(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の電池セルが直列接続された電池スタックを複数有する組電池の前記電池スタックの電圧を、キャパシタを用いて検出するフライングキャパシタ方式の電圧検出装置であって、
前記電池スタックの電圧として前記キャパシタの両端の電圧を検出する検出手段と、
前記電池スタックと前記検出手段とを接続する接続ラインから分岐して前記キャパシタに接続され、前記キャパシタの充電時と放電時とで逆向きに電流が流れる単一のラインである分岐ラインと、
前記電池スタックと前記キャパシタとの間に設けられる切替手段と、
前記切替手段を制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、
前記キャパシタを充電する場合に、電圧を検出する前記電池スタック、前記キャパシタ及び前記分岐ラインを含む充電経路を選択する充電経路選択手段と、
前記キャパシタを放電する場合に、複数の前記電池スタックのうち隣接する2つの電池スタックを電気的に接続する接続部材、前記キャパシタ及び前記分岐ラインを含む放電経路を選択する放電経路選択手段と
を備えることを特徴とする電圧検出装置。
第1放電時定数を有し、前記キャパシタからの放電電流を流す第1放電経路と、前記第1放電時定数よりも時定数の小さい第2放電時定数を有し、前記キャパシタからの放電電流を流す第2放電経路とのいずれかの放電経路を選択する選択手段
をさらに備え、
前記選択手段は、
前記キャパシタの電圧検出の完了前は、前記第1放電経路を選択し、前記キャパシタの電圧検出の完了後は、前記第2放電経路に切替え、
前記第2放電経路は、
複数の前記電池スタックのうち隣接する2つの電池スタックを電気的に接続する接続部材、前記キャパシタ及び前記分岐ラインを含む放電経路であること
を特徴とする請求項1に記載の電圧検出装置。
複数の電池セルが直列接続された電池スタックを複数有する組電池の前記電池スタックの電圧を、キャパシタを用いて検出するフライングキャパシタ方式の電圧検出方法であって、
検出手段と前記電池スタックとを接続する接続ラインから分岐して前記キャパシタに接続する単一のラインである分岐ラインに、充電方向の電流を流して前記キャパシタを充電する充電工程と、
前記検出手段によって前記電池スタックの電圧として前記キャパシタの両端の電圧を検出する検出工程と、
前記充電方向と逆向きの放電方向の電流を前記分岐ラインに流して前記キャパシタを放電する放電工程と、
前記電池スタックと前記キャパシタとの間に設けられる切替手段を制御する制御工程と
を含み、
前記制御工程は、
前記キャパシタを充電する場合に、電圧を検出する前記電池スタック、前記キャパシタ及び前記分岐ラインを含む充電経路を選択する充電経路選択工程と、
前記キャパシタを放電する場合に、複数の前記電池スタックのうち隣接する2つの電池スタックを電気的に接続する接続部材、前記キャパシタ及び前記分岐ラインを含む放電経路を選択する放電経路選択工程と
を含むことを特徴とする電圧検出方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する電圧検出装置、電圧検出方法および組電池システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
(第1の実施形態)
<組電池システムの構成>
図1は、第1の実施形態に係る組電池システム100の構成例を示す図である。
図1に示す組電池システム100は、組電池1と、電圧検出装置2とを備える。
【0012】
組電池1は、接続部材L10−m(m=1〜N−1、N:自然数、以下、接続部材L10とも称する)を介して直列に接続される複数の電池スタックB1−n(n=1〜N、N:自然数、以下、電池スタックB1とも称する)を有する。複数の電池スタックB1−nは、直列に接続される複数の電池セルを有する。
図1の例では、直列接続される7個の電池セルを有する2個の電池スタックB1−1、B1−2が接続部材L10を介して直列接続される。
【0013】
電圧検出装置2は、キャパシタCを用いて電池スタックB1の電圧をいわゆるフライングキャパシタ方式で検出する装置であって、フライングキャパシタ部10、検出部20及び制御部30を備える。
【0014】
フライングキャパシタ部10は、キャパシタCと、電池スタックB1との間に設けられる第1切替部11と、キャパシタCと検出部20との間に設けられる第2切替部12とを備える。また、フライングキャパシタ部10は、第1切替部11と第2切替部12とを接続する接続ラインL1を備える。また、フライングキャパシタ部10は、接続ラインL1から分岐してキャパシタCに接続し、キャパシタCの充電時には充電方向に電流が流れ、放電時には充電方向と逆向きの放電方向に電流が流れる分岐ラインL2を備える。
【0015】
さらに、フライングキャパシタ部10は、電池スタックB1とキャパシタCとの間で、第1切替部11と直列に接続される抵抗R11、R12、R21、R22を有し、第2切替部12と検出部20との間に設けられる抵抗R3、R4を備える。なお、
図1に示す抵抗R3およびR4のライン上の位置は一例であり、第2切替部12の後段のライン上であれば、他の位置に設けてもよい。また設ける抵抗の数を変更してもよい。
【0016】
第1切替部11は、一端が電池スタックB1の負極端子に接続され、他端がキャパシタCの一端に接続される複数の第1スイッチS1−1、S1−2(以下、第1スイッチS1とも称する)と、一端が電池スタックB1の正極端子に接続され、他端がキャパシタCの他端に接続される複数の第2スイッチS2−1、S2−2(以下、第2スイッチS2とも称する)とを有する。第1切替部11は、制御部30からの指示に応じて第1スイッチS1及び第2スイッチS2のオン状態及びオフ状態を切り替える。このように、第1切替部11は、電池スタックB1とキャパシタCとの間の接続状態を切り替える第1切替手段として動作する。
【0017】
第2切替部12は、一端がキャパシタCの一端に接続され、他端が検出部20に接続される第3スイッチS3と、一端がキャパシタCの一端に接続され、他端が検出部20に接続される第4スイッチS4とを有する。第2切替部12は、制御部30からの指示に応じて第3、第4スイッチS3、S4のオン状態及びオフ状態を切り替える。このように、第2切替部12は、キャパシタCと検出部20との間の接続状態を切り替える第2切替手段として動作する。なお、上述した第1〜第4スイッチS1〜S4として、例えばリレーを用いてもよい。
【0018】
キャパシタCは、第2切替部12によって検出部20から切り離された状態で、第1切替部11を介して電池スタックB1−1、B1−2のいずれか1つと並列に接続される。これにより、キャパシタCは並列に接続された電池スタックB1によって充電される。また、キャパシタCは、第1切替部11によって電池スタックB1から切り離された状態で、第2切替部12を介して検出部20に接続される。これにより、検出部20は、キャパシタCの両端の電圧を電池スタックB1の電圧として検出する。このように、電圧検出装置2は、キャパシタCを用いたフライングキャパシタ方式によって電池スタックB1の電圧を検出する。なお、差動増幅回路を第2切替部12と検出部20との間に設け、検出部20がその差動増幅回路の出力に基づき、キャパシタCの電圧を検出するようにしてもよい。
【0019】
抵抗R11、R12は、第1スイッチS1と電池スタックB1−1、B1−2との間で、第1スイッチS1と直列に接続される。また、抵抗R21、R22は、第2スイッチS2と電池スタックB1−1、B1−2との間で第2スイッチS2と直列に接続される。抵抗R11、R12、R21、R22は、電池スタックB1からフライングキャパシタ部10へ流れる電流を制限する電流制限抵抗として動作する。なお、
図1では、抵抗R11、R12、R21、R22が電池スタックB1と第1切替部11との間に設けられているが、例えば第1切替部11とキャパシタCとの間に設けてもよい。
【0020】
抵抗R3は、一端が第3スイッチS3に接続し、他端が検出部20に接続するとともにグランドに接地する。抵抗R4は、一端が第4スイッチS4に接続し、他端が検出部20に接続するとともにグランドに接地する。抵抗R3、R4は、キャパシタCから検出部20へ流れる電流を制限する電流制限抵抗として動作するとともに、本実施形態では第2切替部12を介してキャパシタCと接続されることで、キャパシタCの電荷を放電する放電抵抗として動作する。
【0021】
検出部20は、キャパシタCの両端の電圧を電池スタックB1の電圧として検出する。具体的には、検出部20は、A/D変換部21を有し、かかるA/D変換部21を用いてキャパシタCの両端の電圧値をアナログ値からデジタル値に変換し、制御部30に出力する。
【0022】
制御部30は、第1切替部11及び第2切替部12を制御する。制御部30は、充電経路選択部31及び放電経路選択部32を備える。充電経路選択部31は、キャパシタCを充電する場合に、電圧を検出する電池スタックB1、キャパシタC及び分岐ラインL2を含む充電経路P1を選択する。放電経路選択部32は、キャパシタCを放電する場合に、キャパシタCと分岐ラインL2を含む放電経路P2を選択する。充電経路P1及び放電経路P2の詳細については
図2、
図3を用いて説明する。
【0023】
制御部30は、キャパシタCの充電時に充電経路P1が選択され、放電時に放電経路P2が選択されるように、第1切替部11及び第2切替部12を制御する。また制御部30は、キャパシタCの電圧を検出する場合に、キャパシタCと電池スタックB1とが切り離された状態でキャパシタCと検出部20が接続されるように第1切替部11及び第2切替部12を制御する。また、制御部30は、検出部20が検出した電池スタックB1の電圧に基づいて電池スタックB1の充電状態を監視する。
【0024】
<充電経路P1の選択>
続いて、
図2を用いて、制御部30の充電経路選択部31が選択する充電経路P1の詳細について説明する。
図2は、充電経路選択部31が選択する充電経路P1の一例を示す図である。なお、
図2では、電池スタックB1−1の電圧を検出する場合について図示している。
【0025】
まず、充電経路選択部31は、制御部30から電池スタックB1−1の充電経路P1を選択するよう指示を受けると、電池スタックB1−1とキャパシタCとが並列に接続される充電経路P1を選択する。
【0026】
具体的には、
図2に示すように、充電経路選択部31は、電池スタックB1−1、抵抗R11、R21、第1スイッチS1−1、第2スイッチS2−1、キャパシタC及び分岐ラインL2を含む充電経路P1を選択する。
【0027】
すなわち、制御部30は、フライングキャパシタ部10に充電経路P1の閉回路が形成されるよう、第1、第2切替部11、12を制御する。具体的には、制御部30は、電池スタックB1−1と接続する第1、第2スイッチS1−1、S2−1がオン状態となり、それ以外のスイッチS1−2、S2−2、S3、S4がオフ状態となるよう制御する。
【0028】
これにより、フライングキャパシタ部10には、
図2の矢印で示す方向に電流が流れ、キャパシタCが充電される。このように、キャパシタCを充電する場合に分岐ラインL2に流れる電流の向きを、以下では「充電方向」とする。
【0029】
なお、ここでは、電圧の検出対象となる電池スタックB1−1を制御部30が決定する場合について説明したが、充電経路選択部31が検出対象となる電池スタックB1を決定するようにしてもよい。
【0030】
<放電経路P2の選択>
次に、
図3を用いて、制御部30の放電経路選択部32が選択する放電経路P2の詳細について説明する。
図3は、放電経路選択部32が選択する放電経路P2の一例を示す図である。
【0031】
放電経路選択部32は、制御部30から放電経路P2を選択するよう指示を受けると、抵抗R3、R4とキャパシタCとが接続される放電経路P2を選択する。具体的には、放電経路選択部32は、キャパシタC、第3、第4スイッチS3、S4、抵抗R3、R4及び分岐ラインL2を含む放電経路P2を選択する。
【0032】
すなわち、制御部30は、フライングキャパシタ部10に放電経路P2の閉回路が形成されるように、第1、第2切替部11、12を制御する。具体的には、制御部30は、第1、第2スイッチS1、S2がオフ状態となり、第3、第4スイッチS3、S4がオン状態となるよう制御する。
【0033】
これにより、フライングキャパシタ部10には、
図3の矢印で示す方向に電流が流れ、キャパシタCが放電する。このように、キャパシタCを放電する場合に分岐ラインL2に流れる電流の向きを、以下では「放電方向」とする。かかる放電方向は、上述した充電方向とは逆向きとなる。このように充電方向に流れる電流と放電方向に流れる電流とが単一のラインである分岐ラインL2に流れる。このように1本のラインにより充電経路の一部と放電経路の一部とが形成される。
【0034】
本実施形態では、充電経路選択部31及び放電経路選択部32が、分岐ラインL2を含む充電経路P1、放電経路P2をそれぞれ選択する。これにより、キャパシタCに接続するラインとして、充電時にキャパシタCに電荷を蓄積する充電ラインと、放電時に電荷を放出する放電ラインとを別に設ける必要がなくなる。したがって、例えばダイオードなど充電ライン、放電ラインそれぞれに流れる電流の向きを制限する回路素子を設ける必要がなくなり、電圧検出装置2の部品点数の増加を抑制することができる。
【0035】
<電圧検出処理の説明>
続いて、
図4を用いて、制御部30が実行する電圧検出処理について説明する。
図4は、電圧検出処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0036】
まず、制御部30は、スタック指定変数nを初期化(n=0)し(ステップS101)、次にスタック指定変数n=n+1とする(ステップS102)。制御部30は、電圧を検出する電池スタックB1としてn番目の電池スタックB1−nを選択する(ステップS103)。ここでは、n=1であるため、制御部30は、電池スタックB1−1を選択する。
【0037】
次に、制御部30は、電池スタックB1−1を含む充電経路P1を選択する(ステップS104)。すなわち、制御部30は、フライングキャパシタ部10に充電経路P1の閉回路が形成されるように第1、第2切替部11、12を制御する。具体的には、制御部30は、第1切替部11の第1、第2スイッチS1、S2がオン状態となり、第2切替部12の第3、第4スイッチS3、S4がオフ状態となるように制御する。これにより、電池スタックB1−1の電圧がキャパシタCに充電される。
【0038】
制御部30は、ステップS105で第1、第2切替部11、12を制御した後、キャパシタCの充電が完了するのに要するであろう予め定めた所定期間T1が経過するのを待つ(ステップS105)。この所定期間T1の経過後に放電経路P2の閉回路を形成してキャパシタCの電圧を電池スタックB1−1の電圧として検出するよう第1、第2切替部11、12を制御する(ステップS106)。具体的には、制御部30は、第1切替部11の第1、第2スイッチS1、S2がオフ状態となり、第2切替部12の第3、第4スイッチS3、S4がオン状態となるように制御する。これにより、検出部20がキャパシタCと接続され、接続された瞬間のキャパシタCの両端の電圧を検出する(ステップS107)。それと同時にキャパシタCの電圧は放電経路P2を介して放電する。
【0039】
次いで制御部30は、全ての電池スタックB1の電圧を検出したか否か判定する(ステップS109)。具体的には、スタック指定変数nが電池スタックB1の個数N以上である場合(ステップS109のYes)、制御部30は、全ての電池スタックB1の電圧を検出したとして電圧検出処理を終了する。
【0040】
スタック指定変数nが電池スタックB1の個数Nより小さい場合(ステップS109のNo)、制御部30は、ステップS108の後、キャパシタCの電圧が0Vになるであろう予め定めた所定期間T2の経過後にステップS102に戻る。
【0041】
また、所定期間T1、T2は、キャパシタCが定常状態になるまでの過渡応答の時間を考慮して決定される時間であり、充電経路P1、放電経路P2の閉回路に含まれるキャパシタCの容量値及び抵抗R11、R12、R21、R22、R3、および、R4の抵抗値に応じた時定数によって決定される。
【0042】
また、上述した電圧検出処理では、電圧電位の低い電池スタックB1−1から順に電圧を検出するようにしているがこれに限られない。電圧電位の高い電池スタックB1−Nから順に電圧を検出するようにしてもよく、ランダムに検出するようにしてもよい。
【0043】
なお、電圧の検出順序は、例えば電圧検出装置2が有する記憶部(図示せず)に記憶するようにしてもよい。この場合、記憶部が電池スタックB1を選択する順番に記憶するようにしてもよく、あるいはオン状態とする第1、第2スイッチS1、S2の順番を記憶するようにしてもよい。制御部30は、記憶部に記憶されている電池スタックB1あるいは第1、第2スイッチS1、S2の順番を読み出すことで、電圧を検出する電池スタックB1あるいは充電経路P1を選択するようにしてもよい。
【0044】
<充放電システムへの適用例>
次に、
図5を用いて、
図1に示す組電池システム100を充放電システムST1に適用した場合について説明する。
図5は、充放電システムST1の概要を示す図である。
図5に示す、充放電システムST1は、ハイブリッド自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(EV:Electric Vehicle)、及び、燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)等の車両駆動用電源として用いられる。
【0045】
充放電システムST1は、組電池1と、電池監視システムWS1と、車両制御装置200と、モータ300と、電圧変換器400と、リレー500とを含むシステムである。また、電池監視システムWS1は、モニタIC33等を備えた複数のサテライト基板3と、監視装置として動作する電圧検出装置2(以下、監視装置2とも称する)とを含むシステムである。また、充放電システムST1に含まれる組電池1と監視装置2とが
図1に示す組電池システム100に相当する。
【0046】
図5の組電池1は、車体と絶縁された電池であり、複数のブロックにより構成されている。1つのブロックでは16の電池セルが互いに直列に接続され、これら16の電池セルが1つのサテライト基板3に設けられたモニタIC33と電気的に接続されている。そのため、1つのブロックの各電池セルの電圧は、1つのサテライト基板3に設けられたモニタIC33により計測される。
【0047】
なお、1つのサテライト基板3には第1モニタIC33aと、第2モニタIC33bとの2つのモニタICが設けられており、第1モニタIC33a及び第2モニタIC33bが、1つのブロックの電池セルを二分して、8セルずつを1つのグループとして受け持つようになっている。なお、この8セルにより構成されるグループが
図1の電池スタックB1に相当する。また、接続部材L10−mは、複数の電池スタックB1−nのうち隣接する電池スタックB1を電気的に接続する。
【0048】
監視装置2は、複数の電池セルのそれぞれの個別電圧を監視すると共に、各電池スタックB1の電圧を監視する。つまり、組電池1の充電状態を監視する。具体的には、モニタIC33は、監視装置2から通信ラインL3を介して受信する電圧計測要求に基づいて複数の電池セルのそれぞれの個別電圧(以下、「セル電圧」とも称する)を計測し、通信ラインL3を介して計測結果を監視装置2に送信する。
【0049】
監視装置2は、モニタIC33からセル電圧を受信すると共に、通信ラインL4を介してキャパシタC(
図1参照)に電池スタックB1の電圧(以下、「スタック電圧」と称する)を充電することによりスタック電圧を直接測定して充電状態を監視する。このように、監視装置2は、スタック電圧を検出する電圧検出装置として動作すると共に、組電池1の充電状態を監視する監視装置としても動作する。
【0050】
監視装置2は、モニタIC33が正常に動作しているか否かを判定する判定装置としても動作する。例えば、監視装置2は、モニタIC33から受信した各電池セルの個別電圧を加算することで算出したスタック電圧と直接検出したスタック電圧とを比較し、両者の差が許容値より大きい場合にモニタIC33が異常であると判定する。監視装置2は、モニタIC33が異常であると判断した場合には、フェールセーフ機能を実行する。例えば、監視装置2は、リレー500を切り離して、電池セルに対する充放電が行われないようにするフェールセーフ機能を実行する。
【0051】
車両制御装置200は、組電池1の充電状態に応じて、組電池1に対する充放電を行う。具体的には、組電池1が過充電の場合、車両制御装置200は、電圧変換器400を用いて組電池1に充電された電圧を直流から交流の電圧に変換し、モータ300を駆動させる。その結果、組電池1の電圧は放電される。
【0052】
また、組電池1が過放電の場合、車両制御装置200は、電圧変換器400を用いて回生制動によりモータ300が発電した電圧を交流から直流の電圧に変換する。その結果、組電池1には電圧が充電される。このように、車両制御装置200は、監視装置2から取得した組電池1の充電状態に基づいて組電池1の電圧を監視し、監視結果に応じた制御を実行する。
【0053】
上述したように、第1の実施形態に係る電圧検出装置2は、充電経路P1、放電経路P2として分岐ラインL2を含む経路を選択する。これにより、充電時にキャパシタCに電荷を蓄積する充電ラインと、放電時に電荷を放出する放電ラインとをそれぞれ設ける必要がなくなり、例えばダイオードなど充電ライン、放電ラインそれぞれに流れる電流の向きを制限する回路素子を省略することができる。したがって、電圧検出装置2の部品点数を削減することができ、かかる電圧検出装置2を含む組電池システム100の部品点数の増加を抑制することができる。
【0054】
また、第1の実施形態に係る電圧検出装置2を、例えばハイブリッド自動車等の車両駆動用電源として用いられる充放電システムST1に適用することで、充放電システムST1の部品点数の増加を抑制することができる。
【0055】
(第2の実施形態)
第1の実施の形態では、放電経路選択部32が放電経路P2を選択してキャパシタCの電荷を放出することを説明した。ここで、放電経路P2のライン上に設けられた抵抗R3およびR4の抵抗値が大きいほど、キャパシタCと抵抗Rとで構成されるRC過渡応答の長さは長くなる。すなわち、放電時定数が大きくなる。検出部20は、キャパシタCの両端の電圧を電池スタックB1の電圧として検出する場合、スイッチS3、S4をオンして放電経路を形成した瞬間のキャパシタCの電圧をAD変換して計測する必要があることから、時定数が小さいとAD変換する時点でのキャパシタCの電圧低下量が大きくなり正確なスタック電圧を計測できなくなってしまう。それに対し、抵抗R3およびR4の抵抗値が比較的大きいとき、すなわち放電時定数が大きいときは、AD変換する時点でのキャパシタCの電圧低下量が小さくなり、放電開始直後にキャパシタCの正確な電圧を検出できる。
【0056】
しかしながら、抵抗R3およびR4の抵抗値が比較的大きい場合は、キャパシタCの放電完了までに時間を要する。そのため検出部20が、放電経路P2により放電を開始して、電池スタックB1−1の電圧検出後も放電経路P2による放電を継続すると、他の電池スタックB1−2の電圧検出までに時間を要することとなる。その結果、複数の電池スタックの電圧検出に比較的多くの時間を要することとなる。
【0057】
したがって、第2の実施形態では、検出部20が放電経路P2により電池スタックB1の電圧を検出した後は、電圧検出装置2の放電経路選択部32が、放電経路P3として複数の電池スタックB1のうち隣接する2つの電池スタックB1を電気的に接続する接続部材L10を含むより放電時定数の小さな経路に切替えるようにした。すなわち放電経路選択部32は、A/D変換部21が電池スタックB1の電圧を検出した後は、放電経路を放電時定数の大きい放電経路P2から放電時定数の小さい放電経路P3に切替える。
【0058】
これにより、電圧検出装置2の回路規模の増加を抑制しつつ、キャパシタCに充電された電池スタックB1の正確な電圧を検出でき、キャパシタCの放電時間を短縮することができる。これについて、
図6を参照しつつ以下で詳しく説明する。
【0059】
図6は、第2の実施形態に係る放電経路P3の一例を示す図である。検出部20が放電経路P2により電子スタックB1の電圧の検出が完了すると、放電経路選択部32は、制御部30から放電経路P2から放電経路P3に切替えるよう指示を受けて、接続部材L10とキャパシタCとを含む放電経路P3を選択する。具体的には、放電経路選択部32は、キャパシタC、抵抗R12、R21、第1スイッチS1−2、第2スイッチS2−1及び分岐ラインL2を含む放電経路P3を選択する。
【0060】
すなわち、制御部30は、組電池システム100に放電経路P3の閉回路が形成されるように、第1、第2切替部11、12を制御する。具体的には、制御部30は、電池スタックB1−1に接続する第1スイッチS1−1、電池スタックB1−2に接続する第2スイッチS2−2がオフ状態となり、接続部材L10に接続する第1、第2スイッチS1−2、S2−1がオン状態となるよう制御する。また、制御部30は、第3、第4スイッチS3、S4がオフ状態となるよう制御する。なお、放電経路P3に含まれる抵抗R12、R21の抵抗値は、放電経路P2に含まれる抵抗R3、R4の抵抗値より小さく設定されている。すなわち、放電経路P3の第2放電時定数は放電経路P2の第1放電時定数より小さい。
【0061】
このように、放電経路選択部32は、第1放電時定数を有し、キャパシタCからの放電電流を流す放電経路P2と、第1放電時定数よりも時定数の小さい第2放電時定数を有し、キャパシタCからの放電電流を流す放電経路P3とのいずれかの放電経路を選択する選択手段としても動作する。なお、例えば制御部30が、放電経路選択部32とは別に選択手段をさらに有する構成としてもよい。
【0062】
以下、放電経路選択部32が放電経路P2から放電経路P3に切替えることで、回路規模の増加を抑制しつつ、キャパシタCに充電された電池スタックB1の正確な電圧を検出でき、キャパシタCの放電時間を短くすることができる理由について説明する。
【0063】
一般的に、抵抗R12、および、R21は、検出部20側の抵抗R3、R4に比べて抵抗値が小さい。その理由の1つとして、充電時間を短くするには充電時定数を小さくする、すなわち抵抗R11〜R22の抵抗値を小さくすることが望ましく、またスタック電圧を正確に測定するには放電時定数を大きくする、すなわち抵抗R3、R4の抵抗値を大きくすることが望ましいということがあげられる。例えば、抵抗R3、R4の抵抗値が数kΩであり、抵抗R1、R2の抵抗値は数百Ωである。
【0064】
そこで、本実施形態では、放電経路選択部32が、検出部20が放電経路P2により電池スタックB1の電圧検出を完了した後は、放電経路を放電経路P2から接続部材L10を含む放電経路P3に切替えて、第1スイッチS1−2に直列接続する抵抗R12と、第2スイッチS2−1に直列接続する抵抗R21とを放電抵抗とする。これにより、放電経路P3に含まれる抵抗値を、抵抗R3、R4を放電抵抗とした放電経路P2で放電した場合に比べ小さくすることができ、すなわち、放電時定数を小さくでき、放電経路P3の回路の過渡応答の長さ、すなわちキャパシタCの放電時間を短くすることができる。
【0065】
また、抵抗R12、および、R21を放電抵抗とすることで、充電時の充電抵抗を放電抵抗に兼用することができ、新たな抵抗を追加することなく、放電経路P3の抵抗値を放電経路P2の抵抗値と比べて小さくすることができる。したがって、回路規模の増加を抑制しつつキャパシタCの放電時間を短くすることができる。なお、第2放電時定数を有する放電経路としては、第1放電時定数よりも小さい放電時定数を有するものであれば、接続部材L10を有する経路とは別に設けた放電経路としてもよい。これにより少なくともキャパシタCの放電時間を短縮できる。
【0066】
次に、
図7を用いて本実施の形態における制御部30が実行する電圧検出処理について説明する。制御部30が実行する電圧検出処理では、
図4に示す電圧検出処理に対し、
図7のステップS108を追加した点が異なっている。すなわち、ステップS106で時定数の大きい放電経路P2を選択してステップS107で電池スタックB1の電圧を検出すると、ステップS108で時定数の小さい放電経路P3に切り替える。換言すると、ステップS107で制御部30は、検出部20が電池スタックB1の電圧検出を完了するまでは、放電経路P2を選択し、検出部20が電池スタックB1の電圧検出を完了した後は、放電経路をP3に切替える。
【0067】
また、
図6では、接続部材L10が1つの場合について示したが、例えば
図5に示すように、接続部材L10がN−1の場合でも同様に放電経路P2から放電経路P3に切替えることができる。この場合、例えば、電池スタックB1−n(ただし、ここでは、n=1〜N−1とする)を用いてキャパシタCを充電した場合は、放電経路選択部32が電池スタックB1−nと電池スタックB1−(n+1)との間の接続部材L10−m(m=n)を含む放電経路P3を選択する。
【0068】
このように、電圧を検出した電池スタックB1−nに接続する接続部材L10−m(n=m)を含む放電経路P3を選択することで、第1切替部11に含まれる第1、第2スイッチS1、S2のオン・オフの切替回数を平均化することができる。これにより、第1切替部11に含まれる第1、第2スイッチS1、S2のうち、特定の第1、第2スイッチS1、S2だけが使用回数の上限を超えることがなくなり、第1切替部11の使用期間を延ばすことができる。
【0069】
n=Nの場合、すなわち組電池1の端の電池スタックB1−Nを用いてキャパシタCを充電した場合は、例えば電池スタックB1−Nに隣接する電池スタックB1−(N−1)との間に設けられる接続部材L10−(N−1)を含む放電経路P3を放電経路選択部32が選択するようにすればよい。
【0070】
あるいは、制御部30が電圧検出処理を複数回実行する場合は、電圧検出処理を実行する毎に異なる接続部材L10を含む放電経路P3を放電経路選択部32が選択するようにしてもよい。このように、組電池1の端の電池スタックB1−Nを用いてキャパシタCを充電した場合に、充電経路P3に含める接続部材L10を電圧検出処理毎に変更することで、第1、第2スイッチS1、S2のオン・オフの切替回数をさらに平均化することができる。
【0071】
なお、放電経路P3の選択順序、すなわち放電経路P3に含まれる接続部材L10の選択順序は、例えば電圧検出装置2が有する記憶部(図示せず)に記憶するようにしてもよい。この場合、記憶部が接続部材L10を選択する順番に記憶するようにしてもよく、あるいはオン状態とする第1、第2スイッチS1、S2の順番を記憶するようにしてもよい。制御部30は、記憶部に記憶されている接続部材L10あるいは第1、第2スイッチS1、S2の順番を読み出すことで、接続部材L10あるいは放電経路P3を選択するようにしてもよい。
【0072】
上述したように、第2の実施形態に係る電圧検出装置2は、放電経路選択部32が、放電経路P3として複数の電池スタックB1のうち隣接する2つの電池スタックB1を電気的に接続する接続部材L10を含む比較的時定数の小さな経路を選択するようにした。これにより、電圧検出装置2の回路規模の増加を抑制しつつキャパシタCの放電時間を短縮することができる。したがって、電圧検出装置2の電圧検出にかかる時間を短くすることができる。
【0073】
また、第2の実施形態に係る電圧検出装置2では、放電経路選択部32が、検出部20が電池スタックB1の電圧検出を完了するまでは放電時定数の大きい放電経路P2を選択し、検出部20が電池スタックB1の電圧検出を完了した後は、放電経路を放電時定数の小さい放電経路P3に切替えるようにした。放電経路P3は、複数の電池スタックB1のうち隣接する2つの電池スタックB1を電気的に接続する接続部材L10を含む経路である。これにより、電圧検出装置2の回路規模の増加を抑制しつつ、キャパシタCに充電された電池スタックB1の正確な電圧を検出でき、キャパシタCの放電時間を短縮することができる。したがって、電圧検出装置2の電圧検出にかかる時間を短くすることができる。
【0074】
また、本実施形態に係る監視装置2とサテライト基板3とを別々の設ける以外に、一体として設けてもよい。
【0075】
また、本実施形態において、複数の電池セルを備えたものを電池スタックとして説明したが、このように複数の電池セルを備える構成であれば電池ブロックなどと称してもよい。
【0076】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。