(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6518239
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】複合半完成品を生産する方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/46 20060101AFI20190513BHJP
B21B 27/10 20060101ALI20190513BHJP
H01M 8/18 20060101ALI20190513BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20190513BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20190513BHJP
B29C 43/24 20060101ALI20190513BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20190513BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20190513BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20190513BHJP
【FI】
B29C43/46
B21B27/10 Z
H01M8/18
H01M4/86 B
B29C45/00
B29C43/24
C08L101/00
C08K3/00
C08J3/20 BCER
C08J3/20CEZ
【請求項の数】22
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-526520(P2016-526520)
(86)(22)【出願日】2014年7月4日
(65)【公表番号】特表2016-531018(P2016-531018A)
(43)【公表日】2016年10月6日
(86)【国際出願番号】EP2014064303
(87)【国際公開番号】WO2015007544
(87)【国際公開日】20150122
【審査請求日】2017年6月13日
(31)【優先権主張番号】102013107514.2
(32)【優先日】2013年7月16日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502155482
【氏名又は名称】フラウンホーファー−ゲゼルシャフト ツァー フェルデルング デア アンゲヴァンテン フォーシャング アインゲトラーゲナー フェアアイン
【氏名又は名称原語表記】FRAUNHOFER−GESELLSCHAFT ZUR FORDERUNG DER ANGEWANDTEN FORSCHUNG E.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス コピエッツ
(72)【発明者】
【氏名】トルステン サイップ
(72)【発明者】
【氏名】サシャ ベルトホルト
(72)【発明者】
【氏名】イェンス バウアーファインド
(72)【発明者】
【氏名】ダミアン ヒンテマン
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー ベック
【審査官】
▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−529229(JP,A)
【文献】
特開平01−112606(JP,A)
【文献】
特開昭56−095642(JP,A)
【文献】
特開2000−223133(JP,A)
【文献】
特開昭62−134230(JP,A)
【文献】
特開昭59−155007(JP,A)
【文献】
特表2004−505418(JP,A)
【文献】
特表2014−521820(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0119056(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0038116(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00− 43/58
B29C 45/00− 45/84
C08J 3/00− 3/29
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
H01M 4/86− 4/98
H01M 8/00− 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの熱可塑性プラスチック(2)を含有する連続相と、少なくとも1つの導電性フィラー(3)から作られた分散相とを有する、複合半完成品(1)を生産する方法であって、
微粒子の形態の前記少なくとも1つの熱可塑性プラスチック(2)が微粒子の形態の前記少なくとも1つの導電性フィラー(3)と混合され、
前記少なくとも1つの熱可塑性プラスチック(2)と前記少なくとも1つの導電性フィラー(3)との混合物(4)は、前記少なくとも1つの熱可塑性プラスチック(2)の融解温度よりも高い温度に加熱され、
前記加熱された材料は、前記少なくとも1つの熱可塑性プラスチック(2)の凝固温度より低い温度に冷却され、
冷却され得る少なくとも1つのローラ(8)を備えた圧延ミル(5)および/またはカレンダが前記材料を加熱および/または冷却するために用いられる、
複合半完成品(1)を生産する方法において、
前記混合時に混合される前記少なくとも1つの熱可塑性プラスチック(2)および前記少なくとも1つの導電性フィラー(3)の前記粒子の少なくとも90質量%が1mm未満である、複合半完成品(1)を生産する方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの導電性フィラーの材料は、少なくとも1S/mの電気伝導率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの導電性フィラーの材料は、少なくとも103S/mの電気伝導率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの導電性フィラーの材料は、少なくとも106S/mの電気伝導率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
炭素、黒鉛、すす、炭化チタン(TiC)、少なくとも1つの金属および/または少なくとも1つの金属化合物が導電性フィラー(3)として用いられる、請求項1〜4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ塩化ビニル(PCV)および/またはポリアミド(PA)が熱可塑性プラスチック(2)として用いられる、請求項1〜5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの導電性フィラー(3)は、前記複合半完成品(1)に関して、50質量%から95質量%の間の割合で用いられる、請求項1〜6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの導電性フィラー(3)は、前記複合半完成品(1)に関して、70質量%から92質量%の間の割合で用いられる、請求項1〜6の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの導電性フィラー(3)は、前記複合半完成品(1)に関して、80質量%から90質量%の間の割合で用いられる、請求項1〜6の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの熱可塑性プラスチック(2)および/または少なくとも1つの導電性フィラー(3)が用いられ、前記熱可塑性プラスチック(2)および/または前記少なくとも1つの導電性フィラー(3)の前記粒子の90質量%が500μm未満である、請求項1〜9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの熱可塑性プラスチック(2)および/または少なくとも1つの導電性フィラー(3)が用いられ、前記熱可塑性プラスチック(2)および/または前記少なくとも1つの導電性フィラー(3)の前記粒子の90質量%が300μm未満である、請求項1〜9の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの熱可塑性プラスチック(2)および/または少なくとも1つの導電性フィラー(3)が用いられ、前記熱可塑性プラスチック(2)および/または前記少なくとも1つの導電性フィラー(3)の前記粒子の90質量%が200μm未満である、請求項1〜9の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
加熱され得る少なくとも1つのローラ(6)を備えた、圧延ミル(5)および/またはカレンダが前記材料を加熱および/または冷却するために用いられる、請求項1〜12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記複合半完成品は、より低い周速を有するより高温のローラ(6)からより高い周速を有するより低温のローラ(8)に前記材料を移送することによって形成される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記材料は射出成形システムにおいて加熱および冷却される、請求項1〜12の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記加熱は押出機において起こり、前記冷却は射出成形型において起こる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記材料は、加熱後にマトリックスに導入され、雄型によって押圧成形される、請求項1〜12の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
平面状の複合半完成品(1)が生産される、請求項1〜17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
耐薬品性熱交換器の構成要素、1つの医療装置における高周波放射線に対する遮蔽材、低摩擦軸受または加熱ホイルの、電気化学電池の電極(10)を生産するための複合半完成品(1)が生産される、請求項1〜17の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記電気化学電池の電極(10)は、レドックスフロー電池、燃料電池または電解槽の電極(10)である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
耐薬品性熱交換器の構成要素、1つの医療装置における高周波放射線に対する遮蔽材、低摩擦軸受または加熱ホイルとしての、電気化学電池の電極(10)を生産するための、請求項1〜20の何れか一項に従って生産される複合半完成品(1)の使用。
【請求項22】
前記電気化学電池の電極(10)は、レドックスフロー電池、燃料電池または電解槽の電極(10)である、請求項21に記載の複合半完成品(1)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックを含有する連続相と、少なくとも1つの導電性フィラーから作られた分散相とを有する複合半完成品を生産する方法に関する。さらに、本発明は、このような複合半完成品の使用、およびこのような複合半完成品から生産される、電気化学電池の電極に関する。
【背景技術】
【0002】
言及するタイプの複合半完成品は、具体的には、導電率の高い構成要素を生産するために用いられる。電気化学電池、例えば、燃料電池、レドックスフロー電池などのための電極が利用範囲の代表例である。これらのおよび他の利用分野については、多くの場合にフィラーが複合半完成品の重要な特性をもたらすので、フィラーの割合が高いことが望ましい。高い熱伝導率および/または電気伝導率は、例えば、通常は複合半完成品の70質量%以上に相当する高い割合の黒鉛によって実現される。こうした高い割合のフィラーは、複合半完成品の生産中にいくつかの特徴をもたらす。
【0003】
実質的な特徴が、熱可塑性プラスチックのマトリックスにおけるフィラーの均質な分散にある。そのために押出機またはニーダが使用され、押出機またはニーダには、プラスチックはペレットなどの形態で供給され、フィラーは微粒子の形態で供給される。熱可塑性プラスチックは押出機またはニーダ内で融解され、フィラーはプラスチック融解物に機械的に組み込まれる。この工程は低粘度の混合物を必要とし、そのためには、実際の融解温度よりもずっと高い温度にプラスチックを加熱しなければならない。
【0004】
その後、合成材料は射出成形によって成形することができるが、射出成形するにはより低い粘度が必要である。したがって、プラスチックは非常に強く加熱し高い圧力をかけなければならない。あるいは、合成材料をカレンダに供給することもでき、カレンダは、循環および除去を繰り返すことによって合成材料の均質化を繰り返す。カレンダ加工工程によりカレンダ内の合成材料のドエルタイムが長くなり、合成材料はそれに応じて長時間にわたって強く加熱されることになる。
【0005】
それに相当する手法で生産された複合半完成品は低い熱可塑性の特性しか有しない。このことは複合半完成品をさらに加工するためには不利である。その複合半完成品は、多くの場合、低い機械的強度を有し、困難を伴ってのみ他の熱可塑性物質に繋ぐかまたは熱溶着することができる。
【0006】
したがって、本発明の目的は、改善された材料特性を有する複合半完成品を得ることができるように、冒頭で言及し先により詳細に説明した方法を設計しさらに発展させることである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、微粒子の形態の少なくとも1つの熱可塑性プラスチックが微粒子の形態の少なくとも1つのフィラーと混合される、冒頭で言及したタイプの方法によって、本発明の請求項1により達成される。本方法では、
前記混合時に混合される少なくとも1つの熱可塑性プラスチックおよび少なくとも1つのフィラーの粒子の少なくとも90質量%が1mm未満であり、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと少なくとも1つのフィラーとの混合物は少なくとも1つの熱可塑性プラスチックの融解温度よりも高い温度に加熱され、加熱された材料は少なくとも1つの熱可塑性プラスチックの凝固温度よりも低い温度に冷却される。
【0008】
したがって、本発明は、従来想定されたような少なくとも1つのフィラーの粒子サイズではなく、具体的には、材料を実際に加工する前のプラスチックの粒子サイズおよび両方の構成要素の混合物が、複合半完成品の材料特性に大きく影響することを認めている。このことは、フィラーが一体化される連続相またはマトリックスを形成するために少なくとも1つのプラスチックが元の粒子サイズとは関係なく融解される限り驚くべきことである。ここで、連続相またはマトリックスの構造は、用いられる熱可塑性プラスチックの粒子サイズではなく、具体的にはその鎖長および鎖構造に左右される。
【0009】
本発明に関連して、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックによって形成されるマトリックス構造が、プラスチック粒子の元の粒子サイズに大きく、実際に間接的に左右されることが認められている。このことは、プラスチックまたはマトリックス構造に関して分解の発生が全く起こらないかまたは少ししか起こらないように、非常に小さい粒子サイズを有するプラスチックを用いる場合の加工時間および加工温度が本発明により明らかに低減され得ることに起因する。これは、明らかに、とりわけ、より小さいプラスチック粒子を用いる場合に熱輸送工程が改善されることと、前に生産された、プラスチック粒子とフィラー粒子との好ましくは実質的に均質な混合物の加工能力がより良いことによるものである。したがって、最終的に複合材料が得られ、その材料特性は、フィラーの割合が非常に高いにもかかわらず、フィラーによってもたらされる材料特性に、具体的には電気伝導率に不利な形で著しく影響を及ぼすことなしに、従来技術から知られた同じ組成の複合材料よりも少なくとも1つの熱可塑性プラスチックの材料特性に似ている。したがって、好ましくは、本発明による方法を用いて熱可塑性複合半完成品を得ることができる。前記熱可塑性複合半完成品は、本質的に、純粋な熱可塑性プラスチックとしてまたはどのような場合でも同様の手法でさらに加工することができる。
【0010】
この目的のために、少なくとも1つの熱可塑性プラスチック粒子の分散の少なくとも95質量%、特に実質的に100質量%が1mm未満であることが特に好ましい。なお、できるだけ均質な混合物を提供するために、実際の加工の前に、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックの最大粒子サイズと少なくとも1つのフィラーの最大粒子サイズとが実質的に同じであることが好ましい場合がある。さらに、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックと少なくとも1つの導電性フィラーとの混合物の温度が、少なくとも1つのプラスチックの融解温度よりも高いが分解温度よりも低い温度にしか加熱されないことが好ましい場合がある。複数の熱可塑性プラスチックの場合は、それらの熱可塑性プラスチックは、熱可塑性プラスチックの最高融解温度よりも高く最低分解温度よりも低い温度にすることができる。なお、その後、材料の温度は、用いられる熱可塑性プラスチックの最低凝固温度よりも低い温度まで下げられる。
【0011】
本方法の第1の好ましい実施形態では、フィラー材料は、少なくとも1S/m、好ましくは少なくとも10
3S/m、特に少なくとも10
6S/mの電気伝導率を有する。小さいフィラー粒子のバルク材料はそれに応じて導電率を低くすることができる。したがって、好ましい特性を有する複合半完成品を得ることができる。あるいは、またはさらに、複合半完成品の電気伝導率は、少なくとも1S/m、好ましくは少なくとも100S/m、特に少なくとも1000S/mに相当することができる。しかし、本質的に、少なくとも1つの導電性フィラーが少なくとも1つの熱可塑性プラスチックよりも、特に全ての熱可塑性プラスチックよりも導電率が高いことが好ましい。
【0012】
導電性フィラーは、好ましくは、炭素、黒鉛、すす、炭化チタン(TiC/独:Titancarbid,英:titanium carbide)、少なくとも1つの金属および/または少なくとも1つの金属化合物である。これらのフィラーはその機械的特性およびその導電率のおかげで特に適切である。
【0013】
例えば、ポリオレフィン、具体的には、ポリエチレン(PE/独:Polyethylen,英:polyethylene)および/またはポリプロピレン(PP/独:Polypropylen,英:polypropylene)、ポリフェニレンスルフィド(PPS/独:Polyphenylensulfid,英:polyphenylene sulphide)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK/独:Polyetheretherketon,英:polyether ether ketone)、ポリ塩化ビニル(PVC/独:Polyvinylchlorid,英:polyvinyl chloride)および/またはポリアミド(PA/独:Polyamid,英:polyamide)が熱可塑性プラスチックとして適切である。これらの材料は複合半完成品の加工能力および接合に関して利点を与える。具体的には、言及するプラスチックを他のものに簡単に溶着することができる。
【0014】
少なくとも1つのフィラーの所望の特性が複合半完成品の特性の大部分を決定するように、本質的に、少なくとも1つのフィラーが複合半完成品の多くの割合を形成することが好ましい。しかし、さらに、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックのマトリックス構造が材料特性に実質的に影響するので、複合半完成品の少なくとも1つのフィラーの割合は、必要に応じて、50質量%から95質量%の間、好ましくは70質量%から92質量%の間、特に80質量%から90質量%の間に相当する。
【0015】
複合半完成品の加工能力を改善するために、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックおよび/または少なくとも1つのフィラーの粒子の90質量%が750μm未満、好ましくは500μm未満、特に300μm未満であることが好都合である。好適な結果が、具体的には粒子サイズ約150μmの場合に実現された。この文脈では、対応する粒子の少なくとも95質量%、特に実質的に100質量%が所定の粒子サイズを下回ることも好ましい。しかし、ここで、原則として、対応する限界値よりも大きい少量の粒子を十分に許容できることに留意すべきである。それでも、ふるい分けまたは別の分離法によってより大きい粒子を予め排除することが好都合である。
【0016】
迅速かつやさしい加工を可能にするために、材料を加熱および/または冷却するために圧延ミルまたはカレンダを用いることができる。この文脈では、圧延ミルは2つのローラから構成される機構であると理解され、カレンダは少なくとも3つのローラから構成される機構であると理解される。先に説明した目的のために、圧延ミルおよび/またはカレンダは加熱され得る少なくとも1つのローラおよび/または冷却され得る少なくとも1つのローラを備えることがさらに好都合である。
【0017】
この文脈では、複合半完成品は、より低い周速を有するより高温のローラからより高い周速を有するより低温のローラに加工された材料を移送することによる単純かつ材料にやさしい手法で形成することができる。この文脈で除去についても述べる。さらに、これによって平面状の複合半完成品が生産される。より高温およびより低温という用語の使用により、2つのローラ間の熱の差はこのことに関して定量的な表現ではなく定性的な表現になる。しかし、より高温のローラが少なくとも1つの熱可塑性プラスチック、必要な場合は全ての熱可塑性プラスチックの融解温度を超える温度を有することが特に好ましい。あるいは、またはさらに、より低温のローラは、少なくとも1つの熱可塑性プラスチック、必要な場合は全ての熱可塑性プラスチックの凝固温度よりも低い温度を有することができる。
【0018】
必要な場合は、射出成形システムにおいて材料を加熱および冷却することもできる。このことは、必要な場合は、複合半完成品、具体的には複雑な外形を有する複合半完成品の生産を容易にし加速する。したがって、加工の単純化のために押出機で加熱が起こり射出成形型で冷却が起こることが特に好ましい。
【0019】
あるいは、材料は、加熱後にマトリックスに導入することもでき、
雄型によって押圧成形することができる。本方法はホットプレス法とも呼ばれる。このようにして、複雑な外形および/または大きい寸法を有する複合半完成品を簡単に生産することもできる。ここで、必要な場合は、同様に加熱のために押出機を用いることができる。
【0020】
複合半完成品の簡単なさらなる加工を保証できるようにするために、本質的に、平面状の複合半完成品を生産することも好ましい。
【0021】
あるいは、またはさらに、耐薬品性熱交換器の構成要素、好ましくは1つの医療装置における高周波放射線に対する遮蔽材、低摩擦軸受または加熱ホイルの、電気化学電池の電極、好ましくは、レドックスフロー電池、燃料電池または電解槽の電極を生産するために複合半完成品を生産することが好ましい。これらの構成要素の場合は、機械的特性、高い熱伝導率および/または高い電気伝導率を有益な手法で用いることができる。
【0022】
さらに、先に言及した本発明の目的は、耐薬品性熱交換器の構成要素、好ましくは1つの医療装置における高周波放射線に対する遮蔽材、低摩擦軸受または加熱ホイルとしての、電気化学電池の電極、具体的には、レドックスフロー電池、燃料電池または電解槽の電極を生産するための、請求項1から
20の一項に従って生産される複合半完成品の使用による請求項
21及び22により達成される。
【0023】
同様に、この目的は、請求項1から
20の一項に記載の方法に従って生産される、耐薬品性熱交換器の構成要素、好ましくは1つの医療装置における高周波放射線に対する遮蔽材、低摩擦軸受または加熱ホイルとしての、電気化学電池の電極、具体的には、レドックスフロー電池、燃料電池または電解槽の電極によっ
て達成される。
【0024】
例示的な実施形態を1つだけ示す図面によって本発明を以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図3】
図1に示す方法を用いて生産される構成要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1には、複合半完成品1を生産する方法が概略的に示されている。複合半完成品1は、ポリプロピレンの形態の熱可塑性プラスチック2と黒鉛の形態の導電性フィラー3との混合物から形成される。熱可塑性プラスチック2は最初に粗大粒子の形態で低温ミリング工程に供給される。低温ミリング工程は、熱可塑性プラスチックの脆性が上昇するようにミリング工程中に熱可塑性プラスチック2を少なくとも−50℃よりも低い温度に冷却するために、冷媒を、具体的には液体窒素(N
2)の形態の冷媒を添加することによって起こる。フィラー3も液体窒素(N
2)を添加することによってミリングされる。説明する研削工程は
図1では「低温ミリング」とも呼ばれる。熱可塑性プラスチック2およびフィラー3のミリングの場合、適切なミルは従来技術によって知られている。しかし、熱可塑性プラスチック2および/またはフィラー3は、特別の冷却なしにミリングすることもでき、前のミリングを全くなしに用いることもできる。
【0027】
熱可塑性プラスチック2および導電性フィラー3は両方とも、
図1で「ふるい分け」と称される方法ステップに従ってミリング後にふるい分けされる。ここで、150μmよりも大きい粒子はミリング工程に戻され、再度ミリングされる。150μm未満のサイズを有するプラスチック粒子とフィラー粒子とは、できるだけ均質になるように互いに混合される。従来技術によって知られたミキサをそのために用いることができる。混合物4の生産は
図1では「混合」と呼ばれる。
【0028】
熱可塑性プラスチック2とフィラー3との混合の後に、混合物4は
図2に示す圧延ミル5に移送される。ここで、熱可塑性プラスチック2は強化ローラ6上で融解され、これは
図1による方法ステップ「融解」に相当する。ここで、ローラの温度は熱可塑性プラスチック2の融解温度よりも約30℃高い。フィラー3の粒子は、熱可塑性プラスチック2の融解中にその中に受け入れられる。ここで、熱可塑性プラスチック2は、導電性フィラー3が熱可塑性プラスチック2のマトリックスに好ましくは均質に不連続相として分散されるように受け入れられるためのマトリックスの形態の連続相を形成する。フィラー3および融解された熱可塑性プラスチック2から作られた材料は、加熱されたローラ6に付着し、したがって、ローラ6が回転運動する際に別のローラ8とのローラギャップ7に輸送される。これは
図1による複合半完成品1の方法ステップ「成形」の実質的な部分を表す。図示のこの点の好ましい方法では、「成形」の方法ステップから「凝固」の方法ステップに移行する。
【0029】
別のローラ8は、このローラ8の温度が材料の加工中にポリプロピレンの形態の熱可塑性プラスチック2の凝固温度より低くなるように冷却される。さらに、このローラ8は加熱されたローラ6よりも大きい周速を有する。したがって、材料は、少なくとも部分的に、ローラギャップ7中で凝固し、冷却されたローラ8から除去される。材料が凝固して複合半完成品1を形成すると、これは冷却されたローラ8によって部分的にのみ、実際に平面状の複合半完成品1が冷却されたローラ8から除去されるまでのみ輸送される。
【0030】
必要な場合は、加熱されたローラ6と冷却されたローラ8との間の距離を変更可能にすることができる。したがって、例えば、ローラギャップ7の幅を調節可能にすることができる。具体的には、ローラ6と8との間の距離は最初に、熱可塑性プラスチック2および導電性フィラー3から作られる層9が最初に、加熱されたローラ6上を循環するように形成され、前記導電性フィラー3が経時的にさらに均質化される程度の大きさになるように選択することができる。この層9が必要な厚さおよび/または均質性を有した後に、ローラギャップ7を形成し説明したように複合半完成品1を除去するために、冷却されたローラ8を加熱されたローラ6まで押しやることができる。
【0031】
従来技術と比べて加工時間が非常に短く温度が低いことから、複合半完成品1のフィラーの割合が高くここでは85質量%であるにもかかわらず非常に高い熱可塑性特性を有する複合半完成品1が得られる。これは、電極10がその縁部11において循環するようにして電気化学電池のセルフレーム要素12と溶着されることによって、電気化学電池のための電極10の形態で
図3に示す構成要素に用いられる。