重にもわたって巻回される。
【0027】
図2,
図4を参照して,案内管30と巻胴40(6つの分割胴板41のそれぞれ)との間には空間が形成されており,この空間に付勢機構50が設けられている。
【0028】
詳細は後述するが,巻胴40とその左右両側のフランジ10,20とは固定されていず,巻胴40は付勢機構50によって半径方向に縮小可能に構成されている。半径方向に一旦縮小された巻胴40は,その後,半径方向に拡大して元に戻すことができる。巻胴40が半径方向に縮小することで,巻胴40に巻回されて円筒状の形態とされている線状体の内周面と,巻胴40の外周面との間に隙間が形成される。これにより線状体を,その円筒状の形態を保ったまま巻胴40からスムーズに取り外すことができる。
【0029】
また詳細は後述するが,ボビン1を構成する2つのフランジ10,20は同じ構造を持つが,一方のフランジ10は案内管30に着脱自在であり,他方のフランジ20は案内管30と一体である。
【0030】
図1,
図2,
図3および
図4を参照して,フランジ10,20は円板状であり,その中心に断面円形の軸孔16があけられている。軸孔16の外側周囲には,補強のための環状の肉厚部11がフランジ10,20の外面に設けられている。フランジ10,20の軸孔16には円筒状の軸受け部材18が嵌め込まれて固定(たとえば溶接)されている。フランジ10,20の軸孔16に嵌め込まれた軸受け部材18に,案内管30の両端部がそれぞれ嵌め込まれ,案内管30の両端部の外周面と軸受け部材18の内周面とが嵌合している。左右の軸受け部材18の内周面と案内管30の内周面は一致する。案内管30の中空と一対のフランジ10,20の軸孔16とは連通している。
【0031】
一方の軸受け部材18から他方の軸受け部材18にかけて,案内管30を介して円柱状の軸(図示略)が通される。左右の軸受け部材18と案内管30とに通される軸が回転軸であれば,回転軸の回転運動に伴って,案内管30を中心にしてボビン1を回転駆動することができる。
【0032】
2つのフランジ10,20のうち,一方のフランジ20の軸孔16に嵌め込まれた軸受け部材18は,案内管30にたとえば溶接によって固定されている。他方,フランジ10の軸孔16に嵌め込まれた軸受け部材18は案内管30に固定されていず,フランジ10は案内管30から着脱自在である。
【0033】
フランジ10,20の外周縁部は外側に湾曲して丸みを帯びている(湾曲部を符号12で示す)。また,フランジ10,20の外面には,互いに等角度間隔をあけて放射状にのびる12本の補強リブ14が固定されている。補強リブ14はフランジ10,20の外面において外方に突出している。隣り合う2つのリブ14の間には,概略扇形のフランジ補強板13と,長孔17とが交互に設けられている。すなわち,フランジ10,20の外面には6つのフランジ補強板13が互いに等角度間隔に設けられ,かつ6つの長孔17が互いに等角度間隔にあけられている。
【0034】
フランジ10,20にあけられた長孔17と,巻胴40を構成する6つの分割胴板41の間に形成される6つのスリット45とは連続しており(同じ位置にある),また,長孔17の幅とスリットの幅は等しい。フランジ10にあけられた長孔17の末端部分(フランジ10の中心に近い部分)は,スリット45を通じて,反対側のフランジ20にあけられた長孔17の末端部分(フランジ20の中心に近い部分)にまで連通している。フランジ10にあけられた長孔17の末端部分から結束バンド(図示略)を入れ,スリット45を通してフランジ20にあけられた長孔17の末端部分からその結束バンドを外に出すことができる。巻胴40の外周面上に巻回されることで円筒状にまとめられた線状体を,結束バンドによって,円筒状の線状体の周方向と直交する方向に結束することができる。フランジ10,20には6つの長孔17が等角度間隔にあけられ,巻胴40にはこれに対応して6つのスリット45が等角度間隔に形成されているので,円筒状にまとめられた線状体を,6本の結束バンドによって等角度間隔に結束することができる。
【0035】
図2を参照して,フランジ10,20のそれぞれの内面には6つの支持突起15が固定されている。
図2ではフランジ10,20のそれぞれの内面に固定されている6つのうちの2つの支持突起15のみが見えている。支持突起15は,巻胴40を構成する6つの分割胴板41(
図4参照)のそれぞれに対応して,フランジ10,20の内面に等角度間隔をあけて取り付けられている。
【0036】
支持突起15は,斜め内向きの傾斜を持つテーパー面(支持面)15aを備える。6つの分割胴板41のそれぞれの両端部にもテーパー面40aが形成されており,支持突起15のテーパー面15aと分割胴板41の両端部のテーパー面40aとは全面において互いに接している。フランジ10,20のそれぞれの内面に固定された支持突起15によって,巻胴40を構成する6つの分割胴板41のそれぞれが内側から支えられている。
【0037】
図1,
図3,
図4を参照して,2つのフランジ10,20にはさらに,6つのボルト通し孔19が同心円上に等角度間隔にあけられており,この6つのボルト通し孔19のそれぞれに長尺のボルト80が通されている。フランジ10,20にあけられている6つのボルト通し孔19は,いずれもフランジ10,20にあけられた6つの長孔17の長手方向に沿う方向であって,長孔17よりも内側(中心がわ)に位置している。
【0038】
図4を参照して,6本のボルト80は,いずれも案内管30と巻胴40(6つの分割胴板41)の間の空間に位置する。また,6本のボルト80は,いずれも隣り合う分割胴板41の間のスリット45に対応する位置に設けられる。巻胴40(6つの分割胴板41)が半径方向に縮小されるとき,すなわち巻胴40がボビン1の中心に近づく向きに移動するときに,その動きがボルト80によって邪魔されることはない。
【0039】
図3を参照して,ボルト80は,フランジ20に形成されたボルト通し孔19に通され,反対側のフランジ10のボルト通し孔19を通って外に出る。フランジ10の外に出たボルト80の先端部分の外周面にはねじ溝が形成されており,そこに座金82を介してナット83が取り付けられる。フランジ20の外側にあるボルト80の頭部81は,フランジ20の外面に溶接されて固定される。
【0040】
上述したように,フランジ20の軸孔16に嵌め込まれて固定された軸受け部材18は,案内管30に固定されており,したがってフランジ20と案内管30とは一体化されている。他方,フランジ10の軸孔16に嵌め込まれて固定された軸受け部材18は案内管30に固定されていない。ボルト80の先端のナット83および座金82を取り外し,その後フランジ10をフランジ20と離れる向きに移動させることで,フランジ10は取り外すことができる。このようにフランジ10は着脱自在であるから,以下,フランジ10を「着脱フランジ10」と呼ぶ。他方,案内管30と一体とされているフランジ20を「固定フランジ20」と呼ぶ。
図5に,着脱フランジ10が取り外されている様子を示す。
【0041】
上述したように,巻胴40は,付勢機構50によって半径方向に縮小可能である。以下,付勢機構50を詳細に説明する。
【0042】
図2,
図4を参照して,巻胴40を構成する6つの分割胴板41のそれぞれと円筒状の案内管30との間に,付勢機構50が設けられている。
図2には,6つの付勢機構50のうちの2つが示されている。
【0043】
ボビン1の中心に位置する円筒状の案内管30の外面に,6つの外方突出板31が,等角度間隔に外方に突出して固定(たとえば溶接)されている。6つの外方突出板31は,いずれもその横断面がほぼ矩形である。外方突出板31は,案内管30の長手方向のほぼ中央に固定され,案内管30の長手方向と同じ方向に長手方向を有し,案内管30の長さの1/3から2/3程度の長さを持つ。
【0044】
外方突出板31には,その両側面を結ぶ方向にのびる2つのピン通し孔が間隔をあけてあけられており,2つのピン通し孔のそれぞれに連結ピン62,64がきつく通されて固定されている。
【0045】
案内管30の外側に位置する6つの分割胴板41のそれぞれの内面に,内方突出板42が固定(たとえば溶接)されている。内方突出板42も,その横断面はほぼ矩形であり,断面弧状の分割胴板41の内面のほぼ中央から内方に突出している。内方突出板42は分割胴板41の長手方向と同じ方向に長手方向を持ち,分割胴板41の両側のテーパー面40aが形成されている両端部を除いて分割胴板41のほぼ全長にわたる長さを持つ。内方突出板42によって分割胴板41の補強も行われる。
【0046】
図4を参照して,6つの分割胴板41のそれぞれの内面から内方に突出する6つの内方突出板42と,案内管30の外面から外方に突出する6つの外方突出板31とは,ボビン1の中心から放射状にのびる直線上に並んで位置しており,内方突出板42と外方突出板31との間には隙間が形成されている。
【0047】
内方突出板42にも,その両側面を結ぶ方向にのびる2つのピン通し孔が間隔をあけてあけられており,2つのピン通し孔のそれぞれに連結ピン61,63がきつく通されて固定されている。内方突出板42にあけられている2つのピン通し孔の間の間隔(連結ピン61と連結ピン63の間の距離)と,外方突出板31にあけられている2つのピン通し孔の間の間隔(連結ピン62と連結ピン64の間の距離)はほぼ等しい。また,内方突出板42に形成されている2つのピン通し孔の方が,外方突出板31に形成されている2つのピン通し孔よりもわずかに着脱フランジ10に近い位置に形成されている。
【0048】
連結ピン61〜64の直径よりもわずかに大きな直径の2つのピン通し孔が間隔をあけてあけられた連結プレート51,52が,内方突出板42および外方突出板31の一側面に取り付けられている。連結プレート51は,着脱フランジ10に近い2つの連結ピン61,62を連結するもので,連結プレート51の一端部のピン通し孔に内方突出板42の一側面から側方にわずかに飛び出す連結ピン61が通され,連結プレート51の他端部のピン通し孔に外方突出板31の一側面から側方にわずかに飛び出す連結ピン62が通されている。同様にして,連結プレート52は,固定フランジ20に近い2つの連結ピン63,64を連結するもので,連結プレート52の一端部のピン通し孔に連結ピン63が通され,他端部のピン通し孔に連結ピン64が通されている。連結プレート51は,連結ピン61が通された一端部が,連結ピン62が通された他端部よりも着脱フランジ10の近くに位置するように斜めに傾いて設けられる。連結プレート52についても,連結ピン63が通された一端部が,連結ピン64が通された他端部よりも着脱フランジ10の近くに位置するように斜めに傾いて設けられる。
【0049】
さらに,外方突出板31の一側面から側方に飛び出す着脱フランジ10に近い連結ピン62には,1つのピン通し孔があけられた連結プレート53が取り付けられている。さらに内方突出板42の一側面から側方に飛び出す固定フランジ20に近い連結ピン63にも,1つのピン通し孔があけられた連結プレート54が取り付けられている。連結プレート53,54には,引張りコイルばね70の両端がそれぞれ取り付けられている。
【0050】
連結プレート51,52,53,54および引張りコイルばね70は,外方突出板31および内方突出板42の他側面がわにも同様に設けられている。
【0051】
引張りコイルばね70によって連結ピン62と連結ピン63とを近づける向きの力が生じる。しかしながら,上述したように,分割胴板41は,その両側において着脱フランジ10および固定フランジ20の内面に固定された支持突起15によって内側から支えられているので,着脱フランジ10が取り付けられている状態(
図2,
図4)では連結ピン62と連結ピン63が近づくことはない。
【0052】
上述したように,着脱フランジ10は取外すことができる。
図5を参照して,着脱フランジ10を取り外すと,着脱フランジ10の内面に固定された支持突起15による分割胴板41の内側からの支えが無くなるので,連結ピン62と連結ピン63とをつなぐ引張りコイルばね70が圧縮する(縮む)。引張りコイルばね70が圧縮することで,連結プレート51,52が連結ピン62,64を軸にして倒れ(傾きが大きくなる),分割胴板41が,固定フランジ20の内面の支持突起15のテーパー面15aに沿って斜め内向きに移動する。すなわち,
図2と
図5とを比較して,分割胴板41は,半径方向にその外径を縮小する向き(ボビン1の中心に向かう方向,内向き)に移動するとともに,取り外された着脱フランジ10の向きにも移動する。連結プレート51,52は大きく傾き,連結ピン62と連結ピン63が近づく。また,隣り合う分割胴板41の間のスリット45の間隔が狭くなる。引張りコイルばね70は,連結プレート51,52が着脱フランジ10の向きに必ず倒れるように設けられる。
【0053】
外方突出板31の外面(内方突出板42を向いている面)のほぼ中央に,頂部を内方突出板42に向けたストッパねじ71がねじ止めされている。ボビン1の中心に近づく方向に分割胴板41が移動すると,分割胴板41の内面に固定された内方突出板42がストッパねじ70の頂部に接触し,そこで分割胴板41の移動はストップする。ストッパねじ71の高さ(外方突出板31の外面からの突き出し量)を調整することで,分割胴板41の移動距離を調整することができる。
【0054】
たとえば,着脱フランジ10を取り付けているときの巻胴40の直径D
1(
図2参照)と比べて,着脱フランジ10を取り外したときの巻胴40の直径D
2(
図5参照)を15mm程度小さくすることができる。
【0055】
一旦取り外した着脱フランジ10を再び取り付ける場合には,着脱フランジ10の内面を,巻胴40(6つの分割胴板41)の側面に押し付ける。着脱フランジ10の内面に固定された支持突起15のテーパー面15aによって巻胴40のテーパー面40aが押されることで,巻胴40は半径方向に拡大しかつ固定フランジ20の内面に向けて移動し,元の位置に戻る。大きく傾いていた連結プレート51,52の傾きも元に戻る。
【0056】
巻胴40(分割胴板41)のテーパー面40aが固定フランジ20の内面に固定された支持突起15のテーパー面15aから完全に滑り落ちると,着脱フランジ10を再び取り付けるときに,巻胴40のテーパー面40aを,固定フランジ20の内面の支持突起15のテーパー面15a上に載せるのが難しくなることがある。このため,
図5に示すように,巻胴40(分割胴板41)が斜め内向きに移動したときに,テーパー面40aの一部が固定フランジ20の内面の支持突起15のテーパー面15aに未だに載り続ける(接触し続ける)ことになるように,支持突起15(テーパー面15a)の大きさを定めるのが好ましい。
【0057】
このようにして,着脱フランジ10を取り外すと,これに伴って巻胴40の直径を狭めることができる。直径D
1の巻胴40に線状体を巻き付けることで線状体がD
1の内径をもつ円筒状の形態にまとめられ,この線状体が巻胴40に強く接触していても,円筒状の形態を保ったまま,線状体を巻胴40から容易に引き抜くことができる。
【0058】
ボビン1の巻胴40から引き抜かれた線状体は,円筒状の形態を保ったままビニール等が被せられ,トラック等により輸送される。線状体を円筒状にまとめるために用いられたボビン1は輸送されない。ボビンごと搬送するのではなく,線状体のみを輸送するボビンレス輸送が効果的に実現される。
【0059】
輸送先では,円筒状の線状体は,上述と同様のボビン1の巻胴40に取り付けられるか,スタンドの円柱状の軸に取り付けられる。