(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車載機へのダウンリンク(以下「DL」という。)送信(第1DL送信および第2DL送信の総称。以下同じ。)に係る送信機能部と、前記車載機からのアップリンク(以下「UL」という。)送信(第1UL送信および第2UL送信の総称。以下同じ)の受信に係る受信機能部とを備えた光ビーコン用の投受光器であり、光ビーコン制御機の制御に従って、継続的な第1DL送信を行っている際に、当該第1DL送信を受信した前記車載機からの第1UL送信を受信した場合に、当該第1UL送信の受信に応じて当該車載機へ第2DL送信を開始し、当該第2DL送信を受信した当該車載機からの第2UL送信を受信する投受光器であって、
前記受信機能部は、
前記第1UL送信および前記第2UL送信の対象領域である標準UL領域からのUL送信を受信するための標準受信機能部と、
前記標準UL領域と一部が重なる或いは隣接するように前記標準UL領域の交通流上流側に設定された拡張UL領域からの前記第2UL送信を受信するための拡張受信機能部と、
を有し、
前記標準受信機能部による標準受信信号と、前記拡張受信機能部による拡張受信信号とを別々に前記光ビーコン制御機に出力する、
投受光器。
【背景技術】
【0002】
路車間通信システムを利用した交通情報サービスとして、光ビーコンや電波ビーコン、FM多重放送を用いたいわゆるVICS(登録商標)(Vehicle Information and Communication System)が実用化されている。このうち、光ビーコンは、近赤外線を通信媒体とした光無線通信により、路側に設置される路上装置と車載機との間で双方向通信を行うものである。路上装置自体のことを「光ビーコン装置」或いは「光ビーコン」とも呼称される。以下では、この路上装置のことを「光ビーコン装置」という。光ビーコン装置は、主に、車載機との間で投光および受光を行う投受光器と、この投受光器を制御する光ビーコン制御機とで構成される。
【0003】
従来の光ビーコン装置について
図8および
図9を参照して具体的に説明する。
投受光器300から車両5に搭載された車載機50への通信のことはダウンリンク(以下適宜「DL」と呼称する)、車載機50から投受光器300への通信のことはアップリンク(以下適宜「UL」と呼称する)と呼ばれる。投受光器300と車載機50との間で行われる光通信の領域は予め規定されており、ダウンリンクのための通信領域をダウンリンク領域、アップリンクのための通信領域をアップリンク領域として規定される。
【0004】
図8は、従来のダウンリンク領域DAおよびアップリンク領域UAを説明するための概略側面図である。ダウンリンク領域DAは投受光器300から車載機50への投光領域であり、アップリンク領域UAは投受光器300が車載機50からの投光を受光する受光領域である。
【0005】
ダウンリンク領域DAおよびアップリンク領域UAは、その範囲が所定の規格で定められており、投受光器300の直下位置近傍から交通流上流側に広がる範囲に定められている。具体的には、ダウンリンク領域DAは、投受光器300を道路の上方頂点として道路上流側の始端DAs〜道路下流側の終端DAeの範囲に定められ、アップリンク領域UAは、投受光器300を道路の上方頂点として道路上流側の始端UAs〜道路下流側の終端UAeの範囲に定められている。
【0006】
特徴的なのは、アップリンク領域UAの始端UAsとダウンリンク領域の始端DAsとが共通位置に定められているのに対して、アップリンク領域UAの終端UAeがダウンリンク領域DAeよりも上流側に定められていることである。アップリンクで搬送されるデータ量よりもダウンリンクで搬送されるデータ量の方が多いからである。
【0007】
また、アップリンクの通信には、データ伝送速度が比較的に低速な通信である第1アップリンクと、比較的に高速な通信である第2アップリンクとがある。ダウンリンクの通信にも、第1ダウンリンクおよび第2ダウンリンクがあるが、何れもデータ伝送速度は同じである。これらを含めた光ビーコンの通信手順について
図9を参照して説明する。
【0008】
図9は、光ビーコンによる通信手順を説明するためのフローチャートである。左側が光ビーコン装置(路上装置)側の処理の流れ、右側が車載機側の処理の流れを示している。なお、光ビーコン装置側の処理は、光ビーコン制御機によって進行実行されるため、実行主体を光ビーコン制御機として説明する。
先ず、光ビーコン制御機は、第1ダウンリンク送信を繰り返し且つ継続的に行い、第1アップリンク送信の受信を待機する。すなわち通信領域内に車載機が現れるのを待機する(ステップR10〜R20:NO)。第1ダウンリンク送信では、車線通知情報、現在位置情報、メッセージ情報、簡易図形情報、渋滞リンク情報等が送信される。
【0009】
一方、車載機側も、第1ダウンリンク送信を受信できるかを常時判断しており(ステップB10:NO)、ダウンリンク領域DA内に進入することで第1ダウンリンク送信を受信できた場合には(ステップB10:YES)、第1アップリンク送信を行う(ステップB20)。第1アップリンク送信では、車載機が搭載された車両に係る旅行時間計測情報や車両計測情報、当該車載機が搭載された車両を識別するための車両ID等が送信される。
【0010】
光ビーコン制御機は、第1アップリンク送信を受信できた場合には(ステップR20:YES)、受信した第1アップリンク送信で搬送された情報を検出して上位装置へ送信し(ステップR30)、第2ダウンリンク送信を開始する(ステップR40)。第2ダウンリンク送信では、一部内容が第1ダウンリンク送信と重複する場合があるが、車線通知情報、渋滞・旅行時間リンク情報、旅行速度リンク情報、路線信号情報、第2アップリンク送信の受け入れ可否を示すフラグ情報等が送信される。第2ダウンリンク送信で送信される車線通知情報には、先の第1アップリンク送信で受信した車両IDが含まれる。
【0011】
一方、第1アップリンク送信を行った車載機は、第2ダウンリンク送信の受信を待機し(ステップB30)、待機時間がタイムアウトを示す所定時間に達していなければ(ステップB34:NO)、第2ダウンリンク送信による送信情報に含まれる車線通知情報に自車両の車両IDが含まれているか否か、すなわち、自車両宛の情報であるか否かを判定する(ステップB40)。自車両宛の情報でなければ(ステップB40:NO)、ステップB20に戻り再度第1アップリンク送信を行う。自車両宛ての情報であれば(ステップB40:YES)、次に、第2ダウンリンク送信による送信情報に第2アップリンク送信の受け入れが可能である旨を示すフラグ情報が含まれているか否かを判定する(ステップB50)。
【0012】
第2アップリンク送信の受け入れが可能である旨を示すフラグ情報が含まれていれば(ステップB50:YES)、第2アップリンク送信を行い(ステップB60)、含まれていなければ(ステップB50:NO)第2アップリンク送信は行わない。第2アップリンク送信では、プローブ情報と呼ばれる情報、例えば第1アップリンク送信で送信される車両計測情報よりも詳細な車両計測情報等が送信される。
【0013】
光ビーコン制御機は、第2アップリンク送信を受信できた場合には(ステップR50:YES)、第2アップリンク送信で搬送された情報を検出して上位装置へ送信する(ステップR60)。また、第2アップリンク送信の受信成否に関わらず、所定時間の間(或いは所定回数送信するまで)、第2ダウンリンク送信を行い(ステップR50〜R70)、その後、最初のステップR10へ処理を戻す。
【0014】
一方、第2アップリンク送信を行った車載機は、第2ダウンリンク送信に係る情報の受信が完了するまで、或いは、所定時間が経過してタイムアウトするまで、第2ダウンリンク送信の受信を行う(ステップB70〜B80)。第2ダウンリンク送信を受信できない場合も同様に、所定時間が経過するまで受信を試みる(ステップB50)。その後、最初のステップB10へ処理を戻す。
【0015】
以上が従来の光ビーコンの通信手順であるが、特徴的なのは、限られた通信領域内で、高速移動し得る車載機50と投受光器300との間でより確実に通信を実現するための手順となっていることである。例えば、第1アップリンク送信は、未達の場合に再送をする仕組みが定められている上、送信フレームが少なく、再送の仕組みもあるために受信確率が高いが、第2アップリンク送信は、未達か否かに関わらず1回の送信で終了となり、車載機側は第2アップリンク送信が送達できたかどうか(正常に受信されたかどうか)を知るすべをもたない。他方、ダウンリンク送信は複数回の送信が行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述した通り、光ビーコンによる通信を行うための通信領域が規定されていた。しかし、車載機50が通信領域に進入する前の通信領域外の地点で通信が実現してしまう場合があることが分かった。
【0018】
その場合も、光ビーコン装置としては
図9のステップR10〜R70までの一連の処理を実行し、車載機50としては
図9のステップB10〜B80までの一連の処理を実行することになるが、問題となるのは、車載機50は、第2アップリンク送信を規定回数(従来では1回のみ)しか送信しないことである。車載機50がアップリンク領域UAに未だ進入していないにも関わらず、
図9のステップB60まで通信手順が進んだ場合、投受光器300は第2アップリンク送信を受信できない、或いは、受信できたとしても第2アップリンク送信に係る搬送情報の一部が欠落してしまう場合が生じることがあった。光通信の最適領域として設計されたアップリンク領域UA外での通信となるからである。
【0019】
本発明は上述した課題を解決するために考案されたものであり、その目的とするところは、車載機が従来規定されていた通信領域に進入する前に光ビーコンの通信手順が進行実行された場合、車載機が行う第2アップリンク送信を光ビーコン装置側が受信できない或いは受信できたとしても搬送情報の一部が欠落してしまう事態を無くすための技術を提案すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するための第1の発明は、車載機(例えば
図1,2の車載機50)へのダウンリンク(以下「DL」という。)送信(第1DL送信および第2DL送信の総称。以下同じ。)に係る送信機能部(例えば
図4の送信機能部32)と、前記車載機からのアップリンク(以下「UL」という。)送信(第1UL送信および第2UL送信の総称。以下同じ)の受信に係る受信機能部とを備えた光ビーコン用の投受光器(例えば
図1〜4の投受光器30)であり、光ビーコン制御機(例えば
図4の光ビーコン制御機)の制御に従って、継続的な第1DL送信を行っている際に、当該第1DL送信を受信した前記車載機からの第1UL送信を受信した場合に、当該第1UL送信の受信に応じて当該車載機へ第2DL送信を開始し、当該第2DL送信を受信した当該車載機からの第2UL送信を受信する投受光器であって、
前記受信機能部は、
前記第1UL送信および前記第2UL送信の対象領域である標準UL領域(例えば
図2,3の標準アップリンク領域SUA)からのUL送信を受信するための標準受信機能部(例えば
図4,5の標準受信機能部34)と、
前記標準UL領域と一部が重なる或いは隣接するように前記標準UL領域の交通流上流側に設定された拡張UL領域(例えば
図2,3の拡張アップリンク領域EUA)からの前記第2UL送信を受信するための拡張受信機能部(例えば
図4の拡張受信機能部37)と、
を有し、
前記標準受信機能部による標準受信信号と、前記拡張受信機能部による拡張受信信号とを別々に前記光ビーコン制御機に出力する、
投受光器である。
【0021】
この第1の発明によれば、第1UL送信および第2UL送信の対象領域である標準UL領域の他に、標準UL領域の交通流上流側に拡張UL領域を定め、この拡張UL領域からの第2UL送信を拡張受信機能部が受信する。標準UL領域は従来のUL領域に対応する領域である。車載機が標準UL領域に進入する前に光ビーコンの通信手順が進行実行されて第2UL送信が行われたとしても、車載機にとって標準UL領域の手前側に拡張UL領域が存在するため、第2UL送信は確実に投受光器で受信される。
なお、車載機については、従来通りであり、何ら変更の必要がない。
【0022】
また、第2の発明は、第1の発明の投受光器において、
前記標準受信機能部は、前記標準UL領域からのUL送信に係る投光を受光するための標準受光素子部(例えば
図4の標準受光素子部35)を有して構成され、
前記拡張受信機能部は、前記拡張UL領域からの前記第2UL送信に係る投光を受光するための拡張受光素子部(例えば
図4の拡張受光素子部38)を有して構成される、
投受光器である。
【0023】
この第2の発明によれば、投受光器に、標準UL領域からのUL送信(第1UL送信および第2UL送信)の投光を受光するための標準受光素子部とは別に、拡張UL領域からの第2UL送信に係る投光を受光するための拡張受光素子部を具備することができる。拡張UL領域からの第2UL送信に係る投光をより確実に受光する構成とすることができる。
【0024】
また、第3の発明は、
第1又は第2の発明の投受光器を制御する光ビーコン制御機(例えば
図4の光ビーコン制御機20)であって、
前記第1UL送信の搬送情報の検出を前記標準受信信号に基づいて行うことと(例えば
図6)、
前記第1UL送信を受信した場合に、前記投受光器に前記第2DL送信を行わせることと、
前記第2DL送信に応じて前記車載機から送信される前記第2UL送信の搬送情報の検出を、前記標準受信信号および前記拡張受信信号に基づいて行うことと(例えば
図6)、
を実行する光ビーコン制御機である。
【0025】
この第3の発明によれば、第1UL送信の受信については、標準受信機能部によって受信された標準受信信号に基づいて処理され、第2UL送信の受信については、標準受信信号、および、拡張受信機能部によって受信された拡張受信信号に基づいて処理される。これにより、拡張UL領域で第1UL送信がなされたとしても、拡張受信信号が第1UL送信の受信に用いられることがない。他方、第2UL送信を受信する際は、標準受信信号および拡張受信信号が用いられるため、標準UL領域と拡張UL領域の何れの領域で第2UL送信がなされても確実に受信することができる。
【0026】
また、第4の発明は、
N車線(N≧2)に対応するN台の第1又は第2の発明の投受光器の光通信を制御する光ビーコン制御機(例えば
図4の光ビーコン制御機20)であって、
前記N台の投受光器の何れかが前記第1UL送信を受信したか否かを、当該投受光器の前記標準受信信号に基づいて判定することと、
前記第1UL送信を受信したと判定した場合に、前記N台の投受光器に前記第2DL送信を行わせることと、
前記第2DL送信に応じて前記車載機から送信される前記第2UL送信の搬送情報の検出を、前記第1UL送信を受信したと判定した投受光器の前記標準受信信号および前記拡張受信信号に基づいて行うことと(例えば
図7のステップR35)、
を実行する光ビーコン制御機である。
【0027】
この第4の発明によれば、第1UL送信の受信については標準受信信号に基づいて処理されるが、第2UL送信の受信については第1UL送信を受信した投受光器の標準受信信号および拡張受信信号に基づいて処理される。これにより、どの車線においても、拡張UL領域で第1UL送信がなされたとしても、拡張受信信号が第1UL送信の受信に用いられることがない。一方、第2UL送信を受信する際には、第1UL送信を受信した投受光器の標準受信信号および拡張受信信号が用いられるため、無関係な車線の信号を用いることがない。すなわち、光ビーコンの通信手順を進行実行している車載機が存在する車線を絞り込み、的確に拡張受信信号を利用して、第2UL送信を確実に受信することができる。
【0028】
また、第5の発明は、
第1又は第2の発明の投受光器と、
第3又は第4の発明の光ビーコン制御機と、
を具備した光ビーコン装置(例えば
図4の光ビーコン装置10)である。
【0029】
この第5の発明によれば、第1又は第2の発明の作用効果と、第3又は第4の発明の作用効果とを奏する光ビーコン装置を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を適用した実施形態の一例を説明する。ダウンリンクのことを適宜「DL」、アップリンクのことを適宜「UL」と略称する。
【0032】
[全体構成]
図1は、本実施形態の路車間通信システム1の全体構成図である。
図1に示すように、路車間通信システム1は、投受光器30および光ビーコン制御機20を備えた光ビーコン装置10と、道路Rを走行する車両5に搭載された車載機50との間で光通信による双方向通信を行うよう構成されている。
【0033】
光ビーコン装置10は、道路Rの各車線を通信対象エリアとする複数の投受光器30と、各投受光器30を制御する光ビーコン制御機20とを備える。光ビーコン制御機20と各投受光器30とは、有線或いは無線通信によって通信接続されている。
【0034】
光ビーコン制御機20は、道路R脇に立設された支柱60の下部に設置される。また、光ビーコン制御機20は、電話回線等の通信回線を介して交通管制システム等の中央装置(以下「上位装置」という)と接続されており、上位装置からDL情報を取得して各投受光器30から送信させるとともに、各投受光器30が受信した車載機50からのUL情報を上位装置に送信する。光ビーコン装置側の光ビーコンの通信手順(投受光器30による投光および受光)は、光ビーコン制御機20の制御によって進行実行される。
【0035】
投受光器30は、支柱60の上部から道路Rを横切るように水平方向に架設されたバー62に固定されて、通信対象の車線の直上に設置されている。また、投受光器30は、光通信用の投光部を有する送信機能部32と、受光部を有する標準受信機能部34および拡張受信機能部37とを備える。
【0036】
送信機能部32は、DL情報を搬送する近赤外線の光信号であるDL光を通信対象エリアの車線に向けて発光し、標準受信機能部34および拡張受信機能部37は、車載機50から送信されるUL情報を搬送する近赤外線の光信号であるUL光を受光する。
【0037】
なお、本実施形態において、車載機50は
図8,9を参照して説明した従来の車載機と同様である。
【0038】
[通信領域]
図2,3は、本実施形態のダウンリンク用の通信領域(ダウンリンク領域)およびアップリンク用の通信領域(アップリンク領域)を説明するための概略図であり、
図2が側面図、
図3が俯瞰図である。
【0039】
本実施形態のダウンリンク領域DAは、
図8を参照して説明した従来のダウンリンク領域DAに対応する領域である。また、本実施形態のアップリンク領域には、標準アップリンク領域SUAと、拡張アップリンク領域EUAとがあるが、このうち、標準アップリンク領域SUAは、
図8を参照して説明した従来のアップリンク領域UAに対応する領域である。
【0040】
本実施形態は、標準アップリンク領域SUAの交通流上流側に、拡張アップリンク領域EUAを設けたことを特徴の1つとしている。拡張アップリンク領域EUAは、投受光器30を道路Rの上方頂点として道路上流側の始端EUAs〜道路下流側の終端EUAeの範囲に定められる。終端EUAeは、標準アップリンク領域SUAの始端SUAsと同じ位置として説明するが、始端SUAsよりも下流側に終端EUAeを設定することとしてもよい。要は、拡張アップリンク領域EUAと標準アップリンク領域SUAとの間にアップリンク用の通信領域の隙間がなく、拡張アップリンク領域EUAと標準アップリンク領域SUAとが隣接あるいは連続していればよい。そのため、拡張アップリンク領域EUAの下流側の一部領域が、標準アップリンク領域SUAの上流側の一部領域と重複することとしてもよい。
【0041】
また、
図3に示すように、道路Rの各車線それぞれに対応する投受光器30について、対応する車線に通信領域(拡張アップリンク領域EUA、標準アップリンク領域SUA、ダウンリンク領域DA)が設定される。
【0042】
標準アップリンク領域SUAは、第1アップリンクおよび第2アップリンクの両方のための通信領域であるが、拡張アップリンク領域EUAは、第2アップリンクのための通信領域として設定される。
【0043】
[光ビーコン装置の詳細構成]
図4は、光ビーコン装置10を構成する複数の投受光器30と、光ビーコン制御機20との機能ブロックを示す図である。投受光器30の符号は、対応する車線毎にA,B,・・・を付記し、投受光器30A,30B,・・・と記すが、何れの投受光器30も同様の構成である。
【0044】
投受光器30は、送信機能部32と、標準受信機能部34と、拡張受信機能部37とを備える。
送信機能部32は、光ビーコン制御機20からの送信指示に従って、ダウンリンク領域DLに向けた第1ダウンリンクおよび第2ダウンリンクの送信(投光)を実行する機能部であり、発光素子部や電圧印加部等を有して構成される。
【0045】
標準受信機能部34は、車載機50からの第1アップリンクおよび第2アップリンクの送信(投光)を受信(受光)するための機能部であり、標準受光素子部35と、増幅・抽出回路部36とを有して構成される。
【0046】
標準受光素子部35は、標準アップリンク領域SUAからの投光を受光するための複数の受光素子を有して構成され、受光光の強度変化に応じた電気信号を増幅・抽出回路部36へ出力する。
【0047】
増幅・抽出回路部36は、増幅器、フィルタ回路、AD変換回路等を有して構成され、標準受光素子部35が受光した信号をデジタル信号に変換し、受信信号として光ビーコン制御機20へ出力する。
【0048】
標準受信機能部34は、第1アップリンクおよび第2アップリンクの投光を受光するため、より具体的な構成としては
図5に示すような構成を採用することができる。すなわち、第1アップリンクはデータ伝送速度(変調速度ともいえる)が比較的低速な通信であるが、第2アップリンクはデータ伝送速度が比較的高速な通信である。そのため、
図5(a)に示すように、標準受光素子部35が受光した信号を、第1アップリンク用の増幅・抽出に特化した回路部(第1UL用増幅・抽出回路部361)と、第2アップリンク用の増幅・抽出に特化した回路部(第2UL用増幅・抽出回路部362)とに並列に入力する。第1UL用増幅・抽出回路部361からは、第1アップリンクに係る受信信号(第1UL標準受信信号)のみが出力され、第2UL用増幅・抽出回路部362からは、第2アップリンクに係る受信信号(第2UL標準受信信号)のみが出力される。
【0049】
また、第1アップリンクの変調周波数と第2アップリンクの変調周波数の両方に対応したフィルタ特性を有するフィルタを用いるなど、第1アップリンクと第2アップリンクの両方の増幅・抽出を兼用的に行う回路部(増幅・抽出回路部363)を用いた
図5(b)のような構成を採用することもできる。この場合、標準受信機能部34から出力される受信信号は、第1アップリンクおよび第2アップリンクの両者に共用された受信信号(共用標準受信信号)となる。なお、第1アップリンクと第2アップリンクとが同時に送信されることはないため、共用標準受信信号に、第1アップリンクの受信信号と第2アップリンクの受信信号とが混合することはない。
【0050】
図4に戻り、光ビーコン制御機20は、操作部202と、表示部204と、通信部206と、処理部210と、記憶部240とを備えて構成される。
【0051】
操作部202は、例えばボタンスイッチやタッチパネル等の入力装置で実現され、路車間通信システム1の管理者の操作に応じた操作信号を処理部210に出力する。表示部204は、例えばLEDや7セグメント表示器、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置で実現され、処理部210からの表示信号に従った各種表示を行う。なお、処理部210や記憶部240とともに操作部202および表示部204も、光ビーコン制御機20の筐体内に収められており、歩行者等の一般人が操作・視認することはできない。
【0052】
通信部206は、有線或いは無線の通信装置で実現され、所与の通信回線を介して外部装置(主に、交通管制システム等の中央装置;上位装置)との通信を行う。
【0053】
処理部210は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算装置や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路等を有して構成され、記憶部240に記憶されたプログラムやデータ、上位装置から送信されるデータ等に基づいて、光ビーコン制御機20の全体制御を行う。また、処理部210は、各投受光器30(30A,30B,・・・)に対応する信号処理部として、投受光器用信号処理部220(220A,220B,・・・)を有する。
【0054】
投受光器用信号処理部220は、送信信号処理部222と、受信信号処理部224とを有する。
【0055】
送信信号処理部222は、第1ダウンリンク情報244を送信するための第1ダウンリンク送信と、第2ダウンリンク情報246を送信するための第2ダウンリンク送信とを投受光器30に行わせる制御を担う。第1ダウンリンク情報244および第2ダウンリンク情報246は、各投受光器30A,30B,・・・で共通のデータである。そのため、第1ダウンリンク送信および第2ダウンリンク送信では、各投受光器30A,30B,・・・が共通のデータを発信(発光)する。また、第1ダウンリンク情報244および第2ダウンリンク情報246は、上位装置から送信されて記憶部240に記憶される情報であり、随時最新のデータに更新される。また、第1ダウンリンク情報244および第2ダウンリンク情報246を投受光器30に送信させる際、送信信号処理部222が、当該情報を適宜変更・更新する場合もある。
【0056】
受信信号処理部224は、投受光器30から入力される受信信号に搬送されている情報を検出し、アップリンク情報247として記憶部240に記憶するとともに上位装置に伝送する。アップリンク情報247には、第1アップリンク情報248と第2アップリンク情報249とがあり、投受光器30別に記憶部240に記憶される。
【0057】
また、投受光器30から受信信号処理部224に入力される受信信号には、標準受信信号と拡張受信信号とがあり、標準受信信号には更に第1UL標準受信信号と第2UL標準受信信号とがある。これらの信号を処理する具体的な回路構成の例を
図6に示す。
【0058】
図6は、受信信号処理部224の回路構成例を示す図である。
図6(a)によれば、受信信号処理部224は、信号合成部226と、切替部228と、UL情報検出部230とを有して構成される。
【0059】
UL情報検出部230は、第1アップリンクで送信された情報を検出するための第1UL情報検出部231と、第2アップリンクで送信された情報を検出するための第2UL情報検出部232とを有する。
第1UL情報検出部231には、第1UL標準受信信号が入力される。このため、標準アップリンク領域SUA(
図2,3参照)からの第1アップリンク送信を受信した信号から、第1アップリンク情報248が検出される。
【0060】
一方、第2UL情報検出部232に入力される信号は複雑である。
まず、信号合成部226が、第2UL標準受信信号と拡張受信信号とを合成して切替部228に出力する。例えば、受信信号処理部224に入力される受信信号はデジタル信号であるため、第2UL標準受信信号と拡張受信信号との論理和回路として信号合成部226を構成することができる。
【0061】
切替部228は、第2UL標準受信信号と、信号合成部226から入力された合成信号との何れかを選択して切り替えて、第2UL情報検出部232に出力する。
【0062】
従って、第2UL情報検出部232に入力される信号は、第2UL標準受信信号か、第2UL標準受信信号と拡張受信信号との合成信号かに切り替えられる。この切り替えは、第1UL情報検出部231によって第1アップリンク情報が検出されたこと、すなわち、対応する投受光器30が第1アップリンク送信を受信した場合に、第2UL標準受信信号と拡張受信信号との合成信号に切り替えられ、それ以外は第2UL標準受信信号に切り替えられる。この切り替えによって、車載機50が標準アップリンク領域SUAに到達する前に、拡張アップリンク領域EUA内で光ビーコンの通信手順が進行実行されて第2アップリンク送信が行われた場合であっても、第2アップリンク送信が確実に投受光器30で受信され、第2アップリンク情報が検出されることとなる。
【0063】
また、受信信号処理部224の回路構成は、
図6(b)のような構成でもよい。すなわち、切替部229が拡張受信信号か無信号かを切り替えて選択し、信号合成部227が第2UL標準受信信号と切替部229により選択された信号とを合成して、第2UL情報検出部232に出力する。切替部229の切り替えは、第1UL情報検出部231によって第1アップリンク情報が検出されたこと、すなわち、対応する投受光器30が第1アップリンク送信を受信した場合に、拡張受信信号に切り替えられ、それ以外は無信号に切り替えられる。
図6(b)の構成の場合も、
図6(a)と同様の作用効果を奏する。
【0064】
また、
図5を参照して説明した通り、標準受信機能部34には、第1アップリンク用の信号処理系統と第2アップリンク用の信号処理系統とを別々に備え、第1UL標準受信信号と第2UL標準受信信号とを別々に出力する回路構成(
図5(a))の他に、信号処理系統を第1アップリンク用と第2アップリンク用との兼用として、第1アップリンクと第2アップリンクとの共用標準受信信号を出力する回路構成(
図5(b))を採用することができる旨を述べた。
【0065】
そのため、標準受信機能部34として
図5(a)の回路構成を採用する場合には、受信信号処理部224は、
図6(a)や
図6(b)の回路構成で対応できるが、
図5(b)の回路構成を採用する場合には、受信信号処理部224は、
図6(a)や
図6(b)の回路構成そのままでは対応できない。その場合には、
図6(c)に示す信号分離部236を、受信信号処理部224の入力段に設けて、共用標準受信信号から第1UL標準受信信号と第2UL標準受信信号とを分離すればよい。第1アップリンクと第2アップリンクとは変調周波数等が異なるため、第1アップリンクの信号を通過させる周波数特性のフィルタと、第2アップリンクの信号を通過させる周波数特性のフィルタとによって、信号分離部236を構成することができる。
【0066】
図4に戻り、記憶部240は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、ハードディスク等の記憶装置で実現され、処理部210が光ビーコン制御機20を統合的に制御するためのシステムプログラムや、各種機能を実現するためのプログラムやデータ等を記憶しているとともに、処理部210の作業領域として用いられ、処理部210が各種プログラムに従って実行した演算結果が一時的に格納される。本実施形態では、記憶部240には、制御プログラム242と、ダウンリンク情報である第1ダウンリンク情報244および第2ダウンリンク情報246と、各投受光器30からのアップリンク情報である第1アップリンク情報248および第2アップリンク情報249とを格納する。
【0067】
[光ビーコンの通信手順]
次に、本実施形態の光ビーコンの通信手順の例を
図7を参照して説明する。
図7は、本実施形態の光ビーコンの通信手順の例を示す図であり、
図9に示した従来の通信手順に対して、ステップR35,R75を追加した手順となっている。車載機50側の手順は従来通りである。
【0068】
先ず、光ビーコン制御機20は、第1ダウンリンク送信を繰り返し且つ継続的に行い、第1アップリンク送信の受信を待機する(ステップR10〜R20:NO)。
【0069】
一方、車載機50側も、第1ダウンリンク送信を受信できるかを常時判断しており(ステップB10:NO)、受信できた場合には(ステップB10:YES)、第1アップリンク送信を行う(ステップB20)。
【0070】
光ビーコン制御機20は、第1アップリンク送信を受信できた場合には(ステップR20:YES)、受信した第1アップリンク送信で搬送された情報を検出して上位装置へ送信する(ステップR30)。また、ステップR20で第1アップリンク送信を受信した投受光器30からの第2アップリンク送信の受信信号を、第2UL標準受信信号と拡張受信信号との合成信号となるように切替部228,229を切り替え(ステップR35)、第2ダウンリンク送信を開始する(ステップR40)。
【0071】
一方、第1アップリンク送信を行った車載機50は、第2ダウンリンク送信の受信を待機し(ステップB30)、待機時間がタイムアウトを示す所定時間に達していなければ(ステップB34:NO)、第2ダウンリンク送信による送信情報に含まれる車線通知情報に自車両の車両IDが含まれているか否か、すなわち、自車両宛の情報であるか否かを判定する(ステップB40)。自車両宛の情報でなければ(ステップB40:NO)、ステップB20に戻り再度第1アップリンク送信を行う。自車両宛ての情報であれば(ステップB40:YES)、次に、第2ダウンリンク送信による送信情報に第2アップリンク送信の受け入れが可能である旨を示すフラグ情報が含まれているか否かを判定する(ステップB50)。
【0072】
第2アップリンク送信の受け入れが可能である旨を示すフラグ情報が含まれていれば(ステップB50:YES)、第2アップリンク送信を行い(ステップB60)、含まれていなければ(ステップB50:NO)第2アップリンク送信は行わない。
【0073】
光ビーコン制御機20は、第2アップリンク送信を受信できた場合には(ステップR50:YES)、第2アップリンク送信で搬送された情報を検出して上位装置へ送信する(ステップR60)。また、第2アップリンク送信の受信成否に関わらず、所定時間の間(或いは所定回数送信するまで)、第2ダウンリンク送信を行い(ステップR50〜R70)、その後、投受光器30からの第2アップリンク送信の受信信号を、第2UL標準受信信号のみとなるように切替部228,229を切り替えて(ステップR75)、最初のステップR10へ処理を戻す。
【0074】
一方、第2アップリンク送信を行った車載機50は、第2ダウンリンク送信に係る情報の受信が完了するまで、或いは、所定時間が経過してタイムアウトするまで、第2ダウンリンク送信の受信を行う(ステップB70〜B80)。第2ダウンリンク送信を受信できない場合も同様に、所定時間が経過するまで受信を試みる(ステップB50)。その後、最初のステップB10へ処理を戻す。
【0075】
[作用効果]
以上の本実施形態によれば、第1アップリンク送信および第2アップリンク送信の対象領域である標準アップリンク領域SUAの他に、標準アップリンク領域の交通流上流側に拡張アップリンク領域EUAを定め、この拡張アップリンク領域EUAからの第2アップリンク送信を拡張受信機能部37が受信する。標準アップリンク領域SUAは従来のアップリンク領域UAに対応する領域である。車載機50が標準アップリンク領域SUAに進入する前に光ビーコンの通信手順が進行実行されて第2アップリンク送信が行われたとしても、車載機50にとって標準アップリンク領域SUAの手前側に拡張アップリンク領域EUAが存在するため、第2アップリンク送信は確実に投受光器30で受信される。
なお、車載機50については、従来通りであり、何ら変更の必要がない。
【0076】
また、第1アップリンク送信の受信については、標準受信機能部34によって受信された標準受信信号に基づいて処理され、第2アップリンク送信の受信については、標準受信信号、および、拡張受信機能部37によって受信された拡張受信信号に基づいて処理される。これにより、拡張アップリンク領域EUAで第1アップリンク送信がなされたとしても、拡張受信信号が第1アップリンク送信の受信に用いられることがない。他方、第2アップリンク送信を受信する際は、標準受信信号および拡張受信信号が用いられるため、標準アップリンク領域SUAと拡張アップリンク領域EUAの何れの領域で第2アップリンク送信がなされても確実に受信することができる。
【0077】
また、第1アップリンク送信の受信については標準受信信号に基づいて処理されるが、第2アップリンク送信の受信については第1アップリンク送信を受信した投受光器30の標準受信信号および拡張受信信号に基づいて処理される。これにより、どの車線においても、拡張アップリンク領域EUAで第1アップリンク送信がなされたとしても、拡張受信信号が第1アップリンク送信の受信に用いられることがない。一方、第2アップリンク送信を受信する際には、第1アップリンク送信を受信した投受光器30の標準受信信号および拡張受信信号が用いられるため、無関係な車線の信号を用いることがない。すなわち、光ビーコンの通信手順を進行実行している車載機50が存在する車線を絞り込み、的確に拡張受信信号を利用して、第2アップリンク送信を確実に受信して搬送情報を検出することができる。
【0078】
[変形例]
以上、本発明を適用した実施形態の一例を説明したが、本発明の適用可能な形態が上述した実施形態に限られるものではない。
例えば、投受光器30が備える標準受光素子部35と拡張受光素子部38とは、一体の構成であっても別体の構成であっても何れでもよい。また、標準受光素子部35用の光電変換素子群と拡張受光素子部38用の光電変換素子群とが配設された基板を一体に構成し、当該基板の上方に、標準アップリンク領域SUAからの光を集光するためのレンズと、拡張アップリンク領域EUAからの光を集光するためのレンズとを配置して構成することとしてもよい。なお、この場合、部分的に集光特性を変えた一体のレンズを用いることとしてもよい。